説明

クロストリジウム毒素活性の測定のための蛍光偏光アッセイ

【課題】クロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法を提供する。
【解決手段】(a)クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下でサンプルで、以下を含むクロストリジウム毒素基質を処理する工程:フルオロフォア;嵩高い基;およびフルオロフォアおよび嵩高い基の間に介在する切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列;(b)フルオロフォアを直線偏光で励起する工程;および(c)処理された基質の対照基質と比較しての蛍光偏光を測定する工程、ここで、対照基質の蛍光偏光と比較しての処理された基質の蛍光偏光における変化はクロストリジウム毒素の存在または活性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にプロテアーゼアッセイに関し、より具体的には、クロストリジウム毒素、例えば、ボツリヌス毒素および破傷風毒素の存在または活性を蛍光偏光を用いて判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
破傷風の神経麻痺症候群および稀であるが致死的であり得る疾患であるボツリヌス中毒症は、クロストリジウム属の細菌によって産生される神経毒により起こる。かかるクロストリジウム神経毒は非常に強力であり、神経細胞に特異的な毒であり、ボツリヌス毒素のヒトでの致死量はナノグラムのオーダーである。したがって、食糧中のほんのわずかなレベルのボツリヌス毒素の存在により、綿密な検査により回避しなければならない公衆衛生上の危険が起こる。
【0003】
しかし、有害効果を生じる可能性があるにもかかわらず、管理された低用量のボツリヌス神経毒の治療および特定の美容用途における使用が成功している。具体的には、ボツリヌス毒素は、様々な限局性および体節性ジストニア、斜視、ならびにコリン作動性神経終末活性の可逆性の抑制が望まれるその他の症状の治療管理に用いられている。ヒトにおいて確立されているボツリヌス神経毒の治療用途としては、これらに限定されないが、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、喉頭発声障害、限局性多汗症、流涎過多、顎口腔ジストニア、頸部ジストニア、斜頸、斜視、四肢ジストニア、職業性痙攣および筋波動症の治療が挙げられる(Rossetto et al.、Toxicon 39:27 41 (2001))。一例として、痙性組織の少量のボツリヌス神経毒Aによる筋肉内注射は、脳障害、脊髄損傷、脳卒中、多発性硬化症および脳性麻痺による痙縮の治療に有効に用いられている。さらなる可能性のあるクロストリジウム神経毒の臨床用途が現在調べられている。
【0004】
食糧中の少量のボツリヌス毒素に伴う可能性のある危険および正確な製剤処方を調製する必要性から、ボツリヌス神経毒のアッセイが食品および医薬産業において現在行われている。食品産業は、新規な食品包装方法の確証および食品安全性の保証のために、ボツリヌス神経毒のアッセイを必要としている。ボツリヌス毒素の臨床用途が増大しているため、製品の製造ならびに品質管理のためのボツリヌス神経毒活性の正確なアッセイが必要である。両産業において、マウス死亡率試験が現在、ボツリヌス神経毒作用強度の認容可能な唯一のアッセイである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不運なことに、マウス死亡率アッセイには以下のような欠点がある:多数の実験動物が必要であることによるコスト;特異性がないこと;多数の動物群を使用しなければ不正確となりうること; および動物を殺傷してしまうことである。したがって、マウス死亡率アッセイを補完し、その必要性を低減しうる便利な合成物質に基づく新規方法が必要とされている。本発明はクロストリジウム毒素の存在または活性を判定する新規アッセイを提供することによりこの要求を満たし、さらに関連する利益も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下によるクロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法を提供する:(a)サンプルで、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で、フルオロフォア; 嵩高い基(bulking group); およびフルオロフォアと嵩高い基との間に介在する切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列を含むクロストリジウム毒素基質を処理する工程; (b)フルオロフォアを直線偏光により励起する工程; および(c)処理された基質の対照基質と比較しての蛍光偏光を測定する工程、ここで処理された基質の蛍光偏光の対照基質の蛍光偏光と比較しての変化が、クロストリジウム毒素の存在または活性を示す。
【0007】
本発明においてさらに以下によるクロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法を提供する(a)サンプルで、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で、 (i)ドナーフルオロフォア; (ii)ドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有するアクセプター; および(iii) 切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列を含むクロストリジウム毒素基質を処理する工程、ここで切断部位はドナーフルオロフォアとアクセプターとの間に介在し、適当な条件下で、ドナーフルオロフォアとアクセプターとの間で共鳴エネルギー移動が示される; (b)ドナーフルオロフォアを直線偏光により励起する工程;および(c)処理された基質の対照基質と比較しての蛍光偏光を測定する工程、ここで対照基質の蛍光偏光と比較しての処理された基質の蛍光偏光の変化がクロストリジウム毒素の存在または活性を示す。
【0008】
図面の簡単な説明
図 1は、中枢および末梢神経細胞における破傷風およびボツリヌス毒素活性に必要な4工程の模式図を示す。
【0009】
図 2は、SNAP-25、VAMPおよびシンタキシンの細胞内局在および切断部位を示す。VAMPはシナプス小胞膜に結合しており、SNAP-25およびシンタキシンは標的細胞膜に結合している。BoNT/Aおよび/Eは、カルボキシ末端付近でSNAP-25を切断し、9または26残基をそれぞれ遊離させる。BoNT/B、/D、/F、/GおよびTeNT はVAMPの保存された中心部分(点を付して示す)に作用し、VAMPのアミノ末端部分を細胞質ゾルに遊離させる。BoNT/C1 はSNAP-25をカルボキシ末端近くで切断し、細胞膜表面近くの単一部位でシンタキシンを切断する。BoNT/B、/C1、/D、/F、/GおよびTeNTの作用により、VAMPまたはシンタキシンの細胞質ドメインの大部分が遊離するが、SNAP-25の小部分のみがBoNT/A、/C1または/Eの選択的タンパク質分解により遊離する。
【0010】
図 3は、様々な SNAP-25 タンパク質のアラインメントを示す。ヒト SNAP-25 (配列番号1; GenBank 受入番号 g4507099;関連ヒト SNAP-25 配列 g2135800も参照のこと); マウス SNAP-25 (配列番号2; GenBank 受入番号 G6755588); ショウジョウバエ SNAP-25 (配列番号3; GenBank 受入番号 g548941); キンギョ SNAP-25 (配列番号4; GenBank 受入番号 g2133923); ウニ SNAP-25 (配列番号5; GenBank 受入番号 g2707818)およびニワトリ SNAP-25 (配列番号6; GenBank 受入番号 g481202) が示される。
【0011】
図 4は、様々な VAMP タンパク質のアラインメントを示す。ヒト VAMP-1 (配列番号7; GenBank 受入番号 g135093); ヒト VAMP-2 (配列番号8; GenBank 受入番号 g135094); マウス VAMP-2 (配列番号9; GenBank 受入番号 g2501081); ウシ VAMP (配列番号10; GenBank 受入番号 g89782); カエル VAMP (配列番号11; GenBank 受入番号 g6094391); およびウニ VAMP (配列番号12; GenBank 受入番号 g5031415) が示される。
【0012】
図 5は、様々なシンタキシンタンパク質のアラインメントを示す。ヒトシンタキシン 1A (配列番号13; GenBank 受入番号 g15079184)、ヒトシンタキシン 1B2 (配列番号14; GenBank 受入番号 g15072437)、マウスシンタキシン 1A (配列番号15; GenBank 受入番号 g15011853)、ショウジョウバエシンタキシン 1A (配列番号16; GenBank 受入番号 g2501095); 線虫シンタキシン A (配列番号17; GenBank 受入番号 g7511662) およびウニシンタキシン (配列番号18; GenBank 受入番号 g13310402) が示される。
【0013】
図 6は、(A)にてプラスミド pQBI GFP-SNAP25(134-206)-6XHIS-Cの模式図を示し、(B)にてpQBI GFP-SNAP25(134-206)-6XHIS-Cの核酸およびアミノ酸配列(配列番号19 および 20)を示す。
【0014】
図 7は、GFP-SNAP25(134-206)-His6Cの、(A)にて吸収スペクトルを示し、(B)にて励起 (点線)および発光 (太字) スペクトルを示す。
【0015】
図 8は、 GFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594の、 (A)にてUV-VIS 吸収スペクトルを示し(B) にて励起 (太字)および発光 (点線) スペクトルを示す。
【0016】
図 9は、還元型BoNT/Aを様々な濃度で用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質のターンオーバーを示す。矢印は還元型毒素複合体を添加した時点を示す。
【0017】
図 10は、組換え BoNT/A 軽鎖を用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 546 基質のターンオーバーを示す。矢印はBoNT/A 軽鎖の添加を示す。
【0018】
詳細な説明
本発明は、すべての血清型のボツリヌス毒素および破傷風毒素を含むクロストリジウム毒素の存在または活性を判定する新規方法を提供する。本発明の新規方法は、蛍光偏光分析に有用なクロストリジウム毒素基質に基づくものであり、動物毒性研究の必要性を低減し、粗およびバルクサンプルならびに高度に精製された二本鎖または一本鎖毒素または製剤化毒素製品の分析に利用することができる。本発明の蛍光偏光に基づく方法はサンプル中に存在するバックグラウンド蛍光からの干渉により影響をうけない高感度アッセイである点で優れている。さらに、本発明の新規方法は均一溶液相アッセイとして実行でき、自動化ハイスループット形式に適用できる。
【0019】
本明細書において実施例Iに開示されているように、クロストリジウム毒素基質は、Alexa Fluor(登録商標) 594をフルオロフォアとして、緑色蛍光タンパク質 (GFP)を嵩高い基として、そしてSNAP-25の部分 (残基134-206)をBoNT/Aのためのクロストリジウム毒素認識配列として用いて調製した。Alexa Fluor(登録商標) 594で標識したGFP-SNAP25(134-206)-His6-Cys タンパク質の吸収スペクトルを本発明において図 8Aにおいて示し、GFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 594の励起および発光スペクトルを本発明において図8Bに示す。本明細書において実施例IIにさらに開示されているように、GFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質を、蛍光偏光における変化を経時的に記録することによりBoNT/A 還元型バルク毒素の活性についてのアッセイにより、好適な基質としてのその有用性を試験した。図 9に示すように、希釈されたバルク BoNT/A 毒素を添加した際またはそのすぐ後に蛍光偏光に低下がみられ、毒素活性は約 50 ng/ml (パネル9D参照)という低い濃度にて検出された。これらの結果は、クロストリジウム毒素の存在または活性は蛍光偏光によりアッセイされる合成基質を用いて判定できることを示す。
【0020】
本明細書においてさらに開示するように、蛍光偏光を蛍光共鳴エネルギー移動と組み合わせて、クロストリジウム毒素の存在または活性を高感度にアッセイすることができる。実施例Iにおいて開示するように、GFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質はカルボキシ末端システイン残基にてAlexa Fluor(登録商標) 546により部位特異的に標識され; GFP およびAlexa Fluor(登録商標) 546の光選択特性が、ドナーフルオロフォア GFP とアクセプター Alexa Fluor(登録商標) 546との間の蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)を提供する。実施例IIIにおいて開示し、図 10に示すように、蛍光偏光は、組換えBoNT/A 軽鎖の添加により上昇した。以下に拘束される意図はないが、インタクトな基質におけるFRETは、最初に選択した双極子 (GFP)とAlexa Fluor(登録商標) 546の直接の励起により選択されうる双極子との間の相当な角度によって、Alexa Fluor(登録商標) 546 発光の明らかな偏光解消を導く。タンパク質分解を受けると、FRET効果は消滅し、その結果、Alexa Fluor(登録商標) 色素の回転が上昇するにもかかわらず、偏光は上昇する。蛍光共鳴エネルギー移動と蛍光偏光との組合せにより、ターンオーバー時の偏光変化が増強され、アッセイ感度が上昇する(図10参照)。これらの結果は、蛍光偏光を蛍光共鳴エネルギー移動と組み合わせることにより、クロストリジウム毒素の存在または活性のアッセイにおける感度を上昇させることができることを示す。
【0021】
これらの知見に基づき、本発明は以下によるクロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法を提供する:(a)サンプルで、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で、以下を含むクロストリジウム毒素基質を処理する工程;フルオロフォア;嵩高い基;およびフルオロフォアと嵩高い基との間に介在する切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列; (b)フルオロフォアを直線偏光で励起する工程;および、(c)対照基質と比較しての処理された基質の蛍光偏光を測定する工程、ここで、対照基質の蛍光偏光と比較しての処理された基質の蛍光偏光の変化は、クロストリジウム毒素の存在または活性を示す。一つの態様において、蛍光偏光における変化は蛍光偏光の低下である。別の態様において、工程 (c)は、処理された基質の蛍光偏光の変化を経時的に測定することを含む。
【0022】
本発明の方法において、フルオロフォアは、これらに限定されないが、少なくとも 0.5 ナノ秒または少なくとも 5 ナノ秒または少なくとも 10 ナノ秒の蛍光寿命を有しうる。様々なフルオロフォアのいずれであっても本発明の方法に有用であり得、例えば、これらに限定されないが、Alexa Fluor(登録商標) 色素; フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体、例えば、ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF); フルオレセインの二ヒ素(biarsenic)誘導体、例えば、 フルオレセインヒ素(arsenical)ヘアピン結合色素 (FlAsH商標)および赤色二ヒ素(biarsenical)色素 (ReAsH商標); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド商標; テトラメチルカルボキシローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY-TR(登録商標); BODIPY-TMR; BODIPY(登録商標)-FL; Cy3; Cy商標3B およびダンシルが挙げられる。一つの態様において、フルオロフォアは、Alexa Fluor(登録商標) 色素、例えば、これらに限定されないが、Alexa Fluor(登録商標) 594である。別の態様において、フルオロフォアはFlAsH商標またはReAsH商標である。
【0023】
様々な嵩高い基が本発明の方法に有用であり、例えば、これらに限定されないが、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質が挙げられる。一つの態様において、本発明の方法は、クロストリジウム毒素基質の切断による分子量変化が少なくとも 1000 Daとなるように実施される。さらなる態様において、本発明の方法は、蛍光偏光の低下が少なくとも 5 ミリ偏光単位(millipolarization unit) (mP)となるように実施される。さらなる態様において、本発明の方法は、蛍光偏光の低下が 少なくとも 15 mPとなるように実施される。
【0024】
