説明

クラスター改質水を用いるヘアカラー適用

本発明は、クラスター改質水を用いる毛髪のカラーリング方法と、カラー処理される毛髪の色およびコンディショニングの増強を達成する能力と、に関する。クラスター改質水は、アルカリ性水もしくは酸性水のようなイオン水またはI水もしくはS水のような構造水でありうる。このほか、クラスター改質水は、ヘアカラー処理プロセスに対する前含浸処理および/または後含浸処理として毛髪に適用することができる。本発明のさらなる利点は、刺激の強い化学物質および染料の使用を最小限に抑えるとともにさらにカラー処理毛髪に対して色の増強ならびに柔軟性および平滑性の増大を達成する能力である。本発明はまた、媒染性塩と併用することもできる。本発明はまた、毛髪の前含浸および/または後含浸を行うためのクラスター改質水を含むヘアカラーリングキットをも包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、パーマネントヘアカラー、デミパーマネントヘアカラー、およびセミパーマネントヘアカラーのための構造水およびヘアカラーリングシステムに関する。とくに、本発明は、クラスター改質水と、クラスター改質水がヘアカラーリング適用の一部分として含まれているときに毛髪の染色により生成される色を増強する能力と、に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
毛髪のカラーリングは、理由の如何を問わず、正確に行わなければならない処理である。ほとんどの場合、これは、カラーリングの初日からヘアカラーが鮮明かつ十分であることを意味する。さらに、消費者にとっては、ヘアカラーが最低限2週間持続すること(すなわち、色堅牢性を有すること)が必要である。したがって、染料は、毛髪の日常的環境暴露(最も顕著なのは、洗髪、整髪、および日光)に対して色堅牢性でなければならない。染料の色堅牢性は、ものによって大きく異なりうる。したがって、毛髪のカラーリングに使用される染料は、パーマネント、デミパーマネント、およびセミパーマネントに分類される。最もよく知られ広く使用されるカラーリング適用法の1つは、酸化染色法である。この方法では、染料を毛髪上に配置し、毛髪に浸透させ、酸化させ(最も典型的には、過酸化水素を用いて)、毛髪に所望の色を生成する。染料組成物は、2つの主成分(プライマリーおよびカプラー)で構成される。両成分は、低分子量であり、毛髪に浸透して塩基および過酸化水素の存在下で重合することにより、最終的により大きい分子量の染料を形成することができる。塩基および過酸化物の存在下における化学重合処理は、カップリング反応または縮合反応である。塩基は、アルカリ性物質であり、たとえば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムでありうる。これらの物質を使用すると、ある程度、毛髪に損傷を与える可能性があることは、十分に認識されている。
【0003】
パーマネントヘアカラーを提供する染料のほかに、より一時的なヘアカラーを意図的に提供する非酸化性着色剤が存在する。これらの染料の堅牢性は、イオン結合、水素結合、およびファンデルワールス力によって決まる。これらの染料は、主に、繊維工業で使用され、そこでの適用手順には、通常、刺激の強い化学物質の使用および高温が含まれる。しかしながら、ヘアダイとして使用する場合、これらの染料の適用は、はるかに低い温度で、かつ一般的にはより温和な条件で、行わなければならない。適用手順にはこれらの妥協点が存在するので、一時的なカラーリング効果が得られるにすぎないであろう。したがって、色は数回の洗髪に耐えられるにすぎにないと予想される。これらのタイプの染料は、単独で使用することもできるし、鮮明度を増強するために酸化染料と組み合わせて使用することもできる。ヘアカラーリングの良好な耐久性および/または永続的効果を達成するためには、刺激の強い化学物質および過酷な条件が必要である。
【0004】
したがって、過酷な環境の使用を最小限に抑え、鮮明でしかも健康に害がない長期持続色を提供するヘアカラー適用法を編み出すことが必要とされる。このたび、驚くべきことに、刺激の強い化学物質を用いることなく、クラスター改質水により、ヘアカラーの濃度、強度、および耐久性を増大しうることを見いだした。クラスター改質水は、対称三角形状で3個の原子(2個の水素と1個の酸素を含む)を含有する一般に知られている正規の水の特定化学構造と比べると、異常である。しかしながら、化学構造は単純であるかもしれないが、全体的に見ると、水分子は非常に複雑である。水分子は、その化学構造に基づいて、部分的に正および負の部位を呈し、双極子モーメントを生じる。これらの部位は、正の部位を形成する水素原子および負の部位を形成する酸素原子である(酸素に付随する2つの孤立電子対に基づく)。正および負の部位により生じた双極子モーメントの結果として、水分子は、水素結合として知られる現象が可能である。したがって、水分子は、互いに水素結合を形成する傾向を有し、これにより、水分子は種々のサイズで会合する。水に施される処理に依存して、さまざまなタイプのクラスター改質水が生成される可能性がある。水に含まれるイオン性クラスターが操作される処理水の例は、I構造水およびS構造水が記載されている米国特許第6,139,855号および同第5,711,950号に見いだされる。
