クリーニング装置及びこのクリーニング装置を備えた定着装置
【課題】定着装置のクリーニングブラシに付着した異物を十分に除去することのできるスクレーパを備えたクリーニング装置及びこのクリーニング装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、前記クリーニングブラシを摺擦して清掃するスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する第1のエッジと、前記第1のエッジより前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ前記第1のエッジと逆向きの傾斜を有する第2のエッジとを有する。
【解決手段】複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、前記クリーニングブラシを摺擦して清掃するスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する第1のエッジと、前記第1のエッジより前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ前記第1のエッジと逆向きの傾斜を有する第2のエッジとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラ等のクリーニング装置及びこのクリーニング装置を備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、トナー像を用紙に定着させるための定着装置が備えられている。定着装置には、加熱される定着ローラやベルト等の加熱回転体と、当該加熱回転体に圧接される加圧ローラが備えられ、加熱回転体と加圧ローラとの間で形成されるニップ部にトナー像が転写された用紙を通過させ、熱と圧力をかけることによりトナー像を用紙に溶融定着させる。加熱回転体には、溶融したトナー等の付着を防ぐため、その表面にフッ素樹脂層を形成し、シリコンオイルを塗布するなどして、離型性の向上が図られている。しかし、微量の紙粉、溶融トナー等の異物が加熱回転体の表面に付着することは避けがたく、この付着した異物が、加熱回転体表面の離型性を劣化させて画像オフセットを生じさせたり、用紙を汚して画像ノイズを発生させたりする。また、加熱回転体の表面に付着した微量の異物は、加熱回転体から加圧ローラに転移し、この加圧ローラに蓄積された異物は、用紙の裏側を汚したり、加熱回転体に再付着したりするなどの問題を生じる。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、加熱回転体に付着した異物を清掃するクリーニングブラシを備えた定着装置が知られている。しかし、写真画像やカラー画像等を連続して高速で定着すると、溶融トナー、紙粉等の異物が多量に発生し、クリーニングブラシに異物が蓄積してクリーニング性能が低下し、更には、クリーニングブラシから加熱回転体や加圧ローラへ異物が再転移するという問題が生じる場合がある。
【0004】
そこで、特許文献2では、加熱回転体から異物を回収したクリーニングブラシを清掃するためのスクレーパを設け、クリーニングブラシのクリーニング性能を維持すると共に、回収した異物が加熱回転体や加圧ローラ表面に再付着することを防ぐという提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−119661号公報
【特許文献2】特開平5−323822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、加熱回転体や加圧ローラ表面から回収された異物は、溶融したトナーと紙粉、更にシリコンオイルなどが一体となったものであり、これがクリーニングブラシに絡みついている。このような粘着性を有する異物は振動を与えるだけでは除去することが難しく、特許文献2に示されるようにクリーニングブラシに1枚の板状スクレーパを当接させる構成では、クリーニングブラシの繊維のうち、スクレーパで摺擦されない部分に付着した異物を十分に除去することができない。クリーニングブラシの清掃が不十分な場合、上述したとおり、加熱回転体や加圧ローラに対するクリーニング性能を維持することができず、最悪の場合には、クリーニングブラシの異物が加熱回転体や加圧ローラに再付着するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加熱回転体や加圧ローラの汚れを清掃するクリーニングブラシに付着した異物をスクレーパで十分に摺擦して除去することにより、クリーニングブラシから加熱回転体や加圧ローラに異物が再付着することを防止し、もって定着装置における画像オフセットや画像のノイズの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るクリーニング装置は、複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、前記クリーニングブラシを摺擦して清掃するスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する第1のエッジと、前記第1のエッジより前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ前記第1のエッジと逆向きの傾斜を有する第2のエッジとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のクリーニング装置によれば、スクレーパがクリーニングブラシを摺擦する際、方向の異なる二つの傾斜を有するエッジがクリーニングブラシに接触することとなるので、複数のエッジがクリーニングブラシの繊維に違う角度から接触し、クリーニングブラシの繊維に付着した異物を十分除去することができ、クリーニングブラシのクリーニング性能を維持することができる。
【0010】
本発明に係るクリーニング装置のスクレーパは、前記摺擦方向に対して垂直に交差する第3のエッジを有していても良い。これにより、スクレーパのエッジとクリーニングブラシとの接点が更に増えるので、クリーニングブラシに付着した異物を十分除去することができクリーニングブラシのクリーニング性能を維持することができる。
【0011】
更に本発明では、前記第3のエッジは、円弧状に形成されていても良い。このようにすれば、エッジとクリーニングブラシとの接点が更に増えるので、クリーニングブラシに付着した異物を十分除去することができクリーニングブラシのクリーニング性能を維持することができる。
【0012】
更に本発明では、前記エッジは、耐熱離型剤樹脂により皮膜されていてもよい。これにより、スクレーパのエッジに汚れが付着しにくくなり、クリーニング性能が低下することを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明では、前記スクレーパは、複数の開口を有する1枚の板材からなり、前記エッジは前記板材の開口に設けられていても良い。一枚の板材とすることによりスクレーパを簡易な構成とすることができる。
【0014】
前記クリーニング装置は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに離隔可能に移動させる駆動機構を備えていても良い。スクレーパをクリーニングブラシから離隔させることができ、汚れがクリーニングブラシとスクレーパとの間で固着することを防ぐことができる。
【0015】
前記駆動機構は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに対し、前記クリーニングブラシの回転が開始する前に当接させ、前記クリーニングブラシの回転が停止した後に離隔させても良い。回転開始前にスクレーパをクリーニングブラシに当接させることにより、待機時にクリーニングブラシに固着した汚れが溶融する前に効率的に除去することができる。
【0016】
本発明に係るクリーニング装置は、前記スクレーパに対し、前記クリーニングブラシに付着した異物と逆極性の電圧を印加する電圧印加手段を備えていても良い。逆極性の電圧で汚れを引き付けることによりクリーニングブラシからスクレーパに汚れが移動しやすくなり、スクレーパで保持しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリーニングブラシから異物を除去するスクレーパに複数のエッジを設け、クリーニングブラシの繊維とスクレーパとの接点を増やすことにより、クリーニングブラシに付着した異物を十分に除去することができ、クリーニングブラシのクリーニング性能を維持すると共にクリーニングブラシから加熱回転体や加圧ローラに異物が再付着することを防止し、もって定着装置における画像オフセットや画像ノイズの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図2】実施例1に係るスクレーパの平面図
【図3】実施例1に係る繊維とエッジとの関係を時系列に示した図
