説明

クラスタリングを使用して、マルチパラメータ患者監視及び医療データにおける重要な傾向を検出する方法

生理的データ分析コンポーネント10は、個人の状態を決定する。該生理的データ分析コンポーネント10は、個人の複数の異なる生理的パラメータを受信する入力コンポーネント12を含む。生理的データ分析コンポーネント10の分類コンポーネント20は、これらのパラメータを2又はそれより多くの状態に対応する複数の領域を有する多次元空間にマッピングする。分類コンポーネント20は、前記生理的パラメータがマッピングされた領域に基づいて、個人の状態を決定する。生理的データ分析コンポーネント10の出力コンポーネント24は、個人の状態を、ユーザの生理的データ分析コンポーネント10に伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者監視及び診断システムに関する。本発明は、個人の生理的状態を決定する及び/又は個人のその後の生理的状態を予測するために、多次元空間において複数の生理的パラメータを分析することに対して特定の用途を見いだす。
【背景技術】
【0002】
患者は、心拍数、血圧、血中酸素レベル、中核体温、心臓の電気的活動等のような様々な生理的データを連続的に又は周期的に測定する複数の患者監視装置に通常接続される。このデータ及び血液分析、骨塩分析、排泄物(尿、粘液等)分析、ホルモン分析等からの他のデータから、臨床医はしばしば患者の状態を決定する。臨床医は、1以上のありがちな不安定な状態(例えば敗血症、膵炎、肺水腫等)を識別することを含む、患者の状態が不安定な状態(例えば状態が下り坂である)又はある状態のままであるか、又は(例えば状態が改善している)状態になっているかどうかを予測するためにもこのデータを使用する。
【0003】
患者の状態を決定する従来技術は、生理的データの線形組合せを閾値とすることを含む。例えば温度は、「正常」の温度の範囲と比較され得、脈拍は、「正常」な心拍数と比較され得る等である。このようなシステムは、Acute Physiology and Chronic Health Evaluation(APACHE),Simplified Acute Physiology Score(SAPS),Pediatric Risk of Mortality(PRISM),Pediatric Index of Mortality(PIM)等を含む。しかしながら、生理的データは、通常非線形の態様で相互作用する。線形方法に基づくシステムは、個人パラメータ又はセットのパラメータの絶対値に関連して患者の状態のより良い表示としばしばなるこれらの相互作用を考慮しない。更に、これらのシステムは、通常生理的データにおける傾向を分析しない。生理的傾向を分析するシステムは、一般に個人のパラメータを分析するのみである。例えば心電図(ECG)モニタは、もともと長期間ECG信号を分析するのみである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、長期間マルチパラメータの傾向を分析する非線形の方法は、非常に複雑且つ計算的に解決困難になりがちである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施例において、個人の状態を決定する生理的データ分析コンポーネントが図示される。生理的データ分析コンポーネントは、個人の複数の異なる生理的パラメータを受け取る入力コンポーネントを含む。生理的データ分析コンポーネントは、2以上の状態に対応する複数の領域を有する多次元空間にこれらのパラメータをマッピングする分類コンポーネントを更に含む。分類コンポーネントは、生理的パラメータがマッピングされる領域に基づいて、個人の状態を決定する。生理的データ分析コンポーネントの出力コンポーネントは、個人の状態をユーザの生理的データ分析コンポーネントに伝える。
【0006】
一つの利点は、複数の生理的パラメータから個人の現在の状態を決定する事を含む。
【0007】
他の利点は、異なる期間において得られる生理的パラメータの複数のセットから、個人の将来の状態を予測することにある。
【0008】
他の利点は、個人の将来の状態を推測するために、時間とともに複数の生理的パラメータを傾向付けることにある。
【0009】
更なる利点は、好ましい実施例の詳細な説明を読み、理解すると、当業者には明らかになるであろう。
【0010】
