説明

クレーンのフックロープ掛本数検出装置

【課題】 クレーンのフックロープの掛本数を自動的に検出できるようにし、過負荷防止装置に於ける入力ミスをなくして事故の発生を防止する。
【解決手段】 ブーム11の先端に設けられた複数のヘッドシーブ12a〜12e毎に、ヘッドシーブに掛け回したフックロープ16の存在の有無を検出するセンサ25a〜25eを設ける。また、ブーム11の先端左右両側に、ロープソケット18の存在の有無を検出するセンサ26a,26bを設ける。予めフックロープ掛け回しの設定状態毎に、フックロープ16が掛け回されたヘッドシーブの位置とロープソケット18の位置のデータをメモリへ記憶しておき、前記各センサの検出結果とメモリに記憶されたデータとを照合して、制御部ではフックロープの掛本数を判定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はクレーンに関するものであり、特に、フックを上下移動させるフックロープのシーブへの掛本数を判定するフックロープ掛本数検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、クレーンには過負荷防止装置が装着されており、ブーム俯仰ロープ張力やブーム角度などを検出して吊り荷重や作業半径を演算し、負荷が大きくなったときには警報を発して危険を知らせ、アクチュエータの動作を停止して安全を確保するようにしている。
【0003】過負荷防止装置に於ける吊り荷重の算出方法について説明する。図12はクローラクレーンを示し、フックに掛かる吊り荷重をWW 、ブーム重量をWB 、フックロープのテンションをT1 、ブームペンダントのテンションをT2 とすれば、ブームフートOを中心とする左右のモーメントの釣り合いから、
【0004】
【数1】


【0005】(2式)によりフックに掛かる吊り荷重WW を算出し、吊り荷重が基準値を超えないように管理する。各変数については、クローラクレーンの最初の機械仕様に応じて、ブーム角度センサやブーム俯仰ロープの張力センサなどの検出値に基づき、ブームフートOから各モーメントの作用点までの距離RW ,RB ,HW ,HB 及びブーム俯仰ロープの張力TB が過負荷防止装置に自動入力される。
【0006】フックロープの掛本数N1 やブーム俯仰ロープの掛本数N2 は、作業内容によって変更することがあり、その都度オペレータが過負荷防止装置に手動で入力している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来のクレーンに於ける過負荷防止装置では、フックロープの掛本数N1 やブーム俯仰ロープの掛本数N2 を手動入力するため、オペレータの入力ミスにより実際の掛本数とは異なった数値を入力することがある。ここで、フックロープの掛本数N1 が実際の掛本数より大きい数値に入力された場合は、(2式)から分かるように、フックに掛かる吊り荷重WW が実際より小さく演算される。
【0008】従って、実際には吊り荷重が危険荷重に達した場合であっても、演算された吊り荷重WW は危険荷重に至っていないので過負荷に対する警報が遅れ、事故を発生する虞があった。
【0009】そこで、クレーンのフックロープの掛本数を自動的に検出できるようにし、過負荷防止装置に於ける入力ミスをなくして事故の発生を防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、ブームの先端に複数のヘッドシーブを同軸に並設するとともに、フックに複数のフックシーブを同軸に並設し、ウインチドラムから繰り出したフックロープを前記ヘッドシーブとフックシーブとの間に順次掛け回し、更に、フックロープの先端にロープソケットを固着してブームまたはフックへ固定し、フックロープの巻上げ下げによりフックを上下移動させるクレーンに於いて、ブーム先端の左側に固定したロープソケットの存在の有無を検出するセンサと、ブーム先端の右側に固定したロープソケットの存在の有無を検出するセンサを設けるとともに、ヘッドシーブに掛け回したフックロープの存在の有無を検出するセンサを各ヘッドシーブ毎に設置し、予めフックロープ掛け回しの設定状態毎に、フックロープが掛け回されたヘッドシーブの位置とロープソケットの位置のデータをメモリへ記憶しておき、前記各センサの検出結果とメモリに記憶されたデータとを照合して、制御部にてフックロープのシーブへの掛本数を判定するクレーンのフックロープ掛本数検出装置を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳述する。図1はクローラクレーンを示し、ブーム11の先端に複数のヘッドシーブ12を同軸に並設するとともに、フック13に複数のフックシーブ14を並設してある。ウインチドラム15から繰り出したフックロープ16をガイドシーブ17を経由してヘッドシーブ12とフックシーブ14との間に順次掛け回す。また、フックロープ16の先端にロープソケット18を固着し、ロープソケット18をブーム11の先端またはフック13の上部に固定する。
