説明

クロノグラフ時計

【課題】クロノグラフ針が電気的に駆動制御され機械的に帰零制御されるクロノグラフ時計において、スタート操作及びリセット操作時に正常な動作を行えるようにすること。
【解決手段】スタート/ストップボタン18のスタート操作に応答して、機械的制御手段がクロノグラフ針14、15の規正を解除した後に、接点部34がスタート状態となって、電気的制御手段が時間計測動作を開始してクロノグラフ針14、15を電気的に運針駆動し、リセットボタン19のリセット操作に応答して、接点部32がリセット状態となって前記電気的制御手段が時間計測動作を電気的にリセットした後、前記機械的制御手段がクロノグラフ針14、15を機械的に帰零して規正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻の指示機能及び時間計測機能を有するクロノグラフ時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の指針を各々駆動するために複数の駆動モータを搭載し、時刻情報の表示を基本機能として更に時間計測行うクロノグラフ機能を搭載したクロノグラフ時計において、各指針の駆動は前記駆動モータによって電気的に行い、クロノグラフ針の帰零や規正をハートカムなどの機械的機構によって行うものが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1記載の発明において、帰零操作時のタイミングとしては、リセット信号入力、クロノグラフ輪列の規正、帰零の順が誤動作させないための順序であり(段落[0030]参照)、又、クロノ(時間計測)スタートの最適なタイミングとしては、帰零解除または規正解除、スタートスイッチ入力の順とするのがスタート誤差をなくす順序である(段落[0037]参照。)。
したがって、スイッチ入力の接点機構に制約を生じるため、レバーやスイッチバネの構造が複雑となるという問題がある。
【0004】
また、時間計測動作中にリセット操作された場合、リセットスイッチが入って運針停止するよりも前に規正が行われると、モータが回転できずに、モータの回転位置とモータ駆動回路が内部に記憶している極性とが一致せず、クロノ再スタート時に運針できない状態が生じる。
また、クロノスタート操作において、機構のばらつきによって規正解除される前にスタートスイッチが入りモータ駆動が開始されると、モータが回転しても運針できない状態が生じるという問題がある。クロノグラフ時計のように運針周期が短い場合に問題が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−3493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、クロノグラフ針が電気的に駆動制御され機械的に帰零制御されるクロノグラフ時計において、スタート操作及びリセット操作時に正常な動作を行えるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、操作手段のスタート操作に応答してクロノグラフ針の機械的な規正状態を解除すると共に前記操作手段のリセット操作に応答して前記クロノグラフ針を機械的に帰零して規正する機械的制御手段と、前記操作手段の操作に応答して動作するスイッチ手段と、前記操作手段のスタート操作によって前記スイッチ手段がスタート状態となったときに時間計測動作を開始して前記クロノグラフ針を電気的に運針駆動し、前記操作手段のリセット操作によって前記スイッチ手段がリセット状態となったときに前記時間計測動作を電気的にリセットする電気的制御手段とを有するクロノグラフ時計において、前記操作手段のスタート操作に応答して、前記機械的制御手段がクロノグラフ針の規正を解除した後に前記スイッチ手段がスタート状態となって、前記電気的制御手段が時間計測動作を開始して前記クロノグラフ針を電気的に運針駆動し、前記操作手段のリセット操作に応答して、前記スイッチ手段がリセット状態となって前記電気的制御手段が前記時間計測動作を電気的にリセットした後、前記機械的制御手段が前記クロノグラフ針を機械的に帰零して規正することを特徴とするクロノグラフ時計が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクロノグラフ時計によれば、スタート操作及びリセット操作時の電気的動作と機械的動作のタイミングを適正化しているため、正常な動作を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るクロノグラフ時計のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るクロノグラフ時計のクロノグラフ機構の機械的構成の概要を示す平面図である。