本技術は、様々な要素又はステップ及びその様々な組合せの形態を取ることができる。図面は、選択された実施例の例示的なものに過ぎず、本発明を制限するものとしてとられるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、個人の現在の状態を決定及び/又は個人のその後の状態を予測するため、多次元空間における生理的データを分析する生理的データ分析コンポーネント10を図示する。適切な生理的データの例は、制限されないが、心拍数、血圧、血中酸素レベル、中核体温、心臓の電気活動、白血球数、ホルモンレベル等を含む。個人の状態を決定及び予測するために、安定状態及び不安定状態、例えば敗血症が、多次元空間内でモデリングされる。好ましい実施例において、このことは、特定の状態(安定及び不安定)を示す生理的パラメータを多次元空間にマッピングし、したがって多次元空間内のこれらの領域をラベル付け(又は重症度、すなわち重症度測定基準に割り当てる)ことにより達成される。個人の現在の状態を決定するため、個人からの生理的パラメータが多次元空間にマッピングされる。個人の状態は、少なくとも部分的に、生理的パラメータがマッピングされる領域に基づいて決定される。将来の状態を予測するため、長期間に渡って得られる個人の複数のセットの生理的パラメータは、多次元空間にマッピングされる。2又はそれより多くのマッピングに基づく傾向は、個人の将来の状態を推測するために使用される。
【0012】
分析コンポーネント10は、心拍数、血圧、血中酸素レベル、中核体内温度、心臓の電気活動、白血球数、ホルモンレベル等を表すパラメータのような生理的データを受け取る入力コンポーネント12を含む。一例において、入力コンポーネント12は、生理的データをセンシングし、該センシングされた生理的データを、入力コンポーネント12を通って分析コンポーネント10に伝える1又はそれより多くの生理的監視装置(例えばECGモニタ、血圧モニタ、サーモメータ等)に(例えばデータポートを介して)結合される。このような生理的データが、生データ又は処理されたデータになり得ることは理解されるべきである。更に、又は代替として、入力コンポーネント12は、インターネットを含むネットワークを介して生理的データを受信するための有線及び/又は無線のネットワークコンポーネント(図示略)を含む。例えば入力コンポーネント12は、ボディエリアネットワーク(BAN)、データベース、サーバ、生理的データモニタ、コンピュータ、他の生理的データ分析コンポーネント、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、email、メッセージストレージ等にあるセンサから生理的データを受け取ることができる。更に、又は代替として、生理的データを分析コンポーネント10に移送するために使用され得るポータブルストレージ(例えば様々なタイプのフラッシュメモリ、CD、DVD、光ディスク、カセットテープ等)を受けるポートを含む。更に、又は代替として入力コンポーネント12は、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン、マイクロフォン、又は他の入力装置に取り付けられ得、このような装置を通じて例えばユーザから生理的データを受け取ることができる。
【0013】
処理コンポーネント14は、入力コンポーネント12を制御する。処理コンポーネント14は、入力コンポーネント12が生理的データを受け取る周波数を決定するために、構成コンポーネント16から構成にアクセスすることができる。該周波数は、来歴的活動、可能性、推定、ユーザ識別情報等に基づいてユーザにより規定及び/又は自動的に決定され得ることを理解されるべきである。一例において、該構成はポーリング周波数を規定し、入力コンポーネント12は、生理的データが利用可能かどうかを決定するため、他の装置(例えば監視装置、コンピュータ、データベース等)をポーリングする。このようなポーリングは、ユニキャストを介して特定の装置へ、マルチキャストを介してグループの装置へ、及び又はブロードキャストを介して、分析コンポーネント10と通信する許可及び構成部品を有するいかなる装置へとなり得る。他の例において、構成は、生理的データが利用可能でない場合に分析コンポーネント10がアイドル又はスリープ状態に入り、生理的データが利用可能になる場合にウェイク状態に入るべきであることを決定し得る。生理的データをもたらす装置は、通知を送信し、分析コンポーネント10が復帰し応答する(例えば次に進み、データを送信する若しくはどのデータも送信しない等)ために待つか、又は前記装置は、単に生理的データを発することができる。
【0014】