様々な認識配列が本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含めることが出来る。一つの態様において、認識配列は、BoNT/A 認識配列 、例えば、これらに限定されないが、SNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/A 認識配列であり、ここで6つの連続残基は、Gln-Arg、またはそれらのペプチド模倣体を含む。かかるBoNT/A 認識配列は例えば、配列番号2の残基134〜206 を含むものであってもよい。本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列としては、これらに限定されないが、BoNT/B 認識配列も挙げられる。かかるBoNT/B 認識配列は例えば、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含むものであってよく、ここで6つの連続残基はGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む。さらなる態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はBoNT/C1 認識配列である。かかるBoNT/C1 認識配列は、これらに限定されないが、シンタキシンの少なくとも6つの連続残基を含むものであってよく、ここで6つの連続残基はLys-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む。本発明に有用なBoNT/C1 認識配列はまた、SNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含むものであってよく、ここで6つの連続残基はArg-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む。
【0025】
さらなる態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はBoNT/D 認識配列である。かかるBoNT/D 認識配列は、例えば、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含むものであってよく、ここで6つの連続残基は Lys-Leu、またはそのペプチド模倣体を含む。本発明に有用な認識配列は、例えば、BoNT/E 認識配列であってもよい。かかるBoNT/E 認識配列としては、これらに限定されないが、配列番号2の残基 134 〜206またはSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含むものであってよく、ここで6つの連続残基はArg-Ile、またはそのペプチド模倣体を含む。さらに別の態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はBoNT/F 認識配列である。本発明に有用なBoNT/F 認識配列としては、これらに限定されないが、VAMPの 少なくとも6つの連続残基を有するものが挙げられ、ここで6つの連続残基は Gln-Lys、またはそのペプチド模倣体を含む。本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はBoNT/G 認識配列であってもよい。かかるBoNT/G 認識配列としては、これらに限定されないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を有するものが挙げられ、ここで6つの連続残基はAla-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む。さらなる態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はTeNT 認識配列である。かかるTeNT 認識配列は、これらに限定されないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含む配列であってよく、ここで6つの連続残基はGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む。
【0026】
様々なクロストリジウム毒素基質のいずれも本発明の方法によるクロストリジウム毒素の存在または活性の判定に有用である。一つの態様において、クロストリジウム毒素基質は少なくとも 100 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体である。別の態様において、クロストリジウム毒素基質は少なくとも 200 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体である。さらに、様々なサンプルのいずれも本発明の方法によってアッセイすることができ、例えば、これらに限定されないが以下が挙げられる:粗細胞可溶化液、単離クロストリジウム毒素軽鎖を含む単離クロストリジウム毒素; および製剤されたクロストリジウム毒素製品、例えば、これらに限定されないが、製剤された BoNT/A、BoNT/BまたはBoNT/E 毒素製品。
【0027】
本発明の方法によってアッセイされうる破傷風およびボツリヌス神経毒はクロストリジウムによって産生される。かかる毒素は、破傷風の神経麻痺症候群およびボツリヌス中毒症をおこし、破傷風毒素は主に中枢神経系に作用し、ボツリヌス毒素は末梢神経系に作用する。クロストリジウム神経毒は、神経伝達物質の放出が遮断されるという細胞中毒の同様の機構を有する。ジスルフィド結合した2つのポリペプチド鎖から構成されるこれらの毒素において、大きい方のサブユニットが神経特異的結合および小さい方のサブユニットの細胞質への転位置の役割を果たす。神経細胞に転位置して還元されると、小さい方の鎖は、神経エキソサイトーシスに関与するタンパク質成分に特異的なペプチダーゼ活性を示す。クロストリジウム毒素の「SNARE」タンパク質標的は、様々な非神経細胞タイプでのエキソサイトーシスに共通している; これら細胞においては、神経細胞におけるように、軽鎖ペプチダーゼ活性がエキソサイトーシスを阻害する。
【0028】
破傷風神経毒およびボツリヌス神経毒B、D、F、およびGは、シナプス小胞膜の膜(integral)タンパク質であるVAMP (シナプトブレビンとしても知られる)を特異的に認識する。VAMPは神経毒に応じて異なる結合にて切断される。ボツリヌスAおよびE神経毒は、シナプス前膜タンパク質であるSNAP-25を、該タンパク質のカルボキシ末端部分の2つの異なる部位を特異的に認識して切断する。ボツリヌス神経毒 Cは、神経原形質膜タンパク質であるシンタキシンもSNAP-25に加えて切断する。クロストリジウム神経毒の3つのタンパク質標的は酵母からヒトまで保存されているが、切断部位および毒素感受性は必ずしも保存されていない(以下を参照;また、Humeau et al.、Biochimie 82:427-446 (2000); Niemann et al.、Trends in Cell Biol. 4:179-185 (1994);および、Pellizzari et al.、Phil. Trans. R. Soc. London 354:259 268 (1999)も参照)。
【0029】
天然の破傷風およびボツリヌス神経毒は150 kDのポリペプチド鎖としてリーダー配列を伴わずに産生される。これらの毒素は、露出しているプロテアーゼ-感受性ループにて細菌または組織プロテイナーゼによって切断されると、活性の二本鎖毒素が生じる。選択的タンパク質切断が、ジスルフィド結合した2本の鎖を作成することにより毒素を活性化する: 50 kDa のL 鎖および100 kDa のH 鎖であり、後者はHNおよびHCと称される2つのドメインから構成される。この二本鎖毒素は、ニックの入っていない毒素よりも活性が高い。天然のクロストリジウム毒素は重鎖および軽鎖を架橋するひとつの鎖間ジスルフィド結合を含む; かかる架橋は細胞外から添加された毒素の神経毒性に重要である(Montecucco and Schiavo、Quarterly Rev. Biophysics 28:423 472 (1995))。
【0030】
クロストリジウム毒素は約 50 kDaの3つの異なるドメインにフォールディングされるようであり、これらはループによって連結されており、それぞれのドメインは異なる機能的役割を有する。図 1に示すように、クロストリジウム毒素の細胞中毒機構は4つの異なる工程からなる:(1) 結合; (2) インターナリゼーション; (3) 膜転位置;および (4) 酵素的標的修飾。重鎖のカルボキシ末端ドメイン(HC)は神経特異的結合において機能し、H 鎖のアミノ末端ドメイン (HN)は エンドソームから細胞の細胞質への膜転位置において機能する。細胞の内側のジスルフィド結合の還元の後に、L 鎖の亜鉛-エンドペプチダーゼ活性が遊離する (Montecucco and Schiavo、前掲、1995)。
【0031】
8つのヒトクロストリジウム神経毒血清型のアミノ酸配列が対応する遺伝子から得られている (Niemann、"Molecular Biology of Crostridial Neurotoxins"、 Sourcebook of Bacterial Protein Toxins Alouf and Freer (Eds.) pp. 303 348 London: Academic Press 1991)。L 鎖およびH 鎖は、およそ439および843 残基からそれぞれ構成される。相同的セグメントが、類似性が少ないまたは全くない領域によって分離されている。もっともよく保存されたL 鎖の領域は、アミノ末端部分 (100 残基)および中央領域 (TeNT の残基 216〜244に対応)、ならびに鎖間ジスルフィド結合を形成する2つのシステインである。216〜244 領域はHis-Glu-X-X-His 結合 モチーフを含み、これは亜鉛エンドペプチダーゼに特徴的である。
【0032】
クロストリジウム毒素重鎖は軽鎖ほどよく保存されておらず、TeNT の残基1140〜1315 に対応するHCのカルボキシ末端部分はもっとも可変性である。これは神経末端への結合にHC ドメインが関与すること、および、異なる神経毒は異なる受容体に結合するようであるという事実に一致する。
【0033】
クロストリジウム毒素のヌクレオチドおよびアミノ酸配列の比較により、それらは共通の祖先遺伝子に由来することが示される。これら遺伝子の伝播(spreading)はクロストリジウム神経毒遺伝子が可動性の遺伝因子上に位置するという事実によって促進されたのであろう。以下に論じるように、7つのボツリヌス毒素の配列変異体が当該技術分野において知られている。例えば、Humeau et al.、前掲、2000を参照。
【0034】
上記のように、クロストリジウム神経毒の天然の標的としては、VAMP、SNAP-25、およびシンタキシンが挙げられる。VAMPはシナプス小胞膜と会合しており、SNAP-25およびシンタキシンは標的膜と会合する(図2参照)。BoNT/A およびBoNT/EはSNAP-25をカルボキシ末端領域にて切断し、9または26アミノ酸残基をそれぞれ遊離させ、BoNT/C1もSNAP-25 をカルボキシ末端付近で切断する。ボツリヌス血清型、BoNT/B、BoNT/D、BoNT/FおよびBoNT/G、ならびに破傷風毒素は、VAMPの保存された中心部分に作用し、 VAMPのアミノ末端部分を細胞質ゾルへと遊離させる。BoNT/C1はシンタキシンを細胞膜表面付近の単一部位で切断する。したがって、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/F、BoNT/GまたはTeNT タンパク質分解の結果、VAMPまたはシンタキシンの細胞質ドメインの大部分が遊離し、SNAP-25の小部分のみがBoNT/A、BoNT/C1またはBoNT/E 切断 によって遊離される(Montecucco and Schiavo、前掲、1995)。
【0035】
膜貫通セグメントを有さない約 206 残基のタンパク質である天然のSNAP-25は、神経原形質膜の細胞質ゾル側表面と会合している(図 2;以下も参照、Hodel et al.、Int. J. Biochemistry and Cell Biology 30:1069 1073 (1998))。 ショウジョウバエから哺乳類へと高度に保存されているホモログに加えて、SNAP-25-関連タンパク質は酵母からもクローニングされている。SNAP-25は発達中の軸索伸長に必要であり、また、成熟神経系における神経末端可塑性に必要であり得る。ヒトにおいて、2つのアイソフォームが発達中に示差的に発現している; アイソフォームaは胎児発生中に構成的に発現しており、アイソフォーム bは誕生とともに現れ、成体において優勢であるようである。SNAP-25 アナログ、例えば、 SNAP-23も神経系の外側、例えば、膵臓細胞において発現している。
【0036】
天然の VAMPは約 120 残基のタンパク質であり、種およびアイソタイプに応じて正確な長さは異なる。図 2に示すように、VAMPは小胞内腔の内側に短いカルボキシ末端セグメントを含み、分子のほとんどは細胞質ゾルに露出している。プロリンに富むアミノ末端30残基は種とアイソフォームとによって多様であり、荷電および親水性残基に富み、既知の切断部位を含むVAMPの中央部分 (残基30〜96)は、高度に保存されている。VAMPは、シナプス小胞膜上にシナプトフィジンと共に局在している。
【0037】
VAMPの様々な種のホモログが当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、ラット、ウシ、シビレエイ、ショウジョウバエ、酵母、イカおよびアメフラシのホモログが挙げられる。さらに、複数のVAMPのアイソフォームが同定されており、例えば、VAMP-1、VAMP-2 およびセルブレビン(cellubrevin)が挙げられ、毒素切断に非感受性の形態が非神経細胞において同定されている。VAMPはすべての脊椎動物組織に存在しているようであるが、VAMP-1およびVAMP-2の分布は細胞のタイプに応じて異なるようである。ニワトリおよびラットVAMP-1はTeNTまたはBoNT/Bによって切断されない。これらVAMP-1 ホモログは、ヒトおよびマウス VAMP-1のTeNTまたはBoNT/B 切断部位において存在するグルタミンの代わりにバリンを有する。置換はBoNT/D、/Fまたは/Gに影響を与えず、これらは同様の速度でVAMP-1とVAMP-2との両方を切断する。
【0038】
シンタキシンは神経原形質膜の細胞質ゾル側表面に位置しており、膜にカルボキシ末端セグメントを介してアンカーされており、タンパク質の大部分は細胞質ゾルに露出している。シンタキシンはシナプス前膜の活性帯においてカルシウムチャンネルと共に局在し、そこで神経伝達物質の放出が起こる。さらに、シンタキシンは、SSV 膜のタンパク質であって、原形質膜と小胞との機能的な架橋を形成するシナプトタグミンと相互作用する。様々なシンタキシンアイソフォームが同定されている。僅かに異なる長さの2つのアイソフォーム(285および288 残基)が神経細胞において同定されており(アイソフォーム1Aおよび1B)、アイソフォーム 2、3、4および5はその他の組織で発現している。異なるアイソフォームはBoNT/C1に対する感受性が異なっており、1A、1B、2 および3 シンタキシンアイソフォームはこの毒素により切断される。
【0039】
本発明の方法は部分的には蛍光偏光の使用に依存する。蛍光偏光の理論によると、蛍光標識された分子が直線偏光により励起されると、それはその分子回転に反比例する偏光度を有する光を放射する。その結果、励起状態において(フルオレセインについて約 4 ns)比較的定常に維持される大きい蛍光標識された分子については、偏光は励起と発光との間で比較的一定に維持される。一方、小さい蛍光標識された分子は励起状態の間に迅速に回転し、光の偏光は励起と発光との間でかなり変化する。それゆえ、一般に、小さい分子は低い偏光値を有し、大きい分子は高い偏光値を有する。例えば、Weber、“Polarization of the Fuluorescence of Solutions”、Fuluorescence & Phosphorescence Analysis pages 217-241 Wiley Interscience (1996)、およびJameson and Seifried、Methods Enzym. 19:222-233 (1999)を参照。
【0040】
蛍光偏光アッセイは、分離工程を必要とせず、 基質の固定相への付着を必要としない点で均質である。さらに、偏光値は繰り返し測定できる。さらに、蛍光偏光は、低ピコモルからマイクロモルレベルのフルオロフォアの偏光値の測定に利用できる高感度技術である。偏光はまた蛍光強度とも無関係である。
【0041】
蛍光異方性 (一般に「r」と称され、「A」と称されることもある)はフルオロフォアの回転により励起と発光との間で偏光面がどれほど変化するかの代替的な定義である。蛍光偏光および異方性は当該技術分野において周知であり、Lundblad et al.、Mol. Endocrin. 10:607-612 (1996); Nasir et al.、Comb. Chem. High Throughput Screen. 2:177-190 (1999); Sittampalam et al.、Curr. Opin. Chem. Biol. 1:384-391 (1997); Thompson et al.、Biotechniques 32:34-40 (1997); Lakowicz et al.、J. Biomol. Screen. 5:123-132 (2000);およびFernandes、Curr. Opin. Chem. Biol. 2:597-603 (1998)に記載されている。
【0042】
具体的には、蛍光偏光 (P)および異方性 (r)は以下のように定義される:
偏光 = P = (I 垂直 - I 水平)/(I 垂直 + I 水平)
および、
異方性 = r = (I 垂直 - I 水平)/(I 垂直 + 2*I 水平)
【0043】
ここで、I 垂直 は励起光面に対して平行な発光の強度であり、I 水平は励起光面に対して垂直な発光の強度である。Pおよびrは、光強度の比であるため、無次元である。実験データはミリ偏光単位で表すことが出来、ここで1 偏光単位 = 1000 mP 単位であり、あるいはミリ異方性単位でも表すことが出来、ここで 1 異方性単位 = 1000 mA 単位である。
【0044】
偏光と異方性とを相互変換する式は以下の通り:
P =3r/(2+r)
および、
r =2P/(3-P)
【0045】
根本的に、偏光は蛍光寿命と励起と発光との間にどれほど速くフルオロフォアが回転するかの関係である。回転を制御する主要因は、モル体積 (V)、絶対温度 (T)、および粘度 (η)である。 回転相関時間 (θ)および回転緩和時間 (ρo)はPerrinおよびWeberの研究から得られる。具体的には、回転相関時間 (θ)は以下のPerrin 方程式から得られる:
【数1】

