説明

クエン酸含有飲料

【課題】クエン酸を大量に配合した場合であっても十分に酸味を低減させることができるクエン酸含有飲料を提供する。
【解決手段】クエン酸類を0.5〜5重量%含有するクエン酸含有飲料において、炭酸水素ナトリウムを配合したことを特徴とする。好ましくは、炭酸水素ナトリウムは、0.005〜5重量%配合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸含有飲料に係り、詳しくは高濃度に含有するクエン酸の酸味を低減させたクエン酸含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クエン酸はレモン、ミカン等の柑橘類に多く含まれ(例えば、1350mg/レモン1個)、生体内において糖代謝系であるクエン酸回路の一成分をなすことが知られている。従来より、特許文献1に記載されるようにクエン酸を摂取することにより運動による筋肉中の乳酸の蓄積が防止され、疲労を回復させる効果を有することが知られている。しかしながら、クエン酸自体は酸味が強いため、クエン酸を飲料として摂取する場合、飲用として嗜好的に困難であるという問題があった。そこで、従来より特許文献2に記載されるようにクエン酸の酸味を低減させることにより嗜好性の向上を図る方法が知られている。かかる方法は、クエン酸含有飲料において特定の割合でコハク酸ナトリウム又はフマル酸ナトリウムを配合させることにより、クエン酸由来の酸味を低減させる。しかしながら、その効果は十分でなく、クエン酸含有飲料の風味が悪くなるおそれがあった。
【特許文献1】特開2001−204425号公報
【特許文献2】特開2005−261395号公報
【特許文献3】特開平10−295342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
疲労回復効果を向上させるために水分補給も兼ねてクエン酸を摂取することを目的としたクエン酸含有飲料では、クエン酸の配合量を多くすると、酸味が強く、逆に飲用時にストレスを感じるため、一度に多量のクエン酸を美味しく飲用することが難しいという問題がある。
【0004】
また、女性や中高年が飲料を摂取する場合、一度に多くの量を飲用することが困難である。特に、飲料として酸味の強いクエン酸を一度に多量摂取する場合は、クエン酸濃度を低くして多くの量を飲用しなければならない。
【0005】
一度に多くの量を飲用することが困難なことが多いことから、小容量で飲用できることが好ましく、小容量に多量のクエン酸を配合することが必要となる。この場合、クエン酸の濃度が高くなってしまい、酸味が強く、飲用として嗜好的に困難であることから、クエン酸を高濃度に含有していても、酸味を低減し、嗜好性の向上を図る必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、炭酸水素ナトリウム(重曹)を配合することにより上記課題が解決されることを見出したことによりなされたものである。尚、炭酸水素ナトリウムは、従来より例えば特許文献3に開示されるように中性飲料の緩衝剤として適量配合されている。しかしながら、強酸であるクエン酸が大量に配合される酸性飲料において炭酸水素ナトリウムを緩衝剤等として配合する例は知られていない。
【0007】
本願発明の目的とするところは、クエン酸を大量に配合した場合であっても十分に酸味を低減させることができるクエン酸含有飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明のクエン酸含有飲料は、クエン酸類を0.5〜5重量%含有するクエン酸含有飲料において、炭酸水素ナトリウムを配合したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のクエン酸含有飲料において、前記炭酸水素ナトリウムは、0.005〜5重量%配合されることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のクエン酸含有飲料において、前記クエン酸類は、1〜4重量%含有されることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項記載のクエン酸含有飲料において、前記炭酸水素ナトリウムは、前記クエン酸類の配合量に対し、1/30〜1/2の配合比で含有されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項記載のクエン酸含有飲料において、さらに、ポリフェノール類を含有させたことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項記載のクエン酸含有飲料において、前記クエン酸類は、柑橘類の搾出液として配合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クエン酸を大量に配合した場合であっても十分に酸味を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のクエン酸含有飲料を具体化した一実施形態を説明する。