処理コンポーネント14は、受信された生理的データを記憶コンポーネント18に記憶する。記憶されたデータは、生データ及び/又は処理されたデータを含み得、個人の識別情報、タイムスタンプ、個人の医療履歴、あるタイプのデータ(例えば温度、血圧等)、データのソースの識別情報等のような情報と関連付けられ得る。更に又は代替として、外部記憶装置(図示略)が使用される。例えば外部記憶装置は、より大きなボリュームの記憶装置を供給するために使用され得る。他の例において、外部記憶装置は、分析コンポーネント10の設置面積及び/又は記憶装置要件を減少させるために使用され得る。他の例において、外部記憶装置は、冗長バックアップシステムとして使用される。
【0015】
構成コンポーネント16は、処理コンポーネント14がデータをどのように処理すべきかについての命令も含む。例えば命令は、特定の分析に使用するために、どのタイプのデータ(例えばECG、温度、血液分析等)か、を示すことができる。例えば、ユーザは、処理時間を低減させるために分析されるタイプの数及び/又はデータのタイプを制限することを決定し得る。他の例において、ユーザは、個人の状態の決定にほとんど又は全く価値を提供しないと考えられる特定のタイプのデータの使用を軽減することを望み得る。前記命令は、特定の分析に使用する複数のデータ点も示し得る。例えば該命令は、現在又は将来の状態を決定するためにデータを使用するより前に、一週間分のデータがキャプチャされるべきであると示し得る。一度この量のデータが得られると、処理コンポーネント14はデータを取り出し、分析する。
【0016】
分類コンポーネント20は、受け取られる生理的情報に基づいて、個人の現在及び/又は予想される将来の状態を決定する。上述のように、このことは、多くの個人からの多次元空間に特定の状態を示す生理的パラメータをマッピングするとともに、これらの領域をラベリングすることにより達成され得る。現在の個人からの生理的パラメータは、ラベリングされた多次元空間にマッピングされる。例えば「正常」、又は安定状態を表す生理的データは、多次元空間内の領域を規定するために使用され得、個人は、自身の生理的データがこれらの領域内にある場合「正常」と推定される。「異常」又は不安定状態を示す生理的データは、多次元空間内に不安定な領域(例えば敗血症)を規定するために使用され得る。個人は、自身の生理的データが入る領域に関連付けられる状態を有するとして推定される。一例として、敗血症を示す生理的パラメータは、多次元空間内の敗血症としてラベリングされる1又はそれより多くの領域にマッピングされ得る。個人の生理的データがこれらの領域のいずれかにマッピングされる場合、当該個人は、敗血症を有しそうであると推定される。異なる状態に対する領域が重なり得ることが理解されるべきである。このような状況において、個人は、1又はそれより多くの状態と関連付けられそうであるとして推定され得る。更に分析は、可能である場合、起こり得る状態の数を低減させるために実行され得る。
【0017】
生理的パラメータのその後の測定は、好ましくは個人の将来の状態を予測することを容易にするようにマッピングされる。例えば、異なる期間に得られる2又はそれより多くのマッピングに基づく傾向は、個人の将来の状態を推定するために使用される。例えば個人が「安定」領域のままでいる、「安定」領域から「不安定」領域に移動する(例えば健康の衰え)、「不安定」領域のままでいる、「不安定」領域から他の「不安定」領域に移動する、及び「不安定」領域から「安定」領域に移動する(例えば健康の改善を示す)かどうかを決定するために、前記傾向が使用される。一例として、個人の生理的データの傾向が、敗血症領域への進行を示す場合、個人が敗血症を発現する又はしそうであることを推定され得る。
【0018】
傾向付けるために使用されるデータ点は、構成コンポーネント14により決定される。例えば、生理的データが毎日受信されるとともに記憶される場合、構成コンポーネント14は、各々の日にデータ点を推定し得る。もちろん他の時間の増分、例えば毎時間も考慮される。各々のデータ点(すなわち各々の日からのデータ)の間にベクトルが生成され、複数の日又はデータ点による結果としてのベクトルは、個人の将来の状態を推定する。更に又は代替として、各々の個人のベクトルは、患者の将来の状態を決定するために分析される。更にデータ点は、外挿を通じて将来の状態を予想するように使用され、当該外挿は、その後測定される生理的パラメータのマッピングを予測するために使用される。
【0019】
