説明

クラゲ類の処理加工法とその利用

【課題】クラゲ類が大量発生し漁業に深刻な被害が発生している。クラゲ類は種やその体躯の部位によって若干異なるがその約95%が水分であり,残り5%が蛋白質等である。触手には刺胞毒を持つがビゼンクラゲとその近縁種が食品材料に利用されている。発生量を人為的に制御するのは至難で本発明では経済行為の材料として利用することで積極的に「まびき」し密度を適切に保つことをねらった。
【解決手段】採捕したクラゲを粉砕して液状あるいは細粒状とし凝集剤によってクラゲ起源の蛋白質,灰分等を銜えて凝集させ家畜の飼料,水棲動物の養殖餌料,農作物の肥料,食品及び生理活性物質抽出の各材料として資源化して利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,家畜の飼料・水棲動物の養殖餌料・人の食品それぞれの加工材料,圃場に使用する果実・花卉・一般農作物の肥料材料あるいはクラゲが持つ生理活性物質抽出の材料を作出するためのクラゲ類の処理,加工法である。
【背景技術】
【0002】
クラゲと呼称されているのは,普通には腔腸動物門の刺胞類亜門のヒドロ虫類に属するものの一部と鉢虫類綱および有櫛板類亜門櫛水母類綱に分類される全部を云い,その種類数は数種の淡水産,汽水産もいるが海産のみで合計130余種を数える。
【0003】
これらの内,主に利用されているのは,食品としてで,その種は海産の鉢虫類綱に属するビゼンクラゲ,エチゼンクラゲとその近縁種で,日本に於いても中国に於いても薬効があるとして薬膳料理の材料としての使用事例もあり,又中国では使用方法と効用の詳細は明らかでないが鬱血,丹毒,風邪,フグ中毒の解毒に薬効があるとして,所謂日本で云う漢方として使用されているとの記載がある。
【0004】
それにしてもクラゲと言う名称でよく知られている割には利用率が低い。一般的にはクラゲと言えばカツヲノエボシ,アカクラゲ,アンドンクラゲ,ハブクラゲ等で代表され触手に毒のある刺胞を持ち,それに触れると刺して人にも危害を加える動物としての認識が強く,「クラゲを食する」と言う会話に「あの刺すクラゲですか」と知るか知らざるかは別にして食していることを忘れてか顔を顰める人の予想以上に多い事からすると,刺胞毒を持ち,人に危害を与えることが利用率の低いことに無関係ではないように推測される。その毒の正体は蛋白質である事は判っているが詳細で正確なことはクラゲの種によって毒の濃度だけでなく毒成分の組成まで異なるのかどうかを含めてよく解明されていない。その理由は物理化学的に非常に不安定であるが為だと言う。このことは調理に際しての加熱により比較的簡単に解毒する事でも又「段落0027」に述べるように温度60℃以上PH4以下で解毒する事の知られていることからも理解できる。
【0005】
その刺胞毒の強弱は種や季節によっても若干ではあるが異なり「段落0003」に述べた食品に加工しているビゼンクラゲや「段落0010,0011」に述べるミズクラゲも刺胞は持つが触れても普通には人は危害を感じない程度である。その強弱はクラゲの摂餌生態と口器の形状や大きさに影響してアンドンクラゲの例では体は小さく最大でも6〜7cmでアンドンのようにやや細長な6面体型であるが口器が大きく約2〜3cmのハゼ類の稚魚が刺胞毒によって麻痺し捕食され体中にとり込まれ蠢いている例はアンドンクラゲの体が透明で外部から透けて良く観察出来ることから屡々観る事が出来,大部分のクラゲはビゼンクラゲ等食品加工種(毒性の弱い種)と同じように仔稚魚を含む動物性プランクトンを主な餌料とする所謂プランクトンフィダ−である。
【0006】
このように刺胞毒を持つことは弱肉強食の世界である海中では自己防衛にも役立っているだろう事も推測できるがこの事についての具体的な事例の記載は見当たらない。
【0007】
なお種や季節によって若干の差はあるが活きているあるいは生鮮なクラゲの体成分はおよそ95〜96%が水分であり,ミズクラゲでは体の部位によって若干異なるが体躯全体での内訳は上記水分の他に蛋白質が1.7、炭水化物0.9、脂質0.0、灰分が2.1の各%であり,他の種においても大同小異で大差はない。