【図4】実施例1に係る繊維と汚れの関係を示した図
【図5】従来例に係る繊維と汚れの関係を示した図
【図6】電圧を印加した場合の実施例1に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図7】実施例2に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図8】実施例2に係るスクレーパの平面図
【図9】実施例2に係るその他のスクレーパの平面図
【図10】実施例3に係るスクレーパをクリーニングブラシから離隔可能に移動させる駆動機構の断面図
【図11】その他の実施例に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図12】その他の実施例に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るクリーニング装置及びこのクリーニング装置を備えた定着装置の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
(1)定着装置
図1は本発明にかかる定着装置の断面図である。定着装置には、用紙を加熱するとともに搬送するための加熱ローラ20と、加熱ローラ20に圧接されてニップ部を形成し、このニップ部に用紙を挟持して搬送する加圧ローラ30が備えられている。加熱ローラ20及び加圧ローラ30は、図示しない本体フレームに支持され、用紙の搬送方向と直交する方向(軸方向)に最大サイズの用紙より長く延在している。加熱ローラ20は、ハロゲンランプのヒータ21を内蔵するアルミニウム等で形成された円筒状芯金と円筒状芯金上に形成された耐熱性の高いシリコンゴムからなる弾性層と、弾性層上に形成されたフッ素樹脂からなる離型層とから構成されている。加圧ローラ30は、アルミニウム等から形成された円筒状芯金と、円筒状芯金上に形成されたシリコンゴムからなる弾性層とから構成されている。加熱ローラ20は、図示しない駆動モータにより回転駆動され、加圧ローラ30は、加熱ローラ20に従動回転する。
【0021】
加熱ローラ20の表面には、シリコンオイルを浸透させたスポンジを備えたオイル供給部材23が圧接され、加熱ローラ20にシリコンオイルを塗布して用紙の剥離性を高めている。加熱ローラ20の軸方向中央部には、加熱ローラ20の表面温度を検出するためのサーミスタからなる温度センサ22が非接触状態で備えられ、加熱ローラ20の表面温度を検出している。加熱ローラ20は、温度センサ22による検出温度に応じてヒータ21がON/OFFされることによって、定着適正温度に保たれている。
【0022】
上述した構成の定着装置において、トナー像が表面に担持された用紙が加熱ローラ20と加圧ローラ30との間のニップ部を通過し、熱と圧力が加えられると、用紙上に担持されたトナーが用紙に定着される。この時、用紙表面のトナーが微小に加熱ローラ20に付着する。用紙がニップ部から排出された後、加熱ローラ20が加圧ローラ30と接触すると、加熱ローラ20に付着したトナーが加圧ローラ30に転移する。加熱ローラ20は表面に離型層を有し、加圧ローラ30より離型性が高いため、加熱ローラ20に付着したトナーは加熱ローラ20から離れて加圧ローラ30へ転移しやすい。また、加圧ローラ30の表面温度は、加熱ローラ20の表面温度より低いため、転移したトナーが冷却されて加圧ローラ30上で固化し、汚れとして保持されやすくなる。なお、この汚れには、トナーだけではなく、用紙の紙粉やオイルが混在している。このように紙粉やオイルが混在したトナー汚れを、本明細書において以下、単に「汚れ」と記す。
【0023】
(2)クリーニング装置
上述した汚れを除去するために、本実施例の定着装置はクリーニング装置を備えている。ここで、本実施例に係るクリーニング装置について説明する。
【0024】
クリーニングブラシ40は、図示しない本体フレームに支持され、加圧ローラ30の軸と平行に同じ長さで延在し、加圧ローラ30に対し下側から食い込み量約0.5mmで圧接されている。クリーニングブラシ40は、アルミニウム等から形成された円筒状芯金の表面にポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる耐熱性樹脂の繊維41を植毛したシートが巻きつけられたローラである。繊維41は直径約40μm、長さ約2mmで、240,000本/平方インチ程度の密度でシートに植毛されている。
【0025】
スクレーパ50は、クリーニングブラシ40に対し、食い込み量約0.8mmで圧接されている。スクレーパ50は、厚さ約0.3mmのステンレス等の金属からなる一枚の板材であり、クリーニングブラシ40の軸方向に長さを有し、短手方向はクリーニングブラシ40の周面に沿った円弧状に曲げられている。スクレーパ50は、箱型の汚れ保持部材10の上面開口部10aに接着されている。汚れ保持部材10は、クリーニングブラシ40の軸と平行に同じ長さで延在した状態で図示しない本体フレームに固定されている。
【0026】
このような構成のクリーニング装置において、クリーニングブラシ40は、図示しない駆動モータにより加圧ローラ30の回転方向(図中時計回り)と反対方向(図中反時計回り)に、加圧ローラ30より高速で回転駆動される。クリーニングブラシ40が回転駆動されると、加圧ローラ30の表面の汚れは、クリーニングブラシ40により摺擦されて掻き取られる。クリーニングブラシ40に付着した汚れは、クリーニングブラシ40が回転してスクレーパ50の表面により摺擦されることにより掻き落とされる。そして、スクレーパ50によりクリーニングブラシ40から掻き落とされた汚れは、汚れ保持部材10で受け止められる。
【0027】
<スクレーパの形状>
次に、スクレーパ50の形状について説明する。なお、本明細書において以下、クリーニングブラシ40の軸に沿う方向を「スクレーパの長手方向」と呼び、スクレーパ50の長手方向に直交する方向を「スクレーパの短手方向」と呼ぶものとする。クリーニングブラシ40の回転に伴い、クリーニングブラシ40の芯金の表面、すなわち、クリーニングブラシ40の周面の移動方向は、スクレーパ50の短手方向に平行となる。
【0028】
図2(a)はスクレーパ50の平面図である。スクレーパ50の長手方向に整列した複数の開口がスクレーパ50の短手方向に4段形成されている。
【0029】
1段目の開口51は、図2(b)に示す通り、長さ2mmの直線エッジ51aと、直線エッジ51aに平行な長さ2mmの直線エッジ51bと、これら直線エッジ51a及び51bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ51cと、直線エッジ51a及び51bの他方の端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ51dとからなる長孔である。開口51は、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して、直線エッジ51a、51bが斜め45°に傾き、直線エッジ51aが直線エッジ51bの下流側、円弧状エッジ51cが円弧状エッジ51dの下流側になるよう穿孔されている(図中右肩上がり)。スクレーパ50の1段目には、複数の開口51が0.7mmピッチで長手方向に整列配置されている。
【0030】
2段目の開口52は、図2(c)に示す通り、長さ2mmの直線エッジ52aと、直線エッジ52aに平行な長さ2mmの直線エッジ52bと、これら直線エッジ52a及び52bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ52cと、直線エッジ52a及び52bの他方の端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ52dとからなる長孔である。直線エッジ52a、52bは、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して、斜め45°に傾いているが、傾斜の方向は開口51の直線エッジ51a、52bとは逆である。開口52は、直線エッジ52aが直線エッジ52bの下流側、円弧状エッジ52cが円弧状エッジ52dの下流側になるよう穿孔されている(図中左肩上がり)。スクレーパ50の2段目には、複数の開口52が0.7mmピッチで長手方向に整列配置されている。
【0031】
3段目の開口53は51と同じ形状及び傾斜で同様に整列配置されており、4段目の開口54は52と同じ形状及び傾斜で同様に整列配置されている。すなわち、スクレーパ50には、段ごとに直線エッジが互い違いの傾斜となるように開口51乃至54が配置されている。
【0032】
<スクレーパによるブラシの摺擦動作>
図3(1)乃至(8)は、クリーニングブラシ40がスクレーパ50の表面を摺擦しながら回転し、クリーニングブラシ40の複数の繊維のうち、任意の1本の繊維41がスクレーパ50の表面を移動する様子を時系列に示したものである。図3中、クリーニングブラシ40の回転に伴うクリーニングブラシ40の周面は、上から下へ移動するものとする。
