説明

クッション機能付きシャンクおよび当該シャンクを挿入した靴

【目的】シャンクに、内側アーチと外側アーチをそれぞれ独立して支え、補強する機能と、踵部対応部にクッション機能を同時に持たせる。
【解決手段】樹脂プレート、内側アーチ対応部と、外側アーチ対応部とに分岐させ、前アーチ対応部を盛り高構造にし、樹脂プレートの踵対応部に、踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の貫通孔を設け、所望によりミッドソール、中底、インソールにも貫通孔を設け、前記樹脂プレートの踵対応部に形成した貫通孔と連通させ、靴内エアーコンディショニングシステムを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション機能付きシャンクおよび当該シャンクを挿入した靴に関する。より詳細に述べれば、本発明は、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチと、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチと、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチから成るアーチを支え、且つ、踵部対応部にクッション機能をもたせたシャンクおよび当該シャンクを挿入した靴に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明で使用する用語「解剖学的構造」とは、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ(土踏まずアーチ)と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチと、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ(横断アーチ)に対応した構造と定義する。
【0003】
シャンクは、靴の踏まず部(足の土踏まずに対応する)のミッドソールとアウトソールの間に挿入し、足の土踏まずアーチの荷重を支え歩行を助ける目的で使用する補強芯で、従来から、各種の材料で、多様な機能と構造を持ったものが提案されてきた。古くは、樺(カバ)の木の皮や、竹を用いたが、現在では、鋼鉄または硬質プラスチックが主流である。
【0004】
従来のシャンクは、アーチの解剖学的立体構造に着目したものではなく、単一の平板で、主として土踏まずア−チを補強するためのものである。そのために、その余のアーチ、すなわち、外側アーチおよび前アーチを補強する機能が無く、アーチの本来の機能である「バネ効果」を補強する効果がない。また、従来のシャンクは、硬度が同一の材料で製造された単一構造の平板であるため、歩行時に踵が接地するときに踵に負荷される体重より大きな荷重を踵部で吸収することができないという欠点がある。
【0005】
たとえば、特許文献1は、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)等の熱可塑性樹脂で製造した硬質材料から成るシャンクを記載しているが、その詳細な構造は不分明である。
【0006】
特許文献2は、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂等の樹脂プレートから成るシャンクを記載している。しかしながら、このシャンクは、靴底不踏部、すなわち、内側アーチだけを補強する構造である。
【0007】
特許文献3は、硬質樹脂製のソールプレートに中足部位に伸びる2本の凸状のリブを形成し、このリブによるシャンク効果を奏功することを記載している。しかしながら、このような、2本の凸状のリブは、その構造上、内側アーチ、外側アーチおよび前アーチを補強する機能は無い。
【特許文献1】特開2005−473号公報
【特許文献2】特開2005−287565号公報
【特許文献3】特開2005−95483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明が解決しようとする課題は、靴のミッドソールとアウトソールの間に挿入されるシャンクの構造を、アーチの解剖学的構造に対応させ、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチと、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチと、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチから成るアーチを支え、且つ、踵部対応部にクッション機能を持たせ、歩行時に踵が接地するときに踵に負荷される体重より大きな荷重を踵部で吸収することができるようにすることである。
【0009】
