説明

クリップ及びクリップを有する筆記具

【課題】外観上の美しさを損なうことなくクリップ部材に弾性部材を取り付けることが可能なクリップ及びこのクリップを有する筆記具を提供する。
【解決手段】クリップ部材1と、クリップ部材1に取り付けられる弾性部材2とを有するクリップであって、クリップ部材1が、弾性部材2を係止するための係止部13、213、313を有し、弾性部材2が、クリップ部材1に挿入され、弾性部材の持つ弾性を利用して係止部13、213、313によって係止されて、クリップ部材1に取り付けられることを特徴とするクリップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ及びクリップを有する筆記具に関する。特にクリップ部材と弾性部材との2部材からなるクリップ及びこのクリップを有する筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具、塗布具や化粧具等の軸筒やキャップ部等の筒体に装着されて使用されるクリップとして、クリップ部材と弾性部材との2部材からなるクリップが知られている。
【0003】
クリップの機能の一つとしては、衣服等の被挟持物を挟持して、筆記具等を被挟持物に保持することがあり、そのためにクリップは弾性を有する必要がある。クリップを一部材で構成する場合には、クリップ本体に弾性を持たせる必要があるため、クリップ部材に該当する部分を薄く扁平な形状等にしなければならない。
【0004】
一方で、クリップの別の機能としては、クリップ自体、延いては該クリップの装着される筆記具等に高級感を持たせることがある。クリップを一部材で構成する場合には、上述のようにクリップ部材に該当する部分の形状が限定されてしまうため、高級感を出すことができない。そこで、クリップを2部材で構成し、弾性部材に弾性を持たせることで、クリップ部材に十分な弾性を持たせることができない形状、例えば厚みのある丸みを帯びた形状等にすることができ、これにより、高級感を出すことが可能となる。
【0005】
このようなクリップとしては、例えば、係止孔が穿設された取付部を有するバネ体と、抱持片を突設した樋形のクリップ扞とからなる筆記具用クリップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この筆記具用クリップは、バネ体の取付部をクリップ扞の抱持片の裏側にクリップ扞の先端方向から挿入し、抱持片を係止孔内に折曲してバネ体をクリップ扞に固着することで一体的に形成されるものである。
【0006】
また、クリップ部と弾性部との2部材で構成される金属製クリップであって、クリップ部の裏面に弾性部を重ね合わせて、クリップ部の裏面の両側起立縁内側を弾性部に向けて潰す加工を施すことで、弾性部の両側縁を挟持する固着部を形成し、これによりクリップ部に弾性部を取り付けるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公平3−7181号公報
【特許文献2】特開2005−131817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来例に係るクリップにおいては、クリップ部材に弾性部材を取り付ける際に、折曲処理や潰し加工を施していた。そのため、これらの処理、加工によって、クリップ部材及び弾性部材に施された塗装やメッキが剥離してしまい、外観上の美しさを損なうという問題があった。
【0008】
一方、折曲処理や潰し加工後にクリップにメッキ処理等を施した場合には、クリップへの均一なメッキ等の処理が困難であり、やはり外観上の美しさを損なうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、外観上の美しさを損なうことなくクリップ部材に弾性部材を取り付けることが可能なクリップ及びこのクリップを有する筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の技術的構成により前記目的を達成できたものである。
【0011】
(1)クリップ部材と、前記クリップ部材に取り付けられる弾性部材とを有するクリップであって、前記クリップ部材が、前記弾性部材を係止するための係止部を有し、前記弾性部材が、前記クリップ部材に挿入され、弾性部材の持つ弾性を利用して前記係止部によって係止されて、前記クリップ部材に取り付けられることを特徴とするクリップ。
【0012】
