説明

クラバム、例えばクラブラン酸の製造を改良する新規方法

クラバム、例えばクラブラン酸の製造を改良する新規方法。クラブラン酸を増産できる新規DNA配列および新規微生物もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラバム(clavam)、例えばクラブラン酸の製造を改良する新規方法に関する。また、本発明は増量のクラブラン酸の産生能を有する新規DNA配列および新規微生物も提供する。
【0002】
微生物、特にストレプトマイセス種は、クラブラン酸やその他のクラバム、セファロスポリン、ポリケチド、セファマイシン、ツニカマイシン、ホロマイシン(holomycin)およびペニシリンを含む数多くの抗生物質を産生する。この微生物により産生される抗生物質の絶対量および相対量を操作できるようにすることに大きな関心があるため、その生合成経路の代謝機構や遺伝的機構を調査する研究が数多くされてきた(Demain、A.L.(1990) 「50 years of Penicillin applications、history and trends」中の「Biosynthesis and regulation of β-lactam antibiotics.」)。
【0003】
ストレプトマイセス・クラヴリゲルス(Streptomyces clavuligerus;以下、エス・クラヴリゲルスという)は、2つの主たる群の抗生物質、1つはセファマイシン、セファロスポリンおよびペニシリン(Demain、A.L.(1990)前掲)であり、もう1つはクラバムを含む抗生物質を産生する。クラバムは、独断的に、その環の立体化学に応じて5Sおよび5Rクラバムの2つのグループに分けることができる。抗生物質オーグメンチン(Augmentin)(グラクソスミスクラインの登録商標)の成分であり商業的に重要なクラバムクラブラン酸は、5Rクラバムである。5Sクラバムの例としては、クラバム-2-カルボキシレート (C−2−C)、2−ヒドロキシメチルクラバム(2HMC)およびアラニルクラバム(Brownら.(1979) J.Chem.Soc.Chem.pp282-283)がある。
【0004】
クラブラン酸産生に関する生合成酵素および制御タンパク質をコードする遺伝子は、セファマイシンC産生に関与する遺伝子に隣接するクラスター中に位置しており、エス・クラヴリゲルスのゲノム内で抗生物質関連遺伝子のスーパークラスターを形成している(Alexanderら.(1998) J.Bacteriol.180:4068-79)。例えば、クラブラン酸の先駆体である、クラバミン酸の産生に関与する酵素をコードする遺伝子としては、orf2(ceaS)(Khaleeliら.(1999) J.Am.Chem.Soc.121:9223-9224)、orf3(bls)(BachmannおよびTownsend (1998) Chem.Commun.:2325-2326)、orf4(pah)(Wuら.(1995) J.Bacteriol.177:3714-3720)、orf5(cas2)(Marshら.(1992) Biochemistry.31:12648-57)および場合によってはorf6(Kershawら.(2002) Eur.J.Biochem.269,2052-2059)が挙げられ、それらは全てクラブラン酸クラスター内に位置している。orf2−6における破壊は、その変異体培養菌を澱粉アスパラギン培地(Starch asparagines medium)上で生育させた場合に、クラブラン酸産生を完全に喪失させる。(Aidoo、K.Aら.(1993) p219-236 In.V.P.Gullo、J.C.Hunter-Cevera、R.CooperおよびR.K.Johnson (著)、Developments in Industrial Microbiology series、vol.33 Society for Industrial Microbiology、Fredericksburg、Va.)。しかし、この喪失は、用いる培養基の条件に依存しており、ソイ培地(Soy medium)上で生育させた場合には(Saloweら.(1990) Biochemistry 29: 6499-6508)、クラブラン酸産生が部分的に回復する(Jensenら.(2002) Antimicrob.Agents and Chemother.44: 720-726)。この現象は、エス・クラヴリゲルスのゲノム中に存在する他の遺伝子が特定の条件下で、これらの遺伝子の活性の喪失を何らかの方法で補い得ることを示している。あるいは、ソイ培地に1つまたはそれ以上のorf2−6によって産生される代謝産物が少量含まれており、それによって、これらの遺伝子が破壊された株でも少量のクラブラン酸を生産できるようになっている可能性がある。
【0005】
上記Marshら(1992)は、エス・クラヴリゲルスが2コピーのcas遺伝子(cas1およびcas2)を有していると報告した。cas1はクラブラン酸遺伝子クラスターと関連していないが、cas2に対して高い相同性を示す。cas2の破壊は、その培養菌をソイ培地上で生育させた場合にクラブラン酸産生を35%低下させ、培養菌を澱粉アスパラギン(SA)培地上で培養した場合には完全に産生を停止させる(ParadkarおよびJensen 1995 J.Bact 177: 1307-1314)。cas1遺伝子の破壊は、SA培地上では野生型に近いレベルのクラブラン酸を産生するが、ソイ培地上で培養した場合には野生型よりも31−73%低いクラブラン酸量を産生する突然変異体を与える(Mosherら(1999) Antimicrob.Agents and Chemother.43: 1215-1224)。また、cas1およびcas2の両方の遺伝子とも破壊された変異体株では、試験したどの発酵条件下でもクラブラン酸を産生しないことが報告されている。興味深いことに、cas1周辺の遺伝子を配列決定したところ、クラブラン酸産生に関与する新たな遺伝子は見つからなかったが、その代わり5Sクラバム生合成に関与する新規遺伝子が6種類(cvm1〜6と称する)同定された(Mosherら(1999)前掲)。さらに、これら5Sクラバム−特異的遺伝子の研究によって、遺伝子工学的方法を用いた遺伝子の破壊が、その変異体株の生産するクラブラン酸レベルを向上させ、さらに5Sクラバム産生レベルを劇的に低下させることが示された(WO98/33896)。ある5Sクラバムは毒性であることが知られているため、英国および米国の薬局方ではそのレベルを厳しく規制していることから、5Sクラバムにおける、特に5Sクラバム クラバム−2−カルボキシレートにおける産生の低下は、クラブラン酸の商業的生産に特に重要である。
【0006】
クラブラン酸生合成の理解が進んだにもかかわらず、医薬産業ではより望ましい目標に向けて、今尚、経費上の理由および安全上の理由の両面からクラブラン酸の生産方法の改善が継続されている。
【0007】
以下の定義は、本明細書中で頻出する特定の用語の理解を容易にするために提供される。
【0008】
本明細書中で用いられる「遺伝子」には、遺伝子の機能または発現に必要ないずれかの調節領域も含まれる。
【0009】
本明細書中で用いられる「cvm」遺伝子は、上記で定義した遺伝子cvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6またはcvm7のいずれかを意味する。
【0010】
本明細書中で用いられる「cvmpara」遺伝子は、上記で定義した遺伝子cvm6paraまたはcvm7paraのいずれかを意味する。
【0011】
本明細書中で用いられる「orf」遺伝子は、上記で定義した遺伝子orf2、orf3、orf4、orf5、orf6、orf7、orf8、orf9、orf10、orf11、orf12、orf13、orf14、orf15、orf16、orf17またはorf18のいずれかを意味する。
【0012】
本明細書中で用いられる「orfpara」は、上記で定義した遺伝子orf2para、orf3para、orf4paraまたはorf6paraのいずれかを意味する。
【0013】