【0033】
まず、繊維41はスクレーパ50の1段目の開口51の直線エッジ51aに当接する(図3(1))。クリーニングブラシ40の回転に伴うクリーニングブラシ40の周面の移動方向は図中上から下にまっすぐであるが、繊維41は直線エッジ51aに導かれて斜め左下方向に移動する(図3(2))。更にクリーニングブラシ40が回転すると、繊維41は円弧状エッジ51cに当接し(図3(3))、その後開口51から抜けて揺動してもとの位置に戻る(図3(4))。
【0034】
このようにして、繊維41は、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して斜めに交差する直線エッジ51a及び垂直に交差する円弧状エッジ51cに摺擦され、図4(a)に示す通り、摺擦された箇所(図中右側と下側)の汚れを除去される。
【0035】
図3に戻って、クリーニングブラシ40の回転に伴い、繊維41はスクレーパ50の2段目の開口52の直線エッジ52aに当接する(図3(5))。クリーニングブラシ40の周面の移動方向は図中上から下にまっすぐであるが、繊維41は直線エッジ52aに導かれて斜め右下方向に移動する(図3(6))。更に、クリーニングブラシ40が回転すると、繊維41は円弧状エッジ52cに当接し(図3(7))、その後開口51から抜けて揺動してもとの位置に戻る(図3(8))。
【0036】
このようにして、繊維41は、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して斜めに交差する直線エッジ52a及び垂直に交差する円弧状エッジ52cに摺擦され、図4(b)に示す通り、繊維41の周囲に残った汚れ(図中左側)も除去される。
【0037】
一方、従来のクリーニングブラシに一枚の板状スクレーパのみを設置した構成では、繊維の周囲に絡みついた汚れが十分除去されない。図5(a)は、クリーニングブラシ400の繊維410に従来の一枚の板状スクレーパ500が当接されたところを示している。この構成では、繊維410は、クリーニングブラシ400の周面の移動方向において垂直に交差するエッジに摺擦されるのみであり、図5(b)に示すとおり、繊維410の側面に絡みついた汚れが除去されずに残ってしまう。
【0038】
以上説明したように、本実施例にかかるスクレーパ50は、クリーニングブラシ40の摺擦方向(クリーニングブラシ40の周面の移動方向)に対して斜めに交差する直線エッジ51a及び直線エッジ51aの下流側においてクリーニングブラシ40の摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ直線エッジ51aと逆の傾斜を有する直線エッジ52aを有しており、加えて、クリーニングブラシ40の摺擦方向に対して垂直に交差する円弧状エッジ51c、52cも有している。このように、クリーニングブラシ40の繊維41に対し、スクレーパ50のエッジが複数の接点をもって接することにより、繊維41を多面的に摺擦することができ、汚れを十分に除去することができる。
【0039】
同様に、クリーニングブラシ40の回転に伴い、繊維41は、開口53、54の直線エッジと円弧状エッジにもそれぞれ摺擦されるので、繊維41の汚れは残存することなく除去され、クリーニングブラシ40のクリーニング性能を維持することができる。
【0040】
なお、スクレーパ50は、各エッジを含め耐熱樹脂材で皮膜されていてもよい。スクレーパを耐熱樹脂材で皮膜すると、離型性が高められ、汚れがスクレーパに固着することを防ぐことができる。
【0041】
また、スクレーパに電源を接続し、汚れと逆極性の電圧を印加するよう構成しても良い。図6は、スクレーパ50にマイナス極性の電圧を印加したところを示している。本実施例では汚れがプラス極性に帯電しているため、スクレーパ50にマイナス極性の電圧を印加することにより、汚れがスクレーパ50に移動しやすくなり、スクレーパ50に付着した汚れがクリーニングブラシ40に戻らないようにすることができる。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明に係る別の実施例について説明する。
【0043】
(1)定着装置
実施例2に係る定着装置は、クリーニング装置を除いて実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0044】
(2)クリーニング装置
実施例2に係るクリーニング装置は、実施例1とスクレーパの数及び形状が異なる。以下、特に説明のない部分は、実施例1と同じである。
【0045】
図7は、実施例2に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図である。実施例1と同じ部材には同じ記号を付している。
【0046】
本実施例では、2枚のスクレーパ56及び57がクリーニングブラシ40にそれぞれ圧接されている。スクレーパ56及び57は、いずれも厚さ約0.3mmのステンレス等の金属からなる板材であり、クリーニングブラシ40の軸方向に長さを有し、それぞれ汚れ保持部材10に接着されている。
【0047】
スクレーパ56は、汚れ保持部材10の加圧ローラ30に近い方の側面10bに接着され、鉛直方向からクリーニングブラシ40に圧接されている。スクレーパ57は、汚れ保持部材10の加圧ローラ30から遠い方の側面10dに接着されている。スクレーパ57は、そのエッジが汚れ保持部材10の内側にくるように曲げられてクリーニングブラシ40に圧接されている。
【0048】
次に、スクレーパ56及び57の形状について説明する。図8(a)はスクレーパ56、57の平面図である。
【0049】
スクレーパ56は、クリーニングブラシ40に圧接されるエッジが波型に形成されている。スクレーパの短手方向に平行な長さ約2mmの直線エッジ56aと、直線エッジ56aに対し斜め45°に傾いた直線エッジ56bと、直線エッジ56a及び56bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ56cとで一つの波を作り(図8(b))、直線エッジ56aは隣の波の直線エッジ56bと連結して波の頂点を作っている。
【0050】
スクレーパ57もまた同様の波型のエッジを有し、クリーニングブラシ40の回転方向下流側でクリーニングブラシ40に波型のエッジを当接している。スクレーパの短手方向に平行な長さ約2mmの直線エッジ57aと、直線エッジ57aに対し斜め45°に傾いた直線エッジ57bと、直線エッジ57a及び57bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ57cとで一つの波を作り(図8(c))、直線エッジ57aは隣の波の直線エッジ57bと連結して波の頂点を作っている。スクレーパ57は、スクレーパ56に対し、直線エッジの傾斜が逆方向、すなわち、スクレーパ56の斜めの直線エッジ56bとスクレーパ57の斜めの直線エッジ57bが、互い違いの傾斜となるように配置されている。また、スクレーパ56の短手方向に平行な直線エッジ56aとスクレーパ57の短手方向に平行な直線エッジ57aは、クリーニングブラシ40の周面の移動方向において一直線上に並ばないように、ずらして設置されている。
【0051】
このように、本実施例にかかるスクレーパ56及び57は、クリーニングブラシ40の摺擦方向(クリーニングブラシ40の周面の移動方向)に対して斜めに交差する直線エッジ56b及び直線エッジ56bの下流側においてクリーニングブラシ40の摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ直線エッジ56bと逆の傾斜を有する直線エッジ57bを有しており、加えて、クリーニングブラシ40の摺擦方向に対して垂直に交差する円弧状エッジ56c及び57cを有している。このため、クリーニングブラシ40の繊維41に対し、スクレーパのエッジが複数の接点をもって接触することとなり、繊維41を多面的に摺擦することができ、汚れを十分に除去することができる。
【0052】
なお、スクレーパの形状は、本実施例の形状に限られるものではなく、実施例1のスクレーパ50を短手方向中央で2枚に分割したものを用いても良い。また、例えば図9に示すように、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して右斜め45°傾いた直線エッジと、左斜め45°傾いた直線エッジとの連続からなる鋸歯形状のスクレーパであっても良い。この場合、クリーニングブラシ40の回転方向上流側のスクレーパ58と下流側のスクレーパ59は、その頂点がクリーニングブラシ40の周面の移動方向において一直線上に並ばないよう、ずらして設置することが好ましい。これにより、スクレーパのエッジとクリーニングブラシ40の繊維41との接点をふやすことができるので、汚れを十分に除去することができる。
【0053】
更に、スクレーパの枚数は2枚に限られず、2枚以上設置することにより一層クリーニング効果を上げることができることはいうまでもない。
【0054】