発明が解決しようとする別の課題は、靴のミッドソールとアウトソールの間に挿入されるシャンクの構造を、アーチの解剖学的構造に対応させ、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチと、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチと、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチから成るアーチを支え、且つ、踵部対応部にクッション機能を持たせ、歩行時に踵が接地するときに踵に負荷される体重より大きな荷重を踵部で吸収することができるようにすると共に、シャンクの靴底対応部に垂直方向に貫通孔を設け、一方、ミッドソールの爪先対応部から踵対応部に向けて通気溝を穿設し、ミッドソールの爪先対応部の厚さ方向に向けて穿設した貫通孔と連通し、これらと前記シャンクの踵対応部の厚さ方向に穿設した貫通孔と連通し、さらに貫通孔を設けた中底およびインソールを使用することにより、靴内部の空気と湿気を流動させ、靴外部へ排気する靴内エアーコンディショニング効果を奏功することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
人が直立したとき、身体は足の第1趾(親指)の付け根と第5趾(小指)の付け根、および踵との3点を支点として、そのれぞれの2点のアーチによって支持されている。それぞれのアーチが、バネの機能を持ち、足が地面と接するときに受ける衝撃を吸収したり、分散して、直立、歩行、走行の際の身体の機能を助け、かつ、補強している。
【0011】
図3は、アーチの構造を模式的に説明する概念図である。図3−Aは、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ20と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ21と、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ22を、足の骨格に模式的に書き込んだ側面図である。図3−Bは、アーチを模式的に表した概念図である。図3−Cは、内側アーチ20、外側アーチ21、および前アーチ22を、足底に模式的に書き込んだ透視図である。
【0012】
内側アーチ20は、第1趾(親指)から舟状骨を支える踵骨に至るアーチ、いわゆる「土踏まずアーチ」で、アーチの中で最も重要な部分である。理想的な靴は、靴底の土踏まずアーチ部分が、足裏の土踏まずとピッタリと一致していて、直立、歩行、走行運動に伴って、足裏の土踏まずアーチの伸縮運動に従って、靴底の土踏まずアーチ部分も対応できなければならない。もし、靴底の土踏まずアーチ部分の材料が弱化、或いは劣化して、直立、歩行、走行運動に伴う体重移動による荷重を支持できなくなった場合は、アウトソールとミッドソールの間に挿入されるシャンクが、下方から支えて、補強出来るような構造であることが好ましい。
【0013】
外側アーチ21は、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長するアーチである。人が歩行、走行するとき、先ず、踵が着地して、外側アーチに沿って、第5趾(小指)の方に重心移動し、次に第5趾(小指)から横断アーチの沿って第1趾(親指)側に移動し、最終的には第1趾(親指)で地面を蹴上げて前進運動に移行する。従って、この外側アーチが伸びきっていると、バネの力が弱化し、重心を第1趾(親指)側に移動することができず、身体のバランスをとるのに無理な姿勢や、歩行をするようになる。もし、靴底の外側アーチ部分の材料が弱化、或いは劣化して、直立、歩行、走行運動に伴う体重移動による荷重を支持できなくなった場合は、アウトソールとミッドソールの間に挿入されるシャンクが、下方から支えて、補強出来るような構造であることが好ましい。
【0014】
前アーチ22は、第1趾(親指)の付け根から第5趾(小指)の付け根にかけて伸長するアーチである。前アーチが正常状態では、第2趾、第3趾、および第4趾は、浮いてアーチを形成している。しかしながら、長時間靴を履いていると、中足骨が開いて、足形が、いわゆる「開張足」に変形し、前アーチが押し潰され、痛くなったり、歩けなくなることがある。従って、シャンクに前アーチの形状を構造的にもたせ、開張足を、本来のアーチに戻すことが好ましい。
【0015】
上述したシャンクの理想的な機能を考慮すると、シャンクは、従来のような単純な一枚板ではなく、踵部対応部から、内側アーチ20対応部と外側アーチ21対応部に分岐させ、前アーチ22対応部に沿って盛高構造にすることが好ましいことが理解される。
【0016】
また、シャンクの踵対応部にクッション機能を持たせるために、シャンクの踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の弱化部を設けることが好ましい。なお、弱化部は、薄肉部、陥凹部、貫通孔、透孔等と同義である。
【0017】
この弱化部の形状は、クッション効果を高めるために、アウトソール方向に拡開した、いわゆる断面が台形状にすることが好ましい。弱化部を、シャンクの踵対応部の厚さ方向に貫通する貫通孔とすると、歩行、走行等運動するたびに踵対応部のクッション作用により、靴内の空気が貫通孔を通して上に流動するので、エアコンディショニング効果が奏功される。なお、貫通孔は透孔と同義である。
