説明

クリプトスポリジウム病原体を検出するための方法、組成物及びキット

本発明は、クリプトスポリジウムなどの寄生虫を、非イオン性洗浄剤及びECL検出を使用して、分子マーカー又は抗原を効果的に抽出することによって検出するための有効で、感受性が高く、信頼できる方法を提供し、さらにそのような方法を実施するためのキット及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.背景
本出願は、2003年9月16日出願の米国仮特許出願番号第60/503,362号に対する優先権の利益を主張し、本願明細書にこの全体を援用する。
【背景技術】
【0002】
クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)は、ヒト及び動物に感染して、重篤な腸障害を引き起こす食媒性寄生虫及び水媒性寄生虫の属である(C.Drozdら(1996)Appld.Eviron.Micro.,62(4):1227−1232)。この感染は、オーシストの形で、主に糞口接触を通して伝播する。一方、クリプトスポリジウム感染は、一般に、ヒトの生命を脅かすものではないが、免疫無防備状態に対しては非常に危険である可能性がある。汚染された水によるクリプトスポリジウムパルバム(Cryptosporidium parvum;C.パルバム(C.parvum))の最近の集団発生は、水、食品、環境試料、ヒト、動物及びその他の潜在性汚染源でクリプトスポリジウムを検出することの重要性を強調している。
【0003】
クリプトスポリジウムオーシストの検出方法は、米国特許番号第6,146,838号(Williamsら)及び米国特許番号第6,475,747号(Tsangら)に記載され、これらは本願明細書に援用する。両方の特許は、クリプトスポリジウム卵母細胞由来の抗原を可溶化すること、及びこの可溶化した抗原を検出することについて述べている。米国特許番号第6,146,838号は、胆汁酸塩及び/又はイオン性洗浄剤の存在下での可溶化について特に述べている。米国特許番号第6,475,747号は、両性イオン性洗浄剤を使用したオーシストの可溶化について述べている。また、両方の特許は、可溶化した抗原を検出するために電気化学発光(ECL)イムノアッセイを使用することを述べている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書ではクリプトスポリジウムオーシストの検出のために改善された方法を示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
II.発明の概要
本発明は、クリプトスポリジウム寄生虫検出のための有効で、感受性が高く、信頼できる方法を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態は、例えば、クリプトスポリジウムのオーシスト及び/又はスポロゾイトなどの、クリプトスポリジウムを試料内で測定するための方法であって、前記試料を、例えば、炭水化物、タンパク質又は糖タンパク質のマーカーなどのクリプトスポリジウムの1種又は複数のマーカーである抽出媒体に、抽出、及び好ましくは可溶化するのに十分な時間、抽出媒体でインキュベートする方法である。
【0007】
抽出媒体は、一般式R−(OCHCH−O−Z(式中、(i)Rは、−H又は−CHであり、(ii)nは、2を超える整数であり、(iii)Zは、例えば−(CHCH(式中、mは7〜17である)などのアルカリ基である)の非イオン性アルカリポリオキシエチレン洗浄剤を含む抽出試薬を含む。本発明の特定の実施形態において、抽出媒体は、一般式R−(OCHCH−O−Z(式中、(i)Rは、−Hであり、(ii)nは、8〜23の整数であり、(iii)Zは、−(CHCH(式中、mは7〜17である)である)の非イオン性アルカリポリオキシエチレン洗浄剤を含む抽出試薬を含む。本試験の様々な実施形態において、抽出媒体は、一般式R−(OCHCH−O−Z(式中、(i)Rは、−Hであり、(ii)nは、12であり、(iii)Zは、−(CHCH(式中、mは11である)である)の非イオン性アルカリポリオキシエチレン洗浄剤を含む抽出試薬を含む。特定の実施形態において、抽出試薬は、Laureth−12としても知られるH−(OCHCH12−O−(CH11CHを含むことができる。
【0008】
試料抽出の間、洗浄剤の濃度は、0.001〜1.0重量%とすることができる。一部の実施形態において、洗浄剤の濃度は、0.002〜0.1重量%とすることができる。特定の実施形態において、洗浄剤の濃度は、0.01〜0.05重量%とすることができる。さらに、抽出媒体は、pH緩衝剤を含むことができる。本試料は、75℃又は95℃を超える温度などの50℃を超える温度で、抽出媒体の存在下でインキュベートすることができる。一部の実施形態において、本抽出媒体の温度は、100℃以上とすることができる。
【0009】
抽出したクリプトスポリジウムのマーカーは、本試料のクリプトスポリジウムを検出するために測定する。マーカーの測定は、例えば、ECLイムノアッセイなどのイムノアッセイを使用して実施することができる。特定の実施形態において、この測定は、抽出マーカー及び(場合によって)可溶化マーカー、並びにマーカーを認識する抗体を含むアッセイ混合物を形成し、マーカーが抗体に結合して、抗体−抗原複合体を形成するのに十分な条件下でこの混合物を培養し、この抗体−抗原複合体の存在を判定することによって、クリプトスポリジウムを測定することを含むことができる。
【0010】
