説明

クリーニングカード

【課題】カード利用機器に内蔵されたセンサー等を確実にクリーニングすることのできるクリーニングカードを提供する。
【解決手段】クリーニングカード1は、矩形板状のカード2と、カード2が挿入可能な筒状の布部材3とから構成されている。カード2の2つの表面2a,2bは、布部材3の内表面3aと重なり合っている。布部材3は、ポリエチレンテレフタレートからなる不織布で形成されている。布部材3の外表面3bには、カード2の幅方向に延びるように、不織布の一部を重ね合わせて接着することにより形成された2つの接着部4,5が設けられている。接着部4,5はそれぞれ、カード2の2つの表面2a,2b上に位置している。接着部4,5にはそれぞれ、接着部4,5から突出するように形成された拭き取り部6,7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリーニングカードに係り、特に、ATM(自動貯金支払機)等のカード利用機器に内蔵されたセンサー等をクリーニングするためのクリーニングカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ATM等のカード利用機器は、カード送り用ローラと、カードから必要な情報を読み取るためのセンサー等とを備えている。このようなカード利用機器のセンサー等を清掃するために、クリーニングカードが使用されている。公知のクリーニングカードは、板状のカードと、カードの少なくとも片面に設けられた布部材とから構成されている。このクリーニングカードをカード利用機器に挿入することにより、布部材がセンサー等の汚れをクリーニングすることができる。
【0003】
しかし、クリーニングカードは平坦な構造であるため、クリーニングカードとセンサー等との間に隙間がある場合には、センサー等を確実にクリーニングすることは困難な場合があった。このため、特許文献1に記載のクリーニングカードのように、基材表面を凹凸した波形形状にしてその上に布部材を設けたものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−231431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カード利用機器の内部において、センサー等がカードの搬路よりも凹んでいたり、センサーがガイドに囲まれていたり、また、ローラやベルト等のカード搬送部材でカードを挟んだ時にカードが搬路よりも浮いた状態になったりすることにより、特許文献1のクリーニングカードでも、センサー等を確実にクリーニングすることは困難な場合があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、カード利用機器に内蔵されたセンサー等を確実にクリーニングすることのできるクリーニングカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るクリーニングカードは、筒状の布部材と、該布部材を形成する布の一部を重ね合わせて接着することにより、該布部材の外表面に形成された少なくとも1つの接着部と、該接着部に設けられると共に該接着部から突出するように形成された拭き取り部とを備え、前記布部材は、該布部材の内表面が互いに重なり合うように折られて平面状の形状を有し、前記接着部材は、前記布部材の外表面上に位置する。
互いに重なり合う前記内表面は、接着剤で接着されてもよい。
板状の基材を備え、該基材が前記布部材の内部に挿入されて、前記基材の2つの表面が前記布部材の内表面に重ね合わされてもよい。
2つ以上の前記接着部を有し、前記布部材の2つの外表面にはそれぞれ、少なくとも1つの前記接着部が位置してもよい。
前記拭き取り部は、前記布と同一材料から形成してもよい。
前記拭き取り部は、前記接着部に一体的に成形してもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、筒状の布部材を形成する布の一部を重ね合わせて接着することにより形成された接着部に、接着部から突出するように拭き取り部を設け、布部材の外表面上に接着部が位置するようにしたことにより、接着部に設けられた拭き取り部が、布部材から突出するようになるので、カード利用機器に内蔵されたセンサー等を確実にクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るクリーニングカードの斜視図である。
【図2】この実施の形態1に係るクリーニングカードの布部材の製造工程を示す図である。
【図3】この実施の形態1に係るクリーニングカードの動作を説明するための断面図である。
【図4】この実施の形態2に係るクリーニングカードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この実施の形態1に係るクリーニングカードの斜視図を図1に示す。クリーニングカード1は、矩形板状の基材であるカード2と、カード2が挿入可能な筒状の布部材3とから構成されている。カード2の2つの表面2a,2bは、布部材3の内表面3aと重なり合っている。布部材3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる不織布で形成されている。布部材3の外表面3bには、カード2の幅方向(短い辺と平行な方向)に延びるように、不織布の一部を重ね合わせて接着することにより形成された2つの接着部4,5が設けられている。接着部4,5はそれぞれ、カード2に対して反対側の2つの外表面3b1,3b2上に位置している。接着部4,5にはそれぞれ、接着部4,5から突出するように形成された拭き取り部6,7が設けられている。