データのタイプ及びソースに依存して、各々の期間内に得られるデータは異なり得る。例えば温度は、直腸プローブを通じて連続的に測定され得、血圧が、非侵襲性技術を通じて毎時間測定され得、白血球数は、毎日決定され得る等である。このようなデータは、様々に増やされ得る。例えば温度は、単一の日を通じた複数の平均を含む、1日又はいくらかの時間のサブセットに渡る平均であり得る。例えば温度は、時間毎に平均され、分析の間、毎時間の血圧測定とともに使用される。他の例において、温度及び血圧は、一日に渡って平均され、該平均は、分析の間、日々の白血球数とともに使用される。
【0020】
分類コンポーネント20は、好ましくは、多次元空間内の領域にラベリングするために既知の状態を示すデータの組合せに基づいて、及び/若しくは測定された物理パラメータを多次元空間にマッピングするとともに、患者の状態をラベリングするか、又は重症度の測定基準を割り当てるために生理的データに基づいて、1以上の分類又は回帰アルゴリズムを実行する。適切な技術、アルゴリズム、アプローチ、方式等は、神経ネットワーク(例えば多層パーセプトロン、放射基底関数)、エキスパートシステム、ファジー理論、サポートベクターマシン、ベイジアンネットワーク等の1又はそれより多くを使用することを含む。更に、マッピングは、1以上のルックアップテーブル及び/又は多次元空間を表す多項式の展開を通じてなされ得る。更に、分類コンポーネント20は、先験的な知識、様々なクラスタリング技術(例えばk-means法、k-medoids法、階層化法、期待値最大化法(EM))、確率的及び/若しくは統計ベースの分析並びにパターン認識技術又は使用される特定の分類子と関連付けられる技術(例えば多層パーセプトロン用の逆伝播)を含む様々な方法を使用して、発展又は訓練され得る。トレーニングアルゴリズムは、既知の不安定な状態及び関連付けられるパラメータ、既知の安定な状態及び関連付けられるパラメータ、分析等の結果、通常安定状態と関連付けられるパラメータの範囲を使用するであろう。
【0021】
メッセージングコンポーネント22は、分析コンポーネント10が臨床医、アプリケーション、装置、ベッドサイドモニタ等に通知する機構を備える。例えば構成コンポーネント16は、個人が安定状態(例えば正常、既知の状態等)から不安定状態(例えば生命の危機、異常等)に移行する場合、分析コンポーネント10は、通知を送信するのみであるべきであると示し得る。そのようなものとして、分析コンポーネント10は、個人が不安定になっているとき、監視装置と関連して実行及び/又は続いて生理的データを処理し、及び1以上の臨床医に通知することができる。他の例において、構成コンポーネント16は、個人が不安定状態から安定状態に移行している場合、分析コンポーネント10が通知を送信するのみであるべきであることを示す。更に他の例において、構成コンポーネント16は、分析コンポーネント10が、ある不安定状態から他の不安定状態への移行を含めて、いかなる状態の変化に対しても通知を送信するのみであるべきであることを示す。メッセージングコンポーネント22は、このような通知を供給するため、様々な通信方式を使用することができる。例えばメッセージングコンポーネント22は、ベッドサイド又は中央監視局において、可聴式及び/又は視覚的アラームをトリガする。他の例において、メッセージングコンポーネント22は、従来の電話、携帯電話、ポケベル、email、PDA等の1以上を通じて臨床医に通知する。出力コンポーネント22は、分析コンポーネント10が収集及び/又は処理されたデータ及び/又は結果を臨床医、アプリケーション、装置等に伝えることを可能にする。
【0022】
図2は、生理的分析コンポーネント10が使用され得るコンピューティングシステム26を図示する。コンピューティングシステム26は、実質的に、プロセッサを有するいかなるマシンでもあり得る。例えばコンピューティングシステム26は、ベッドサイドモニタ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、個人の1以上の生理的状態を測定する装置等であり得る。分析コンポーネント10は、コンピューティングシステム26と関連して、ハードウェア(例えばドーターボード若しくは拡張ボード)、及び/又はソフトウェア(例えば1以上の実行アプリケーション)で実施され得る。
【0023】