本発明の特定の実施形態に従って、抽出ステップの生成物は、クリプトスポリジウムの検出ステップの実施前に、検出ステップを最適化する緩衝液などによって、緩衝液を交換することができる。さらに、遠心及び/又はろ過を、可溶化マーカーの検出前に、本抽出ステップの生成物から粒状の細片を取り除くために使用してもよい。さらに、試料を抽出試薬と接触させる前に、例えば、ろ過又は遠心によって濃縮してもよい。
【0011】
さらに、本発明は、試料内の例えばC.パルバムなどのクリプトスポリジウムを測定するキット(及び試薬組成物)に関する。一部の実施形態に従って、本キットは、i)本発明の抽出方法に従って、例えば、C.パルバムの卵母細胞などのクリプトスポリジウム卵母細胞のマーカーを可溶化することにおいて好適な例えば、Laureth−12などの非イオン性洗浄剤を含む抽出試薬、及びii)マーカーに結合する抗体を、1つ又は複数の容器に含む。本発明の抗体は、例えば、電気化学発光標識などの検出可能な標識で標識することができる。また、本キットはマーカーに結合する第二抗体を含むことができる。本キットは、第二抗体を固定するか、固定することが可能な固相をさらに含むことができる。一部の実施形態において、例えば、この固相は磁化可能粒子などの粒子である。他の実施形態では、この固相は、例えば、マルチウェルプレートのウェルの表面など、スライド又は容器の表面とすることができる。特定の実施形態において、この固相は、例えば、炭素電極の表面など、電極の表面とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
III.発明の詳細な説明
本発明の一態様は、試料から微生物マーカーを抽出するための方法に関する。本明細書では、マーカーは、試料内の微生物の量又は存在を判定するために測定することができる微生物の成分を指す。本明細書では、抽出は、マーカーをより測定しやすいようにするために試料を加工することを指す。本明細書では、測定は、定量的及び定性的測定を含むと理解され、分析物の存在を検出すること、分析物の量を測定すること、及び/又は試料の分析物を特定することを含むが、これらには限定されない様々な目的のために実施される測定を含む。この方法は、様々な種類の試料で、例えば、C.パルバムを含むクリプトスポリジウム及びこれら菌の卵母細胞などの微生物の測定を迅速かつ容易に実施するのに適している。本発明の抽出方法は、多種多様な微生物からのタンパク質様マーカー、炭水化物マーカー、核酸マーカー及び/又は脂質マーカーなどの多種多様のマーカーによって使用することができる。特定の実施形態において、本マーカーは、例えば、病原菌に存在するタンパク質、炭水化物及び/又は糖タンパク質を含む抗原などの抗原マーカーであって、例えば、C.パルバムのようなクリプトスポリジウム属のメンバーを含む卵母細胞形成原生動物などの原生動物である病原菌である。
【0013】
本発明の一部の実施形態に従って、病原菌(例えば、C.パルバムのようなクリプトスポリジウム属のメンバーなどの卵母細胞形成原生動物などの原生動物)による汚染が疑われる試料を菌からマーカーを、抽出及び場合によっては可溶化する抽出試薬によって処理する。マーカーが当該の属又は種に固有である場合、本発明において有益である。次に、抽出及び場合によっては可溶化したマーカーを測定する。抽出したマーカーの測定は、試料内の菌の存在、量及び/又は菌種の検出を可能にする。例として、抽出は、例えば(i)膜、細胞壁、エンベロープなどを破壊又は可溶化してマーカーを放出し、膜、細胞壁又はエンベロープなどに含めるか入れる、結合させる、及び/又は組み入れることによって、(ii)マーカーを大きな化学的成分から切断することによって、(iii)多糖類の外被を分解及び/又は溶解することによって、並びに/或いは(iv)ゼリーの外被を分解及び/又は溶解することによって、細胞、微生物又は細胞小器官からマーカーを遊離することを含むことができる。また、抽出ステップは、周囲の試料基質の成分からマーカー、細胞、細胞小器官及び/又は微生物を遊離することを含むことができる。基質は、菌及びマーカーが存在する媒体を含むことができる。様々な実施形態において、試料の抽出は、当該のマーカーの可溶化につながる。
【0014】
本発明の特定の実施形態に従って、クリプトスポリジウムの卵母細胞による汚染が疑われる試料を、試料内のクリプトスポリジウム卵母細胞由来のマーカーを可溶化する抽出試薬によって処理する。マーカーは、例えば、C.パルバムなどのクリプトスポリジウムに固有とすることが可能である。そのあと、可溶化したマーカーを(測定ステップ時に)測定することができる。可溶化マーカーの測定は、試料内のクリプトスポリジウムの存在又は量の検出を可能にする。特定の実施形態において、測定結果をマーカーの種類に対して特異的とすることができる。例として、可溶化マーカーの測定を、例えばC.パルバム卵母細胞などのクリプトスポリジウム卵母細胞に対して特異的にすることができる。もちろん、非常に特異的なアッセイであっても、いくつかの密接に関連した交差反応物質が存在する可能性があることがわかっている。
【0015】
一部の実施形態において、本発明の抽出/可溶化ステップに使用する抽出試薬は、一般式R−(OCHCH−O−Z(式中、i)Rは、−H又はCHであり、ii)nは、8、12及び23などの2を超える整数であり、iii)Zは、例えば−(CHCH(式中、mは7〜17であり、一部の実施形態では11である)などのアルカリ基である)の非イオン性アルカリポリオキシエチレン洗浄剤を含む抽出試薬とすることができる。本発明の試薬は、化粧品原料国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients;INCI)に従って、Laureth−12としても知られるH−(OCHCH12−O−(CH11CHを含むことができる。
