説明

クリーニング装置およびそれを備える画像形成装置

【課題】 オゾンによるクリーニングブレードの劣化を防止し、クリーニング性能を長期に亘って維持することができるクリーニング装置、およびこれを備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】 静電潜像担持体に圧接するクリーニングブレード表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含む白金コーティング層を設ける。クリーニングブレードの表面に、オゾンを分解する触媒(白金ナノコロイド)を含む白金コーティング層を設けることによって、クリーニングブレードを劣化させるオゾンを白金コーティング層によって分解し、オゾンによるクリーニングブレードの劣化を防止する。オゾンによる劣化を防止することで、クリーニング性能を長期に亘って維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤像が記録媒体に転写された後の静電潜像担持体周面に残留する現像剤を除去するクリーニング装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、帯電装置によって感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像装置から供給されるトナーを含む現像剤により現像して可視像とし、この可視像を紙などの記録材に転写した後、定着ローラによって加熱および加圧して、記録材に定着させることにより、記録紙上に画像が形成される。
【0003】
このような画像形成装置は、現像されたトナー像が記録媒体に転写された後に静電潜像担持体の周面に残留するトナーを除去するクリーニング装置を備えている。
【0004】
クリーニング装置は、基端部が筐体に固定され、遊端部のエッジ部分が静電潜像担持体の周面に所定圧力で圧接するクリーニングブレードを有する。
【0005】
クリーニングブレードは、静電潜像担持体が回転することで、静電潜像担持体に圧接するエッジ部分により、静電潜像担持体の周面から現像剤を掻き落とす。クリーニングブレードは、静電潜像担持体の回転振動、偏芯回転または長期使用等によって、エッジ部分を含む圧接部分が、静電潜像担持体の回転方向の下流側へと反り返る反転現象を起こすことがある。
【0006】
この反転現象を生じる原因の一つに、クリーニングブレードのオゾン劣化がある。オゾンは、主に帯電装置にて発生する。帯電装置では、コロナワイヤ、ノコ歯電極、帯電ローラ等に、高圧の電圧や大電流を印加して、帯電装置と静電潜像担持体との間の空気層をイオン化し、例えば電子を静電潜像担持体表面に付着させて静電潜像担持体表面を、所定の電位に一様に帯電させる。この空気層をイオン化した際に生成するコロナ生成物の一つがオゾンである。
【0007】
帯電装置で発生したオゾンは、オゾン風となって、主に静電潜像担持体表面を伝わってクリーニングブレードにまで到達する。
【0008】
クリーニングブレードは適度な弾性と、耐磨耗性、耐食性を備えるためにウレタンゴムが使用される。
【0009】
しかし、クリーニングブレードが長期に渡りオゾンに暴露された場合、ウレタンゴム(ポリウレタン)の構造に含まれる酸素(二重結合)がオゾンによって分解され、ウレタンゴム(ポリウレタン)の弾性が損なわれ硬化して塑性変形してしまい、本来のクリーニングブレードの性能を維持できなくなる。
【0010】
クリーニング性能が低下してクリーニング不良が発生することにより、印刷品質の低下が起こる。
【0011】
このようなクリーニング不良に関する印刷品質の低下を防止する技術については、以下に示すような技術が知られている。
【0012】
特許文献1には、クリーニングブレードのクリーニング性を劣化させる物質を分解、排除するための放電生成物処理手段が、クリーニングブレード表面、クリーニング支持部材およびクリーナーケーシングの少なくとも一部分に設けられた画像形成装置が開示されている。放電生成物処理手段としては、光触媒と、光触媒に対して光を照射する照射手段と構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−266277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1記載の画像形成装置は、光触媒で放電生成物を分解除去するものであるので、光照射するための光照射手段が必要になり、小型化が難しく、クリーニング装置が高価になってしまう。加えて光照射手段がトナーで汚染された場合は、光触媒は全く効果を発揮できない。また、照射光の及ぶ範囲が限定されるため、光触媒が配設されている場所によってはその効果が充分に発揮できないことも予想される。
【0015】
また、光照射自体が画像形成に対して悪影響を及ぼすため、光照射手段の動作タイミングを制御する必要があり、その制御も複雑になるといった問題がある。
【0016】
本発明の目的は、オゾンによるクリーニングブレードの劣化を防止し、クリーニング性能を長期に亘って維持することができるクリーニング装置、およびこれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、現像剤像が記録媒体に転写された後の静電潜像担持体の周面に残留する現像剤を除去するクリーニング装置であって、