【0018】
上述した構造のシャンクは、アウトソールとミッドソールの間に挿入して使用するが、その際、シャンクの踵対応部と、ミッドソールの踵対応部の裏面との間に、空気、湿気を通し、水は通さない透湿シートを、前記弱化部となる貫通孔を被うように挿入することが好ましい。このことにより、雨中で歩行していたり、或いは歩行中水たまりに入ったとしても、水がミッドソールへ浸水するのを防止し、一方、歩行中、靴内に発生する汗が主体の湿気および暖かくなった空気は、ミッドソールへ向けて透過させる。
【0019】
次に、ミッドソールの構造の一例を説明する。ミッドソールの上面には、ミッドソールの爪先対応部から、踵対応部に向けて通気溝を形成することが好ましい。
【0020】
この通気溝の形状・構造は特段に限定されない。例えば、爪先対応部に、ミッドソールの幅方向に向けて少なくとも1本の通気溝を形成し、これを前記ミッドソールの爪先対応部から、踵対応部に向けて穿設した通気溝と連通させてもよい。この構造により、ミッドソールの長さ方向における通気効率が拡大される。
【0021】
さらに、ミッドソールの爪先対応部から、踵対応部に向けて形成した通気溝の踵対応部において、ミッドソールの踵対応部の厚さ方向に向けて貫通孔を穿設し、この貫通孔を、前記シャンクの踵対応部の厚さ方向に穿設した貫通孔と連通することが好ましい。この構造により、歩行時に、シャンクの貫通孔から透過してくる空気、汗が、前記透湿シートを介して、ミッドソールの爪先対応部の厚さ方向に向けて穿設した貫通孔からさらに上方へ透過する。
【0022】
さらに、中底およびインソールには、それぞれの厚さ方向に向けて少なくとも1個の貫通孔を穿設することが好ましい。このような構造にすることにより、中底に穿設した貫通孔と、インソールに穿設した貫通孔と、シャンクの靴底対応部に垂直方向に穿設した貫通孔、ミッドソールの爪先対応部から踵対応部に向けて形成した通気溝、ミッドソールの爪先対応部の厚さ方向に向けて穿設し、前記通気溝と連通する貫通孔が、それぞれ連通し、靴内部の空気と湿気を流動させ、靴外部へ排気する靴内エアーコンディショニング効果を奏功することができる。
【0023】
本発明のシャンクは、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、或いはウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーで製造することができる。シャンクの硬度は、80〜90の範囲が好ましい。
【0024】
シャンク以外の部材、すなわち、アウトソール、ミッドソール、中底、インソール、アッパー、透湿シート等は、特段に限定されず、当業界で使用さている材料を使用することができる。
【0025】
従って、上記課題を下記の各項に記載した手段により解決することができる。
1.踵対応部から爪先対応部にまで一体に成形された樹脂プレートから成り、踵対応部がクッション機能構造を有し、踵対応部の前端部から爪先対応部までがシャンク機能を有し、アウトソ−ルとミッドソールの間に挿入されるクッション機能付きシャンクであって;
イ。樹脂プレートを、踵対応部の前端部から、爪先対応部へ向かって、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ対応部と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ対応部とに分岐させ、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ対応部を盛り高構造にしたこと、および
ロ。樹脂プレートの踵対応部に、踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の貫通孔を設けたことを特徴とするクッション機能付きシャンク。
【0026】
2.前記1項において、貫通孔が、アウトソール方向に拡開した断面が台形状である。
【0027】
3.前記1または2項において、クッション機能付きシャンクの硬度を80〜90とする。
【0028】
4.主要部材として、アウトソール、ミッドソール、中底、インソール、およびアッパーを含む靴において、前記1〜3項のいずれか1項に記載したクッション機能付きシャンクをアウトソールとミッドソールの間に挿入する。
【0029】
5.前記4項において、クッション機能付きシャンクを、シャンクの踵対応部とミッドソールの踵対応部の裏面との間に、空気、湿気を通し、水は通さない透湿シートを介して、アウトソールとミッドソールの間に挿入する。
【0030】
6.前記4または5項において、ミッドソールの上面に、ミッドソールの爪先対応部から、踵対応部に向けて通気溝を形成し、この通気溝の踵対応部において、ミッドソールの踵対応部の厚さ方向に向けて貫通孔を穿設し、この貫通孔を、シャンクの踵対応部の厚さ方向に穿設した貫通孔と連通させる。
【0031】