【図3】本発明の各実施の形態に係るクロノグラフ時計の外観を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るクロノグラフ時計のブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るクロノグラフ時計のクロノグラフ機構の機械的構成の概要を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るクロノグラフ時計1は、図3に示すように、腕時計の形態で、中心軸線C1のまわりで回転され現在時刻を表示する時刻針(時針11、分針12及び秒針13)を備えると共に、クロノグラフ針(中心軸線C2のまわりで回転されるクロノグラフ秒針14及び中心軸線C3のまわりで回転されるクロノグラフ分針15)を備える。
例えば、D1方向に二段引出した状態で巻真16を回すことにより時刻針11〜13を回転することができ又、巻真16をD1方向に一段引出した状態で巻真16を回すことにより窓を介して表示される日車の日付17を変更できるように構成されている。クロノグラフ時計1の通常の時刻表示にかかわる動作は通常の電子時計と同じであり、当業者に周知であるので、以下では、通常運針に係る構造や機能や動作については記載を省略する。
【0011】
クロノグラフ時計1では、クロノグラフ針14、15は、ステッピングモータによって電気的に駆動制御され、機械的構成によって帰零制御される。
クロノグラフ時計1では、スタート/ストップボタン18をA1方向に押すことにより、クロノグラフ時計1によるクロノグラフ動作の開始、停止が指示される。より詳しくは、クロノグラフ動作の開始/停止とは、クロノグラフ針14、15の運針の開始/停止を指し、後述のようにこれに関連して電気的な駆動系の動作及びクロノグラフ針14、15の電気的な位置情報の保持が行われる。但し、場合によっては、クロノグラフ針14、15の電気的な位置情報は保持していなくてもよい。
【0012】
クロノグラフ時計1では、また、リセットボタン19をB1方向に押すことにより、クロノグラフ時計1によるクロノグラフ動作のリセットすなわち初期状態への復帰(帰零)が指示される。より詳しくは、クロノグラフ動作のリセットとは、クロノグラフ針14、15の初期位置(正時位置)への強制的な復帰(帰零)、並びにクロノグラフ針14、15の運針の規正及びクロノグラフ針14、15の電気的な位置情報のリセットを指す。前記クロノグラフ動作の電気的なリセット動作としては具体的には、計測時間のリセット動作及びモータの駆動停止動作を行う。
尚、スタート/ストップボタン18及びリセットボタン19は操作手段を構成している。
【0013】
まず、クロノグラフ時計1のスタート、運針及び帰零にかかわる機械的な構造5及び動作について、主として、図2の(a)及び(b)に基づいて説明する。なお、クロノグラフ時計1のスタート、運針及び帰零にかかわる機械的な構造5は、図1のブロック図の左側部分にも簡単に示されている。
クロノグラフ時計1は、通常運針用(時刻針運針用)モータ(図示せず)とは別にクロノグラフ針運針用モータ35を備え、該クロノグラフ針運針用モータ35は、回転駆動された際、クロノグラフ針運針用輪列36を介して、クロノグラフ針14、15を運針させる。
【0014】