そして以下のように定義される:
回転相関時間
【数2】

【0046】
さらに、回転緩和時間 (ρo)は以下のPerrin/Weber 方程式 (Perrin、J. Phys. Rad. 7:390-401 (1926))から得られる:
【数3】

そして以下のように定義される:
回転緩和時間
【数4】

ここでRは気体定数、τは蛍光寿命、Pは偏光、そしてP0は限界(limiting)偏光である。
【0047】
上記から、寿命、粘度、および温度が一定に維持されている場合、モル体積 (したがって偏光または異方性)が回転を決定することが理解できる。モル体積が大きいほど、分子の回転は遅くなり、偏光および異方性値は高くなる。さらに、上記方程式から明らかなように、回転緩和時間は回転相関時間よりもちょうど3倍長くなる。
【0048】
本発明の方法は、一部分として、フルオロフォアを含むクロストリジウム毒素基質に依存する。本明細書において用いる場合、「フルオロフォア」という用語は、一定の波長の光を照射された場合、蛍光とも称される異なる波長の光を放射する分子を意味する。フルオロフォアという用語は、当該技術分野において「蛍光色素」という用語と同義である。
【0049】
本発明に有用なフルオロフォアならびに以下にさらに説明するドナーフルオロフォアとしては、蛍光偏光分析に好適な蛍光寿命を有するものが挙げられる。有用なフルオロフォアとしては、これらに限定されないが以下が挙げられる:Alexa Fluor(登録商標) 色素; フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体、例えば、ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF); フルオレセインの二ヒ素(biarsenic) 誘導体、例えば、フルオレセインヒ素ヘアピン結合色素 (FlAsH商標)および赤色二ヒ素色素 (ReAsH商標); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド商標; テトラメチルカルボキシローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY-TR(登録商標); BODIPY-TMR; BODIPY(登録商標)-FL; Cy3、Cy商標3Bおよびダンシル。蛍光偏光に好適なさらなるフルオロフォアは当該技術分野において知られており、これらに限定されないが、以下が挙げられる:アッセイ干渉を最小にする傾向がある長波長フルオロフォア、例えば、 BODIPY-TMR およびBODIPY-TR(登録商標) (Molecular Probes)、およびpH 非感受性フルオロフォア、例えば、 BODIPY-FL。例えば、Owicki、J. Biomol. Screening 5:297-306 (2000); Burke et al.、Comb. Chem. & High Throughput Screen. 6:183-194 (2003);およびJameson and Croney、Comb. Chem. & High Throughput Screen. 6:167-176 (2003)を参照されたい。蛍光偏光に有用な様々なフルオロフォアおよびドナーフルオロフォアは様々な販売元から市販されており、例えば、 Molecular Probes (Eugene、Oregon)および Amersham Pharmacia Biotech (Piscataway、New Jersey)が挙げられる。当業者であれば蛍光偏光に好適なこれらおよびその他のフルオロフォアは当該技術分野において知られており、本発明の方法に有用であり得ることを理解するであろう。
【0050】
本明細書において用いる場合、「嵩高い基」という用語は、嵩高い基が組み込まれているクロストリジウム毒素基質が切断された際に、少なくとも 3 ミリ偏光単位(mP)の偏光変化をもたらすのに十分な水力学的体積を有する部分を意味する。
【0051】
様々な部分が本発明の方法において嵩高い基として有用であり得、例えば、共有結合的または非共有結合的にクロストリジウム毒素基質に組み込まれうる物理的、化学的および生物学的部分が挙げられる。一つの態様において、嵩高い基は、クロストリジウム毒素基質の他の成分との融合タンパク質として発現される。本発明に有用な嵩高い基には、天然および人工部分が含まれ、さらに、これらに限定されないが、不活性部分ならびに生物学的またはその他の活性を有する部分が含まれる。本発明に有用な嵩高い基は、これらに限定されないが、1000 Daより大きいサイズを有する部分であり得る。本発明に有用な嵩高い基はまた、これらに限定されないが、2 kDa、3 kDa、4 kDa、5 kDa、10 kDa、15 kDa、20 kDa、25 kDa、30 kDa、35 kDaまたは40 kDaより大きいサイズを有する部分であり得る。Mattison et al.、Application Note for Protein Solutions Inc. February 2001も参照されたい。当業者であれば、好適な寿命を有するフルオロフォアは部分的には嵩高い基のサイズに応じて選択されることを理解するであろう。
【0052】
様々な嵩高い基が本発明に有用であり得る。非限定的な例として、本発明に有用な嵩高い基は以下であり得る:不活性または活性タンパク質、ペプチドまたはペプチド模倣体;抗体; 有機化合物; ラテックスまたはその他のビーズ;あるいはストレプトアビジンなどの部分。本発明に有用なさらなる嵩高い基としては、これらに限定されないが、ファージおよびその他のウイルス; 細胞; リポソーム; ポリマーおよび非-ポリマーマトリックス; 金およびその他の粒子; およびマイクロデバイスおよびナノデバイスが挙げられる。非限定的な例として、本発明に有用な嵩高い基は、以下であり得る:蛍光タンパク質、例えば、 GFPまたはBFP、またはその断片;アフィニティー精製に有用なタンパク質、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)またはマルトース-結合タンパク質 (MBP);または抗体、例えば、これらに限定されないが、抗-FLAG、抗-ヘマグルチニン (HA)または 抗-myc 抗体。ストレプトアビジンも本発明に有用な嵩高い基であり得る。非限定的な例として、ビオチン化配列をクロストリジウム毒素基質に共有結合的に含め、ストレプトアビジンとの結合に供してもよい; 酵素的切断は、Levine et al.、"Measurement of specific protease activity utilizing fluorescence polarizaion、" Anal. Biochem. 247:83-88 (1997)に記載のようにストレプトアビジンの添加の際の蛍光偏光変化を観察することにより検出することが出来る。
【0053】
本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、フルオロフォアと嵩高い基との間に「介在する」切断部位を含む。したがって、切断部位でのタンパク質分解により、フルオロフォアを含む第一の切断産物と嵩高い基を含む第二の切断産物が生じるように、切断部位はフルオロフォアと嵩高い基との間に位置させる。クロストリジウム毒素認識配列のすべてまたは一部のみが、フルオロフォアと嵩高い基との間に介在しうることが理解される。
【0054】
本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、一部として、切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列を含む。定義によると、クロストリジウム毒素基質は、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で少なくとも1つのクロストリジウム毒素により切断を受けるものである。
【0055】
本明細書において用いる場合、「クロストリジウム毒素認識配列」という用語は、隣接または非隣接認識要素、またはその両方と共に、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下でクロストリジウム毒素により、その(開裂性の)結合にて検出可能なタンパク質分解が起こるのに十分に開裂性の結合を意味する。様々なクロストリジウム毒素認識配列を本明細書において以下に記載する。
【0056】
特定の態様において、本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、所定の長さを有するペプチドまたはペプチド模倣体である。クロストリジウム毒素基質は、例えば、少なくとも 50、少なくとも 100、少なくとも 150、少なくとも 200、少なくとも 250、少なくとも 300、少なくとも 350、少なくとも 500、少なくとも 600、少なくとも 700、少なくとも 800または少なくとも 900 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。別の態様において、クロストリジウム毒素基質は、多くとも 20 残基、多くとも 30 残基、多くとも 40 残基、多くとも 50 残基、多くとも 60 残基、多くとも 70 残基、多くとも 80 残基、多くとも 90 残基、多くとも 100 残基、多くとも 150 残基、多くとも 200 残基、多くとも 250 残基、多くとも 300 残基、多くとも 350 残基または多くとも 400 残基を有する。
【0057】
本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、1以上のさらなる成分を含んでいてもよいといういことが理解される。非限定的な例として、可動性スペーサー配列、例えば、GGGGS (配列番号21)が本発明に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれうる。有用なクロストリジウム毒素基質はさらに、これらに限定されないが、以下の1以上を含みうる:アフィニティータグ、例えば、 HIS6; ビオチンまたはビオチン化配列;またはエピトープ、例えば、FLAG、ヘマグルチニン (HA)、c-myc、またはAU1;免疫グロブリンヒンジ領域; N-ヒドロキシスクシンイミドリンカー;ペプチドまたはペプチド模倣体ヘアピンターン;または親水性配列または、例えば、クロストリジウム毒素基質の精製を容易にする、または溶解性または安定性を向上させるその他の成分または配列。
【0058】
以下にさらに詳細に説明するように、本発明の方法は、粗サンプルならびに高度に精製された二本鎖および一本鎖毒素に適用されるといういことが理解される。非限定的な例として、本発明の方法は以下のために有用でありうる:食物または飲料サンプルにおけるクロストリジウム毒素の存在または活性の判定;例えば、クロストリジウム毒素に曝露されたか、あるいはクロストリジウム毒素の1以上の症状を有する、ヒトまたは動物からのサンプルのアッセイ;クロストリジウム毒素の産生および精製の際の活性の追跡;または、製剤されたクロストリジウム毒素製品、例えば、医薬品または化粧品のアッセイ。
【0059】
様々なサンプルが本発明の方法に有用である。本明細書において用いる場合、「サンプル」という用語は、活性のクロストリジウム毒素を含む、または含む可能性のあるあらゆる生物学的物質を意味する。したがって、サンプルという用語は、これらに限定されないが、以下を含む:精製または部分的に精製されたクロストリジウム毒素;天然または非天然の配列を有する組換え一本鎖または二本鎖毒素;プロテアーゼ特異性が改変された組換えクロストリジウム毒素;細胞特異性が改変された組換えクロストリジウム毒素;複数のクロストリジウム毒素の種またはサブタイプからの構造要素を含むキメラ毒素; バルク毒素; 製剤化毒素製品; 例えば、クロストリジウム毒素をコードする組換え核酸を含むように操作された、細胞または粗、分画または部分的に精製された細胞可溶化液; 細菌、バキュロウイルスおよび酵母可溶化液; 生の、調理された、部分的に調理されたまたは加工された食品; 飲料; 動物用飼料; 土壌サンプル; 水系サンプル; 地底質; ローション; 化粧品; および医療用製剤。サンプルという用語は組織サンプル、例えばこれらに限定されないが、哺乳類組織サンプル、家畜組織サンプル、例えば、ヒツジ、ウシおよびブタ組織サンプル; 霊長類組織サンプル;およびヒト組織サンプルを含むということがさらに理解される。かかるサンプルには、これらに限定されないが、腸サンプル、例えば、幼児腸サンプル、および創傷から得られた組織サンプルが含まれる。
【0060】
以下にさらに詳細に説明するように、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な様々な条件が本発明の方法に有用である。例えば、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、少なくとも基質の10%が切断されるように提供すればよい。同様に、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、クロストリジウム毒素基質の少なくとも 20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%が切断されるよう、あるいはクロストリジウム毒素基質の100%が切断されるように提供すればよい。一つの態様において、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、アッセイが線形であるように選択される。別の態様において、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、 クロストリジウム毒素基質の少なくとも 90%が切断されるように提供される。さらなる態様において、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、クロストリジウム毒素基質の多くとも 25%が切断されるように提供される。さらに別の態様において、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、クロストリジウム毒素基質の多くとも 5%、10%、15%または20%が切断されるように提供される。
【0061】
本発明の方法において、クロストリジウム毒素基質は液相でサンプルにより処理されうる。本明細書においてクロストリジウム毒素基質に関して用いる場合、「液相」という用語は、基質が可溶性であり、かつ、タンパク質分解の際に、固体支持体、例えば、カラムまたはディッシュに束縛または固定化されていないことを意味する。
【0062】
本発明の方法において、サンプルはクロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下でクロストリジウム毒素基質によって処理される。クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な例示的な条件は当該技術分野において周知であり、さらに、常套方法によって決定することが出来る。例えば、Hallis et al.、J. Clin. Microbiol. 34:1934 1938 (1996); Ekong et al.、Microbiol. 143:3337 3347 (1997); Shone et al.、WO 95/33850; Schmidt and Bostian、前掲、1995; Schmidt and Bostian、前掲、1997; Schmidt et al.、前掲、1998;およびSchmidt and Bostian、米国特許第5,965,699号を参照されたい。クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、部分的には、アッセイされる特定のクロストリジウム毒素のタイプまたはサブタイプおよび毒素調製物の純度に依存しうるということが理解される。クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は一般に、典型的には、pH 5.5〜9.5の範囲、例えばpH 6.0〜9.0、pH 6.5 〜8.5またはpH 7.0 〜8.0の範囲のバッファー、例えば、 HEPES、Tris またはリン酸ナトリウムを含む。クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件はまた、所望の場合、例えば、二本鎖毒素がアッセイされる場合は、ジチオトレイトール、β-メルカプトエタノールまたは、その他の還元剤を含みうる(Ekong et al.、前掲、1997)。一つの態様において、条件は、 0.01 mM〜50 mMの範囲のDTTを含む; 別の態様において、条件は、 0.1 mM〜20 mM、1〜20 mM、または5〜10 mMの範囲のDTTを含む。所望の場合は、単離クロストリジウム毒素またはサンプルを還元剤、例えば、10 mM ジチオトレイトール (DTT)とともに約 30 分間、クロストリジウム毒素基質の添加の前にプレインキュベートしてもよい。
【0063】
クロストリジウム毒素は亜鉛メタロプロテアーゼであり、所望の場合は、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件の一部として亜鉛源、例えば、塩化亜鉛または酢酸亜鉛を、典型的には 1〜500 μM、例えば、5 〜10 μM の範囲にて含めることが出来る。当業者であれば、亜鉛キレート剤、例えば、 EDTAは一般にクロストリジウム毒素活性の判定のためにはバッファーから排除することを理解している。
【0064】
クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、界面活性剤、例えば、 TWEEN-20を含んでいてもよく、これは、例えば、ウシ血清アルブミンの代わりに用いることが出来る。TWEEN-20は、例えば、0.001%〜10% (v/v) の範囲、または0.01%〜1.0% (v/v) の範囲で提供すればよい。非限定的な例として、TWEEN-20は0.1 % (v/v)の濃度で含めればよい。
【0065】
クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件はまた、所望の場合は、ウシ血清アルブミン (BSA) または、タンパク質安定化剤、可溶化剤または表面欠損の保護剤として作用するその他の試薬を含んでいてもよい。一例として、BSAを含める場合、典型的には 0.1 mg/ml〜10 mg/mlの範囲で提供する。一つの態様において、BSAは1 mg/mlの濃度で含める。例えば、Schmidt and Bostian、前掲、1997を参照されたい。別の態様において、BSA は0.1% (w/v) の濃度で含める。
【0066】
クロストリジウム毒素基質の量は本発明の方法において変動しうる。クロストリジウム毒素基質は、例えば、1 μM〜 500 μM、1 μM〜 50 μM、1 μM〜 30 μM、5 μM〜 20 μM、50 μM〜 3.0 mM、0.5 mM〜 3.0 mM、0.5 mM〜 2.0 mM、または0.5 mM〜 1.0 mMの濃度で供給するとよい。当業者であれば、所望の場合は、クロストリジウム毒素基質の濃度またはサンプルの量は、アッセイが線形であるように制限しうることを理解している。一つの態様において、本発明の方法はクロストリジウム毒素基質濃度が100 μM未満であることに依存する。さらなる態様において、本発明の方法は、クロストリジウム毒素基質濃度が50 μM未満または25 μM未満であることに依存する。さらなる態様において、本発明の方法は、クロストリジウム毒素基質濃度がl0 μM〜 20 μMであることに依存する。所望の場合は、線形アッセイはクロストリジウム毒素基質を対応するフルオロフォアを含まない「非標識」 基質と混合することによって実施することも出来る。適当な希釈度は、例えば、対応する非標識基質中にクロストリジウム毒素基質の段階希釈を調製することによって決定することが出来る。
【0067】
本発明の方法においてアッセイされる精製または部分的に精製されたクロストリジウム毒素の濃度は、一般に約 0.0001 ng/ml 〜 500 μg/ml 毒素の範囲、例えば、約 0.0001 ng/ml 〜 50 μg/ml 毒素、0.001 ng/ml 〜 500 μg/ml 毒素、0.001 ng/ml 〜 50 μg/ml 毒素、0.0001 〜 5000 ng/ml 毒素、例えば、約 0.001 ng/ml 〜 5000 ng/ml、0.01 ng/ml 〜 5000 ng/ml、0.1 ng/ml 〜 5000 ng/ml、1 ng/ml 〜 5000 ng/ml、10 ng/ml 〜 5000 ng/ml、50 ng/ml 〜 5000 ng/ml、50 ng/ml 〜 500 ng/mlまたは100 ng/ml 〜 5000 ng/ml 毒素であり、これは、例えば、精製組換え二本鎖毒素であってもよいし、ヒト血清アルブミンおよび賦形剤を含む製剤されたクロストリジウム毒素製品であってもよい。一般に、本発明の方法においてアッセイされる精製毒素の量は、0.1 pg〜 100 μg、例えば、0.1 pg〜 50 μgまたは0.1 pg〜 10 μgの範囲である。
【0068】
本発明の方法においてアッセイされる精製または部分的に精製されたクロストリジウム毒素濃度は、例えば、約 0.1 pM〜 100 μM、0.1 pM〜 10 μM、0.1 pM〜 1 μM、0.1 pM〜 500 nM、0.1 pM〜 100 nM、例えば、1 pM〜 2000 pM、1 pM〜 200 pM、1 pM〜 50 pM、1 nM 〜1 μM、1 nM 〜500 nM、1 nM 〜 200 nM、1 nM 〜 100 nM または3 nM 〜100 nM 毒素の範囲であってよく、これは、例えば、精製されたネイティブまたは組換え軽鎖または二本鎖毒素またはヒト血清アルブミンおよび賦形剤を含む製剤されたクロストリジウム毒素製品であり得る。特定の態様において、精製または部分的に精製された組換え BoNT/AまたはBoNT/E 軽鎖または二本鎖または製剤化毒素製品の濃度は1 pM〜 2000 pM、10 pM〜 2000 pM、20 pM〜 2000 pM、40 pM〜 2000 pM、または1 pM〜 200 pMの範囲である。さらなる態様において、精製または部分的に精製された組換え BoNT/C 軽鎖または二本鎖または製剤化毒素製品の濃度は1〜 200 nM、4〜100 nM、10〜100 nMまたは4〜60 nMの範囲である。当業者であれば、精製または部分的に精製されたクロストリジウム毒素の濃度は、アッセイされる毒素の血清型、ならびに毒素の純度または組換え配列、阻害成分の存在、およびアッセイ条件に依存することを理解している。精製された、部分的に精製されたまたは粗サンプルは、標準曲線に対してクロストリジウム毒素プロテアーゼ活性をアッセイするのに便利な範囲内に希釈すればよいということがさらに理解される。同様に、サンプルは、所望の場合は、アッセイが線形となるように希釈すればよいといういことが理解される。
【0069】
クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件はまた、一般に、例えば、約 20℃〜約 45℃の範囲、例えば、25℃〜 40℃の範囲、または35℃〜 39℃の範囲の温度を含む。アッセイ体積は通常、約 5 〜約 200 μlの範囲、例えば、約 10 μl〜100 μlの範囲または約 0.5 μl〜100 μlの範囲であるが、ナノリットル反応体積も本発明の方法に使用できる。アッセイ体積はまた、例えば、100 μl〜2.0 mlの範囲または0.5 ml 〜 1.0 mlの範囲でありうる。
【0070】
当業者であれば、蛍光偏光反応は終了させてもさせなくてもよく、アッセイ時間は当業者によって適当に変動されうるということを理解している。アッセイ時間は一般にクロストリジウム毒素の濃度、純度および活性に部分的には依存し、一般に、これらに限定されないが、約 15 分間 〜約 5 時間の範囲で変動する。非限定的な例として、例示的なアッセイ時間は、例えば、37℃で30 分間、45 分間、60 分間、75 分間または90 分間のインキュベーションを含む。特定の態様において、クロストリジウム毒素基質の少なくとも 10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95% または100%が切断される。さらなる態様において、プロテアーゼ反応は、5%、10%、15%、20%、25% または50%を超えるクロストリジウム毒素基質が切断される前に停止される。プロテアーゼ反応は一般に、フルオロフォアおよびその他の基質の成分に依存する適当な試薬によって終止させることが出来るといういことが理解される。非限定的な例として、ドナーフルオロフォアとしてGFPを含む基質に基づくプロテアーゼ反応は、例えば、終濃度1〜2 Mまでの塩化グアニジウムの添加によって終止させることが出来る。プロテアーゼ反応は、H2SO4の添加;約 0.5〜1.0 ホウ酸ナトリウム、pH 9.0〜9.5の添加;または亜鉛キレート剤の添加によっても終止させることが出来る。当業者であれば、プロテアーゼ反応は、所望の場合は、フルオロフォアまたはドナーフルオロフォアを直線偏光で励起する前に終止させることが出来るということを理解している。
【0071】
非限定的な例として、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性、例えば、 BoNT/A プロテアーゼ活性に好適な条件は、37℃、90 分間の50 mM HEPES (pH 7.2)、10 μM ZnCl2、10 mM DTT、および0.1% (v/v) TWEEN-20を含むバッファー中での10-16 μM 基質とのインキュベーションであり得る。所望の場合は、BoNT/A、特に二本鎖 BoNT/Aを含むサンプルを、ジチオトレイトールとともに例えば基質の添加の前に20または30 分間プレインキュベートしてもよい。さらなる非限定的な例として、BoNT/A プロテアーゼ活性に好適な条件は、還元剤、例えば、 5 mM ジチオトレイトール; および亜鉛源、例えば、 25 μM 塩化亜鉛 (およそ 7 nM; Schmidt and Bostian、前掲、1997)を含むバッファー、例えば、 30 mM HEPES (pH 7.3)中での37℃のインキュベーションであり得る。 0.1 mg/ml 〜 10 mg/mlの範囲のBSA、例えば、1 mg/ml BSAを、サンプルをクロストリジウム毒素基質で処理する場合に含めてもよい (Schmidt and Bostian、前掲、1997)。別の非限定的な例として、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性、例えば BoNT/B 活性に好適な条件は、10 μM 塩化亜鉛、1% 胎児ウシ血清および10 mM ジチオトレイトールを含む50 mM HEPES、pH 7.4中でのインキュベーションであり得、インキュベーションは、37℃で90 分間であり得る (Shone and Roberts、Eur. J. Biochem. 225:263 270 (1994); Hallis et al.、前掲、1996); あるいは、例えば、10 mM ジチオトレイトールを含む40 mM リン酸ナトリウム、pH 7.4中でのインキュベーションであり得、所望により 0.2% (v/v) Triton X-100を含んでいてもよく、インキュベーションは37℃で2 時間であり得る(Shone et al.、前掲、1993)。破傷風毒素プロテアーゼ活性またはその他のクロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、例えば、20 mM HEPES、pH 7.2、および100 mM NaCl中での2 時間、37℃での25 μM ペプチド基質とのインキュベーションであり得る (Cornille et al.、前掲、1994)。
【0072】
一つの態様において、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件は、好適なイオン強度のバッファー中にカチオン性ポリアミノ酸、例えば、ポリアルギニンを含む。切断産物と比較してクロストリジウム毒素基質に電荷の差がある場合、蛍光偏光はポリアルギニンまたはその他のカチオン性ポリアミノ酸の存在下で観察することが出来る (Simeonov et al.、Analytical Biochemistry 304:193-199 (2002))。非原的的な例として、蛍光標識された切断産物の正味のイオン電荷がクロストリジウム毒素基質の毒素サンプルによる処理の後に負になる場合、ポリアルギニンは選択的に蛍光標識された切断産物に結合し、それにより偏光の測定可能な上昇が生じる。
【0073】
様々な対照基質のいずれも本発明の方法において有用であるといういことが理解される。対照基質は、例えば、以下であり得る:活性の毒素含有サンプルで処理されていないクロストリジウム毒素基質;サンプルの添加の前に測定した偏光値;あるいは毒素切断部位または機能的な認識配列を含まない、類似しているが異なる基質。
【0074】
本発明の方法は自動化することができ、これらに限定されないが、96-ウェル、384-ウェルまたは1536-ウェルプレートを用いるハイスループットまたは超ハイスループット形式にて形成することができるといういことが理解される。適当な偏光子を備えた様々な分光蛍光光度計のいずれも経時的に蛍光偏光における変化をアッセイするのに用いることが出来、例えば、これらに限定されないが、Cary Eclipse 分光蛍光光度計; Beckmann Affinity商標 Multi-Mode プレートリーダー; TECAN GeniusPro; および例えば、Perkin Elmerから入手できるその他のシステムが挙げられる。