コンピューティングシステム26は、様々な入力/出力(I/O)コンポーネント28を含む。例えばコンピューティングシステム26は、キーボード、キーパッド、マウス、デジタルペン、タッチスクリーン、マイクロフォン、無線周波数信号、赤外線信号、ポータブル記憶装置等の1又はそれより多くから情報を受け取るインタフェースを含む。コンピューティングシステム26は、提示するためのインタフェースも含む。例えばコンピューティングシステム26は、様々なプリント、プロット、スキャン等の装置へのインタフェースを含む。コンピューティングシステム26は、情報を伝えるインタフェースを更に含む。例えばコンピューティングシステム26は、有線及び/又は無線ネットワークインタフェース(例えばイーサネット(登録商標)等)、通信ポート(例えばパラレル及びシリアル)、ポータブル記憶装置等を含む。プレゼンテーションコンポーネント30は、データを表示し、ユーザに入力を促し、ユーザと相互作用する等のために使用される。適切なディスプレイは、液晶、フラットパネル、CRT、タッチスクリーン、プラズマ等を含む。また、デンジャーライト又は音声アラームが鳴らされ得る。
【0024】
例として、I/Oコンポーネント28は、モデルを生成し、個人の生理的パラメータを該モデルにマッピングするために使用される生理的データを受け取る。このデータは、分析コンポーネント10に伝えられ、上述のように多次元モデルにマッピングされる。該モデルは、生理的パラメータに基づいて特定の状態と関連付けられる領域を規定する。該領域は、したがって、特定の状態(例えば敗血症)を含む安定若しくは不安定としてラベリングされるか、又は重症度に基づいて価値を割り当てられる。代替として、一度適切なマップが決定されると、該マップは、分析装置に直接ロードされる。個人の現在の状態は、個人の生理的パラメータを多次元空間内に規定される1又はそれより多くの領域にマッピングし、対応する状態のラベルを得ることにより決定される。将来の状態は、長期間に渡って個人の生理的パラメータを傾向付け、該傾向から将来の状態を推定することにより予測される。モデル、個人の点、及び/又は結果は、プレゼンテーションコンポーネント30を介して提示及び/又はI/Oコンポーネント28を通じて臨床医、アプリケーション、装置等に伝えられ得る。
【0025】
図3は、生理的分析コンポーネント10が独立した装置である一例を提供する。この例において、分析コンポーネント10は、入力/出力(I/O)コンポーネント28を含み、該I/Oコンポーネントは、他のコンポーネントから情報を受け取る及び/又は他のコンポーネントへ情報を伝えるために使用され、プレゼンテーションコンポーネント30に接続される。上と同様に、I/Oコンポーネント28は、モデルを生成し、個人の生理的パラメータを該モデルにマッピングするために使用される生理的データを受信し、結果及び/又はデータを伝え、プレゼンテーションコンポーネント30は、結果及び/又はデータを提示する。分析コンポーネント10は、上で詳細に述べられているように、多次元空間内の安定及び不安定の領域を規定し、個人の状態及び/又は将来の状態を決定するために、生理的パラメータの1以上のセットをマッピングする。
【0026】
図4及び5は、個人の現在及び/又は将来の状態を決定するための非制限的な例を図示する。これらの例では、状態は、敗血症である。しかしながら、実質的にいかなる状態、安定又は不安定もN次元空間にマッピングされ得ることが理解されるべきである。敗血症の発病を検出するのに適切なパラメータは、制限されないが、体温、心拍数、呼吸数、収縮期血圧、及び白血球数を含む。敗血症を示す例示的なパラメータ値は以下の通りである。
体温(T):>38℃、又は<36℃
心拍数(HR):>90拍/分
呼吸数(RR):>20回/分、又はPaCO2<32mmHg
収縮期血圧(SBP):<90mmHg、又は平均動脈圧<65mmHg
白血球数(WBC):>12000又は<4000細胞/マイクロリットル
【0027】
WBCのようなパラメータは、様々な構成するコンポーネントに更に描写され得、当該コンポーネントは、以下の「正常」な範囲と関連付けられ得る。
好中球:50乃至70%、又は7.4乃至10.4×1000/cu.mm
リンパ球:20乃至30%
単球:1.7乃至9%
好酸球:0乃至7%
好塩基球:<1%
【0028】
図4は、N次元空間内の領域の部分を図示し、Nは1以上の整数であり、上述の基準のサブセットに基づいて敗血症を示す。明確にするため、上述の基準の3つ(WBC,T,及びSBP)のみが図示される。しかしながら、異なる基準を含むより多く、同じ、又はより少ない基準の他の組合せが意図されることは、理解されるべきである。図4において図示されるように、白血球数は、1次元を表し、温度は、別の次元を表し、収縮期血圧は、更に別の次元を表す。いかなるパラメータに対する特定の軸も、任意か又はそうでなくてもよい。