【0005】
毛髪のカラーリング処理でクラスター改質水を使用したところ、驚くべきことに、クラスター改質水を用いずに同一所定量の着色剤でカラー処理された毛髪よりも高い色強度がカラー処理毛髪に付与されることが判明した。さらに、得られる色は、より耐久性があり、コンディショニングされた触感および艶のある外観を有する。これらの利点は、任意のタイプのクラスター改質水(たとえば、電気的に活性化された水、磁気的にクラスター化された水、および任意の他の構造水)を用いて、任意の種類のヘアカラー手順と併用された処理として、達成される。これまでは、ヘアカラーリング業界および他の業界で典型的に使用される刺激の強い化学物質(たとえば、酸化剤、還元剤、アルカリ性および酸性の成分、芳香性担体)ならびに高温および高圧を用いたときに、これらの利点が達成されることが知られているにすぎなかった。クラスター水を適用すれば、以上に列挙した物質および/または環境を追加して使用することなく、最終的な色に対して同一の改善を提供することができる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、ケラチン繊維にクラスター改質水を単に適用するだけで色強度を増強しかつカラー処理毛髪をコンディショニングするヘアカラーリングシステムに関する。色の濃度および強度を増大させるための公知の手順のほとんどは、刺激の強い化学物質の助けを借りてキューティクルを開くことおよび/または毛髪キューティクルに電気化学的もしくは化学的な改質を施すことを必要とする。本発明では、それほど会合していない水分子の物理的特性に基づいてこれらの利点を達成するので、染料および刺激の強い化学物質の量を減少させて、以上に列挙した利点を得ることができる。したがって、本発明に係るシステムは、消費者がより安全に使用できるものであり、より環境にやさしく、しかもより経済的に使用することができる。ヘアカラーリングシステムは、少なくとも1種のクラスター改質水の入った容器と、ヘアカラーリング剤と、シャンプーと、を含む。
【0007】
毛髪(とくに白髪)へのカラー沈着を増大させる方法については、長い間研究されてきたが、依然として、刺激の強い化学物質の使用に基づくものが知られているにすぎない。しかしながら、驚くべきことに、本発明において、ヘアカラーリング剤を用いて染料またはティントの適用を受ける毛髪繊維への前処理および/または後処理として、イオン水または構造水のようなクラスター改質水を使用する方法が、色の増強だけでなくカラー処理毛髪のコンディショニングの向上を達成するのに効を奏することを見いだした。
【0008】
本発明の方法には、クラスター改質水を用いて毛髪の浸漬または含浸を行うことによりケラチン繊維を染色することが含まれる。ある時間にわたりクラスター改質水を用いて毛髪の前浸漬を行った後、毛髪を乾燥させる。ヘアカラーリング剤を用いて、乾燥毛髪に通常のヘアカラー処理を施す。ヘアカラーリング後、本発明の方法には、所定の時間にわたりクラスター改質水を用いて2回目の毛髪の浸漬を行う工程が含まれる。後浸漬を行った後、毛髪を乾燥させて、通常どおりスタイリングを行うことができる。前浸漬および後浸漬による毛髪の処理は、個別処理としてまたは一括処理として行うことができる。いずれのクラスター改質水(たとえば、構造水およびイオン水)であっても、毛髪のコンディションおよび着色に影響を及ぼすことができる。さらに、本発明には、クラスター改質水と、少なくとも1種の媒染性塩と、少なくとも1種のセミパーマネントの合成染料および/または天然染料と、を含むヘアカラーリング組成物が包含される。
【0009】
発明の詳細な説明
クラスター改質水を用いてケラチン繊維の前浸漬および/または後浸漬を行うことにより、カラー処理毛髪の色を増強しうること、ならびにヘアカラーリング剤を用いてカラー処理された毛髪のボディー(body)およびコンディショニングを向上させうること、をこのたび見いだした。水のクラスター改質は、たとえば、イオン水のときのように水分子クラスターのサイズ減少もしくはヒドロキシルイオンおよび水素イオンへの水分子の分離または構造水のときのようにイオン性クラスターの組織構造化でありうる。本明細書中で使用する場合、クラスター改質水には、イオン水および構造水が包含されるが、これらに限定されるものではない。したがって、本発明の範囲には、水の特性を改変すべく水分子自体のクラスターまたは水に含まれるイオンのクラスターが操作された任意の水が包含される。特定的には、本明細書で使用される構造水は、たとえば、米国特許第6,139,855号および同第6,231,874号に記載されている構造水を意味する。構造水は、供給水を処理することにより作製される。