【0016】
本発明で有用な洗浄剤の例を次に掲げる、
・BRIJ35、30%水溶液、
・BRIJ(登録商標)35、タンパク質グレード(PROTEIN GRADE)洗浄液、無菌ろ過済10%溶液、
・GENAPOL C−100、タンパク質グレード洗浄液、無菌ろ過済10%溶液、
・GENAPOL X−080、タンパク質グレード洗浄液、無菌ろ過済10%溶液、
・GENAPOL X−100、タンパク質グレード洗浄液、無菌ろ過済10%溶液、
・オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、
・水素化オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、
・水素化オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、
・ポリエチレングリコールドデシルエーテル、
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル、
・ポリオキシエチレン(10)ドデシルエーテル、
・ポリオキシエチレン(10)イソトリデシルエーテル、
・ポリオキシエチレン(8)ドデシルエーテル、
・ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、
・ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、
・ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、
・ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、
・ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、
・ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロック共重合体である。
【0017】
例えば、Laureth−12などの、これらの非イオン性洗浄剤は、先行技術において使用されている両性イオン性合成化合物及びイオン性洗浄剤と比べて、クリプトスポリジウムのマーカーの抽出法及び測定法の性能を向上させることが認められている。本発明の試薬は、分析に有用で、利用可能なマーカーをより生産し、より低い濃度で使用することができる。本抽出試薬は、主に水性にすることができ、塩及び/又はpH緩衝剤を含むこともできる。一部の実施形態において、試薬を、イムノアッセイで抗原抗体複合体の構成体と適合性を持つpHで緩衝することができる。例えば、pHを6.5〜8.5とすることができる。一部の実施形態において、pHを7.0〜8.0とすることができる。代わりに、試料を、例えば、透析、限外ろ過、ゲルろ過及び当技術分野において周知のその他の方法を通した検出ステップの前に、緩衝液交換することができる。
【0018】
本発明の一部の実施形態において、クリプトスポリジウムオーシストを含むことが疑われる試料を、例えば、Laureth−12などの前述の非イオン性アルカリポリオキシエチレン洗浄剤を含む緩衝液に接触させることが可能で、この場合、接触は微生物マーカーを可溶化するのに十分な時間、高温で実施する。特定の実施形態では、75℃を超える温度で接触を実施する。他の実施形態では、接触を95℃又は100℃を超える温度で実施したあと、可溶化した物質で、クリプトスポリジウム試験用試薬を使用して、クリプトスポリジウムマーカーの検出を行う。
【0019】
試料を抽出試薬に接触させる前及び/又は検出ステップの前に、本発明の抽出法は、クリプトスポリジウムオーシストを含むことが疑われる試料を、例えば、ろ過又は遠心によって濃縮することを含むことができる。また、遠心又はろ過を、可溶化後、しかし可溶化したマーカーの検出前に、粒状の細片を取り除くために使用してもよい。
【0020】
抽出したマーカーの測定は、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、核酸増幅アッセイ、細胞培養アッセイ、凝集検査、イムノアッセイ(又は当該マーカーの特異的な結合パートナーの使用に基づくその他のアッセイ形式)、免疫クロマトグラフィーアッセイ、酵素アッセイなどを含むがこれに限定されない、生物検定の技術分野で利用できる多数の技術のいずれかによって実施することができる。様々な実施形態において、検出法を、例えば、イムノアッセイなどの結合アッセイとすることが可能であり、この検出ステップは、当該のマーカーに特異的に結合することが可能な1種又は複数の検出分子とアッセイ組成物を接触させることによって実施することができる。特定の実施形態において、アッセイはサンドイッチアッセイ又は競合結合アッセイ形式を使用する。試験紙で実施するサンドイッチイムノアッセイの例は、米国特許番号第4,168,146号(Grubbら)及び米国特許番号第4,366,241号(Tomら)に記載されており、これらは本願明細書に援用する。本発明の使用に適した競合イムノアッセイ装置の例は、米国特許番号第4,235,601号(Deutschら)、米国特許番号第4,442,204号(Liotta)及び米国特許番号第5,208,535号(Buechlerら)によって開示される装置を含み、それぞれ本願明細書に援用する。一部の実施形態では、そのようなアッセイに用いられる結合試薬のうちの少なくとも1種は、固相担体上で固定することができる。本発明の一部の実施形態では、この病原菌検出を電気化学発光(ECL)標識抗体によるイムノアッセイを使用することによってさらに改善することができる。