【0075】
本発明においてさらに以下によりクロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法を提供する:(a)サンプルで、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で、以下を含むクロストリジウム毒素基質を処理すること:(i)ドナーフルオロフォア; (ii)ドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有するアクセプター;および(iii)切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列、ここで切断部位は、ドナーフルオロフォアとアクセプターとの間に介在し、ここで、適当な条件下で、共鳴エネルギー移動がドナーフルオロフォアとアクセプターとの間で示される; (b)ドナーフルオロフォアを直線偏光で励起すること;および(c) 対照基質と比較しての処理された基質の蛍光偏光を判定すること、ここで、対照基質の蛍光偏光と比較しての処理された基質の蛍光偏光の変化はクロストリジウム毒素の存在または活性を示す。一つの態様において、工程 (c)は処理された基質の蛍光偏光の変化を経時的に測定することを含む。
【0076】
FRET-支援蛍光偏光に基づく本発明の方法において、蛍光偏光における変化は蛍光偏光の上昇または低下であり得る。一つの態様において、ドナーフルオロフォアは少なくとも 0.5 ナノ秒の蛍光寿命を有する。別の態様において、ドナーフルオロフォアは、少なくとも 5 ナノ秒の蛍光寿命を有する。本発明に有用なドナーフルオロフォアは、これらに限定されないが、以下であり得る:緑色蛍光タンパク質 (GFP); 青色蛍光タンパク質 (BFP); シアン蛍光タンパク質 (CFP); 黄色蛍光タンパク質 (YFP); 赤色蛍光タンパク質 (RFP); Alexa Fluor(登録商標) 色素; フルオレセイン; フルオレセイン誘導体; ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF); フルオレセインの二ヒ素(biarsenic)誘導体; フルオレセインヒ素ヘアピン結合色素 (FlAsH商標); 赤色二ヒ素色素 (ReAsH商標); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド商標; テトラメチルカルボキシ-ローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY(登録商標)-TR; BODIPY(登録商標)-TMR; BODIPY(登録商標)-FL; Cy3、Cy商標3Bまたはダンシル。特定の態様において、ドナーフルオロフォアは、緑色蛍光タンパク質; 青色蛍光タンパク質; シアン蛍光タンパク質; 黄色蛍光タンパク質または赤色蛍光タンパク質である。一つの態様において、ドナーフルオロフォアは緑色蛍光タンパク質 (GFP)である。別の態様において、アクセプターフルオロフォアは、Alexa Fluor(登録商標) 546である。
【0077】
様々な認識配列のいずれも本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含めることが出来る。一つの態様において、認識配列は、BoNT/A 認識配列、例えば、これらに限定されないが、SNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含むBoNT/A 認識配列であり、ここで6つの連続残基はGln-Arg、またはそのペプチド模倣体を含む。かかるBoNT/A 認識配列は、例えば、配列番号2の残基134〜206を含みうる。本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列は、これらに限定されないが、BoNT/B 認識配列であってもよい。かかるBoNT/B 認識配列は、例えば、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含み得、ここで6つの連続残基はGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む。さらなる態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はBoNT/C1 認識配列である。かかるBoNT/C1 認識配列は、これらに限定されないが、シンタキシンの少なくとも6つの連続残基を含み得、ここで6つの連続残基はLys-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む。本発明に有用なBoNT/C1 認識配列はまた、SNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み得、ここで6つの連続残基はArg-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む。
【0078】
さらなる態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はBoNT/D 認識配列である。かかるBoNT/D 認識配列は、例えば、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含み得、ここで6つの連続残基はLys-Leu、またはそのペプチド模倣体を含む。本発明に有用な認識配列はまた、例えば、BoNT/E 認識配列であり得る。かかるBoNT/E 認識配列は、これらに限定されないが、SNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み得、ここで6つの連続残基は Arg-Ile、またはそのペプチド模倣体を含む。さらに別の態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列は、BoNT/F 認識配列である。本発明に有用なBoNT/F 認識配列は、これらに限定されないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を有するものを含み、ここで6つの連続残基はGln-Lys、またはそのペプチド模倣体を含む。本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列はまた、BoNT/G 認識配列であり得る。かかるBoNT/G 認識配列は、これらに限定されないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を有するものを含み、ここで6つの連続残基はAla-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む。さらなる態様において、本発明の方法に有用なクロストリジウム毒素基質に含まれる認識配列は、TeNT 認識配列である。かかるTeNT 認識配列は、これらに限定されないが、VAMPの少なくとも6つの連続残基を含む配列であり得、ここで6つの連続残基はGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む。
【0079】
様々なクロストリジウム毒素基質のいずれも本発明の方法において有用であり得、例えば、少なくとも 100 残基または少なくとも 200 残基を有するペプチドおよびペプチド模倣体が挙げられる。さらに、様々なサンプルのいずれも本発明の方法によってアッセイすることが出来、これらに限定されないが、粗細胞可溶化液、単離クロストリジウム毒素軽鎖を含む単離クロストリジウム毒素;および製剤されたクロストリジウム毒素製品、例えば、 製剤された BoNT/A、BoNT/B またはBoNT/E 毒素製品が挙げられる。
【0080】
本発明の方法が蛍光共鳴エネルギー移動を伴う場合、該方法は、部分的には、ドナーフルオロフォアを含むクロストリジウム毒素基質に依存する。「フルオロフォア」のように、「ドナーフルオロフォア」は、一定の波長の光で照射された場合、異なる波長の、蛍光とも称されるする光を放射する分子である。ドナーフルオロフォアは、好適なアクセプターと対になった場合に、アクセプターにエネルギーを移動するフルオロフォアである。
【0081】
本明細書において用いる場合、「アクセプター」という用語は、ドナーフルオロフォアの励起の際に、ドナーフルオロフォアからのエネルギーを吸収できる分子を意味する。クロストリジウム毒素基質に有用なアクセプターは、基質に含まれるドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有する。本発明に有用なアクセプターは一般にドナーフルオロフォアの励起に好適な波長において比較的低い吸収を有する。
【0082】
上記のように、アクセプターは、ドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有する。「オーバーラップする」という用語は、アクセプターの吸光度スペクトルとドナーフルオロフォアの発光スペクトルに関して本明細書において用いる場合、部分的または完全に共有される吸光度スペクトルと発光スペクトルを意味する。したがって、かかるオーバーラップするスペクトルにおいて、ドナーフルオロフォアの発光スペクトルの範囲の高い側の端は、アクセプターの吸光度スペクトルの範囲の低い側の端よりも高い。
【0083】
上記のように、様々なドナーフルオロフォアのいずれも本発明に有用であり得、これらに限定されないが、以下が挙げられる:緑色蛍光タンパク質; 青色蛍光タンパク質; シアン蛍光タンパク質; 黄色蛍光タンパク質; 赤色蛍光タンパク質; Alexa Fluor(登録商標) 色素; フルオレセイン;フルオレセイン誘導体; ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF);フルオレセインの二ヒ素誘導体; フルオレセインヒ素ヘアピン結合色素 (FlAsH商標); 赤色二ヒ素色素 (ReAsH商標); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド商標; テトラメチルカルボキシ-ローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY(登録商標)-TR; BODIPY(登録商標)-TMR; BODIPY(登録商標)-FL; Cy3、Cy商標3Bまたはダンシル。様々なアクセプターもまた、本発明に有用であり得、これらに限定されないが、以下が挙げられる:Alexa Fluor(登録商標) 色素、例えば、 Alexa Fluor(登録商標) 546、Alexa Fluor(登録商標) 568、Alexa Fluor(登録商標) 610、Alexa Fluor(登録商標) 660 および Alexa Fluor(登録商標) 750; QSY(登録商標) 7; テトラメチルローダミン; オクタデシルローダミン; フラボドキシン、シトクローム c ペルオキシダーゼ;およびルブレドキシン。
【0084】
FRETを示す本発明の方法において有用な例示的なドナーフルオロフォア-アクセプター対としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:GFPとAlexa Fluor(登録商標) 546; フルオレセインとQSY(登録商標) 7; フルオレセインとテトラメチルローダミン;およびダンシルとオクタデシルローダミン。本発明の方法において有用なさらなる例示的なドナーフルオロフォア-アクセプター対としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:Alexa Fluor(登録商標) 633とAlexa Fluor(登録商標) 660; Alexa Fluor(登録商標) 594とAlexa Fluor(登録商標) 610; Alexa Fluor(登録商標) 700とAlexa Fluor(登録商標) 750; およびAlexa Fluor(登録商標) 555 と Alexa Fluor(登録商標) 568。本発明に有用なさらなるアクセプターとしてはアクセプターが、可視発色団を有するタンパク質であるもの、例えば、これらに限定されないが、フラボドキシン、シトクローム c ペルオキシダーゼ またはルブレドキシンが挙げられる;かかるタンパク質は、例えば、6〜34 kDaの範囲の分子量および400-500 nmの領域で強い吸収を示す発色団を有し得る。かかるタンパク質に基づく例示的なドナーフルオロフォア-アクセプター対としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:5 -(((2-ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン-1-スルホン酸 (1,5 IAEDANS)とフラボドキシン; 4-アセトアミド-4’ マレイミジルスチルベン 2,2’ ジスルホン酸とシトクローム c ペルオキシダーゼ;およびAlexa Fluor(登録商標) 488 とルブレドキシン。これらおよびその他の蛍光偏光に好適なドナーフルオロフォアは、ドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有する様々なアクセプターのいずれと対にしてもよい。
【0085】
当業者であれば、FRET-支援蛍光偏光に基づく本発明の方法は、ドナーフルオロフォアとアクセプターに加えて嵩高い基を含む基質を用いてもよいということを理解している。当業者であれば、所望により含めてもよい嵩高い基は、選択したドナーフルオロフォアおよびアクセプターの分子量および体積特徴に依存するということを理解している。様々な嵩高い基が本発明に有用であり得、本明細書において上記したものが挙げられる。
【0086】
本発明に有用な基質は、組換え方法により、または化学合成方法を使用して、あるいはそれらの組合せにより調製することが出来る。本明細書において実施例Iに記載するように、BoNT/A クロストリジウム毒素認識配列に融合した嵩高い基およびカルボキシ末端システインを含む融合タンパク質を組換え方法により調製した。カルボキシ末端システインは、完全なクロストリジウム毒素基質の産生のためにフルオロフォアを結合させるために用いた。融合タンパク質であるクロストリジウム毒素基質の調製のための組換え方法は当該技術分野において周知であり、例えば、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology John Wiley & Sons、Inc.、New York 2000に記載されている。
【0087】
タンパク質、ペプチドまたはペプチド模倣体を、フルオロフォアおよび嵩高い基、またはドナーフルオロフォアおよびアクセプターを含むように改変する化学方法は当該技術分野において周知である(Fairclough and Cantor、Methods Enzymol. 48:347 379 (1978); Glaser et al.、Chemical Modification of Proteins Elsevier Biochemical Press、Amsterdam (1975); Haugland、Excited States of Biopolymers (Steiner.Ed.) pp. 29 58、Plenum Press、New York (1983); Means and Feeney、Bioconjugate Chem. 1:2 12 (1990); Matthews et al.、Methods Enzymol. 208:468 496 (1991); Lundblad、Chemical Reagents for Protein Modification 2nd Ed.、CRC Press、Boca Ratan、Florida (1991); Haugland、前掲、1996)。フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターを、例えば、クロストリジウム毒素認識配列を含むペプチドまたはペプチド模倣体に結合させるのに、様々な基を利用することが出来る。チオール基を、例えば、フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターをペプチドまたはペプチド模倣体の所望の部分に結合させて本発明に有用なクロストリジウム毒素基質を産生するのに用いることが出来る (実施例I参照)。ハロアセチルおよびマレイミド標識試薬も、フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターを本発明に有用なクロストリジウム毒素基質の調製において結合させるのに利用することが出来る。例えば、Wu and Brand、前掲、1994を参照されたい。
【0088】
クロスリンカー部分も、クロストリジウム毒素基質の調製において有用であり得る。クロスリンカーは当該技術分野において周知であり、ホモおよびヘテロ-二機能性クロスリンカー、例えば、 BMHおよびSPDPが挙げられる。フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターがタンパク質である場合、タンパク質のアミノまたはカルボキシ末端に特異的に分子を結合させる周知の化学方法を利用できる。例えば、”Chemical Approaches to Protein Engineering” in Protein Engineering: A Practical Approach Rees et al. (Eds) Oxford University Press、1992を参照されたい。
【0089】
クロストリジウム毒素基質がフルオロフォアおよび嵩高い基を含む場合、クロストリジウム毒素切断部位はフルオロフォアと嵩高い基との間に位置させる。一つの態様において、フルオロフォアは切断部位のカルボキシ末端に位置し、嵩高い基は切断部位のアミノ末端に位置する。別の態様において、フルオロフォアは切断部位のアミノ末端に位置し、嵩高い基は切断部位のカルボキシ末端に位置する。
【0090】
クロストリジウム毒素基質がドナーフルオロフォアおよびアクセプターを含む場合、クロストリジウム毒素切断部位はドナーフルオロフォアとアクセプターとの間に位置させる。一つの態様において、ドナーフルオロフォアは切断部位のアミノ末端に位置し、アクセプターは切断部位のカルボキシ末端に位置する。 別の態様において、ドナーフルオロフォアは切断部位のカルボキシ末端に位置し、アクセプターは切断部位のアミノ末端に位置する。
【0091】
当業者であれば、本発明に有用なクロストリジウム毒素基質においてフルオロフォアおよび嵩高い基、またはドナーフルオロフォアおよびアクセプターを選択し、位置づけするためにいくつかの考慮因子があるということを理解している。フルオロフォアおよび嵩高い基、またはドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、一般に、クロストリジウム毒素への基質結合または毒素によるタンパク質分解に対する干渉を最小にするよう位置づけられる。したがって、フルオロフォアおよび嵩高い基、またはドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、例えば、結合に重要な結合および非結合相互作用の破壊を最小にし、立体障害を最小にするように、選択し、位置づければよい。さらに、以下にさらに詳細に説明するように、アクセプターとドナーフルオロフォアとの間の空間距離は一般に、ドナーフルオロフォアからアクセプターへの効率的なエネルギー移動を達成するように制限される。
【0092】
上記のように、ドナーフルオロフォアからアクセプターへのエネルギー移動効率は、部分的には、ドナーフルオロフォアおよびアクセプター分子の空間的分離に依存する。ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の距離が増加すると、アクセプターへのエネルギー移動が少なくなり、それゆえドナー蛍光シグナルが低下する。ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の総エネルギー移動は多くの因子に依存し、例えば、基質中でのドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の分離距離、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間のスペクトルオーバーラップ、および基質濃度が挙げられる。当業者であれば基質濃度が上昇すれば、ドナーの分子間クエンチングがタンパク質切断の後であっても、因子となりうるということを理解している。この現象は「内側フィルター効果(inner filter effect)」と称される。当業者であればさらに、基質濃度を上記のように制御できることを理解している。
【0093】
50% エネルギー移動のためのドナーフルオロフォアとアクセプターとの間の分離であるフェルスター距離は、良好な感度を提供するドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間の空間的分離を表す。ペプチド基質については、隣接残基はもっとも伸長した立体構造においておよそ 3.6オングストロームの距離離れている。例えば、フルオレセイン/テトラメチルローダミン対の計算フェルスター距離は55オングストロームであり、これはもっとも伸長した立体構造においてフルオレセインとテトラメチルローダミンとの間の空間的分離が 約 15 残基であることを表す。溶液中のペプチドおよびペプチド模倣体は完全に伸長した立体構造をとることは珍しいので、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、残基当たり3.6 オングストロームを利用して行われる計算に基づいて予測されるより広い間の距離をとっていてもよく、フェルスター距離内に維持される。これは、例えば、約 50 アミノ酸離れたドナーアクセプター対の間でFRET が起こることにより示される(Graham et al.、Analyt. Biochem. 296: 208 217 (2001))。
【0094】
フェルスター理論はドナーフルオロフォアとアクセプターとの間の非常に弱い相互作用に基づく; 分光的特性、例えば、1つのフルオロフォアの吸収は別のフルオロフォアの存在により変化してはならず、理論が有効である最短の距離範囲を規定する。多くのドナーフルオロフォア-アクセプター対について、ドナーフルオロフォアとアクセプターとが約 10オングストローム から100オングストローム離れている場合にフェルスター 理論は有効であるといういことが理解される。しかし、特定のドナーフルオロフォア-アクセプター対については、フェルスター 理論はピコ秒未満の技術によって判定して10オングストロームを下回る場合に有効である(Kaschke and Ernsting、Ultrafast Phenomenon in Spectroscopy (Klose and Wilhelmi (Eds.)) Springer Verlag、Berlin 1990)。
【0095】
特定の態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアがアクセプターから多くとも 100オングストロームの距離空間的に離れているクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。別の態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアがアクセプターから多くとも 90オングストローム、80オングストローム、70オングストローム、60オングストローム、50オングストローム、40オングストローム、30オングストロームまたは20オングストロームの距離空間的に離れているクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアがアクセプターから10オングストローム〜 100オングストローム、10オングストローム〜 80オングストローム、10オングストローム〜 60オングストローム、10オングストローム〜 40オングストローム、10オングストローム〜 20オングストローム、20オングストローム〜 100オングストローム、20オングストローム〜 80オングストローム、20オングストローム〜 60オングストローム、20オングストローム〜 40オングストローム、40オングストローム〜 100オングストローム、40オングストローム〜 80オングストロームまたは40オングストローム〜 60オングストロームの距離空間的に離れているクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。 さらなる態様において、本発明は、ドナーフルオロフォアとアクセプターが、一次アミノ酸配列において多くとも6残基、多くとも8残基、多くとも10残基、多くとも12 残基、多くとも15残基、多くとも20残基、多くとも 25残基、多くとも30残基、多くとも35残基、多くとも40残基、多くとも45残基、多くとも50残基、多くとも60残基、多くとも70残基、多くとも80残基、多くとも90残基、多くとも 100 残基、多くとも 150 残基、多くとも 200 残基または天然のクロストリジウム毒素標的タンパク質の全長まで離れているクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。
【0096】
当業者であれば、本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、所望の場合は、FRETの効率を最適化するように設計することが出来るということを理解している。当業者であれば、ドナーフルオロフォアは、所望の場合は、高い量子収率を有するよう選択することが出来、そしてアクセプターは、所望の場合は、フェルスター 距離を最適化するために高い吸光係数を有するように選択することが出来るということを理解している。当業者であればさらに、アクセプターの直接の励起から生じる蛍光は、共鳴エネルギー移動に起因する蛍光と区別することが困難であり得るということを理解している。したがって、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターは、ドナーが、アクセプターの直接の励起を引き起こさない波長にて励起されうるように、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの励起 スペクトルのオーバーラップが比較的小さくなるように選択するとよいということが認識される。さらに本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、2つの発光が容易に識別できるように、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターの発光スペクトルのオーバーラップが比較的小さくなるように設計するとよいということが認識される。
【0097】
異なるクロストリジウム毒素に対する特異的かつ異なる切断部位が当該技術分野において周知である。BoNT/A はGln-Arg 結合を切断する; BoNT/B およびTeNTはGln-Phe 結合を切断する; BoNT/C1 はLys-AlaまたはArg-Ala 結合を切断する; BoNT/D はLys-Leu 結合を切断する; BoNT/E はArg-Ile 結合を切断する; BoNT/F はGln-Lys 結合を切断する; そしてBoNT/G はAla-Ala 結合を切断する (表A参照)。標準的命名法において、クロストリジウム毒素切断部位の周囲にある配列はP5-P4-P3-P2-P1-P1'-P2'-P3'-P4'-P5'と称され、P1-P1'は開裂性結合を表す。P1またはP1' 部位、あるいはその両方は、天然の残基の代わりに別のアミノ酸またはアミノ酸模倣体によって置換されうるといういことが理解される。一例として、P1 位置 (Gln)が、アラニン、2-アミノ酪酸またはアスパラギン残基に改変されたBoNT/A 基質が調製された; これら基質はP1-Arg 結合においてBoNT/Aにより加水分解された (Schmidt and Bostian、J. Protein Chem. 16:19 26 (1997))。開裂性結合、例えば、BoNT/A 開裂性結合のP1 位置に置換を導入することができるということが認識されるが、さらにP1' 残基の保存が有益であり得る (Vaidyanathan et al.、J. Neurochem. 72:327 337 (1999)) ということが認識される。したがって、特定の態様において、本発明は、P1' 残基がクロストリジウム毒素により切断される標的タンパク質の天然の残基と比較して改変または置換されていないクロストリジウム毒素認識配列を有するクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。別の態様において、本発明は、P1 残基がクロストリジウム毒素により切断される標的タンパク質の天然の残基と比較して改変または置換されている認識配列を有するクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する; かかるクロストリジウム毒素基質は、P1およびP1' 残基の間のペプチド結合切断に対する感受性を保持する。
【表1】