前記静電潜像担持体に圧接するクリーニングブレードを備え、
前記クリーニングブレードの表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含む白金コーティング層を設けることを特徴とするクリーニング装置である。
【0018】
また本発明は、前記白金コーティング層は、前記静電潜像担持体に圧接する部分を除く表面に設けることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記白金コーティング層は、コロイド法によって形成されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記白金コーティング層の厚さは、20nm以上50nm以下であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記クリーニング装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、静電潜像担持体に圧接するクリーニングブレードを備え、前記クリーニングブレードの表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含む白金コーティング層を設ける。
【0023】
クリーニングブレードの表面に、オゾンを分解する触媒(白金ナノコロイド)を含む白金コーティング層を設けることによって、クリーニングブレードを劣化させるオゾンを白金コーティング層によって分解し、オゾンによるクリーニングブレードの劣化を防止する。オゾンによる劣化を防止することで、クリーニング性能を長期に亘って維持することができる。
【0024】
また本発明によれば、前記白金コーティング層は、前記静電潜像担持体に圧接する部分を除く表面に設ける。
【0025】
これにより、前記静電潜像担持体からの電荷のリークを抑え、クリーニングブレード表面へのトナーの堆積を防止することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記白金コーティング層を、コロイド法によって形成することで、物理的な吸着により、簡単な方法で強固かつ均一に白金コーティング層を形成することができる。
【0027】
また本発明によれば、前記白金コーティング層の厚さを、20nm以上50nm以下とすることで、効率よくオゾン分解効果が発揮される。
【0028】
また本発明によれば、上記のクリーニング装置を備えることで、長期に亘り高品位の画像形成を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態であるクリーニングユニット10を備えた画像形成装置100の正面断面図である。
【図2】画像形成装置100の一部を拡大した正面断面図である。
【図3】クリーニングユニット10および感光体ドラム31の正面断面図である。
【図4】クリーニングブレード12を感光体ドラム31に接触させた状態を表す図である。
【図5】クリーニングブレード12の斜視図である。
【図6】クリーニングブレード12の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態であるクリーニングユニット10を備えた画像形成装置100の正面断面図である。図2は、画像形成装置100の一部を拡大した正面断面図である。
【0031】
画像形成装置100は、画像読取ユニット200、画像記録ユニット300、給紙ユニット400、および制御部50を備えている。
【0032】
画像読取ユニット200は、自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)201、第1原稿台202、第2原稿台203、第1ミラーベース204、第2ミラーベース205、レンズ206および固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)207を備えている。
【0033】
ADF201には、原稿トレイ211から第2原稿台203を経由して排出トレイ212に至る原稿搬送路213が形成されている。ADF201は、原稿搬送路213内に原稿を1枚ずつ搬送する。ADF201は、第1原稿台202の上面を開閉自在に被覆するように、背面側を支点に回動自在に形成されている。前面側が上方に移動するようにADF201を回動させて第1原稿台202の上面を露出させることにより、手動操作によって第1原稿台202に原稿を載置することができる。
【0034】
第1原稿台202および第2原稿台203は、ともに硬質ガラス板によって構成されている。
【0035】
第1ミラーベース204および第2ミラーベース205は、第1原稿台202および第2原稿台203の下方において水平方向に移動自在に設けられている。第2ミラーベース205の移動速度は、第1ミラーベース204の移動速度の1/2に設定されている。第1ミラーベース204は、光源および第1ミラーを搭載している。第2ミラーベース205は、第2ミラーおよび第3ミラーを搭載している。
【0036】