本実施形態のクエン酸含有飲料は、疲労を回復させるために主成分としてクエン酸類を含有し、さらにこれらのクエン酸類由来の酸味を低減させるために炭酸水素ナトリウムが配合される。
【0014】
クエン酸類としては、クエン酸及びクエン酸塩から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。クエン酸としては、クエン酸無水物及びクエン酸水和物のいずれを用いてもよい。クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム等が挙げられる。これらのクエン酸類としては、発酵法による生合成品、化学合成品、天然物から水・親水性有機溶媒等を用いて抽出した抽出品のいずれを使用してもよい。クエン酸類の配合形態としては、生合成品、化学合成品、天然物からの抽出又は精製品を直接飲料中へ配合してもよく、クエン酸類を含有する素材を飲料中に配合させてもよい。クエン酸類を含有する素材としては、例えば野菜、果実等が挙げられるが、好ましくは、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、スダチ等の柑橘類が用いられる。
【0015】
クエン酸類を含有する素材として、柑橘類由来の原料を使用する場合、好ましくは柑橘類の果汁等の搾出液又はその濃縮物が用いられる。その他、葉、果実(果皮(アルベド、フラベド)、じょうのう膜及びさのう等)、又はその果実の構成成分の一部を含有するものの搾出液を使用してもよい。
【0016】
クエン酸類は、生体内において糖代謝系であるクエン酸回路の一成分をなし、運動による筋肉中の乳酸の蓄積を防止し、疲労を回復させる効果を有することが知られている。本実施形態のクエン酸含有飲料により高濃度のクエン酸を効率的に摂取することができる。クエン酸類は、飲料中において0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%含有される。飲料中においてクエン酸類の濃度が0.5重量%未満であると、少量のクエン酸含有飲料の飲用で大量のクエン酸類を摂取することが困難となる。一方、飲料中においてクエン酸類の濃度が5重量%を超えると、クエン酸の味が刺激的になるため、一度に飲用することが困難になる。また、刺激的な酸味を低減させるための炭酸水素ナトリウムも大量に配合する必要があり、多量のクエン酸を美味しく飲用することが困難となる。
【0017】
炭酸水素ナトリウムは、クエン酸類由来の酸味を低減させるために配合される。炭酸水素ナトリウムの配合量は、クエン酸含有飲料の口当たり、後味、酸味、風味等の嗜好性や味覚に応じ適宜設定される。好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.015〜2.5重量%、最も好ましくは0.05〜1重量%配合される。炭酸水素ナトリウムの配合量が、0.005重量%未満であるとクエン酸類由来の酸味を十分に低減させることが困難となる。一方、配合量が、5重量%を超えるとクエン酸含有飲料の口当たり、後味等の嗜好性が低下するおそれがある。
【0018】
飲料の口当たり等の嗜好性を低減させることなくクエン酸類由来の酸味のみを低減させるために、炭酸水素ナトリウムは、さらにクエン酸類の含有量に対して特定の配合比で含有されることが好ましい。具体的には炭酸水素ナトリウムはクエン酸類の配合量に対し、好ましくは1/30〜1/2の配合比で含有される。より好ましくは1/10〜1/2の配合比で含有される。
【0019】
さらに、その他の成分として、クエン酸含有飲料中にポリフェノール類を配合させてもよい。ポリフェノール類を含有させることにより、クエン酸類由来の酸味を一層低減させることができるとともに、まろやかさ等の嗜好性をより向上させることができる。ポリフェノール類としては、クロロゲン酸、カフェ酸、キナ酸等のフェノールカルボン酸類、フラボノイド類が重合したタンニン類、フラボノイド類、及び還元糖とフラボノイドが結合したフラボノイド配糖体等を挙げることができる。これらの中でも、フラボノイド、及び還元糖とフラボノイドが結合したフラボノイド配糖体等のフラボノイド類を使用することが好ましい。フラボノイド配糖体は、フラボノイドアグリコンと、単糖類又は二糖類のC位とがグリコシド結合で結合した構造を有している。フラボノイド配糖体はβ−グルコシダーゼによりグリコシド結合が加水分解されてフラボノイドと還元糖を遊離する。