【0008】
ところでビゼンクラゲにおける従来からの加工方法は傘径が1m以上におよぶ大型個体は2分割あるいは4分割するが基本的には未分割で塩漬けにし,その工程で塩の他に明礬を併用することもあり,又予め明礬で処理後に塩を使用する加工業者もいる。その違いは処理技術の伝承経路の違いによるもののようで処理過程においての難易はあるが処理結果において差はないと言う。
【0009】
何れにしても脱水・保蔵が主目的で、脱水が終わると更に乾燥して塩干物として製品化し,利用に際しては真水で塩抜きし,日本では主に中国料理の食材とし中国と同じように調理して食されている。その食品としての優劣は味と云うより食感において種による優劣が若干あると言う。
【0010】
また中国では1980年頃にビゼンクラゲの資源増を目論んで人工生産した稚クラゲ(どの発育段階かの記述はない)の放流を行っているというがその成果の記載はない。この事は中国に於いては人工増殖の対象になる程の価値と需用があると言うことなのであろうが,現在なお継続して放流が行われているかは調査したが定かな答えは出なかった。
【0011】
反面,このような有効利用だけでなく,日本に於いては昭和年代の終わり頃から平成初年頃のようにミズクラゲが大発生し漁業被害に留まらずミズクラゲの事例では主に黒潮の影響海域に於いて,火力・原子力発電所における復水器の冷却水において,海水(海水を復水器における冷却水として使用するために日本では立地が海浜となっている。あるいは逆に立地を浅海の埋め立て可能域や海浜の遊休地等としたために)を冷却水に使用している。
【0012】
それらの発電所では,冷却水が膨大な量であることも手伝ってか1,000重量トン/1日を凌駕する程の大量のミズクラゲが復水器のクラゲ防御網等によって堰き止められ,また別の火力発電所ではクラゲによって復水器に閉塞が起こり,冷却機能を低下させて発電停止の直前まで追い込まれた例もある。これらの発電所ではそれなりの方法によって防除や処理が試行錯誤を繰り返しながら行われてきた。
【0013】
原子力発電所でのクラゲ類による具体的な被害事例はあるようだが詳細な内容までは聞こえてこない。熱源が異なっても蒸気タ−ビンによっての発電機構である限り冷却は必須であり,海水を冷却水に使用すると空気冷却に比較して効率は総合的にもはるかに高いが上記のような障害は火力発電所と同様に原子力発電においても深刻な問題であり火力発電所に比較して単位当たりの冷却水の必要水量が大きいだけにクラゲ類対策は今後において火力発電所以上に重要で深刻な問題を抱含する。
【0014】
かって,火力発電所ではその防除装置や方法が諸々工夫され、現在なお当時と同様な方法で実行されており殆どの火力発電所の事例は対症療法的で基本的に解決されたわけではなく,クラゲ処理方法が適切でないために廃棄物の処理に係わる「法」に触れる恐れがある等の問題を抱え乍らの対応・処理行為が発電という本筋の業務でないという変な認識も強くあって現在もなお進歩が緩慢で従来の方法で継続して行われている例もまだあるようである。
【0015】
ところで昭和年代の終わりから平成初期に掛けて大発生して発電に支障をきたしたミズクラゲに関しては,明確な検証はないが偶々生物の常と言っても良い生態的な増減を繰り返すことの減少期の到来に救われてか,ミズクラゲの発生量が減衰に向かった事もあって現在ではその当時ほど深刻な問題に迄は至っていないようである。しかし生物現象として減衰期に向かったと言う推定が間違っていなければ,生態的には何れ増加に転ずる可能性が充分にあると言うことなので基本的に解決しているわけではないと考えられ次の「段落0016」で述べる大型種を含めその対策を急いでおく事が漁業被害だけでなく安定電力を確保する為の冷却水確保に関しても望まれている。
【0016】