前記通常運針用モータやクロノグラフ針運針用モータ35は、時計用に使用されている周知構成のステッピングモータである。前記ステッピングモータは、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、駆動コイルとを有し、前記駆動コイルに交互に極性の異なる交番信号(駆動パルス)を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにしたステッピングモータである。極性の異なる駆動パルスによって交互に駆動する毎に所定角度(例えば180度)ずつ前記ロータが回転し、複数の同相の駆動パルスによって続けて駆動しても最初の駆動パルスによって回転した場合には2番目以降の同相の駆動パルスでは回転しないようになっている。
【0015】
クロノグラフ時計1は、クロノグラフ秒針14のあるクロノグラフ秒真21に取付けられたクロノグラフ秒カム22及びクロノグラフ分針15のあるクロノグラフ分真23に取付けられたクロノグラフ分カム24を備える。
クロノグラフ時計1は、また、復針伝達第一レバー(以下では、「復針伝達レバーB」ともいう)25、復針伝達第二レバー(以下では、「復針伝達レバーA」ともいう)26及び復針レバー27を備えると共に、停止レバー28を備える。
クロノグラフ秒カム22、クロノグラフ分カム24及び復針レバー27は規正機構を構成している。また、復針伝達第二レバー26及び復針レバー27は第一レバー手段を構成し、復針伝達第一レバー25、復針伝達第二レバー26及び復針レバー27は第二レバー手段を構成している。
【0016】
復針伝達第一レバー25は、基準位置J1(図2の(b)の実線)と帰零位置J2(図2の(a)の実線で(b)の点線)との間で回動可能であり、位置決めピン25aが係合する溝を備えたバネ状位置決め部材29と係合して、基準位置J1又は帰零動作位置J2に位置決めされる。復針伝達第二レバー26は、長穴26aで復針伝達第一レバー25のピン25bに係合している。復針伝達第一レバー25が基準位置J1から帰零位置J2に移動され位置設定されると、復針伝達第二レバー26が基準位置K1(図2の(b)の実線)から帰零位置K2(図2の(a)の実線で(b)の点線)に移動される。
【0017】
一方、復針伝達第二レバー26が帰零位置K2から基準位置K1に移動され位置設定されると、復針伝達第一レバー25が帰零位置J2から基準位置J1に移動され位置決めされる。
復針レバー27は、長穴27aで復針伝達第二レバー26のピン26bに係合し、復針伝達第二レバー26の基準位置K1又は帰零位置K2への位置設定に応じて、基準位置M1(図2の(b)の実線)又は帰零位置M2(図2の(a)の実線で(b)の点線)に位置決めされる。
復針レバー27が帰零位置M2に設定されると、復針レバー27は、秒ハンマー部27bでクロノグラフ秒カム22を叩いてクロノグラフ秒針14を初期位置に帰零させると共に、分ハンマー部27cでクロノグラフ分カム24を叩いてクロノグラフ分針15を初期位置に帰零させる。
【0018】
停止レバー28は、バネ部28a、係合腕部28b及び係止腕部28cを備え、帰零時の訂正制御位置ないし規正位置E2(図2の(a)の実線で(b)の点線)と訂正制御解除位置ないし規正解除位置E1(図2の(b)の実線)との間でピン28dのまわりで回動可能である。停止レバー28の係止腕部28cは、該停止レバー28が規正位置E2にある状態SE2ではクロノグラフ運針用モータ35のロータ歯車35aにつながるクロノグラフ運針用輪列36のいずれかの車36aに対して係合して輪列36の回転を規正し、停止レバー28が規正解除位置E1にある状態SE1では、輪列36の車36aから離されて、モータ35のロータ歯車35a及び輪列36の回転を許容する。
【0019】
バネ部28aにおいて規正位置E2に向かう方向の偏倚力を受けている停止レバー28は、復針伝達第一レバー25が帰零位置J2から基準位置J1に回動変位される際に、係合腕部28bにおいて復針伝達第一レバー25の腕部25dと係合して帰零時の規正位置E2から規正解除位置E1に回動変位される。一方、復針第一レバー25が基準位置J1から帰零位置J2に移動されると、該復針第一レバー25の腕部25dと係合腕部28bとの係合が解除されるので停止レバー28はバネ部28aのバネ力により規正解除位置E1から規正位置E2に戻される。
【0020】