* 開裂性結合を太字で示す。
【0098】
SNAP-25、VAMPおよびシンタキシンは、α-ヘリックス立体構造をとると予測される領域内に位置する短いモチーフを共有する。このモチーフは、神経毒に感受性の動物において発現されるSNAP-25、VAMPおよびシンタキシンアイソフォームにおいて存在する。一方、これら神経毒に耐性のショウジョウバエおよび酵母ホモログおよびエキソサイトーシスに関与しないシンタキシンアイソフォームはこれらVAMPおよびシンタキシンタンパク質のα-ヘリックスモチーフ領域において配列の変異を含む。
【0099】
複数の繰り返しのα-ヘリックスモチーフがクロストリジウム毒素による切断に感受性のタンパク質において存在する:4つのコピーがSNAP-25に天然に存在する; 2つのコピーがVAMPにおいて天然に存在する;そして2つのコピーがシンタキシンにおいて天然に存在する。さらに、α-ヘリックスモチーフの特定の配列に対応するペプチドは神経毒活性をインビトロおよびインビボで阻害することが出来、かかるペプチドは異なる神経毒を交差阻害することが出来る。さらに、かかるペプチドに対する抗体は3つの標的タンパク質に対して交差反応することができ、このα-ヘリックスモチーフがタンパク質表面に露出され、3つの標的タンパク質のそれぞれにおいて類似の立体構造をとっていることが示される。かかる知見と一致して、SNAP-25-特異的、VAMP-特異的およびシンタキシン-特異的神経毒は、同じ結合部位を競合することにより互いに交差阻害するが、それらは標的を非特異的に切断しない。これらの結果は、クロストリジウム毒素認識配列は、所望の場合は、少なくとも1つのα-ヘリックスモチーフを含んでいてもよいことを示す。当該技術分野において知られているBoNT/Aに対する16 merおよび17 mer 基質によって示されるように、α-ヘリックスモチーフはクロストリジウム毒素による切断に必要ではないということが認識される。
【0100】
複数のα-ヘリックスモチーフが天然の SNAP-25、VAMPおよびシンタキシン標的タンパク質にみられるが、クロストリジウム毒素基質において有用なクロストリジウム毒素認識配列は単一のα-ヘリックスモチーフを有するものであってよい。特定の態様において、本発明の方法は2以上のα-ヘリックスモチーフを含むクロストリジウム毒素認識配列に依存する。BoNT/AまたはBoNT/E 認識配列は、例えば、単独でまたは1以上のさらなるα-ヘリックスモチーフと組み合わせてS4 α-ヘリックスモチーフを含んでいてもよい; BoNT/B、BoNT/GまたはTeNT 認識配列は、例えば、単独でまたは1以上のさらなるα-ヘリックスモチーフと組み合わせてV2 α-ヘリックスモチーフを含んでいてもよい; BoNT/C1 認識配列は、例えば、単独でまたは1以上のさらなるα-ヘリックスモチーフと組み合わせてS4 α-ヘリックスモチーフを含んでいてもよいし、単独でまたは1以上のさらなるα-ヘリックスモチーフと組み合わせてX2 α-ヘリックスモチーフを含んでいてもよい;そして、BoNT/D またはBoNT/F 認識配列は、例えば、単独でまたは1以上のさらなるα-ヘリックスモチーフと組み合わせてV1 α-ヘリックスモチーフを含んでいてもよい。
【0101】
本明細書において用いる場合、「ボツリヌス毒素血清型A 認識配列」という用語は「BoNT/A 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下でBoNT/Aにより開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。 BoNT/Aにより切断される開裂性結合は、例えば、Gln-Argであり得る。
【0102】
様々なBoNT/A 認識配列が当該技術分野において周知であり、本発明に有用である。BoNT/A 認識配列は、例えば、ヒト SNAP-25の残基 134 〜 206 または残基 137 〜 206 (Ekong et al.、前掲、1997; 米国特許第5,962,637号)を有していてもよい。 BoNT/A 認識配列はまた、これらに限定されないが、以下を含んでいてもよい:配列 Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met (配列番号30) またはそのペプチド模倣体、これはヒト SNAP-25の残基 190 〜 202に対応する; Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys (配列番号31) またはそのペプチド模倣体、これはヒト SNAP-25の残基 187 〜 201に対応する; Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met (配列番号32) またはそのペプチド模倣体、これはヒト SNAP-25の残基 187 〜 202に対応する; Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met-Leu (配列番号33) またはそのペプチド模倣体、これはヒト SNAP-25の残基 187 〜 203に対応する; Asp-Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met (配列番号34) またはそのペプチド模倣体、これはヒト SNAP-25の残基 186 〜 202に対応する; またはAsp-Ser-Asn-Lys-Thr-Arg-Ile-Asp-Glu-Ala-Asn-Gln-Arg-Ala-Thr-Lys-Met-Leu (配列番号35) またはそのペプチド模倣体、これはヒト SNAP-25の残基 186 〜 203に対応する。例えば、Schmidt and Bostian、J. Protein Chem. 14:703-708 (1995); Schmidt and Bostian、前掲、1997; Schmidt et al.、FEBS Letters 435:61 64 (1998); およびSchmidt and Bostian、米国特許第5,965,699号を参照されたい。所望の場合は、類似のBoNT/A 認識配列が別のBoNT/A-感受性 SNAP-25 アイソフォームまたはホモログの対応する(相同的) セグメントから調製でき、例えば、マウス、ラット、キンギョまたはゼブラフィッシュ SNAP-25から調製でき、あるいは、本明細書において記載されるペプチドまたは当該技術分野において公知の、例えば、米国特許第5,965,699号に記載のものであってもよい。
【0103】
本発明に有用なBoNT/A 認識配列は、ボツリヌス毒素血清型Aによる切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいはBoNT/A-感受性タンパク質のセグメントと実質的に類似のものであり得る。表 Bにおいて示すように、BoNT/Aによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、マウスおよびラットSNAP-25;ならびにキンギョ SNAP-25AおよびSNAP-25Bが挙げられる。したがって、本発明に有用な BoNT/A 認識配列は、例えば、ヒト SNAP-25、マウス SNAP-25、ラットSNAP-25、キンギョ SNAP-25Aまたは25B、またはBoNT/Aによる切断に感受性のその他の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。さらに、BoNT/Aにより切断されるネイティブな SNAP-25 アミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなり(表 B および図 3参照)、天然の BoNT/A-感受性 SNAP-25 配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/A 認識配列において許容されうることが示される。
【表2】

a= SNAP-25のインビトロ切断には、BoNT/Aまたは/Eと比較して1000倍高いBoNT/C 濃度が必要である。
b= p182r、またはk185ddの置換(四角)はBoNT/Eに対する感受性を誘導する。
c=おそらくd189 またはe189のv189による置換によるBoNT/Aに対する抵抗性、四角参照。
d=シビレエイはBoNT/Aに感受性であることを注意されたい。
e=推定切断部位の周囲のいくつかの非保存的突然変異の存在に注意されたい。
【0104】
クロストリジウム毒素基質、例えば、BoNT/A 認識配列を含む基質は、対応するクロストリジウム毒素に切断される天然の配列と比較して1以上の修飾を有しうる。一例として、ヒト SNAP-25の残基 187 〜 203に対応する17-merと比較して、BoNT/A 基質におけるAsp193の Asnによる置換の結果、タンパク質分解の相対速度は0.23となる; Glu194のGlnによる置換の結果、相対速度は2.08となる; Ala195の2-アミノ酪酸による置換の結果、相対速度 は0.38となる;そしてGln197のAsn、2-アミノ酪酸またはAlaによる置換の結果、相対速度 はそれぞれ0.66、0.25、または0.19となる(表 C参照)。さらに、Ala199 の 2-アミノ酪酸による置換の結果、相対速度は0.79となる; Thr200のSerまたは2-アミノ酪酸による置換の結果、相対速度はそれぞれ0.26または1.20となる; Lys201のAlaによる置換の結果、相対速度は0.12となる;そして、 Met202 の Alaまたはノルロイシンによる置換の結果、相対速度はそれぞれ0.38または1.20となる。Schmidt and Bostian、前掲、1997を参照されたい。これらの結果は、天然の毒素感受性配列と比較してクロストリジウム毒素基質において様々な残基を置換することが出来ることを示す。BoNT/Aの場合、これらの結果は、これらに限定されないが、Glu194、Ala195、Gln197、Ala199、Thr200 およびMet202、Leu203、Gly204、Ser205、およびGly206、ならびにGln-Arg 開裂性結合からより遠位の残基を含む残基は、本発明に有用なBoNT/A 基質において、フルオロフォア、嵩高い基、ドナーフルオロフォアまたはアクセプターに置換または結合させることができることを示す。 かかるBoNT/A 基質はクロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下でBoNT/Aにより開裂性結合において検出可能にタンパク分解される。したがって、BoNT/A 基質は、所望の場合は、天然の SNAP-25 配列と比較して1または数個のアミノ酸置換、付加または欠失を含みうる。
【表3】

a 非標準的アミノ酸略記:B、2-アミノ酪酸; X、2-アミノヘキサン酸 (ノルロイシン)
b ペプチド [1-17]に対する加水分解初速度。ペプチド濃度は 1.0 mMとした。
【0105】
本明細書において用いる場合、「ボツリヌス毒素 血清型 B 認識配列」という用語は「BoNT/B 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下でBoNT/Bにより開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。 BoNT/Bにより切断される開裂性結合は、例えば、Gln-Pheであり得る。
【0106】
様々な BoNT/B 認識配列が当該技術分野において周知であり常套方法によって規定できる。かかるBoNT/B 認識配列は、例えば、VAMP タンパク質、例えば、 ヒト VAMP-1またはヒト VAMP-2の親水性コアの一部または全部に対応する配列を含みうる。 BoNT/B 認識配列は、これらに限定されないが、ヒト VAMP-2(配列番号8)の残基 33 〜 94、残基 45 〜 94、残基 55 〜 94、残基 60 〜 94、残基 65 〜 94、残基 60 〜 88 または残基 65 〜 88、またはヒト VAMP-1(配列番号7)の残基 60 〜 94を含みうる。例えば、Shone et al.、Eur. J. Biochem. 217: 965 971 (1993)および米国特許第5,962,637号を参照されたい。所望の場合は、類似のBoNT/B 認識配列が別のBoNT/B-感受性 VAMP アイソフォームまたはホモログ、例えば、 ヒト VAMP-1またはラットまたはニワトリ VAMP-2の対応する(相同的) セグメントから調製できる。
【0107】
したがって、BoNT/B 認識配列は、ボツリヌス毒素血清型 Bによる切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいはBoNT/B-感受性タンパク質のかかるセグメントと実質的に類似であり得るということが理解される。表 Dに示すように、BoNT/Bによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、以下が挙げられる:ヒト、マウスおよびウシ VAMP-1およびVAMP-2; ラット VAMP-2; ラット セルブレビン(cellubrevin); ニワトリ VAMP-2; シビレエイ VAMP-1; ウニ VAMP; アメフラシ VAMP; イカ VAMP; 線虫 VAMP; ショウジョウバエ n-syb; およびヒル VAMP。したがって、BoNT/B 基質に含まれるBoNT/B 認識配列は、例えば、以下に対応しうる:ヒト VAMP-1 またはVAMP-2、マウス VAMP-1またはVAMP-2、ウシ VAMP-1またはVAMP-2、ラット VAMP-2、ラット セルブレビン(cellubrevin)、ニワトリ VAMP-2、シビレエイ VAMP-1、ウニ VAMP、アメフラシ VAMP、イカ VAMP、線虫 VAMP、ショウジョウバエ n-syb、ヒル VAMP、またはその他のBoNT/Bによる切断に感受性の天然のタンパク質のセグメント。さらに、表 Dに示すように、BoNT/Bにより切断されるネイティブなVAMP アミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなり(図 4も参照)、天然の VAMP 配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明のBoNT/B 基質において許容されうることが示される。
【表4−1】