7.前記4〜6項のいずれか1項において、中底、およびインソールの厚さ方向に、それぞれ1個以上の貫通孔を穿設する。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載した発明によれば、踵対応部から爪先対応部にまで一体に成形された樹脂プレートから成り、踵対応部がクッション機能構造を有し、踵対応部の前端部から爪先対応部までがシャンク機能を有し、アウトソ−ルとミッドソールの間に挿入されるクッション機能付きシャンクにおいて、(イ)樹脂プレートを、踵対応部の前端部から、爪先対応部へ向かって、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ対応部と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ対応部とに分岐させ、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ対応部を盛り高構造にし、且つ、(ロ)樹脂プレートの踵対応部に、踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の貫通孔を設け、シャンクをアーチの解剖学的構造に対応させ、内側アーチと、外側アーチと、前アーチを、それぞれ支え、補強し、且つ、踵部対応部にクッション機能を持たせたので、運動時に踵が接地するときに踵に負荷される体重より大きな荷重を踵部で吸収することができる。
【0033】
請求項2に記載した発明によれば、貫通孔の断面形状を、アウトソール方向に拡開した台形にしたので、体重を受けて、貫通孔が開く角度が大きくなるので、クッション効果が向上する。
【0034】
請求項3に記載した発明によれば、クッション機能付きシャンクの硬度を80〜90にしたので、適度のシャンク効果と耐久性を得ることができる。
【0035】
請求項4に記載した発明によれば、踵対応部から爪先対応部にまで一体に成形された樹脂プレートから成り、踵対応部がクッション機能構造を有し、踵対応部の前端部から爪先対応部までがシャンク機能を有し、アウトソールとミッドソールの間に挿入されるクッション機能付きシャンクにおいて、(イ)樹脂プレートを、踵対応部の前端部から、爪先対応部へ向かって、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ対応部と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ対応部とに分岐させ、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ対応部を盛り高構造にし、且つ、(ロ)樹脂プレートの踵対応部に、踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の貫通孔を設け、シャンクをアーチの解剖学的構造に対応させたので、内側アーチと、外側アーチと、前アーチを、それぞれ支え、補強し、且つ、踵部対応部にクッション機能をもたせたので、運動時に踵が接地するときに踵に負荷される体重より大きな荷重を踵部で吸収することができ、貫通孔の断面形状を、アウトソール方向に拡開した台形状にしたので、体重を受けて、貫通孔が開く角度が大きくなるので、クッション効果が向上し、クッション機能付きシャンクの硬度を80〜90にしたので、適度のシャンク効果と耐久性を得ることができる。
【0036】
請求項5に記載した発明によれば、クッション機能付きシャンクを、シャンクの踵対応部とミッドソールの踵対応部の裏面との間に、空気、湿気を通し、水は通さない透湿シートを介して、アウトソールとミッドソールの間に挿入するので、雨中で歩行していたり、或いは歩行中水たまりに入ったとしても、水がミッドソールへ浸水するのを防止し、一方、歩行中、靴内に発生する汗が主体の湿気および暖かくなった空気は、ミッドソールへ向けて透過させる。
【0037】
請求項6に記載した発明によれば、ミッドソールの上面に、ミッドソールの爪先対応部から、踵対応部に向けて通気溝を形成し、前記通気溝の踵対応部において、ミッドソールの踵対応部の厚さ方向に向けて貫通孔を穿設し、この貫通孔を、前記シャンクの踵対応部の厚さ方向に穿設した貫通孔と連通させたので、歩行時に、シャンクの貫通孔から透過してくる空気、汗が、前記透湿シートを介して、ミッドソールの爪先対応部の厚さ方向に向けて穿設した貫通孔からさらに上方へ透過することができる。
【0038】
請求項7に記載した発明によれば、中底、およびインソールの厚さ方向に、それぞれ1個以上の貫通孔を穿設したので、中底に穿設した貫通孔と、インソールに穿設した貫通孔と、シャンクの靴底対応部に垂直方向に穿設した貫通孔、ミッドソールの爪先対応部から踵対応部に向けて形成した通気溝、ミッドソールの爪先対応部の厚さ方向に向けて穿設し、前記通気溝と連通する貫通孔が、それぞれ連通し、靴内部の空気と湿気を流動させ、靴外部へ排気する靴内エアーコンディショニング効果を奏功することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、発明を実施するための最良の形態を実施例として説明する。
【実施例】