【0029】
上述の範囲を使用して、敗血症を示す複数の領域100,102,104、及び106が、N次元空間内に規定される、ただしこの例ではN=3。例示的な目的のため、領域100乃至106は、直方体のボリュームで図示される。しかしながら、領域100乃至106は、様々に形成され得ると理解されるべきである。例えば適切な形状は、球形、楕円体、不規則体等を含む。更に、複数の状態(安定及び他の不安定)は、N次元空間内の1以上の領域内に規定され得、このような領域は重なってもよいし、又は重ならなくてもよい。したがって、N次元空間内の特定の領域は、敗血症か、敗血症及び1以上の他の不安定な状態か、少なくとも1つの他の不安定な状態か、又は安定状態を示し得る。
【0030】
個人の現在の状態は、個人と関連付けられる類似のパラメータを分析し、パラメータのセットをN次元空間にマッピングすることにより決定される。パラメータが、敗血症としてラベリングされる領域にマッピングされる場合、個人は、敗血症を有しそうであると推定される。パラメータが安定(図示略)としてラベリングされる領域にマッピングする場合、個人は安定でありそうだと推定される。パラメータが1より多くのラベルをもつ領域(重なっている領域)にマッピングする場合、個人は1又はそれより多くの状態(図示略)と関連付けられそうだと推定される。N次元空間におけるいかなる点に対しても、状態の可能性又は重症度を表すために、測定基準が割り当てられ得る。
【0031】
図5は、N個の生理的パラメータの1又はそれより多くをトラッキングし、N次元空間内のどの領域にパラメータが移動しているかを決定することにより、個人の将来の状態を予測する非制限的な例を図示する。この例において、明確さのため、上のパラメータの2つ(WBC及び温度)のみが時間に関して図示される。しかしながら、異なる基準を含むより多く、同じ、又はより少ない基準を持つ他の組合せが意図されることも理解されるべきである。
【0032】
好ましい実施例において、次の時間の増分でのN次元空間内の1以上の移動に基づいて、個人が1以上の特定の状態に関連付けられる可能性を決定するために、時系列分析が使用される。この例において、6日間に渡る個人の状態は以下のように図示される。第1日目(「DAY1」)、個人のN個のパラメータがN次元空間の点112にマッピングする。第2日目(「DAY2」)、個人のN個のパラメータはN次元空間の点114にマッピングする。第3日目(「DAY3」)、個人のN個のパラメータはN次元空間の点116にマッピングする。第4日目(「DAY4」)、個人のN個のパラメータはN次元空間の点118にマッピングする。第5日目(「DAY5」)、個人のN個のパラメータはN次元空間の点120にマッピングする。第6日目(「DAY6」)、個人のN個のパラメータはN次元空間の点122にマッピングする。
【0033】
次の時間の増分、この例においては1日において、個人の状態の予期される重症度は、N次元空間における何れかの点の重症度の評価基準と、個人が次の時間増分において前記空間の前記領域にいるであろう可能性、又は信頼性との積をとることにより決定され得る。このことは、好ましくは時系列分析を通じて達成される。使用される特定の時系列分析アルゴリズムは、問題の性質又は他のものに基づき得る。一例において、従来の線形モデル、例えば自己回帰移動平均モデル(ARMA)が使用される。他の例において、非線形モデル(例えば時間の枠を使用するニューラルネットワーク、フィードバックを有する反復ニューラルネット等)が使用される。
【0034】
期間内の次の点を予測するために使用される複数の点は、ユーザにより選択され得る。各々の時間のステップは、好ましくは、最近の時間ステップベクトルのセットが、次のベクトル(例えば次のステップの方向)を予測し、個人がN次元表示空間のいくつかの隣接する領域にいるであろう可能性又は信頼性を決定するために使用されるベクトルとして分析される。ステップのサイズ及び/又はステップの重み付けは、アプリケーション又は他のものに依存して変化し得る。たとえば敗血症に対して、数日の時間枠は、適切であり得る。
【0035】
異なるレートでサンプリングされるパラメータを使用する場合、様々な技術が使用され得る(例えば温度は毎時間サンプリングされ、WBCが8時間毎に測定され得る)。例えば相対的に大きなサンプリングレートのパラメータに対して、より少ないサンプリングされたパラメータに時間的により近いサンプルが使用され得る。他の例において、各々のパラメータに対して少なくとも1つのサンプルがある期間(例えば1日)が選択され得る。複数のサンプルと関連付けられるパラメータに対して、平均又は中央値が使用され得る。