【0012】更に、ブーム11の先端後部にブームペンダント19の一端を係止し、該ブームペンダント19の他端にブライドル20を連結するとともに、ハイマスト21の上端部にベイル22を設ける。そして、ウインチドラム23から繰り出したブーム俯仰ロープ24を、ベイル22のシーブとブライドル20のシーブとの間に順次掛け回してロープ先端を固定する。
【0013】図2はブーム11の先端を示し、本実施の形態では小型のクローラクレーンであるので、5連のヘッドシーブ12が同軸に枢着されている。ガイドシーブ17を経由したフックロープ16は、最初の機械仕様に応じて予め定められた順番にて、ヘッドシーブ12とフックシーブ14との間に順次掛け回され、フックロープ16の先端のロープソケット18は、設定された掛本数によりブーム11の先端左側または先端右側、或いはフック13の上部に固定される。
【0014】同図に示すように、ヘッドシーブ12に掛け回したフックロープ16の存在の有無を検出するセンサ25を各ヘッドシーブ12毎に設置し、どのヘッドシーブにフックロープ16が掛け回されているかを検出する。また、ブーム11の先端左側に固定したロープソケット18の存在の有無を検出するセンサ26aと、ブーム11の先端右側に固定したロープソケット18の存在の有無を検出するセンサ26bとを設置する。
【0015】図3乃至図10は、ヘッドシーブ12とフックシーブ14とに対するフックロープ16の掛け回しの状態を示し、本実施の形態では5連のヘッドシーブ12a〜12eと、5連のフックシーブ14a〜14eを備えているので、各ヘッドシーブ12a〜12e毎にフックロープ16の存在の有無を検出するセンサ25a〜25eを設置してある。
【0016】図3はガイドシーブ17を経由したフックロープ16が、5つのヘッドシーブ12a〜12eと5つのフックシーブ14a〜14eの全てに掛け回された10本掛けの状態を示し、このときは、前記センサ25a〜25eが夫々フックロープ16の存在を検出してオン信号を出力する。また、ロープソケット18はブーム11の先端左側に固定されるので、前記センサ26aがロープソケット18の存在を検出してオン信号を出力し、センサ26bはオフとなる。
【0017】次に、図4はガイドシーブ17を経由したフックロープ16が、5つのヘッドシーブ12a〜12eと4つのフックシーブ14a,14b,14d,14eに掛け回された9本掛けの状態を示し、このときも、前記センサ25a〜25eが夫々フックロープ16の存在を検出してオン信号を出力する。しかし、ロープソケット18はフック13の上部に固定されるので、前記センサ26a,26bはオフとなる。
【0018】一方、図5はフックロープ16の掛本数が8の場合であり、中央のヘッドシーブ12cとフックシーブ14cにはフックロープ16が掛け回されないので、25a,25b,25d,25eの4つのセンサがオンとなって25cがオフとなり、ブーム11の先端左側のセンサ26aがオンとなりセンサ26bがオフとなる。また、図6はフックロープ16の掛本数が7の場合であり、左端のヘッドシーブ12aと左右両端のフックシーブ14a,14eにはフックロープ16が掛け回されないので、25b〜25eの4つのセンサがオンとなって25aがオフとなり、ロープソケット18はフック13の上部に固定されるので、前記センサ26a,26bはオフとなる。
【0019】以下、図7はフックロープ16の掛本数が6の場合であり、センサ25c〜25eとセンサ26bがオンとなり、図8はフックロープ16の掛本数が5の場合であり、センサ25c〜25eがオンとなる。更に、図9はフックロープ16の掛本数が4の場合であり、センサ25c,25eとセンサ26bがオンとなり、図10はフックロープ16の掛本数が3の場合であり、センサ25c,25eがオンとなる。
【0020】このように、フックロープ16の掛本数に応じて各センサ25a〜25e及び26a,26bのオン・オフの組合わせが決まっているので、これを表1のようにして予めメモリに記憶しておく。
【0021】
【表1】


【0022】而して、当該クローラクレーンの機械仕様によるフックロープの掛本数を判定する場合は、図11に示すように、前記センサ25a〜25e及びセンサ26a,26bの検出値を制御部27へ入力し、これらセンサの検出結果とメモリ28に記憶された表1のデータとを照合させる。例えば、センサ25a,25b,25d,25eがオンでセンサ25cがオフとなり、且つセンサ26aがオンであるときは、図5に示した8本掛の状態であることが判明する。