本明細書中で用いられる「破壊(された)」は、(5Sクラバム産生に関する)遺伝子の活性を、例えば抗生物質耐性遺伝子、好ましくはアプロマイシン(Paradkar、A.SおよびJensen、S.E (1995)前掲)を用いた挿入不活性化またはその他の突然変異技術(例えば、上記 Sambrookら (1989)に開示された技術)によって、低下もしくは消失させることを意味する。その他の突然変異技術には、別のDNA(抗生物質体制遺伝子でないもの)の挿入、遺伝子配列中の1個またはそれ以上の塩基を交換するか、もしくは遺伝子の配列中への1個またはそれ以上の塩基を挿入する部位特異的変異導入のいずれかが含まれる。
【0014】
本明細書中で用いられる「欠失(された)」は、欠失が行われる前には、その遺伝子またはその断片を含んでいたより大きなポリヌクレオチドから、前記遺伝子または前記断片を欠失(除去)することを意味する。欠失を生じさせるポリヌクレオチドを、遺伝子置換技術(ParadkarおよびJensen (1995)前掲)によって微生物のゲノムに導入すると、遺伝子またはそれにコードされたタンパク質の活性が消失または低下し、その微生物によって産生される5Sクラバムのレベルが減少する。この欠失は、大規模(例えば、調節管理領域を含むか含まない完全な読み取り枠)であっても小規模(例えば、フレームシフト変異となる単一塩基)であってもよい。
【0015】
本明細書中で用いられる「減少(された)」は、本発明の微生物によって産生される5Sクラバムのレベルが、関連する読み取り枠が破壊も欠失もされていない、相当するエス・クラヴリゲルス株で産生されるレベルよりも低いことを意味する。従って、この相当するエス・クラヴリゲルスは、読み取り枠に破壊や欠失を順次導入して本発明の微生物を作る「親」株である。
【0016】
本明細書中で用いられる「少なくとも維持(された)」は、本発明の微生物において産生されるクラブラン酸レベルが、関連する読み取り枠が破壊も欠失もされていない相当するエス・クラヴリゲルス株において産生されるレベルと同等またはそれ以上であることを意味する。従って、この相当するエス・クラヴリゲルスは、読み取り枠に破壊や欠失を順次導入して本発明の微生物を作る「親」株である。
【0017】
本発明は、新たに同定されたエス・クラヴリゲルス遺伝子を用いたクラブラン酸を生成する新規方法に関する。orf4から誘導されたプローブを用いることで、エス・クラヴリゲルスゲノムの断片を単離し、そして、それが破壊された場合にエス・クラヴリゲルスにおける5Sおよび5Rクラバム生合成に影響を及ぼすことが示された遺伝子が多数含まれることを明らかにした。断片の配列を分析することで、orf4に対して高い相同性を示す遺伝子(本明細書中以下、orf4parと称する)の存在が示された。しかしながら、驚くべきことに、このorf4par遺伝子に隣接した領域の配列をさらに分析することで、クラブラン酸(cas2クラスター)および5Sクラバム(cas1クラスター)のいずれにおいても、既に同定された遺伝子のパラロガスを含む新しい遺伝子のクラスターが明らかとなった。
【0018】
従って、本発明は、5Sクラバム生合成に重要な1つまたはそれ以上の読み取り枠に相当するDNAを含むエス・クラヴリゲルス微生物であって、その読み取り枠は上記エス・クラヴリゲルスによる5Sクラバムの産生を減少させ、およびクラブラン酸産生が少なくとも維持されることとなるように破壊または欠失されており、その読み取り枠が以下:
a)cvm6para(配列番号:1);
b)cvm7para(配列番号:2);
c)cvm6paraおよびcvm6(配列番号:5);または
d)cvm7paraおよびcvm7(配列番号:6)
から選択される、エス・クラヴリゲルス微生物を提供する。
【0019】
第2の態様において、本発明は、5Sクラバム生合成に重要な読み取り枠の1つまたはそれ以上の相当するDNAを含むエス・クラヴリゲルス微生物であって、その読み取り枠が上記エス・クラヴリゲルスによる5Sクラバムの産生を減少させ、およびクラブラン酸産生が少なくとも維持されるように破壊または欠失されており、その読み取り枠が以下:
a)cvm6paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1(配列番号:7)、cvm2(配列番号:8)、cvm3(配列番号:9)、cvm4(配列番号:10)、cvm5(配列番号:11)、cvm6、cvm7もしくはcvm7para;または
b)cvm7paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6、cvm7もしくはcvm6para
から選択される、エス・クラヴリゲルス微生物を提供する。
【0020】
遺伝子cvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5およびcvm6は、上記のMosherら(1999)およびWO98/33896に開示されている(cvm1はorfup1であり、cvm2はorfup2、cvm3はorfup3、cvm4はordwn1、cvm5はorfdwn2、並びにcvm6はorfdwn3である)。さらなる5Sクラバム(cas1)クラスターの5Sクラバム特異的遺伝子であるとして見出されたcvm7遺伝子は、本発明を成した研究中に同定され、本明細書中以下に開示する。
【0021】
更なる態様において、本発明は、本発明のエス・クラヴリゲルス微生物の作製に用いられるcvm6paraおよびcvm7para読み取り枠を含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、前記ポリヌクレオチドには以下:
a)cvm6para;
b)cvm7para;
c)cvm6paraおよびcvm6;
d)cvm7paraおよびcvm7;
e)cvm6paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6、cvm7またはcvm7para;あるいは
f)cvm7paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6、cvm7またはcvm6para、
から成る群から選択される読み取り枠が含まれる。
【0022】
その他の態様において、本発明は、本発明のエス・クラヴリゲルス微生物の作製に用いることができる、本明細書中で開示するcvmポリヌクレオチドをクローニングおよび操作するためのベクターを提供する。また、本発明のエス・クラヴリゲルス微生物を作製するための、これらベクターの使用方法も提供する。
【0023】
cvm6paraおよびcvm7paraによりコードされるポリペプチドもまた、本発明により提供される(それぞれ配列番号:3および配列番号:4)。
【0024】
さらに、本発明は、クラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の酵素をコードする1つまたはそれ以上の読み取り枠を含むポリヌクレオチドであって、その読み取り枠が以下:
a)orf2para(配列番号:12)、
b)orf3para(配列番号:13)、
c)orf4para(配列番号:14)、および
d)orf6para(配列番号:15)、
から成る群から選択されるポリヌクレオチドを提供する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、クラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の酵素をコードする1つまたはそれ以上の読み取り枠を含むポリヌクレオチドであって、その読み取り枠が、orf2、orf3、orf4、orf5、orf6、orf7、orf8、orf9、orf10(カナダ特許出願番号2108113およびJensen,S.Eら(2000) Antimicrob.Agents Chemother 44:720-6)、orf11、orf12(Li、R.Nら(2000) J.Bacteriol 182:4087-95)、orf13、orf14、orf15、orf16、orf17またはorf18(国際特許出願番号 PCT/GB02/04989)から選択されるクラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の遺伝子と組み合わされる、以下:
a)orf2para、
b)orf3para、
c)orf4para、
d)orf6para
を1つまたはそれ以上を含む、ポリヌクレオチドを提供する。
【0026】
