説明

クロピドグレルの製造方法

【課題】チエノ[3,2-c]ピリジン誘導体及びその塩の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】i)式(V)の化合物又はその塩を式(VII)のシアニドと反応させ、次いで式(VI)の化合物を添加し、式(IV)のラセミ化合物を得ること、ii)(±)又はその光学活性な(+)もしくは(−)形態の式(IV)の化合物を酸性もしくは塩基性反応体と反応させて式(II)の化合物又はその形状を保持する塩を得ること、iii)(±)又はその光学活性な(+)もしくは(−)形態の式(II)の化合物を、メタノールの存在下において酸性反応体と反応させて式(I)の化合物又はその形状を保持する塩を得ること、iv)最後に、式(I)の(±)化合物又はその塩をその光学異性体に分割することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の、下式(I)のチエノ[3,2-c]ピリジン誘導体及びその塩の製造方法に関する。
【化1】

(上式中、Xであるベンゼン環上の置換基は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、フッ素もしくはヨウ素を表す)
好ましくは、Xは2−クロロを表す。
【0002】
本発明はまた、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の、下式(II)の化合物及びその塩の製造方法に関する。
【化2】

(上式中、Xであるベンゼン環上の置換基は、水素又はハロゲン、例えばフッ素、塩素、フッ素もしくはヨウ素を表す)
好ましくは、Xは2−クロロを表す。これらの化合物は式(I)の化合物の製造用の有用な中間体である。
【0003】
式(I)及び(II)で表される化合物は1つの非対称炭素を有しており、従って式(I)もしくは式(II)の光学的に活性な化合物を得るため、ラセミ中間体/最終生成物を分割すること又は光学的に活性な中間体を用いることが有効である。
【背景技術】
【0004】
FR 2,215,948、FR 2,530,247及びFR 2,612,929に開示されているチエノ[3,2-c]ピリジン誘導体は医薬活性であり、抗凝集及び抗血栓特性を有している。その例は、「クロピドグレル」(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル)酢酸メチルエステル及びその医薬上許容される塩である。最近、その生物活性が(S)-(+)-立体異性体のみに見出された(US 4,847,265)。「クロピドグレル塩基」は油状の液体であり、医薬を製造するため、この塩基は医薬的に許容される塩に転化される。「クロピドグレル塩基」の好適な塩はタウロコレート、臭化水素及び硫酸により形成される。
【0005】
式(I)の化合物の報告された合成方法(US 4,529,596、GB 0420706及びGB 0466569)はα−ハロフェニル酢酸誘導体を用い、これは催涙性であり刺激性である。そのような化合物の合成方法は多くの工程を含み、用いる化学物質による多くの欠点を有し、通常取り扱い、スケールアップが困難であり、健康及び環境上の観点から好ましくない。さらに、この方法の収率は低い。文献に記載されている様々な他の合成方法は費用のかかるかつ危険な化学物質を用い、所望の生成物の収率を向上させない。
【0006】
最近、放射標識した(ベンゼン-U-13C)ラセミ(±)-クロピドグレルが、ベンゼン誘導体のオルトメタレーション/塩素化を用いる7%の収率における代謝研究の標準として製造された(Chem. Abst., 133:281711, 2000)。様々な他の方法がWO 98/51681、WO 98/51682、WO 98/51689、WO 99/18110、US 4,876,362、US 5,036,156、US 5,132,435、US 5,139170、US 5,204,469及びUS 6,080,875に開示されている。
【0007】
最近、硫酸水素クロピドグレル(形態II)の新規多形体が特許出願(WO 99/65915)に開示されており、その融点は176±3℃である。また、初期の米国特許(US 4,847,265)に開示されている化合物は約184±3℃の異なる融点を有することが記載されている。この多形体は共に明確なかつ特徴的なXRD及びIRスペクトルを有する。
【0008】
従って、本発明は、安価なかつ産業上有用な式(I)の化合物を高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主要な目的は、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(I)で表されるチエノ[3,2-c]ピリジン誘導体及びその塩の新規製造方法を提供することである。
【化3】

(上式中、Xは水素又はハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素もしくは沃素を表す)
【0010】
本発明の他の目的は、産業上有用なルートでラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(I)で表されるチエノ[3,2-c]ピリジン誘導体及びその塩の新規製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の詳細な目的は、硫酸水素塩としての(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル)酢酸メチルエステルの新規製造方法を提供することである。
【化4】

(上式中、Xは2-クロロ置換基である)
【0012】
本発明の好ましい目的は、産業上有用な方法によるクロピドグレル硫酸水素塩の新規製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の重要な目的は、産業上有用なルートにより、184±3℃の融点を有するクロピドグレルの多形体フォームIの新規製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、(+)-クロピドグレル硫酸水素塩を製造するために(+)及び(-)立体異性体の混合物又はクロピドグレルの左旋異性体を新規方法によりリサイクルすることである。
【0015】
本発明の他の目的は、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(II)の化合物(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ{3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド及びその塩の新規製造方法を提供することである。
【化5】

【0016】
本発明の他の目的は、好適な化学純度及びキラル純度を有するラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の、Xが2-クロロである式(II)の化合物及びその塩の新規製造方法を提供することである。好適な純度を有する式(II)の化合物のデキストロ異性体もしくはその塩は(+)-クロピドグレル硫酸水素塩の合成用の有用な中間体である。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドもしくは少量の光学鏡像異性体とのその混合物を(+)及び(-)異性体の1:1混合物に転化する新規方法を提供することである。
【0018】
また、本発明の目的は、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(III)の化合物(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル)酢酸及びその塩の製造方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、混合物中の(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)酢酸を(S)-(+)立体異性体に転化する新規方法を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、式(IV)の化合物(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル及びその塩の製造方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルもしくは少量の光学鏡像異性体とのその混合物を(+)及び(-)異性体の1:1混合物に転化する新規方法を提供することである。
【0022】
これらの方法は式(I)の化合物、特に(S)-(+)-クロピドグレル硫酸水素塩、多形体フォームIの簡単な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記及び他の目的は、スキームIに示すような、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(II)の化合物もしくはその塩を用いることによる本発明の方法により達成される。
【化6】