【0023】同様にして、センサ25c,25d,25eがオンでセンサ25a,25bがオフとなり、且つセンサ26bがオンであるときは、図7に示した6本掛の状態であることが判明する。
【0024】このように、各センサ25a〜25e及び26a,26bの検出結果に基づいて、制御部ではフックロープ16の掛本数を自動的に判定できるので、クレーンの過負荷防止装置に於けるフックロープの掛本数N1 が自動入力可能となり、オペレータの入力ミスを防止することができる。
【0025】尚、ヘッドシーブ12及びフックシーブ14の数量が本実施の形態より増減した場合であっても、各ヘッドシーブ12ごとにセンサ25を設置し、予め掛本数に応じた掛け回しの状態を記憶しておくことにより、前述と同様にして、フックロープ16の掛本数を判定することができる。
【0026】而して、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では予めフックロープ掛け回しの設定状態毎に、フックロープが掛け回されたヘッドシーブの位置とロープソケットの位置のデータをメモリへ記憶しておき、ヘッドシーブに掛け回したフックロープの存在を検出するセンサと、ロープソケットの存在を検出するセンサの各センサの検出結果とメモリに記憶されたデータとを照合してフックロープの掛本数が自動的に判定されるので、クレーンの過負荷防止装置に於けるフックロープの掛本数が自動入力可能となり、オペレータの操作性が向上し且つ入力ミスを防止することができる。
【0028】斯くして、クレーンの過負荷防止装置に於ける吊り荷重が正確に演算され、過負荷に対する警報の遅れがなくなって、事故の発生を未然に防止できるなど、安全性の向上にも寄与できる発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示し、クローラクレーンの側面図。
【図2】ブーム先端の側面図。
【図3】フックロープが10本掛けの状態を示す解説図。
【図4】フックロープが9本掛けの状態を示す解説図。
【図5】フックロープが8本掛けの状態を示す解説図。
【図6】フックロープが7本掛けの状態を示す解説図。
【図7】フックロープが6本掛けの状態を示す解説図。
【図8】フックロープが5本掛けの状態を示す解説図。
【図9】フックロープが4本掛けの状態を示す解説図。
【図10】フックロープが3本掛けの状態を示す解説図。
【図11】フックロープ掛本数検出装置のブロック図。
【図12】クレーンの吊り荷重やブーム重量など各モーメントの釣り合いを示す解説図。
【符号の説明】
11 ブーム
12 ヘッドシーブ
12a〜12e ヘッドシーブ
13 フック
14 フックシーブ
14a〜14e フックシーブ
15 ウインチドラム
16 フックロープ
18 ロープソケット
25a〜25e センサ
26a,26b センサ
27 制御部
28 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブームの先端に複数のヘッドシーブを同軸に並設するとともに、フックに複数のフックシーブを同軸に並設し、ウインチドラムから繰り出したフックロープを前記ヘッドシーブとフックシーブとの間に順次掛け回し、更に、フックロープの先端にロープソケットを固着してブームまたはフックへ固定し、フックロープの巻上げ下げによりフックを上下移動させるクレーンに於いて、ブーム先端の左側に固定したロープソケットの存在の有無を検出するセンサと、ブーム先端の右側に固定したロープソケットの存在の有無を検出するセンサを設けるとともに、ヘッドシーブに掛け回したフックロープの存在の有無を検出するセンサを各ヘッドシーブ毎に設置し、予めフックロープ掛け回しの設定状態毎に、フックロープが掛け回されたヘッドシーブの位置とロープソケットの位置のデータをメモリへ記憶しておき、前記各センサの検出結果とメモリに記憶されたデータとを照合して、制御部にてフックロープのシーブへの掛本数を判定することを特徴とするクレーンのフックロープ掛本数検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開平10−7379
【公開日】平成10年(1998)1月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−163157
【出願日】平成8年(1996)6月24日
【出願人】(000183314)住友建機株式会社 (13)