【0020】
フラボノイドとしては、例えばフラボン、イソフラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、フラバン−3,4−ジオール、フラバン−3−オール、アントシアニジン、オーロン、カルコン等が挙げられる。還元糖としては、例えばグルコース、ガラクトース、ルチノース等が挙げられる。
【0021】
これらの中で、具体的にはフラバノン類としてエリオディクティオール、ヘスペレチン及びナリンゲニン等が挙げられる。フラバノン類は、天然物として還元糖が結合したフラバノン配糖体(フラボノイド配糖体)の形で存在するためフラバノン配糖体を使用してもよい。フラバノン配糖体としては、ルチノースとの配糖体であるエリオシトリン及びヘスペリジン、グルコースとの配糖体であるエリオディクティオール−7−グルコシド、並びにネオヘスペリジオースとの配糖体であるナリンジン等が挙げられる。
【0022】
ポリフェノール類の配合形態としては、生合成品、化学合成品、天然物から水・親水性有機溶媒を用いて抽出された抽出又は精製品を直接飲料中へ配合してもよく、ポリフェノール類を含有する素材を飲料中に配合させてもよい。ポリフェノール類を含有する素材としては、例えば野菜、果実等が挙げられるが、好ましくは、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、スダチ等の柑橘類が挙げられる。ポリフェノール類を含有する素材として、柑橘類由来の原料を使用する場合、好ましくは柑橘類の果汁等の搾出液又はその濃縮物が用いられる。レモン等の柑橘属の果実には、エリオシトリン、ヘスペリジン及びナリンジン等のフラバノン(フラボノイド)配糖体が多量に含有されている。また、フラバノン配糖体のエリオシトリンは、ミント類にも含有されるためミント類の葉、果実等を原料として使用してもよい。
【0023】
ポリフェノール類を含有する素材として、柑橘類の搾出液を使用する場合、柑橘類の葉、果実、又はその果実の構成成分の一部を含有するものが用いられ、好ましくはレモン果実を構成する果皮(アルベド、フラベド)、じょうのう膜及びさのう等が用いられる。これらを原料として得られた柑橘類の果汁等の搾出液をクエン酸含有飲料に配合させることにより、ポリフェノール類を飲料中に配合してもよい。さらに、柑橘類由来の原料としては、製造に要する手間を省くとともに前記柑橘類果実の有効利用を容易に図ることができることから、前記柑橘類果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣又はそれから水、親水性有機溶媒(メタノール又はエタノール)等の溶媒を用いて公知の方法により抽出した抽出物を使用してもよい。また、必要であれば抽出した抽出物を精製したものを使用しても良く、精製の度合は、飲料への使用方法により適宜精製度合を変えればよい。
【0024】
ポリフェノール類の飲料中における配合量は、好ましくは0.00001〜1重量%、より好ましくは0.0001〜0.5重量%含有される。飲料中においてポリフェノール類の濃度が0.00001重量%未満であると、酸味低減効果が十分に得られないおそれがある。一方、飲料中においてポリフェノール類の濃度が1重量%を超えると、苦味が増加するおそれがある。
【0025】
本実施形態のクエン酸含有飲料を飲用する場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、例えば、栄養補助食品、清涼飲料水、医薬部外品等の形態で飲用することができる。より具体的には中性域の食品より、酸性域の食品のほうが適合性が高く、例えば、スポーツドリンク、牛乳やヨーグルト等を含有した酸性域の乳製品、ペクチンやカラギーナン等のゲル化剤含有食品等を挙げることができる。また、本願発明の効果を損なわない範囲内において、グルコース、ショ糖、果糖、乳糖やデキストリン、食物繊維、多糖類等の糖類、香料、ステビア、アスパルテーム、糖アルコール等の甘味料、色素、安定剤、ビタミン類、アミノ酸類、各種ミネラル(クエン酸と反応して沈殿しないものに限る)植物性油脂及び動物性油脂等の油脂等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0026】