クロノグラフ時計1が、図2の(a)に示した帰零(リセット)状態S2にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧操作されると、復針伝達第二レバー26が突起部26cでA1方向に押されて位置K2から位置K1に変位されると共に、復針伝達第一レバー25が位置J2から位置J1に変位され、復針レバー27が位置M2から位置M1に変位される。これにより、ハンマー部27b、27cによるハートカム22、24及びクロノグラフ針14、15の回転規正(帰零制御)が解除される。また、復針伝達第一レバー25の位置J2から位置J1への回動に応じて、該復針伝達第一レバー25の腕部25dに腕部28bで係合した停止レバー28が規正位置E2から規正解除位置E1に回動され、停止レバー28の係止腕部28cがクロノグラフ輪列36から離脱して輪列36の回転規正(停止制御)を解除する。これにより、機械的制御機構5が状態S1に戻され、クロノグラフ針14、15が回転可能になる。
【0021】
一方、クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示したスタート状態ないし運針状態S1にある際に、リセットボタン19がB1方向に押圧操作されると、復針伝達第一レバー25が突起部25cでB1方向に押されて復針伝達第一レバー25が位置J1から位置J2に変位される。復針伝達第一レバー25が位置J1から位置J2に変位されると、一方では、該レバー25に係合した復針伝達第二レバー26が位置K1から位置K2に移動され、該レバー26に係合した復針レバー27が位置M1から位置M2に移動して、秒ハンマー27b及び分ハンマー27cが秒ハートカム22及び分ハートカム24を叩いてクロノグラフ秒針14及びクロノグラフ分針15を帰零させ、他方では、停止レバー28に対する腕部25dの係止が解除され停止レバー28が位置E1から位置E2に回動されて、腕部28cでクロノグラフ輪列36に係合して、輪列36を規正する。
【0022】
クロノグラフ時計1について、図2の(a)及び(b)に示した機械的構造5に関連する範囲で電気的な側面について言えば、次のとおりである。
クロノグラフ時計1が、図2の(a)に示したリセット状態S2にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧されると(即ち、スタート操作されると)、該スタート/ストップボタン18はその奥端の近傍においてA2方向の偏倚力を及ぼすスタート/ストップスイッチバネ33を押して、接点部34を閉じさせ、該接点部34を介して、スタート信号Pa(図1)を発生させる。
【0023】
本実施の形態では、レバー25、26、27、スタート/ストップスイッチバネ33及び接点部34は、スタート操作時、輪列36の規正解除(換言すればクロノグラフ針14、15の規正解除)が行われた後に、スタート/ストップスイッチバネ33が接点部34を閉じるような位置関係に配置されている。
クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示したスタート状態S1にある際に、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧されると、該スタート/ストップボタン18はスタート/ストップスイッチバネ33を押して、接点部34を閉じさせ、該接点部34を介して、ストップ(停止)信号Pb(図1)を発生させる。
【0024】
一方、クロノグラフ時計1が、図2の(b)に示したスタート状態(又はストップ状態)S1にある際に、リセットボタン19がB1方向に押圧されると、該リセットボタン19はその奥端の近傍においてB2方向の偏倚力を及ぼすリセットスイッチバネ31を押して、接点部32を閉じさせ、該接点部32を介して、リセット信号Qa(図1)を発生させる。
本実施の形態では、レバー25、26、27、リセットスイッチバネ31及び接点部32は、リセット操作時、スタート/ストップスイッチバネ33が接点部34を閉じた後に、輪列36の規正(換言すればクロノグラフ針14、15の帰零及び規正)が行われるような位置関係に配置されている。
【0025】