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを、それを用いることで高いレベルのクラブラン酸を産生することができるストレプトマイセス・クラヴリゲルス株を作製するための上記ベクターの使用方法と共に、提供する。
【0027】
そのように作製されたストレプトマイセス・クラヴリゲルス株、および発酵によりクラブラン酸を産生させるためにそれらを使用する方法もまた提供される。
【0028】
このように、本発明は、クラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の酵素をコードする1つまたはそれ以上の読み取り枠を含むポリヌクレオチドを含むベクターを有するストレプトマイセス・クラヴリゲルス微生物であって、その読み取り枠が以下:
a)orf2para、
b)orf3para、
c)orf4para、および
d)orf6para
の群から選択される微生物をさらに提供する。
【0029】
さらなる態様について、本発明は、クラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の酵素をコードする1つまたはそれ以上の読み取り枠を含むポリペプチドを含むベクターを有するストレプトマイセス・クラヴリゲルス微生物であって、その読み取り枠が、orf2、orf3、orf4、orf5、orf6、orf7、orf8、orf9、orf10(カナダ特許出願番号2108113 およびJensen、S.Eら(2000) Antimicrob.Agents Chemother 44:720-6)、orf11、orf12(Li、R.Nら(2000) J.Bacteriol 182:4087-95)、orf13、orf14、orf15、orf16、orf17またはorf18(国際特許出願番号 PCT/GB02/04989)から選択されるクラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の遺伝子と組み合わされる、以下:
a)orf2para、
b)orf3para、
c)orf4para、
d)orf6para
から成る群から選択される、ストレプトマイセス・クラヴリゲルス微生物を提供する。
【0030】
また本発明は、前記開示の他に破壊もしくは欠失された5S遺伝子と組み合わされていても良い1つまたはそれ以上の破壊もしくは欠失されたcvm6paraまたはcvm7para遺伝子と、前記開示の他にクラブラン酸生合成遺伝子(orf2〜orf18遺伝子から選択される)と組み合わされていても良いorf2para、orf3para、orf4paraまたはorf6para遺伝子を含むベクターとの組み合わせを含む、エス・クラヴリゲルス微生物にも関する。
【0031】
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書中で開示された配列、並びに上記のMosherら(1999)、WO98/33896、カナダ特許出願番号2108113、Jensen、S.Eら (2000)前掲、Li、R.Nら(2000)前掲、および前記の国際特許出願番号PCT/GB02/04989に記載の配列を用いた、一般的なクローニング技術、例えばPCR法またはライブラリースクリーニング法によって単離することができる。このようなクローニング方法の例としては、例えば、Sambrook、J.ら (1989) モレキュラー・クローニング、ライブラリー・マニュアル(第2版)コールド・スプリンガー・ハーバー・ラボラトリー、コールド・スプリンガー・ハーバー、ニューヨーク(Molecular cloning、a laboratory manual (2nd Ed) Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York)に記載されている。
【0032】
それぞれの読み取り枠を含むポリヌクレオチドは、当分野で周知の技術を用いて、単離され、そして上記のように種々組み合わせてベクター中にライゲーションして一体とすることができる。ベクターは、達成される機能、例えばクローニング、発現、遺伝子不活性化または遺伝子置換のためのエス・クラヴリゲルスなどへの運搬によって選択されよう。いずれの場合においても、当業者であればベクターの変種を利用でき、それらは当分野で周知である。例えば、そのようなベクターとしては、上記Sambrook、Jら(1989)の一般的なクローニングベクター、上記Hopwood、D.Aら(1985)のストレプトマイセス用ベクター、上記ParadkarおよびJensen (1995)、上記Mosherら(1999)および上記WO98/33896の遺伝子破壊用および遺伝子置換用ベクター、並びに上記CA2108113のストレプトマイセス・クラヴリゲルスの遺伝子発現に好適なベクターが知られている。しかしながら、ベクターの選択は、本明細書中に開示したものだけに限定されるものではない。
【0033】
さらに、orf2para、orf3para、orf4para、orf5paraおよびorf6para遺伝子を含む遺伝子の組み合わせにおいて、当業者であれば、本来のプロモーターもしくはストレプトマイセス・クラヴリゲルス背景でも機能する異種プロモーターのいずれかの転写プロモーター、あるいは実際にそれぞれの読み取り枠の発現を随意に活性化できる形式のその他の調節配列と関連させて、それぞれの読み取り枠を好適に確実に配置させるための好適なDNA構築物を設計することができるであろう。
【0034】
次いで、ポリヌクレオチドの操作、特にストレプトマイセス・クラヴリゲルス背景への導入については、一般的な方法、例えば上記のHopwood、D.Aら(1985)に開示されているような方法に従って、実施することができる。遺伝子配列の破壊、次いで遺伝子置換は、上記のParadkar、A.SおよびJensen、S.E (1995)の方法に従って実施することができる。遺伝子の欠失は、慣用技術、例えばWO98/33896に開示されている技術を用いて実施することができる。
【0035】
本発明の微生物は、限定するものではないが、ストレプトマイセス・クラヴリゲルスATCC27064(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、マナッサス、バージニア、USA)、あるいはNRRL 3585(ノース・リージョン・リサーチ・ラボラトリー(Northern Regional Research Laboratory)、ピオリア、イリノイ、USA)として入手できるものを含む、ストレプトマイセス・クラヴリゲルス株から作製することができる。例えば、遺伝子工学技術によって作製されるもの、または株改良法(strain improvement method)によって作製されるものを含む、ストレプトマイセス・クラヴリゲルスの変異株も用いることができる。そのような株の例としては、WO98/33896に開示されているようなストレプトマイセス・クラヴリゲルス株56−1A、56−3A、57−2B、57−1C、60−1A、60−2A、60−3A、61−1A、61−2A、61−3Aまたは61−4Aが挙げられる。
【0036】
このように、別の態様において、本発明は上記のポリヌクレオチドを単離し、前記ポリヌクレオチドを操作し、その操作したポリヌクレオチドを前記の好適な微生物に導入し、クラブラン酸を産生する条件下でその好適な微生物を発酵培養することで産生されるクラブラン酸を単離および精製することを含む、好適な微生物におけるクラブラン酸産生を改良する方法に関する。前記ポリヌクレオチドの操作は、cvm遺伝子と一緒に用いられることあるcvmpara遺伝子の場合に遺伝子配列を破壊又は欠失させる方法、あるいはorf遺伝子と一緒に用いられることあるorfpara遺伝子の場合に発現に好適なベクター中に挿入する方法があり得る。
【0037】
好適な微生物はストレプトマイセス・クラヴリゲルスであることが好ましい。
その発酵、単離および精製法は当分野で周知であり、例えば発酵法は英国特許出願1,508,977に開示されている。抗菌製剤の調製にクラブラン酸を用いる方法は同様に当分野において周知である。
【0038】
実施例
実施例1−材料および方法
実施例において、すべての方法は特に規定しない限り、上記のSambrook、Jら、上記のHopwood、D.Aら.(1985)およびKieser、Tら(2000)、Practical Streptomyces Geneticsに記載のものである。形質転換法もまた、上記のParadkar、A.SおよびJensen、S.E (1995)に記載されている。