それは極近年,漁業特に対馬暖流域の本州日本海沿岸に設置の定置網において大型クラゲのエチゼンクラゲ,ビゼンクラゲが大量に入網し漁獲減,漁獲物の品質低下,操業障害による損失,漁具(定置網,刺し網,底引き網等の網漁具)の破損,流失等の漁業被害が起きておりその対策が緊急に求められていることである。
【0017】
ところで,大量発生の原因が諸々云われており,その究明努力を否定するものではないが,その研究結果によっての対策は緊急には間に合わない。自然域に於いてその発生量を効果の見込める程人為的にコントロ−ルする事など実際には出来るはずもなく,ミズクラゲの例のように差し当たっては対症療法的な方法以外にはないのかも知れないが効果のある方法の開発が望まれているところである。
【0018】
いずれにしても。現況で問題となっている漁業被害や発電所における復水器に閉塞被害を起こすことが予想される複数種のクラゲ類を本発明では積極的に経済行為の対象として取り込んで利用,すなわち積極的にそれらの資源化を工夫しその結果として被害の起こらない程度まで能率良く「まびき」して棲息密度を下げると言う考えに至った。
【0019】
その為には処理をするだけでなく漁業上においても邪魔者扱いではなく漁獲対象資源として捉えその処理加工コストも低廉に抑え,結果の創出製品はそれなりの高い付加価値の付く製品が求められる事になる。
【0020】
【特許文献1】 クラゲ類に関する多くの既特許出願のうち本特許願の内容がそれらの既出願の内容に抵触する可能性があるかも知れないと考えられるものを選択し,それらについて発明の名称を公開番号を付して下記の通り列挙したが重要部分で抵触する内容の記述は現時点では発見していない。
1.公開番号平6−217737クラゲ類の処理,加工法
2.公開番号平7−292646海洋構築物におけるクラゲの減容化処理方法
3.公開番号平9−121816簡易にもどせる保存クラゲの製造方法
4.公開番号平10−84916クラゲの加工品およびその加工方法
5.公開番号平10−249299くらげの油温脱水処理法
6.公開番号2001−96398クラゲ脱水大量処理装置
7.公開番号2001−191060クラゲ高速脱水処理装置
8.公開番号2003−53303コラゲナ−ゼを用いたクラゲ処理方法
9.公開番号2004−99513クラゲのコラ−ゲン回収方法及びクラゲコラ−ゲン回収システム
10.公開番号2004−243346クラゲのプレス脱水方法及び脱水装置
11.公開番号2007−238465クラゲの酢酸抽出物製造方法及びクラゲのコラ−ゲン由来ペプチド
12.公開番号2006−296402大型クラゲの塩クラゲ製造方法
13.公開番号2006−129730クラゲ加工品およびその製造方法
14.公開番号平09−121816簡易にもどせる保存クラゲの製造方法
15.公開番号平05−276860冷凍クラゲの製造方法及び冷凍クラゲ
16.公開番号2007−51191クラゲ類からのコラ−ゲン回収方法
17.公開番号2008−31106クラゲ類からのコラ−ゲン回収方法
18.公開番号2005−288357クラゲ類粉砕洋ミル
19.公開番号2005−288354クラゲ処理システム
20.公開番号2005−288353クラゲ処理システム
21.公開番号2009−240976クラゲ溶解機クラゲ処理システム及びクラゲ処理システムの制御方法
22.公開番号2009−240930クラゲ処理装置及びクラゲ処理方法
23.公開番号2004−75450クラゲから肥料を製造する方法
24.公開番号2007−197281クラゲから肥料を製造する方法
25.公開番号2007−160154クラゲの洋上処理システム
26.公開番号2006−220379クラゲの乾燥処理システムおよび乾燥処理方法
27.公開番号2006−88035クラゲ処理装置及び処理方法
28.公開番号2006−26624クラゲノ脱水処理方法及び装置
29.公開番号2004−223350水生生物の処理方法および装置
30.公開番号2004−223351水生生物の処理方法および装置
31.公開番号2005−296727水生生物の処理方法および装置