(2)前記(1)に記載のクリップにおいて、前記弾性部材が、筆記具等の筒体に取り付けられる固定部と、前記係止部と係合する取付部と、前記固定部と前記取付部とを接続する湾曲部とを有し、前記係止部が、前記クリップ部材の中心線方向に突出する係止片を有し、前記取付部が、前記クリップ部材の裏面後端側から挿入され、前記弾性部材が、前記取付部の前端と前記湾曲部とがそれぞれ前記クリップ部材の裏面を押圧し、前記取付部が前記係止片をクリップ部材の裏面と対向する方向に押圧することで、前記クリップ部材に係止されることを特徴とするクリップ。
【0013】
(3)前記(1)に記載のクリップにおいて、前記弾性部材が、筆記具等の筒体に取り付けられる固定部と、先端方向に伸びる延出部を備え前記係止部と係合する取付部と、前記固定部と前記取付部とを接続する湾曲部とを有し、前記係止部が、前記クリップ部材の中心線方向に突出する第一の係止片と、前記第一の係止片の一端から突出する第二の係止片と、前記第二の係止片の一端から後端方向に突出する第三の係止片とを有し、前記取付部が、前記クリップ部材の裏面後端側から挿入され、前記弾性部材が、前記延出部と前記湾曲部とがそれぞれ前記クリップ部材の裏面を押圧し、前記取付部が前記第一の係止片と第三の係止片とによって挟持され、かつ前記第一の係止片をクリップ部材の裏面と対向する方向に押圧することで、前記クリップ部材に係止されることを特徴とするクリップ。
【0014】
(4)前記(1)に記載のクリップにおいて、前記弾性部材が、筆記具等の筒体に取り付けられる固定部と、前記係止部と係合する取付部と、前記固定部と前記取付部とを接続する湾曲部とを有し、前記係止部が、前記クリップ部材の中心線方向に突出する第一の係止片と、前記第一の係止片の一端から突出する第二の係止片と、前記第二の係止片の一端から前記クリップ部材の中心線方向に突出する第三の係止片とを有し、前記取付部の前端部が前記クリップ部材の裏面先端側から挿入されて後端方向にスライドされ、続いて前記弾性部材の後部がクリップ部材の裏面に挿入され、前記弾性部材が、前記湾曲部が前記クリップ部材の裏面を押圧し、前記取付部が前記第三の係止片をクリップ部材の裏面の方向に押圧し、かつ前記第一の係止片をクリップ部材の裏面と対向する方向に押圧することで、前記クリップ部材に係止されることを特徴とするクリップ。
【0015】
(5)前記(1)ないし(4)のいずれかに記載のクリップを有することを特徴とする筆記具。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外観上の美しさを損なうことなくクリップ部材に弾性部材を取り付けることが可能なクリップ及びこのクリップを有する筆記具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0019】
以下、請求項2の発明に係る実施例のクリップについて図1ないし10を用いて説明する。
【0020】
本実施例に係るクリップは筆記具や化粧具等の軸筒やキャップ部等の筒体に装着されて使用されるものであり、クリップ部材1と弾性部材2とを有する。
【0021】
図1はクリップ部材1の底面図、図2はクリップ部材1の中央横断面図である。また、図3の(a)は図2におけるA−A線断面端面図、(b)は図2におけるB−B線断面端面図、(c)は図2におけるC−C線断面端面図である。
【0022】
クリップ部材1は、表面部11と、表面部11の前端部を裏側に折り返して形成された玉部12を有する。
【0023】
表面部11の裏面端部側には係止部13が形成されている。係止部13は、図3に示すように、表面部11端部からクリップ部材1の中心線方向に表面部11側壁に対して略直角に突出する係止片13a及び13cと、クリップ部材1の中心線方向に表面部11側壁に対して鋭角に突出する係止片13bとから成る。
【0024】
次に弾性部材2について説明する。
【0025】
図4は弾性部材2の底面図、図5は弾性部材2の側面図、図6は弾性部材2の背面図である。
【0026】
弾性部材2は弾性を有する所望の金属板等から形成され、その一端側(後端側)に、図9に示す筒体3に固定するための丸孔21aが穿設された固定部21を有する(図6参照)。しかしながら、固定部21の形状は特にこれに限定されない。
【0027】
固定部21には、筒体3の軸心に対して略平行となるように折り曲げられた湾曲部22が連設される。湾曲部22は上方に膨らむように折り曲げられ、頭頂部22aが形成されている。湾曲部22の固定部21との反対端には取付部23が連設される。
【0028】
