説明

クリーニング装置および画像形成装置

【課題】経時劣化が少なく、クリーニング制御性に優れたクリーニング装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】被清掃体に近接または当接して、該被清掃体の表面の帯電微粉を静電的に除去するクリーニングローラを備えたクリーニング装置において、上記クリーニングローラ表面に、正極性の電位を有する第1領域71eと、負極性の電位を有する第2領域71fとを備え、該第2領域71fを、アモルファス性フッ素樹脂とアミノシラン化合物を含む負極性エレクトレット材料で構成したクリーニング装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写残トナーを除去するクリーニング装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像形成装置では、像担持体や中間転写体などの被清掃体について、記録体や他の像担持体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な帯電微粉たる転写残トナーはクリーニング装置によって除去している。このクリーニング装置のクリーニング部材として、一般的に構成を簡単にでき、クリーニング性能も優れていることから、クリーニングブレードを用いたものがよく知られている。
【0003】
また、近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された球形に近いトナー(以下、「球形トナー」という。)を用いた画像形成装置が知られている。この球形トナーは、従来の粉砕トナー(異形トナー)に比べて転写効率が高いなどの特徴があり、近年の高画質化の要求に応えることが可能であることが知られている。しかし、図13に示すように、球形トナー103は、クリーニングブレード102に堰き止められた後、感光体101との摩擦力により転がってクリーニングブレード102をすり抜けて、クリーニング性が悪化してしまう。
【0004】
これに対し、小粒径トナーや球形トナーのクリーニング時にも確実なクリーニング性を備えたクリーニング方式として、静電ブラシクリーニング方式がある。図14は、静電ブラシクリーニング装置110の概略構成図である。静電ブラシクリーニング装置110は、感光体101の表面に接触摺擦するように導電性ブラシローラ111を配し、さらに導電性ブラシローラ111のブラシに付着したトナーをはじいて、ブラシからトナーを除去する除去手段たるフリッカー112を設ける。導電性ブラシローラ111に電源113から電圧を印加し、摺擦力に加え静電気力で感光体からトナーを除去するものである。このため、小粒径トナーや球形トナーに対してもクリーニング性能が得られる。
【0005】
一般的に画像形成装置では、転写工程で現像後のトナー極性と逆極性の電圧を印加して感光体上のトナーを転写するため、転写後に感光体上に残ったトナーは現像後のトナー極性のままのトナーと逆極性に帯電したトナーの混合物となっている。この両極性の混合物をクリーニングするクリーニング装置として、図15に示すようなクリーニング装置120が提案されている。すなわち、電源131から正極性の電圧が印加される第1導電性ブラシローラ121と、電源132から負極性の電圧が印加される第2導電性ブラシローラ122とを並べ各極性トナーごとにクリーニングするものである。
【0006】
しかし、感光体101に対向して2本の導電性ブラシローラ121、122を配置し、さらには、それぞれのブラシに付着したトナーを回収するトナー回収装置123、124を配置することは画像形成装置の小型化という課題を達成し難い。
そこで、特許文献1では、サイズを増加させずにトナーに、各極性トナーごとにクリーニングする導電性ブラシローラを備えたクリーニング装置を提案している。この特許文献1の導電性ブラシローラは、複数の導電性の起毛に正極性のバイアスを印加して、複数の起毛が正極性の電位を有する第1領域と起毛に負極性のバイアスを印加して、複数の起毛が負極性の電位を有する第2の領域とに分けられている。そして、正極性、負極性それぞれの領域に分割されたブラシローラを回転させて、それぞれを感光体表面に接触させて、感光体表面から各極性トナーごとにクリーニングしている。これにより、像担持体に対向して1本のブラシローラを配置するのみでよいので、小型化という点でメリットがある。更に、特許文献2においては、静電ブラシを使用せず、正極性と負極性のエレクトレット材料を交互に配置したクリーニングローラで正負極性のトナーを1本のローラで捕集することに成功している。
【0007】
特許文献1の静電ブラシクリーナにおいては、正極性の電位を有する第1領域および負極性の電位を有する第2領域を容易に変形可能な複数の起毛で構成しているので、例えば、起毛が感光体と接触したときなどに、起毛が変形して、第1領域の起毛と、第2領域の起毛とが接触してリークするおそれがある。リークしてしまうと、第1領域および第2領域の電位が減少して、ブラシで転写残トナーを静電的に吸着することができなくなり、クリーニング不良が生じる問題があった。このため、起毛を絶縁性の部材でコーティングして、第1領域の起毛と第2領域の起毛とが接触しても、リークしないようにすることが考えられる。しかし、経時使用で起毛の表面に施した絶縁性コート材料が摩耗により消失してしまうと、導電性の部分が露出してしまい、更に、この露出した部分同士が接触してしまうことによりリークが発生し、クリーニング能力が大きく低下してしまうという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された発明は、このような問題を解消したものであり、永久帯電部材、すなわちエレクトレット材料を利用することにより、トナークリーニングを達成している。正極性と負極性のエレクトレット材料を交互に配置したクリーニングローラを用いて、正または負に帯電しているトナーを、それぞれ逆極性のエレクトレット材料部分に一度捕獲し、これをブラシなどによりクリーニングするものである。確かに、全く電源装置を使用せず、装置小型化の面においても優れた特徴を有しているが、第1にエレクトレット性の経時による劣化、第2に固定された電位であるためにトナー入力量に対するクリーニングの制御性に乏しいこと、第3にクリーニングローラの加工の難しさ、が課題として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、1本のローラで各極性の帯電微粉を良好に除去しつつ、装置の大型化を抑制し、装置内のレイアウトの自由度の低下を抑制し、装置のコストアップを抑制することができ、経時劣化が少なく、クリーニング制御性に優れたクリーニング装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
1.本発明のクリーニング装置は、被清掃体に近接または当接して、該被清掃体の表面の帯電微粉を静電的に除去するクリーニングローラを備えたクリーニング装置において、
上記クリーニングローラ表面に、正極性の電位を有する第1領域と、負極性の電位を有する第2領域とを備え、該第2領域を、アモルファス性フッ素樹脂とアミノシラン化合物を含む負極性エレクトレット材料で構成したことを特徴とする。
