説明

クロノグラフ時計

【課題】占有面積を最小限にしつつ、クロノグラフ動作の指示ボタンの非押圧時には関連するレバーが元の位置に復帰され得るクロノグラフ時計の提供。
【解決手段】クロノグラフ時計1は、複数のハートカム81b,82b,83bと、発停ボタン16と、帰零ボタン17と、共通回動中心C4のまわりで発停ボタンの押込みに応じて回動される発停レバー30と、帰零ボタンの押込みに応じて共通回動中心C4のまわりで回動される帰零指示レバー20と、発停レバー30の回動に応じて第一方向H2に回動され、帰零指示レバー20の前記回動に応じて第二方向H1に回動される復針伝えレバー40と、該復針伝えレバーの第二方向への回動に応じて複数のハートカムを対応するハンマー部で帰零させ、復針伝えレバー40の第一方向への回動に応じてハンマー部をハートカムから離間状態にするか又は該離間状態に保つ復針レバー50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロノグラフ時計に係り、より詳しくは、電気的及び電子的に駆動制御され、機械的に帰零されるに適したクロノグラフ時計に係る。なお、この明細書において、「クロノグラフ時計」とは、クロノグラフ機能を備えた時計をいう。
【背景技術】
【0002】
機械的に駆動制御され且つ機械的に帰零されるタイプのクロノグラフ時計において、三つのハンマーが対応するハートカムに対して整列される(セルフアラインメントが行われる)ように、復針レバー自体が案内ピンによって位置調整されつつ変位されて該復針レバーの三つのハンマーが対応するハートカムを帰零させるようにした帰零機構を設けることは、知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この特許文献1に開示のクロノグラフ時計では、帰零機構がスタート、ストップ及びリセット動作の各動作を行い得るように、ラチェット歯及び駆動歯の如き二種類の歯を備えた作動カムを必要としているだけでなく、該作動カムを介して各動作が行われ得るように夫々の動作に関連して複数のレバーやばね部材を必要としており、多くの部品を要することからその構造が複雑で組立性も悪く、高コストになるのを避け難い。
【0004】
電気的及び電子的に駆動制御され、機械的に帰零されるタイプのクロノグラフ時計において、作動カムを利用することなく、複数のレバー及びばね部材によって複数のハンマーを備えた復針レバーの位置ないし変位を制御することは提案されている(例えば、特許文献2や特許文献3)。
【0005】
特許文献2の帰零機構では、複数のハンマーを備えた復針レバー(特許文献2中の用語は「復針伝えレバー」)と、基端側腕部の基端部においてリセットボタンと係合可能で回動中心を挟んで先端側腕部を備えた第一のレバーと、先端側腕部の先端で復針レバーに係合され回動中心の基端側に位置する基端側腕部の基端部で第一のレバーの先端側腕部の先端部に係合され且つ該基端部の近傍においてスタート/ストップボタンに係合可能な第二のレバーとを有することにより、レバーの数が最小限になっている。
【0006】
しかしながら、この特許文献2の帰零機構では、第一及び第二のレバーは単にシーソーの如き動作を行い得るだけであるから、例えば、クロノグラフ計時動作中にスタート/ストップボタンが押圧されてストップ動作が行われる場合、スタート/ストップボタンが第二のレバーに係合することなく単にスイッチ接点に対して電気的に接触してストップ動作が行われる。従って、ユーザにはスタート/ストップボタンの押圧が確かに行われたという感覚が確実には得られず、誤動作ないし誤指示が生じ易く、使用感も悪い。
【0007】
一方、特許文献3の帰零機構では、スタート/ストップボタンやリセットボタンによる押圧動作が完了すると、該スタート/ストップボタンやリセットボタンによって変位された発停レバー(特許文献3中の用語は「作動レバー」)や復針指示レバー群(特許文献3中の用語は「伝達レバー」及び「復針伝達レバー」)が元の位置に戻り得るようにし、該発停レバーや復針指示レバーを元の位置から変位位置に移動させる際にスタート/ストップボタンやリセットボタンの押下げ感が得られるようにしている。より詳しくは、特許文献3の帰零機構では、スタート/ストップボタンやリセットボタンの押圧完了後には発停レバーや復針指示レバーが元の位置に戻り得るように、スタート/ストップボタンの押圧によって直接回動される発停レバーや、リセットボタンの押圧によって直接回動される復針指示レバー群の先端側レバーを、複数のハンマーを備えた復針レバーに対して、遊嵌係合させ、復針レバーの位置にかかわらず、発停レバーや復針指示レバーが元の位置に戻り得るようにしている。
【0008】
しかしながら、この特許文献3の帰零機構の場合、復針レバーに対して発停レバーや復針指示レバー(復針伝えレバー)が遊嵌係合することから、復針レバーに対して加わる力の向きが複雑化するのを避け難く、復針レバー自体が位置調整されて変位されることにより該復針レバーの三つのハンマーが対応するハートカムを帰零させるような構造(セルフアラインメント構造)は採られ難い。
【0009】
また、この特許文献3の帰零構造の場合、復針指示レバー群として二つのレバー(特許文献3中の用語は「伝達レバー」及び「復針伝達レバー」)が必要であって夫々が別々の回動中心のまわりで回動されることから、レバーの回動を可能にするための占有面積が大きくなるのを避け難い。
【0010】
なお、復針レバーのハンマーが概ね直線的に移動されてハートカムを叩いて帰零させるタイプのクロノグラフ時計では、ハートカムの頂点に且つ該ハートカムの回転中心に向かう向きにハンマーが帰零力を及ぼした場合には、ハートカムが帰零され難いという問題がある。
【0011】
また、ハンマーがハートカムを帰零させるクロノグラフ時計では、ハンマーがハートカムに対して過度な急回転をさせると、該ハートカムのあるクロノグラフ真に取付けられたクロノグラフ指針の表示指針本体部(羽状部)や取付け部(クロノグラフ真に嵌着される袴状の管状部)が損傷される虞れがある。この虞れは、クロノグラフ指針が細長くなる程高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−294277号公報
【特許文献2】実用新案登録第2605696号公報
【特許文献3】特開2004−264036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、一方では占有面積を最小限にしながら、他方ではクロノグラフ動作の指示ボタンの非押圧時には関連するレバーが元の位置に復帰され得るようにしたクロノグラフ時計を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、復針レバーのセルフアラインメント動作を可能にするクロノグラフ時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のクロノグラフ時計は、前記目的を達成すべく、複数のクロノグラフ真に嵌着された複数のハートカムと、発停ボタンと、帰零ボタンと、時計本体の周方向に関して発停ボタン及び帰零ボタンのある位置の間の位置にある共通回動中心のまわりで発停ボタンの押込みに応じて回動される発停レバーと、前記共通回動中心のまわりで帰零ボタンの押込みに応じて回動される帰零指示レバーと、発停ボタンの押込みに応じた発停レバーの回動に応じて一端側において第一の方向に回動され、帰零ボタンの押込みに応じた帰零指示レバーの回動に応じて前記一端側において第二の方向に回動される復針伝えレバーと、該復針伝えレバーの第二の方向への回動に伴う該復針伝えレバーの他端側の帰零指示方向への回動によって複数のハートカムを対応するハンマー部で帰零させる復針レバーであって、復針伝えレバーの第一の方向への回動に伴う該復針伝えレバーの他端側の発停方向への回動によって複数のハンマー部を対応するハートカムから離間状態にするか又は該離間状態に保つものとを有する。
【0016】
この明細書において、「発停」は、「スタート/ストップ」の意で、「発停ボタン」は「スタート/ストップボタン」ともいう。同様に、「帰零ボタン」は「リセットボタン」ともいう。また、発停ボタンの押圧に応じて作動されるレバーを「発停レバー」といい、帰零ボタンの押圧に応じて直接作動されるレバーを「帰零指示レバー」という。なお、この帰零指示レバーは、従来は、「復針伝えレバーA」等と称されたものに対応する。ハートカムを機械的に帰零させるハンマーを備えたレバーを「復針レバー」と呼び、復針レバーを作動させるレバーを「復針伝えレバー」(従来は、「復針伝えレバーB」等と称されたものに概ね対応する)と呼ぶ。
【0017】
本発明のクロノグラフ時計では、「時計本体の周方向に関して発停ボタン及び帰零ボタンのある位置の間の位置にある共通回動中心のまわりで発停ボタンの押込みに応じて回動される発停レバーと、時計本体の周方向に関して前記共通回動中心のまわりで帰零ボタンの押込みに応じて回動される帰零指示レバーと」が設けられているので、発停ボタン及び帰零ボタンの押圧に応じて回動されるレバー類の数及び占有面積を最低限に抑え得る。
【0018】
また、本発明のクロノグラフ時計では、「発停ボタンの押込みに応じた発停レバーの回動に応じて一端側において第一の方向に回動され、帰零ボタンの押込みに応じた帰零指示レバーの回動に応じて前記一端側において第二の方向に回動される復針伝えレバー」が設けられているので、発停ボタンの押込みによる発停指示及び帰零ボタンの押込みによる帰零指示の両方が復針伝えレバーの回動動作ないし回動位置に集約され得るから復針レバーの制御が容易になる。しかも、本発明のクロノグラフ時計では、「該復針伝えレバーの第二の方向への回動に伴う該復針伝えレバーの他端側の帰零指示方向への回動によって複数のハートカムを対応するハンマー部で帰零させる復針レバーであって、復針伝えレバーの第一の方向への回動に伴う該復針伝えレバーの他端側の発停方向への回動によって複数のハンマー部を対応するハートカムから離間状態にするか又は該離間状態に保つもの」が設けられているので、復針伝えレバーによって所望の形態で復針レバーの制御、即ち帰零制御が行われ得、クロノグラフ動作の指示ボタン(発停ボタンや帰零ボタン)の非押圧時には関連するレバーが元の位置に復帰され得るようにしたり、セルフアラインメント式の帰零制御を行うことも可能になる。
【0019】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、発停レバー及び帰零指示レバーが時計の厚さ方向に関して重なる相対位置にあり、発停レバー及び帰零指示レバーのうちのいずれか一方のレバーが、その出力側端部で薄板状の復針伝えレバーの前記一端に係合するように構成され、発停レバー及び帰零指示レバーのうちの他方のレバーが、その出力側端部で薄板状の復針伝えレバーの前記一端から該復針伝えレバーの薄板面に対して交差する方向に延びたピン状突出部に係合するように構成される。
【0020】
その場合、各レバーの本体を板状体で形成し、厚さや占有面積を最小限に抑えると共にコストを最低限に抑え得る。
【0021】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、駆動エネルギ源として電池を備えると共に、該電池からの給電の基準電位を与えるバネ性金属薄板を備え、該金属薄板が、発停ボタン及び帰零ボタンの押込みに対するクリック感を与えるクリック感付与手段を備える。
【0022】
その場合、電気・電子的駆動、機械的帰零のクロノグラフ時計であって、発停ボタン及び帰零ボタンの押込みに際してクリック感(節度感)があるものが得られる。なお、クリック感付与手段を別途設け得るのは、発停ボタン及び帰零ボタンの押込みに応じて作動される発停レバー及び帰零指示レバーに対して復針伝えレバーが係合されていて、発停ボタン及び帰零ボタンの押込み動作が完了して該ボタンが元の位置に戻った際には、発停レバー及び帰零指示レバーも元の位置に復帰し得ることによる。