取付部23は、後述するように係止片13bが嵌合する嵌合凹部24と、嵌合凹部24を挟んで先端側及び後端側にそれぞれ係止段部25a及び25bを有する。係止段部25aの先端側には、弾性部材2の先端方向に向かって、筒体3の軸心から離間する方向(図面上方向)に傾斜する傾斜部26と、傾斜部26から先端方向に伸びる開放前端部27が設けられている。
【0029】
また、取付部23の両側面には広幅部28a及び28bが配設されている。広幅部28a及び28bは、弾性部材2がクリップ部材1に取り付け可能な程度に、広幅部28a及び28bが当接する位置のクリップ部材1の幅よりも広い幅を持つ。
【0030】
続いて、クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける手順を説明する。
【0031】
図7(a)、(b)、(c)は、クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける手順を説明する図であり、図7(c)は図7(b)におけるD−D線断面端面図である。また、図8は取り付け後の状態を示す底面図、図9は取り付け後の状態を示す中央横断面図である。また図10(a)は、図8におけるE−E線断面端面図、図10(b)は、図8におけるF−F線断面端面図、図10(c)は、図8におけるG−G線断面端面図、図10(d)は、図8におけるH−H線断面端面図、図10(e)は、図8におけるI−I線断面端面図である。
【0032】
クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける場合、図7(a)に示すように、クリップ部材1の裏面後端側から、先端方向(図中の黒色矢印方向)に向けて弾性部材2の取付部23を挿入していく。弾性部材2は、取付部23の開放前端部27がクリップ部材1の裏面に摺接した状態で挿入される(図7(c))。
【0033】
図7(b)に示す位置まで弾性部材2が挿入されると、傾斜部26が係止片13cの後端部に当接する。これにより挿入方向に対して抵抗が生じ、挿入が抑止される。この抵抗に逆らってさらに先端方向に力を加えると、傾斜部26と係止片13cとの当接部を支点として開放前端部27に下向きの力が掛かり、弾性部材2が自身の持つ弾性によって変形する。この変形により、傾斜部26の後端側と前端側との高低差が小さくなり、引き続き先端方向への弾性部材2の挿入が可能となる。
【0034】
弾性部材2をさらに挿入すると、図8、図9に示す位置まで到達し、この位置で、弾性部材2がその復元力によって元の形状に戻ろうとするため、クリップ部材1の裏面に対して開放前端部27及び湾曲部22の頭頂部22aが当接し、クリップ部材1に上方向(図9中の矢印I及びII方向)の圧力が掛かる(図10(a)及び(e))。一方、取付部23の裏面が係止片13a及び13cに当接し(図10(b)及び(d))、クリップ部材1に下方向(図9中の矢印III方向)の圧力が掛かる。これにより、弾性部材2がクリップ部材1の裏面と係止部13に挟持された状態でクリップ部材1に係止される。また、クリップ部材1に対する弾性部材2の上下方向(図9の図面上下方向)の位置決めが為される。
【0035】
さらに本実施例においては、この状態で係止片13bが嵌合凹部24に嵌合する(図10(c))。また、係止段部25a及び25bの側面が、それぞれ係止片13aの先端側側面及び係止片13cの後端側側面に当接する。これにより、クリップ部材1に対する弾性部材2の前後方向(挿入方向、図9の図面左右方向)の位置決めが為される。
【0036】
また、広幅部28a及び28bがそれぞれクリップ部材1の表面部11側壁に挟持され、また、嵌合凹部24に嵌合した係止片13bは、嵌合凹部24の側面を挟持する(図10(c))。さらに、湾曲部22の頭頂部22aが表面部11側壁に挟持される(図10(e))。これによりクリップ部材1に対する弾性部材2の左右方向(図9の図面前後方向)の位置決めが為される。
【0037】
以上のように、クリップ部材1に対する弾性部材2の上下前後左右方向の位置決めがなされ、弾性部材2はクリップ部材1に固定される。このようにして形成されたクリップは、弾性部材の弾性によってクリップ部材の玉部が筆記具等の筒体に付勢接触され、これにより被挟持物を挟持するものである。
【実施例2】
【0038】
以下に、請求項3の発明に係る実施例のクリップについて図11ないし20を用いて説明する。
【0039】
本実施例に係るクリップは、クリップ部材1の係止部及び弾性部材2の取付部の構造が実施例1と異なるものであり、それ以外の点は実施例1に係るクリップと同一の構成を有するものである。本実施例については、実施例1と異なる構成のみについて説明し、同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0040】