また、実施例1と同様、スクレーパはそれぞれ、各エッジを含め耐熱樹脂材で皮膜されていてもよく、電源に接続して汚れと逆極性の電圧を印加するように構成しても良い。
【実施例3】
【0055】
次に、本発明に係る更に別の実施例について説明する。
【0056】
(1)定着装置
実施例3に係る定着装置は、クリーニング装置を除いて実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0057】
(2)クリーニング装置
図10は、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔可能に移動させる駆動機構の断面図である。実施例3に係るクリーニング装置の駆動機構は、スクレーパ50が接着された汚れ保持部材10を移動させることにより、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔可能にするものである。図中実施例1と同じ部材には同じ記号を付している。以下、実施例1と異なる部分のみ説明する。
【0058】
汚れ保持部材10のクリーニングブラシ40に近い側の底面10c端部には、軸受け部13が設置されており、汚れ保持部材10は、軸17を中心に揺動可能に支持されている。クリーニングブラシ40から遠い側の底面10c端部には、傾心カム15が当接され、傾心カム15はモータ16に連結されている。偏心カム15の上部の側面10bには、長手方向外側上部に、バネ受け部14が設置されている。バネ受け部14には、バネ18が下向きに連結され、汚れ保持部材10を偏心カム15へ向けて付勢している。
【0059】
かかる駆動機構において、モータ16の駆動により傾心カム15が回転すると、汚れ保持部材10はバネ18により下向きに引っ張られ、軸17を中心として旋回する。これにより、汚れ保持部材10の上面10aに接着されたスクレーパ50がクリーニングブラシ40から離隔される。
【0060】
スクレーパ50をクリーニングブラシ40に圧接する際には逆の動作となる。すなわち、モータ16の駆動により傾心カム15が回転すると、汚れ保持部材10が押し上げられ、汚れ保持部材10の上面10aに接着されたスクレーパ50がクリーニングブラシ40に圧接される。
【0061】
なお、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔するのは、定着動作が終了後、待機状態となったときであることが好ましい。待機時にスクレーパ50をクリーニングブラシ40に圧接したままの場合、クリーニングブラシ40とスクレーパ50の間で汚れが冷えて凝固し、凝固した汚れによりクリーニングブラシ40とスクレーパ50が固着し、次にクリーニングブラシ40が回転を開始する際に回転不良を生じたり、繊維41の脱落が生じたりするおそれがある。そこで、クリーニングブラシ40の回転停止後、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔することにより、クリーニングブラシ40とスクレーパ50の間で汚れが冷えて凝固することを防ぐことができる。
【0062】
また、定着装置の起動時、すなわち画像形成装置のウォームアップ時や待機状態からの復帰時には、クリーニングブラシ40の回転が開始する前に、スクレーパ50をクリーニングブラシ40に圧接することが好ましい。クリーニングブラシ40に残存した汚れは定着装置の停止中に冷えて凝固し、はがれやすくなっているので、スクレーパ50をクリーニングブラシ40の回転前に圧接させることにより、凝固した汚れが再度定着装置の起動により熱せられて溶融する前に、スクレーパで効率的に掻き取ることができるからである。
【0063】
このように、本実施例では、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔可能に移動させるよう構成することにより、待機時にクリーニングブラシ40とスクレーパ50の間で汚れが固着することを防ぐことができ、起動時により効率的にクリーニングブラシ40の汚れを除去することができる。
【0064】
なお、本実施例のスクレーパ50を実施例2のスクレーパ56及び57、又は58及び59と置き換えることで、実施例2のスクレーパも同様に、クリーニングブラシ40から離隔可能に構成することができる。
【0065】
以上、本発明に係るクリーニング装置について説明したが、本発明に係るクリーニング装置を備える定着装置は、実施例1乃至3の構成に限られないことはいうまでもない。例えば、熱ローラ式ではなくベルト式の定着装置でも良く、図12のような電磁誘導方式による定着装置であっても良い。また、クリーニングブラシは加圧ローラの汚れを除去するものではなく、図11のように加熱ローラ20にクリーニングブラシ40を当接させ、加熱ローラから直接汚れを回収するものであっても良く、図12のように均熱ローラ35を有する定着装置では、均熱ローラ35から汚れを除去するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0066】
10:汚れ保持部材
30:加圧ローラ
40:クリーニングブラシ
41:クリーニングブラシの繊維
50、56、57、58、59:スクレーパ
51〜54:開口
51a〜d、52a〜d、56a〜c、57a〜c:エッジ、
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ローラ等のクリーニング装置及びこのクリーニング装置を備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、トナー像を用紙に定着させるための定着装置が備えられている。定着装置には、加熱される定着ローラやベルト等の加熱回転体と、当該加熱回転体に圧接される加圧ローラが備えられ、加熱回転体と加圧ローラとの間で形成されるニップ部にトナー像が転写された用紙を通過させ、熱と圧力をかけることによりトナー像を用紙に溶融定着させる。加熱回転体には、溶融したトナー等の付着を防ぐため、その表面にフッ素樹脂層を形成し、シリコンオイルを塗布するなどして、離型性の向上が図られている。しかし、微量の紙粉、溶融トナー等の異物が加熱回転体の表面に付着することは避けがたく、この付着した異物が、加熱回転体表面の離型性を劣化させて画像オフセットを生じさせたり、用紙を汚して画像ノイズを発生させたりする。また、加熱回転体の表面に付着した微量の異物は、加熱回転体から加圧ローラに転移し、この加圧ローラに蓄積された異物は、用紙の裏側を汚したり、加熱回転体に再付着したりするなどの問題を生じる。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、加熱回転体に付着した異物を清掃するクリーニングブラシを備えた定着装置が知られている。しかし、写真画像やカラー画像等を連続して高速で定着すると、溶融トナー、紙粉等の異物が多量に発生し、クリーニングブラシに異物が蓄積してクリーニング性能が低下し、更には、クリーニングブラシから加熱回転体や加圧ローラへ異物が再転移するという問題が生じる場合がある。
【0004】
そこで、特許文献2では、加熱回転体から異物を回収したクリーニングブラシを清掃するためのスクレーパを設け、クリーニングブラシのクリーニング性能を維持すると共に、回収した異物が加熱回転体や加圧ローラ表面に再付着することを防ぐという提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−119661号公報
【特許文献2】特開平5−323822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、加熱回転体や加圧ローラ表面から回収された異物は、溶融したトナーと紙粉、更にシリコンオイルなどが一体となったものであり、これがクリーニングブラシに絡みついている。このような粘着性を有する異物は振動を与えるだけでは除去することが難しく、特許文献2に示されるようにクリーニングブラシに1枚の板状スクレーパを当接させる構成では、クリーニングブラシの繊維のうち、スクレーパで摺擦されない部分に付着した異物を十分に除去することができない。クリーニングブラシの清掃が不十分な場合、上述したとおり、加熱回転体や加圧ローラに対するクリーニング性能を維持することができず、最悪の場合には、クリーニングブラシの異物が加熱回転体や加圧ローラに再付着するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加熱回転体や加圧ローラの汚れを清掃するクリーニングブラシに付着した異物をスクレーパで十分に摺擦して除去することにより、クリーニングブラシから加熱回転体や加圧ローラに異物が再付着することを防止し、もって定着装置における画像オフセットや画像のノイズの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るクリーニング装置は、複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、前記クリーニングブラシを摺擦して清掃するスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する第1のエッジと、前記第1のエッジより前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ前記第1のエッジと逆向きの傾斜を有する第2のエッジとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のクリーニング装置によれば、スクレーパがクリーニングブラシを摺擦する際、方向の異なる二つの傾斜を有するエッジがクリーニングブラシに接触することとなるので、複数のエッジがクリーニングブラシの繊維に違う角度から接触し、クリーニングブラシの繊維に付着した異物を十分除去することができ、クリーニングブラシのクリーニング性能を維持することができる。