【0023】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、前記クリック感付与手段が肩部を備えた発停ボタン押圧感付与用ばね部を有し、発停ボタンの押込みに応じて発停レバーが回動される際、該発停レバーが発停ボタン押圧感付与用ばね部の肩部から外れて押込まれるピン状係合部を備える。
【0024】
その場合、発停ボタンの押圧の際に操作者にクリック感(節度感)を確実に与え得る。これは、特に、発停ボタンによる停止動作や再開動作の際に有益である。
【0025】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、発停レバーの回動が支持基板の外周縁に位置するストッパにより係止されるように構成される。
【0026】
その場合、発停ボタン押圧感付与用ばね部の肩部によって初期位置に偏倚される発停ボタンを当該初期位置で確実に係止し得る。なお、支持基板は、例えば、地板からなるけれども、クロノグラフ下板その他の任意の静置支持体でもよい。
【0027】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、前記クリック感付与手段が凸部を備えた復針伝えレバー位置決め用ばね部を有し、復針伝えレバーは、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムから離間した状態にする発停制御位置にある際に復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の一方の側に位置し、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムに当接状態にする帰零作動制御位置にある際に復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の他方の側に位置するピン状突起部を有し、該ピン状突起部が復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部を乗り越える際に復針伝えレバー位置決め用ばね部を弾性的に変形させるように構成される。
【0028】
その場合、位置決めとクリック感(節度感)との両方が得られる。即ち、復針伝えレバーのピン状突起部が復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の一方の側に位置するか他方の側に位置するかによって、復針伝えレバーが発停制御位置又は帰零作動制御位置に選択的に位置決めされて復針レバーによるハートカムの開放と帰零とが制御されるだけでなく、復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の一方の側から他方の側に該凸部を乗り越えることにより復針伝えレバーが発停制御位置から帰零作動制御位置に変位される際に帰零ボタンの押圧によるクリック感が操作者に対して与えられ、復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の他方の側から一方の側に該凸部を乗り越えることにより復針伝えレバーが帰零作動制御位置から発停制御位置に変位される際にクロノグラフ計測開始指示のための発停ボタンの押圧によるクリック感も操作者に対して与えられ得る。
【0029】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、復針伝えレバーのピン状突起部が、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムに当接状態にする帰零作動制御位置に保つべく、復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の前記他方の側にある場合に、帰零ボタンを最大限押込んで帰零指示レバーを最大限回動させた際、該帰零指示レバーの出力側端部と復針伝えレバーの対応する入力側端部との間に間隙が残るように構成される。
【0030】
その場合、落下や異物が当たる等により帰零ボタンに対して誤って衝撃が加わり帰零ボタンが急激に押込まれても、大きな衝撃が帰零レバーを介して復針伝えレバー等に伝わる虞れがなく、関連レバー等が衝撃による損傷を受ける虞れを最低限に抑え得る。
【0031】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、復針伝えレバーのピン状突起部が、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムから離間した状態にする発停制御位置に保つべく、復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の前記一方の側にある場合に、発停ボタンを最大限押込んで発停レバーを最大限回動させた際、該発停レバーの出力側端部と復針伝えレバーの対応する入力側端部との間に間隙が残るように構成される。
【0032】
その場合、落下や異物が当たる等により発停ボタンに対して誤って衝撃が加わり発停ボタンが急激に押込まれても、大きな衝撃が発停レバーを介して復針伝えレバー等に伝わる虞れがなく、関連レバー等が衝撃による損傷を受ける虞れを最低限に抑え得る。
【0033】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、時計の厚さ方向にみて、クロノグラフ下板とスイッチばねとの間に、発停レバー、帰零指示レバー、復針伝えレバー及び復針レバーが配置される。
【0034】
その場合、通常の電子時計にクロノグラフ機構がコンパクトに組込まれ得る。
【0035】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、帰零ボタンの押圧に伴う帰零指示レバーの回動に応じて回動されクロノグラフ輪列を規正する停止レバーを備える。
【0036】
その場合、帰零指示に際して、クロノグラフ運針用モータに影響を与えることなく帰零動作が行われ得る。なお、停止レバーによるクロノグラフ輪列の規正は、帰零指示ボタンの回動に応じ、帰零指示レバーを介して行われるのに対して、ハートカムに対する機械的帰零は、帰零指示レバーから復針伝えレバー及び復針レバーを介して行われるから、停止レバーによるクロノグラフ輪列の規正がハンマーによるハートカムの機械的帰零よりも確実に早く行われ得る。
【0037】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、モータの回転を秒クロノグラフ車に伝える秒クロノグラフ車中間車を停止レバーが規正するように構成され、秒クロノグラフ車がスリップ機構を備える。
【0038】
その場合、クロノグラフ輪列の駆動用モータのロータが帰零動作の際に強制的にまわされる虞れ(ロータの位相がずれる虞れ)がなく、この点で誤差が生じる虞れがない。なお、所望ならば、秒クロノグラフ車の歯車自体を直接規正してもよく、場合によっては、他のクロノグラフ車を規正してもよい。
【0039】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、復針レバーは、該復針レバーに対して復針伝えレバーから加えられる力と、復針レバーの複数のハンマー部に対して該ハンマー部に対応するハートカムから加わる力とが釣合うようにセルフアラインメント式に位置決めされて帰零動作を行うように構成される。
【0040】
その場合、機械的帰零が確実に行われ得る。なお、このようなセルフアラインメント式の位置決め機構の組込みが可能になるのは、発停レバー及び帰零指示レバーが復針伝えレバーを逆向きに回動させるように該復針伝えレバーに係合し、該復針伝えレバーがハートカムと協働して復針レバーにセルフアラインメント動作を行わせることによる。
【0041】
ここで、セルフアラインメント動作は、典型的には、復針伝えレバーから復針レバーに加えられる外力に対して丁度反作用となる力が複数のハートカムから復針レバーの対応するハンマー部に与えられるように復針レバーの位置や向きがずれるように復針レバーの係合部(典型的には長穴)が被係合部(典型的にはピン状突起部)に係合することにより実現される。なお、ハンマーの数は典型的には三つ(クロノグラフ時ハンマー,クロノグラフ分ハンマー及びクロノグラフ秒ハンマー)であるけれども、場合によっては、二つであってもよい。
【0042】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、復針レバーが復針伝えレバーからの力を受ける力入力部を備え、復針レバーが該力入力部において復針伝えレバーからの力を受けた際に復針レバーの変位を案内する変位案内機構を有し、該変位案内機構が、二つの案内ピンと該案内ピンの夫々が嵌った案内用長穴状部とを備え、二つの案内用長穴状部のうちの一方の案内用長穴状部は、復針レバーのハンマー部が対応するハートカムの頂点に当接する際に該一方の案内用長穴状部内で対応する案内ピンが位置する領域において該一方の案内用長穴状部の長手方向位置の側面に案内ピンが該一方の案内用長穴状部の長手方向に対して交差する向きに変位するのを許容する凹部を備える。
【0043】
この場合、「二つの案内用長穴状部のうちの一方の案内用長穴状部は、復針レバーのハンマー部が対応するハートカムの頂点に当接する際に該一方の案内用長穴状部内で対応する案内ピンが位置する領域において該一方の案内用長穴状部の長手方向位置の側面に案内ピンが該一方の案内用長穴状部の長手方向に対して交差する向きに変位するのを許容する凹部を備える」ので、『復針レバーのハンマー部が対応するハートカムの頂点に当接した』状態で該ハートカムの丁度回転中心に向かう向きの力がハンマー部からハートカムにかかることによりハートカムがどちらの方向に回転できない突っ張り状態になった場合でも、復針レバーの当該ハンマー部に対してハートカムの頂点からかかる力(反力すなわち反作用)及び復針レバーの力入力部に復針伝えレバーからかかる力に応じて復針レバーに対して一方の案内ピンのまわりでトルクが働き、案内用長穴状部の側面の凹部内への案内ピンの変位が許容される故、該トルクによって復針レバーが揺動されこの揺動に伴い案内ピンが案内用長穴状部の側面の凹部に嵌り込む。その結果、ハンマー部のハートカム接触面の形状、ハンマー部の変位方向(案内用長穴状部の長手方向)及びハートカムに対するハンマー部のハートカム接触面の相対的な向き等に応じて、更なる押込みに伴って、ハンマー部のハートカム接触面がハートカムの頂点からずれたところ(頂点のいずれか一方の側)で、ハンマー部のハートカムの頂点近傍の表面部に接触するようになって突っ張り状態を脱してハートカムを回す通常の帰零動作が確実に行われ得るようになる。
【0044】
なお、複数のハートカムのうちの一つのハートカムの頂点に対応するハンマー部が当接した場合には、通常、複数のハートカムのうちの他のハートカムには対応するハンマー部が未だ接触していない状態であるので、復針レバーの回動ないし揺動については復針レバーが力入力部で受ける力とハートカムの頂点に当たったハンマー部がハートカムから受ける力とを考慮すれば足りる。すなわち、ハートカムが複数合っても、二つ以上のハートカムの頂点と対応するハンマー部とが丁度当たる状態になる確率は極めて低い。但し、二つ以上のハートカムの頂点と対応するハンマー部の頂点とが丁度当たる場合にも、復針レバーに働くトルクの総和に応じて復針レバーが揺動し案内ピンが凹部に嵌り込むことにより、突っ張り状態を一気に脱し得ることは同様である。ハートカムの大きさが異なる場合には、凹部を異なる箇所に形成するか一つながりの長い(幅広の)凹部にしてもよい。
【0045】
ハートカムは、典型的には、頂点と回転中心とを結ぶ仮想線に関して鏡映対称な形状を有する。但し、所望ならば、非対称な形状にして、ハートカムの頂点近傍にハンマーが当たった際にハートカムに加える帰零トルクがより大きくなるようにしてもよい。
【0046】
複数のハンマー部は、案内用長穴状部に対して典型的には異なる側に位置し、突っ張り状態になった際に、復針レバーに働くトルクの向きが変わり得るから、凹部は、典型的には、案内用長穴状部の両方の側面に設けられる。但し、突っ張り状態が発生する頻度に大きな差異があるような場合には、片側でもよい。
【0047】