クリップ部材1について説明する。
【0041】
図11はクリップ部材1の底面図、図12はクリップ部材1の中央横断面図である。また、図13の(a)は図11及び図12におけるJ−J線断面端面図、(b)は図11及び図12におけるK−K線断面端面図である。
【0042】
表面部11の裏面端部側には係止部213が形成されている。係止部213は、図13に示すように、表面部11端部からクリップ部材1の中心線方向に表面部11側壁に対して略直角に突出する第一の係止片213aと、該第一の係止片213aの開放端側から上方向に第一の係止片213aに対して略直角に、すなわち表面部11側壁に対して略平行に突出する第二の係止片213bと、該第二の係止片213bからクリップ後端方向に伸びる第三の係止片213cとから成る。
【0043】
次に弾性部材2について説明する。
【0044】
図14は弾性部材2の平面図、図15は弾性部材2の中央横断面図、図16(a)は図14及び図15におけるL−L線断面端面図、図16(b)は図14及び図15におけるM−M線断面端面図である。
【0045】
取付部223は、後述するように第三の係止片213cが嵌合する嵌合溝224を有する。また、取付部223には先端方向に伸びる2本の延出部225が設けられ、延出部225の前端は上方に屈曲しており、延出部225の内側面には、突起部226が配設されている。延出部225の内幅は第一の係止片213aの幅と略等しい。
【0046】
続いて、クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける手順を説明する。
【0047】
図17は、クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける手順を説明する図である。また、図18は取り付け後の状態を示す底面図、図19は取り付け後の状態を示す中央横断面図である。また図20(a)は、図18及び図19におけるN−N線断面端面図、図20(b)は、図18及び図19におけるO−O線断面端面図、図20(c)は、図18及び図19におけるP−P線断面端面図、図20(d)は、図18及び図19におけるQ−Q線断面端面図である。
【0048】
クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける場合、図17に示すように、クリップ部材1の裏面後端側から、先端方向(図中の矢印方向)に向けて弾性部材2の取付部223を挿入していく。弾性部材2は、取付部223の延出部225前端がクリップ部材1の裏面に摺接した状態で挿入される。
【0049】
延出部225の前端は上方に屈曲しているため、延出部225の裏面が第一の係止片213aの後端部に当接する。これにより挿入方向に対して抵抗が生じ、挿入が抑止される。そのため、延出部225の裏面と第一の係止片213aの後端部との当接部を支点として弾性部材2の後部に下方向の力を加え、弾性部材2を撓み変形させる。このように弾性部材2の弾性を利用して弾性部材2を変形させることで、延出部225の裏面と第一の係止片213aの後端部とが互いに密接した状態でスライド可能となり、引き続き先端方向への挿入が可能となる。
【0050】
弾性部材2を先端方向にさらに挿入すると、延出部225の内側面に配設された突起部226が第二の係止片213bの後端側面に当接し、挿入が抑止される。ここでさらに先端方向に力を加えると、突起部226によって第二の係止片213bが中心線方向に閉じるように僅かに変形する。これにより弾性部材2の先端方向へのさらなる挿入が可能となる。
【0051】
さらに挿入すると、第三の係止片213cが嵌合溝224に嵌合する(図20(c))。弾性部材2が図18及び図19に示す位置に到達すると、弾性部材2がその復元力によって元の形状に戻ろうとするため、クリップ部材1の裏面に対して延出部225の前端部及び湾曲部22の頭頂部22aが当接し、クリップ部材1に上方向(図19中の矢印I及びII方向)の圧力が掛かる(図20(a)及び(d))。一方、取付部223及び延出部225の裏面が係止片213aに当接し(図20(b)及び(c))、クリップ部材1に下方向(図19中の矢印III方向)の圧力が掛かる。したがって、弾性部材2はクリップ部材1の裏面と第一の係止片213aに挟持された状態となる。また、弾性部材2は第一の係止片213a及び第三の係止片213cに挟持される(図20(c))。これにより、弾性部材2がクリップ部材1に係止される。また、クリップ部材1に対する弾性部材2の上下方向(図19の図面上下方向)の位置決めが為される。