【0011】
次に、図2を参照しながら、布部材3の製造工程を説明する。
図2(a)に示されるように、帯状の布10の両端部10a,10bを重ね合わせて接着し、接着部5を形成する。ここで、接着方法は、超音波溶着や熱融着、接着剤による接着等、任意の公知の手段を用いることができる。図2(b)に示されるように、接着部5からずれた位置で接着部5と平行となるように、布10の一部を重ね合わせて接着し、接着部4を形成する。図2(c)に示されるように、接着部4,5の一部を適宜切り取ることにより、拭き取り部6,7が形成される。これにより、拭き取り部6,7は、布10と同じ素材のPET製不織布からなると共に接着部4,5に一体的に成形されるようになる。尚、拭き取り部6,7の位置、数、幅は、切り取る部分を調整することにより、適宜変更可能である。これにより、カード利用機器に応じた(すなわち、センサー等の配置に応じた)クリーニングカードを製造することができる。
【0012】
次に、この実施の形態1に係るクリーニングカードの動作を説明する。
図3は、カード利用機器であるATM20の内部の一部分の断面図を示している。ATM20には、図示しないカードを挿入するカード挿入口21が設けられている。カード挿入口21と連通するように、ATM20の内部には、カード搬路22が設けられている。カード搬路22には、カード挿入口21の近くに、カードをカード搬路22内に搬送すると共にカードをカード搬路22から搬出するための一対のローラ23,23が設けられ、カード搬路22の上面及び下面には、図示しないセンサーのレンズ24,25,26が設けられている。レンズ24,25はそれぞれ、カード搬路22の上面及び下面に対して窪んだ位置に配置されている。また、レンズ26は、レンズ26よりも突出したガイド27によって囲まれている。
【0013】
クリーニングカード1をカード挿入口21に挿入すると、ローラ23,23によって、クリーニングカード1がカード搬路22内に搬送される。クリーニングカード1がカード搬路22内を搬送されるとき、カード搬路22の上面及び下面のそれぞれと、クリーニングカード1の布部材3との間には隙間が存在する。このため、布部材3のうちカード2と重なり合う部分では、レンズ24,25,26を拭くことができない。しかしながら、布部材3には、この平坦部分よりも突出した接着部4,5に、接着部4,5からさらに突出するように設けられた拭き取り部6,7が設けられているので、拭き取り部6,7は、カード搬路22の上面及び下面よりも窪むように配置されたレンズ24,25や、ガイド27によって囲まれたレンズ26も拭くことができる。
【0014】
クリーニングが終了したら、ローラ23,23が逆方向に回転することにより、クリーニングカード1をカード挿入口21介してカード搬路22から搬出する。クリーニングによって拭き取り部6,7が汚れていたら、布部材3のみを新しいものに交換し、カード2は使いまわしできる。これにより、クリーニングカード1の維持コストを低減できると共にゴミの低減も可能となる。
【0015】
このように、筒状の布部材3を形成する布10の端部10a,10b同士及び布10の一部を重ね合わせて接着することにより形成された接着部4,5に、接着部4,5から突出するように拭き取り部6,7を設け、布部材3の外表面3b1,3b2上に接着部4,5が位置するようにしたことにより、接着部4,5に設けられた拭き取り部6,7が、布部材3から突出するようになるので、ATM20に内蔵されたセンサー等のレンズ24,25,26を確実にクリーニングすることができる。
【0016】
この実施の形態1では、2つの接着部4,5が、カード2に対して反対側の外表面3b1,3b2上に位置しているが、この形態に限定するものではない。センサー等のレンズが、カード搬路22の上面または下面の一方のみに配置されている場合には、どちらか一方の外表面3b1または3b2上に位置するようにしてもよい。また、接着部の数も2つに限定するものではなく、1つであってもいいし、3つ以上であってもよい。
【0017】
この実施の形態1では、拭き取り部6,7は、布10の材質と同じであり、かつ、接着部4,5に一体的に成形されているが、この形態に限定するものではない。接着部を形成した後、接着剤等の任意の接着手段によって、布10と同じ材質または異なる材質からなる拭き取り部を、接着部4,5に接着するようにしてもよい。
【0018】
この実施の形態1では、布部材3は、帯状の布10の端部10a,10bを重ね合わせて接着することにより筒状に形成しているが、この形態に限定するものではない。2枚の矩形の布を重ね合わせて縁部を接着させることにより、筒状に形成してもよい。また、布10は、PET製の不織布であったが、これに限定するものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、セルロース、絹、木綿等からなる織布や不織布、あるいは、紙等からなるものであってもよい。