なお、本発明のクロノグラフ時計は、典型的には、上述のようなセルフアラインメント式の動作をするように構成されるけれども、突っ張り状態はセルフアラインメント式以外の場合にも生じ得るので、クロノグラフ時計はセルフアラインメント式でなくてもよい。
【0048】
セルフアラインメント式のような場合、典型的には、クロノグラフ時計のハートカムは同一のサイズ及び形状に形成され且つハートカムの夫々と対応するハンマー部との間で突っ張り状態が生じる際に復針レバーが採る位置は、いずれの全てのハートカム及びハンマー部について同一になるように各ハートカムが配置され且つ各ハンマー部の接触面の向きが規定される。その場合、案内用長穴状部の各側面の凹部は、実際上ひとつでよい。但し、複数のハートカムの大きさや相対位置やハンマー部の接触面の向き次第では、案内用長穴状部の少なくとも一方の側面の凹部が複数箇所にあってもよい。なお、所望ならば、複数箇所の凹部が一つながりになっていてもよい。
【0049】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、各案内ピンが時計の支持基板に突設されており、各案内用長穴状部が復針レバーに形成されている。
【0050】
その場合、復針レバーの案内及び揺動が確実に行われ易い。但し、所望ならば、二本の案内ピンが復針レバーに突設され、対応する案内用長穴状部が該ピンの突出端に対面する支持基板の表面に形成されていてもよい。
【0051】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、前記凹部が各案内用長穴状部の一方の側面に形成されている。但し、所望ならば、前記凹部が各案内用長穴状部の両方の側面に形成されていてもよいことは、前述の通りである。
【0052】
本発明のクロノグラフ時計では、典型的には、復針レバーのハンマー部の接触面部が対応するハートカムの最小径接触部に当接する帰零位置に復針レバーが近づく際に該復針レバーに制動力が働くように、前記変位案内機構の案内用長穴状部が該案内用長穴状部に嵌合された案内ピンが案内用長穴状部の長手方向に相対変位されるのを妨害すべく該案内用長穴状部の側面から該案内用長穴状部の中央に向かって突出した制動用凸部が形成されている。
【0053】
その場合、帰零動作において復針レバーが移動されるときに案内ピンが案内用長孔状部内において案内用長孔状部に対して相対移動される際に、案内ピンが案内用長孔状部の側面から突出した制動用凸部に衝突して減速されるので、案内ピンの復針レバーのハンマー部がハートカムに対して過度な衝撃を及ぼして秒クロノグラフ針の如きクロノグラフ針の表示指針本体や該指針本体のクロノグラフ真への取付用の袴状管状部等に損傷等を与える虞れを最低限に抑え得る。
【0054】
なお、案内ピンが制動用凸部に当たった際に案内用長孔状部内において案内ピンが多少なりとも横向き(案内用長孔状部の長手方向に対し交差する方向)に変位され得るよう、案内用長孔状部は制動用凸部のある側面とは逆側の側面のうち制動用凸部に概ね対面する部位に案内ピンの方向転換を許容する凹部を有する。
【0055】
また、典型的には、最初の制動用凸部に当たって方向転換した案内ピンが衝突する別の制動用凸部が設けられている。この場合、制動用凸部による制動を確実に行わせ得る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図9に示した本発明の好ましい一実施例のクロノグラフ時計のうちその本体部について、裏蓋側から見た平面説明図。
【図2】図1のクロノグラフ時計の本体部について、クロノグラフ機構が初期状態にある場合に、電池プラス端子(板)及びクロノグラフ受を省いた状態で、裏蓋側からみた平面説明図。
【図3】図1のクロノグラフ時計の中心近傍部分についての縦断面説明図。
【図4】図1のクロノグラフ時計について、発停ボタン(スタート/ストップボタン)を押圧してクロノグラフのスタートを指示した状態についての、図2と同様な平面説明図。
【図5】図1のクロノグラフ時計について、発停ボタン(スタート/ストップボタン)を押圧した後クロノグラフ計測動作が行われている状態についての、図2と同様な平面説明図。
【図6】図1のクロノグラフ時計について、帰零ボタン(リセットボタン)を押圧してクロノグラフの機械的な帰零を指示した状態についての、図2と同様な平面説明図。
【図7】図1のクロノグラフ時計の機械的クロノグラフ機構の斜視説明図。
【図8】図1のクロノグラフ時計の機械的クロノグラフ機構に係る部分の一部についての断面説明図。
【図9】本発明の好ましい一実施例のクロノグラフ時計の外観を示した平面説明図。
【図10】図1のクロノグラフ時計の通常運針輪列及びクロノグラフ輪列を示した斜視説明図。
【図11】本発明の好ましい一実施例のクロノグラフ時計の動作の概要を示したブロック図であって、(a)はクロノグラフ動作のスタートの際の流れの概要を示したブロック図、(b)はクロノグラフ動作のストップの際の流れの概要を示したブロック図、クロノグラフ動作のリセットの際の流れの概要を示したブロック図。
【図12】図1のクロノグラフ時計であって復針レバーが図2に示したような案内用長穴を有する場合において稀ではあるけれども生じる可能性のあるハートカムの帰零が行われ難くなる状態を示した図2と同様な平面説明図。
【図13】図12に示したようなことが生じるのを避け得るようにした本発明の好ましい別の一実施例のクロノグラフ時計について、図12と同様な帰零動作の途中の状態(但し、この場合は過渡的に一時的に生じる状態)を示した平面説明図。
【図14】図13のクロノグラフ時計に図13に示した状態を脱した状態を示した図13と同様な平面説明図。
【図15】図13の状態において復針レバー及びハートカムの部分を取り出して拡大して示した平面説明図。
【図16】図14の状態において復針レバー及びハートカムの部分を取り出して拡大して示した図15と同様な平面説明図。
【図17】帰零処理が完了する前に復針レバーを減速し得るようにした本発明の好ましい更に別の一実施例のクロノグラフ時計について、図5と同様な状態(クロノグラフ計測状態または計測停止状態)を示した平面説明図。
【図18】図17のクロノグラフ時計において、復針レバーが減速されつつある帰零動作の途中の状態を示した平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0058】
本発明の好ましい一実施例のクロノグラフ時計1は、例えば、図1〜図3並びに図9〜図10からわかるように、電池11を電源として通常運針用モータ12及びクロノグラフ運針用モータ13を備え、該モータ12及び13によって夫々の関連輪列すなわち通常運針用輪列14及びクロノグラフ輪列15を介して電気的・電子的に駆動される。19はりゅうず、18は巻真である。なお、この明細書において、クロノグラフ時計1とは、クロノグラフ機能を備えた時計をいう。
【0059】
クロノグラフ時計1の本体ないしムーブメント8は、図3、図9及び図10からわかるように、通常運針用モータ12のロータ12aから、五番車90を介して回転される秒車91、該五番車90から四番車92、三番車93を介して回転される分車94、該分車94から日の裏車95を介して回転される時車96を有する。秒車91、分車94及び時車96には、秒針97、分針98及び時針99が取付けられている。図3の断面説明図及び図9の外観図からわかるように、分針98及び時針99はクロノグラフ時計1の中心軸線Cのまわりで回転され、秒針97は、該中心軸線Cから離れたところで回転される小秒針の形態である。通常運針用輪列14のうち大半の車12a,90,91,92,93等は、地板2と輪列受3との間で支持され、時車96等は地板2の文字板4側で支持されている。
【0060】
クロノグラフ時計1は、また、図3の断面説明図、図9の外観図及び図10の斜視説明図等からわかるように、中心軸線Cのまわりで回転される秒クロノグラフ真81dに取付けられたクロノグラフ秒針81a、12時の位置にある回転中心C1のまわりで回転される分クロノグラフ真82dに取付けられたクロノグラフ分針82a、及び9時の位置にある回転中心C2のまわりで回転される時クロノグラフ真83dに取付けられたクロノグラフ時針83aを有する。また、図10等からわかるように、各クロノグラフ真81d,82d,83dには、夫々のハートカム81b,82b,83bが嵌着されている。
【0061】
図3からわかるように、秒クロノグラフ真81dには、秒クロノグラフ歯車81cが押えばね81eを介してすべり回転可能に嵌合されている。同様に、図10に示したように、分クロノグラフ真82dには、分クロノグラフ歯車82cが押えばね(図示せず)を介してすべり回転可能に嵌合され、時クロノグラフ真83dには、時クロノグラフ歯車83cが押えばね(図示せず)を介してすべり回転可能に嵌合されている。ここで、秒クロノグラフ真81d、秒ハートカム81b、秒クロノグラフ歯車81c及び押さえばね81e等によって秒クロノグラフ車81が構成され、分クロノグラフ真82d、分ハートカム82b及び分クロノグラフ歯車82c、押えばね(図示せず)等によって分クロノグラフ車82が構成され、時クロノグラフ真83d、時ハートカム83b及び時クロノグラフ歯車83c、押えばね(図示せず)等によって時クロノグラフ車83が構成される。
【0062】
クロノグラフ輪列15は、概ね、地板2と輪列受3の間に配置されており、秒クロノグラフ車81,分クロノグラフ車82,時クロノグラフ車83や、この後で詳述するクロノグラフ関連レバーは、クロノグラフ時計1の厚さ方向Tにみて、主として、クロノグラフ下板5とクロノグラフ受6との間に、配置されている。なお、クロノグラフ受6の裏蓋側には、基準電位を与えるばね性金属薄板としての電池プラス端子60が配置されている。
【0063】
クロノグラフ輪列15は、クロノグラフ運針用モータ13のロータ13aから秒クロノグラフ中間車84(この例では秒クロノグラフ第一及び第二中間車84a,84bからなる)を介して秒クロノグラフ歯車81cで回転される秒クロノグラフ車81、秒クロノグラフ第二中間車84bから分クロノグラフ中間車85(この例では分クロノグラフ第一及び第二中間車85a,85bからなる)を介して分クロノグラフ歯車82cで回転される分クロノグラフ車82、及び分クロノグラフ第一中間車85aから時クロノグラフ中間車86(この例では、時クロノグラフ第一、第二及び第三中間車86a,86b,86cからなる)を介して時クロノグラフ歯車83cで回転される時クロノグラフ車83を含む。
【0064】
機械的クロノグラフ機構7は、スタート/ストップ(発停)ボタン16及びリセット(帰零)ボタン17に加えて、帰零指示レバー20、発停レバー30、復針伝えレバー40、復針レバー50及び停止レバー70を有する。
【0065】
電池プラス端子60は、ムーブメント8の電気的な回路ブロック等に対して基準電位を与える導電体であって且つ機械的なばね性のあるもの、即ち、ばね性のある金属薄板からなり、発停スイッチレバー部61及び帰零スイッチレバー部62や発停スイッチばね部63及び復針伝えレバー用スイッチばね部64を含む。
【0066】
発停ボタン16は、A1,A2方向に進退可能であり、図4に示したように、A1方向に押込まれた際、発停スイッチレバー部61をB1方向に揺動させて、該発停スイッチレバー部61の先端部61aを回路基板(図示せず)の側面の接点に押付け、電気的な発停信号S1を発生させる。同様に、帰零ボタン17は、D1,D2方向に進退可能であり、図6に示したように、D1方向に押込まれた際、帰零スイッチレバー部62をE1方向に揺動させて、該帰零スイッチレバー部62の先端部62aを回路基板(図示せず)の側面の接点に押付け、電気的な帰零信号S2を発生させる。
【0067】
地板2は、クロノグラフ時計1の周方向に関して発停ボタン16及び帰零ボタン17が位置する部位の間の部位に穴部2a(図8)を備え、該穴2aには回動中心ピン2bが螺着されている。この回動中心ピン2bは、図8に示したように、穴部2aに整列した位置にあるクロノグラフ下板5の貫通孔5aを貫通して突出し、長手方向(クロノグラフ時計1の厚さ方向T)に沿って帰零指示レバー嵌合部2c及び発停レバー嵌合部2dを備える。回動中心ピン2bの帰零指示レバー嵌合部2cは、環状軸受部2eを介して帰零指示レバー20を中心軸線C4のまわりでF1,F2方向に回動可能に支持している。同様に、回動中心ピン2bの発停レバー嵌合部2dは、環状軸受部2fを介して発停レバー30を共通の中心軸線C4のまわりでF1,F2方向に回動可能に支持している。