【0039】
1.1 細菌株、培地および培養条件
ストレプトマイセス・クラヴリゲルス NRRL 3585はノース・リージョン・リサーチ・ラボラトリー(ピオリア、IL)から入手した。エス・クラヴリゲルスはMYMアガー(Stuttard、C.(1982) J.Gen.Microbiol.128:115-121)またはISP培地#4アガープレート(Difco、Detroit、MI)のいずれかを用いて維持した。
【0040】
染色体DNAを単離するために培養菌を、Alexanderら(1998) J.Bact.180:4068-79に記載のように、トリプチケース・ソイ・ブロース(trypticase soy broth)とYEMEとの2:3混合物上で生育させた。クラブラン酸および他のクラバム代謝産物の産生物を分析するために培養菌を、特に規定しない限り、ソイ培地(欧州特許第0349 121号)上で生育させた。液体培養菌はすべて26℃で250rpmの回転攪拌器上で生育させた。
【0041】
大腸菌におけるDNA操作はXL−1ブルー株(ストラタジーン、La Jolla、CA)を用いて行った。大腸菌の培養液は、37℃のLBアガー上で維持、およびLB培地の液体培養液中で生育させた(Sambrook、Jら(1989)前掲)。プラスミドを含む培養菌に適切レベルの抗生物質を付加した。
【0042】
1.2 DNA操作
標準的なDNA操作、例えばプラスミド単離、制限エンドヌクレアーゼ消化、平滑末端断片の生成、ライゲーション、ニックトランスレーション法によるDNAプローブ32Pの標識化および大腸菌の形質転換などは、上記のSambrook J等(1989)に記載のように行った。ストレプトマイセスspp.からのプラスミドおよびゲノムDNAの単離は、上記のKieser、Tら(2000)に記載のように実施した。コスミドpWE15におけるエス・クラヴリゲルスのゲノムDNA断片ライブラリーの構築は製品取り扱い説明書(ストラタジーン)に従って実施した。
【0043】
エス・クラヴリゲルスDNA断片のサザン分析を、上記のSambrook、Jら(1989)に記載のように非常に厳密に実施した。ハイブリダイゼーション膜を、いずれも65℃で30分間の2×SSC/0.1% SDS洗浄を2度行い、30分間の0.1×SSC/0.1% SDSの洗浄を1度行った。
【0044】
実施例2−パラログクラスターDNA断片の調製
2.1 orf4パラログのクローニング及びヌクレオチド配列決定
orf4遺伝子(CA2108113)を用いて探索した場合の強いハイブリダイゼーションシグナルや非常に弱いハイブリダイゼーションシグナルと、NcoI消化したエス・クラヴリゲルス染色体DNAのサザンブロットとの間に一致が見られた。この強いシグナルはorf4遺伝子に相当したが、非常に弱いシグナルを示した遺伝子の正体は不明であった。従って、この遺伝子をクローン化することにした。この目的を達成するために、そのサイズがおよそ4−5kbのエス・クラヴリゲルスDNA由来のNcoI断片を、NcoI消化したpUC120(Vieira、JおよびJ Messing (1987) Methods Enzymol.153、3-11)中にライゲーションし、コロニーブロットハイブリダイゼーション法を用い、orf4遺伝子をプローブとして使用してスクリーニングした。プラスミドDNAを陽性の可能性のあるクローンから単離し、4.3kbのNcoI断片化を行って確認した。代表クローンとしてpO4H−4を選び、更に研究した。この4.3kbのNcoI断片の配列決定を行った。配列を分析することで、3種の遺伝子が同定され、そのうちの1つはorf4と相同性があり、それをorf4parと命名した。残りの2つの遺伝子はorf6およびcvm6と相同性を有していることが判明し、それらをorf6parおよびcvm6parと命名した。この結果から、DNAのこの領域がクラブラン酸生合成遺伝子クラスターまたはcvmクラバム生合成遺伝子クラスターのいずれかのパラログ遺伝子クラスターを含む可能性が示された。
【0045】
2.2 orf4parを含む4.3kbのNcoI断片に隣接するDNAの配列決定
orf4parを含む4.3kbのNcoI断片に隣接するDNAの配列分析は、orf4par遺伝子を含む2個のコスミドクローンを同定することで行った。このorf4parを含む2個のコスミドクローン、14E10および6G9は、orf4par遺伝子の内部にある0.46kbのSalI断片を用いて探索されたエス・クラヴリゲルスpWE15(プロメガ、マディソン、WI)コスミドバンクから単離された。これらのコスミドは一連の消化およびサザンハイブリダイゼーション実験を行って部分的にマッピングされている(In.Nucleic acid techniques in bacterial systematics.Ed.Stackebrandt、EおよびGoodfellow、M (1991) John WileyおよびSons、p205-248)。両方のコスミドをEcoRI、KpnIおよびNruIで消化して、14E10の挿入サイズがおよそ45kbであること、および6G9がおよそ40kbであることを示した。これら2つのコスミド挿入は約20kbのオーバーラップDNAを有し、orf4parを含む4.3kbのNcoI断片の上流および下流領域の配列を分析するためにDNAを得た。
【0046】
DNAの配列情報は、基本的にはCA2108113に記載のように作成した。ダイナミック・イーティー・ターミナル・サイクル・シークエンシング・キット(DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit)(アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)、ユルフェ湾(Baie d'Urfe)、ケベック、カナダ)を用いた。およそ13.3キロベースの連続DNA配列が生成された。これらの実験で生成されたエス・クラヴリゲルス染色体DNAのヌクレオチド配列を配列番号:16に示す。
【0047】
多くの読み取り枠を同定したところ、それらは以前に開示されたorf2、orf3、orf4およびorf6(CA2108113)と非常に高い相同性を示した。これらの遺伝子は互いに関連してゲノム内に位置しており、クラブラン酸クラスター内の遺伝子の位置と同じ組織では近傍にあることが分かった。遺伝子orf2par、orf3parおよびorf4parは互いに隣接しており、それらの対応遺伝子orf2、orf3およびorf4と同じ方向にある。しかしながら、cas1は、cas2がクラブラン酸経路ではorf4に向かい合っているがクラバムクラスター内では入れ替わっているために、orf4parの下流には存在しない(Mosherら (1999) 前掲)。その他のクラブラン酸クラスターとパラログ配置との間にある差異としては、orf6parはorf4parと先端で向かい合っているため(end-on-end)、orf2par−4parと同じ方向にないが、orf6はクラブラン酸クラスター中のorf2−4と同じ方向にある点が挙げられる。驚くべきことに、orf6parの直ぐ上流にある遺伝子は、クラブラン酸クラスターではなく、クラバムクラスターにおけるパラログ遺伝子であることが明らかとなった。cas1とクラスターを形成していることが明らかとされたcvm6遺伝子のパラログであるため、この遺伝子をcvm6parと称する(Mosherら (1999) 前掲)。このcvm6遺伝子は、クラバム産生に関与する酵素をコードしている(WO98/33896中、orfdwn3)。
【0048】
cvm6parに隣接して位置する新規遺伝子をcvm7parと称する。この遺伝子はcvm7と相同性を示し、クラバムクラスター中のcvm3の上流に位置している(本明細書中以下にさらに記載する)。cvm7の上流には新規の読み取り枠が存在し、センサーキナーゼをコードすると考えられる。それは555個のアミノ酸のポリペプチドをコードしており、2成分の応答調節遺伝子のセンサーキナーゼドメインと良い類似性を示す。
【0049】
2.3 読み取り枠の機能解析
配列番号.16に示すDNA配列のコンピューター解析により、7個の読み取り枠の存在が示された。それぞれの遺伝子の詳細を表1に示す。
【表1】