【0019】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係るクリーニングカードを、図4に基づいて説明する。尚、実施の形態2において、図1〜3の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態2に係るクリーニングカードは、実施の形態1に対して、基材であるカード2を使用しないものである。
【0020】
この実施の形態2に係るクリーニングカードの断面図を図4に示す。クリーニングカード31は、筒状の布部材3から構成され、布部材3の内表面3aが互いに重なり合うように折られて平面矩形状の形状を有している。互いに重なり合う内表面3aは、接着剤30によって接着されている。布部材3の材質、形状、及び製造方法は、実施の形態1と同じである。また、実施の形態1と同様に、接着剤30に対して互いに反対側の布部材3の外表面3b1,3b2にはそれぞれ、接着部材4,5が設けられている。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0021】
このように、実施の形態1のカード2がなくても、互いに重なり合う布部材3の内表面3a同士を接着する接着剤30が固化すれば、カード2と同様の作用を奏するので、接着部4,5に設けられた拭き取り部6,7が、布部材3から突出することにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。ただし、互いに重なり合う布部材3の内表面3a同士を接着剤30で接着することは必須の要件ではなく、内表面3a同士を接着せずに重なり合わせて平面矩形状にしたものであっても、接着部4,5に設けられた拭き取り部6,7を布部材3から突出させることにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0022】
この実施の形態1及び2では、カード利用機器としてATM20を例にして説明をしたが、ATMに限定するものではない。駅等に配置される自動改札機やカード式自動券売機、カード式電話機等であってもよい。また、カード利用機器に限定するものではなく、紙幣整理機やプリンタのように、紙葉類が搬送され、内部にセンサー等の機器が設けられた装置であれば、この発明のクリーニングカードを使用することができる。
【0023】
この実施の形態1及び2では、クリーニングカード1によってセンサー等のレンズ24,25,26を拭いているが、これらに限定するものではない。内蔵された特定の部品、例えばローラ等を拭くことに使用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1,31 クリーニングカード、2 カード(基材)、2a,2b (カードの)表面、3 布部材、3a (布部材の)内表面、3b、3b1,3b2 (布部材の)外表面、4,5 接着部、6,7 拭き取り部、10 布、30 接着材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の布部材と、
該布部材を形成する布の一部を重ね合わせて接着することにより、該布部材の外表面に形成された少なくとも1つの接着部と、
該接着部に設けられると共に該接着部から突出するように形成された拭き取り部と
を備え、
前記布部材は、該布部材の内表面が互いに重なり合うように折られて平面状の形状を有し、前記接着部材は、前記布部材の外表面上に位置するクリーニングカード。
【請求項2】
互いに重なり合う前記内表面は、接着剤で接着されている、請求項1に記載のクリーニングカード。
【請求項3】
板状の基材を備え、
該基材が前記布部材の内部に挿入されて、前記基材の2つの表面が前記布部材の内表面に重ね合わされている、請求項1に記載のクリーニングカード。
【請求項4】
2つ以上の前記接着部を有し、前記布部材の2つの外表面にはそれぞれ、少なくとも1つの前記接着部が位置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクリーニングカード。
【請求項5】
前記拭き取り部は、前記布と同一材料からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のクリーニングカード。
【請求項6】
前記拭き取り部は、前記接着部に一体的に成形されている、請求項5に記載のクリーニングカード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−123864(P2011−123864A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131637(P2010−131637)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(390011981)株式会社ムサシ (7)
【Fターム(参考)】