【0068】
図8、図7及び図2等に示したように、クロノグラフ下板5は、復針伝えレバー回動中心ピン5b(図8)、復針レバー50のセルフアラインメント案内ピン5c,5d、帰零指示レバーばね受ピン5e、帰零指示レバー係止ピン5f、停止レバー回動中心ピン5g、停止レバーばね受ピン5hを備える。
【0069】
なお、回動中心ピン2bが、地板2に突設される代わりに、クロノグラフ下板5に突設されていてもよい。その場合、機械的クロノグラフ機構7を構成する全てのレバー類20,30,40,50,70がクロノグラフ下板5によって該クロノグラフ下板5のクロノグラフ受6側で支持されることになる。
【0070】
帰零指示レバー20は、図8、図7及び図2等からわかるように、孔部21(図8)と、該孔部21の一端側にある入力側腕部22と、該孔部21の他端側にある出力側腕部23とを有し、入力側腕部22の端部には、U字状に湾曲したばね部24が形成されている。帰零指示レバー20は、中央の孔部21で回動中心ピン2bの帰零指示レバー嵌合部2cによってF1,F2方向に回転自在に支持され、ばね部24の先端部25で帰零指示レバーばね受ピン5eに係合されている。すなわち、帰零指示レバー20は、初期位置P2i(図2等)と作動位置P2a(図6等)との間で、F1,F2方向に回動可能である。
【0071】
帰零指示レバー20は、更に、入力側腕部22の外側部に指示受突出部26を備える。帰零指示レバー20は、また、出力側腕部23の内側縁に停止レバー係止突起部27を備え、先端部近傍の内側縁に係止縁部28を備えると共に先端部23aに、係合縁部29を備える。
【0072】
従って、帰零指示レバー20は、図2等に示したように、外力がかかっていない状態では、ばね部24によってF2方向に回動偏倚力を受け、係止縁部28が帰零指示レバー係止ピン5fで係止された係止位置を初期位置P2iとして採る。一方、帰零ボタン17がD1方向に押込まれると、該帰零ボタン17のD1方向押圧力が帰零指示レバー20の入力側腕部22の突出部26に加えられて、帰零指示レバー20は、回動中心軸2bのまわりでF1方向に回動され、(既にリセットがかかって復針伝えレバー40が後述する帰零作動制御位置としての作動位置(帰零動作位置)P4aに達しているような状態でない限り)出力側腕部23の先端の係合縁部29で復針伝えレバー40に係合される。
【0073】
発停レバー30は、図8、図7及び図2等からわかるように、基端部となる一端部31の近傍にある孔部32(図8)と、該孔部32から一方向に延在した腕部33とを有すると共に、該腕部33の延在端部34の一側に復針伝えレバー押圧用突出部35を有する。発停レバー30は、基端部31の孔部32で共通回動中心ピン2bの発停レバー嵌合部2dによって共通の中心軸線C4のまわりでF1,F2方向に回転自在に支持されている。すなわち、発停レバー30は、初期位置P3i(図2等)と作動位置P3a(図4等)との間で、F2,F1方向に回動可能である。
【0074】
発停レバー30が帰零指示レバー20と共通ないし同一の回動中心ピン2bに回転自在に支持されて共通の回転中心軸線C4のまわりで回動されるように構成されているので、二つのレバー20,30の回動領域が実際上共用できるから、占有面積が最低限に抑えられ得る。また、共通の回転中心軸線C4が発停ボタン16と帰零ボタン17との間に位置するので、発停ボタン16のA1方向押込みによって回動される発停レバー30と帰零ボタン17のD1方向押込みによって回動される帰零指示レバー20とが復針伝えレバー40を逆方向に回動させるように該復針伝えレバー40に逆方向から係合され得る。
【0075】
発停レバー30は、また、腕部33の外縁部に突出部36を備えると共に、腕部33のうち孔部32と突出部36との間の部位で電池プラス端子60に対面する主面(裏蓋側主面)37に電池プラス端子60の発停スイッチばね部63に係合されるピン状突起部38を備える。発停レバー30は、更に、先端外縁部に、地板2の係止突起部2gに係止される係合縁部39を備える。
【0076】
図1及び図4等からわかるように、発停スイッチばね部63は、細長いばね本体部63aと該ばね本体部63aの先端部近傍に形成された先端係合部63bとを有する。先端係合部63bは、ばね本体部63aにつながる基端側長側面63cと先端側短側面63dと両側面をつなぐ段部の形態の肩部63eとを備える。発停レバー部30の突起部38は、先端側短側面63d及び肩部63eに当接する位置とばね本体部63aをG1方向に湾曲させた状態で基端側長側面63cに当接する位置(図4)との間で変位可能である。
【0077】
従って、発停レバー30は、外力がかかっていない状態では、発停スイッチばね部63の肩部63eによってF1方向に回動偏倚力を受け,係合縁部39が係止突起部2gに係止される初期位置P3iを採る。一方、発停ボタン16がA1方向に押込まれると、図4に示したように、該発停ボタン16のA1方向押圧力が発停レバー30の突出部36に加えられて、発停レバー30は、回動中心軸2bのまわりでF2方向に回動され、(復針伝えレバー40が後述する発停制御位置としての初期位置(非帰零位置)P4iに戻っていない場合には)腕部33の延在端部34の一側にある復針伝えレバー押圧用突出部35で復針伝えレバー40に係合される。発停レバー30のF2方向回動に伴い発停レバー30のピン状突起部38が、発停スイッチばね部63をG1方向に湾曲させる。ピン状突起部38が肩部63eを越えて基端側長側面63cに沿って変位するようになると、発停ボタン16のA1方向押込みに対する抵抗が急激に落ち、操作者にクリック感を与える。発停ボタン16のA1方向押圧力が解除されると、発停スイッチばね部63の本体部63aのG2方向復帰力の作用下で、発停レバー30の突起部38が発停スイッチばね部63の先端係合部63bの基端側長側面63cに係合する位置から先端側短側面63dに係合する位置に戻され、発停レバー30がF1方向に戻され(例えば、図5参照)、発停ボタン16もA2方向に戻される。
【0078】
復針伝えレバー40は、図8及び図7や図6及び図4等からわかるように、孔部41(図8)と、該孔部41の一端側にある入力側腕部42と、該孔部41の他端側にある出力側腕部43とを有する。復針伝えレバー40は、中央の孔部41で回動中心ピン5bの復針伝えレバー嵌合部5jによって中心軸線C5のまわりでH1,H2方向に回転自在に支持されている。入力側腕部42は、先端の一側縁部に発停レバー係合部44を備え、且つクロノグラフ下板5に対面する側の主面から突出した帰零指示レバー係合用ピン状突起部45を備える。
【0079】
すなわち、復針伝えレバー40は、発停制御位置たる初期位置(非帰零動作位置)P4i(図4や図5等)と帰零作動制御位置たる作動位置(帰零動作位置)P4a(図6や図2等)との間で、H1,H2方向に回動可能である。図2のように復針伝えレバー40が作動位置(帰零動作位置)P4aにある際に、発停レバー30が初期位置P3iから作動位置P3aへとF2方向に回動されると、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35が復針伝えレバー40の入力側腕部42の発停レバー係合部44に当って復針伝えレバー40を非帰零動作位置P4iに向かってH2方向に回動させる(図4)。一方、図4や図5のように復針伝えレバー40が初期位置(非帰零動作位置)P4iにある際に、帰零指示レバー20が位置P2iから位置P2aへとF1方向に回動されると、帰零指示レバー20の係合縁部29が復針伝えレバー40の入力側腕部42の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45に当って復針伝えレバー40を帰零動作位置P4aに向かってH1方向に回動させる(図6)。
【0080】
復針伝えレバー40は、更に、出力側腕部43のうち電池プラス端子60に対面する側の主面(裏蓋側主面)46に復針伝えレバー用スイッチばね部64と係合するピン状突起部47を備えると共に、先端部に復針レバー50の復針レバー作動ピン51が遊嵌係合されたU字状凹部の形態の係合溝部48を具備した復針レバー作動部49を備える。
【0081】
ピン状突起部47が係合する復針伝えレバー用スイッチばね部64は、細長いばね形態の本体部64aと、先端の係合部64bとを備える。先端係合部64bは、傾斜部64c,64dを備えた凸部64eと、先端側傾斜部64dと協働して凹部64fを形成する傾斜部64gを与える突起部64hとを備える。基端側傾斜部64cは本体部64aの側縁に連続的につながっている。
【0082】
従って、復針伝えレバー40のピン状突起部47は、凸部64eの先端側傾斜部64d側で凹部64f内に位置する状態(図4や図5のような復針伝えレバー40の初期位置(非帰零動作位置)P4iに対応する)と、凸部64eの基端側傾斜部64c側に位置する状態(図6や図2のような復針伝えレバー40の作動位置(帰零動作位置)P4aに対応する)との間で可動である。復針伝えレバー40の作動位置(帰零動作位置)P4aは、厳密には、復針レバー50が後述する作動位置(帰零動作位置)P5aを採るような復針伝えレバー40の位置である。なお、復針伝えレバー40のピン状突起部47が凸部64eの頂点64jに位置する場合、復針レバー50による帰零動作が未だ行われていない(少なくとも完了しない)状態にある。
【0083】
すなわち、復針伝えレバー40が、発停レバー30によってH2方向に回動されて、ピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の凸部64eの頂点64jを越えると復針伝えレバー用スイッチばね部64のばね力の作用下で先端側傾斜部64dに沿って変位されるので、復針伝えレバー40が更にH2方向に回動されて、最終的に、初期位置(非帰零動作位置)P4iを採り、U字状係合溝部48に遊嵌係合した復針レバー作動ピン51を介して復針レバー50を非帰零位置(開放位置)P5iに変位させる(例えば、図4)。
【0084】
ピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチバネ64の凹部64f内に位置し復針伝えレバー40が初期位置(非帰零動作位置)P4iにある場合、復針伝えレバー40がH2方向に最大限回動され、復針伝えレバー40の発停レバー係合部44が最大限H2方向に回動した位置を採るので、この状態P4iにおいてスタート/ストップボタン(発停ボタン)16がA1方向に最大限押し込まれ発停レバー30がF2方向に最大限回動されても、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35は復針伝えレバー40の発停レバー係合部44に当たらず、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35と復針伝えレバー40の発停レバー係合部44との間に、間隙Q1(図4参照)が残る。従って、この状態P4iにおいてスタート/ストップボタン(発停ボタン)16が衝撃等で急激にA1方向に最大限押し込まれ発停レバー30がF2方向に最大限回動されても、発停レバー30の復針伝えレバー押圧用突出部35が復針伝えレバー40の発停レバー係合部44に衝突する虞れがなく、衝撃の伝達が避けられ得る。
【0085】