2.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記正極性の電位を有する第1領域が、可変な電位を有する電極により構成されたことを特徴とする。
3.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記アモルファス性フッ素樹脂が、下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂であることを特徴とする。
【化1】

(式中、nは繰り返し単位数である。)
4.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記アミノシラン化合物が、下記一般式(2)で表されるアミノシラン化合物であることを特徴とする。
【化2】

(式中、YはNHまたは(CH−NHを示し、Rは(CHCHを示す。mは1または2、jおよびkは1、2または3である。)
5.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記第2領域の負極性エレクトレット材料が、電子線照射により永久帯電処理されたものである
ことを特徴とするクリーニング装置
6.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記クリーニングローラに当接し、上記クリーニングローラに付着した帯電微粉を堰き止めて、該帯電微粉を上記クリーニングローラ表面の該帯電微粉の帯電極性と異なる極性の領域と対向させるスクレーパ部材を備えたことを特徴とする。
7.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記スクレーパ部材および上記クリーニングローラのいずれか一方が弾性変形するように、上記スクレーパ部材を上記クリーニングローラに当接させたことを特徴とする。
8.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記被清掃体と上記クリーニングローラとの対向領域において、上記被清掃体と上記クリーニングローラとの間に線速差が生じるように構成したことを特徴とする。
9.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記被清掃体表面が上記クリーニングローラとの対向領域を通過する間に、上記第1領域および第2領域と上記被清掃体表面とが少なくとも一回以上接触するように構成したことを特徴とする。
10.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記第1領域と上記第2領域とを上記帯電微粉の平均粒径以上のピッチで配置したことを特徴とする。
11.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記第1領域および上記第2領域が、櫛形状のパターンで上記クリーニングローラ表面に形成されたことを特徴とする。
12.像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、該像担持体に静電潜像を形成する潜像形成装置と、該像担持体上の静電潜像にトナーを付着させて顕像化する現像装置と、該像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置と、該像担持体をクリーニングするクリーニング装置とを備えた画像形成装置において、上記クリーニング装置として請求項1ないし10のいずれかに記載のクリーニング装置を用いることを特徴とする。
13.本発明のクリーニング装置は、さらに、上記像担持体上にトナー像を形成するためのトナーとして、形状係数SF−1が100〜150の範囲にあるものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クリーニングローラ表面の正極性の電位を有する第1領域で被清掃面の負極性に帯電した帯電微粉を除去し、クリーニングローラ表面の負極性の電位を有する第2領域で正極性に帯電した帯電微粉を除去することで、1本のクリーニングローラで被清掃面の両極性の帯電微粉を除去することができる。よって、正極性、負極性の電圧をそれぞれ印加した2本のローラを並べるものに較べて装置を小型化することができる。また、クリーニングローラの表面に第1領域と第2領域とを形成したので、ブラシローラの複数の起毛で第1領域と第2領域とを形成したものに比べて、第1領域と第2領域とが接触するのを抑制することができる。よって、第1領域と第2領域とが接触することによって生じるリークを抑制することができ、第1領域および第2領域の電位の低下を抑制することができ、良好なクリーニング性能を維持することができる。
また、第1領域を正極性の可変な電位とし、第2領域のみをエレクトレット性に優れた材料で構成することにより、電源装置を正極性電源の1つにすることができ、更にクリーニングの制御性を獲得することが可能となった。電源を減らすことにより、装置内のレイアウトの自由度の低下を抑制することができるとともに、装置の部品点数の増加を抑制することができ、コストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すクリーニング装置の拡大構成図である。
【図3】図2に示すクリーニングローラの概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るクリーニングローラ表面の電界の様子を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置のスクレーパ部材がクリーニングローラ表面に付着した転写残トナーを除去する様子を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置のスクレーパ部材とクリーニングローラとの当接状態を説明する図である。
【図7】クリーニングローラの線速を感光体の線速よりも遅くしたときの感光体表面の転写残トナーを除去する様子を説明する図である。
【図8】(a)は、電極ピッチがトナーの粒径よりも小さいときのトナーに影響を及ぼす電界の様子を説明する図であり、(b)は、電極ピッチがトナーの粒径よりも大きいときのトナーに影響を及ぼす電界の様子を説明する図である。
【図9】電極ピッチLが大きいクリーニングローラと感光体とを示す図である。
【図10】実施例1ないし3のクリーニングローラの製造方法におけるフッ素樹脂塗布シート作製手順を説明する図である。
【図11】実施例1および2のクリーニングローラ製造方法について説明する図である。
【図12】実施例3のクリーニングローラ製造方法について説明する図である。
【図13】クリーニングブレードを球形トナーがすり抜ける様子を説明する図である。
【図14】従来のクリーニング装置の一例を示す図である。
【図15】従来のクリーニング装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0014】
本発明を画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態について図1を参照して説明する。図1は本実施形態に係るプリンタの全体構成図である。