【0050】
エス・クラヴリゲルスにより産生されるクラブラン酸および/またはクラバムの生合成において、これらのORFがどのような役割を果たしているかを評価するため、挿入不活化変異体を基本的に上記のParadkarおよびJensen (1995)に記載のように遺伝子置換して作製した。しかしながら、これらの破壊による表現型を最終的に明らかとするには、野生型エス・クラヴリゲルスだけでなく、orf3、orf4、orf6およびcvm6それぞれの発現が既に欠損しているエス・クラヴリゲルス株についても、orf3par、orf4par、orf6parおよびcvm6parを破壊することが重要と考えられる。orf3、4および6の変異体は、米国特許番号第6,332,106号に記載のように作製し、cvm6変異体はWO98/33896に記載のように作製した。
【0051】
実施例3−orf4およびorf4parの解析
3.1 orf4変異体の構築
orf4(pah)について破壊された変異体は米国特許番号第6,332,106号に記載のように作製した。
【0052】
3.2 orf4par変異体の構築
pO4H−4(4.3kbのNcoI断片をpUC120のNcoI部位中にクローニングしたもの(VieiraおよびMessing 1987前掲))をKpnIで消化し(1箇所はクローニングした断片中にあり、もう一箇所はベクター中にある)、再びライゲーションしてorf4parを運搬するDNA挿入部分のサイズを1.7kbにまで減少させて、プラスミドp4K−1を得た。p4k−1内のorf4par遺伝子を、その中心にあるEcoNI部位により消化し、pUC120apr(Trepanierら (2002) Microbiology 148: 643-656)由来のアプラマイシン(apramycin)(apr)耐性遺伝子カセットを、それらの両方の断片をDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を用いて処理して平滑化した後に、挿入して破壊した。次いで、破壊されたorf4par遺伝子を運搬するKpnI/NcoI挿入部分を、pDA501のEcoRI部位に、挿入配列とベクターの両方の末端を平滑化した後に挿入した。pDA501は、ストレプトマイセスプラスミドpIJ486(Kieser、Tら(2000)前掲)と大腸菌プラスミドpTZ18R(ストラタジーン)とをそれらのEcoRIおよびBamHI部位を用いて融合させて調製されたシャトルベクターである。その結果得られた構築物、6pDABを用いてS.リヴィダンス(lividans)TK24、および最終的には野生型エス・クラヴリゲルスをを形質転換してチオストレプトン(thiostrepton)(thio5μg/ml)およびアプラマイシン(apr20μg/ml)耐性にした。
遺伝子置換変異体は上記のParadkarおよびJensen (1995)に記載のように作製した
【0053】
3.3 ofr4/orf4par変異体の構築
orf4(thio)の破壊構築物を用いてorf4par(apr)変異体のプロトプラストを形質転換することで二重変異体を作製する、アプローチを行った(Aidooら(1994)Gene.147:41-6)。orf4par変異体由来のプロトプラスト調製物を、S.リヴィダンスから単離されたorf4破壊構築物を用いて形質転換した。形質転換体を5μg/mlのチオストレプトンおよび50μg/mlのヒグロマイシン(hyg)上で選択した。第一の形質転換体を、上記のParadkarおよびJensen (1995)に記載のように、遺伝子複製変異体を形成させるため、非選択条件下で2回の胞子形成を行わせた。
【0054】
3.4 orf4、orf4parおよびorf4/orf4par変異体の発酵解析
クラブラン酸生合成におけるorf4、orf4parおよびorf4/4par破壊の効果を試験するために、それぞれの単離体由来の胞子を、20mlのシード培地(seed medium)(欧州特許番号第0349 121号)中に植菌し、振盪しながら26℃で2日間生育させた。次いで、そのシード培地1mlを最終段階(final stage)ソイ培地(欧州特許番号第0349 121号)中に植菌し、振盪しながら最大3日間26℃で生育させた。3日間生育させた後の最終段階ブロスの一部を回収して、HPLCにより(Mosherら(1999前掲)および/またはイミダゾール誘導化比色試験(Bird、A.Eら (1982) Analyst、107: 1241-1245、並びにFoulston、M.およびReading、C.(1982) Antimicrob.Agents Chemother.、22:753-762)の使用により、クラブラン酸産生能を分析した
【0055】
orf4破壊体の発酵解析
orf4破壊体をソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量が71%減少していた。
この結果により、破壊によるorf4の除去がクラブラン酸レベルの低下を引き起こしたことから、この遺伝子はクラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。
【0056】
orf4par破壊体の発酵解析
orf4par遺伝子に欠損のある変異体5pDAを、ソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量が12%減少していた。
この結果により、破壊によるorf4parの除去がクラブラン酸レベルの低下を引き起こしたことから、orf4のように、この遺伝子はクラブラン酸生合成に寄与していると結論付けることができる。
【0057】
orf4/orf4par破壊体の発酵解析
orf4遺伝子の両方のコピーを欠損している変異体A4−A1および3A3−A3をソイ培地中で生育させた場合、クラブラン酸産生を検出できなかった。
この結果により、試験した条件下では、二重破壊により変異体がクラブラン酸を生成できなくなったことから、orf4およびorf4par遺伝子の両方がクラブラン酸生合成に寄与していると結論付けることができる。
【0058】
3.5 サザン解析
orf4、orf4parおよびorf4/4par変異体をサザン解析によりさらに特徴づけした。この結果により、これらの変異体では、関連する遺伝子の染色体コピーが期待されたように破壊されていたことが確認された。
【0059】
実施例4−orf6およびorf6parの解析
4.1 orf6変異体の構築
orf6変異体は米国特許第6,332,106号に記載のように作製した。
【0060】
4.2 orf6par変異体の構築
orf6par遺伝子は、そのコード領域の中程にあるRsrII部位中にネオマイシン耐性遺伝子(neo)を導入することで破壊した。これを達成するために、このpO4H−4をKpnIで消化してorf4parを取り除き、セルフライゲーションすることでp5K−6を得た。p5K−6をRsrIIで消化して、pFDNeo−S(DenisおよびBrzezinski (1992) Gene 111:115-118)からPstI/EcoRI断片として切り出されたネオマイシン耐性遺伝子を、その両方の断片をDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を用いて処理して平滑化した後に、挿入した。構築物pNeo5K−6Aが得られ、それはorf6par遺伝子と同じ方向にneo遺伝子を有していた。
【0061】
pNeo5K−6Atsr#14と称されるシャトルベクターは、BglIIを用いて直鎖にした6.2Kb断片のpIJ486を、pNeo5K−6AのBamHIポリリンカー部位中に挿入することで構築した。シャトルベクターを用いてS.リヴィダンスTK24、および最終的にエス・クラヴリゲルスWTを形質転換して、チオストレプトン(5μg/ml)およびネオマイシン(50μg/ml)耐性にした。第一の形質転換体を、上記のParadkarおよびJensen (1995)に記載のように、遺伝子複製変異体を形成させるため、非選択条件下で2回の胞子形成を行わせた。
【0062】
4.3 orf6/orf6par変異体の構築
orf6/orf6par二重変異体は、orf6(apr)を用いてorf6par(neo)変異体のプロトプラストを形質転換することによって作製した(Mosherら(1999)前掲)。orf6par変異体由来のプロトプラスト調製物を、S.リヴィダンスから単離したorf6破壊構築物を用いて形質転換した。形質転換体は50μg/mlのアプラマイシン(apr)で選択した。第一の形質転換体を、上記のParadkarおよびJensen (1995)に記載のように、遺伝子複製変異体を形成させるため、非選択条件下で2回の胞子形成を行わせた。
【0063】
4.4 orf6、orf6parおよびorf6/orf6par変異体の発酵培養
クラブラン酸生合成におけるorf6、orf6parおよびorf6/orf6par破壊の効果を試験するため、それぞれの単離体由来の胞子をセクション3.4で既に記載したように試験した。
【0064】
orf6変異体の発酵解析
orf6遺伝子に欠損のある変異体6−1Aをソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量が57%減少した。この結果により、破壊によるorf6の除去がクラブラン酸レベルの低下を引き起こしたことから、この遺伝子はクラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。
【0065】
orf6par遺伝子に欠損のある変異体14−2B(2)をソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量が27%減少した。この結果により、破壊によるorf6parの除去がクラブラン酸レベルの低下を引き起こしたことから、orf6のように、この遺伝子はクラブラン酸生合成に寄与していると結論付けることができる。
【0066】
orf6/orf6par変異体の発酵解析
orf6およびorf6parの両方に欠損のある2重離変異体(two separete mutant)をソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量が65%減少した。