図2(a)の帰零状態S2において、スタート/ストップボタン18がA1方向に押圧された際のスタート動作の開始及び進行を中心に、より詳しく説明すると、スタート/ストップボタン18のA1方向押圧に伴い、復針伝達第二レバー26の回動に伴う復針レバー27の回動により機械的な帰零制御状態が解除されると共に、該復針伝達第二レバー26及び復針伝達第一レバー25の回動に伴う停止レバー28の回動により輪列36の係止(停止制御状態)が解除されて、運針が機械的に許容され(機械的な規正が解除される)、その後、スイッチ接点34を介して電気的な駆動開始信号Paが出されてこれによりモータ35の回転駆動が行われる。
【0026】
次に、クロノグラフ時計1の電気的駆動機構6の概要を、図2の機械的構造5を参照しつつ、主として図1のブロック図に基づいて説明する。尚、機械的構造5は機械的制御手段を構成し、電気的駆動機構6は電気的制御手段を構成している。
クロノグラフ時計1のクロノグラフ運針用モータ35の回転は、発振回路41及び分周回路42を介して与えられるクロックパルスに基づいて駆動制御されるクロノグラフ針運針用モータ35の駆動制御用集積回路50によって制御される。
【0027】
モータ駆動制御用集積回路50は、基本駆動制御部51と、駆動パルス発生回路52と、モータ駆動回路53と、帰零制御部54と、回転検出回路55とを有する。ここで、クロノグラフ針運針用モータ35の駆動手段は、モータ駆動回路53からなり、クロノグラフ針運針用モータ35の駆動制御手段は、基本駆動制御部51と、駆動パルス発生回路52と、帰零制御部54と、回転検出回路55とを有する。基本駆動制御部51、駆動パルス発生回路52及びモータ駆動回路53は制御手段を構成している。
【0028】
尚、モータ駆動制御用集積回路50は、更に、クロノグラフ秒をカウントし該クロノグラフ秒情報を保持するクロノグラフ秒カウンタ57、及びクロノグラフ分をカウントし該クロノグラフ分情報を保持するクロノグラフ分カウンタ58を有する。クロノグラフ時をカウントし該クロノグラフ時情報を保持するクロノグラフ時カウンタが更に設けられていてもよい。
【0029】
基本駆動制御部51は、クロノグラフ時計1が帰零(リセット)状態S2にある際におけるスタート/ストップボタン18の押下げに応じて接点部34を介して与えられるスタート信号ないし作動信号Paを受信する。
基本駆動制御部51は、スタート信号ないし作動信号Paを受取ると、チャタリング防止用の短い期間をおいて、駆動制御信号Pdを発する。以下では、特に断わらない限り、スタート信号ないし作動信号Paの受信時点と駆動制御信号Pdの送信時点とは、実質的に同一であるとする。駆動制御信号Pdは、クロノグラフ動作が行われている期間の間は高レベルに保たれる信号である。
基本駆動制御部51は、また、クロノグラフ時計1がスタート状態S1にある際におけるスタート/ストップボタン18の押下げに応じて接点部34を介して与えられるストップ(停止)信号Pbを受取る(又は接点部34からのスタート信号ないし作動信号Paの送出が停止される)と、駆動制御信号Pdの送信を停止する。
【0030】
基本駆動制御部51からの駆動制御信号Pdはクロノグラフ秒カウンタ57にも与えられ、クロノグラフ秒カウンタ57は、駆動制御信号Pdが高レベルに保たれている間、分周回路42から与えられるクロックパルスを受取ってクロノグラフ秒をカウントすると共に、該駆動制御信号Pdに基づいてクロノグラフとしての計時を開始した時点を始点として該時点から周期T毎にクロノグラフタイミングパルスPhを発する。このパルスPhの周期(クロノグラフ針駆動周期)Tは、クロノグラフ時計1の計時精度に対応し、例えば、1/100秒(即ち、10ms)である。
【0031】
駆動パルス発生回路52は、駆動制御信号Pdを受けると、各クロノグラフタイミングパルスPhに応答してクロノグラフ針駆動用の主駆動パルスGをモータ駆動回路53に与える。モータ駆動回路53は、該駆動パルスGに対応するモータ駆動パルスUをクロノグラフ針運針用モータ35に与えて、該モータ35を回転駆動する。以後、モータ35は極性の異なる主駆動パルスによって交互に駆動されて所定角度ずつ回転することになる。
【0032】