像担持体である感光体1の周囲には、帯電ローラ2aで感光体1の表面を帯電する帯電装置2、レーザー光線Lで感光体1の一様帯電処理面に潜像を形成する露光装置3、感光体1上において潜像に対し帯電したトナーを付着させることでトナー像を形成させる現像手段としての現像装置6、転写ローラ12aで感光体1上に形成されたトナー像を転写紙Pに転写する転写装置5、転写後に感光体ドラム1上に残ったトナーを除去するクリーニング装置7が順に配列されている。
上記構成のプリンタにおいて、帯電装置2の帯電ローラ2aによって表面を一様に帯電された感光体1は、露光装置3によって静電潜像を形成され、現像装置6によってトナー像を形成される。当該トナー像は転写装置5によって、感光体1表面から搬送された転写紙Pへ転写される。
【0015】
上記転写装置5の下方には、記録体たる転写紙Pを複数枚重ねて収容する給紙カセット4が配設されている。この給紙カセット4は、一番上の転写紙Pに押し当てている給紙ローラ4aを所定のタイミングで回転駆動させ、その転写紙Pを給紙搬送路に給紙する。給紙搬送路内では、送り出された転写紙Pが複数の搬送ローラ対13を経た後、レジストローラ対14のローラ間に挟まれて止まる。レジストローラ対14は、挟み込んだ転写紙Pを、上述のようにして感光体1上に形成されたトナー像に重ね合わせ得るタイミングで転写ローラ12aと感光体1との間の転写ニップに向けて送り出す。これにより、感光体1上のトナー像と、レジストローラ対14によって送り出された転写紙Pとが転写ニップで同期して密着される。そして、転写電圧の影響によって転写紙P上に静電転写される。
【0016】
上記転写ローラ12aには、紙搬送ベルト12が巻き付いており、紙搬送ベルト12は、転写ローラ12aと駆動ローラ12bとに張架されて、図中反時計回りに無端移動する。また、この紙搬送ベルト12の更に左側方には、定着装置9、排紙ローラ対10が順次配設されている。上述のトナー像が静電転写された転写紙Pは、紙搬送ベルト12上に送られた後、定着装置9内に入る。定着装置9内に入った転写紙Pは、加熱処理および加圧処理が施される。これにより、トナーが圧力を受けながら熱溶融して転写紙Pにトナー像が定着せしめられる。そして、転写紙Pは定着装置9内から排紙ローラ対10を経て排紙トレイ15へと排出される。
転写されずに感光体ドラム上に残ったトナーはクリーニング装置7によって回収される。
【0017】
感光体1、その周囲に配置された現像装置6、帯電装置2、クリーニング装置7等を一体化したプロセスカートリッジとして構成してもよい。このプロセスカートリッジは、プリンタ本体に対して着脱自在となっている。よって、プロセスカートリッジ内に収容された部品に寿命が到来したり、メンテナンスが必要になったりしたときには、そのプロセスカートリッジを交換すればよく、利便性が向上する。
図2は、図1に示すクリーニング装置7の拡大構成図である。クリーニング装置7は、クリーニングローラ71と、スクレーパ部材73と、搬送手段74とを有している。クリーニングローラ71を感光体1に当接させて、クリーニングニップを形成する。このニップで感光体1表面と同方向に移動させるように、クリーニングローラ71を図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめる。板状のスクレーパ部材73は、その先端のエッジを所定の圧力でクリーニングローラに当接させるように配設されている。また、搬送手段74は、スクレーパ部材73の重力方向下側に配設されている。
【0018】
図3は、図2に示すクリーニングローラ71の概略構成図である。クリーニングローラ71は、円筒状の芯材の表面に、導電性材料で形成した電極201とエレクトレット材料で形成した表面層202とを設けている。電極201とエレクトレット表面層202は短冊状に形成されたものが組み合わさった形状であり、ローラ回転方向に対し、電極201とエレクトレット表面層202が交互に現れるようになっている。電極201に正電圧を印加することにより、クリーニングローラ71の表面には、正極性の電荷密度の最も高い部分中心として、軸方向に延びる正極性の電位を有する第1領域71eと、負極性の電荷密度の最も高い部分中心として、軸方向に負極性の電位を有する第2領域71fとが交互に形成される(図4参照)。
これにより、第1領域71eと第2領域71fとの間に強力な電界が発生する。この領域間に形成された電界によって、感光体表面の正極性または負極性に帯電した転写残トナーを第1領域71eまたは第2領域71fに引き寄せてクリーニングローラ71に静電吸着させることができる。電極201に印加する電圧を任意に制御することで、電界を変化させることも可能であり、トナー入力量に応じた制御を行えることが特徴で、最も効率の良いクリーニング条件を瞬時に作りだすことが可能となる。
【0019】
本実施形態においては、正極性の電位を有する第1領域71e、負極性の電位を有する第2領域71fは、ローラの軸に沿って直線状に設けられているが、これに限らず、スパイラルなどの曲線状であってもよい。また、格子状、千鳥状、ランダムに第1領域71eおよび第2領域71fを配置してもよい。
また、本実施形態においては、芯材の表面に直接エレクトレット材料からなる表面層を設けているが、芯材の表面に発泡ウレタンゴムなどの弾性部材で構成された弾性層を形成し、この弾性層の表面にエレクトレット材料からなる表面層を形成してもよい。弾性層を設けることで、クリーニングローラ71が良好に撓むことができ、クリーニングニップを広げることができる。
【0020】
エレクトレット材料は、永久的に電気分極した高分子材料である。エレクトレット材料は一般的には高分子材料に外部より電界を加えた状態で加熱し、冷却することにより得ることができる。このような特徴が生まれる理由は次のように考えられている。高分子材料を加熱した状態で外部より強電界を加えると、高分子材料を構成する分子や分子に結合しているイオン、高分子材料中に分散しているイオンなどが、電界に沿って再配列したり、結合イオンや分散イオンが材料内を移動して偏在したりする。このような状態で徐冷すると高分子材料や結合イオン、分散イオンは移動することができなくなり、そのまま安定的に電荷の不均一な状態を示すエレクトレット材料となる。このような特性を示す高分子材料は極めて多数あり、一般的な高分子である。代表的にはスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどいずれもエレクトレット材料とすることが可能である。また、フッ素系、塩化系などの変性を加えてもエレクトレット性を示す。分子レベルの分極、結合あるいは分散しているイオンが重要なのでエレクトレット材料作成時に外部より電子やイオンを材料中に打ち込むことで、強いエレクトレット性を発現することができる。
【0021】