ADF201によって搬送される原稿の画像を読み取る際に、第1ミラーベース204は、第2原稿台203の下方に停止している。光源の光は、第2原稿台203上を通過する原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース205に向けて反射される。
【0037】
第1原稿台202に載置された原稿の画像を読み取る際には、第1ミラーベース204および第2ミラーベース205は、第1原稿台202の下方を水平方向に移動する。光源の光は、第1原稿台202上に載置された原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース205に向けて反射される。
【0038】
ADF201を用いるか否かに拘らず、原稿の画像面における反射光は、光路長を一定にして、第2ミラーおよび第3ミラーによってレンズ206を経由してCCD207に入射する。
【0039】
CCD207は、原稿の画像面における反射光の光量に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、制御部50を介して画像記録ユニット300に画像データ(画像情報)として入力される。
【0040】
画像記録ユニット300は、画像形成部30を構成する感光体ドラム31、帯電器32、露光装置33、現像装置34、転写装置35、クリーニングユニット10および定着装置37を備えている。感光体ドラム31は、本発明の静電潜像担持体に相当する。
【0041】
感光体ドラム31は、周面に感光層を備え、矢印方向に回転する。帯電器32は、感光体ドラム31の周面を所定の均一な電位に帯電させる。帯電器32として、チャージャによる非接触方式、または、ローラ若しくはブラシによる接触方式の何れを用いてもよい。
【0042】
露光装置33は、例えばLSU(Laser Scanning Unit)であって、画像データに基づいて変調されたレーザ光を、ポリゴンミラーを介して感光体ドラム31の周面に軸方向に沿って走査する。これによって、感光体ドラム31の周面には、感光層における光導電作用によって静電潜像が形成される。LSUに代えて、ELやLED等の発光素子がアレイ状に配置された露光装置を用いることもできる。
【0043】
現像装置34は、感光体ドラム31の周面にトナー(現像剤)を供給し、静電潜像をトナー像(現像剤像)に可視像化する。
【0044】
転写装置35は、転写ローラ35Aおよび転写ベルト35Bを備えている。転写ベルト35Bは、感光体ドラム31の下方において複数のローラ間にループ状に張架されており、1×10〜1×1013Ω・cm程度の抵抗値を有する。転写ベルト35Bのループ状の移動経路の内側には、転写ベルト35Bを挟んで感光体ドラム31に圧接する転写ローラ35Aが備えられている。転写ローラ35Aには、所定の転写電圧が印加され、転写ベルト35Bと感光体ドラム31との間を通過する用紙に、感光体ドラム31が担持するトナー像が転写される。
【0045】
トナー像を転写された用紙は、用紙剥離爪61によって、感光体ドラム31の周面から剥離される。
【0046】
クリーニングユニット10は、トナー像が、記録媒体の一例である用紙に転写された後に、感光体ドラム31の周面に残留しているトナーを、感光体ドラム31の周面から除去して回収する。
【0047】
定着装置37は、加熱ローラ37Aおよび加圧ローラ37Bを備えている。加熱ローラ37Aは、トナーを溶融可能な温度に内部の熱源によって加熱される。加圧ローラ37Bは、加熱ローラ37Aに所定の圧力で圧接する。定着装置37は、加熱ローラ37Aと加圧ローラ37Bとの間を通過する用紙を加熱および加圧することにより、トナー像を用紙に堅牢に定着させる。定着装置37を通過した用紙は、画像形成装置100の一方の側面に装着された排紙トレイ38に排出される。
【0048】
給紙ユニット400は、給紙カセット401,402,403,404および手差しトレイ405を備えている。給紙カセット401,402,403,404のそれぞれには、同一サイズの複数枚の用紙が収納される。手差しトレイ405には、使用頻度の低いサイズや紙質の用紙が載置される。
【0049】
給紙ユニット400は、給紙カセット401,402,403,404または手差しトレイ405の何れかから1枚ずつ用紙を給紙する。給紙ユニット400から給紙された用紙は、搬送ローラ39Aによって、給紙搬送路41および用紙搬送路42を経由して画像形成部30へ搬送される。
【0050】
用紙搬送方向において搬送ローラ39Aの下流側に、レジストローラ39Bが配置されている。搬送ローラ39Aによって搬送された用紙は、停止しているレジストローラ39Bに前端を突き当てられる。レジストローラ39Bの回転軸は、用紙搬送方向に直交する方向に配置されている。用紙の前端が、停止しているレジストローラ39Bに突き当てられることで、用紙が斜行している場合は斜行が補正される。
【0051】
レジストローラ39Bは、用紙の前端が、感光体ドラム31の周面に形成されたトナー像の前端に合致するタイミングで回転を開始し、感光体ドラム31と転写ベルト35Bとの間に用紙を搬送する。用紙には上述のようにトナー像が転写および定着され、用紙は排紙トレイ38に排出される。
【0052】