一方、ピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチバネ64の凸部64eを越えて基端側傾斜部64cの側に位置し復針伝えレバー40が作動位置(帰零動作位置)P4aにある場合、復針伝えレバー40がH1方向に最大限回動され、復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45が最大限H1方向に回動した位置を採るので、この状態P4aにおいてリセットボタン(帰零ボタン)17がD1方向に最大限押し込まれ帰零指示レバー20がF1方向に最大限回動されても、帰零指示レバー20の係合縁部29は復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45に当たらず、帰零指示レバー20の係合縁部29と復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45との間に、間隙Q2(図6参照)が残る。従って、この状態P4aにおいてリセットボタン(帰零ボタン)17が衝撃等で急激にD1方向に最大限押し込まれ帰零指示レバー20がF1方向に最大限回動されても、帰零指示レバー20の係合縁部29が復針伝えレバー40の帰零指示レバー係合用ピン状突起部45に衝突する虞れがなく、衝撃の伝達が避けられ得る。
【0086】
一方、復針伝えレバー40が、帰零指示レバー20によってH1方向に回動されて、ピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の凸部64eの頂点64jを越えると復針伝えレバー用スイッチばね部64のばね力の作用下で基端側傾斜部64cに沿って変位されるので、復針伝えレバー40が更にH1方向に回動されて、最終的に、作動位置(帰零動作位置)P4aを採り、U字状凹部の形態の係合溝部48に係合した復針レバー作動ピン51を介して復針レバー50を帰零位置P5aに変位させる(例えば、図6)。
【0087】
停止レバー70は、図3、図7及び図6,図5等からわかるように、孔部71(図3)と、該孔部71の一端側にある第一腕部72と、該孔部71の他端側にある第二腕部73とを有し、第二腕部73の端部には、U字状に湾曲したばね部74が形成されている。停止レバー70は、中央の孔部71で回動中心ピン5gによってM1,M2方向に回転自在に支持され、ばね部74の先端部75で停止レバーばね受ピン5hに係合されている。
【0088】
停止レバー70は、また、第一腕部72の外側部に被係止部76を備える。停止レバー70は、更に、第二腕部73の分岐腕部77にクロノグラフ時計1の厚さ方向Tに折曲げられ該厚さ方向Tに延在すると共に横向きに突出したクロノグラフ中間車規正縁部78を備える。
【0089】
停止レバー70は、初期位置(非停止位置)P7i(図2等)と作動位置(停止位置)P7a(図6等)との間で、M1,M2方向に回動可能である。
【0090】
停止レバー70は、図2や図4等に示したように、第一腕部72の被係止部76が非作動位置P2iにある帰零指示レバー20の停止レバー係止突起部27によって係止されている状態では、ばね部74のばね力に抗してM2方向に回動された非停止位置P7iを採る。停止レバー70がこの非停止位置P7iにある場合、停止レバー70の分岐腕部77のクロノグラフ中間車規正縁部78は、秒クロノグラフ第二中間車84bから離れた位置を採り、秒クロノグラフ第二中間車84bの回転を許容する。
【0091】
一方、帰零指示レバー20がF1方向に回動されると帰零指示レバー20の停止レバー係止突起部27による第一腕部72の被係止部76の係止が解除される。従って、停止レバー70は、ばね部74の力によってM1方向に回動され、停止レバー70の分岐腕部77のクロノグラフ中間車規正縁部78が秒クロノグラフ第二中間車84bに係合される作動位置(停止位置)P7aを採り、秒クロノグラフ第二中間車84bを規正し、秒クロノグラフ第二中間車84bに噛合した秒クロノグラフ歯車81cの回転を禁止する。
【0092】
停止レバー70が停止位置P7aを採るタイミングは、後述のように、復針レバー50のハンマー56,57,58によるハートカム81b,82b,83bの機械的帰零が行われるタイミングよりも僅かに早く、ハートカム81b,82b,83bの機械的帰零時には、秒クロノグラフ歯車、秒クロノグラフ第二中間車84b、秒クロノグラフ第−中間車84a、クロノグラフ運針用ロータ13が回されることはない。
【0093】
復針レバー50は、全体として鳥が飛んでいるような形状で、頭部側腕部50a,胴尾部側腕部50b,両羽根側腕部50c,50dを有する。
【0094】
復針レバー50の頭部側腕部50aには、細長い開口の形態の復針レバー案内部ないし案内用長穴状部を構成する案内溝部52が形成され、復針レバーの胴尾部腕部50bには案内溝部52と協働して細長い開口の形態の復針レバー案内部ないし案内用長穴状部を構成する案内穴部ないし案内用長穴部53が形成されている。この案内溝部52及び案内穴部53は、クロノグラフ下板5のうちクロノグラフ受6に対面する表面に突設された第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cに嵌合している。ここで、第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cの外周と案内溝部52及び案内穴部53の内面との間には僅かながら隙間がある。従って、復針レバー50は、概ね、案内溝部52及び案内穴部53の延在方向に沿って、J1,J2方向に移動可能である。なお、案内溝部52及び案内穴部53の夫々の一端には、該溝部52及び穴部53の他の部分よりも若干大きい溝部分54及び穴部分55が形成されている。従って、第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cが、溝部分54及び穴部分55内に位置する場合には、復針レバー50の向きも多少変動可能である。ここで、復針レバー50の変位案内機構は、第一及び第二の復針レバーガイドピン5d,5cと、案内溝部52及び案内穴部53とからなる。
【0095】
復針レバー50の右羽根側腕部50dには、力入力部としての復針レバー作動ピン51が突設され、該復針レバー作動ピン51は、復針伝えレバー40の出力側腕部43の復針レバー作動部49のU字状溝部48に嵌合され、復針伝えレバー40のH1方向回動に応じて、作動力Kを受けて、J1方向に変位される。
【0096】
復針レバー50は、また、胴尾側腕部50bの先端部に秒ハンマーとしての秒ハートカム接触部56を備えると共に、左羽根側腕部50cの先端部に分ハンマーとしての分ハートカム接触部57を備え、更に、右羽根側腕部50dの先端部に時ハンマーとしての時ハートカム接触部58を備える。
【0097】
従って、リセットボタン17のD1方向の押圧に応じて、復針伝えレバー40がH1方向に回動されると、復針レバー50は、復針レバー作動ピン51で復針伝えレバー40の出力側腕部43の復針レバー作動部49による力Kを受けて、案内溝52及び案内穴53でガイドピン5d及び5cに案内されてJ1方向に変位され、秒ハートカム接触部56で秒ハートカム81bに当接ないし圧接すると共に分ハートカム接触部57で分ハートカム82bに当接ないし圧接し、時ハートカム接触部58で時ハートカム83bに当接ないし圧接する。ここで、ハートカム接触部56,57,58が秒、分及び時ハートカム81b,82b,83bに接触する領域に達すると、作動力Kは、その作用線が、実際上、中心軸線Cを通る向きに向く。当接状態ないし圧接状態が達成される際には、ガイドピン5d及び5cが、丁度、案内溝52及び案内穴53の大きめの溝部分54及び穴部分55内に位置するので、復針レバー50の接触部(ハンマー)56,57,58が対応するハートカム81b,82b,83bの最小径部に丁度当接ないし圧接する状態が実現される。このとき、復針伝えレバー40の出力側腕部43の復針レバー作動部49が復針レバー作動ピン51を介して復針レバー50を押す力Kは、丁度、秒ハートカム81bが秒ハートカム接触部(秒ハンマー)56で復針レバー50を押す力K1と、分ハートカム82bが分ハートカム接触部(分ハンマー)57で復針レバー50を押す力K2と、時ハートカム83bが時ハートカム接触部(時ハンマー)58で復針レバー50を押す力K3との合力と丁度釣り合い、且つ四つの力K,K1,K2,K3が復針レバー50に与えるトルクも、実際上釣合い、溝部分54及び穴部分55の周壁がガイドピン5d及び5cを支える力が実際上働かなくても、復針レバー50は静止状態に保たれ得る。この状態では、復針レバー50は、秒ハートカム接触部56、分ハートカム接触部57及び時ハートカム接触部58で秒ハートカム81b、分ハートカム82b及び時ハートカム83bに圧接されて、秒クロノグラフ車81、分クロノグラフ車82及び時クロノグラフ車83を帰零させる。これにより、セルフアラインメントが達成される。
【0098】
次に、以上の如く構成されたクロノグラフ時計1の操作及び動作について、図1〜図10のうち主として図2及び図4〜図6に加えて、図11の流れ図に基づいて説明する。
【0099】
クロノグラフ時計1の本体(ムーブメント)8の機械的クロノグラフ機構7は、初期状態V1では、図2に示したような状態を採る。ここで、機械的クロノグラフ機構7の初期状態V1とは、帰零が完了した後であって且つ帰零(リセット)ボタン17がD2方向に後退ないし突出した元の位置に戻っている状態をいう。
【0100】
より詳しくは、機械的クロノグラフ機構7の初期状態V1では、帰零指示レバー20はばね24の作用下でF2方向に回動偏倚され係止縁部28で係止ピン5fに係止された初期位置P2iを採る。この初期位置P2iでは、帰零指示レバー20の停止レバー係止突起部27が停止レバー70の被係止部76を押して停止レバー70をばね74のばね力に抗してM2方向に回動した位置P7iに設定する。また、機械的クロノグラフ機構7の初期状態V1では、発停レバー30は、ピン状突起部38が発停スイッチばね部63の肩部63eでF1方向に偏倚されて端部34の外縁の被係止部39で地板2の係止突起部2gに係止された初期位置P3iを採る。更に、機械的クロノグラフ機構7の初期状態V1では、復針伝えレバー40は、H1方向に最大限回動した作動位置P4aを採る。この作動位置P4aでは、復針伝えレバー用スイッチばね部64の凸部64eの基端側傾斜部64cにピン状突起部47が係合して、復針レバー作動部49が復針レバー50を最大限J1方向に変位した帰零位置P5aに設定している。すなわち、復針レバー50は、帰零位置P5aにあって、そのハンマー56、57,58が対応するハートカム81b,82b,83bに圧接されて該ハートカム81b,82b,83bを帰零位置に設定している。
【0101】
この初期状態V1において、発停(スタート/ストップ)ボタン16をA1方向に押し下げると、図4に示したクロノグラフ計測開始指示状態V2を採る。
【0102】
発停ボタン16が押下げられると、発停スイッチレバー部61が押されて先端部61aが回路基板(図示せず)の側面にある接点に接触してスイッチ(接点)がONになり、図11の(a)に示したように、クロノグラフ計測開始信号S1が出されて、クロノグラフ運針用モータ13の駆動が開始され、カウンタ(図示せず)がある場合には該カウンタによる計測が開始される。一方、発停ボタン16のA1方向押下げ力を突出部36で受ける発停レバー30がF2方向に回動される。このF2方向回動に伴い発停レバー30のピン状突起部38が発停スイッチばね部63の肩部63eから外れて基端側長側面63cに沿って変位される際に、操作者には、発停ボタン16のA1方向押下げ力に対するクリック感が得られる。発停レバー30のF2方向回動に伴い発停レバー30が作動位置P3aに達する。この作動位置P3aは、(ハートカムの係止が解除されるように)発停ボタン16が所定範囲を越えてA1方向に押込まれた場合の位置であって、例えば最大押込み位置又はその近傍の位置であり得る。なお、発停レバー30のF2方向回動に伴い、初期位置P4iにあった復針伝えレバー40は、発停レバー係合部44で発停レバー30の突出部35によるF2方向の押圧を受けて、H2方向に回動され、復針伝えレバー40のピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の凸部64eの頂点64jを越えて傾斜面64cから傾斜面64dに移動する。(ピン状突起部47が頂点64jを越えた際、操作者には、第二のクリック感が与えられる。例えば、最初の計測開始が計測停止や計測再開よりも強く感じられるようにするためには、この第二のクリック感の方が強くなるように設定され、最初の計測開始と計測停止や計測再開とが同程度に感じられるようにするためには、この第二のクリック感の方が弱くなるように設定されるか、概ね同時にクリック感が生じるように設定される。)その後は、復針伝えレバー40は復針伝えレバー用スイッチばね部64によってH2方向回動力を受ける。その結果、復針伝えレバー40の発停レバー係合部44が発停レバー30の突出部35から離れても、ピン状突起部47は更にH2方向に回動され、ピン状突起部47が凹部64fの底に達した際に、復針伝えレバー40のH2方向回動が終了して、復針伝えレバー40が初期位置P4iを採る。また、復針伝えレバー40が作動位置P4aから初期位置P4iにH2方向に回動されるのに伴い、復針伝えレバー40の復針レバー作動部49に作動ピン51で係合した復針レバー50も、作動位置(帰零位置)P5aから初期位置(開放位置)P5iに戻り、ハンマー56,57,58がハートカム81b,82b,83bの規正を完全に解除する。従って、クロノグラフ計測に伴うクロノグラフ指針81a,82a,83aの運針が開始される。