この結果により、この遺伝子のいずれかのコピーの欠損がクラブラン酸産生の低下を引き起こしたことから、orf6およびorf6parの両方がクラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。この両方の遺伝子のコピーを不活性化することにより、クラブラン酸産生能は完全に喪失することはないが、より低下した。
【0067】
4.5 サザン解析
orf6、orf6parおよびorf6/orf6par変異体をサザン解析によりさらに特徴づけした。この結果により、これらの変異体では、関連する遺伝子の染色体コピーが期待されたように破壊されていたことが確認された。
【0068】
実施例5−cvm6およびcvm6parの解析
5.1 cvm6変異体の構築
cvm6について破壊された変異体の構築は、WO98/33896 (cvm6はorfdwn3である)に既に記載されている。
【0069】
5.2 cvm6par変異体の構築
cvm6parを含む1.7KbのSalI断片はpO4H−4から得られ、pUC118のSalI部位中にライゲーションした。この結果得られたプラスミドをEcoNIで消化し、cvm6parの内部にある140bpの断片を切り出した。この断片の代わりに、EcoRI/PstI断片として切り出されるpFDNeo−S由来のネオマイシン耐性遺伝子を、両方の断片をDNAポリメラーゼIのクレノウ断片を用いて処理して平滑化した後に、cvm6par中にライゲーションした。neoマーカーをcvm6parと同じ方向で挿入した。ネオマイシンを含むSalI断片をEcoRIを用いて切り出し、シャトルベクターpUWL−KS(Weimeier、U.F (1995) Gene 165:149-150)のEcoRI部位中に挿入した。この構築物をpNeoSal1.7Uと称する。
【0070】
プラスミドpNeoSal1.7Uを用いて、S.リヴィダンスTK24、そして最終的にはエス・クラヴリゲルスを形質転換した。この結果得られるcvm6par::neo形質転換体を、50μg/mlのネオマイシンおよび5μg/mlのチオストレプトンを含むMYM培地上で選択し、次いで非選択条件下で2回の胞子形成を行わせて、二重クロスオーバー変異体を得た。
【0071】
5.3 cvm6/cvm6par変異体の構築
また、S.リヴィダンスTK24から単離された構築物pNeoSal1.7U(aprカセットがcvm6遺伝子と同じ方向でcvm6中に挿入されている)を用いて、cvm6変異体56−3Aを形質転換した。形質転換体を50μg/mlのネオマイシンおよび5μg/mlのチオストレプトンを含むMYM培地上で生育させた。この変異体を上記のように非選択条件下で2回の胞子形成を行わせて、二重クロスオーバー変異体を単離した。
【0072】
5.4 cvm6、cvm6parおよびcvm6/cvm6par変異体の発酵培養
β−ラクタム生合成におけるcvm6、cvm6parおよびcvm6/cvm6parの破壊の効果を試験するためセクション3.4に既に記載したようにそれぞれの単離体由来の胞子を試験した。
【0073】
cvm6変異体の発酵解析
WO98/33896において、cvm6遺伝子に欠損のある変異体56−1A、56−3A、57−1Cおよび57−2Bをソイ培地中で培養した場合、クラブラン酸レベルが向上し(対照株の125−141%)、かつクラバム−2−カルボキシレートや2−ヒドロキシメチルクラバムのレベルが大きく低下することが報告された。
【0074】
これらの結果は、cvm6遺伝子は5Sクラバムの有効な産生に必要であることを示している。cvm6の破壊は、クラバムの低下だけでなくクラブラン酸の増大を同時にもたらした。
【0075】
cvm6par変異体の発酵解析
cvm6par遺伝子に欠損のある変異体3A1、3A2、2A−6、2B−1および2B−2をソイ培地中で発酵培養させ、β−ラクタム代謝産物の産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量が6−11%増大した。クラバム−2−カルボキシレートおよびアラニルクラバムの産生は消失し、2−ヒドロキシメチルクラバムレベルは50−85%低下した。
【0076】
これらの結果により、cvm6のように、cvm6par遺伝子は5Sクラバムの有効な産生に必要であることが示される。cvm6parの破壊は、クラバムの低下だけでなく、クラブラン酸の増大を同時にもたらした。
【0077】
cvm6/cvm6par二重変異体の発酵解析
cvm6およびcvm6par遺伝子の両方に欠損のある変異体A−1、A−2、B−1、B−2、C−1およびC−2をソイ培地中で生育させ、それらのβ−ラクタム代謝産物の産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。クラブラン酸の産生は12−27%増大し、アラニルクラバムおよびクラバム2−カルボキシレートの産生は消失し、2−ヒドロキシメチルクラバムレベルは70−83%低下した。
【0078】
これらの結果により、cvm6およびcvm6parの単一変異のように、cvm6/cvm6par二重変異体はクラブラン酸レベルを向上させたことから、いずれの遺伝子も5Sクラバムの有効な産生に必要であることが示された。
【0079】
5.5 サザン解析
cvm6、cvm6parおよびcvm6/cvm6par変異体をサザン解析によりさらに特徴づけした。この結果により、これらの変異体では、関連する遺伝子の染色体コピーが期待されたように破壊されていることが確認された。
【0080】
実施例6−orf3及びorf3parの解析
6.1 orf3変異体の構築
orf3について破壊された変異体は米国特許第6,332,106号に記載のように作製した。
【0081】
6.2 orf3par変異体の構築
orf3parの破壊用鋳型(disruption template)として、プラスミドp5.7EcoRI ref(pJOEに基づくhyg(pJOE based hyg))を用いた。このプラスミド中の挿入部分はおよそ5.7Kbであり、プラスミドpJOE829内で運搬される全部、cvm6parの一部、orf6par、orf4par、orf3parの全部、およびorf2parの一部を含む(Kieser、Tら.(2000); Aidooら.(1994) Gene.147:41-6)。この破壊用ベクターは、FseI消化されたp5.7EcoRI中へのチオストレプトン耐性カセットのライゲーションにより構築される(前掲のAidooら)。FseI特異部位はorf3parの開始点から507bpの挿入部分内にある。適当な構築物を得て、次いでそれを用いてS.リヴィダンスTK24、そしてエス・クラヴリゲルス野生型を形質転換する。第一の形質転換体をチオストレプトン(5μg/ml)およびヒグロマイシン(25μg/ml)上で選択した。この変異体を上記のように非選択条件下で2回の胞子形成を行わせて、予想される二重クロスオーバー変異体を単離した。
【0082】
6.3 orf3/orf3par変異体の構築
セクション6.2に記載のorf3par破壊用カセットは、S.リヴィダンスTK24から単離し、それを用いてorf3::apra変異体を形質転換した。形質転換体をチオストレプトン(5μg/ml)およびヒグロマイシン(25μg/ml)を含むMYM培地上で選択した。変異体を選択なしに2回の胞子形成を行わせ、二重クロスオーバー変異体を上記のように単離した。
【0083】
6.4 orf3、orf3parおよびorf3/orf3par変異体の発酵解析
クラブラン酸生合成におけるorf3、orf3parおよびorf3/orf3parの破壊の影響を試験するため、セクション3.4で既に記載したように、それぞれの単離体由来の胞子を試験した。
【0084】
orf3変異体の発酵解析
変異体Ap3−1、Ap3−2およびAp3−3をソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量は31−71%低下した。
この結果により、破壊によるorf3遺伝子の除去がクラブラン酸レベルの低下を引き起こしたことから、この遺伝子がクラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。
【0085】
orf3par変異体の発酵培養
変異体3A−1および3A−2をソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量は9%低下した。
この結果により、破壊によるorf3par遺伝子の除去がクラブラン酸レベルの低下を引き起こしたことから、クラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。
【0086】
orf3/orf3par変異体の発酵培養
orf3遺伝子の両方のコピーに欠損のある変異体11−1、11−2、2−1および2−2をソイ培地で培養した場合に、野生型エス・クラヴリゲルスと比較すると、クラブラン酸生合成は完全に消失していた。
この結果により、試験した条件下では、二重破壊により変異体がクラブラン酸を生成できなくなったことから、orf3およびorf3parの両方がクラブラン酸生合成に寄与していると結論付けることができる。
【0087】
6.5 サザン解析
orf3、orf3parおよびorf3/orf3par変異体をサザン解析によりさらに特徴付けした。この結果により、これらの変異体では、関連する遺伝子の染色体コピーが期待されたように破壊されていたことが確認された。
【0088】
実施例7−orf2およびorf2parの解析
7.1 orf2変異体の構築