【表4−2】

a=位置 93において妥当な配列(f>s)。
b=位置 68において妥当な配列(t>s)。
【0108】
本明細書において用いる場合、「ボツリヌス毒素血清型 C1 認識配列」という用語は「BoNT/C1 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下でBoNT/C1により開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。BoNT/C1により切断される開裂性結合は、例えば、Lys-Ala または Arg-Alaであり得る。
【0109】
BoNT/C1 認識配列は、ボツリヌス毒素血清型 C1による切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいはBoNT/C1-感受性タンパク質のセグメントと実質的に類似のものであり得るといういことが理解される。表 Eに示すように、BoNT/C1による切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、ラット、マウスおよびウシ シンタキシン 1Aおよび1B; ラット シンタキシン2および3; ウニシンタキシン; アメフラシ シンタキシン 1; イカ シンタキシン; ショウジョウバエ Dsynt1; およびヒルシンタキシン 1が挙げられる。したがって、BoNT/C1 基質において有用な BoNT/C1 認識配列は、例えば、ヒト、ラット、マウスまたはウシ シンタキシン 1A または 1B、ラット シンタキシン 2、ラット シンタキシン 3、ウニシンタキシン、アメフラシ シンタキシン 1、イカ シンタキシン、ショウジョウバエ Dsynt1、ヒル シンタキシン 1、またはその他のBoNT/C1による切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。さらに、BoNT/C1により切断されるネイティブなシンタキシンアミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなり(表 Eおよび図 5参照)、天然のBoNT/C1-感受性 シンタキシン配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/C1 基質において許容されうることが示される。
【表5】

【0110】
様々な天然のSNAP-25 タンパク質もまたBoNT/C1による切断に感受性であり、例えば、ヒト、マウスおよびラット SNAP-25; キンギョ SNAP-25A および25B; およびショウジョウバエおよびヒル SNAP-25が挙げられる。したがって、BoNT/C1 基質において有用なBoNT/C1 認識配列は、例えば、ヒト、マウスまたは ラット SNAP-25、キンギョ SNAP-25Aまたは25B、シビレエイ SNAP-25、ゼブラフィッシュ SNAP-25、ショウジョウバエ SNAP-25、ヒル SNAP-25、またはその他のBoNT/C1による切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。 上記のように天然のシンタキシン配列の変異体に関して、BoNT/C1により切断されるネイティブな SNAP-25アミノ酸配列の比較により、かなりの配列変動性が明らかとなり(図 3および上記表 B参照)、天然のBoNT/C1-感受性SNAP-25 配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/C1 基質において許容されうることが示される。
【0111】
「ボツリヌス毒素血清型 D 認識配列」という用語は「BoNT/D 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下でBoNT/Dにより開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。 BoNT/Dにより切断される開裂性結合は、例えば、Lys-Leuであり得る。
【0112】
様々な BoNT/D 認識配列が当該技術分野において周知であり、または常套方法により規定され得る。BoNT/D 認識配列としては、例えば、ラット VAMP-2の残基 27 〜 116; 残基 37 〜 116; 残基 1 〜 86; 残基 1 〜 76; または残基 1 〜 69 (配列番号90; Yamasaki et al.、J. Biol. Chem. 269:12764-12772 (1994)) が挙げられる。したがって、BoNT/D 認識配列は、例えば、ラット VAMP-2(配列番号90)の残基 27 〜 69 または残基 37 〜 69を含みうる。 所望の場合は、類似のBoNT/D 認識配列は、別のBoNT/D-感受性 VAMP アイソフォームまたはホモログ、例えば、 ヒト VAMP-1またはヒトVAMP-2の対応する(相同的) セグメントから調製することが出来る。
【0113】
BoNT/D 認識配列は、ボツリヌス毒素血清型 Dによる切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいはBoNT/D 感受性タンパク質のセグメントと実質的に類似でありうる。表 Dに示すように、BoNT/Dによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、マウスおよびウシ VAMP-1およびVAMP-2; ラット VAMP-1およびVAMP-2; ラット セルブレビン(cellubrevin); ニワトリ VAMP-1およびVAMP-2; シビレエイ VAMP-1; アメフラシ VAMP; イカ VAMP; ショウジョウバエ sybおよびn-syb; およびヒル VAMPが挙げられる。したがって、BoNT/D 認識配列は、例えば、ヒト VAMP-1またはVAMP-2、マウス VAMP-1またはVAMP-2、ウシ VAMP-1またはVAMP-2、ラット VAMP-1またはVAMP-2、ラット セルブレビン(cellubrevin)、ニワトリ VAMP-1またはVAMP-2、シビレエイ VAMP-1、アメフラシ VAMP、イカ VAMP、ショウジョウバエ sybまたはn-syb、ヒル VAMP、またはその他のBoNT/Dによる切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。さらに、上記表 Dに示すように、BoNT/Dにより切断されるネイティブなVAMPアミノ酸配列の比較により、かなりの配列変動性が明らかとなり(図 4も参照)、天然のBoNT/D -感受性VAMP 配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/D 基質において許容されうることが示される。
【0114】
本明細書において用いる場合、「ボツリヌス毒素血清型 E 認識配列」という用語は「BoNT/E 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下でBoNT/Eにより開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。 BoNT/Eにより切断される開裂性結合は、例えば、Arg-Ileであり得る。
【0115】
当業者であれば、BoNT/E 認識配列はボツリヌス毒素血清型 Eによる切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいはBoNT/E 感受性タンパク質のセグメントと実質的に類似であり得るということを理解している。 BoNT/Eによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、マウスおよびラット SNAP-25; マウス SNAP-23; ニワトリ SNAP-25; キンギョ SNAP-25A およびSNAP-25B; ゼブラフィッシュ SNAP-25; 線虫 SNAP-25; および ヒル SNAP-25 (表 B参照)が挙げられる。したがって、BoNT/E 認識配列は、例えば、ヒト SNAP-25、マウス SNAP-25、ラット SNAP-25、マウス SNAP-23、ニワトリ SNAP-25、キンギョ SNAP-25Aまたは25B、線虫 SNAP-25、ヒル SNAP-25、またはその他のBoNT/E による切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。さらに、上記表 Bおよび図 3に示すように、BoNT/Eにより切断されるネイティブなSNAP-23およびSNAP-25 アミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなり、天然のBoNT/E-感受性 SNAP-23またはSNAP-25 配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/E基質において許容されうることが示される。
【0116】
本明細書において用いる場合、「ボツリヌス毒素血清型 F 認識配列」という用語は「BoNT/F 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下でBoNT/Fにより開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。 BoNT/Fにより切断される開裂性結合は、例えば、Gln-Lysであり得る。
【0117】
様々な BoNT/F 認識配列が当該技術分野において周知であり、あるいは常套方法により規定できる。BoNT/F 認識配列は、例えば、ラット VAMP-2の残基 27 〜 116; 残基 37 〜 116; 残基 1 〜 86; 残基 1 〜 76; または残基 1 〜 69 (配列番号90; Yamasaki et al.、前掲、1994)を含みうる。BoNT/F 認識配列はまた、例えば、ラット VAMP-2(配列番号90)の残基 27 〜 69 または残基 37 〜 69も含みうる。類似のBoNT/F 認識配列が、所望の場合は、別のBoNT/F 感受性 VAMP アイソフォームまたはホモログ、例えば、 ヒト VAMP-1またはヒト VAMP-2の対応する(相同的) セグメントから調製できるといういことが理解される。
【0118】
BoNT/F 認識配列はボツリヌス毒素血清型 Fによる切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、または、BoNT/F-感受性タンパク質のセグメントと実質的に類似のものであり得る。BoNT/Fによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、マウスおよびウシ VAMP-1およびVAMP-2; ラット VAMP-1およびVAMP-2; ラット セルブレビン(cellubrevin); ニワトリ VAMP-1およびVAMP-2; シビレエイ VAMP-1; アメフラシ VAMP; ショウジョウバエ syb;およびヒル VAMP (表 D参照)が挙げられる。したがって、BoNT/F 認識配列は、例えば、ヒト VAMP-1またはVAMP-2、マウス VAMP-1またはVAMP-2、ウシ VAMP-1またはVAMP-2、ラット VAMP-1またはVAMP-2、ラット セルブレビン(cellubrevin)、ニワトリ VAMP-1またはVAMP-2、シビレエイ VAMP-1、アメフラシ VAMP、ショウジョウバエ syb、ヒル VAMP、またはその他のBoNT/Fによる切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。さらに、上記表 Dに示すように、BoNT/Fにより切断されるネイティブなVAMP アミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなり(図 4も参照)、天然のBoNT/F-感受性 VAMP配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/F基質において許容されうることが示される。
【0119】
本明細書において用いる場合、「ボツリヌス毒素血清型 G 認識配列」という用語は「 BoNT/G 認識配列」と同義であり、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下でBoNT/Gにより開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。 BoNT/Gにより切断される開裂性結合は、例えば、Ala-Alaであり得る。
【0120】
BoNT/G 認識配列は、ボツリヌス毒素血清型 Gによる切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいは、かかるBoNT/G-感受性セグメントと実質的に類似であり得る。上記表 Dにおいて示すように、BoNT/Gによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、マウスおよびウシ VAMP-1およびVAMP-2; ラット VAMP-1およびVAMP-2; ラット セルブレビン(cellubrevin); ニワトリ VAMP-1およびVAMP-2; およびシビレエイ VAMP-1が挙げられる。したがって、BoNT/G 認識配列は、例えば、 ヒト VAMP-1またはVAMP-2、マウス VAMP-1またはVAMP-2、ウシ VAMP-1またはVAMP-2、ラット VAMP-1またはVAMP-2、ラット セルブレビン(cellubrevin)、ニワトリ VAMP-1またはVAMP-2、シビレエイ VAMP-1、またはその他のBoNT/Gによる切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。 さらに、上記表 Dに示すように 、BoNT/Gにより切断されるネイティブなVAMP アミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなり(図 4も参照)、天然のBoNT/G-感受性 VAMP 配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なBoNT/G 基質において許容されうることが示される。
【0121】
本明細書において用いる場合、「破傷風毒素認識配列」という用語は、隣接または非隣接認識要素のいずれかまたは両方とともに、適当な条件下で破傷風毒素により開裂性結合において検出可能にタンパク質分解されるのに十分な開裂性結合を意味する。TeNTにより切断される開裂性結合は、例えば、Gln-Pheであり得る。
【0122】
様々な TeNT 認識配列が当該技術分野において周知であり、あるいは常套方法により規定でき、VAMP タンパク質、例えば、 ヒト VAMP-1またはヒト VAMP-2の親水性コアの一部または全部に対応する配列を含む。TeNT 認識配列は、例えば、以下を含みうる:ヒト VAMP-2の残基 25 〜 93 または残基 33 〜 94 (配列番号8; Cornille et al.、 Eur. J. Biochem. 222:173 181 (1994); Foran et al.、Biochem. 33: 15365 15374 (1994)); ラット VAMP-2の残基 51 〜 93 または残基 1 〜 86 (配列番号90; Yamasaki et al.、前掲、1994); またはヒト VAMP-1の残基 33 〜 94 (配列番号7)。TeNT 認識配列はまた、例えば、ヒト VAMP-2の残基 25 〜 86、残基 33 〜 86 または残基 51 〜 86 (配列番号8) またはラット VAMP-2 (配列番号90)も含み得る。類似のTeNT 認識配列が、所望の場合は、別のTeNT-感受性 VAMPアイソフォームまたは種ホモログ、例えば、ヒト VAMP-1またはウニまたはアメフラシ VAMPの対応する(相同的) セグメントから調製できるといういことが理解される。
【0123】
したがって、TeNT 認識配列は破傷風毒素による切断に感受性のタンパク質のセグメントに対応し得、あるいはTeNT-感受性タンパク質のセグメントと実質的に類似のものであり得る。上記表 Dに示すように、TeNTによる切断に感受性の様々な天然のタンパク質が当該技術分野において知られており、例えば、ヒト、マウスおよびウシ VAMP-1およびVAMP-2; ラット VAMP-2; ラット セルブレビン(cellubrevin); ニワトリ VAMP-2; シビレエイ VAMP-1; ウニ VAMP; アメフラシ VAMP; イカ VAMP; 線虫 VAMP; ショウジョウバエ n-syb;およびヒル VAMPが挙げられる。したがって、TeNT 認識配列は、例えば、ヒト VAMP-1またはVAMP-2、マウス VAMP-1またはVAMP-2、ウシ VAMP-1またはVAMP-2、ラット VAMP-2、ラット セルブレビン(cellubrevin)、ニワトリ VAMP-2、シビレエイ VAMP-1、ウニ VAMP、アメフラシ VAMP、イカ VAMP、線虫 VAMP、ショウジョウバエ n-syb、ヒル VAMP、またはその他のTeNTによる切断に感受性の天然のタンパク質のセグメントに対応しうる。さらに、TeNTにより切断されるネイティブなVAMP アミノ酸配列の比較により、かかる配列は完全に保存されているわけではないことが明らかとなる(表 Dおよび図 4)。この知見により、天然のTeNT-感受性 VAMP配列に対する様々なアミノ酸置換および修飾が、本発明に有用なTeNT 基質において許容されうることが示される。
【0124】
本明細書において用いる場合、「ペプチド模倣体」という用語は、それが構造的に基づくペプチド基質と同じクロストリジウム毒素によって切断されるペプチド様分子を広く意味するのに用いられる。かかるペプチド模倣体は、化学修飾されたペプチド、非天然アミノ酸を含むペプチド様分子、およびN-置換グリシンのオリゴマーアセンブリーに起因するペプチド-様分子であるペプトイドを含み、そのペプチド模倣体が由来するペプチド基質と同じクロストリジウム毒素によって切断される(例えば、Goodman and Ro、Peptidomimetics for Drug Design、"Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery" Vol. 1 (ed. M.E. Wolff; John Wiley & Sons 1995)、pages 803 861を参照)。
【0125】
様々なペプチド模倣体が当該技術分野において知られており、例えば、束縛されたアミノ酸、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド成分またはアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子が挙げられる。束縛された、非天然アミノ酸を含むペプチド模倣体としては、例えば、以下を含みうる:α-メチル化アミノ酸; α,α-ジアルキル-グリシンまたはα-アミノシクロアルカンカルボン酸; Nα-Cα 環化(cylized)アミノ酸; Nα-メチル化アミノ酸;β-またはγ-アミノシクロアルカンカルボン酸;α,β-不飽和アミノ酸;β,β-ジメチルまたはβ-メチルアミノ酸; β-置換-2,3-メタノアミノ酸; NCδまたはCα -Cδ 環化アミノ酸;または置換プロリンまたはその他のアミノ酸模倣体。さらに、ペプチド二次構造を模倣するペプチド模倣体には、例えば、以下が含まれうる: 非ペプチド性 β ターン模倣体; γ-ターン模倣体;β-シート構造の模倣体;またはヘリックス構造の模倣体、これらはいずれも当該技術分野において周知である。ペプチド模倣体は、例えば、以下のようなアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子であってもよい:例えば、 レトロ逆(retro-inverso)修飾; 還元型アミド結合; メチレンチオエーテルまたはメチレンスルホキシド結合; メチレンエーテル結合; エチレン結合; チオアミド結合; トランス-オレフィンまたはフルオロオレフィン結合; 1,5-ジ置換テトラゾール環; ケトメチレンまたはフルオロケトメチレン結合またはその他のアミドアイソスター。当業者であれば、これらおよびその他のペプチド模倣体が、本明細書において用いる「ペプチド模倣体」という用語の意味に含まれるということを理解している。
【0126】
本発明の方法のいずれにおいても、クロストリジウム毒素基質は、同じまたは異なるクロストリジウム毒素のための1以上のクロストリジウム毒素切断部位を含みうる。特定の態様において、本発明は、単一のクロストリジウム毒素切断部位を含むクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。別の態様において、本発明は、同じクロストリジウム毒素に対する複数の切断部位を含むクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。これら切断部位は、同じまたは異なるクロストリジウム毒素認識配列内に組み込むことが出来る。非限定的な例として、クロストリジウム毒素基質は、同じフルオロフォアおよび嵩高い基または同じドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間に介在する同じクロストリジウム毒素のための複数の切断部位を有しうる。本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、例えば、同じクロストリジウム毒素に対する2以上の、3以上の、5以上の、または10以上の切断部位を含みうる。本発明に有用なクロストリジウム毒素基質は、例えば、同じクロストリジウム毒素に対する2、3、4、5、6、7、8、9または10の切断部位を有しうる;複数の切断部位は、同じまたは異なるフルオロフォアおよび嵩高い基の間、あるいは同じまたは異なるドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間に介在しうる。
【0127】
本発明に有用なクロストリジウム毒素基質はまた、異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を含みうる。特定の態様において、本発明は、同じフルオロフォアおよび嵩高い基の間、または同じドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間にすべて介在する異なるクロストリジウム毒素に対する複数の切断部位を含むクロストリジウム毒素基質に依存する方法を提供する。クロストリジウム毒素基質は、例えば、同じフルオロフォアおよび嵩高い基の間にすべて介在する、2以上の、3以上の、または5以上の異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を含みうる。クロストリジウム毒素基質はまた、例えば、すべて同じドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間に介在する2以上の、3以上の、または5以上の異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を含む。クロストリジウム毒素基質はまた、例えば、少なくとも2つのフルオロフォア-嵩高い基対の間または少なくとも2つのドナーフルオロフォア-アクセプター対の間に介在する2以上の、3以上の、または5以上の異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を組み込んでいてもよい。特定の態様において、本発明は、2、3、4、5、6、7または8の異なるクロストリジウム毒素に対する切断部位を有するクロストリジウム毒素基質を提供し、ここで、切断部位は、同じまたは異なるフルオロフォアおよび嵩高い基の間、または同じまたは異なるドナーフルオロフォアおよびアクセプターの間に介在する。さらなる態様において、本発明 は、以下のクロストリジウム毒素のあらゆる組合せに対する2、3、4、5、6、7または8の切断部位のあらゆる組合せを有するクロストリジウム毒素基質を提供する: BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/GおよびTeNT。
【0128】
本発明の方法は複数の基質を用いて実施してもよい。ドナーフルオロフォア-アクセプター対を含むクロストリジウム毒素基質に依存する本発明の方法において、クロストリジウム毒素基質はサンプルで処理され、基質は第一のドナーフルオロフォア、第一のドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有する第一のアクセプター、および切断部位を含む第一のクロストリジウム毒素認識配列を含み、ここで切断部位はドナーフルオロフォアとアクセプターとの間に介在し、ここで、適当な条件下で、共鳴エネルギー移動が第一のドナーフルオロフォアと第一のアクセプターとの間で示される。所望の場合は、第二のクロストリジウム毒素基質を同じアッセイに含めてもよい;この第二の基質は、以下を含む:第二のドナーフルオロフォア、および第二のドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有する第二のアクセプター、および、第一のクロストリジウム毒素認識配列を切断する毒素とは異なるクロストリジウム毒素によって切断される第二のクロストリジウム毒素認識配列。第二の基質におけるドナーフルオロフォア アクセプター対は第一の基質におけるドナーフルオロフォア-アクセプター対と同じであっても異なっていてもよい。このようにして、一つのサンプルを、2以上のクロストリジウム毒素の存在について同時にアッセイすることができる。
【0129】
ドナーフルオロフォア-アクセプター対を含むクロストリジウム毒素基質に依存する本発明の方法において、クロストリジウム毒素のあらゆる組合せ、例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上のクロストリジウム毒素についてアッセイすることができるといういことが理解される。例えば、2、3、4、5、6、7または8のBoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/GおよびTeNTのあらゆる組合せについてアッセイすることができる。一例として、アッセイは7つの基質を用いて行うことが出来、そのそれぞれが、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F またはBoNT/G 認識配列および切断部位を挟むフルオレセインおよびテトラメチルローダミンを含む。これら基質はボツリヌス毒素活性に好適な条件でサンプルで処理され、その後、ドナーフルオレセインを吸収波長が約 488 nmの直線偏光で励起し、蛍光偏光を測定すればよい。蛍光偏光の変化は、少なくとも1つのクロストリジウム毒素の存在または活性を示す。かかるアッセイは、例えば、食品サンプルまたは組織サンプルを、ボツリヌスまたはその他のクロストリジウム毒素の存在についてアッセイするのに有用であり得、所望の場合は、個々のクロストリジウム毒素または特定のクロストリジウム毒素の組合せについてさらに1以上のアッセイを組み合わせることが出来る。
【0130】
別の態様において、一つのサンプルが2以上の異なるクロストリジウム毒素基質を用いて2以上の異なるクロストリジウム毒素についてアッセイされ、ここで各基質は異なるドナーフルオロフォア-アクセプター対を含む。複数の基質の使用は、アッセイのダイナミックレンジを広げるのに有用であり得、例えば、米国特許第6,180,340号に記載されている。複数のクロストリジウム毒素基質の使用の一例として、一つのサンプルを第一および第二のクロストリジウム毒素基質を用いてBoNT/AおよびBoNT/Bの存在または活性についてアッセイすることができる:第一のクロストリジウム毒素基質は、ドナーフルオロフォア Alexa Fluor(登録商標) 555 およびアクセプター Alexa Fluor(登録商標) 568 を含み、それらにBoNT/A 認識配列が介在し、第二のクロストリジウム毒素基質はドナーフルオロフォア Alexa Fluor(登録商標) 700 およびアクセプター Alexa Fluor(登録商標) 750を含み、それらにBoNT/B 認識配列が介在する。当業者であれば、 第一のドナーフルオロフォアは第二のドナーフルオロフォアの励起の前または後のいずれに励起してもよく、第一の基質の蛍光偏光における変化は、第二の基質のエネルギー移動の判定の前、同時またはその後に判定してもよいということを理解するであろう。
【0131】
さらなる態様において、本発明の方法は2以上の異なるクロストリジウム毒素基質を用いる2以上の異なる精製または単離クロストリジウム毒素のアッセイに有用であり、各基質は同じドナーフルオロフォア-アクセプター対を含む。終点形式において、異なる血清型の存在または活性が、連続的に血清型を添加し、応答が安定するように添加の間に待機することによって、アッセイされる。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は本発明を例示するものであって、限定する意図はない。
【0133】
実施例I: GFP-Snap25-His6-C- Alexa Fluor(登録商標) 594および GFP-Snap25-His6-C- Alexa Fluor(登録商標) 546 基質の調製
本実施例では、蛍光偏光を用いてクロストリジウム毒素の存在または活性についてアッセイするのに好適な基質の構築について記載する。
【0134】
A. GFP-SNAP25(134-206)-His6-Cの構築
基質を、緑色蛍光タンパク質 (GFP)、マウス SNAP-25 残基 134-206、ポリヒスチジンアフィニティータグ (6xHis)、およびカルボキシ末端システインを含み、複数の成分がペプチドリンカーによって分離している融合タンパク質として調製した。以下に詳細に説明するように、基質は、GFPと末端システインとがSNAP25(134-206)の逆の端に存在するように設計した。
【0135】
SNAP-25 配列はpT25FLから得、これは、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST) 遺伝子の3'末端とインフレームに挿入された全長マウス SNAP-25 遺伝子(GST-SNAP25(1-206))を含んでいるプラスミドであり、Professor Dolly (O'Sullivan et al.、J. Biol. Chem. 274:36897-36904 (1999))から譲り受けた。pT25FLからのSNAP-25 配列を第二の発現ベクターに導入し、これは、SNAP-25の残基 134 〜 206のアミノ末端に融合したビオチン化のためのBirAsp シグナル配列およびポリヒスチジンアフィニティータグを有するように設計されたものである(BirAsp-polyHis-SNAP25(134-206)、「BA-SNAP」と称する)。SNAP25(134-206)をコードするDNA 配列をPCR プライマー:
【化1】