次に、本実施形態のクエン酸含有飲料の製造方法について説明する。
まず、(1)炭酸水素ナトリウムを所定量水に溶解させることにより炭酸水素ナトリウム水溶液を得る。次に、炭酸水素ナトリウム水溶液にクエン酸を所定量添加し、混合させる。または、逆の方法で混合することでもよい。(2)クエン酸類を所定量水に溶解させることによりクエン酸水溶液を得る。次に、クエン酸水溶液に炭酸水素ナトリウムを所定量添加し、混合させる。その際、中和反応により水溶液中に多量の泡が発生することがある。そのため、これをそのまま容器にパックした場合、殺菌不良が発生するおそれがある。溶液中に泡が混入することにより、加熱殺菌時にこの泡が膨張するため、液温を一定に保つことが困難になる。そのため、クエン酸類と炭酸水素ナトリウムを混合した後、消泡処理を施すことが好ましい。消泡処理としては、高速攪拌機を導入し、泡を切ることにより、消泡することができる。その他、遠心処理や減圧処理等を用いて消泡処理を行なってもよい。
【0027】
本実施形態のクエン酸含有飲料によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、クエン酸類を大量(0.5〜5重量%)に配合するクエン酸含有飲料に炭酸水素ナトリウムを配合した。したがって、クエン酸類由来の酸味を低減させることができる。また、口当たり、えぐみ、後味等の嗜好性を向上させることができる。よって、クエン酸含有飲料を少量飲用することによって、大量のクエン酸類を摂取することが可能となる。
【0028】
(2)本実施形態では、クエン酸含有飲料中において炭酸水素ナトリウムを0.005〜5重量%配合した。したがって、より効率よくクエン酸類由来の酸味を低減させることができる。
【0029】
(3)本実施形態において、炭酸水素ナトリウムは、クエン酸類の配合量に対し、1/30〜1/2の配合比で含有させた。したがって、口当たり等の嗜好性を低下させることなく、より効率的にクエン酸類由来の酸味を低減させることができる。
【0030】
(4)本実施形態では、好ましくはさらにポリフェノール類が含有される。したがって、クエン酸類由来の酸味を一層低減させることができるとともに、まろやかさ等の嗜好性をより向上させることができる。
【0031】
(5)本実施形態において、クエン酸類の原料としてレモン等の柑橘類の搾出液を用いた場合、柑橘類の口当たり等の嗜好性を低下させることなく酸味のみを低減させることができる。
【0032】
(6)また、レモン等の柑橘類の搾出液には、酸味を低減させる作用を有するエリオシトリン、ヘスペリジン及びナリンジン等のフラバノン(フラボノイド)配糖体が多量に含有されるため、クエン酸含有飲料の酸味が一層低減される。
【0033】
(7)また、柑橘類の搾出液には、クエン酸類以外にビタミン、ミネラル等の他の栄養成分を含むため、栄養補助食品、清涼飲料水、医薬部外品等の製品形態として好ましく適用することができる。
【0034】
(8)本実施形態では、フラバノン配糖体を含む原料として、柑橘類の果実から果汁を搾汁した後の搾汁残渣、又は該搾汁残渣よりフラバノン配糖体を抽出した抽出物を用いることにより、これら柑橘類の果汁を用いる場合と比較して、極めて容易に大量のフラバノン配糖体を得ることができる。さらに、前記搾汁残渣は、前記柑橘類の果汁を含む飲料品等を製造する際に大量に廃棄されるものであることから、極めて安価に入手することができるうえ、食品リサイクル法の観点からもより好ましい。
【0035】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のクエン酸含有飲料は、例えば、スポーツ中、スポーツ後、仕事中、勉強中、その他、通勤・通学、家事、育児等において疲労やストレスを感じたときに、摂取することにより、疲労回復効果を奏するものである。また、クエン酸由来の酸味が低減されることにより、飲用時の不快感が低減され、さらに口当たり等の嗜好性も向上させることができるため、飲用後の爽快感等も得ることができる。
【実施例】
【0036】
次に、各実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(試験例1:クエン酸に対する炭酸水素ナトリウムの酸味緩和効果)
実施例1〜18及び比較例1〜3について、表1に示される配合量でクエン酸(和光純薬社製)及び炭酸水素ナトリウム(トクヤマ社製)を含有する水溶液をそれぞれ調整した。クエン酸を水に溶解させることによりクエン酸水溶液を調整し、そのクエン酸水溶液を攪拌しながら炭酸水素ナトリウムを添加することによりクエン酸含有飲料の調製を行った。各例の水溶液の酸味について官能試験を行なうことにより、クエン酸に対する炭酸水素ナトリウムの酸味緩和効果を評価した。