【0103】
なお、この状態V2では、復針伝えレバー40の発停レバー係合部44と発停レバー30の突出部35との間に間隙Q1(図4)があるので、例えば、発停ボタン16にA1方向の衝撃が加わっても、該衝撃が他のレバー等に伝わる虞れがなく、機械的クロノグラフ機構7が損傷を受ける虞れが少ない。
【0104】
次に、発停ボタン16のA1方向押下げが解除されると、図5に示したクロノグラフ計測状態V3に入る。このクロノグラフ計測状態V3では、スイッチレバー部61のB2方向復元力によってスイッチレバー部61がB2方向に戻り、発停ボタン16がA2方向に戻される。スイッチばね部63のG2方向復元力の故に、発停レバー30も押戻されて、F1方向に回動され、被係止部39で係止突起部2gに係止される初期位置P3iに戻る。この計測状態V3は、その他の点では、図4の状態V2と同一である。
【0105】
クロノグラフ計測中に発停ボタン16が押されると、図11の(b)に示したような動作が行われると共に、再び図4の状態V2を採った後で図5の状態V3に戻る。
【0106】
すなわち、発停ボタン16のA1方向押下げに伴ってスイッチレバー部61がB1方向に揺動されてスイッチ接点がONになって発停信号として停止信号S1が出され、クロノグラフ運針用モータ13が停止される。一方、発停ボタン16のA1方向押下げに伴う発停レバー30のF2方向回動に応じて、スイッチばね部63をG1方向に揺動させて肩部63eを越える際にクリック感が付与され(図4の状態V2)、スイッチばね部63がG2方向に戻る際に、発停レバー30がF1方向に戻される(図5の状態V3)。
【0107】
クロノグラフ計測の停止中に発停ボタン16が再度押されると、図11の(b)と同様な動作が行われると共に(但し、クロノグラフ計測や運針の停止の代わりにクロノグラフ計測や運針の再開)、再び図4の状態V2を採った後で図5の状態V3に戻る。
【0108】
すなわち、発停ボタン16のA1方向押下げに伴ってスイッチレバー部61がB1方向に揺動されてスイッチ接点がONになって発停信号として再開信号S1が出され、クロノグラフ運針用モータ13の駆動が(再度)開始される。一方、発停ボタン16のA1方向押下げに伴う発停レバー30のF2方向回動に応じて、スイッチばね部63をG1方向に揺動させて肩部63eを越える際にクリック感が付与され(図4の状態V2)、スイッチばね部63がG2方向に戻る際に、発停レバー30がF1方向に戻される(図5の状態V3)。
【0109】
以上のような機械的クロノグラフ機構7の停止や再開は、発停ボタン16の押下げ及びその解除に応じて繰返される。
【0110】
図5の状態V3(典型的には、クロノグラフ計測停止状態、但し、クロノグラフ計測状態であってもよい)において、リセットボタン17がD1方向に押されてクロノグラフ帰零指示が出されると、図6に示したようなクロノグラフ帰零指示状態V4になる。
【0111】
すなわち、リセット(帰零)ボタン17のD1方向押圧により、帰零スイッチレバー部62がE1方向に曲げられて先端部62aが回路基板(図示せず)の側面にある接点に接触して、図11の(c)に示したように、帰零指示信号S2が出される(タイマーカウンタ等でもクロノグラフ計測をしていた場合には該タイマーカウンタがリセットされる)。
【0112】
一方、帰零ボタン17のD1方向押圧に伴って指示受突出部26で押圧力を受ける帰零指示レバー20がF1方向に回動される。帰零指示レバー20のF1方向回動が始まると、該帰零指示レバー20の係止突起部27が停止レバー70の被係止部76から速やかに離れて停止レバー70の係止が解除されるので、停止レバー70のばね部74の作用下でM1方向に回動されて作動位置P7aに達し、規正縁部78が秒クロノグラフ第二中間車84bに押付けられて該秒クロノグラフ第二中間車84bを規正し、秒クロノグラフ第二中間車84bに噛合した秒クロノグラフ歯車81cの回転を停止させる。帰零指示レバー20が更に、F1方向に回動されると、帰零指示レバー20の係合縁部29が復針伝えレバー40のピン状突起部45に係合して、初期位置P4iにあった復針伝えレバー40を該ピン状突起部45を介してH1方向に回動させる。復針伝えレバー40のH1方向回動に伴いピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の凹部64fから凸部64eの頂点64jを越えて基端側傾斜部64cに移る。ピン状突起部47が頂点64jを越えると、復針伝えレバー40のピン状突起部45が帰零指示レバー20の係合縁部29から離れても、復針伝えレバー40が、スイッチばね部64のばね力によって、H1方向に回動される。従って、帰零ボタン17の押圧に対する抵抗が急激に落ち、操作者がクリック感を感じ得る。復針伝えレバー40のH1方向回動に伴い、該復針伝えレバー40の復針レバー作動部49が作動ピン51を介して復針レバー50をK方向に押す。復針レバー50のJ1方向移動は、ガイドピン5d,5cが係合した溝部52及び穴部53で案内され、特に、拡径部54,55で向きや位置の調整が行われて(セルフアラインメントが行われて)、ハンマー56,57,58によるハートカム81b,82b,83bの強制的帰零が行われる。その結果、復針伝えレバー40は作動位置P4aに達し、復針レバー50も作動位置P5aに達する。
【0113】
この状態V4では、帰零ボタン17を最大限D1方向に押込み、帰零指示レバー20を最大限F1方向に回動させても、帰零指示レバー20の係合縁部29と復針伝えレバー40のピン状突起部45との間には間隙Q2(図6)が残るので、帰零ボタン17にD1方向の不測の衝撃が加わっても、該衝撃が他の輪列その他に直接伝わる虞れが少ない。
【0114】
次に、リセットボタン17の押圧を解除すると、帰零スイッチレバー部62がE2方向に戻ると共に、ばね24の作用下で帰零指示レバー20は係止縁部28が係止ピン5fに係止される初期位置P2iに戻る。その結果、図2に示したように、帰零指示レバー20の係止突起部27が再び停止レバー70の被係止部76に当って停止レバー70を初期位置P7iに戻し、秒クロノグラフ第二中間車84bの規正を解除する。但し、ハートカム81b,82b,83bはハンマー56,57,58で矯正帰零されたままの状態であり、クロノグラフ運針用モータ13は停止されたままの状態である。
【0115】
以上の如く構成されたクロノグラフ時計1では、通常は、所望の帰零動作が確実に行われ得るけれども、ハートカムを利用した機械的帰零機構に固有の問題、すなわち、ハンマー部がハートカムの丁度頂点に当たって該ハートカムに対してその回転中心に向かう向きに力がかかるという稀な状態になった場合にはハートカムがいずれの方向にも回転されず帰零が行われ難くなることがあり得るという問題は残る。
【0116】
より詳しくは、図5のクロノグラフ計測状態V3で秒クロノグラフ車81が更に回転された後で発停ボタン16の押下げによりクロノグラフ計測停止状態V3に設定された際に、秒クロノグラフ車81、分クロノグラフ車82及び時クロノグラフ車83が、図12に示した回転位置に達しているとし、このとき、帰零指示ボタン17のD1方向押込みにより帰零指示がなされると、図12に示したように、帰零指示レバー20がF1方向に回動して復針伝えレバー40に初期位置P4iからH1方向に回動した帰零指示中間位置P4mを採らせる。このとき、図12に示したように、復針伝えレバー40のピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の傾斜部64dを頂点64jに向かって上る途中の位置にある。このように、復針伝えレバー40がH1方向に途中まで回動すると、それに伴って、復針レバー50も初期位置P5iから帰零位置P5aに向かってJ1方向にある程度進んだ中間位置P5mを採る。復針伝えレバー50がこのような中間位置P5mにある際に、復針レバー50のハンマー部、図示の例では、秒ハンマー部56が対応する秒ハートカム81bの頂点81btに当たり、しかも、該秒ハンマー部56に対してその回転中心Cに向かう向きの力K1cを及ぼすことが稀ではあっても生じることがある。
【0117】
図示したクロノグラフ時計1の例では、秒ハンマー部56は、相互に交差した第一及び第二接触面部56a,56bと該接触面部56a,56bの間に位置する頂点部56cとを有し、秒ハンマー部56の接触面部56a,56b,56cの一部をなす頂点部56cで秒ハートカム81bの丁度頂点81btに当接している。但し、ハートカムに対するハンマー部の相対配置や相対的な変位方向次第では、ハンマーが複数の接触面部を備える代わりに例えば単一の平面状の接触面部のみを備えている場合でも同様である。
【0118】
いずれにしても、秒ハンマー部56が(図示の例では頂点部56cで)秒ハートカム81bの頂点81btに対してその回転中心Cに向かう向きの力K1cを及ぼした場合、秒ハートカム81bはいずれの方向にも回れず、復針レバー50の秒ハンマー部56を含む胴尾部側腕部50bが(従って復針レバー50自体が)、秒ハートカム81bに突っ張って動けなくなるような状態すなわち一種の突っ張り状態V4dが生じる虞れがある。
【0119】
このような場合、例えば、帰零ボタン17の押圧(及びばねによる復帰)を繰り返したりして秒ハートカム81bの向きを多少なりとも変えて帰零動作を行わせる必要がある。
【0120】
そのような不都合をなくすためには、復針レバー50のJ1方向変位位置P5dにおいて、ハートカムを叩くべきハンマー部のハートカムに対する相対位置を変えるべく、復針レバー50を揺動させ得るようにすればよい。
【0121】
上記の突っ張り状態(突っ張り状態)V4dから脱し得る(抜け出せなくなるのを避け得る)ようにした機械的クロノグラフ機構7Aを備えたクロノグラフ時計本体8Aを有するクロノグラフ時計1Aを図13に示す。図13のクロノグラフ時計1Aにおいて、図1から図12に示した要素と同一の要素には同一の符号が付され、異なるところがあるけれども対応する要素には同一の符号の最後に添字Aが付されている。
【0122】
クロノグラフ時計1Aでは、図13及びその一部を拡大して示した図15からわかるように、復針レバー50Aの胴尾部側腕部50bAの案内用長穴部としての案内用穴部53Aが、側面53aA,53bAのうち一方の側面53bAの特定の部位Ubに凹部101を備える。ここで、図13は、クロノグラフ機構の帰零指示処理が途中まで進行した段階にある場合において図2や図12等と同様にクロノグラフ時計の本体部について電池プラス端子(板)及びクロノグラフ受を省いた状態で裏蓋側からみた平面説明図であり、図15は、図13のうち復針レバー及びハートカムの部分を拡大して示した平面説明図である。
【0123】
凹部101のある部位Ubは、図13及び図15からわかるように、秒ハンマー56の頂点56cが丁度秒ハートカム81bの頂点81btと係合する際に、復針レバーガイドピン5cが長案内用長穴53A内で採る位置Uに相当する側面53bAの部位である。
【0124】