このように、図2の(a)に示したリセット状態S2にある際に時間計測動作スタート操作がなされた場合、スタート/ストップボタン18のA1方向への操作→復針伝達第二レバー26及び復針レバー27の移動による規正解除→スタート/ストップスイッチバネ33の押圧による接点部34の閉成(スタート状態)→接点部34を介してのスタート信号Paの発生、という順序で動作が行われる
したがって、復針レバー27と停止レバー28による規正が解除された後に生じる主駆動パルスによってモータ35を駆動することが可能になるため、正確な時間計測動作を行うことが可能になる。
【0033】
クロノグラフ時計1がスタート状態S1にある際に、基本駆動制御部51が停止信号Pbを受けると、該駆動制御部51は、駆動制御信号Pdの送出を停止して(所望ならば、駆動停止信号Pfを与えてもよい)、駆動パルス発生回路52からの駆動パルスGの送出が停止され、モータ駆動回路53によるモータ駆動パルスUの送出が停止され、クロノグラフ針運針用モータ35の回転駆動が停止されて、該モータ35のロータないし出力軸の回転が停止し、クロノグラフ針運針用輪列36を介するクロノグラフ針14、15の運針が停止される。
【0034】
一方、クロノグラフ時計1がスタート状態S1にある際に、リセットボタン19の押圧によりスイッチバネ31が押下げられて接点部32が閉じた場合、リセット信号Qaが帰零制御部54に与えられる。帰零制御部54は、接点部32からのリセット信号Qaを受取ると、駆動パルス発生回路52に駆動停止信号Pfを与える。その結果、駆動パルス発生回路52は、駆動パルスGの発生を停止して、モータ駆動回路53によるモータ駆動パルスUの送出を停止させる。従って、クロノグラフ針運針用モータ35の回転駆動が停止され、クロノグラフ針14、15の運針が停止される。その後、復針レバー27と停止レバー28による帰零及び規正が行われる。尚、帰零制御部54は、リセット信号Qaの受信に応じて、クロノグラフ秒カウンタ57及びクロノグラフ分カウンタ58の内容をゼロにリセットする。
【0035】
このように、図2の(b)に示したスタート状態(又はストップ状態)S1にある際にリセット操作がなされた場合、リセットボタン19のB1方向への操作→リセットスイッチバネ31の押圧による接点部32の閉成(リセット状態)→接点部32を介してのリセット信号Qaの発生→モータ35の駆動停止→復針伝達第一レバー25、復針伝達第二レバー26、復針レバー27及び停止レバー28による帰零と規正、という順序で動作が行われる。
したがって、モータ35駆動停止後に復針レバー27と停止レバー28による帰零及び規正が行われるため、規正によってモータ35が非回転となるのを防止でき、正確な時間計測動作を行うことが可能になる。
【0036】
以上のように本実施の形態に係るクロノグラフ時計は、スタート/ストップボタン18のスタート操作に応答してクロノグラフ針14、15の機械的な規正状態を解除すると共にリセットボタン19のリセット操作に応答して前記クロノグラフ針を機械的に帰零して規正する機械的制御手段と、スタート/ストップボタン18の操作に応答して動作する接点部34と、スタート/ストップボタン18のスタート操作によって接点部34がスタート状態となったときに時間計測動作を開始してクロノグラフ針14、15を電気的に運針駆動し、リセットボタン19のリセット操作によって接点部32がリセット状態となったときに前記時間計測動作を電気的にリセットする電気的制御手段とを有するクロノグラフ時計1において、スタート/ストップボタン18のスタート操作に応答して、前記機械的制御手段がクロノグラフ針の規正を解除した後に、接点部34がスタート状態となって、前記電気的制御手段が時間計測動作を開始してクロノグラフ針14、15を電気的に運針駆動し、リセットボタン19のリセット操作に応答して、接点部32がリセット状態となって前記電気的制御手段が時間計測動作を電気的にリセットした後、前記機械的制御手段がクロノグラフ針14、15を機械的に帰零して規正するように構成されている。
【0037】
このように、スタート操作及びリセット操作時の電気的動作と機械的動作のタイミングを適正化しているため、正常な動作を行うことが可能になる。また、クロノグラフ針の回転に対する機械的な規正が解除される前に、クロノグラフ針駆動用のモータ35が電気的に駆動されて正確な運針が妨げられるのを防ぐことが可能になる。また、構造の複雑化及びこれに要するコストの増加を避けつつ、機械的な駆動制御及び電気的な駆動制御が適切なタイミングで確実に行わせることが可能になる。