【0037】
<酸味評価>
クエン酸を0.5重量%配合する実施例1〜6は、炭酸水素ナトリウムが含有されないクエン酸濃度が0.5重量%である比較例1をコントロールとして、コントロールより非常に強く感じる:7、やや強く感じる:6、コントロールと同等:5、やや弱く感じる:4、より弱く感じる:3、非常に弱く感じる:2、ほとんど感じない:1の7段階で評価した。クエン酸を2重量%配合する実施例7〜12は、炭酸水素ナトリウムが含有されないクエン酸濃度が2重量%である比較例2をコントロールとして、上記と同様に7段階で評価した。クエン酸を4重量%配合する実施例13〜18は、炭酸水素ナトリウムが含有されないクエン酸濃度が4重量%である比較例3をコントロールとして、上記と同様に7段階で評価した。被験者は10名とし、その採点結果について平均点を算出し、その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

表1に示されるように、クエン酸濃度が0.5重量%、2重量%、4重量%のいずれについても炭酸水素ナトリウムの濃度依存的にクエン酸由来の酸味が低減されることが確認された。クエン酸濃度が0.5重量%の場合、好ましくはクエン酸配合量の1/30以上、より好ましくは1/10以上の炭酸水素ナトリウムを配合すると酸味をより低減させることができる。クエン酸濃度が2重量%の場合、好ましくはクエン酸配合量の1/30以上、より好ましくは1/10以上の炭酸水素ナトリウムを配合すると酸味をより低減させることができる。クエン酸濃度が4重量%の場合、好ましくはクエン酸配合量の1/30以上、より好ましくは1/5以上の炭酸水素ナトリウムを配合すると酸味をより低減させることができる。甘味料等の酸味を抑制する添加物が配合されなくても、炭酸水素ナトリウムの添加により味覚の違いが明確に表われた。
【0039】
(試験例2:嗜好性についての評価)
クエン酸2重量%と酸味低減作用を有するコハク酸二ナトリウム(和光純薬社製)0.2重量%を含有するクエン酸含有飲料を上記と同様に調整して比較例4とした。比較例4のクエン酸含有飲料と実施例9(クエン酸2重量%及び炭酸水素ナトリウム0.2重量%含有)のクエン酸含有飲料について口当たり、えぐみ、後味の嗜好性について官能評価した。被験者を10名とし、2点識別(ブラインドテスト)により、比較例4と実施例9を比較し、いずれが良いか、同等かについて評価した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

表2に示されるように、酸味低減効果を有するコハク酸二ナトリウムを配合するクエン酸含有飲料(比較例4)と比較してえぐみ及び後味の嗜好性については炭酸水素ナトリウムを配合した実施例9の方がよいと判断する被験者が多かった。口当たりについても約半数の被験者が実施例9の方がよいと答えた。以上により、炭酸水素ナトリウムを配合する方がコハク酸二ナトリウムを配合する場合に比べて、酸味を低減するのみならず、口当たり等の嗜好性も優れることが示された。
【0041】
(試験例3:クエン酸含有飲料をレモン果汁含有飲料に適用した場合の評価)
クエン酸含有飲料中のクエン酸を全量レモン果汁由来とした。まず、レモン果汁:60重量%、砂糖:10重量%、香料(三栄源エフエフアイ社製):0.1重量%、水:残量からなるレモン果汁含有飲料を比較例5として調整した。比較例5のレモン果汁含有飲料中にはクエン酸が3重量%含有される。次に、比較例5のレモン果汁含有飲料中に炭酸水素ナトリウムを配合することにより表3の実施例19〜24に示される炭酸水素ナトリウムをそれぞれ配合したレモン果汁含有飲料を調整した。各実施例のレモン果汁含有飲料について酸味及び口当たりについての官能評価を行なった。
【0042】
<酸味評価>
炭酸水素ナトリウムを配合しないレモン果汁含有飲料である比較例5をコントロールとして、コントロールより非常に強く感じる:7、やや強く感じる:6、コントロールと同等:5、やや弱く感じる:4、より弱く感じる:3、非常に弱く感じる:2、ほとんど感じない:1の7段階で評価した。被験者は10名とし、その採点結果について平均点を算出し、その結果を表3に示す。
【0043】
<口当たりの評価>