ここで、図13のクロノグラフ時計1Aの構造及び状態は、復針レバー50の案内用長穴53Aが側面53bAの部位Ubに凹部101を備える点を除いて、図12のクロノグラフ時計1の構造及び状態と実際上同一である。
【0125】
図13及び図15に示した状態では、クロノグラフ車81,82,83がある程度回転した状態であって秒クロノグラフ車81が特異な回転位置にある際にクロノグラフ計測が停止された状態において、帰零指示ボタン17のD1方向押込みにより帰零指示がなされ、帰零指示レバー20がF1方向に回動して復針伝えレバー40に初期位置P4iからH1方向に回動した帰零指示中間位置P4mを採り、復針伝えレバー40がH1方向に途中まで回動して復針伝えレバー40のピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の傾斜部64dを頂点64jに向かって上る途中の位置にある中間位置P4aを採り、復針レバー50も初期位置P5iから帰零位置P5aに向かってJ1方向にある程度進んだ中間位置P5mを採った際に、復針伝えレバー50の秒ハンマー部56が偶々特異な回転位置にある秒ハートカム81bの頂点81btに丁度当たり、該秒ハンマー部56に対してその回転中心Cに向かう向きの力K1cを及ぼす突っ張り状態ないし突っ張り状態V4dにある。この突っ張り状態にある際に、復針レバー50Aの初期位置P5iから作動位置P5aに向かうJ1方向変位に応じて、前側の復針レバーガイドピン5cが、案内用長穴53Aに対して相対的にJ2方向に変位して丁度位置Uに達し、丁度、該位置Yに対応する部位Ubにある凹部101に対面する。
【0126】
この突っ張り状態V4dでは、図15の拡大説明図からわかるように、復針レバー50Aは、一方では、力入力部としての復針レバー作動ピン51において復針伝えレバー40の復針レバー作動部49からの帰零駆動力Kcを中心軸線C5のまわりでの復針レバー作動部49の回動方向H1に受け、他方では、秒ハンマー56の頂点56cが秒ハートカム81bの頂点81btを中心Cに向かって押す力K1cの反作用−K1cを秒ハンマー56の頂点56cで秒ハートカム81bから受ける。なお、帰零指示が途中まで進行したこの状態では、図15からわかるように、分ハンマー57及び時ハンマー58は対応する分ハートカム82b及び時ハートカム83bに対して未だ当接していないので、復針レバー50Aは、分ハートカム82bや時ハートカム83bからは力を受けない。
【0127】
また、この突っ張り状態V4dでは、図15からわかるように、二つの力K,−K1cは、力K1cの働く方向や長穴部53Aの延在方向への並進を禁止するけれども、全体として、復針レバー50Aに対するトルクを与え、該復針レバー50Aを後側の復針レバーガイドピン5dのまわりで、W1方向に揺動させる。ここで、復針レバー50Aは、丁度部位Ubに凹部101を備えるので、該凹部101が復針レバー50AのW1方向の揺動を許容し、復針レバー50AのこのW1方向の揺動に際して前側の復針レバーガイドピン5cが凹部101に入る。すなわち、復針レバー50Aが、図16において破線で示した突っ張り状態P5d(図15において実線で示した状態)から実線で示した揺動状態ないし揺動位置P5wに移る。また、復針レバー50AのW1方向揺動に伴い秒ハンマー56の前側の接触面56aと秒ハートカム81bとの間に隙間ができるのでその隙間を埋めるように復針レバー50Aが僅かながらJ1方向に変位される。
【0128】
復針レバー50Aが揺動位置P5wに達すると、図16からわかるように、復針レバー50Aの秒ハンマー56の前側の接触面56aが該接触面56aに対して左回り(反時計回り)に傾いた秒ハートカム81bの頂点81btの左側の面81bhに当接する。従って、図16及び全体を示した図14からわかるように、突っ張り状態を脱した復針レバー50Aの秒ハンマー56は、前側の接触面56aで秒ハートカム81bの左側の面81bhを中心Cからずれた方向に力K1aで押して、秒ハートカム81bを中心軸線CのまわりでCh方向に回転させる帰零指示処理が再開され進行して、その後、セルフアラインメントが行われて図6と同様な帰零指示完了状態ないし帰零完了状態V4に達する。
【0129】
以上においては、秒ハートカム81bの頂点81btに秒ハンマー56(の頂点56c)が丁度当たって中心Cに向かって押す突っ張り状態V4dになる例について説明したけれども、時ハートカム83bの頂点83btに時ハンマー58(の頂点58c)が丁度当たって時ハートカム83bの中心C2に向かって押す突っ張り状態になる場合でも、このクロノグラフ時計1Aでは、該突っ張り状態の際に復針レバー50Aが受ける力がピン5dのまわりにW1方向トルクを及ぼすので、前方の復針レバーガイドピン5cが凹部101内に嵌り込み得るから、図15及び図16に示した場合と同様に、復針レバー50AがW1方向に揺動されて、突っ張り状態が解除されて、帰零指示処理が再開され進行し得ることは同様である。
【0130】
一方、分ハートカム82bの頂点82btに分ハンマー57(の頂点57c)が丁度当たって分ハートカム82bの中心C1に向かって押す突っ張り状態になる場合には、案内ピン5c,5dと分ハートカム82b及び分ハンマー58の相対位置からして、復針レバー50Aが復針レバーガイドピン5dのまわりでW1方向とは反対方向W2のトルクを受けるから、該方向W2の揺動を許容するためには、図15において想像線102で示したように、側面53bAとは反対側の側面53aAの部位Ua(部位Ubに対面する部位)に、凹部を形成しておけばよい。従って、胴尾部側腕部50bAの案内用長穴部53Aは、凹部101と凹部102との両方を備えていてもよく、また、場合によっては、凹部101の代わりに凹部102のみを備えていてもよい。
【0131】
なお、帰零動作の際にクロノグラフ車がハンマーによって急速回転された後帰零動作の完了時点で急停止せしめられると(又はこのような急停止が繰り返されると)細長い指針部を備える秒クロノグラフ針等が急激なトルク変化によって曲がったり秒クロノグラフ針の取付用袴状部ないし管状部と秒クロノグラフ真との結合に変化が生じたりする虞れがある場合もある。このような不具合が生じる虞れを最低限に抑えて秒クロノグラフ針の指針部等として細いものを用いるためには、クロノグラフ時計1Bを、図17に示したように、帰零指示の際のハンマーの移動速度を低減させ得るようにしてもよい。
【0132】
図17のクロノグラフ時計1Bにおいて、図1から図12に示した要素と同一の要素には同一の符号が付され、異なるところがあるけれども対応する要素には同一の符号の最後に添字Bが付されている。但し、図17のクロノグラフ時計1Bにおいて、図1から図12には示されていないけれども図13から図16に示した要素と同一の要素には図13から図16と同一の符号が付されている。
【0133】
クロノグラフ時計1Bでは、復針レバー50Bの胴尾部側腕部50bBにある案内用長穴部53Bの側面53aB,53bBに制動用凸部ないし突起部111,121が形成されており、該凸部111,121は、復針レバー50BのJ1方向の帰零動作に際して、案内用長穴53B内で該長穴53Bの長手方向に移動される復針レバーガイドピン5cの直線的な移動を妨げ多少なりとも進路を変えさせることにより、復針レバー50Bの移動速度を減速させるべく働く。クロノグラフ時計1Bは凹部101及び逆側の凹部102を有する。
【0134】
なお、案内用長穴53Bの幅は概ね復針レバーガイドピン5cの太さ(径)と同程度であるから、凸部111,121の突出に応じて復針レバーガイドピン5cの太さ(径)に相当する幅を与えるべく案内用長穴53Bのうち凸部111,121に対面する側面には、凹部112,122が形成されている。すなわち、側面53bBのうち側面53aBの凸部111に対面する部位には凹部112が形成され、側面53aBのうち側面53bBの凸部121に対面する部位には凹部122が形成されて、凸部111と凹部112とが協働してガイドピン5cの移動を許容する幅を与え、凸部121と凹部112とが協働してガイドピン5cの移動を許容する幅を与えている。但し、案内用長穴53Bとガイドピン5cとの間の隙間が比較的大きくて、凸部111,121が形成されてもガイドピン5cが案内用長穴53B内で移動可能である場合には、凹部112,122はなくてもよい。
【0135】
以上の如く構成された機械的クロノグラフ機構7Bを備えたクロノグラフ時計本体8Bを有するクロノグラフ時計1Bでは、クロノグラフ計測状態からクロノグラフ計測停止状態V3においては、クロノグラフ時計1に関する図5の場合と同様に、図17に示した通り、帰零指示レバー20が初期位置P2iを採り、発停レバー30が初期位置P3iを採り、復針伝えレバー40が初期位置P4iを採り、復針レバー50が初期位置P5iを採る。このとき、復針レバーガイドピン5cは、復針レバー案内用長穴53BのJ1方向端部の近傍に位置する。
【0136】
ここで、図18に示したように、帰零指示ボタン17をD1方向に押込むと、帰零指示レバー20がF1方向に回動して作動位置P2aに向かって途中まで変位された中間位置P2mを採り、復針伝えレバー40が作動位置P4aに向かって途中まで変位された中間位置P4mを採り、復針レバー50が作動位置P5aに向かって途中まで変位された中間位置P5mを採る。このとき、例えば、復針伝えレバー40のピン状突起部47が復針伝えレバー用スイッチばね部64の凸部64eの傾斜側面64dを上って頂点64jの近傍に達している。復針伝えレバー40のピン状突起部47が頂部64jを越えると復針伝えレバー用スイッチばね部64d自体のばね力によって、復針伝えレバー40が更にH1方向に回動される。復針伝えレバー40のH1方向回動のこの段階では、復針伝えレバー40は、通常、復針伝えレバー用スイッチばね部64d自体のばね力と、帰零指示ボタン17のD1方向に押込みに応じてF1方向に回動される帰零指示レバー20からのトルクとの両方を受けて、H1方向回動速度が大きくなり易い。
【0137】
ところが、このクロノグラフ時計1Bでは、この段階では、図18からわかるように、復針レバーガイドピン5cがJ1方向に移動して中間状態P5mにある復針レバー50Bの案内用長穴53Bの凸部111に当たって、その直線的な運動が妨げられて凹部112の方へ振られて減速され、次には、振られた側(逆側)の凸部121に当たって再度その直線的な運動が妨げられて凹部122の方へ振られて減速される。
【0138】
従って、帰零動作が更に進行して秒ハンマー部56が秒クロノグラフ車81の秒ハートカム81bを叩いて図6に示したような帰零完了状態に達する際に秒ハートカム81bを介して秒クロノグラフ真81dに与える衝撃が低減され得、クロノグラフ秒針81aが非常に細く且つ非常に長いような場合でも、該クロノグラフ秒針81aの表示指針部が曲がったり表示指針部の秒クロノグラフ真81dへの取付用の袴状管状部の嵌着状態が不完全になったりする虞れが低減され得る。
【符号の説明】
【0139】
1,1A,1B クロノグラフ時計
2 地板
2a 穴部
2b 回動中心ピン
2c 帰零指示レバー嵌合部
2d 発停レバー嵌合部
2e 環状軸受部
2f 環状軸受部
2g 係止突起部
3 輪列受
4 文字板
5 クロノグラフ下板
5a 貫通孔
5b 復針伝えレバー回動中心ピン
5c,5d 復針レバーガイドピン(セルフアラインメント案内ピン)
5e 帰零指示レバーばね受ピン
5f 帰零指示レバー係止ピン
5g 停止レバー回動中心ピン
5h 停止レバーばね受ピン
5j 復針伝えレバー嵌合部
6 クロノグラフ受
7,7A,7B 機械的クロノグラフ機構
8,8A,8B クロノグラフ時計本体(ムーブメント)
11 電池
12 通常運針用モータ
12a ロータ
13 クロノグラフ運針用モータ
13a ロータ
14 通常運針用輪列
15 クロノグラフ輪列
16 スタート/ストップ(発停)ボタン
17 リセット(帰零)ボタン
18 巻真
19 りゅうず
20 帰零指示レバー
21 孔部
22 入力側腕部
23 出力側腕部
23a 先端部
24 ばね部
25 先端部
26 指示受突出部
27 停止レバー係止突起部
28 係止縁部
29 係合縁部
30 発停レバー