【0010】
供給水は、水溶液であり、たとえば約350〜約550のC(μS/cm)およびたとえば約5.0〜約7.5のpHを有する。水溶液は、脱イオン水、蒸留水、または水道水でありうる。特定的には、供給水溶液は、たとえば、CaCl2、MgCl2、Na2SO4、KH2PO4、およびKNO3のような物質から選ばれる極低濃度のカチオンおよびアニオンよりなるクラスター構造安定化イオン成分を用いて作製される。イオン成分のイオンの濃度範囲は、たとえば、約5.00〜10.00mg/100ml供給水の量のCaCl2、約1.00〜10.00mg/100mlの量のMgCl2、約2.00〜9.00mg/100mlの量のNa2SO4、約0.20〜約2.00mg/100mlの量のKH2PO4、および約0.90〜9.00mg/100mlの量のKNO3でありうる。たとえば、イオン成分のイオン含有量は、11.00mg/100ml CaCl2、4.20mg/100ml MgCl2、5.00mg/100ml Na2SO4、0.70mg/100ml KH2PO4、および1.10mg/100ml KNO3でありうる。供給水は、たとえば、約6.0〜6.4のpHおよび約470〜520のC(μS/cm)を有する。場合により、供給水の表面張力を低下させるべく、約10〜200L/時の流量で供給水をトルマリンフィルターに通して供給することができる。表面張力を低下させるのに好適なトルマリンフィルターは、米国特許第5,770,089号(その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されている。
【0011】
所望の供給水を調製した後、構造水を製造すべく構造水製造装置で処理する。構造水を製造する方法は、たとえば、「B」水または塩基性(Sタイプ)水を生成するための方法が記載されているRO 88053および「A」水または酸性(Iタイプ)水を製造する方法が開示されているRO 88054に記載されている。これらの両方のタイプの水を同時に製造する改善法については、米国特許第5,846,397号(その内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)にさらに記載されている。構造水製造装置は、ガラスやプレキシガラスなどから作製された化学的に不活性な平行六面体カラム中に配置された1つのセルまたはいくつかの逐次構造のセルを使用する。S水の発生または生成を行うための空間には、約80〜120Vの静電界を印加した結果として、(Rm+安定化イオン)基を有する多分子会合体(すなわちクラスター)中で水素とヒドロキシルとの架橋により水分子を結合させるのに必要な分極およびエネルギーが存在する。同様に、I水の生成を行うための空間には、I水を製造するために(Rk-安定化イオン)基を有する多分子会合体(すなわちクラスター)が同時に形成される。本発明に係る構造水では、不安定化因子からそれを保護するうえで、特別な保存条件も特別なパッケージングも必要とされない。さらに、構造水のクラスター構造は、非常に安定である。構造水中のクラスター構造系のポテンシャルエネルギーは、全体として最小限に抑えられる。
【0012】
構造水は、イオンにより安定化された水分子の電気陰性クラスターと電気陽性クラスターとを含有する。水中に存在するこれらの2つのタイプのクラスターは、それぞれ、一般に「I水」および「S水」と呼ばれる。一方では、I水は、Rm+Rk-(H+n(H2O)l(ここで、k>>m)であるとして特性付けることのできるイオンにより安定化された水分子の電気陰性クラスターを含有し、他方では、逆に、S水は、Rk-Rm+Hn+(OH-)p(H2O)l(ここで、k<<m)であるとして特性付けることのできるイオンにより安定化された水分子の電気陽性クラスターを含有する。I水およびS水のいずれの場合においても、Rm+イオンとしては、限定されるものではないが、主として、Ca+2、Mg+2、Na+、K+カチオンが挙げられ、Rk-イオンとしては、限定されるものではないが、主として、Cl-、H2PO4-、SO4-2アニオンが挙げられる。構造水のクラスター構造は、非常に安定である。なんら特定の理論により拘束することを望むものではないが、イオンを置き換えることによりクラスター構造系に追加のイオンを導入すると、同一または類似のイオン半径を有するイオンにより構造が安定化されると考えられる。
【0013】