orf2について破壊された変異体は、当初は、米国特許第6,332,106に記載のように作製した。最初のorf2変異体は2回の遺伝子置換を行い、アプラマイシン耐性遺伝子を除去し、それを単一フレームシフト変異への置き換えを施した。このプラスミドを用いて、中央に位置するNotI部位中にアプラマイシン耐性遺伝子カセットを挿入することによって破壊されたorf2遺伝子と共にpUC119/pIJ486シャトルベクター上で運搬されるエス・クラヴリゲルスDNAの2.1kbのEcoRI/BglII断片から形成される最初のorf2変異体を作製した(米国特許第6,332,106)。2回目の変異導入に用いた破壊用プラスミド構築物は、NotI処理してアプラマイシン耐性遺伝子カセットを切り出し、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片を用いて処理して突出端(overhanging ends)を埋め、次いでリライゲーションしてプラスミドを環状化することによって最初の破壊用プラスミドから誘導した。この結果得られたプラスミド構築物は、破壊されたNcoI部位の位置に導入されたフレームシフトを有する以外は完全なorf2遺伝子を運搬する。次いで、この構築物を用いてS.リヴィダンスTK24、および最初のS.クリヴリゲルスorf2変異体を形質転換した。第一の形質転換体をチオストレプトン(5μg/ml)上で選択し、次いで非選択条件下で2回の胞子形成を行わせた。予想される二重クロスオーバー変異体を、それらのアプラマイシン耐性喪失に基づいて同定した。
【0089】
7.2 orf2par変異体の構築
orf2par変異体は、REDIRECT (プラントバイオサイエンスリミテッド(Plant Bioscience Limited)の登録商標、ノリッジ、U.K)として知られているPCRに基づくターゲティングキット(targeting kit)を用いて作製した。プラスミドpIJ790およびpIJ773、並びに宿主株である大腸菌BW25113をキットの一部として用いた。この特別な応用に対し、アプラマイシン耐性遺伝子を挿入することでorf2par遺伝子が破壊されるように設計された、一組のオリゴヌクレオチドプライマー:
KTA14:5'−CCATCCCGGCGCCCGTCCGATGCGAAGGAGATCTCCATGATTCCGGGGATCCGTCGACC−3’および
KTA15:5'−CGGGGCCGGGCATGGTGAACTCGTCCTCCACGGTGGTCATGTAGGCTGGAGCTGCTT−3'
を合成した。orf2par遺伝子破壊用カセットは、プラスミドpIJ773をテンプレートとして用い、上記2本のプライマーを用いたPCRにより生成した。用いたPCR条件は、ジメチルスルホキシドを使用しないことを除いて、取り扱い説明書に記載のものであった。次いで、orf2par破壊用カセットを、orf2parを運搬するコスミド14E10(上記)を用いて予め形質転換された大腸菌BW25113/pIJ790中にエレクトロトランスフォーメーション(electrotransformation)により導入した。pIJ79−プラスミドの欠落を促進するために37℃で一晩生育させた後、コスミドDNAを形質転換体から単離し、orf2par遺伝子が破壊されたことを確認するために解析を行った。次いで、orf2par破壊されたコスミドDNAを接合により野生型エス・クラヴリゲルス中に移行させた。接合は、トランス接合の回復のために50μg/mlのアプラマイシンを添加したAS−1培地(Baltz、R.H.Genetic recombination by protoplast fusion in Streptomyces.Dev.Ind.Microbiol 21 (1980) 43-54)を用いたことを除いて、上記のKieser、T.ら(2000)に記載のように実施した。アプラマイシン耐性エス・クラヴリゲルストランス接合体は、上記のParadkarおよびJensen(1995)に記載のように遺伝子置換変異体を生成するために非選択条件下で1回の胞子形成を行わせた。
【0090】
7.3 orf2/orf2par変異体の構築
orf2par変異体を作製するために用いたPCRに基づくターゲティング法(セクション7.2)を、orf2/orf2par二重変異体を作製するのにも用いた。この場合、orf2par破壊されたコスミドDNAは、野生型株中よりも上記のorf2変異体(セクション7.1)中に接合させた。アプラマイシ耐性エス・クラヴリゲルストランス接合体を、上記のように遺伝子置換を受けた単一ゲノム変異体の胞子を得るために、非選択条件下で1回の胞子形成を行わせた。
【0091】
7.4 orf2、orf2parおよびorf2/orf2par変異体の発酵解析
クラブラン酸生合成におけるorf2、orf2parおよびorf2/2par破壊の効果を試験するため、それぞれの単離体由来の胞子をセクション3.4に既に記載したように試験した。
【0092】
orf2変異体の発酵解析
orf2遺伝子の欠損変異体を、ソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量は95−98%低下した(Jensenら (2000)前掲)。
この結果により、破壊によるorf2遺伝子の除去によってクラブラン酸産生に大きな低下が引き起こされたことから、この遺伝子がクラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。
【0093】
orf2par破壊体の発酵解析
orf2par遺伝子の欠損変異体を、ソイ培地中で発酵培養し、クラブラン産生について野生型エス・クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、クラブラン酸の蓄積量は10−30%低下した。
この結果により、破壊によるorf2par遺伝子の除去によってクラブラン酸産生に低下が引き起こされたことから、orf2のように、この遺伝子はクラブラン酸の有効な産生に必要であると結論付けることができる。
【0094】
orf2/orf2par破壊体の発酵解析
orf2およびorf2par両方の欠損変異体を、ソイ培地中で発酵培養し、クラブラン酸産生を野生型S,クラヴリゲルスと比較した。72時間生育させた後では、orf2およびorf2par変異体を含む株からは、クラブラン酸産生を検出できなかった。この結果により、orf2およびorf2par遺伝子の二重変異は変異体をクラブラン酸生成できなくるすことから、試験した条件下では、orf2およびorf2parの両方の遺伝子がクラブラン酸産生に寄与していることが確認された。
【0095】
サザン解析
orf2、orf2parおよびorf2/2par変異体をサザン解析によりさらに特徴付けした。この結果により、これらの変異体では、関連する遺伝子の染色体コピーが期待されたように破壊されていることが確認された。
【0096】
実施例8−cvm7およびcvm7parの解析
配列解析により、このパラログクラスターにおいて2種の遺伝子がさらに同定されたが、クラブラン酸またはcvm遺伝子クラスターのいずれのパラログであるかは明らかではなかった。これらの遺伝子のいずれかは、まだ同定されていないcvm遺伝子のパラログである可能性があり、それを決定することは重要であった。従って、cvmクラスター(WO98/33896)の配列をcvm3(WO98/33896においてはorfup3)の下流を伸張させた。
【0097】
8.1 cvmクラスター配列の伸張
コスミド10D7(WO98/33896に記載されている)を制限エンドヌクレアーゼSacIで消化した。この消化により、casIおよびcvm1を含む6.8キロベースのDNA断片を単離し、pUC119に基づくプラスミド中にクローニングした。その結果得られたプラスミドpCEC019をテンプレートとして用いて、WO98/33896に報告されている部分的なcvm3遺伝子を完成させることのできる配列情報を得た。さらに、この配列情報から、その断片中には不完全ではあるが別の読み取り枠、cvm7の存在が示唆された。このcvm7遺伝子の配列を完成させるために、コスミド10D7から隣接するSacI断片、1.9kb断片をサブクローニングした。配列情報は、cvm7遺伝子の開始コドンを同定することができる部分までの、残りのcvm7遺伝子を含む最後のクローンから得られた。まとめることで、さらに約3.9kbの新たなDNA配列を作成することができ、それを配列番号.17に記載した。
【0098】
8.2 配列解析
cvm7のサイズおよびcvmクラスターの残りの部分に関する方向を、図2にて図式的に示す。配列のホモロジー検索により、この遺伝子が転写調節遺伝子と相同性を共有していることが示された。さらに、cvm7は、既知のクラブラン酸またはクラバム生合成遺伝子のパラログとは明らかに異なっており、パラログクラスターで同定された2個の遺伝子の1個と33%同一であった。このように、cvm6およびcvm6parがパラログであることが示されたことから、この配列データにより、cvm7およびcvm7parが5Sクラバム生合成に関与する遺伝子のパラログであると結論付けることができる。
【0099】
(配列の簡単な説明)
配列番号:1 cvm6para読み取り枠
配列番号:2 cvm7para読み取り枠
配列番号:3 cvm6paraポリペプチド
配列番号:4 cvm7paraポリペプチド
配列番号:5 cvm6読み取り枠
配列番号:6 cvm7読み取り枠
配列番号:7 cvm1読み取り枠
配列番号:8 cvm2読み取り枠
配列番号:9 cvm3読み取り枠
配列番号:10 cvm4読み取り枠
配列番号:11 cvm5読み取り枠
配列番号:12 orf2para読み取り枠
配列番号:13 orf3para読み取り枠
配列番号:14 orf4para読み取り枠
配列番号:15 orf6para読み取り枠
配列番号:16 パラログクラスター
配列番号:17 伸張されたcvmクラスター(下線した配列はWO98/33896で開示された配列を超えた新規の配列を意味する)
配列番号:18 orf2para読み取り枠(逆相補鎖)
配列番号:19 orf3para読み取り枠(逆相補鎖)
配列番号:20 orf4para読み取り枠(逆相補鎖)
配列番号:21 cvm6ポリペプチド
配列番号:22 cvm3ポリペプチド
配列番号:23 orf6paraポリペプチド
配列番号:24 orf4paraポリペプチド
配列番号:25 orf3paraポリペプチド
配列番号:26 orf2paraポリペプチド
【0100】
配列
配列番号:1 cvm6para
【化1】