【0052】
さらに本実施例においては、突起部226が第二の係止片213bを通過して、弾性部材2が図18及び図19に示す位置に到達すると、第二の係止片213bはその復元力により元の状態に戻り、延出部225の内側面に当接する(図20(b))。さらに、延出部225及び湾曲部22の頭頂部22aの側面がそれぞれ表面部11側壁に当接する。これにより、クリップ部材1に対する弾性部材2の左右方向(図19の図面前後方向)の位置決めが為される。
【0053】
また、この状態で、突起部226の後端面と第二の係止片213bの前端面が当接し、また取付部223の前端面と第二の係止片213bの後端面が当接する。これにより、クリップ部材1に対する弾性部材2の前後方向(挿入方向、図19の図面左右方向)の位置決めが為される。
【0054】
以上のように、クリップ部材1に対する弾性部材2の上下前後左右方向の位置決めがなされ、弾性部材2はクリップ部材1に固定される。
【実施例3】
【0055】
以下に、請求項4の発明に係る実施例のクリップについて図21ないし30を用いて説明する。
【0056】
本実施例に係るクリップは、クリップ部材1の係止部及び、弾性部材2の取付部及び湾曲部の構造が実施例1及び2と異なるものであり、それ以外の点は実施例1及び2に係るクリップと同一の構成を有するものである。本実施例については、実施例1及び2と異なる構成のみについて説明し、同一の構成については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0057】
クリップ部材1について説明する。
【0058】
図21はクリップ部材1の底面図、図22はクリップ部材1の中央横断面図である。また、図23の(a)は図22におけるR−R線断面端面図、(b)は図22におけるS−S線断面端面図、(c)は図22におけるT−T線断面端面図である。
【0059】
表面部11の裏面端部側には係止部313が形成されている。係止部313は、図23に示すように、表面部11端部からクリップ部材1の中心線方向に表面部11側壁に対して略直角に突出する第一の係止片313aと、該第一の係止片313aの開放端側から上方向に第一の係止片313aに対して略直角に、すなわち表面部11側壁に対して略平行に突出する第二の係止片313bと、該第二の係止片313bの開放端側からクリップ部材1の中心線方向に第二の係止片313bに対して略直角に、すなわち第一の係止片313aに対して略平行に伸びる第三の係止片313cとから成る。また、第一の係止片313aは、その後端部において、上方向に僅かに屈曲する屈曲部313dを有する。
【0060】
次に弾性部材2について説明する。
【0061】
図24は弾性部材2の平面図、図25は弾性部材2の側面図、図26は図25におけるU−U線断面端面図である。
【0062】
固定部21には、筒体3の軸心に対して略平行になるように折り曲げられた湾曲部22が連設される。
【0063】
取付部323は、後述するように第三の係止片313cが嵌合する嵌合凹部324と、図26に示すように断面略台形状の縁欠部325を有する。また、縁欠部325の先端側には、嵌合凹部324を含む細幅部326が形成され、細幅部326の先端側には、細幅部326に対して幅の広い開放前端部327が連設される。細幅部326の幅は、向かい合う第一の係止片313aの開放端間の距離と略等しい。
【0064】
続いて、クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける手順を説明する。
【0065】
図27は、クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける手順を説明する図であって、図27(c)は図27(a)におけるV−V線断面端面図、図27(d)は図27(b)におけるW−W線断面端面図、図27(e)は図27(b)におけるX−X線断面端面図、図27(f)は図27(b)におけるY−Y線断面端面図である。また、図28は取り付け後の状態を示す底面図、図29は取り付け後の状態を示す中央横断面図である。また図30(a)は、図28におけるZ−Z線断面端面図、図30(b)は、図28におけるα−α線断面端面図、図30(c)は、図28におけるβ−β線断面端面図、図30(d)は、図28におけるγ−γ線断面端面図、図30(e)は、図28におけるδ−δ線断面端面図である。
【0066】