本明細書中で使用されるイオン水とは、とくに、水分子をそのイオン(すなわち、H+およびOH-)に分離するように処理された水または水素結合により結合された水分子の天然のクラスターのサイズを減少させるように市販のIonice SDM-2000 Water Ionizerなどのような水イオン化装置で処理された水を意味する。イオン化装置はアルカリ性水(たとえば、約9〜12のpH)および酸性水(たとえば、約2〜6のpH)を生成する。
【0014】
毛髪の前浸漬および/または後浸漬を行うために、任意のクラスター改質水を使用することができる。毛髪の前浸漬時または後浸漬時、スプレーボトルを用いてまたは毛髪の含浸を行うための任意の他の適用手段により、クラスター改質水を毛髪にスプレーすることができる。毛髪の含浸を行うために使用されるクラスター改質水の量は、浸漬される毛髪の量に依存して変化するであろう。浸漬された毛髪は、ある時間にわたり放置される。放置時間は、約30秒間〜約15分間、好ましくは1〜10分間、より好ましくは2〜8分間である。毛髪を乾燥させるために、低熱、中程度のエアフローに設定されたヘアドライヤーを用いてブロー乾燥させるかまたはタオル乾燥させることができる。2回目の毛髪の浸漬を行った後、カラーリングおよび後浸漬の施された毛髪をブロー乾燥させるかまたはタオル乾燥させ、そして通常どおりスタイリングを行うことができる。
【0015】
したがって、好ましくは、毛髪の色を増強するために、たとえばS水を前浸漬として適用する。色のレベルを変化させることなく、色調は、わずかに濃色化および/または暖色化する。I水のような構造水を後浸漬として適用すると、毛髪のボディーおよびコンディションが改善される。改善されたボディーおよびコンディションは、改善された触感(すなわち、よりソフト)、弾力性、および毛髪のボリュームにより規定される。これらのコンディションは、コンディショニング処理に類似していて長もちする(たとえば、少なくとも1日間または2日間)。増大された色強度は、数回の洗浄に耐えるので、色堅牢性の増大が示唆される。色堅牢性という用語は、カラー処理毛髪が洗浄後の退色の低下を呈することを意味する。
【0016】
パーマネント、セミパーマネント、デミパーマネント、または一時的に毛髪を着色するために、任意の染料またはティントを本発明で使用することができる。したがって、カラーリング剤は、酸化性または非酸化性の染料でありうる。しかしながら、本発明の一実施形態では、天然の非酸化性ヘアダイが使用され、そして色堅牢性をさらに増強すべくクラスター改質水が媒染性塩と併用される。天然の染料は、天然に存在する物質(たとえば、限定されるものではないが、植物、根、胞子、および真菌)中に見いだされる着色化合物および/またはそれらから誘導される着色化合物である。この実施形態では、毛髪繊維は、クラスター改質水と媒染性塩とを組み合わせて前浸漬および/または後浸漬が施される。多くの媒染剤が当技術分野で一般に知られており、多価金属イオンが包含されるが、これに限定されるものではない。クラスター改質水中に存在する媒染剤は、染料とキレートを形成して大きい金属-色素錯体になる。任意の時点(たとえば、染色の前または後)で、媒染性塩とクラスター改質水とを組み合わせて毛髪に適用することができる。染料は、比較的小さいサイズの分子であるので、媒染剤と錯体を形成する前、容易に毛髪繊維中に拡散することができる。染料-媒染剤錯体が生成した後、それは、もとの染料分子よりもサイズがかなり大きく、好ましくは、毛髪繊維内に保持可能である。驚くべきことに、この効果は、本発明に係るクラスター改質水を用いたときに見いだされる。なんら特定の理論により拘束することを望むものではないが、クラスター構造を安定化させるイオンにより染料-媒染剤錯体の形成が強化されると考えられる。
【0017】
媒染剤は、多価金属イオン(少なくとも2の原子価を有する)、とくに、マグネシウム、アルミニウム、クロム、銅、スズなどのようなカチオンである。特定の媒染剤の例としては、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸マグネシウム、クエン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、および酢酸アルミニウム、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。媒染性塩は、組成物の約0.1〜約15.0重量パーセント;好ましくは約5〜15パーセント;最も好ましくは約10〜15パーセントの量で存在する。
【0018】
このほか、任意のシャンプーを使用して毛髪を洗浄することができる。本発明はまた、毛髪のコンディションの改善およびカラー処理を受ける毛髪の色の増強を行う方法をも包含する。さらに、本発明はまた、ヘアカラーリングシステムにも適用することができる。ヘアカラーリングシステムは、クラスター改質水の入った少なくとも1つの容器を含むキットの形態をとることができる。このほか、キットは、ヘアカラーリング剤およびシャンプーを含む。