32.公開番号2004−141804水生生物の処理方法および装置
33.公開番号2005−342552クラゲ等の海棲生物の処理方法
34.公開番号2005−289908成体クラゲを殺すための薬剤と成体クラゲを殺すための方法
35.公開番号2005−288355蛋白質分解及びクラゲの処理方法
36.公開番号2005−289910微小物質浮上方法とクラゲ分解微小物質浮上方法
【非特許文献1】 探索したが抵触する様な内容の記述や主張は見聞できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
クラゲ類は段落「0006」に述べたように水分がおよそ95〜96%を占め残りの4〜5%を蛋白質,炭水化物,脂質,灰分等が占める極めて水分の多い動物である。従って当然であるが加工しても歩留率が低いために一般的には経済行為の対象として資源化が困難で,この事は現在の食品加工以外ではその状況は変わっていない。
【0022】
また水分以外の5%内外でしかない上記の蛋白質,炭水化物等を共に凝集して水分と分別するには技術的に幾つかの方法はあるが,変質・腐敗が速いので低コストで大量の材料を短時間で効率よく処理することを考慮しなければならない。その為には粉砕して脱水分離,ここではミキサ−,擂潰機のうちミキサ−を主に使用し液状あるいは細粒状にした。その作業過程で空気を吸い込みその事によって酸化して色調や悪臭とまでは云えないが臭気に酸化臭が加わって変化するので家畜の飼料,水産動物の飼育餌料あるいは加工食品,生理活性物質抽出の材料に使用するについては蛋白等の臭気を含む成分変性防除が重要な課題となる。
【0023】
また,「段落0004」において,一般的にはクラゲと言えば人を刺して危害を加える動物として認識されている事も資源化の遅れたことに無関係でない事は既に述べたが,そのクラゲ毒は「段落0004」に記述した種に於いて強くよく知られているが現在食品として利用され本発明の切っ掛けの一つともなった大量発生したビゼンクラゲやその近縁種,発電施設に害をもたらした事例のあるミズクラゲに於いても強くはないがクラゲ特有の刺胞毒を持ち本特許での製品の使途ではその強弱は別にして活性な毒を含むことは加工の目的からすると好ましくなく避けなければならないのでその無毒化(解毒)が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の課題を低コストで速やかに大量処理する事を達成するためにこの発明ではクラゲを粉砕して液状あるいは細粒状とし,その工程に於いて空気を吸い込み(巻き込み)実際には空気中の酸素がその過程で遊離酸素として取り込まれそれによる酸化を防ぐために不活性ガスを密閉した環境下(容器内)で粉砕作業を行いその色調,臭気については官能検査においては両者共に変化なくこの事については一応解決した。
【0025】
この発明の目指すところは家畜の飼料,養殖対象の水棲動物の養殖餌料,人の食品あるいはクラゲが持つ生理活性物質抽出の各材料の作出であるだけに合成の無機高分子凝集剤の使用は好ましくない。従ってここでは表1で示したように食品でもある大豆カゼイン,あるいは粗製であっても同カゼインを充分に含み作用にも大差がなく安価な大豆油搾出残滓所謂大豆滓を製粉し,水で煮沸溶解してクラゲの蛋白質等や生理活性物質抽出を主目的とする場合
【表1】

は温度60〜70℃,主な目的の違う例えば作出した凝集物の含む水分を少なくすことによる作業性の向上を計るには90℃以上の高温環境下で凝集反応させると表1の標本1と2との比較で判るように高温において含水率を少なくできるので,硫酸マグネッシュ−ムあるいはそれを含む「ニガリ」等の反応剤によって高温で析出凝集させればクラゲ起源の蛋白その他を銜えて凝集し,水と分離しその時の凝集物に含む水分の含水率は反応温度の高い標本1において30%と小さい。標本2において45%すなわち標本1において水分を除く凝集物の実重量(73.1g)は標本2(重量67.8g)に比較して5.3g約8%重く凝集物が硬い。また、表1に標本3として付記したようにミルクカゼインを凝集剤としレンネットを反応剤として使用しても当然凝集反応は得られ,高コストを厭わなければ目的を達することはできる。