口当たりの悪さについて、とても強く感じる:3、感じる:2、わずかに感じる:1、感じない:0とし、4段階で評価した。被験者は10名とし、その採点結果について平均点を算出した。点数が低いほど口当たりについての評価が優れることを示す。その結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

表3に示されるように、クエン酸含有飲料中のクエン酸をレモン果汁由来とした場合であっても、炭酸水素ナトリウムの配合量依存的に酸味が低減されることが確認された。好ましくはクエン酸含有量の1/30以上の炭酸水素ナトリウムを配合すると酸味をより低減させることができる。より好ましくはクエン酸含有量の1/5以上の炭酸水素ナトリウムを配合すると酸味を一層低減させることができる。一方、レモン果汁含有量中の炭酸水素ナトリウムの配合量が少ない方が口当たりが良好なことが示される。レモン果汁含有飲料の口当たりを良好に保つために、炭酸水素ナトリウムの配合量はクエン酸含有量の1/2以下が好ましい。以上により、炭酸水素ナトリウムの配合量をクエン酸含有量の1/30〜1/2とすることにより、クエン酸由来の酸味を十分に緩和させることができるとともに、炭酸水素ナトリウムによる口当たりの悪さを十分に抑えることができる。
【0045】
(試験例4:ポリフェノール類含有の有無による嗜好性の影響)
上記と同様の方法により表4に示される配合量で実施例25,26及び比較例6のレモン果汁含有飲料を調整した。クエン酸含有飲料中のクエン酸は、全てレモン果汁由来とした。炭酸水素ナトリウムを配合しない飲料を比較例6とした。実施例26及び比較例6のレモン果汁含有飲料は、活性炭を通過させることによりポリフェノール類の除去処理を行なった。各実施例のレモン果汁含有飲料について酸味及びまろやかさについての官能評価を行なった。
【0046】
<酸味評価>
炭酸水素ナトリウムを配合しないレモン果汁含有飲料である比較例6をコントロールとして、コントロールより非常に強く感じる:7、やや強く感じる:6、コントロールと同等:5、やや弱く感じる:4、より弱く感じる:3、非常に弱く感じる:2、ほとんど感じない:1の7段階で評価した。被験者は10名とし、その採点結果について平均点を算出し、その結果を表4に示す。
【0047】
<嗜好性>
まろやかさについて比較例6との比較により、強い、同等、弱いの3段階で評価した。被験者は10名とし、結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

表4に示されるように、クエン酸及び炭酸水素ナトリウムの濃度が同じである実施例25,26について、ポリフェノール類を除去処理してない実施例25は、除去処理した実施例26と比較して酸味がより低減していることが確認される。また、まろやかさの嗜好性もポリフェノール類を除去処理してない実施例25は、除去処理した実施例26よりわずかに優れることが確認される。以上により、ポリフェノール類は味覚に変化を与え、ポリフェノール類を含むレモン果汁を使用した方がより酸味を緩和するとともに風香味が向上することが明らかとなった。
【0049】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)柑橘類搾出液に炭酸水素ナトリウムを配合することにより調整された前記クエン酸含有飲料。柑橘類には、クエン酸のみならずポリフェノール類も多く含有するため、嗜好性が優れるクエン酸含有飲料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸類を0.5〜5重量%含有するクエン酸含有飲料において、炭酸水素ナトリウムを配合したことを特徴とするクエン酸含有飲料。
【請求項2】
前記炭酸水素ナトリウムは、0.005〜5重量%配合されることを特徴とする請求項1記載のクエン酸含有飲料。
【請求項3】
前記クエン酸類は、1〜4重量%含有されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のクエン酸含有飲料。
【請求項4】
前記炭酸水素ナトリウムは、前記クエン酸類の配合量に対し、1/30〜1/2の配合比で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項記載のクエン酸含有飲料。
【請求項5】
さらに、ポリフェノール類を含有させたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載のクエン酸含有飲料。
【請求項6】
前記クエン酸類は、柑橘類の搾出液として配合されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載のクエン酸含有飲料。