【0036】
表1は、個人が敗血症に進行する例示的なデータを図示する。時間のステップは、6日間に渡る日である。各々の日々のデータは、各々のパラメータに対して代表的な値(例えば平均値、中央値、絶対値等)を含む。時系列分析を使用して、全6日又はそのサブセットからのデータは、個人がその後の日において、N次元空間内の様々な隣接する状態にあるであろうという可能性を決定するために使用される。予測された重症度の評価は、先んじた診療を求めるかどうかを決定する。
【表1】

【0037】
本発明は、好ましい実施例を参照して記載されている。修正及び変形は、詳細な説明を読み、理解する他人に思いつき得る。本発明は、請求項又はそれと等価のものの範囲内にある限り、このような修正及び変形をすべて含むとして解釈されることを意図される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、個人の現在の状態を決定する及び/又はその後の状態を予測するために、多次元空間の生理的データを分析するコンポーネントを図示する。
【図2】図2は、前記生理的分析コンポーネントが使用され得るコンピューティングシステムを図示する。
【図3】図3は、独立した装置として、生理的分析コンポーネントを図示する。
【図4】図4は、個人の現在の状態を決定するために使用される多次元空間における敗血症を示す領域の例示的なマッピングを図示する。
【図5】図5は、個人の将来の状態を予測するために使用される多次元空間における生理的パラメータの例示的な傾向を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の状態を決定する生理的データ分析コンポーネントであって、
前記個人の複数の異なる生理的パラメータを受け取る入力コンポーネントと、
2以上の状態に対応する複数の領域を有する多次元空間に前記複数の生理的パラメータをマッピングするとともに、前記生理的パラメータがマッピングされる前記領域に基づいて前記個人の前記状態を決定する分類コンポーネントと、
ユーザの前記コンポーネントに前記状態を伝える出力コンポーネントと
を有する生理的データ分析コンポーネント。
【請求項2】
前記分類コンポーネントが、異なる期間に得られる生理的パラメータの2以上のセットをマッピングし、前記マッピングから得られる傾向に基づいて、前記個人の将来の状態を予測する、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項3】
前記分類コンポーネントが、前記傾向を決定するために時系列分析を実行する、請求項2に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項4】
前記分類コンポーネントが、ベクトルを通じて2以上のマッピングをつなぐとともに、後続のマッピングを外挿することにより、前記傾向を生成する、請求項2に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項5】
前記多次元空間にマッピングされる前記生理的パラメータが、
温度と、
心拍数と、
呼吸数と、
収縮期血圧と、
白血球数と
のうちの1以上を含む、請求項2に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項6】
前記分類コンポーネントが、クラスタリング法、k−means法、k−medoids法、期待値最大化法、ニューラルネットワーク、階層化法、確率的分析、統計的分析、先験的知識、分類子、サポートベクターマシン、距離測定、エキスパートシステム、ベイジアンネットワーク、ファジー理論、パターン認識、内挿、外挿、データ融合エンジン、ルックアップテーブル、及び多項式展開のうちの1以上を通じて、前記生理的パラメータを、前記多次元空間にマッピングする、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項7】
前記生理的データが、心拍数、血圧、血中酸素レベル、中核体温、心臓電気活動、白血球数、及びホルモンレベルのうちの2以上を含む、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項8】