【0010】
本発明に係るクリーニング装置のスクレーパは、前記摺擦方向に対して垂直に交差する第3のエッジを有していても良い。これにより、スクレーパのエッジとクリーニングブラシとの接点が更に増えるので、クリーニングブラシに付着した異物を十分除去することができクリーニングブラシのクリーニング性能を維持することができる。
【0011】
更に本発明では、前記第3のエッジは、円弧状に形成されていても良い。このようにすれば、エッジとクリーニングブラシとの接点が更に増えるので、クリーニングブラシに付着した異物を十分除去することができクリーニングブラシのクリーニング性能を維持することができる。
【0012】
更に本発明では、前記エッジは、耐熱離型剤樹脂により皮膜されていてもよい。これにより、スクレーパのエッジに汚れが付着しにくくなり、クリーニング性能が低下することを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明では、前記スクレーパは、複数の開口を有する1枚の板材からなり、前記エッジは前記板材の開口に設けられていても良い。一枚の板材とすることによりスクレーパを簡易な構成とすることができる。
【0014】
前記クリーニング装置は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに離隔可能に移動させる駆動機構を備えていても良い。スクレーパをクリーニングブラシから離隔させることができ、汚れがクリーニングブラシとスクレーパとの間で固着することを防ぐことができる。
【0015】
前記駆動機構は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに対し、前記クリーニングブラシの回転が開始する前に当接させ、前記クリーニングブラシの回転が停止した後に離隔させても良い。回転開始前にスクレーパをクリーニングブラシに当接させることにより、待機時にクリーニングブラシに固着した汚れが溶融する前に効率的に除去することができる。
【0016】
本発明に係るクリーニング装置は、前記スクレーパに対し、前記クリーニングブラシに付着した異物と逆極性の電圧を印加する電圧印加手段を備えていても良い。逆極性の電圧で汚れを引き付けることによりクリーニングブラシからスクレーパに汚れが移動しやすくなり、スクレーパで保持しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリーニングブラシから異物を除去するスクレーパに複数のエッジを設け、クリーニングブラシの繊維とスクレーパとの接点を増やすことにより、クリーニングブラシに付着した異物を十分に除去することができ、クリーニングブラシのクリーニング性能を維持すると共にクリーニングブラシから加熱回転体や加圧ローラに異物が再付着することを防止し、もって定着装置における画像オフセットや画像ノイズの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図2】実施例1に係るスクレーパの平面図
【図3】実施例1に係る繊維とエッジとの関係を時系列に示した図
【図4】実施例1に係る繊維と汚れの関係を示した図
【図5】従来例に係る繊維と汚れの関係を示した図
【図6】電圧を印加した場合の実施例1に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図7】実施例2に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図8】実施例2に係るスクレーパの平面図
【図9】実施例2に係るその他のスクレーパの平面図
【図10】実施例3に係るスクレーパをクリーニングブラシから離隔可能に移動させる駆動機構の断面図
【図11】その他の実施例に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【図12】その他の実施例に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るクリーニング装置及びこのクリーニング装置を備えた定着装置の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0020】
(1)定着装置
図1は本発明にかかる定着装置の断面図である。定着装置には、用紙を加熱するとともに搬送するための加熱ローラ20と、加熱ローラ20に圧接されてニップ部を形成し、このニップ部に用紙を挟持して搬送する加圧ローラ30が備えられている。加熱ローラ20及び加圧ローラ30は、図示しない本体フレームに支持され、用紙の搬送方向と直交する方向(軸方向)に最大サイズの用紙より長く延在している。加熱ローラ20は、ハロゲンランプのヒータ21を内蔵するアルミニウム等で形成された円筒状芯金と円筒状芯金上に形成された耐熱性の高いシリコンゴムからなる弾性層と、弾性層上に形成されたフッ素樹脂からなる離型層とから構成されている。加圧ローラ30は、アルミニウム等から形成された円筒状芯金と、円筒状芯金上に形成されたシリコンゴムからなる弾性層とから構成されている。加熱ローラ20は、図示しない駆動モータにより回転駆動され、加圧ローラ30は、加熱ローラ20に従動回転する。
【0021】
加熱ローラ20の表面には、シリコンオイルを浸透させたスポンジを備えたオイル供給部材23が圧接され、加熱ローラ20にシリコンオイルを塗布して用紙の剥離性を高めている。加熱ローラ20の軸方向中央部には、加熱ローラ20の表面温度を検出するためのサーミスタからなる温度センサ22が非接触状態で備えられ、加熱ローラ20の表面温度を検出している。加熱ローラ20は、温度センサ22による検出温度に応じてヒータ21がON/OFFされることによって、定着適正温度に保たれている。
【0022】
上述した構成の定着装置において、トナー像が表面に担持された用紙が加熱ローラ20と加圧ローラ30との間のニップ部を通過し、熱と圧力が加えられると、用紙上に担持されたトナーが用紙に定着される。この時、用紙表面のトナーが微小に加熱ローラ20に付着する。用紙がニップ部から排出された後、加熱ローラ20が加圧ローラ30と接触すると、加熱ローラ20に付着したトナーが加圧ローラ30に転移する。加熱ローラ20は表面に離型層を有し、加圧ローラ30より離型性が高いため、加熱ローラ20に付着したトナーは加熱ローラ20から離れて加圧ローラ30へ転移しやすい。また、加圧ローラ30の表面温度は、加熱ローラ20の表面温度より低いため、転移したトナーが冷却されて加圧ローラ30上で固化し、汚れとして保持されやすくなる。なお、この汚れには、トナーだけではなく、用紙の紙粉やオイルが混在している。このように紙粉やオイルが混在したトナー汚れを、本明細書において以下、単に「汚れ」と記す。
【0023】
(2)クリーニング装置
上述した汚れを除去するために、本実施例の定着装置はクリーニング装置を備えている。ここで、本実施例に係るクリーニング装置について説明する。
【0024】
クリーニングブラシ40は、図示しない本体フレームに支持され、加圧ローラ30の軸と平行に同じ長さで延在し、加圧ローラ30に対し下側から食い込み量約0.5mmで圧接されている。クリーニングブラシ40は、アルミニウム等から形成された円筒状芯金の表面にポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる耐熱性樹脂の繊維41を植毛したシートが巻きつけられたローラである。繊維41は直径約40μm、長さ約2mmで、240,000本/平方インチ程度の密度でシートに植毛されている。
【0025】
スクレーパ50は、クリーニングブラシ40に対し、食い込み量約0.8mmで圧接されている。スクレーパ50は、厚さ約0.3mmのステンレス等の金属からなる一枚の板材であり、クリーニングブラシ40の軸方向に長さを有し、短手方向はクリーニングブラシ40の周面に沿った円弧状に曲げられている。スクレーパ50は、箱型の汚れ保持部材10の上面開口部10aに接着されている。汚れ保持部材10は、クリーニングブラシ40の軸と平行に同じ長さで延在した状態で図示しない本体フレームに固定されている。