クリップ部材1に弾性部材2を取り付ける場合、図27(a)に示すように、まずクリップ部材1裏面の係止部313よりも先端側に弾性部材2の開放前端部327を挿入する。続いて、開放前端部327を第一の係止片313aの上方に、縁欠部325よりも後端側を第一の係止片313aの下方に位置させた状態で性部材2を後端方向(図27(a)中の黒色矢印方向)にスライドさせる。その際、細幅部326が向かい合う第一の係止片313aの間を通過する。弾性部材2は、開放前端部327の前端がクリップ部材1の裏面に摺接した状態でスライドする(図27(c))。
【0067】
図27(b)に示す位置まで到達すると、開放前端部327の後端面が第二の係止片313bの前端面に当接し、これにより後端方向への移動が抑止される。続いて弾性部材2の後部を上方向(図27(b)の黒色矢印方向)に移動させると、縁欠部325の縁欠部分が屈曲部313dに当接する。これにより抵抗が生じるがさらに上方向に力を加えると、縁欠部325に圧されてクリップ部材1が外側に開く方向に僅かに変形し(図27(f))、縁欠部325が屈曲部313dを通過可能となる。縁欠部325が屈曲部313dを乗り越えると、屈曲部313dは自身の復元力により元の状態に戻り、縁欠部325の底面が屈曲部313dに係止される(図30(d))。
【0068】
この状態で、弾性部材2の有する弾性により、クリップ部材1の裏面に対して湾曲部22が当接し、クリップ部材1に上方向(図29中の矢印IV方向)の圧力が掛かる(図30(e))。また、第三の係止片313cに嵌合凹部324が当接し、クリップ部材1に上方向(図29中の矢印III方向)の圧力が掛かる(図30(c))。また、屈曲部313dに縁欠部325の裏面が当接し、クリップ部材1に下方向(図29中の矢印II方向)の圧力が掛かる(図30(d))。さらに、第一の係止片313aに開放前端部327の裏面が当接し、クリップ部材1に下方向(図29中の矢印I方向)の圧力が掛かる(図30(a))。これにより、弾性部材2がクリップ部材1に係止される。また、クリップ部材1に対する弾性部材2の上下方向(図29の図面上下方向)の位置決めが為される。
【0069】
さらに本実施例においては、この状態で、嵌合凹部324に第三の係止片313cが嵌合し(図30(c))、細幅部326の側面が第二の係止片313bに挟持される(図30(b)及び(c))。また、湾曲部22が表面部11側壁に挟持される(図30(e))。これにより、クリップ部材1に対する弾性部材2の左右方向(図29の図面前後方向)の位置決めが為される。
【0070】
また、開放前端部327の後端面が第二の係止片313bの前端面に当接し、縁欠部325の前端面が第二の係止片313bの後端面に当接する。さらに、嵌合凹部324の先端側及び後端側の側面がそれぞれ、第三の係止片313cの前端面及び後端面に当接する。これにより、クリップ部材1に対する弾性部材2の前後方向(図29の図面左右方向)の位置決めが為される。
【0071】
以上のように、クリップ部材1に対する弾性部材2の上下前後左右方向の位置決めがなされ、弾性部材2はクリップ部材1に固定される。
【0072】
以上説明したように、実施例1ないし3によれば、弾性部材の持つ弾性を利用して弾性部材をクリップ部材の裏面及び係止部に当接させて、弾性部材をクリップ部材に係止させる。これにより、折曲処理や潰し加工を施すことなく、クリップ部材に弾性部材を取り付けることができる。そのため、メッキ等の剥離を回避し、外観上の美しさを損なうことなくクリップ部材に弾性部材を取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例1に係るクリップ部材の底面図
【図2】クリップ部材の中央横断面図
【図3】(a)、(b)、(c)はクリップ部材の断面端面図
【図4】弾性部材の底面図
【図5】弾性部材の側面図
【図6】弾性部材の背面図
【図7】(a)、(b)、(c)は、クリップ部材に弾性部材を取り付ける手順を説明する図
【図8】取り付け後の状態を示す底面図
【図9】取り付け後の状態を示す中央横断面図
【図10】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、クリップの断面端面図
【図11】実施例2に係るクリップ部材の底面図
【図12】クリップ部材の中央横断面図
【図13】(a)、(b)はクリップ部材の断面端面図
【図14】弾性部材の平面図
【図15】弾性部材の中央横断面図
【図16】(a)、(b)は弾性部材の断面端面図
【図17】クリップ部材に弾性部材を取り付ける手順を説明する図
【図18】取り付け後の状態を示す底面図