図1は、本発明の一実施例によるクッション機能付きシャンクの構造を示す説明図である。図1−A、図1−B、および図1−Cは、それぞれ、側面図、上面図、および断面図である。
【0040】
ポリ塩化ビニル樹脂で、平均厚さ3mm、硬度85のクッション機能付きシャンクを製造した。図1−Aの側面図に示したように、本発明のクッション機能付きシャンク1は、シャンク機能部分2とクッション機能部分3が一体に成形されたものである。クッション機能部分3は、丁度踵に対応している大きさである。前アーチ22(横断アーチ)(図3)に沿って盛り高構造5になっている。クッション機能部分3の底面には、クッション機能部分3の厚さ方向に3個の貫通孔4が穿設されている。図1−A、および図1−Cに示したように、貫通孔4の断面は、下方に向けて拡開した台形である。貫通孔4の断面を、下方に向けて拡開した台形にしたので、体重を受けて、貫通孔が開く角度が大きくなるので、クッション効果が向上するようになっている。
【0041】
図1−Bは、実施例のクッション機能付きシャンク1の上面図である。図1−Bに示したように、シャンク部分は、踵対応部の前端部から、爪先対応部へ向かって、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ対応部6と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ対応部7の2個の部分に分岐させてある。このように、シャンク部分を2つに分岐させた構造により、それぞれの部分が、独立して、内側アーチと外側アーチを、それぞれ支え、補強するようになっている。
【0042】
図1−Cは、実施例のクッション機能付きシャンク1を、実際の靴のアウトソール8とミッドソール9の間に挿入した状態を示す部分断面図である。ミッドソール9の踵対応部には、その厚さ方向に3個の貫通孔11が穿設されている。10は、空気と湿気は透過させるが、水は透過させない透湿シートである。クッション機能部分3の厚さ方向に形成された3個の貫通孔4は、透湿シート10を介して、ミッドソール9の踵対応部に穿設された3個の貫通孔11と連通するようになっている。
【0043】
図2は、クッション機能付きシャンク1を靴のアウトソール8とミッドソール9の間に挿入した状態を分解した分解組立て図である。図2−Cに示したように、ミッドソール9の上面には、爪先対応部に、馬蹄形の通気溝12が形成されている。さらに、爪先対応部の幅方向に3本の通気溝13が、通気溝12と連通するように形成されている。さらに、ミッドソール9の爪先対応部から踵対応部に向けて1本の通気溝14が形成されている。通気溝14には、踵対応部分で、厚さ方向に3個の貫通孔11が穿設されている。従って、ミッドソール9の上面に形成された通気溝12と通気溝13は、通気溝14と連通していて、さらに、ミッドソール9の踵対応部に穿設された3個の貫通孔11と連通し、さらに透湿シート10を介して、シャンク1のクッション機能部分に穿設された3個の貫通孔4と連通している。
【0044】
図2−Cは、中底15の斜視図である。図2−Aは、アッパー17の一部破断図である。図2−Cに示したように、中底15には2個の貫通孔16が穿設されている。図2−Aに示したように、インソール18には数個の貫通孔19が穿設されている。
【0045】
従って、本発明のクッション機能付きシャンク1を、透湿シート10を介して、アウトソール8とミッドソール9の間に挿入し、順次、中底15、アッパー17と組み立て製靴し、インソール18を靴内に入れて履用すると、シャンク1のクッション機能部分に穿設された3個の貫通孔4が、透湿シート10を介して、ミッドソール9の踵対応部に穿設された3個の貫通孔11と連通し、さらに、ミッドソール9の上面に形成された通気溝12と通気溝13と通気溝14が連通し、さらに、中底15に穿設された2個の貫通孔16、およびインソール18に穿設された数個の貫通孔19と連通して、靴内にエアーコンディショニングシステムが形成され、歩行、走行時に靴内に発生する暖かい空気や湿気を環流させ、靴外に排気する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のクッション機能付きシャンクは、クッション機能付きシャンクとなる樹脂プレートを、踵対応部の前端部から、爪先対応部へ向かって、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ対応部6と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ対応部7とに分岐させ、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ対応部2を盛り高構造にし、且つ、樹脂プレートの踵対応部に、踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の貫通孔4を設け、シャンクをアーチの解剖学的構造に対応させたので、内側アーチ20と、外側アーチ21と、前アーチ22を、それぞれ支え、補強し、且つ、踵部対応部にクッション機能を持たせたので、運動時に踵が接地するときに踵に負荷される体重より大きな荷重を踵部で吸収することができる。