【0026】
このような構成のクリーニング装置において、クリーニングブラシ40は、図示しない駆動モータにより加圧ローラ30の回転方向(図中時計回り)と反対方向(図中反時計回り)に、加圧ローラ30より高速で回転駆動される。クリーニングブラシ40が回転駆動されると、加圧ローラ30の表面の汚れは、クリーニングブラシ40により摺擦されて掻き取られる。クリーニングブラシ40に付着した汚れは、クリーニングブラシ40が回転してスクレーパ50の表面により摺擦されることにより掻き落とされる。そして、スクレーパ50によりクリーニングブラシ40から掻き落とされた汚れは、汚れ保持部材10で受け止められる。
【0027】
<スクレーパの形状>
次に、スクレーパ50の形状について説明する。なお、本明細書において以下、クリーニングブラシ40の軸に沿う方向を「スクレーパの長手方向」と呼び、スクレーパ50の長手方向に直交する方向を「スクレーパの短手方向」と呼ぶものとする。クリーニングブラシ40の回転に伴い、クリーニングブラシ40の芯金の表面、すなわち、クリーニングブラシ40の周面の移動方向は、スクレーパ50の短手方向に平行となる。
【0028】
図2(a)はスクレーパ50の平面図である。スクレーパ50の長手方向に整列した複数の開口がスクレーパ50の短手方向に4段形成されている。
【0029】
1段目の開口51は、図2(b)に示す通り、長さ2mmの直線エッジ51aと、直線エッジ51aに平行な長さ2mmの直線エッジ51bと、これら直線エッジ51a及び51bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ51cと、直線エッジ51a及び51bの他方の端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ51dとからなる長孔である。開口51は、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して、直線エッジ51a、51bが斜め45°に傾き、直線エッジ51aが直線エッジ51bの下流側、円弧状エッジ51cが円弧状エッジ51dの下流側になるよう穿孔されている(図中右肩上がり)。スクレーパ50の1段目には、複数の開口51が0.7mmピッチで長手方向に整列配置されている。
【0030】
2段目の開口52は、図2(c)に示す通り、長さ2mmの直線エッジ52aと、直線エッジ52aに平行な長さ2mmの直線エッジ52bと、これら直線エッジ52a及び52bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ52cと、直線エッジ52a及び52bの他方の端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ52dとからなる長孔である。直線エッジ52a、52bは、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して、斜め45°に傾いているが、傾斜の方向は開口51の直線エッジ51a、52bとは逆である。開口52は、直線エッジ52aが直線エッジ52bの下流側、円弧状エッジ52cが円弧状エッジ52dの下流側になるよう穿孔されている(図中左肩上がり)。スクレーパ50の2段目には、複数の開口52が0.7mmピッチで長手方向に整列配置されている。
【0031】
3段目の開口53は51と同じ形状及び傾斜で同様に整列配置されており、4段目の開口54は52と同じ形状及び傾斜で同様に整列配置されている。すなわち、スクレーパ50には、段ごとに直線エッジが互い違いの傾斜となるように開口51乃至54が配置されている。
【0032】
<スクレーパによるブラシの摺擦動作>
図3(1)乃至(8)は、クリーニングブラシ40がスクレーパ50の表面を摺擦しながら回転し、クリーニングブラシ40の複数の繊維のうち、任意の1本の繊維41がスクレーパ50の表面を移動する様子を時系列に示したものである。図3中、クリーニングブラシ40の回転に伴うクリーニングブラシ40の周面は、上から下へ移動するものとする。
【0033】
まず、繊維41はスクレーパ50の1段目の開口51の直線エッジ51aに当接する(図3(1))。クリーニングブラシ40の回転に伴うクリーニングブラシ40の周面の移動方向は図中上から下にまっすぐであるが、繊維41は直線エッジ51aに導かれて斜め左下方向に移動する(図3(2))。更にクリーニングブラシ40が回転すると、繊維41は円弧状エッジ51cに当接し(図3(3))、その後開口51から抜けて揺動してもとの位置に戻る(図3(4))。
【0034】
このようにして、繊維41は、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して斜めに交差する直線エッジ51a及び垂直に交差する円弧状エッジ51cに摺擦され、図4(a)に示す通り、摺擦された箇所(図中右側と下側)の汚れを除去される。
【0035】
図3に戻って、クリーニングブラシ40の回転に伴い、繊維41はスクレーパ50の2段目の開口52の直線エッジ52aに当接する(図3(5))。クリーニングブラシ40の周面の移動方向は図中上から下にまっすぐであるが、繊維41は直線エッジ52aに導かれて斜め右下方向に移動する(図3(6))。更に、クリーニングブラシ40が回転すると、繊維41は円弧状エッジ52cに当接し(図3(7))、その後開口51から抜けて揺動してもとの位置に戻る(図3(8))。
【0036】
このようにして、繊維41は、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して斜めに交差する直線エッジ52a及び垂直に交差する円弧状エッジ52cに摺擦され、図4(b)に示す通り、繊維41の周囲に残った汚れ(図中左側)も除去される。
【0037】
一方、従来のクリーニングブラシに一枚の板状スクレーパのみを設置した構成では、繊維の周囲に絡みついた汚れが十分除去されない。図5(a)は、クリーニングブラシ400の繊維410に従来の一枚の板状スクレーパ500が当接されたところを示している。この構成では、繊維410は、クリーニングブラシ400の周面の移動方向において垂直に交差するエッジに摺擦されるのみであり、図5(b)に示すとおり、繊維410の側面に絡みついた汚れが除去されずに残ってしまう。
【0038】
以上説明したように、本実施例にかかるスクレーパ50は、クリーニングブラシ40の摺擦方向(クリーニングブラシ40の周面の移動方向)に対して斜めに交差する直線エッジ51a及び直線エッジ51aの下流側においてクリーニングブラシ40の摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ直線エッジ51aと逆の傾斜を有する直線エッジ52aを有しており、加えて、クリーニングブラシ40の摺擦方向に対して垂直に交差する円弧状エッジ51c、52cも有している。このように、クリーニングブラシ40の繊維41に対し、スクレーパ50のエッジが複数の接点をもって接することにより、繊維41を多面的に摺擦することができ、汚れを十分に除去することができる。
【0039】
同様に、クリーニングブラシ40の回転に伴い、繊維41は、開口53、54の直線エッジと円弧状エッジにもそれぞれ摺擦されるので、繊維41の汚れは残存することなく除去され、クリーニングブラシ40のクリーニング性能を維持することができる。
【0040】
なお、スクレーパ50は、各エッジを含め耐熱樹脂材で皮膜されていてもよい。スクレーパを耐熱樹脂材で皮膜すると、離型性が高められ、汚れがスクレーパに固着することを防ぐことができる。
【0041】
また、スクレーパに電源を接続し、汚れと逆極性の電圧を印加するよう構成しても良い。図6は、スクレーパ50にマイナス極性の電圧を印加したところを示している。本実施例では汚れがプラス極性に帯電しているため、スクレーパ50にマイナス極性の電圧を印加することにより、汚れがスクレーパ50に移動しやすくなり、スクレーパ50に付着した汚れがクリーニングブラシ40に戻らないようにすることができる。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明に係る別の実施例について説明する。
【0043】
(1)定着装置
実施例2に係る定着装置は、クリーニング装置を除いて実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0044】
(2)クリーニング装置
実施例2に係るクリーニング装置は、実施例1とスクレーパの数及び形状が異なる。以下、特に説明のない部分は、実施例1と同じである。
【0045】
図7は、実施例2に係る定着装置及びクリーニング装置の断面図である。実施例1と同じ部材には同じ記号を付している。
【0046】
本実施例では、2枚のスクレーパ56及び57がクリーニングブラシ40にそれぞれ圧接されている。スクレーパ56及び57は、いずれも厚さ約0.3mmのステンレス等の金属からなる板材であり、クリーニングブラシ40の軸方向に長さを有し、それぞれ汚れ保持部材10に接着されている。