【図19】取り付け後の状態を示す中央横断面図
【図20】(a)、(b)、(c)、(d)はクリップの断面端面図
【図21】実施例3に係るクリップ部材の底面図
【図22】クリップ部材の中央横断面図
【図23】(a)、(b)、(c)はクリップ部材の断面端面図
【図24】弾性部材の平面図
【図25】弾性部材の側面図
【図26】弾性部材の断面端面図
【図27】クリップ部材に弾性部材を取り付ける手順を説明する図
【図28】取り付け後の状態を示す底面図
【図29】取り付け後の状態を示す中央横断面図
【図30】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、クリップの断面端面図
【符号の説明】
【0074】
1 クリップ部材
2 弾性部材
3 筒体
11 表面部
12 玉部
13、213、313 係止部
21 固定部
22 湾曲部
23、223、323 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ部材と、前記クリップ部材に取り付けられる弾性部材とを有するクリップであって、
前記クリップ部材が、前記弾性部材を係止するための係止部を有し、
前記弾性部材が、前記クリップ部材に挿入され、弾性部材の持つ弾性を利用して前記係止部によって係止されて、前記クリップ部材に取り付けられることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップにおいて、
前記弾性部材が、筆記具等の筒体に取り付けられる固定部と、前記係止部と係合する取付部と、前記固定部と前記取付部とを接続する湾曲部とを有し、
前記係止部が、前記クリップ部材の中心線方向に突出する係止片を有し、
前記取付部が、前記クリップ部材の裏面後端側から挿入され、
前記弾性部材が、前記取付部の前端と前記湾曲部とがそれぞれ前記クリップ部材の裏面を押圧し、前記取付部が前記係止片をクリップ部材の裏面と対向する方向に押圧することで、前記クリップ部材に係止されることを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項1に記載のクリップにおいて、
前記弾性部材が、筆記具等の筒体に取り付けられる固定部と、先端方向に伸びる延出部を備え前記係止部と係合する取付部と、前記固定部と前記取付部とを接続する湾曲部とを有し、
前記係止部が、前記クリップ部材の中心線方向に突出する第一の係止片と、前記第一の係止片の一端から突出する第二の係止片と、前記第二の係止片の一端から後端方向に突出する第三の係止片とを有し、
前記取付部が、前記クリップ部材の裏面後端側から挿入され、
前記弾性部材が、前記延出部と前記湾曲部とがそれぞれ前記クリップ部材の裏面を押圧し、前記取付部が前記第一の係止片と第三の係止片とによって挟持され、かつ前記第一の係止片をクリップ部材の裏面と対向する方向に押圧することで、前記クリップ部材に係止されることを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項1に記載のクリップにおいて、
前記弾性部材が、筆記具等の筒体に取り付けられる固定部と、前記係止部と係合する取付部と、前記固定部と前記取付部とを接続する湾曲部とを有し、
前記係止部が、前記クリップ部材の中心線方向に突出する第一の係止片と、前記第一の係止片の一端から突出する第二の係止片と、前記第二の係止片の一端から前記クリップ部材の中心線方向に突出する第三の係止片とを有し、
前記取付部の前端部が前記クリップ部材の裏面先端側から挿入されて後端方向にスライドされ、続いて前記弾性部材の後部がクリップ部材の裏面に挿入され、
前記弾性部材が、前記湾曲部が前記クリップ部材の裏面を押圧し、前記取付部が前記第三の係止片をクリップ部材の裏面の方向に押圧し、かつ前記第一の係止片をクリップ部材の裏面と対向する方向に押圧することで、前記クリップ部材に係止されることを特徴とするクリップ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のクリップを有することを特徴とする筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2007−296826(P2007−296826A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128972(P2006−128972)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】