【0021】
本発明の特定の実施形態に従って、試料に本発明の抽出法を行い、その後、例えば、ECLイムノアッセイなどのECLアッセイ形式を使用してマーカーの測定を実施することができる。ECLの高い感受性、広いダイナミックレンジ及び選択性は、医学的診断目的にとって有用である。市販のECL器具は、複合試料基質に対する優れた感受性、ダイナミックレンジ、精度及び許容性など、様々な理由により広く使用されるようになっている。
【0022】
様々な実施形態において、マーカーを、ECL検出を使用した固相サンドイッチイムノアッセイで測定することができる。固相サンドイッチイムノアッセイでは、マーカーに対してi)固相に(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用などの特定の結合対の形成を通して)結びつくことができるか、結びつく能力がある捕捉抗体、及びii)ECL標識などの標識に(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン相互作用などの特定の結合対の形成を通して)結びつくことができるか、結びつく能力がある検出抗体の2種の抗体を使用することができる。マーカーの存在下で、2種の抗体をマーカーに結合させて、標識を含む固相上で「サンドイッチ複合体」を形成させることができるように、可溶化マーカーを含む試料を、2種の抗体及び固相と接触させることができる。固相上の標識を、試料内のマーカー測定の代用として、測定することができる。
【0023】
特定の市販の器具類は、永続的で再使用可能なフローセルによる、フローセルに基づいた設計を使用している。これらの器具の種類で実施される大部分の結合アッセイは、固相結合アッセイのための固相担体として、磁気反応性の粒子を使用している。この粒子に結合するECL標識を含む免疫複合体を、磁石を用いてフローセルの電極上で収集することができる。収集した粒子上の標識を、電極に電圧をかけることによって、ECLを放出するように誘発することが可能で、標識量測定の代用として、ECLを測定することができる。また、ECLアッセイ法は、ECLを誘発する電圧をかける前に、ECL共反応物を導入するステップを含むことができる。
【0024】
最近、ECL器具使用について、ECLを誘発するために使用される電極上に固定した試薬を使用することが述べられている(参照、米国特許番号第6,140,045号、同第6,066,448号、同第6,090,545号、同第6,207,369号及び発行PCT出願番号第W098/12539号)。この場合、電極自体が固相担体となる。また、そのようなECL測定に適した電極が組み込まれたマルチウェルプレートも、最近開示されている(例えば、出願中の米国出願番号第10/185,274号及び同第10/185,363号を参照(表題「アッセイプレート、リーダーシステム及び発光試験測定法(Assay Plates, Reader Systems and Methods for Luminescence Test Measurements)」、それぞれ2002年6月28日に出願された。これらは、この参照により開示に含まれる)。これらの電極が組み込まれたマルチウェルプレートは、ウェル内に複数のアッセイドメインを有するプレートを含むことが可能で、複数の結合試薬を固定化することができる。マルチウェルアッセイプレートを使用することにより、プレートのマルチウェル内に分散させた複数の試料の並行した加工及び分析が可能となる。
【0025】
本発明の特定の実施形態は、イムノアッセイでのECL標識、及びECL標識抗体などのECL標識を含む標識試薬を使用する。現時点で、分析的測定のための多くのECL標識が市販されている。ECL標識、共試薬、並びに検出又は測定の方法及びシステムは、例えば、米国特許番号第5,093,268号、同第5,147,806号、同第5,324,457号、同第5,591,581号、同第5,597,910号、同第5,641,623号、同第5,643,713号、同第5,679,519号、同第5,705,402号、同第5,846,485号、同第5,866,434号、同第5,786,141号、同第5,731,147号、同第6,066,448号、同第6,136,268号、同第5,776,672号、同第5,308,754号、同第5,240,863号、同第6,207,369号及び同第5,589,136号、並びにPCT出願番号第WO99/63347号、同第W000/03233号、同第WO99/58962号、同第WO99/32662号、同第W099/14599号、同第W098/12539号、同第W097/36931号、同第W098/57154号、並びにPCT/USO2/19788に記載されており、これらすべてを本願明細書に援用する。本発明に有用なECL標識の例は、i)金属が、トリスビピリジルルテニウム(RuBpy)などのRu含有有機金属化合物及びOs含有有機金属化合物を含むVIII群の貴金属に由来する、有機金属化合物、並びにii)ルミノール及び関連の化合物を含む。
【0026】