画像形成装置100の側面であって手差しトレイ405の下方に、大容量給紙カセット(以下、LCC:Large Capacity Cassette という。)を配置することができる。LCCには、多量の用紙が収容される。LCCから給紙された用紙は、用紙搬送路43を経由して、画像形成部30へ搬送される。
【0053】
図3は、クリーニングユニット10および感光体ドラム31の正面断面図である。
クリーニングユニット10は、筺体11、クリーニングブレード12、コイルばね13、および、搬送スクリュ14,15を備えている。
【0054】
筺体11は、感光体ドラム31に対向する開口部16を有している。感光体ドラム31から掻き落とされたトナーは、開口部16から筺体11内へ回収される。筺体11内へ回収されたトナーは、搬送スクリュ14,15によって搬送され、図示しない廃トナーボックスへ送られる。
【0055】
クリーニングブレード12は、筺体11内に配置され、感光体ドラム31に圧接している。コイルばね13は、クリーニングブレード12の感光体ドラム31に圧接する圧接部を、感光体ドラム31に向かって付勢している。コイルばね13を適宜選択することによって、クリーニングブレード12の圧接部の圧接力を調整し、感光体ドラム31に対するクリーニングブレード12の圧接力が1〜10g/mmの範囲になるようにする。
【0056】
また、開口部16には、トナーの飛散を防止するシール部材17を設けることが好ましい。シール部材17は、トナー受けシール17aとサイドシール17bとを含む。トナー受けシール17aは、感光体ドラム31の表面のトナーが、クリーニングブレード12によって掻き取られた際に落下して飛散することを防止する。サイドシール17bは、開口部16の、感光体ドラム31の表面形状に沿って湾曲した部分に設けられており、この湾曲した部分が感光体ドラム31の表面に接触する際の緩衝材として機能するとともに、この湾曲した部分と感光体ドラム31の表面との隙間からのトナーの飛散を防止する。
【0057】
また、図4は、クリーニングブレード12を感光体ドラム31に接触させた状態を表す図である。クリーニングブレード12は、筺体11の開口部16の上縁部16aによって、感光体ドラム31に接近する方向への変位を規制しており、クリーニングブレード12の、感光体ドラム31との接触面12aと、その接触部における感光体ドラム31の接線Xとのなす角度θ、すなわち圧接角を5〜20°の範囲となるようにする。
【0058】
図5は、クリーニングブレード12の斜視図である。図6は、クリーニングブレード12の断面図である。
【0059】
クリーニングブレード12は、矩形状のシート部材で構成され、シート部材の長手方向が感光体ドラム31の回転軸と平行となるように設けられる。
【0060】
第1の実施形態では、図6(a)に示すように、クリーニングブレード12の感光体ドラム31に当接する側の接触面12aおよび裏面12bそれぞれに、オゾンを分解する触媒(白金ナノコロイド)を含む白金コーティング層18を設ける。
【0061】
この白金コーティング層18は、含まれる白金ナノコロイドのオゾン分解作用により、帯電器32から感光体ドラム31の周面に沿って、流れ込んだオゾンを分解する効果を有する。
【0062】
白金ナノコロイドの触媒反応によるオゾンの分解は、Pt−O+O→Pt−O+Oで表わされる第1反応と、Pt−O+O→Pt−O+2Oで表わされる第2反応との連鎖反応による。
【0063】
白金ナノコロイドは、分解反応の触媒として働くため、第1反応および第2反応により損失することがなく、酸化チタンなどの光触媒に比べ励起エネルギーが不要で、劣化に強く、長期に亘るオゾン分解能を維持することができる。
【0064】
さらに、白金ナノコロイドは、粒径が1〜5nmのナノ微粒子であるので、表面積が大きく、高い分解効率を達成できる。
【0065】
白金コーティング層18は、クリーニングブレード12の表面の少なくとも一部に設ければ、オゾン分解効果が発揮され、劣化を防止することができるが、たとえば、基体となるクリーニングブレード12の両面、または、感光体ドラム31に当接する側の接触面12aに設けることが好ましい。帯電器32で発生したオゾンは、主にクリーニングブレード12の感光体ドラム31に当接する側の接触面12aに接触するので、オゾンが接触しやすい表面に白金コーティング層18を設けることで、白金ナノコロイドとオゾンとの接触機会を増加させ、オゾンの分解を促進させることができる。
【0066】
また、図6(b)に示すように、第2の実施形態としては、クリーニングブレード12の感光体ドラム31に当接する側の接触面12aのうち、クリーニングブレード12のエッジ部であり、感光体ドラム31に圧接する圧接部12cを除く部分にのみ設ける。
【0067】
白金コーティング層18は、白金ナノコロイドを含むことで導電性を有するため、感光体ドラム31に接触すると感光体ドラム31からの電荷のリークが生じてしまい、クリーニングブレード12表面にトナーが堆積してしまうためである。
【0068】
白金コーティング層18をクリーニングブレード12表面に形成する方法には、特に制限はなく、白金コーティング層18を形成させるクリーニングブレード12と白金ナノコロイド分散液とを接触させることで達成できる。白金ナノコロイド分散液に、クリーニングブレード12を接触させてもよいし、クリーニングブレード12に白金ナノコロイド分散液を噴霧してもよい。
【0069】