【0047】
また、本発明のクッション機能付きシャンク1を、透湿シート10を介して、アウトソール8とミッドソール9の間に挿入し、順次、中底15、アッパー17と組み立て製靴し、インソール18を靴内に入れて履用すると、シャンク1のクッション機能部分に穿設された3個の貫通孔4が、透湿シート10を介して、ミッドソール9の踵対応部に穿設された3個の貫通孔11と連通し、さらに、ミッドソール9の上面に形成された通気溝12と通気溝13と通気溝14が連通し、さらに、中底15に穿設された2個の貫通孔16、およびインソール18に穿設された数個の貫通孔19と連通して、靴内にエアーコンディショニングシステムが形成され、歩行、走行時に靴内に発生する暖かい空気や湿気を環流させ、靴外に排気する。
【0048】
従って、本発明のクッション機能付きシャンクは、男性用革靴、女性革靴、各種スポーツシューズ、ジョギングシューズ、ワーキングシューズ等制限されることなく、多種多様な靴へ適用することができ、製靴産業へ資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例によるクッション機能付きシャンクの構造を示す説明図である。
【図1−A】実施例の側面図である。
【図1−B】実施例の上面図である。
【図1−C】実施例の上面図である。
【図2】実施例のクッション機能付きシャンクを靴に挿入した状態を分解した分解組立図である。
【図2−A】アッパーの一部破断図である。
【図2−B】中底の斜視図アッパーの一部破断図である。
【図2−C】ミッドソールの斜視図である。
【図2−D】透湿シートの斜視図である。
【図2−E】シャンクの斜視図である。
【図2−F】アウトソールの斜視図である。
【図3】アーチ構造を示す概念図である。
【図3−A】アーチ構造の概念を示す側面図である。
【図3−B】アーチ構造を示す概念図である。
【図3−C】アーチ構造の上面から見た概念図である。
【符号の説明】
【0050】
1 クッション機能付きシャンク
2 シャンク機能部分
3 クッション機能部分
4 貫通孔
5 盛り高構造部分
6 内側アーチ対応部分
7 外側アーチ対応部分
8 アウトソール
9 ミッドソール
10 透湿シート
11 貫通孔
12 通気溝
13 通気溝
14 通気溝
15 中底
16 貫通孔
17 アッパー
18 インソール
19 貫通孔
20 内側アーチ
21 外側アーチ
22 前アーチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踵対応部から爪先対応部にまで一体に成形された樹脂プレートから成り、踵対応部がクッション機能構造を有し、踵対応部の前端部から爪先対応部までがシャンク機能を有し、アウトソ−ルとミッドソールの間に挿入されるクッション機能付きシャンクであって;
イ。樹脂プレートを、踵対応部の前端部から、爪先対応部へ向かって、距骨、舟状骨、内側楔状骨を越えて第1中足骨に伸長する内側アーチ対応部と、踵骨結節から立方骨を通り第5中足骨に伸長する外側アーチ対応部とに分岐させ、第1中足骨から第5中足骨にかけて伸長する前アーチ対応部を盛り高構造にしたこと、および、
ロ。樹脂プレートの踵対応部に、踵対応部の厚さ方向に、少なくとも1個の貫通孔を設けたことを特徴とするクッション機能付きシャンク。
【請求項2】
前記貫通孔が、アウトソール方向に拡開した断面が台形状である請求項1のクッション機能付きシャンク。
【請求項3】
クッション機能付きシャンクの硬度が80〜90である請求項1又は2のいずれか1項に記載したクッション機能付きシャンク。
【請求項4】
主要部材として、アウトソ−ル、ミッドソール、中底、インソール、およびアッパーを含む靴であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載したクッション機能付きシャンクをアウトソールとミッドソールの間に挿入した靴。
【請求項5】
クッション機能付きシャンクを、シャンクの踵対応部とミッドソールの踵対応部の裏面との間に、空気、湿気を通し、水は通さない透湿シートを介して、アウトソールとミッドソールの間に挿入したことを特徴とする請求項4に記載した靴。
【請求項6】
ミッドソールの上面に、ミッドソールの爪先対応部から、踵対応部に向けて通気溝を形成し、前記通気溝の踵対応部において、ミッドソールの踵対応部の厚さ方向に向けて貫通孔を穿設し、この貫通孔を、前記シャンクの踵対応部の厚さ方向に穿設した貫通孔と連通させた請求項4または5に記載した靴。
【請求項7】
中底、およびインソールの厚さ方向に、それぞれ1個以上の貫通孔を穿設したことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載した靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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