【0019】
以下の実施例により本発明について具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
実施例I:イオン水によるヘアカラーの強化
毛髪の色強度の増大を試験する研究には、次のように処理された3つの毛髪サンプルの評価が含まれる。Aveda Full SpectrumTM Permanent Hair Color(赤色-橙色R/O 135728;20倍体積の触媒;30分間の適用時間)で1つのサンプル(1Dc)をカラー処理し、水道水ですすぎ、そしてブロー乾燥させる。カラー処理を施す前に水道水で毛髪を湿潤させる。第2のサンプル(3Dc)をアルカリ性イオン(OH-)水で約5分間湿潤させ、カラー処理し、水道水ですすぎ、酸性(H+)イオン水でコンディショニングし、そしてブロー乾燥させる。第3のサンプル(5Dc)をアルカリ性イオン(OH-)水で約5分間湿潤させ、ブロー乾燥させ、カラー処理し、水道水ですすぎ、そして酸性イオン性(H+)水でコンディショニングする。3Dcサンプルは、3つのサンプル中で最も濃厚かつ最も鮮明な色を有するように見えるので、イオン水によりカラー処理毛髪の色強度が増強されることが示唆される。
【0021】
実施例II:酸性染料を用いたときのI水によるヘアカラーの強化
この実施例には、後処理としてのクラスター改質水(とくにI水)の評価が含まれる。この研究では、酸性染料だけに焦点をあて;酸化システムは評価しない。
【0022】
実施例Iに色相が類似した赤色-橙色(R/O)酸性染料ペーストを用いて、すべてのトレスを染色する。このペーストに含まれる染料は、C.I.アシッドレッド33およびC.I.アシッドオレンジ7である。アプリケーターブラシを用いてペーストを毛髪にブラッシング適用し、次に、40℃のオーブン中に20分間配置する。次に、水道水のお湯を流しながら透明になるまで毛髪トレスをすすぐ。毛髪着色への後処理としてI水を評価する。漂白されていない毛髪とレベル5に漂白された毛髪(1が黒色であり10が薄金髪色である1〜10の尺度で薄褐色)の両方について実験を行う。スプレーしてから櫛で梳くことにより、後処理を施す。高熱を使用してサンプルを十分にブロー乾燥させる。次の特性:洗髪後の色変化(ΔE)およびシャンプー洗浄水中に存在する残留染料(Aveda All SensitiveTMシャンプーの5%溶液中でトレスを洗浄して得た水の510nmにおける吸光度の測定)に関してサンプルの評価を行う。デルタE値が小さいほど、色変化が少ないことが示唆される。吸光度値が小さいほど、シャンプー浴中の残留染料が少ないことが示唆される。図1および2は、それぞれ、処理間で見いだされた差異を示している。
【0023】
処理間の有意性を決定するために、洗髪(5回のシャンプー処理)後の毛髪の色変化および初回洗髪後のシャンプー浴中の残留染料に関して、95%信頼水準に基づく対応のあるt検定を行った。I水毛髪では、漂白された毛髪および漂白されていない毛髪の両方で、初回洗髪後の色変化(ΔE)が有意に少ないことが、特筆すべき点である。この差異は、漂白されていない毛髪に対して5回の洗髪を行った後も依然として有意であるので、洗髪後のI水処理サンプルの色保持性が優れていることが示唆される。初回洗髪後のI水後処理サンプルでは、漂白された毛髪および漂白されていない毛髪の両方で、シャンプー洗浄水中の残留染料が有意に少ない。このことは、I水処理サンプルが対照よりも優れた耐洗浄堅牢性を有することを意味する。以上の測定から、本発明に係るI水により提供される利点;すなわち、耐洗浄堅牢性および色安定性(すなわち色堅牢性)の改善が確証される。
【0024】
実施例III:構造水およびパーマネントヘアカラーによる色の増強
適格な被験者に対してハーフヘッド評価を行う。頭の左半分に対しては、標準的ヘアカラー適用の前、その間、またはその後に活性水を適用し、頭の右半分に対しては、標準的ヘアカラーリング手順で水道水を使用する。Aveda Full SpectrumTM PermanentまたはDeposit Onlyヘアカラーをすべての被験者に使用する。アニオンリッチクラスター/アルカリリッチクラスターを有する水の平均pHレベルは、11であった。カチオンリッチクラスター/酸リッチクラスターを有する水の平均pHレベルは、3である。色強度に関して被験者を評価し、9段階評価でスコアを算出する。プレカラー活性アルカリ性水ヘアカラー処理/ポストカラー活性酸性水ヘアカラー処理に対して、95%信頼区間で従属サンプルのt検定を用いてStatisticaにより平均スコア分析を行うことにより、標準的水道水カラー処理を用いた毛髪と比較して色が有意により高強度であることが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、洗浄(5回)を繰り返した後の漂白された毛髪および漂白されていない毛髪に及ぼすI水を用いた本発明の影響を、洗髪後の色変化(ΔE)に及ぼす影響として示したグラフであり、結果的には、ヘアダイの色堅牢性の改善およびヘアカラーの増強を示している。