負極性エレクトレット材料には、非常に優れたエレクトレット性を有する、アモルファス性フッ素系樹脂に特定のアミノシラン化合物を添加した材料を利用する。詳細なメカニズムは未だ不明ではあるが、負帯電性材料であるフッ素樹脂にアミノ基を有する正帯電性の低分子化合物を分散させることにより、静電荷の周りに多数の負電荷が配置され、極めて安定したエレクトレット性が発現するものと推測している。この材料は、常温常湿環境下では、1年以上表面電位が殆ど減衰しない優れた性能を持つ。更に、エレクトレット化法としては、従来のコロナ放電、サンドイッチ電極による直流印加に加え、電子線照射によるエレクトレット、いわゆるラジオエレクトレットによる処理が最も望ましい。これは、コロナ放電とサンドイッチ電極による直流印加では、その殆どが表面電荷であるのに対し、ラジオエレクトレットでは、電子が樹脂内部まで深く進入し、空間電荷として保持される為である。これにより、3年以上の帯電安定性と、高湿度環境下での減衰防止、接触あるいは摩擦によるエレクトレット性の低下を防止することができる。またシラン化合物とすることで、フッ素樹脂だけでは基板への接着性が非常に悪いが、これを改善する効果がある。
【0022】
本発明において、負極性エレクトレット材料としては、アモルファス性フッ素樹脂とアミノシラン化合物を含むものを用いる。アモルファス性フッ素樹脂としては、下記一般式(1)で表されるものが好ましく、分子の両末端はCF、COOHおよびCONH−C−Si(OCから選ばれる基が好ましい。アミノシラン化合物としては、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。本発明においては、下記アモルファス性フッ素樹脂と下記アミノシラン化合物を併用することが好ましい。
【化3】

(式中、nは繰り返し単位数である。)
【化4】

(式中、YはNHまたは(CH−NHを示し、Rは(CHCHを示す。mは1または2、jおよびkは1、2または3である。)
なお、本実施形態のエレクトレット材料の詳細な製造方法については、後述する。
【0023】
次に、上記クリーニング装置7の動作について詳しく説明する。プリント信号が入力されて画像形成動作が開始されると、帯電、書き込み、現像、転写工程を経た後、感光体1上の転写残トナーがクリーニング装置7との対向部へ送られてくる。この転写残トナーは、転写工程で電荷が注入されて、正規極性(負極性)に帯電したトナーのほかに、逆極性(正極性)に帯電したトナー、あるいは無帯電トナーが混合している。そして、感光体の表面がクリーニングニップ領域に進入すると、感光体表面の負極性の転写残トナーは、図4に示すような、クリーニングローラ71表面の第1領域71eと第2領域71fとの間に形成されたクリーニングローラ周方向の電界により捕捉される。感光体表面の負極性の転写残トナーは、この領域間の電界の影響を受けて感光体1とクリーニングローラ71との間を転がりながら正極性の電位を有する第1領域71eへ移動し、クリーニングローラ71の表面の第1領域71eに静電的に吸着する。一方、感光体表面の正極性の転写残トナーは、領域間の電界の作用により、負極性の電位を有する第2領域71fへ感光体1とクリーニングローラ71との間を転がりながら移動し、第2領域71fに静電的に吸着する。また、感光体表面の弱帯電の転写残トナーも領域間の強い電界の作用によって、感光体1とクリーニングローラ71との間で転がり、摩擦帯電して帯電量を増やしながら、第1領域71eへ移動して、クリーニングローラ71に静電吸着する。また、感光体表面の無帯電トナーは、クリーニングニップを通過するまでの間に摩擦帯電して、クリーニングローラ71に静電吸着する。これにより、感光体表面の転写残トナーが、クリーニングローラ71によって除去される。
【0024】
図5は、クリーニングローラ71表面の第2領域71fに静電吸着した正極性の転写残トナーが、スクレーパ部材73によって除去される様子を説明する図である。図5の(a)に示すように、クリーニングローラ71表面の第2領域71fに静電吸着した正極性の転写残トナー104がスクレーパ部材73によって堰き止められる。スクレーパ部材73に堰き止められた正極性の転写残トナー104は、図5(b)に示すように、クリーニングローラ表面を相対的に移動する。そして、図5(c)に示すように、スクレーパ部材73に堰き止められた正極性の転写残トナー104が、クリーニングローラ71表面の正極性の電位を有する第1領域71eと対向すると、正極性の転写残トナー104が反発力で回収ローラ表面から飛翔して、クリーニングローラ71から離脱する。
同様にして、クリーニングローラ71表面の第1領域71eに付着した負極性の転写残トナー105が、スクレーパ部材73に堰止められた後、クリーニングローラ表面を相対的に移動する。そして、負極性の電位を有する第2領域71eと対向すると、反発力でクリーニングローラ表面から飛翔して、クリーニングローラ71から離脱する。これにより、クリーニングローラ表面から転写残トナーが除去されて、安定的なクリーニング性を維持することができる。
クリーニングローラ71から離脱した転写残トナーは、搬送手段74(図2参照)へ落下して、搬送手段74により、クリーニング装置7の外へ適宜排出される。
【0025】
また、スクレーパ部材73およびクリーニングローラ71の少なくとも一方が弾性変形するように、スクレーパ部材73をクリーニングローラ71に当接するのが好ましい。例えば、スクレーパ部材73やクリーニングローラ71を変形せずにクリーニングローラ71に当接させた場合、スクレーパ部材73自身のうねり、クリーニングローラ71表面のうねりや偏心などで、図6(a)に示すように、スクレーパ部材73とクリーニングローラ71表面との間に隙間が生じる場合がある。このような場合、クリーニングローラ71に吸着した転写残トナーがスクレーパ部材73に堰き止められず、スクレーパ部材73とクリーニングローラ71との隙間からすり抜けてしまうおそれがある。
このため、図6(b)に示すように、スクレーパ部材73の硬度を下げて、弾性変形させてクリーニングローラ71に当接させるようにする。これにより、スクレーパ部材73のうねりやローラ71表面のうねりや偏心などが生じても、スクレーパ部材73が弾性変形して、これらの変動を吸収し、クリーニングローラ71とスクレーパ部材73との密着性を確保することができる。また、図6(c)に示すように、クリーニングローラ71の方を弾性変形させるようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、クリーニングローラ71を感光体1の線速と同じにした場合、クリーニングニップを抜けるまで、感光体上転写残トナーとクリーニングローラ71の接触位置とが変化することがない。よって、クリーニングニップの入り口で感光体表面の転写残トナーが、クリーニングローラ表面の転写残トナーの極性と同極性の電荷密度が最も高い部分と対向した場合、感光体表面の転写残トナーは、領域間の電界の影響を受けることがない。よって、この転写残トナーは、領域間の電界によってクリーニングローラ表面の異極性の領域へ移動せしめる静電的な力を受けることがない。その結果、クリーニングローラ71に静電吸着できずに、感光体表面から除去できないおそれがある。よって、本実施形態においては、クリーニングローラ71を感光体1の線速よりも速くまたは遅くして、感光体1との間に線速差を設けるようにしている。
【0027】