白金コーティング層18をクリーニングブレード12表面に形成する方法としてはコロイド法が好ましい。コロイド法による白金ナノコロイドのクリーニングブレード12表面への固着は、物理現象を利用するため簡便である。より具体的には、TiOなどの金属酸化物微粉末または、金属微粉末と白金ナノコロイドを混合攪拌し、さらに、金属酸化物微粉末または、金属微粉末の洗浄を兼ねてコロイド分散を安定させる分散安定剤を洗浄除去すると、白金ナノコロイドがコロイド状で付着した沈澱物を得ることができる。この沈澱物を凍結乾燥等の低温乾燥することにより、乾燥時の水等の分散媒体の蒸発減量による凝集力で安定して強固な付着力を得ることができる。金属コロイドは安定化をするための分散剤(ポリアクリル酸ナトリウムなど)を含んでもよい。
【0070】
金属層の薄膜形成方法としては、蒸着やめっきといった方法も考えられるが、蒸着は、真空または不活性ガスを注入した環境下で蒸着材料を加熱し、気化または昇華して薄膜形成させるため、熱や電気エネルギーが必要となる上、製造装置が大型化する傾向がある。また、めっきでは、液体中での電気化学反応を利用するため、前処理工程が必要となり、コストや時間がかかるデメリットが発生する。
【0071】
本発明で用いるコロイド法などの白金ナノコロイドの薄膜形成法では、上記のような製造装置の大型化や前処理などが不要であり、簡単な方法で均一に膜を形成することが可能である。
【0072】
白金ナノコロイドは、燃焼法または沈殿法によって製造できる。燃焼法は、白金イオン溶液を、水素ガス中またはリンなどに添加し、燃焼させることで還元反応させて白金微粒子を得て、その粒子を媒体中に投入することで、白金ナノ微粒子を含むコロイドを得る方法である。媒体は、必要に応じてコロイドを安定化させるために、保護コロイド形成剤を含んでいてもよい。ここで、保護コロイド形成剤とは、コロイド粒子の分散安定性を保持するために、コロイド液に含有されているもので、コロイド粒子表面に付着して、保護コロイドを形成する物質のことである。このような保護コロイド形成剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの水溶性高分子物質、界面活性剤、高分子キレート化剤などが挙げられる。
【0073】
沈殿法は、白金イオン溶液に還元剤を添加し、白金イオンを還元することによって白金ナノコロイドを得る方法で、例えば特開2001−79383号公報、特開2001−122723号公報などに開示されている。
【0074】
白金ナノコロイド分散液の濃度は、コロイド粒子の分散安定性の面から、通常1000〜2000ppmの範囲が好ましい。
【0075】
形成した白金コーティング層18の厚さは、20nm以上50nm以下であることが好ましい。白金コーティング層18の厚さをこのような範囲内とすることで、効率よくオゾン分解効果が発揮される。白金コーティング層18の厚さが20nm未満であると、オゾンと白金ナノコロイドとの接触機会が少なく、オゾン分解効果が充分に発揮できない。白金コーティング層18の厚さが50nmより大きくしたとしても、オゾン分解効果は増加しないため、50nmを上限とする。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
厚さ3mm、幅20mm、長さ300mmのウレタン樹脂からなるクリーニングブレード12の両面に、白金ナノコロイド濃度が2000ppmの白金ナノコロイド分散液(日本板硝子社製)を、白金コーティング層18の厚さが25nmとなるように、スプレー法により全面被覆し、乾燥機を用いて、40℃で2日間乾燥させ、実施例1のクリーニングブレードを作製した。
【0078】
(実施例2)
白金コーティング層18の厚さを40nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のクリーニングブレードを作製した。
【0079】
(実施例3)
厚さ3mm、幅20mm、長さ300mmのウレタン樹脂からなるクリーニングブレード12の両面のうち、感光体ドラム31に圧接する圧接部12cとなる部分(幅10mm)をマスキングし、この部分を除く部分に、白金ナノコロイド濃度が2000ppmの白金ナノコロイド分散液(日本板硝子社製)を、白金コーティング層18の厚さが30nmとなるように、スプレー法により全面被覆し、乾燥機を用いて、40℃で2日間乾燥させ、実施例3のクリーニングブレードを作製した。
【0080】
(実施例4)
白金コーティング層18の厚さを45nmとしたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4のクリーニングブレードを作製した。
以下実施例5を追記しました。
【0081】
(実施例5)
白金コーティング層18の厚さを15nmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のクリーニングブレードを作製した。
【0082】
(比較例1)
白金コーティング層18を設けず、厚さ3mm、幅20mm、長さ300mmのウレタン樹脂からなるクリーニングブレード12のみを比較例1とした。
【0083】
(コーティング層厚さ)