(配列番号91; アンチセンス) および
【化2】

(配列番号92; センス)
を用いてpT25FL プラスミドの適当な領域のPCR増幅により作成し、Bgl II 制限部位を含むSNAP25(134-206) PCR産物(PCR産物 A)を得た。
【0136】
ビオチン化のための天然の基質であるBirAsp 配列およびポリヒスチジンアフィニティータグは、20 bp 相補的領域を含む合成オリゴヌクレオチド配列番号93 および94を用いてSNAP25(134-206) 配列の上流かつインフレーに融合するように操作した。これらオリゴヌクレオチド、
【化3】

(配列番号93; センス; Sac II 部位に下線)および
【化4】

(配列番号94; アンチセンス)をアニーリングさせ、一本鎖オーバーハングをPCR 増幅により埋めてPCR産物 Bを得た。
【0137】
PCR産物 Aと称するSNAP25(134-206)のコード配列を含む二本鎖PCR産物と、PCR産物 Bと称するBirAspおよびポリヒスチジンを含む二本鎖PCR産物の2つを変性させ、アニーリングさせた。2つの遺伝子断片における20 bp 相補的配列をPCR プライマー 配列番号92および配列番号94において斜体で示す。オーバーハングをPCRにより埋めた後、産物をプライマー配列番号93および配列番号91を用いて増幅した。BirAsp-polyHis-SNAP25(134-206) (「BA-SNAP」と称する)をコードするその結果得られたPCR産物を、SacIIおよびBglIIで消化し、単離した遺伝子インサートをSacIIおよびBamHI で消化したpQBI25fA2 ベクターとライゲーションし、プラスミド pNTP12を得た(BA-SNAPを含むpQBI25fA2)。
【0138】
大腸菌からの発現および精製のために、BA-SNAP 遺伝子をpTrc99A プラスミド (Amersham Pharmacia Biotech)に移した。BA-SNAP 遺伝子をpNTP12からNcoIおよびXhoIによる消化、次いでゲル精製によって単離した。別々に、pTrc99A プラスミドをNcoIおよびSalIで消化し、単離したベクターをBA-SNAP 遺伝子とライゲーションし、プラスミド pNTP14を得た(BA-SNAPを含むpTrc99A)。
【0139】
BA-SNAP 遺伝子をプラスミド pQE-50にクローニングするために、BA-SNAP 断片をpNTP14 からプライマー 配列番号91およびプライマー 配列番号95 ;
【化5】

(センス; Bgl II 部位に下線)を用いてPCR増幅した。BglIIおよびXhoIで消化した後、増幅PCR産物をBamH IおよびSal Iで消化しておいたベクター pQE-50 にライゲーションした。BA-SNAPを含むpQE50を表す、その結果得られた プラスミドをpNTP26と命名した。
【0140】
緑色蛍光タンパク質 (GFP) 融合タンパク質基質をコードするプラスミドをベクター pQBI T7-GFP (Quantum Biotechnologies; Carlsbad、CA) を以下に記載するように三段階で修飾することによって調製した。第一に、ベクター pQBI T7-GFPをPCR-修飾してGFP-コード配列の3'末端の終止コドンを除き、GFPをSNAP-25 断片から分離するペプチドリンカーの一部のコード配列を挿入した。第二に、SNAP25(134-206) をコードするDNA 断片をSNAP25(134-206) 遺伝子の5' に融合したペプチドリンカーの残りのコード配列と、遺伝子の3'に融合した6xHis アフィニティータグを含むように設計されたPCR プライマーを用いてpNTP26からPCR増幅した。 その結果得られたPCR産物を上記の修飾したpQBI ベクターにクローニングしてpQBI GFP-SNAP25(134-206)を得た。
【0141】
プラスミド pQBI GFP-SNAP25(134-206) を次いで部位特異的突然変異誘発により修飾し、 カルボキシ末端にシステインコドンをプライマー 配列番号96;
【化6】