【0101】
配列番号:2 cvm7para
【化2】

【0102】
配列番号:3 cvm6paraポリペプチド
【化3】

【0103】
配列番号:4 cvm7paraポリペプチド
【化4−1】


【化4−2】

【0104】
配列番号:5 cvm6
【化5】

【0105】
配列番号:6 cvm7
【化6−1】


【化6−2】

【0106】
配列番号:7 cvm1
【化7】

【0107】
配列番号:8 cvm2
【化8】

【0108】
配列番号:9 cvm3
【化9】

【0109】
配列番号:10 cvm4
【化10】

【0110】
配列番号:11 cvm5
【化11−1】


【化11−2】

【0111】
配列番号:12 orf2para
【化12】

【0112】
配列番号:13 orf3para
【化13】

【0113】
配列番号:14 orf4para
【化14】

【0114】
配列番号:15 orf6para
【化15−1】

【化15−2】

【0115】
配列番号:16 paraクラスター
【化16−1】


【化16−2】


【化16−3】

【0116】
配列番号:17 cvmクラスター
【化17−1】


【化17−2】


【化17−3】


【化17−4】


【化17−5】


【化17−6】

【0117】
配列番号:18 orf2par逆相補鎖

【化18】

【0118】
配列番号:19 orf3par逆相補鎖
【化19】

【0119】
配列番号:20 orf4par逆相補鎖
【化20−1】


【化20−2】

【0120】
配列番号:21 cvm6ポリペプチド
【化21】

【0121】
配列番号:22 cvm3ポリペプチド
【化22】

【0122】
配列番号:23 orf6parポリペプチド
【化23】

【0123】
配列番号:24 orf4parポリペプチド
【化24】

【0124】
配列番号:25 orf3parポリペプチド
【化25】

【0125】
配列番号:26 orf2parポリペプチド
【化26】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】パラログクラスターの図。転写の方向をそれぞれの遺伝子について示す(矢印の方向)。
【図2】cvm7の公開されたcvmクラスター(WO98/33896)に対する方向性。
【図3】パラログクラスターの注釈付き配列。
【配列表】

























【特許請求の範囲】
【請求項1】
5Sクラバム生合成に不可欠な1つまたはそれ以上の読み取り枠に相当するDNAを含むストレプトマイセス・クラブリゲルス(Streptomyces clavuligerus;以下、エス・クラヴリゲルスという)微生物であって、該エス・クラヴリゲルスによる5Sクラバムの産生が低下し、かつクラブラン酸の産生が少なくとも維持されるように、該読み取り枠が破壊または欠失されており、該読み取り枠が:
a)cvm6para(配列番号:1);
b)cvm7para(配列番号:2);
c)cvm6paraおよびcvm6(配列番号:5);または
d)cvm7paraおよびcvm7(配列番号:6)
から選択されるところの、エス・クラヴリゲルス微生物。
【請求項2】
5Sクラバム生合成に不可欠な1つまたはそれ以上の読み取り枠に相当するDNAを含むエス・クラヴリゲルス微生物であって、該エス・クラヴリゲルスによる5Sクラバムの産生が低下し、かつクラブラン酸の産生が少なくとも維持されるように、該読み取り枠が破壊または欠失されており、該読み取り枠が:
a)cvm6paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1(配列番号:7)、cvm2(配列番号:8)、cvm3(配列番号:9)、cvm4(配列番号:10)、cvm5(配列番号:11)、cvm6、cvm7もしくはcvm7para;または
b)cvm7paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6、cvm7もしくはcvm6para
から選択されるところの、エス・クラヴリゲルス微生物。
【請求項3】
以下:
a)cvm6para;
b)cvm7para;
c)cvm6paraおよびcvm6;
d)cvm7paraおよびcvm7;
e)cvm6paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6、cvm7もしくはcvm7para;または
f)cvm7paraおよび1つまたはそれ以上のcvm1、cvm2、cvm3、cvm4、cvm5、cvm6、cvm7もしくはcvm6para
から成る群から選択される読み取り枠を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
クラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の酵素をコードする1つまたはそれ以上の読み取り枠を含む単離されたポリヌクレオチドであって、該読み取り枠が:
a)orf2para(配列番号:12)、
b)orf3para(配列番号:13)、
c)orf4para(配列番号:14)および
d)orf6para(配列番号:15)
から成る群から選択されるところの、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
クラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の酵素をコードする1つまたはそれ以上の読み取り枠を含む単離されたポリヌクレオチドであって、該読み取り枠が1つまたはそれ以上の:
a)orf2para、
b)orf3para、
c)orf4para、
d)orf6para
を、orf2、orf3、orf4、orf5、orf6、orf7、orf8、orf9、orf10、orf11、orf12、orf13、orf14、orf15、orf16、orf17またはorf18から選択されるクラブラン酸生合成に関与する1つまたはそれ以上の遺伝子との組み合わせにて含むところの、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
a)配列番号:16のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;
b)配列番号:16のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;
c)配列番号:17のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;および
d)配列番号:17のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
から成る群から選択される、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
請求項7記載のベクターを含むエス・クラヴリゲルス微生物。
【請求項9】
適当な微生物中でのクラブラン酸の生成を改良する方法であって、請求項3〜6のいずれかに記載のポリヌクレオヂドを単離する工程、該ポリヌクレオチドを操作する工程、その操作されたポリヌクレオチドを該適当な微生物に導入する工程、および該適当な微生物をクラブラン酸を産生する条件下で発酵培養する工程、
を含む、方法。
【請求項10】
ポリヌクレオチドがcvmまたはcvmparaポリヌクレオチドであり、該操作がcvmまたはcvmpara遺伝子配列を破壊または欠失することを含むところの、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ポリヌクレオチドがorfまたはorfparaポリヌクレオチドであり、その操作が発現に好適なベクター中にポリヌクレオチドを挿入することを含むところの、請求項9記載の方法。
【請求項12】
好適な微生物がエス・クラヴリゲルスである請求項9〜11のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3b】
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【図3d】
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【図3f】
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【図3g】
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【図3h】
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【図3i】
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【図3k】
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【公表番号】特表2006−523447(P2006−523447A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505141(P2006−505141)
【出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004001
【国際公開番号】WO2004/092389
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【出願人】(399050976)ザ・ガバナーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アルバータ (5)
【氏名又は名称原語表記】The Governors of the University of Alberta
【Fターム(参考)】