図7は、クリーニングローラ71の線速を感光体の線速よりも遅くして線速差を設けたときの正極性の転写残トナーがクリーニングローラ71に吸着される様子を説明する図である。図7(a)に示すように、クリーニングニップの入り口で感光体1表面の正極性の転写残トナーが、クリーニングローラ表面の正極性の電荷密度が最も高い部分と対向すると、図7(b)に示すように、感光体表面に付着した転写残トナーが、図中時計方向に回転しながら、クリーニングローラ71の表面上を相対的に図中上方へ移動する。すると、感光体表面の転写残トナーが、クリーニングローラ表面の第1領域71eと第2領域71fとの間に形成される電界の影響によって、上方の負極性の電位を有する第2領域71fへ静電的に引き寄せられて、第2領域71fに付着する(図7(c))。これにより、クリーニングニップの入り口で感光体表面の転写残トナーの極性が、クリーニングローラ表面の同極性の電荷密度が最も高い部分と対向しても、クリーニングニップを抜けるまでの間で確実にクリーニングローラ71に吸着させることができる。
なお、図7では、クリーニングローラ71の線速を感光体1の線速よりも遅くした例について説明したが、クリーニングローラ71の線速を感光体1の線速よりも速くした場合も同様の効果を得ることができる。この場合は、転写残トナーは、クリーニングローラ71の表面を図中下側へ相対移動し、図中下側の領域に静電的に吸着される。
【0028】
また、一旦、クリーニングローラ71に静電吸着した転写残トナーがクリーニングローラ71と感光体1との間の線速差による機械的な力によりクリーニングローラ表面を相対移動しないように、線速差による機械的な力を電極による静電的な吸着力よりも弱くしている。本実施形態においては、クリーニングローラ71の感光体1への接触圧力によって、線速差による機械的な力を静電的な吸着力よりも弱くなるように調整している。また、クリーニングローラ71の感光体1への接触圧力が低下する結果、クリーニングニップ幅が狭くならないように、クリーニングローラ71に弾性層を設けるなどして弾性を低くするのが好ましい。
また、感光体上の無帯電の転写残トナーがクリーニングニップを抜けるまでの間に摩擦帯電して、クリーニングローラ71に静電吸着できるよう、感光体1とクリーニングローラ71との線速差や、クリーニングニップ幅を設定する。
【0029】
感光体1とクリーニングローラ71との間に僅かな線速差があれば、感光体表面の転写残トナーは、クリーニングローラ表面の領域間の電界の影響を確実に受けることができ、転写残トナーの帯電極性と異なる極性の領域へ移動してクリーニングローラ71に静電吸着することができる。しかし、より確実に転写残トナーをクリーニングローラ71に静電吸着させるためには、感光体表面がクリーニングニップを通過する間に少なくなくとも一回以上第1領域71eおよび第2領域71fに接触することが好ましい。これにより、感光体表面の転写残トナーがクリーニングニップを抜けるまでの間に一回は、転写残トナーの帯電極性と異極性の電位を有する領域と接触することとなる。その結果、感光体上の転写残トナーを確実にクリーニングローラ71へ静電的に吸着させることができる。
【0030】
また、クリーニングローラ表面の第1領域71eと第2領域71fとの領域間ピッチは、少なくともトナーの粒径以上に設定するのが好ましい。領域間ピッチが小さいほど、領域間の電界が強くなり、トナーを静電的に吸着させる力が強くなるため、好ましい。しかし、図8(a)に示すように、領域間ピッチL1が、トナーの粒径Mよりも小さいと、感光体上のトナーは、複数の領域間の電界の影響を受けてしまう。すなわち、転写残トナー106と対向するクリーニングローラ表面の領域のうち、図8(a)において左側に位置する第2領域Aとほぼ中央に位置する第1領域Bとの間の電界X1の影響によって、正極性の転写残トナーには、図8(a)において左側へ静電的に移動させる力が働く。また、これと同時に、転写残トナー106と対向するクリーニングローラ表面の領域のうち、図8(a)において右側に位置する第2領域Cとほぼ中央に位置する第1領域Bとの間の電界X2の影響によって正極性の転写残トナーに、図中右側へ静電的に移動する力が働く。その結果、転写残トナーを静電的に移動させる力が打ち消し合ってしまう。よって、トナーを静電的に移動させる力は、逆に弱まってしまう。このため、領域間ピッチL1は、図8(b)に示すように、少なくともトナーの粒径M以上に設定するのが好ましい。これにより、転写残トナー106は、ひとつの領域間の電界X3の影響しか受けず、この電界の影響が打ち消し合うことがない。よって、転写残トナー106は、領域間の電界によって生じる図8(b)において左側へ移動せしめる静電的な力によって移動し、第2領域71fに吸着する。
なお、本実施形態においては、平均粒径5〜10μmのトナーを用いるが、この場合、領域間ピッチL1は、少なくとも10μmにするのが好ましい。
【0031】
また、図9に示すように、領域間ピッチL1が広くても、感光体1表面がクリーニングニップを通過する間に少なくなくとも一回、第1領域71eおよび第2領域71fに接触させるためには、クリーニングニップ幅を大きくしたり、感光体1とクリーニングローラ71との線速差を大きくしたりすることが考えられる。しかし、ニップ幅を大きくしたりクリーニングニップにおける感光体1とクリーニングローラ71との線速差を大きくしたりすると、感光体1とクリーニングローラ71との摩擦力による摩耗の進行や摩擦によって転写残トナーの添加剤などが脱落して、感光体表面のフィルミングの進行を早めてしまう。
このような不具合を抑えるため、クリーニングローラ71の線速Vcは、感光体1の線速Vdに対して、0.5〜1.5倍に抑えるのが好ましい。また、クリーニングニップにおいて、クリーニングローラ71の移動方向が感光体1の移動方向に対して逆方向に移動すると、上述同様、感光体1とクリーニングローラ71との摩擦力による摩耗の進行や摩擦によって転写残トナーの添加剤などが脱落して、感光体表面のフィルミングの進行を早めてしまうおそれがあるので、クリーニングニップにおいて、クリーニングローラの移動方向が感光体の移動方向に対して順方向に移動するのが好ましい。
【0032】
また、クリーニングローラ71の径を大きくすれば、クリーニングニップ幅を大きくすることができるが、クリーニングローラ71の径を大きくすると、装置が大型化してしまう。このため、装置の大型化を抑制するために、クリーニングローラの径は、8〜12[mm]とすることが好ましく、より好ましくは10[mm]程度である。クリーニングローラ71の径を10[mm]程度とした場合、クリーニングニップ幅Nを1[mm]以上とすることは困難である。従って、本実施形態においては、ニップ幅1[mm]以下、(Vc(クリーニングローラの線速)/Vd(感光体の線速))0.5〜1.5に設定されている。よって、本実施形態において、領域間ピッチL1が最大となる条件は、ニップ幅Nが1[mm]、(Vc/Vd)が0.5または1.5のときとなる。
【0033】
感光体1の表面がクリーニングニップ入り口から出口まで移動するのにかかる時間tは、t=N/vdとなる。この時間tで、クリーニングローラ71が移動する距離yは、Vc×t=(Vc/Vd)Nとなる。ニップ幅N=1[mm]、(Vc/Vd)=0.5のとき、クリーニングローラ表面の移動距離yは、0.5[mm]となる。すなわち、感光体の表面がニップ幅1[mm]移動する間に、クリーニングローラの表面は0.5[mm]移動する。よって、領域間ピッチL1を、0.5[mm]以下に設定すれば、感光体表面が、クリーニングニップを通過する間に第1領域71eおよび第2領域71eに接触させることができる。また、(Vc/Vd)=1.5のときは、感光体1の表面がニップ幅N=1[mm]移動する間に、クリーニングローラ71の表面は1.5[mm]移動する。すなわち、感光体表面がクリーニングニップを通過する間に、クリーニングローラ表面は、0.5[mm]先に進む。よって、この場合も、領域間ピッチLを0.5[mm]以下に設定すれば、感光体表面が、クリーニングニップを通過する間に第1領域71eおよび第2領域71fに接触させることができる。