前記分類コンポーネントが、安定状態を表す生理的パラメータを前記多次元空間にマッピングし、これらの領域を安定としてラベリングすることにより、前記多次元空間内の1以上の安定な領域を規定する、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項9】
前記分類コンポーネントが、不安定状態を表す生理的データを前記多次元空間にマッピングし、前記不安定状態に基づいてこれらの領域をラベリングすることにより、前記多次元空間内の1以上の不安定な領域を規定する、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項10】
前記不安定状態の領域が、各々の不安定状態で、事前に診断される患者に対して、事前に決定される、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項11】
前記個人の前記状態が変化することを予測される場合、通知を送信するメッセージングコンポーネントを更に含む、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項12】
収集されたデータ、処理されたデータ、及び結果の少なくとも1つを伝える出力コンポーネントを更に含む、請求項1に記載の生理的データ分析コンポーネント。
【請求項13】
個人の状態を決定する方法であって、
前記個人の複数の生理的パラメータを受け取るステップと、
前記複数の生理的パラメータを、特定の状態と相関のある多次元空間内の領域にマッピングすることにより、前記個人の前記状態を決定するステップと
を有する方法。
【請求項14】
異なる時間間隔で得られる生理的パラメータの少なくとも一つの他のセットをマッピングするステップと、
前記マッピング間の変化に基づいて、前記個人の将来の状態を予測するステップと
を更に有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記変化が前記将来の状態に向かって進行するベクトルとして表される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の受け取られた生理的パラメータに基づいてベクトルを生成するため、多次元クラスタリング分析を使用するステップを更に有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
1以上の状態を示す生理的パラメータを前記多次元空間にマッピングし、これらの領域をラベリングすることにより、前記多次元空間内に1以上の領域を規定するステップを更に有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記個人の前記状態を表すメッセージ、前記個人の将来の状態を表すメッセージ、及び前記生理的パラメータの少なくとも1つのメッセージを伝えるステップ
を更に有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法を実行するようにプログラムされたコンピュータ。
【請求項20】
個人の現在及び将来の状態を決定する方法であって、
多次元空間内の安定及び不安定の領域を識別するステップと、
前記個人の生理的パラメータのセットを受け取るステップと、
前記個人の前記状態は、前記多次元空間内のマッピングされた前記生理的パラメータの前記領域に基づく前記多次元空間に、前記生理的パラメータのセットをマッピングすることにより、前記個人の前記現在の状態を決定するステップと、
各々が異なる時間に得られる、前記個人の生理的パラメータの1以上の更なるセットを受け取るステップと、
前記多次元空間内に、前記1以上の生理的パラメータの更なるセットをマッピングするステップと、
前記マッピングされた生理的パラメータのセットに基づいて傾向を生成するステップと、
前記傾向に基づいて、前記個人の将来の状態を推定するステップと
を有する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−514583(P2009−514583A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538460(P2008−538460)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053822
【国際公開番号】WO2007/054841
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】