【0038】
具体的には、リセットスイッチ接点32を復針伝達第一レバー25が作用する手前に配置し、スタートスイッチ接点34を復針伝達第二レバー26及び復針レバー27が作用する後ろに配置することにより、クロノリセット操作時のスイッチ接点32入力後の帰零・規正と、クロノスタート操作時の規正解除後のスイッチ接点34入力の順序を確保することにより、規正によるモータ35の非回転を防止して運針できない事態の発生を防止することが可能になる。
【0039】
図4は本発明の第2の実施の形態に係るクロノグラフ時計のブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付している。
また、図5は本発明の第2の実施の形態に係るクロノグラフ時計のクロノグラフ機構の機械的構成を示す平面図であり、図2と同一部分には同一符号を付している。以下、本第2の実施の形態について、前記第1の実施の形態と相違する部分に関して説明する。
【0040】
スタート操作を行う場合、前記第1の実施の形態ではスタート/ストップボタン18を操作することによってスイッチバネ33を押して接点部34を閉じるように構成したが、本第2の実施の形態ではスタート/ストップボタン18を操作することによってスイッチバネ33を押し、スイッチバネ33が帰零位置K2の復針伝達第二レバー26を基準位置K1に移動させ、これにより復針レバー27を帰零位置M2から基準位置M1へ移動させて復針レバー27によって接点部34を閉じるように構成している。
【0041】
ここで、図5の(a)に示したリセット状態S2にある際に時間計測動作スタート操作がなされた場合、スタート/ストップボタン18のA1方向への操作→スタート/ストップスイッチバネ33の押圧→復針伝達第二レバー26及び復針レバー27の移動による規正解除→接点部34の閉成(スタート状態)→接点部34を介してのスタート信号Paの発生という順序で動作が行われる
したがって、復針レバー27と停止レバー28による規正が解除された後に主駆動パルスが供給され、該主駆動パルスによってモータ35を駆動することが可能になるため、正確な時間計測動作を行うことが可能になる。
【0042】
本第2の実施の形態においてリセット操作を行う場合は、前記第1の実施の形態と同様の動作が行われる。
以上述べたように本第2の実施の形態においても前記第1の実施の形態と同様に、スタート操作及びリセット操作時の電気的動作と機械的動作のタイミングを適正化しているため、正常な動作を行うことが可能になる等の効果を奏する。
【0043】
尚、前記各実施の形態においては、クロノ秒針が6時側、クロノ分針が9時側に配置されたクロノグラフの例を用いて説明したが、針13をクロノ秒針として用いるセンタークロノグラフに適用しても良い。
また、接点部32、34は、各々、それ自体を開閉スイッチによって構成するようにしてもよい。この場合、接点部32、34はスイッチ手段を構成する。また、スタート/ストップ操作やリセット操作の際、接点部32、34と接離する部材(スイッチバネ31、33、復針レバー27)を導電部材によって構成し、接点部32、34及び前記各部材によって開閉スイッチを構成するようにしてもよい。この場合、接点部32、34、スイッチバネ31、33、復針レバー27はスイッチ手段を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0044】
時刻針及びクロノグラフ針の駆動はモータによって電気的に行うと共に、リセット状態ではクロノグラフ針が動かないように機械的機構によって規正し、前記クロノグラフ針の駆動は前記機械的機構による規正を解除した後に行うようにした各種のクロノグラフ時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 クロノグラフ時計
5 機械的帰零制御機構
6 電気的駆動機構
11 時針
12 分針
13 秒針
14 クロノグラフ秒針
15 クロノグラフ分針
16 巻真
17 日付
18 スタート/ストップボタン