【0026】
なお水分以外の蛋白質等の占める比率が小さく作出する各製品材料の少ないことによる作業の至難性は大豆カゼイン(大豆油搾出残滓)を凝集剤として利用することによってその凝集剤その物も優れた飼・餌・肥料材料となり,その量は普通に使用する凝集剤に比較して量が多いのでこの事は寧ろ作業の難易度の向上に繋がり,また動物性,植物性蛋白を混合することによる良い相乗作用が期待できる。
【0027】
ところで,クラゲ類の刺胞毒の成分組成は現在なおよく判っていないがエチゼンクラゲの毒性成分は温度とPHに対して不安定で温度60℃以上,PH4以下であれば何れにおいても単独に毒性が消失すると言う実験結果がある。すなわち解毒する。また過去におけるクラゲ類の加工食品としての長い歴史の中で調理の際に加熱するためか刺胞毒による事故の記録や報告はないので,解毒が加熱によるもので在れば本発明では原則的には第一・第二工程の何れかあるいは両工程において蛋白質等や含む生理活性物質が変性しないとされる温度60〜70℃て加温処理を短時間行った後に減圧乾燥すればよい。
【0028】
しかし,ここで云う各製品材料は可能な限り含む水分の比率は小さい方がよい,その為には凝集作用を高温度で行う方が有利なので目的によって凝集反応作業時の温度を意図的に調整した。すなわち生理活性物質抽出目的,食品材料の時は60〜70℃,飼・餌・肥料の生産で作業性の向上を特に狙う時は90℃以上において凝集作業を行った。その結果は既に表1に示した通りである。
【発明の効果】
【0029】
(1)活クラゲあるいは生鮮クラゲに含まれる含水率95%前後の水分を凝集脱水によっておよそ30〜45%に低減でき,この事はその後の作業工程すなわち減圧乾燥等が容易になり,水分が多くて捕獲しても処理が間に合わず放置されて腐敗臭,害虫の発生等の公害をもたらし,また海へ安易に戻すとそれが生鮮であってもまた腐敗分解汁等であればなおのこと廃棄物処理法に抵触する恐れのあることが解消でき勿論資源化は収入の糧となる効果が望めるものである。
(2)処理や加工の装置化が可能なので非常に効率化ができる。
(3)2次製品生産,生理活性物質抽出の前処理として有効である。
(4)漁業だけでなく,冷却水を必要とする発電所の稼働障害となっているクラゲ類を経済行為の対象として積極的に導入利用することによって上記の障害を軽減あるいは排除する効果が期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明による実際を図1として示した流れ図によって説明する。
【0031】
漁場あるいは発電施設において収集されたクラゲ類に混ざる夾雑物(プラスチック製シ−ト類やその細片・廃容器,陸起源の植物・木片,海産の魚類・海藻などの動植物とそれらの細片)の分別を兼ねてクラゲ類については,特に「段落0004」に述べた毒性の強いとされている種は分別し適正に処理して廃棄する。
【0032】
、第1工程として凝集剤・反応剤の使用量を決めるために▲1▼クラゲの秤量を行い▲2▼の粉砕機に収容し,粉砕機の蓋を密閉して本特許において最も重要な内容である不活性ガスを注入する為にその蓋に設けたガス注気孔2個(1号と2号),排気孔1個(1号)の合計3個のうち注気孔1号と排気孔1号を開孔し,本来はその注気孔1号から不活性ガス「アルゴン,ヘリュ−ム,水素,窒素,炭酸の各ガス等」の何れかのガスを充填するが酸素を完全に遮断したいことからその前操作として注気孔1号を開孔し不活性ガスの内単価が低廉で入手し易いここでは「窒素ガス」を注気孔1号から予め注入し粉砕機内に既存する空気(酸素)をより低廉に排気孔から大気中へ押し出して排出拡散させた後,その1号注気孔を閉じ排気孔は開いたまま本命の不活性ガスを注気孔2号からここでは「アルゴンガス」を注入した。その注入によって空気を追い出した「窒素ガス」を再び押し出してそれが完了したことを確かめて後注気孔2号と排気孔1号を共に閉じる。