ECLステップでECL標識に関与する種を、本明細書ではECL共反応物と呼ぶ。一般に使用されるECL共反応物は、第3級アミン(例えば、米国特許番号第5,846,485号参照。本記載を本願明細書に援用する)、シュウ酸塩、RuBpy由来のECLのための過硫酸塩及びルミノール由来のECLのための過酸化水素(例えば、米国特許番号第5,240,863号参照。本記載を本願明細書に援用する)を含む。さらに、ECL標識によって発生した光を、診断におけるレポーターシグナルとして使用することができる(米国特許番号第5,238,808号(Bardら)参照。本記載を本願明細書に援用する)。例えば、ECL標識を、抗体などの結合試薬に共有結合させることが可能であり、結合相互作用における結合試薬の関与は、ECL標識から放出されるECLを測定することによって監視することができる。
【実施例】
【0027】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の範囲内に入る抽出、プレート、キット及び方法の一部を例証する。もちろん、これらはいかなる形であれ本発明を制限するものと考慮されない。過度の実験なしに当業者によって、本発明に関する数多くの変更及び改造を行うことが可能である。
【0028】
材料及び方法
試験試料:
クリプトスポリジウムオーシストは、Pleasant Hill Farmsから購入し、分析前にリン酸緩衝食塩水(PBS、BioWhittaker)で所望の濃度に希釈した。
【0029】
抽出:
一連の抽出試薬を比較した。それぞれが、0.06%Laureth−12、0.03%Laureth−12、2%Zwittergent(登録商標)、0.5%SDS又は0.25%SDSのいずれかで補われたPBSから成っていた。抽出試薬を、被験試料と1:1の比で混合して、0.03%Laureth−12、0.015%Laureth−12、1%Zwittergent(登録商標)、0.25%SDS又は0.125%SDSの最終濃度にし、100℃で60分間培養した。
【0030】
試料を13,000rcfで10分間遠心して細片を取り除き、分析のために一定分量500μLを使用した。また、SDS含有試料を10%BSA又は5%BSAで処理して、洗浄剤の分析に及ぼす影響を排除した。
【0031】
(実施例1)
試料調製の有効性を、クリプトスポリジウムに対するECLサンドイッチイムノアッセイによって検査した(キットとしてBioveris社から入手可能なPATH/GEN(登録商標)クリプトスポリジウムパルバム試験)。このアッセイは、ビオチン標識捕捉抗体、及びルテニウム(II)−トリス−ビピリジンの誘導体であるBV―TAG(登録商標)NHSエステル(Bioveris社)で標識した検出抗体を使用した。試料を、あらかじめストレプトアビジンでコーティングした磁気反応性ビーズに結合させたTAG標識抗体及びビオチン抗体と合わせ、さらに培養してビーズ上にサンドイッチ複合体を形成させた。得られたビーズ懸濁液を、ORIGEN(登録商標)分析器(IGENインターナショナル)及びECL検出によって分析した。
【0032】
表1〜3に示した結果は、非イオン性洗浄剤Laureth−12が、両性イオン性洗浄剤Zwittergent(登録商標)及びイオン性洗浄剤SDSと比べて、より低い濃度の洗浄剤で、より優れた抽出効率をもたらすことを実証している。ECLは生の電気化学発光シグナルであり、S/BGはバックグラウンド比に対するシグナルである(すなわち、可溶化卵母細胞の存在下及び不在下でのシグナル比である)。
【表1】


【表2】


【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試料を抽出試薬と合わせて、抽出混合物を形成するステップであって、前記抽出試薬が式R−(OCHCH−O−Z(式中、
i)Rは、−H又は−CHであり、
ii)nは、2を超える整数であり、
iii)Zは、アルキル基である)
の非イオン性洗浄剤を含むステップと、
(b)前記抽出混合物を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストの1種又は複数のマーカーを抽出するのに十分な時間インキュベートするステップと、
(c)前記1種又は複数のマーカーを測定するステップと
を含む、前記試料におけるクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を検出する方法。
【請求項2】
RはHであり、nは8〜23であり、Zは−(CHCH(式中、mは7〜17である)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クリプトスポリジウムパルバム(Cryptosporidium parvum)に選択的なマーカーを測定する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非イオン性洗浄剤が、Laureth−12である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測定ステップが、
(a)アッセイ混合物を形成するステップであって、前記アッセイ混合物が、
(i)前記マーカー及び
(ii)前記マーカーに特異的な抗体
を含むステップと、