31 一端部(基端部)
32 孔部
33 腕部
34 延在端部
35 復針伝えレバー押圧用突出部
36 突出部
37 主面(裏蓋側主面)
38 ピン状突起部
39 被係止部
40 復針伝えレバー
41 孔部
42 入力側腕部
43 出力側腕部
44 発停レバー係合部
45 帰零指示レバー係合用ピン状突起部
46 主面(裏蓋側主面)
47 ピン状突起部
48 (U字状)係合溝部
49 復針レバー作動部
50,50A,50B 復針レバー
50a 頭部側腕部
50b,50bA,50bB 胴尾部側腕部
50c 左羽根側腕部
50d 右羽根側腕部
51 復針レバー作動ピン(力入力部)
52 案内溝部
53,53A,53B 案内穴部(案内用長穴部)
53a,53b,53aA,53bA,53aB,53bB 側面
54 (大径の)溝部分
55 (大径の)穴部分
56 秒ハンマー(秒ハートカム接触部)
56a,56b 秒ハンマーの接触面
56c 秒ハンマーの頂点
57 分ハンマー(分ハートカム接触部)
57c 分ハンマーの頂点
58 時ハンマー(時ハートカム接触部)
58c 時ハンマーの頂点
60 電池プラス端子
61 発停スイッチレバー部
61a 先端部
62 帰零スイッチレバー部
62a 先端部
63 発停スイッチばね部
63a ばね本体部
63b 先端係合部
63c 基端側長側面
63d 先端側端側面
63e 肩部
64 復針伝えレバー用スイッチばね部
64a 本体部
64b 先端係合部
64c 基端側傾斜部
64d 先端側傾斜部
64e 凸部
64f 凹部
64g 傾斜部
64h 突起部
64j 頂点
70 停止レバー
71 孔部
72 第一腕部
73 第二腕部
74 ばね部
75 先端部
76 被係止部
77 分岐腕部
78 クロノグラフ中間車規正縁部
81 秒クロノグラフ車
81a クロノグラフ秒針
81b 秒ハートカム
81bh 左側の接触面
81bm 右側の接触面
81bt 秒ハートカムの頂点
81c 秒クロノグラフ歯車
81d 秒クロノグラフ真
81e 押さえばね
82 分クロノグラフ車
82a クロノグラフ分針
82b 分ハートカム
82bt 分ハートカムの頂点
82c 分クロノグラフ歯車
82d 分クロノグラフ真
83 時クロノグラフ車
83a クロノグラフ時針
83b 時ハートカム
83bt 時ハートカムの頂点
83c 時クロノグラフ歯車
83d 時クロノグラフ真
84 秒クロノグラフ中間車
84a 秒クロノグラフ第一中間車
84b 秒クロノグラフ第二中間車
85 分クロノグラフ中間車
85a 分クロノグラフ第一中間車
85b 分クロノグラフ第二中間車
86 時クロノグラフ中間車
86a 時クロノグラフ第一中間車
86b 時クロノグラフ第二中間車
86c 時クロノグラフ第三中間車
90 五番車
91 秒車
92 四番車
93 三番車
94 分車
95 日の裏車
96 時車
97 秒針
98 分針
99 時針
101,102 凹部
111,121 制動用凸部
112,122 凹部
A1,A2 進退方向
B1 揺動方向
C 中心軸線
C1,C2 回転中心
C4,C5 中心軸線
D1,D2 進退方向
E1 揺動方向
F1,F2 回動方向
G1 湾曲方向
G2 戻り方向
H1,H2 回転方向
J1,J2 復針レバーの概略の変位方向
K,K1,K2,K3,Kc,K1c 力
M1,M2 回転方向
P2a 帰零指示レバーの作動位置
P2i 帰零指示レバーの初期位置
P2m 帰零指示レバーの中間位置
P3a 発停レバーの作動位置
P3i 発停レバーの初期位置
P4a 復針伝えレバーの作動位置(帰零作動制御位置ないし帰零動作位置)
P4i 復針伝えレバーの初期位置(発停制御位置ないし非帰零動作位置)
P4m 復針伝えレバーの中間位置(帰零処理(帰零動作)が途中まで進行している位置)
P5a 復針レバーの作動位置(帰零位置)
P5d 突っ張り状態のとき復針レバーが採る長手方向位置
P5i 復針レバーの非帰零位置(開放位置ないし初期位置)
P5m 復針レバーの中間位置(帰零処理(帰零動作)が途中まで進行している位置)
P5w 復針レバーが突っ張り状態から脱したとき採る揺動位置
P7a 作動位置(停止位置)
P7i 初期位置(非停止位置)
Q1,Q2 間隙
S1 電気的発停信号
S2 電気的帰零信号
T 時計の厚さ方向
U 位置(突っ張りが生じる際に案内ピンが長穴内で採る位置)
Ua,Ub 部位
V1 クロノグラフ機構の初期状態(クロノグラフ帰零状態)
V2 クロノグラフ計測開始指示状態(又はクロノグラフ計測停止指示状態)
V3 クロノグラフ計測状態(又はクロノグラフ計測停止状態)
V4 クロノグラフ帰零指示状態
V4d 突っ張り状態
W1,W2 揺動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクロノグラフ真に嵌着された複数のハートカムと、
発停ボタンと、
帰零ボタンと、
時計本体の周方向に関して発停ボタン及び帰零ボタンのある位置の間の位置にある共通回動中心のまわりで発停ボタンの押込みに応じて回動される発停レバーと、
帰零ボタンの押込みに応じて前記共通回動中心のまわりで回動される帰零指示レバーと、
発停ボタンの押込みに応じた発停レバーの回動に応じて一端側において第一の方向に回動され、帰零ボタンの押込みに応じた帰零指示レバーの回動に応じて前記一端側において第二の方向に回動される復針伝えレバーと、
該復針伝えレバーの第二の方向への回動に伴う該復針伝えレバーの他端側の帰零指示方向への回動によって複数のハートカムを対応するハンマー部で帰零させる復針レバーであって、復針伝えレバーの第一の方向への回動に伴う該復針伝えレバーの他端側の発停方向への回動によって複数のハンマー部を対応するハートカムから離間状態にするか又は該離間状態に保つものと
を有するクロノグラフ時計。
【請求項2】
発停レバー及び帰零指示レバーが時計の厚さ方向に関して重なる相対位置にあり、発停レバー及び帰零指示レバーのうちのいずれか一方のレバーが、その出力側端部で薄板状の復針伝えレバーの前記一端に係合するように構成され、発停レバー及び帰零指示レバーのうちの他方のレバーが、その出力側端部で薄板状の復針伝えレバーの前記一端から該復針伝えレバーの薄板面に対して交差する方向に延びたピン状突出部に係合するように構成されている請求項1に記載のクロノグラフ時計。
【請求項3】
駆動エネルギ源として電池を備えると共に、該電池からの給電の基準電位を与えるバネ性金属薄板を備え、該金属薄板が、発停ボタン及び帰零ボタンの押込みに対するクリック感を与えるクリック感付与手段を備える請求項2に記載のクロノグラフ時計。
【請求項4】
前記クリック感付与手段が肩部を備えた発停ボタン押圧感付与用ばね部を有し、発停ボタンの押込みに応じて発停レバーが回動される際、該発停レバーが発停ボタン押圧感付与用ばね部の肩部から外れて押込まれるピン状係合部を備える請求項3に記載のクロノグラフ時計。
【請求項5】
発停レバーの回動が支持基板の外周縁に位置する係止部により係止されるように構成された請求項4に記載のクロノグラフ時計。
【請求項6】
前記クリック感付与手段が凸部を備えた復針伝えレバー位置決め用ばね部を有し、復針伝えレバーは、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムから離間した状態にする発停制御位置にある際に復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の一方の側に位置し、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムに当接状態にする帰零作動制御位置にある際に復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の他方の側に位置するピン状突起部を有し、該ピン状突起部が復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部を乗り越える際に復針伝えレバー位置決め用ばね部を弾性的に変形させるように構成された請求項3から5までのいずれか一つの項に記載のクロノグラフ時計。
【請求項7】
復針伝えレバーのピン状突起部が、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムに当接状態にする帰零作動制御位置に保つべく、復針伝えレバー位置決め用ばね部の前記凸部の前記他方の側にある場合に、帰零ボタンを最大限押込んで帰零指示レバーを最大限回動させた際、該帰零指示レバーの出力側端部と復針伝えレバーの対応する入力側端部との間に間隙が残るように構成された請求項6に記載のクロノグラフ時計。
【請求項8】
復針伝えレバーのピン状突起部が、復針レバーのハンマー部を対応するハートカムから離間した状態にする発停制御位置に保つべく、復針伝えレバー位置決め用ばね部の凸部の前記一方の側にある場合に、発停ボタンを最大限押込んで発停レバーを最大限回動させた際、該発停レバーの出力側端部と復針伝えレバーの対応する入力側端部との間に間隙が残るように構成された請求項6又は7に記載のクロノグラフ時計。
【請求項9】
時計の厚さ方向にみて、クロノグラフ下板とスイッチばねとの間に、発停レバー、帰零指示レバー、復針伝えレバー及び復針レバーが配置されている請求項1から8までのいずれか一つの項に記載のクロノグラフ時計。
【請求項10】
帰零ボタンの押圧に伴う帰零指示レバーの回動に応じて回動されクロノグラフ輪列を規正する停止レバーを備える請求項1から9までのいずれか一つの項に記載のクロノグラフ時計。
【請求項11】
モータの回転を秒クロノグラフ車に伝える秒クロノグラフ車中間車を停止レバーが規正するように構成され、秒クロノグラフ車がスリップ機構を備える請求項10に記載のクロノグラフ時計。
【請求項12】
復針レバーは、該復針レバーに対して復針伝えレバーから加えられる力と、復針レバーの複数のハンマー部に対して該ハンマー部に対応するハートカムから加わる力とが釣合うようにセルフアラインメント式に位置決めされて帰零動作を行うように構成されている請求項1から11までのいずれか一つの項に記載のクロノグラフ時計。
【請求項13】
復針レバーが復針伝えレバーからの力を受ける力入力部を備え、クロノグラフ時計は、復針レバーが該力入力部において復針伝えレバーからの力を受けた際に復針レバーの変位を案内する変位案内機構を有し、該変位案内機構が、二つの案内ピンと該案内ピンの夫々が嵌った案内用長穴状部とを備え、
二つの案内用長穴状部のうちの一方の案内用長穴状部は、復針レバーのハンマー部が対応するハートカムの頂点に当接する際に該一方の案内用長穴状部内で対応する案内ピンが位置する領域において該一方の案内用長穴状部の長手方向位置の側面に案内ピンが該一方の案内用長穴状部の長手方向に対して交差する向きに変位するのを許容する凹部を備える請求項1から12までのいずれか一つの項に記載のクロノグラフ時計。
【請求項14】
各案内ピンが時計の支持基板に突設されており、各案内用長穴状部が復針レバーに形成されている請求項13に記載のクロノグラフ時計。
【請求項15】
前記凹部が前記一方の案内用長穴状部の一方の側面に形成されている請求項13又は14に記載のクロノグラフ時計。
【請求項16】
復針レバーのハンマー部の接触面部が対応するハートカムの最小径接触部に当接する帰零位置に復針レバーが近づく際に該復針レバーに制動力が働くように、前記変位案内機構の案内用長穴状部が該案内用長穴状部に嵌合された案内ピンが案内用長穴状部の長手方向に相対変位されるのを妨害すべく該案内用長穴状部の側面から該案内用長穴状部の中央に向かって突出した制動用凸部が形成されている請求項13から15までのいずれか一つの項に記載のクロノグラフ時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−180122(P2011−180122A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271809(P2010−271809)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】