【0034】
次に、クリーニングローラの製造について、実施例1〜3によって詳細説明するが、製造方法はこれらに限定されるものではない。
まず、実施例1のクリーニングローラの製造方法について説明する。
図10は、実施例1のクリーニングローラの製造方法について説明する図である。まず、上記一般式(1)で示されるフッ素樹脂であって、両末端が共にCOOH基、重量平均分子量約50000のものを、パーフルオロアルコールに5質量%濃度で溶解する。またこの溶液に、上記フッ素樹脂に対し3質量%の比率となるように、3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシランを溶解させ、塗布液1を得る。一方、平板に櫛歯状の突起物621をエレクトロフォーミングなどの微細加工により形成し、この突起物621の表面の平坦部に先ほどの塗布液1を塗布する(図10(a))。導電性シート50の上に、短冊状の突起物をシート50に向かい合わせるように貼付け、フッ素樹脂溶液622を導電性シート50の表面に転写する(図10(b))。導電性シートを乾燥させ、フッ素樹脂を固化させ、導電性シート上に櫛歯状にフッ素樹脂が塗布されたシートを作製する(図10(c))。フッ素樹脂の厚みに特に制限はないが、バルク内の絶縁破壊を防止し充分な電荷密度を得る意味と、後述するサンドイッチ電極による電荷注入時のショートを防ぐ意味で乾燥後の厚みで10μm以上であることが望ましく、より望ましくは50〜300μmである。
次に、このようにして得たシート50を、図11に示すように、グランドに接続された板状の第1電極61と、電源に接続された板状の第2電極62とで挟みこむ。第2電極62には、負極性のバイアスを印加する負極性電極部63を介して、直流高電圧電源64に接続している。
【0035】
第2電極62に、直流高圧電源64により−5kVの負電圧を印加すると共に、シート材50を120℃に加熱する。これにより短冊状に形成されたフッ素樹脂に負の電荷注入が行われ、エレクトレット性が発現する。次に、室温までシート材を除熱すると、図10(c)に示すように、導電性シートが露出した第1領域と、負極性の電位を有する第2極性とが互い違いに配列されたエレクトレット材料のシート材が得られる。これとは別に、同様の手法を用いて、20mm角のフッ素樹脂をエレクトレット化し、表面電位から表面電荷密度を算出すると、1.2mC/mという高電荷密度であることを確認した。
そして、図10(d)に示すように、得られたエレクトレット材料のシート材を円筒状の芯材71bに巻き付けることで、導電性を有したる第1領域と、負極性の電位を有する第2極性とが互い違いに配列されたクリーニングローラを得ることができる。
このようにして得たクリーニングローラを用いて、電極となる第1領域に+350Vの電位をかけ、感光体の転写残トナーをクリーニングしたところ、クリーニングローラにトナーを完全に静電吸着することができ、非常に優れたトナー除去性能が得られた。
なお、図10(d)では、ラフに描いているが、つなぎ目が回転の障害とならないようにエレクトレット材料からなるシート材の両端を精度良く突き合わせて芯材に巻き付ける。また、シート材の端部が重ね合わるようにして芯材に巻き付ける場合は、クリーニングローラに当接するスクレーパ部材73が、重ね合わされた部分を引き剥がさないように、重ね順序がクリーニングローラ71の回転方向に順目となるように端部を重ね合わせる。
【0036】
また、クリーニングローラ表面につなぎ目や重ね合わせ部分をもたないようにすることも可能である。つなぎ目や重ね合わせ部分をもたないようにするには、射出成型などで得たシームレスの導電性ローラに前述の転写方法にて、回転させながらフッ素樹脂を塗布させることにより行う。電荷注入によりエレクトレット化については前述と同様に行うことができる。
また、転写時に使用する突起形状を変えることで、格子状、曲線状など、種々の領域パターンをクリーニングローラ表面に形成することができる。
【0037】
次に、実施例2のクリーニングローラの製造方法について説明する。
図11は、実施例2のクリーニングローラ71の製造方法について説明する図である。実施例1と同様に導電性シート上に櫛歯状にフッ素樹脂が塗布されたシートを作製する。実施例2では、エレクトレット化の際にショートなどが起こることがないため、フッ素樹脂の厚みに制限はないが、ここでもバルク内での絶縁破壊を防止し表面電荷を高くするために10μm以上であることが望ましく、より望ましくは50〜300μmである。
このようにして得たシート50を、エリアビーム方式の電子線照射装置(NHVCorp.Curetron)により、電子線を照射し樹脂内に電荷注入する。加速電圧200kV、電流20mA、線量15kGy/Pass、3Passの条件で実施した。導電性であるシート部は若干の静電気を帯びるが、エレクトレット性を有することはない。フッ素樹脂部のみ負極性に強く永久帯電させることができる。これとは別に、同様の手法を用いて、20mm角のフッ素樹脂を同条件の電子線照射によりエレクトレット化し、表面電位から表面電荷密度を算出すると、2.1mC/mという高電荷密度であることを確認した。極めて高電荷であるにも関わらず、空気界面との絶縁破壊や樹脂内部の絶縁破壊が発生することはなかった。
【0038】
このようにして製造された短冊状のエレクトレット性を有するシートを、実施例1と同様に円筒状の芯材に巻き付けることで、導電性を有したる第1領域と、負極性の電位を有する第2極性とが互い違いに配列されたクリーニングローラを得ることができる。実施例1と同様に、電極となる第1領域に+350Vの電位をかけ、感光体の転写残トナーをクリーニングしたところ、クリーニングローラにトナーを完全に静電吸着することができ、非常に優れたトナー除去性能が得られた。
実施例1の製造方法と比較し、導電性シート近傍に高電圧をかけるような操作がないことから、安全であり、また空間電荷として電荷を数多く注入できることからクリーニング性も高くできる。また同様に理由で、サンドイッチ電極でエレクトレットを形成するものに比べて領域間ピッチを大幅に狭めることができる。これにより、領域間の電界をより強めることができ、良好に感光体の転写残トナーをクリーニングローラに静電吸着させることができる。
【0039】
次に、実施例3のクリーニングローラの製造方法について説明する。
図12は、実施例3のクリーニングローラの製造方法を説明する図である。実施例1と同様に導電性シート上に短冊状にフッ素樹脂が塗布されたシートを作製する。実施例3では、エレクトレット化の際にショートなどが起こることがないため、フッ素樹脂の厚みに制限はないが、ここでもバルク内での絶縁破壊を防止し表面電荷を高くするために10μm以上であることが望ましく、より望ましくは50〜300μmである。