(アンチセンスプライマー、付加したヌクレオチドを下線で示す)およびその逆の相補鎖 (センスプライマー)を用いて付加した。その結果得られたpQBI GFP-SNAP25 (Cys-Stop)と称するプラスミドを図 6Aに示し、 GFP-SNAP25(134-206)-6xHis-Cysの発現に用いた。GFP-SNAP25(134-206) -6XHis-システインコンストラクトの核酸および推定アミノ酸配列を図6Bに示す。
【0142】
B. GFP-SNAP25(134-206)-His6-Cの発現および特徴決定
pQBI GFP-SNAP25 (Cys-Stop) 発現ベクターを、大腸菌 BL21(DE3) 細胞(Novagen; Madison、WI;またはInvitrogen; Carlsbad、CA)またはT7 RNA ポリメラーゼ遺伝子を含む大腸菌 BL21-CodonPlus(登録商標)(DE3)-RIL 細胞(Stratagene)に形質転換した。形質転換細胞をLB-アンピシリンプレート上で一晩37℃で選抜した。シングルコロニーを用いて1-3 mL 出発培養液に接種し、次にこれを用いて 0.5〜1.0 L培養液に接種した。ラージカルチャーを37℃でA595が0.5-0.6に到達するまで振盪しながら培養し、その時点でインキュベーターから取り出し、少し冷やした。1 mM IPTGによるタンパク質発現の誘導の後、GFP-SNAP25(134-206)-His6-C 基質をpQBI GFP-SNAP25 (Cys-Stop) プラスミドから一晩撹拌させながら16℃で発現させ、GFP フルオロフォアの形成を促進した。発現培養液の250 mL アリコットからの細胞を遠心分離 (30 分間、6,000 x g、4℃)により回収し、-80℃まで必要時まで保存した。
【0143】
基質を4℃でIMAC 精製を伴う2段階方法により精製し、次いで脱塩工程に供してNaCl およびイミダゾールを除き、典型的には150 mg/Lを超える精製基質が以下のようにして得られた。250 mL 培養液からの細胞ペレットをそれぞれ 7-12 mL カラム結合バッファー (25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 1 mM β-メルカプトエタノール; 10 mM イミダゾール)に再懸濁し、超音波処理 (38% 振幅にて10-秒間のパルスによって1分40 秒間)により溶解し、遠心分離 (16000 rpm、4℃、1 時間)により清澄にした。アフィニティー樹脂 (3-5 mL Talon SuperFlow Co2+/細胞ペレット)をガラスまたは使い捨てカラム支持体 (Bio-Rad)中で4 カラム体積の滅菌 ddH2Oおよび4 カラム体積のカラム結合バッファーですすぐことにより平衡化した。清澄にした可溶化液を2通りの方法のいずれかでカラムにかけた : (1) 可溶化液を樹脂に添加し、1 時間穏やかに振動させながら水平インキュベーションによりバッチ結合させたか、または、(2) 可溶化液を垂直カラムにかけ重力流によりゆっくりとカラムに入れた。バッチ結合の後のみ、カラムを直立させ、溶液を流し出し、回収し、樹脂に再び通した。両方の場合において、可溶化液をアプライした後、カラムを4-5 カラム体積のカラム結合バッファーで洗浄した。場合によっては、カラムをさらに1-2 カラム体積のカラム洗浄バッファー(25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 1 mM β-メルカプトエタノール; 20 mM イミダゾール)で洗浄した。タンパク質を1.5〜2.0 カラム体積のカラム溶出バッファー (25 mM HEPES、pH 8.0; 500 mM NaCl; 1 mM β-メルカプトエタノール; 250 mM イミダゾール)で溶出させ、〜1.4 mLのフラクションに回収した。緑色のフラクションを合わせ、遠心濾過器で濃縮し(10,000または30,000 分子量カットオフ)、HiPrep 26/10 サイズ排除カラム (Pharmacia)を用いて冷却融合タンパク質脱塩バッファー (50 mM HEPES、pH 7.4、4℃)の均一濃度移動相、流速10 mL/分でのFPLC (BioRad Biologic DuoLogic、QuadTec UV-Vis detector) で脱塩した。脱塩タンパク質を1つのフラクションに回収し、濃度をBioRad タンパク質アッセイを用いて測定した。GFP-SNAP25(134-206)-His6-C 基質を還元SDS-PAGEで分析した。タンパク質溶液を次いで500 μLのアリコットに分け、液体窒素で急速冷凍し-80℃で保存した。解凍したら、使用するアリコットは光から保護して4℃で保存した。
【0144】
C. Alexa Fluor(登録商標) 594およびAlexa Fluor(登録商標) 546による標識
GFPの中には3つの埋もれたシステイン残基があるがこれらは化学修飾には利用できないが、GFP-SNAP25(134-206)-His6-C コンストラクトは溶媒に露出される1つのシステイン残基を含む(Selvin、前掲、2000; Heyduk、Curr. Opin. Biotech. 13:292-296 (2002))。カルボキシ末端システイン残基はそれゆえ中性pHにてフルオロフォア-マレイミドを用いて選択的に標識できる。図7Aおよび7Bにはそれぞれ、精製GFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質の吸収および発光/励起スペクトルを示す。タンパク質溶液の濃度はコンストラクトの一次配列から算出した理論的モル吸光係数が20250 M-1cm-1であることに基づいて2.74 mg/mlであると測定された。精製 GFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質の分子量はマトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 (MALDI-TOF)を用いて約 37,000であることが確認された。
【0145】
Alexa Fluor(登録商標) 594 による標識は実質的に以下のようにして行った。GFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質のC-末端システイン残基を、乾燥ジメチルホルムアミド (DMF)中のAlexa Fluor(登録商標) 594 (Molecular Probes、Inc.)の濃溶液をフルオロフォアがタンパク質に対して20:1 モル過剰の終濃度となるように添加することによって標識した。タンパク質/フルオロフォア溶液を4℃で冷蔵庫で一晩維持し、次いで 20mM HEPES pH 6.9に対して透析した。
【0146】
20 mM HEPES pH 6.9に対する透析後のAlexa Fluor(登録商標) 594で標識したGFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質の吸収スペクトルを図 8Aに示す。pH 6.9を還元型バルク毒素または精製 BoNT-A 軽鎖の酵素活性のアッセイに用いた。GFP-SNAP25(134-206)-His6-C コンストラクトの理論吸光係数を用いて吸収スペクトルから算出した標識比はおよそ 3:1(タンパク質: Alexa プローブ)であった。図 8Bに、遊離プローブを除くために3回バッファーを交換して20 時間徹底的な透析を行った後の標識した GFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 594の励起および発光スペクトルを示す。
【0147】
Alexa Fluor(登録商標) 546 による標識は実質的に以下のようにして行い、すべての手順は氷上または4℃で行った。4μlのAlexa Fluor(登録商標) 546 C5 マレイミド (MW 1,034.37; Molecular Probes)の10 mM 水溶液を200 μLのGFP-SNAP25(134-206)-His6-C(25 mM HEPES バッファー、pH 7.2中135 μM)に添加し、よく混合し、4℃で一晩インキュベートした。反応液をBiomax Ultrafree 遠心濾過器 (30 KDa NMWL; Millipore)に移し、濃縮し、次いで再び25 mM HEPES、pH 7.2から2回濃縮し、過剰な Alexa Fluor(登録商標)546をほぼ除いた。残りの未反応のAlexa Fluor(登録商標) 546を除くために、濃溶液をSpin Microdialyzers (Harvard Apparatus)に移し、それぞれ500 mL 20 mM HEPES、pH 6.9に対して1 時間、3 x 250 mLのこのバッファーに対して約 1.5 時間透析した。少量のアリコットを蛍光測定のために取り出し、反応平衡物を液体窒素で急速冷凍して-80℃で保存した。
【0148】
実施例II: 蛍光偏光を用いてアッセイしたクロストリジウム毒素複合体活性
本実施例は蛍光偏光アッセイがクロストリジウム毒素の存在または活性の判定に利用できることを示す。
【0149】
Alexa Fluor(登録商標) 594で標識したGFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質をBoNT/A 還元型バルク毒素の好適な基質としてのその有用性について、経時的に偏光変化を記録することによって試験した。電動薄膜偏光子を備えたCary Eclipse 分光蛍光光度計 (Varian、Inc.; Palo Alto、California)を反応のモニターに用いた。励起波長を590 nmに設定し、偏光発光を620 nmで記録した。
【0150】
数段階希釈のBoNT/A バルク毒素またはBoNT/A 軽鎖を調製し、蛍光偏光を経時的にモニターした。バルク毒素と軽鎖との両方について、蛍光偏光は希釈毒素の添加時または添加のすぐ後に低下した。図 9はGFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 594のバルク BoNT/A 毒素によるタンパク質分解についてのデータを示す。パネル 9Dに示すように、毒素は約 50 ng/mlという低濃度で検出された。
【0151】
これらの結果は、クロストリジウム毒素の存在または活性が、蛍光偏光によりアッセイされる合成基質を用いて高感度に判定できることを示す。
【0152】
実施例III:蛍光偏光と蛍光共鳴エネルギー移動とを組み合わせて用いてアッセイしたクロストリジウム毒素複合体活性
本実施例は、蛍光偏光をアッセイすることにより、蛍光共鳴エネルギー移動を示す基質を用いてクロストリジウム毒素の存在または活性を判定することができることを示す。
【0153】
上記のようにAlexa Fluor(登録商標) 546 で標識したGFP-SNAP25(134-206)-His6-C タンパク質をBoNT/Aに対する基質として用いた。上記のように、GFPおよびAlexa Fluor(登録商標) 546 の光選択特性により、ドナーフルオロフォア GFPとアクセプター Alexa Fluor(登録商標) 546との間で蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)が提供される。定常状態偏光測定はCary Eclipse 分光光度計 (Varian)にて行った。GFP成分の励起極大である474 nmで励起した。発光はAlexa Fluor(登録商標) 546 蛍光極大である 570 nmにて測定した。すべての場合において、二重路長キュベット (10 mm 、2 mm単位)を用い、発光は 2 mm路を通って観察した。 390 μLの毒素反応バッファー (50 mM HEPES、pH 7.2; 0.1 % v/v TWEEN-20; 10 μM Zn Cl2、10 mM DTT) および 10 μLのGFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 546の溶液をキュベットに入れ、30℃で平衡化させた。 30 秒間隔で記録した偏光測定が安定したときに、10 μLの組換え BoNT/A 軽鎖 (rLC/A)を1.0 μg/μL、0.5 μg/μL、0.25 μg/μL、または0.1 μg/μL の濃度でキュベットに添加した。偏光が再び安定するまで測定を続けた。
【0154】
図 10に示すように、蛍光偏光は組換え BoNT/A 軽鎖の添加の際に上昇し、その結果基質が切断された。GFPとAlexa Fluor(登録商標) 594を有する基質と比較して、ターンオーバーの際に蛍光共鳴エネルギー移動は偏光変化を増強し、それによってアッセイ感度が上昇した。GFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 546 基質を用いた偏光の総変化は約 40 mPであり、GFP-SNAP25(134-206)-His6-C-Alexa Fluor(登録商標) 594のタンパク質分解の際に観察されたおよそ 20 mPの偏光解消の2倍の大きさであった。
【0155】
これらの結果は、蛍光偏光を蛍光共鳴エネルギー移動と組み合わせることにより、クロストリジウム毒素の存在または活性についてのアッセイ感度を上昇させることができることを示す。
【0156】
括弧書きまたはその他の方法で上記したすべての論文、参考文献および特許の引用は、明記したか否かにかかわらず、本明細書にその全体を引用により含める。
【0157】
本発明を上記の実施例に言及して記載したが、様々な改変が本発明の精神を逸脱することなく行うことが出来ることを理解されたい。したがって、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図 1は、中枢および末梢神経細胞における破傷風およびボツリヌス毒素活性に必要な4工程の模式図を示す。
【図2】図 2は、SNAP-25、VAMPおよびシンタキシンの細胞内局在および切断部位を示す。
【図3】図 3は、様々な SNAP-25 タンパク質のアラインメントを示す。
【図4】図 4は、様々な VAMP タンパク質のアラインメントを示す。
【図5】図 5は、様々なシンタキシンタンパク質のアラインメントを示す。
【図6−A】図 6(A)は、プラスミド pQBI GFP-SNAP25(134-206)-6XHIS-Cの模式図を示す。
【図6−B】図 6 (B)は、pQBI GFP-SNAP25(134-206)-6XHIS-Cの核酸およびアミノ酸配列(配列番号19 および 20)を示す。
【図7−A】図 7(A)は、GFP-SNAP25(134-206)-His6Cの、吸収スペクトルを示す。
【図7−B】図 7 (B)は、GFP-SNAP25(134-206)-His6Cの、励起 (点線)および発光 (太字) スペクトルを示す。
【図8−A】図 8 (A)は、 GFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594の、UV-VIS 吸収スペクトルを示す。
【図8−B】図 8 (B) は、 GFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594の、励起 (太字)および発光 (点線) スペクトルを示す。
【図9−A】図 9は、還元型BoNT/Aを様々な濃度で用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質のターンオーバーを示す。矢印は還元型毒素複合体を添加した時点を示す。
【図9−B】図 9は、還元型BoNT/Aを様々な濃度で用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質のターンオーバーを示す。矢印は還元型毒素複合体を添加した時点を示す。
【図9−C】図 9は、還元型BoNT/Aを様々な濃度で用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質のターンオーバーを示す。矢印は還元型毒素複合体を添加した時点を示す。
【図9−D】図 9は、還元型BoNT/Aを様々な濃度で用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質のターンオーバーを示す。矢印は還元型毒素複合体を添加した時点を示す。
【図9−E】図 9は、還元型BoNT/Aを様々な濃度で用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 594 基質のターンオーバーを示す。矢印は還元型毒素複合体を添加した時点を示す。
【図10−A】図 10は、組換え BoNT/A 軽鎖を用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 546 基質のターンオーバーを示す。矢印はBoNT/A 軽鎖の添加を示す。
【図10−B】図 10は、組換え BoNT/A 軽鎖を用いたGFP-SNAP25(134-206)-His6C-Alexa Fluor(登録商標) 546 基質のターンオーバーを示す。矢印はBoNT/A 軽鎖の添加を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、クロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法:
(a)クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で、以下を含むクロストリジウム毒素基質をサンプルで処理する工程:
(i)フルオロフォア;
(ii)嵩高い基; および、
(iii) 切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列、ここで該切断部位は、該フルオロフォアと該嵩高い基の間に介在する;
(b)該フルオロフォアを直線偏光で励起する工程;および、
(c)該処理された基質の対照基質と比較しての蛍光偏光を測定する工程、
ここで、該対照基質の蛍光偏光と比較しての該処理された基質の蛍光偏光の変化は、該クロストリジウム毒素の存在または活性を示す。
【請求項2】
蛍光偏光の該変化が蛍光偏光の低下である、請求項1の方法。
【請求項3】
該フルオロフォアが少なくとも 0.5 ナノ秒の蛍光寿命を有する、請求項1の方法。
【請求項4】
該フルオロフォアが少なくとも 5 ナノ秒の蛍光寿命を有する、請求項1の方法。
【請求項5】
該フルオロフォアが少なくとも 10 ナノ秒の蛍光寿命を有する、請求項1の方法。
【請求項6】
該フルオロフォアが、Alexa Fluor(登録商標) 色素; フルオレセイン;フルオレセイン誘導体; ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF); フルオレセインの二ヒ素誘導体; フルオレセインヒ素ヘアピン結合色素 (FIAsH(商標)); 赤色二ヒ素色素 (ReAsH(商標)); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド(商標); テトラメチルカルボキシローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY-TR(登録商標); BODIPY-TMR; BODIPY(登録商標)-FL; Cy3、Cy(商標)3Bおよびダンシルの群から選択される、請求項1の方法。
【請求項7】
該フルオロフォアがAlexa Fluor(登録商標) 色素である、請求項6の方法。
【請求項8】
該Alexa Fluor(登録商標) 色素が Alexa Fluor(登録商標) 594である、請求項7の方法。
【請求項9】
該フルオロフォアが、FIAsH(商標)またはReAsH(商標)である、請求項6の方法。
【請求項10】
該嵩高い基が蛍光タンパク質である、請求項1の方法。
【請求項11】
該嵩高い基が緑色蛍光タンパク質である、請求項10の方法。
【請求項12】
該クロストリジウム毒素基質の切断による分子量変化が少なくとも1000 Daである、請求項1の方法。
【請求項13】
該蛍光偏光の低下が少なくとも5 ミリ偏光単位(mP)である、請求項1の方法。
【請求項14】
該蛍光偏光の低下が少なくとも 15 mPである、請求項13の方法。
【請求項15】
該認識配列がBoNT/A 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項16】
該 BoNT/A 認識配列がSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Arg、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項15の方法。
【請求項17】
該 BoNT/A 認識配列が、配列番号2の残基 134〜206を含む、請求項16の方法。
【請求項18】
該認識配列が BoNT/B 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項19】
該 BoNT/B 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基が、Gln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
該認識配列がBoNT/C1 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項21】
該 BoNT/C1 認識配列がシンタキシンの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がLys-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項20の方法。
【請求項22】
該 BoNT/C1 認識配列がSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がArg-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項21の方法。
【請求項23】
該認識配列がBoNT/D 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項24】
該 BoNT/D 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がLys-Leu、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
該認識配列が BoNT/E 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項26】
該 BoNT/E 認識配列がSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がArg-lle、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項25の方法。
【請求項27】
該認識配列がBoNT/F 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項28】
該 BoNT/F 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Lys、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項27の方法。
【請求項29】
該認識配列がBoNT/G 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項30】
該 BoNT/G 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がAla-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項29の方法。
【請求項31】
該認識配列がTeNT 認識配列である、請求項1の方法。
【請求項32】
該 TeNT 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項31の方法。
【請求項33】
該クロストリジウム毒素基質が少なくとも 100 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体である、請求項1の方法。
【請求項34】
該クロストリジウム毒素基質が少なくとも 200 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体である、請求項1の方法。
【請求項35】
該サンプルが粗細胞可溶化液である、請求項1の方法。
【請求項36】
該サンプルが単離クロストリジウム毒素である、請求項1の方法。
【請求項37】
該サンプルが単離クロストリジウム毒素軽鎖である、請求項1の方法。
【請求項38】
該サンプルが製剤されたクロストリジウム毒素製品である、請求項1の方法。
【請求項39】
該製剤された製品が、製剤された BoNT/A、BoNT/B またはBoNT/E 毒素産物である、請求項38の方法。
【請求項40】
該製剤された製品が製剤された BoNT/A 毒素産物である、請求項39の方法。
【請求項41】
工程 (c)が該処理された基質の蛍光偏光の変化を経時的に測定することを含む、請求項1の方法。
【請求項42】
以下の工程を含む、クロストリジウム毒素の存在または活性を判定する方法:
(a)クロストリジウム毒素プロテアーゼ活性に好適な条件下で、以下を含むクロストリジウム毒素基質をサンプルで処理する工程:
(i)ドナーフルオロフォア;
(ii)該ドナーフルオロフォアの発光スペクトルとオーバーラップする吸光度スペクトルを有するアクセプター;および、
(iii) 切断部位を含むクロストリジウム毒素認識配列、ここで該切断部位は該ドナーフルオロフォアと該アクセプターとの間に介在し、適当な条件下で、共鳴エネルギー移動が該ドナーフルオロフォアと該アクセプターとの間で示される;
(b)該ドナーフルオロフォアを直線偏光で励起する工程; および、
(c)対照基質と比較しての該処理された基質の蛍光偏光を測定する工程、ここで該対照基質の蛍光偏光と比較しての該処理された基質の蛍光偏光の変化は該クロストリジウム毒素の存在または活性を示す。
【請求項43】
該蛍光偏光の変化が蛍光偏光の上昇である、請求項42の方法。
【請求項44】
該ドナーフルオロフォアが少なくとも 0.5 ナノ秒の蛍光寿命を有する、請求項42の方法。
【請求項45】
該ドナーフルオロフォアが少なくとも 5 ナノ秒の蛍光寿命を有する、請求項42の方法。
【請求項46】
該ドナーフルオロフォアが、緑色蛍光タンパク質 (GFP); 青色蛍光タンパク質 (BFP); シアン蛍光タンパク質 (CFP); 黄色蛍光タンパク質 (YFP)および赤色蛍光タンパク質 (RFP); Alexa Fluor(登録商標) 色素; フルオレセイン;フルオレセイン誘導体; ジアミノトリアジニルアミノ-フルオレセイン (DTAF); フルオレセインの二ヒ素誘導体; フルオレセインヒ素ヘアピン結合色素 (FIAsH(商標)); 赤色二ヒ素色素 (ReAsH(商標)); カルボキシフルオレセイン (FAM); テキサスレッド(商標); テトラメチルカルボキシローダミン (TMR); カルボキシ-x-ローダミン (ROX); ローダミングリーン; オレゴングリーン 488; BODIPY-TR(登録商標); BODIPY-TMR; BODIPY(登録商標)-FL; Cy3; Cy(商標)3B およびダンシルの群から選択される、請求項42の方法。
【請求項47】
該ドナーフルオロフォアが、緑色蛍光タンパク質; 青色蛍光タンパク質; シアン蛍光タンパク質; 黄色蛍光タンパク質; および赤色蛍光タンパク質 (RFP)からなる群から選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
該ドナーフルオロフォアがGFPである、請求項47の方法。
【請求項49】
該アクセプターがAlexa Fluor(登録商標) 546である、請求項42または48の方法。
【請求項50】
該アクセプターが、Alexa Fluor(登録商標) 546; Alexa Fluor(登録商標) 568; Alexa Fluor(登録商標) 610; Alexa Fluor(登録商標) 660; Alexa Fluor(登録商標) 750; QSY(登録商標) 7; テトラメチルローダミン; オクタデシルローダミン; フラボドキシン、シトクローム c ペルオキシダーゼ;およびルブレドキシンからなる群から選択される、請求項42の方法。
【請求項51】
該認識配列がBoNT/A 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項52】
該 BoNT/A 認識配列がSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Arg、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項51の方法。
【請求項53】
該 BoNT/A 認識配列が配列番号2の残基 134〜206を含む、請求項52の方法。
【請求項54】
該認識配列が BoNT/B 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項55】
該 BoNT/B 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項54の方法。
【請求項56】
該認識配列が BoNT/C1 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項57】
該 BoNT/C1 認識配列がシンタキシンの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がLys-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項56の方法。
【請求項58】
該 BoNT/C1 認識配列がSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がArg-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項56の方法。
【請求項59】
該認識配列がBoNT/D 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項60】
該 BoNT/D 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がLys-Leu、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項59の方法。
【請求項61】
該認識配列がBoNT/E 認識配列である、請求項60の方法。
【請求項62】
該 BoNT/E 認識配列がSNAP-25の少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がArg-lle、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項61の方法。
【請求項63】
該認識配列が BoNT/F 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項64】
該 BoNT/F 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Lys、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項63の方法。
【請求項65】
該認識配列がBoNT/G 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項66】
該 BoNT/G 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がAla-Ala、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項65の方法。
【請求項67】
該認識配列が TeNT 認識配列である、請求項42の方法。
【請求項68】
該 TeNT 認識配列がVAMPの少なくとも6つの連続残基を含み、該6つの連続残基がGln-Phe、またはそのペプチド模倣体を含む、請求項67の方法。
【請求項69】
該クロストリジウム毒素基質が少なくとも 100 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体である、請求項42の方法。
【請求項70】
該クロストリジウム毒素基質が少なくとも200 残基を有するペプチドまたはペプチド模倣体である、請求項42の方法。
【請求項71】
該サンプルが粗細胞可溶化液である、請求項42の方法。
【請求項72】
該サンプルが単離クロストリジウム毒素である、請求項42の方法。
【請求項73】
該サンプルが単離クロストリジウム毒素軽鎖である、請求項42の方法。
【請求項74】
該サンプルが製剤されたクロストリジウム毒素製品である、請求項42の方法。
【請求項75】
該製剤されたクロストリジウム毒素製品がBoNT/A、BoNT/BまたはBoNT/E 毒素産物である、請求項74の方法。
【請求項76】
該製剤された製品が製剤された BoNT/A 毒素産物である、請求項75の方法。
【請求項77】
工程 (c)が該処理された基質の蛍光偏光の変化を経時的に測定することを含む、請求項42の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−A】
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【図6−B】
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【図7−A】
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【図7−B】
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【図8−A】
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【図8−B】
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【図9−A】
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【図9−B】
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【図9−C】
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【図9−D】
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【図9−E】
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【図10−A】
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【図10−B】
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【公開番号】特開2012−210215(P2012−210215A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−125033(P2012−125033)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【分割の表示】特願2007−533521(P2007−533521)の分割
【原出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】