19 リセットボタン
21 クロノグラフ秒真
22 クロノグラフ秒カム
23 クロノグラフ分真
24 クロノグラフ分カム
25 復針伝達第一レバー(復針伝達レバーB)
26 復針伝達第二レバー(復針伝達レバーA)
27 復針レバー
28 停止レバー
31 リセットスイッチバネ
32 接点部
33 スタート/ストップスイッチバネ
34 接点部
35 クロノグラフ針運針用モータ
36 クロノグラフ針運針用輪列
41 発振回路
42 分周回路
50 モータ駆動制御用集積回路
51 基本駆動制御部
52 駆動パルス発生回路
53 モータ駆動回路
54 帰零制御部
55 回転検出回路
57 クロノグラフ秒カウンタ
58 クロノグラフ分カウンタ
A1、A2 方向
B1、B2 方向
C1、C2、C3 中心軸線
D1 方向
G 駆動パルス
J1、K1、M1 基準位置
J2、K2、M2 帰零位置
Pa スタート信号(作動信号)
Pb 駆動停止信号
Pd 駆動制御信号
Pf 駆動停止信号
Qa リセット信号
S1 運針状態
S2 帰零状態
U モータ駆動パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作手段のスタート操作に応答してクロノグラフ針の機械的な規正状態を解除すると共に前記操作手段のリセット操作に応答して前記クロノグラフ針を機械的に帰零して規正する機械的制御手段と、前記操作手段の操作に応答して動作するスイッチ手段と、前記操作手段のスタート操作によって前記スイッチ手段がスタート状態となったときに時間計測動作を開始して前記クロノグラフ針を電気的に運針駆動し、前記操作手段のリセット操作によって前記スイッチ手段がリセット状態となったときに前記時間計測動作を電気的にリセットする電気的制御手段とを有するクロノグラフ時計において、
前記操作手段のスタート操作に応答して、前記機械的制御手段がクロノグラフ針の規正を解除した後に前記スイッチ手段がスタート状態となって、前記電気的制御手段が時間計測動作を開始して前記クロノグラフ針を電気的に運針駆動し、
前記操作手段のリセット操作に応答して、前記スイッチ手段がリセット状態となって前記電気的制御手段が前記時間計測動作を電気的にリセットした後、前記機械的制御手段が前記クロノグラフ針を機械的に帰零して規正することを特徴とするクロノグラフ時計。
【請求項2】
前記機械的制御手段は、前記操作手段のスタート操作に応答して移動し前記クロノグラフ針の規正解除を行う第1レバー手段と、前記操作手段のリセット操作に応答して前記クロノグラフ針を帰零して規正する第2レバー手段とを備え、
前記スイッチ手段は、前記第1レバー手段が前記クロノグラフ針の規正解除を行った後にスタート状態となり、前記第2レバー手段が前記クロノグラフ針を帰零して規正する前にリセット状態となることを特徴とする請求項1記載のクロノグラフ時計。
【請求項3】
前記第1レバー手段は、前記操作手段のスタート操作に応答して移動する復針伝達第二レバーと、前記クロノグラフ針を規正すると共に前記復針伝達第二レバーの移動にともなって移動して前記規正を解除する復針レバーとを有し、
前記スイッチ手段は、前記操作手段のスタート操作に応答して移動するスイッチバネと、前記スイッチバネによって押されることによりスタート状態にされる接点部とを有することを特徴とする請求項2記載のクロノグラフ時計。
【請求項4】
前記第1レバー手段は、前記操作手段のスタート操作に応答して移動する復針伝達第二レバーと、前記クロノグラフ針を規正すると共に前記復針伝達第二レバーの移動にともなって移動して前記規正を解除する復針レバーとを有し、
前記スイッチ手段は、前記復針レバーによって押されることによりスタート状態にされる接点部を有することを特徴とする請求項2記載のクロノグラフ時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112446(P2011−112446A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267577(P2009−267577)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】