まず、図12に示すように、グランドに接続された電極87上にフッ素樹脂を塗布した面を電極と反対側となるように設置する。次に、図12に示すように、コロナ帯電器を用いて、一様にシートを帯電させる。コロナチャージャーに印加する電圧は−5.5kV、グリッド電圧を−500Vに設定した。本実施例ではタングステンワイヤーによるコロナ放電を用いたが、同様のコロナ放電が起これば、針電極のようなものでも構わない。
これにより、図10(c)に示すように、表面に所定の幅を有した導電性を有する第1領域と、負極性の電位を有する直線状の第2領域とが交互に現れるシート材が形成される。次に、このシート材を、図10(d)に示すように、円筒状の芯材71bに巻き付けることで、導電性を有する第1領域と、負極性の電位を有する第2極性とが互い違いに配列されたクリーニングローラ71(図9参照)を得ることができる。ここでも実施例1と同様に、電極となる第1領域に+350Vの電位をかけ、感光体の転写残トナーをクリーニングしたところ、クリーニングローラにトナーを完全に静電吸着することができ、非常に優れたトナー除去性能が得られた。
【0040】
次に、実施例4のクリーニングローラの製造方法について説明する。
実施例4では、使用するアモルファスフッ素樹脂(上記一般式(1))の両末端をCF基に替えた以外は、全て実施例2と同様の条件で作製したものである。実施例2の結果と同様に、導電性であるシート部は若干の静電気を帯びるが、エレクトレット性を有することはない。フッ素樹脂部のみ負極性に強く永久帯電させることができる。これとは別に、同様の手法を用いて、20mm角のフッ素樹脂を同条件の電子線照射によりエレクトレット化し、表面電位から表面電荷密度を算出すると、1.4mC/mという高電荷密度であることを確認した。極めて高電荷であるにも関わらず、空気界面との絶縁破壊や樹脂内部の絶縁破壊が発生することはなかった。
【0041】
このようにして製造された短冊状のエレクトレット性を有するシートを、実施例1と同様に円筒状の芯材に巻き付けることで、導電性を有したる第1領域と、負極性の電位を有する第2極性とが互い違いに配列されたクリーニングローラを得ることができる。実施例1と同様に、電極となる第1領域に+350Vの電位をかけ、感光体の転写残トナーをクリーニングしたところ、クリーニングローラにトナーを完全に静電吸着することができ、非常に優れたトナー除去性能が得られた。
【0042】
次に、実施例5のクリーニングローラの製造方法について説明する。
実施例5では、使用するアモルファスフッ素樹脂(上記一般式(1))の両末端をCONH−C−Si(OC基に替えた以外は、全て実施例2と同様の条件で作製したものである。実施例2の結果と同様に、導電性であるシート部は若干の静電気を帯びるが、エレクトレット性を有することはない。フッ素樹脂部のみ負極性に強く永久帯電させることができる。これとは別に、同様の手法を用いて、20mm角のフッ素樹脂を同条件の電子線照射によりエレクトレット化し、表面電位から表面電荷密度を算出すると、1.9mC/mという高電荷密度であることを確認した。極めて高電荷であるにも関わらず、空気界面との絶縁破壊や樹脂内部の絶縁破壊が発生することはなかった。
【0043】
このようにして製造された短冊状のエレクトレット性を有するシートを、実施例1と同様に円筒状の芯材に巻き付けることで、導電性を有したる第1領域と、負極性の電位を有する第2極性とが互い違いに配列されたクリーニングローラを得ることができる。実施例1と同様に、電極となる第1領域に+350Vの電位をかけ、感光体の転写残トナーをクリーニングしたところ、クリーニングローラにトナーを完全に静電吸着することができ、非常に優れたトナー除去性能が得られた。
【0044】
次に、本実施形態の画像形成装置で好適に用いられるトナーについて説明する。高繊細な画像を得るためには、小粒径の粒径分布がシャープであるものが好ましい。小粒径で粒径分布の狭いトナーでは、トナーの帯電量分布が均一になり、地肌かぶりの少ない高品位な画像を得ることができ、また、転写率を高くすることができる。
また、トナーの形状係数SF−1は100〜150の範囲にあることが好ましい。ここで形状係数SF−1とは、球状物質の形状の丸さの割合を示す数値であり、球状物質を二次元平面状に投影してできる楕円状図形の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで割って、100π/4を乗じた値で表される。
すなわち、次の(1)式によって定義されるものである。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(100π/4) ・・(1)
【0045】
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。一般的に、トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。よって、クリーニング装置で除去するトナー量を少なくできる。これより、形状係数SF−1が100〜150の範囲の円形度が高いトナーを用いることにより、クリーニング装置の長寿命化を図ることができる。
【0046】
また、本実施例で使用したトナーは、次に示すような化学的合成工法で作成される。すなわち、有機溶媒中にウレア結合し得る変性されたポリエステル系樹脂を含む結着樹脂、着色剤を含有したトナー組成物を溶解或いは分散させ、水系媒体中で粒子化するとともに重付加反応させ、この分散液の溶媒を除去、洗浄、乾燥して得られる。なお、平均円形度を大きくし、所謂球形トナーを得る化学的合成工法として、先述の工法以外に公知の乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法等の重合法を用いてもよいし、従来の粉砕法で得られたトナーを熱処理により球形化処理したものを用いてもよい。
また、本実施形態では、ひとつのプロセスカートリッジを備えたモノクロ画像形成装置に本発明のクリーニング装置を適応しているが、これに限られない。例えば、マゼンタ・シアン・イエロー・ブラックの4つのプロセスカートリッジを横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成するカラー画像形成装置に適応できる。
【0047】
また、感光体上のトナー像を中間転写体に転写し、その中間転写体上のトナー像を転写紙に転写する中間転写方式の画像形成装置にも適応することができる。このとき、本発明のクリーニング装置は、感光体上に付着した転写残トナーをクリーニングするクリーニング装置のみならず、中間転写ベルト上に付着した転写残トナーをクリーニングする中間転写体クリーニング装置としても適用できる。中間転写体としては、ベルト状の中間転写ベルトのほか、ドラム状の中間転写ドラム等を用いることができる。中間転写体の電気的特性(体積抵抗率、表面抵抗率など)、厚さ、構造(単層、二層、それ以上の複層)、材料、材質等は、作像条件などにより適切なものを種々選択して採用することができる。
【0048】
また、本実施形態においては、クリーニングローラを感光体に当接させているが、クリーニングローラを感光体に近接配置させても良い。この場合においても、クリーニングローラ表面の正極性の電位を有する第1領域と負極性の電位を有する第2領域との間の電界によって感光体表面の転写残トナーを、転写残トナーの帯電極性と逆極性の領域に引き寄せる。領域間の電界の影響で引き寄せられた転写残トナーが、感光体表面を転がりながら移動して、転写残トナーの帯電極性と逆極性の領域に吸着する。これにより、正極性の転写残トナーおよび負極性の転写残トナーをひとつのローラで静電的に吸着することができる。