【0047】
スクレーパ56は、汚れ保持部材10の加圧ローラ30に近い方の側面10bに接着され、鉛直方向からクリーニングブラシ40に圧接されている。スクレーパ57は、汚れ保持部材10の加圧ローラ30から遠い方の側面10dに接着されている。スクレーパ57は、そのエッジが汚れ保持部材10の内側にくるように曲げられてクリーニングブラシ40に圧接されている。
【0048】
次に、スクレーパ56及び57の形状について説明する。図8(a)はスクレーパ56、57の平面図である。
【0049】
スクレーパ56は、クリーニングブラシ40に圧接されるエッジが波型に形成されている。スクレーパの短手方向に平行な長さ約2mmの直線エッジ56aと、直線エッジ56aに対し斜め45°に傾いた直線エッジ56bと、直線エッジ56a及び56bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ56cとで一つの波を作り(図8(b))、直線エッジ56aは隣の波の直線エッジ56bと連結して波の頂点を作っている。
【0050】
スクレーパ57もまた同様の波型のエッジを有し、クリーニングブラシ40の回転方向下流側でクリーニングブラシ40に波型のエッジを当接している。スクレーパの短手方向に平行な長さ約2mmの直線エッジ57aと、直線エッジ57aに対し斜め45°に傾いた直線エッジ57bと、直線エッジ57a及び57bの端部と端部を結ぶ直径約0.4mmの半円周の円弧状エッジ57cとで一つの波を作り(図8(c))、直線エッジ57aは隣の波の直線エッジ57bと連結して波の頂点を作っている。スクレーパ57は、スクレーパ56に対し、直線エッジの傾斜が逆方向、すなわち、スクレーパ56の斜めの直線エッジ56bとスクレーパ57の斜めの直線エッジ57bが、互い違いの傾斜となるように配置されている。また、スクレーパ56の短手方向に平行な直線エッジ56aとスクレーパ57の短手方向に平行な直線エッジ57aは、クリーニングブラシ40の周面の移動方向において一直線上に並ばないように、ずらして設置されている。
【0051】
このように、本実施例にかかるスクレーパ56及び57は、クリーニングブラシ40の摺擦方向(クリーニングブラシ40の周面の移動方向)に対して斜めに交差する直線エッジ56b及び直線エッジ56bの下流側においてクリーニングブラシ40の摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ直線エッジ56bと逆の傾斜を有する直線エッジ57bを有しており、加えて、クリーニングブラシ40の摺擦方向に対して垂直に交差する円弧状エッジ56c及び57cを有している。このため、クリーニングブラシ40の繊維41に対し、スクレーパのエッジが複数の接点をもって接触することとなり、繊維41を多面的に摺擦することができ、汚れを十分に除去することができる。
【0052】
なお、スクレーパの形状は、本実施例の形状に限られるものではなく、実施例1のスクレーパ50を短手方向中央で2枚に分割したものを用いても良い。また、例えば図9に示すように、クリーニングブラシ40の周面の移動方向に対して右斜め45°傾いた直線エッジと、左斜め45°傾いた直線エッジとの連続からなる鋸歯形状のスクレーパであっても良い。この場合、クリーニングブラシ40の回転方向上流側のスクレーパ58と下流側のスクレーパ59は、その頂点がクリーニングブラシ40の周面の移動方向において一直線上に並ばないよう、ずらして設置することが好ましい。これにより、スクレーパのエッジとクリーニングブラシ40の繊維41との接点をふやすことができるので、汚れを十分に除去することができる。
【0053】
更に、スクレーパの枚数は2枚に限られず、2枚以上設置することにより一層クリーニング効果を上げることができることはいうまでもない。
【0054】
また、実施例1と同様、スクレーパはそれぞれ、各エッジを含め耐熱樹脂材で皮膜されていてもよく、電源に接続して汚れと逆極性の電圧を印加するように構成しても良い。
【実施例3】
【0055】
次に、本発明に係る更に別の実施例について説明する。
【0056】
(1)定着装置
実施例3に係る定着装置は、クリーニング装置を除いて実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0057】
(2)クリーニング装置
図10は、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔可能に移動させる駆動機構の断面図である。実施例3に係るクリーニング装置の駆動機構は、スクレーパ50が接着された汚れ保持部材10を移動させることにより、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔可能にするものである。図中実施例1と同じ部材には同じ記号を付している。以下、実施例1と異なる部分のみ説明する。
【0058】
汚れ保持部材10のクリーニングブラシ40に近い側の底面10c端部には、軸受け部13が設置されており、汚れ保持部材10は、軸17を中心に揺動可能に支持されている。クリーニングブラシ40から遠い側の底面10c端部には、傾心カム15が当接され、傾心カム15はモータ16に連結されている。偏心カム15の上部の側面10bには、長手方向外側上部に、バネ受け部14が設置されている。バネ受け部14には、バネ18が下向きに連結され、汚れ保持部材10を偏心カム15へ向けて付勢している。
【0059】
かかる駆動機構において、モータ16の駆動により傾心カム15が回転すると、汚れ保持部材10はバネ18により下向きに引っ張られ、軸17を中心として旋回する。これにより、汚れ保持部材10の上面10aに接着されたスクレーパ50がクリーニングブラシ40から離隔される。
【0060】
スクレーパ50をクリーニングブラシ40に圧接する際には逆の動作となる。すなわち、モータ16の駆動により傾心カム15が回転すると、汚れ保持部材10が押し上げられ、汚れ保持部材10の上面10aに接着されたスクレーパ50がクリーニングブラシ40に圧接される。
【0061】
なお、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔するのは、定着動作が終了後、待機状態となったときであることが好ましい。待機時にスクレーパ50をクリーニングブラシ40に圧接したままの場合、クリーニングブラシ40とスクレーパ50の間で汚れが冷えて凝固し、凝固した汚れによりクリーニングブラシ40とスクレーパ50が固着し、次にクリーニングブラシ40が回転を開始する際に回転不良を生じたり、繊維41の脱落が生じたりするおそれがある。そこで、クリーニングブラシ40の回転停止後、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔することにより、クリーニングブラシ40とスクレーパ50の間で汚れが冷えて凝固することを防ぐことができる。
【0062】
また、定着装置の起動時、すなわち画像形成装置のウォームアップ時や待機状態からの復帰時には、クリーニングブラシ40の回転が開始する前に、スクレーパ50をクリーニングブラシ40に圧接することが好ましい。クリーニングブラシ40に残存した汚れは定着装置の停止中に冷えて凝固し、はがれやすくなっているので、スクレーパ50をクリーニングブラシ40の回転前に圧接させることにより、凝固した汚れが再度定着装置の起動により熱せられて溶融する前に、スクレーパで効率的に掻き取ることができるからである。
【0063】
このように、本実施例では、スクレーパ50をクリーニングブラシ40から離隔可能に移動させるよう構成することにより、待機時にクリーニングブラシ40とスクレーパ50の間で汚れが固着することを防ぐことができ、起動時により効率的にクリーニングブラシ40の汚れを除去することができる。
【0064】
なお、本実施例のスクレーパ50を実施例2のスクレーパ56及び57、又は58及び59と置き換えることで、実施例2のスクレーパも同様に、クリーニングブラシ40から離隔可能に構成することができる。
【0065】
以上、本発明に係るクリーニング装置について説明したが、本発明に係るクリーニング装置を備える定着装置は、実施例1乃至3の構成に限られないことはいうまでもない。例えば、熱ローラ式ではなくベルト式の定着装置でも良く、図12のような電磁誘導方式による定着装置であっても良い。また、クリーニングブラシは加圧ローラの汚れを除去するものではなく、図11のように加熱ローラ20にクリーニングブラシ40を当接させ、加熱ローラから直接汚れを回収するものであっても良く、図12のように均熱ローラ35を有する定着装置では、均熱ローラ35から汚れを除去するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0066】
10:汚れ保持部材
30:加圧ローラ
40:クリーニングブラシ
41:クリーニングブラシの繊維
50、56、57、58、59:スクレーパ
51〜54:開口