(b)前記抗体を前記マーカーに結合させるのに十分な条件下で、前記アッセイ混合物をインキュベートすることによって、抗体−マーカー複合体を形成するステップと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定がイムノアッセイによって実施される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検出がECLイムノアッセイによって実施される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出試薬がpH緩衝剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定ステップの前に、前記抽出混合物を前記測定ステップに最適な異なる緩衝液へ交換する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出混合物のLaureth−12の濃度が0.002〜0.1重量%である請求項4に記載の方法。
【請求項11】
Laureth−12の濃度が0.01〜0.05重量%である請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記マーカーが炭水化物マーカー、タンパク質マーカー及び/又は糖タンパク質マーカーである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抽出混合物を、50℃を超える温度でインキュベートする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出混合物を、75℃を超える温度でインキュベートする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抽出混合物を、95℃を超える温度でインキュベートする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記試料を前記抽出試薬と合わせる前に、前記試料内のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を濃縮するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記マーカーを測定する前に、前記抽出混合物から不溶性細片を取り除くことをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
(a)試料を抽出試薬と合わせることによって前記試料を抽出して、抽出混合物を形成するステップであって、前記抽出試薬が式R−(OCHCH−O−Z(式中、
i)Rは、−H又は−CHであり、
ii)nは、2を超える整数であり、
iii)Zは、アルキル基である)
の非イオン性洗浄剤を含むステップと、
(b)前記抽出混合物内で、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシスト及び/又はスポロゾイトの抗原を可溶化するステップと、
(c)(i)前記可溶化した抗原、及び
(ii)前記抗原に特異的な抗体を
含むアッセイ混合物を形成するステップと、
(d)前記抗体を前記抗原に結合させるのに十分な条件下で、前記アッセイ混合物をインキュベートすることによって、抗体−抗原複合体を形成するステップと、
(e)前記抗体−抗原複合体を測定することによって、前記試料内のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を測定するステップと
を含む、前記試料内のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を検出する方法。
【請求項19】
RはHであり、nは8〜23であり、Zは−(CHCH(式中、mは7〜17である)である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マーカーがクリプトスポリジウムパルバム(Cryptosporidium parvum)に選択的である請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記非イオン性洗浄剤がLaureth−12である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記抽出混合物の前記Laureth−12の濃度が0.002〜0.1重量%である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抽出混合物の前記Laureth−12の濃度が0.01〜0.05重量%である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抽出を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、50℃を超える温度で実施する請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記抽出を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、75℃を超える温度で実施する請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記抽出を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、95℃を超える温度で実施する請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記試料を抽出する前に、前記試料のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を濃縮するステップをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体−抗原複合体を測定する前に、前記抽出混合物から不溶性細片を取り除くステップをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項29】