シール部材を粗切断し、エポキシ樹脂に包埋後、Reichert社製ULTRACUT−N型ミクロトームにより、50〜60nmの厚さの極薄切片を作製し、支持膜を張ったメッシュに積載した。続いて5分間程度のRuO4蒸気染色を施した後、TEMにより膜断面を観察し、コーティング層の厚さを計測した。
【0084】
TEM観察の条件は、以下の通りである。
・TEM : 電界放出形透過電子顕微鏡(日立製作所製:HF2000)
・加速電圧 : 125kV
基体となるウレタン樹脂と、白金ナノコロイドは、それぞれ構造が異なるため、TEM観察では異なる像が得られる。したがって、TEM観察を行うことにより、白金コーティング層の厚みが計測可能である。
【0085】
(連続プリントテスト)
図1に示す構成の画像形成装置であって、実施例および比較例のクリーニングブレードを用いたクリーニングユニットを備える画像形成装置により、100000(以下「100k」という)枚の連続プリントテストを行った。
【0086】
連続プリントテストは、感光体ドラムの周速を400mm/秒に設定し、ベタ画像(100%濃度)における用紙上のトナー付着量が0.5mg/cm、非画像部におけるトナー付着量が最も少なくなるような条件に、感光体ドラムの表面電位および現像バイアスをそれぞれ調整した。試験紙として、A4サイズの電子写真用紙(マルチレシーバー、シャープドキュメントシステム社製)を使用した。
【0087】
印刷したベタ画像(100%濃度)は、1辺3cmとし、100k枚印刷終了時に、非画像部でのトナーかぶりと、現像槽およびクリーニングブレードへのトナーの融着を以下のようにして評価した。
【0088】
(かぶり評価)
かぶりについては、非画像部(0%濃度)の濃度を次の手順によって算出した。白度計(日本電色工業社製:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)を用いて、予めプリント前の紙の白色度を測定した。次に、印刷後の用紙の非画像部における白色度を、白度計を用いて測定し、印刷前の白色度との差を求めた。この差をかぶり濃度とした。かぶりの評価基準は以下の通りである。
【0089】
肉眼ではほとんどかぶりが確認できない状態である濃度差0.5未満を◎、かぶりが肉眼でもやや確認できる状態のである濃度差0.5以上0.8未満を〇、かぶりが肉眼で明確に確認できる濃度差0.8以上1.2未満を△、濃度差1.2以上を×とした。
【0090】
(トナーの融着評価)
クリーニングブレードへのトナーの融着については、印刷された画像への筋の発生および、クリーニングブレードを目視観察することによって確認した。トナーの融着の評価基準は以下の通りである。
【0091】
クリーニングブレードのトナーの融着および印刷された画像に筋の発生がないものを◎、クリーニングブレードにトナーの融着がみられるものの、印刷された画像に筋の発生がないものを〇、クリーニングブレードのトナーの融着および印刷された画像に筋の発生があるものを×とした。
【0092】
(評価結果)
以下の表1に、実施例および比較例の連続プリントテストの評価結果を示す。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例1〜4のクリーニングブレードを用いた連続プリントテストにおいては、100k枚後もかぶり、トナーの融着がなく、高精彩な画像が得られることが分かった。
【0095】
また、実施例5のクリーニングブレードを用いた連続プリントテストにおいては、多少のかぶりはみられたものの、総合的には、問題ない画像が得られる結果となった。
【符号の説明】
【0096】
10 クリーニングユニット
11 筺体
12 クリーニングブレード
13 コイルばね
16 開口部
18 白金コーティング層
31 感光体ドラム
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像が記録媒体に転写された後の静電潜像担持体の周面に残留する現像剤を除去するクリーニング装置であって、
前記静電潜像担持体に圧接するクリーニングブレードを備え、
前記クリーニングブレードの表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含む白金コーティング層を設けることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記白金コーティング層は、前記静電潜像担持体に圧接する部分を除く表面に設けることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記白金コーティング層は、コロイド法によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記白金コーティング層の厚さは、20nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のクリーニング装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−175656(P2010−175656A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16034(P2009−16034)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】