【図2】図2は、I水で処理された漂白されていない毛髪および漂白された毛髪について初回洗髪後の洗浄水の吸光度値を表すグラフであり、色堅牢性の改善およびヘアカラーの増強を示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を染色する方法であって、
a)該繊維をクラスター改質水で前浸漬する工程と、
b)該繊維をヘアカラーリング剤で処理する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項2】
毛髪を乾燥させることにより前記クラスター改質水を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クラスター改質水がイオン水または構造水である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クラスター改質水を少なくとも1種の媒染性塩と組み合わせる工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記構造水が、I水を形成する水分子の電気陰性会合体またはS水を形成する水分子の電気陽性会合体をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン水がアルカリ性水または酸性水をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
ケラチン繊維を染色する方法であって、
a)該繊維をヘアカラーリング剤で処理する工程と;
b)該繊維をクラスター改質水で後浸漬する工程と;
を含む、上記方法。
【請求項8】
前記クラスター改質水を少なくとも1種の媒染性塩と組み合わせる工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ケラチン繊維を染色する方法であって、
a)該繊維をクラスター改質水で前浸漬する工程と;
b)該繊維から該クラスター改質水を除去する工程と;
c)該繊維をヘアカラーリング剤で処理する工程と;
d)該繊維をクラスター改質水で後浸漬する工程と;
を含む、上記方法。
【請求項10】
前記繊維を前浸漬する工程および後浸漬する工程が、前記クラスター改質水を少なくとも1種の媒染性塩と組み合わせる工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の工程を含む、カラー処理毛髪の色の増強方法。
【請求項12】
請求項7に記載の工程を含む、染色毛髪のボディー(body)およびコンディションの向上方法。
【請求項13】
前記クラスター改質水が、I水を形成する水分子の電気陰性会合体の構造水である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記クラスター改質水が酸性水のイオン水である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種のクラスター改質水の入った容器と、ヘアカラーリング剤と、シャンプーと、を含む、ヘアカラーリングシステム。
【請求項16】
前記クラスター改質水がイオン水または構造水である、請求項15に記載のヘアカラーリングシステム。
【請求項17】
前記イオン水が酸性またはアルカリ性である、請求項15に記載のヘアカラーリングシステム。
【請求項18】
前記構造水が、I水を形成する水分子の電気陰性会合体またはS水を形成する水分子の電気陽性会合体である、請求項15に記載のヘアカラーリングシステム。
【請求項19】
クラスター改質水と、少なくとも1種の媒染性塩と、少なくとも1種のセミパーマネントの合成染料および/または天然染料と、を含む、ヘアカラーリング組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−520325(P2006−520325A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501226(P2006−501226)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/007266
【国際公開番号】WO2004/082423
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501316998)アヴェダ コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】