(a)試料を抽出試薬と合わせて、抽出混合物を形成するステップと、
(b)クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、前記抽出混合物をインキュベートするステップと、
(c)イムノアッセイにより前記マーカーを測定するステップと
を含む前記試料のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を検出するための改善された方法であって、前記改善が化学式
R−(OCHCH−O−Z(式中、
i)Rは、−H又はCHであり、
ii)nは、2を超える整数であり、
iii)Zは、アルキル基である)
の非イオン性洗浄剤から選択した洗浄剤を含む抽出試薬の使用である改善された方法。
【請求項30】
RはHであり、nは8〜23であり、Zは−(CHCH(式中、mは7〜17である)である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記マーカーが選択的マーカーC.パルバム(C.parvum)である請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記非イオン性洗浄剤がLaureth−12である請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記抽出混合物の前記Laureth−12の濃度が0.002〜0.1重量%である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抽出混合物の前記Laureth−12の濃度が0.01〜0.05重量%である請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記可溶化を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、50℃を超える温度で実施する請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記可溶化を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、75℃を超える温度で実施する請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記可溶化を、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーを可溶化するのに十分な時間、95℃を超える温度で実施する請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記試料を前記抽出試薬と合わせる前に、前記試料内のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を濃縮するステップをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記濃縮ステップが前記試料を遠心することを含む請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記マーカーを測定する前に、前記抽出混合物から不溶性細片を取り除くステップをさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記不溶性細片の除去ステップが前記抽出混合物を遠心することを含む請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(a)一般式R−(OCHCH−O−Z(式中、
i)Rは、−H又はCHであり、
ii)nは、2を超える整数であり、
iii)Zは、アルキル基である)
の非イオン性洗浄剤を含む抽出試薬と、
(b)クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)オーシストのマーカーに結合する抗体と
を1つ又は複数の容器に含み、
前記抽出試薬がクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を抽出して前記マーカーを可溶化するのに適している、試料内のクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)を測定するためのキット。
【請求項43】
前記抽出試薬がLaureth−12である請求項42に記載のキット。
【請求項44】
電気化学発光標識をさらに含む請求項43に記載のキット。


【公表番号】特表2007−506098(P2007−506098A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526928(P2006−526928)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029087
【国際公開番号】WO2005/033708
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(505000103)バイオヴェリス コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】