【0033】
次に不活性ガスここではアルゴンを充填した粉砕機(ミキサ−)を稼働させるがこの粉砕機は機構的には料理用のミキサ−を産業規模へとスケ−ルアップすることを想定しているが,差し当たっては1.5リッタ−容量の料理用において取り外しが容易でしかもガスが漏れないように固定密閉出来る蓋とその蓋に不活性ガスの注・排気に必要である開閉が自由で容易な注気孔2個(1号と2号)と排気孔1個(1号)を工作付加したものである。なお擂潰機についても不活性ガスに係わる機構は上記ミキサ−と同じ機能を持たせた。
【0034】
▲3▼において高速回転でクラゲ類を粉砕する。ここではミキサ−を使用した例で述べるがその処理能力にもよるがおよそ8〜10分の運転でほぼ液状となり目的は達せられる。細粒状には3〜5分運転で達する。但し量的規模によって処理所要時間は延伸する。擂潰機においては液状にするのに約40〜50分を要した。
【0035】
次に凝集専用容器▲4▼に移収しPHを7前後に調整し,目的に応じて温度を▲5▼60〜70℃又は90℃以上に加温するがここでの凝集剤は大豆油搾出残滓を製粉し水で煮沸して後,水分が50%になるように調整した。ここで云う凝集剤を所定の温度60〜70℃に加温,あるいは90℃以上に加温した状態でクラゲの水分を除いた蛋白質等の推定量のおよそ60%に相当する30gを含む凝集剤60g(水分との合計重量)を標本1kgに添加し良く攪拌した後更に水に飽和溶解させておいたニガリ溶液を▲5▼’反応剤として標本+凝集剤=(1000g+60g)=1.06kgに対して5〜12mlを万遍なく添加しながら緩やかに容器中央に寄せるように攪拌した。▲6▼間もなく凝集が始まり数分後に沈澱又は浮上が始まり水との分離が明確に認められるようになる。ここで第1工程を終了し,次の水との▲7▼分別専用器に移収する。
【0036】
第2工程として▲7▼定法の遠心分離あるいは濾過分離によって更に水分と分別するが,ここでは圧搾濾過分離によった。次に▲8▼定法の加熱減圧乾燥あるいは冷凍減圧乾燥法によって飼料・餌料・肥料,食品,生理活性物質抽出の為の各材料となる水分20〜5%の製品(各材料)を作出するがここでは加熱減圧乾燥によって処理し▲9▼水分約5〜20%の製品(材料)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】クラゲ類の処理加工法とその利用についての第1,第2処理工程のフロ−チャ−トである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象のクラゲ類を不活性ガスを充填,密閉したミキサ−あるいは擂潰機において定法で粉砕し液状あるいは細切して細粒状とし,その後にPHと温度を調節し凝集剤を加え良く攪拌した後次に反応剤を満遍なく加え乍ら容器中央に寄せるように静かに混ぜ,クラゲの体組織を構成し,体躯全体で水分を除き4〜5%に相当する蛋白質,炭水化物,脂質,灰分をそれらに含む生理活性物質と共に一括して凝集剤に銜えさせて析出・凝集させ,その後沈澱又は浮上分離,遠心分離,濾過分離の何れかの定法あるいはこれらの組み合わせによって体躯全体で95〜96%に相当していた水分と大別し、更に加熱減圧あるいは冷凍減圧して水分20〜5%程度まで乾燥するこれら一連の操作工程,特に不活性ガス中で粉砕することを特徴としたクラゲ類の処理,加工法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−167176(P2011−167176A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52331(P2010−52331)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(509104942)
【Fターム(参考)】