51a〜d、52a〜d、56a〜c、57a〜c:エッジ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、
前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、
前記クリーニングブラシを摺擦して清掃するスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する第1のエッジと、前記第1のエッジより前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ前記第1のエッジと逆向きの傾斜を有する第2のエッジとを有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して垂直に交差する第3のエッジを有することを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記第3のエッジは、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記エッジは、耐熱離型剤樹脂により皮膜されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記スクレーパは、複数の開口を有する1枚の板材からなり、前記エッジは前記板材の開口に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記スクレーパは、前記摺擦方向上流側と下流側において少なくとも2つの部材に分割され、上流側スクレーパは少なくとも前記第1のエッジを有し、下流側スクレーパは少なくとも前記第2のエッジを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項7】
複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、
前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、
前記クリーニングブラシを摺擦して清掃する1枚のスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する長軸を有する第1の長孔と、 前記第1の長孔より前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつその長軸が第1の長孔と逆向きの傾斜を有する第2の長孔とを有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、
前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、
前記クリーニングブラシを摺擦して清掃する複数のスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、波型のエッジで前記クリーニングブラシを摺擦するよう、前記摺擦方向上流側と下流側に少なくとも2つ設置され、下流側のスクレーパは上流側のスクレーパに対し、前記摺擦方向において波型の斜面エッジが互い違いの方向となるように設置されたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
前記クリーニング装置は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに離隔可能に移動させる駆動機構を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項10】
前記駆動機構は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに対し、前記クリーニングブラシの回転が開始する前に当接させ、前記クリーニングブラシの回転が停止した後に離隔させることを特徴とする請求項9に記載のクリーニング装置。
【請求項11】
前記クリーニング装置は、前記スクレーパに対し、前記クリーニングブラシに付着した異物と逆極性の電圧を印加する電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のクリーニング装置を備える画像形成装置。
【請求項1】
複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、
前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、
前記クリーニングブラシを摺擦して清掃するスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する第1のエッジと、前記第1のエッジより前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつ前記第1のエッジと逆向きの傾斜を有する第2のエッジとを有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して垂直に交差する第3のエッジを有することを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記第3のエッジは、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記エッジは、耐熱離型剤樹脂により皮膜されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記スクレーパは、複数の開口を有する1枚の板材からなり、前記エッジは前記板材の開口に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記スクレーパは、前記摺擦方向上流側と下流側において少なくとも2つの部材に分割され、上流側スクレーパは少なくとも前記第1のエッジを有し、下流側スクレーパは少なくとも前記第2のエッジを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項7】
複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、
前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、
前記クリーニングブラシを摺擦して清掃する1枚のスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、前記摺擦方向に対して斜めに交差する長軸を有する第1の長孔と、 前記第1の長孔より前記摺擦方向下流側において、前記摺擦方向に対して斜めに交差し、かつその長軸が第1の長孔と逆向きの傾斜を有する第2の長孔とを有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
複数の回転体からなる定着装置において、少なくとも一つの回転体から異物を除去するためのクリーニング装置であって、
前記少なくとも一つの回転体に当接されたクリーニングブラシと、
前記クリーニングブラシを摺擦して清掃する複数のスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、波型のエッジで前記クリーニングブラシを摺擦するよう、前記摺擦方向上流側と下流側に少なくとも2つ設置され、下流側のスクレーパは上流側のスクレーパに対し、前記摺擦方向において波型の斜面エッジが互い違いの方向となるように設置されたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
前記クリーニング装置は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに離隔可能に移動させる駆動機構を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項10】
前記駆動機構は、前記スクレーパを前記クリーニングブラシに対し、前記クリーニングブラシの回転が開始する前に当接させ、前記クリーニングブラシの回転が停止した後に離隔させることを特徴とする請求項9に記載のクリーニング装置。
【請求項11】
前記クリーニング装置は、前記スクレーパに対し、前記クリーニングブラシに付着した異物と逆極性の電圧を印加する電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載のクリーニング装置を備える画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−209365(P2011−209365A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74431(P2010−74431)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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