また、上述では、中間転写体や感光体などの像担持体などに付着した転写残トナーを除去するクリーニング装置について説明したが、これに限られない。例えば、被清掃体としての床、机、ガラスなどに付着した正極性に帯電した粉塵および負極性に帯電した粉塵を除去するクリーニング装置にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 感光体
2 帯電装置
2a 帯電ローラ
3 露光装置
4 給紙カセット
4a 給紙ローラ
5 転写装置
6 現像装置
7 クリーニング装置
9 定着装置
10 排紙ローラ対
12紙搬送ベルト
12a 転写ローラ
12b 駆動ローラ
13 搬送ローラ対
14 レジストローラ対
15 排紙トレイ
50 導電性シート
61 第1電極
62 第2電極
621 櫛歯状の突起物
622 フッ素樹脂溶液
623 フッ素樹脂
63 負極性電極部
64 直流高圧電源
71 クリーニングローラ
71b 芯材
71e 正極性の電位を有する第1領域
71f 負極性の電位を有する第2領域
73 スクレーパ部材
74 搬送手段
101 感光体
102 クリーニングブレード
103 球形トナー
104 正極性の転写残トナー
105 負極性の転写残トナー
106 転写残トナー
110 静電ブラシクリーニング装置
111 導電性ブラシローラ
112 フリッカー
113 電源
120 クリーニング装置
121 第1導電性ブラシローラ
122 第2導電性ブラシローラ
123 トナー回収装置
124 トナー回収装置
131 電源
132 電源
201 電極
202 表面層
A 第2領域
B 第1領域
C 第1領域
L レーザー光線
L1 領域間ピッチ
M トナーの粒径
P 転写紙
X1、X2、X3 電界
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2005−157374号公報
【特許文献2】特開2007−199639号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃体に近接または当接して、該被清掃体の表面の帯電微粉を静電的に除去するクリーニングローラを備えたクリーニング装置において、
上記クリーニングローラ表面に、正極性の電位を有する第1領域と、負極性の電位を有する第2領域とを備え、
該第2領域を、アモルファス性フッ素樹脂とアミノシラン化合物を含む負極性エレクトレット材料で構成した
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング装置において、
上記正極性の電位を有する第1領域が、可変な電位を有する電極により構成された
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクリーニング装置において、
上記アモルファス性フッ素樹脂が、下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂である
ことを特徴とするクリーニング装置。
【化1】

(式中、nは繰り返し単位数である。)
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のクリーニング装置において、
上記アミノシラン化合物が、下記一般式(2)で表されるアミノシラン化合物である
ことを特徴とするクリーニング装置。
【化2】

(式中、YはNHまたは(CH−NHを示し、Rは(CHCHを示す。mは1または2、jおよびkは1、2または3である。)
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のクリーニング装置において、
上記第2領域の負極性エレクトレット材料が、電子線照射により永久帯電処理されたものである
ことを特徴とするクリーニング装置
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のクリーニング装置において、
上記クリーニングローラに当接し、上記クリーニングローラに付着した帯電微粉を堰き止めて、該帯電微粉を上記クリーニングローラ表面の該帯電微粉の帯電極性と異なる極性の領域と対向させるスクレーパ部材を備えた
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項6に記載のクリーニング装置において、
上記スクレーパ部材および上記クリーニングローラのいずれか一方が弾性変形するように、上記スクレーパ部材を上記クリーニングローラに当接させた
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のクリーニング装置において、
上記被清掃体と上記クリーニングローラとの対向領域において、上記被清掃体と上記クリーニングローラとの間に線速差が生じるように構成した
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
請求項8に記載のクリーニング装置において、
上記被清掃体表面が上記クリーニングローラとの対向領域を通過する間に、上記第1領域および第2領域と上記被清掃体表面とが少なくとも一回以上接触するように構成した
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のクリーニング装置において、
上記第1領域と上記第2領域とを上記帯電微粉の平均粒径以上のピッチで配置した
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のクリーニング装置において、
上記第1領域および上記第2領域が、櫛形状のパターンで上記クリーニングローラ表面に形成された
ことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項12】
像担持体と、該像担持体を帯電する帯電装置と、該像担持体に静電潜像を形成する潜像形成装置と、該像担持体上の静電潜像にトナーを付着させて顕像化する現像装置と、該像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置と、該像担持体をクリーニングするクリーニング装置とを備えた画像形成装置において、
上記クリーニング装置として請求項1ないし10のいずれかに記載のクリーニング装置を用いる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像形成装置において、
上記像担持体上にトナー像を形成するためのトナーとして、形状係数SF−1が100〜150の範囲にあるものを用いる
ことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−128392(P2011−128392A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287109(P2009−287109)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】