【0024】
所望により、本発明は、(+)-クロピドグレル硫酸水素塩の製造に用いることができる、(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを光学的に活性な(+)又は(-)形態に分割する方法を提供する。
【0025】
所望により、本発明は、(±)-2-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)酢酸を光学的に活性な(+)又は(-)形態に分割する方法を提供する。
【0026】
所望により、本発明は、(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを光学的に活性な(+)又は(-)形態に分割する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
従って、本発明は、Xが水素又はハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素もしくは沃素のいずれかを表す、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(I)の化合物及びその塩の製造方法を提供する。詳細には、本発明は、クロピドグレル硫酸水素塩の製造方法を提供する。
【0028】
式(I)もしくはその塩の製造方法は、スキーム1に示すように、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(II)
【化7】

の化合物又はその塩を用いる。
【化8】

【0029】
スキーム1における各中間体は1つのキラル中心を有する。従って、光学的に活性な生成物、例えば式(I)の化合物、特にクロピドグレル及びその塩を製造するため、第一工程からの光学的に活性な中間体を用いることが可能である。
【0030】
本発明は、スキーム1に示すように、以下の工程を含む式(I)の化合物及びその塩の製造方法を提供する。
1.ストレッカー反応により、スキーム2に示すように、式(IV)の化合物、(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを製造すること、
2.所望により、式(IV)の化合物のラセミ混合物をその光学的に活性な(+)及び(-)立体異性体に分割し、望まない立体異性体をラセミ化により工程に戻すこと、
3.ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(IV)の化合物又はその塩を、用いた出発材料を基準として、式(II)の化合物、(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド又はその光学的に活性な対応する(+)もしくは(-)形態に変換すること、
4.所望により、式(II)のラセミ化合物をその光学的に活性な(+)及び(-)立体異性体に分割し、望まない立体異性体をラセミ化により工程に戻すこと、
5.ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態の式(II)の化合物又はその塩を、用いた出発材料を基準として、光学的に活性な(+)及び(-)形態の式(I)の光学的に活性なもしくはラセミ化合物、(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートメチルエステル及びその塩に変換すること、
6.さらに、式(I)のラセミ/光学的に活性な化合物をその医薬上許容される塩に分割及び/又は変換し、その塩からラセミもしくは光学的に活性な式(I)の化合物を遊離させること。
【0031】
または、ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態のいずれかの式(IV)又は(II)の化合物は式(III)の対応する化合物に転化され、次いで式(I)の対応する化合物に転化される。
【0032】
ラセミ又は光学的に活性な(+)もしくは(-)形態のいずれかの式(IV)の化合物は式(I)の対応する化合物に直接転化される。
【0033】
所望により、式II、III及びIVの中間体の好適な酸付加塩が上記方法に用いられる。公的な酸は、酢酸、安息香酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、ゲンチシン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、塩酸、硫酸、臭化水素酸等より選ばれる。
【0034】
本発明の他の態様は、下式(IV)の新規中間体及びその塩の製造方法を提供することである。
【化9】

【0035】
本発明のさらに他の態様は、2級アミンを用いるストレッカー反応による、スキーム2に示すような、式(IV)で表される中間体の製造を含む(Organic Synthesis Collective Volume III, page no.275)。
【化10】

【0036】
式(IV)の化合物の製造方法は、式(V)のアミン又はその塩を式(VII)のシアニド誘導体(式中、Mはアルカリ金属、例えばNa、K、Li、もしくはHである)、トリメチルシリル(TMS)、及び式(VI)の2-クロロベンズアルデヒドと反応させることを含む。式(V)のアミンもしくはその塩の合成はFR 2608607に記載されている。
【0037】
上記反応は様々な方法で行うことができる。そのような方法のいくつかは上記スキーム2に示されている。最初に、式(V)のアミン又はその塩をシアニド(VII)(式中、Mは上記の通りである)と反応させ、次いで2-クロロベンズアルデヒド(VI)を加える。または、2-クロロベンズアルデヒド(VI)を式(VII)のシアニドで処理し、中間体シアノヒドリンを式(V)のアミンもしくはその塩と反応させる。他の方法において、式(VI)の2-クロロベンズアルデヒドを式(VIII)の亜硫酸水素誘導体(式中、M’はNa、K、Li等を表す)に加え、次いで式(VII)のシアニドと反応させ、最後に現場で式(V)のアミンもしくはその塩と反応させる。反応方法にかかわらず、得られる中間体(V)の収率は似ている。
【0038】
好ましい方法は、式(VIII)の亜硫酸水素誘導体への式(VI)の2-クロロベンズアルデヒドの添加を含む。形成した塩は、好適な反応体及び溶媒の存在下において式(VII)のシアニドにより処理され、最後に式(V)ノアミン又はその塩により処理される。
【0039】
好適な反応体は、酸触媒、例えば氷酢酸(Synthesis, 1989, 616-618)、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ポリリン酸等を含む。
【0040】
好適な溶媒は、親水性溶媒、プロトン性、非プロトン性であってよく、水、(C1-C4)アルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、DMSO、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸、プロピオン酸等、又はこれらの混合物を含む。好ましい溶媒は、様々な比の溶媒と水の混合物である。より好ましい反応媒体は、1:1〜1:10の比の水と(C1-C4)アルコールを含む混合物を含む。
【0041】
反応を非プロトン性もしくは親水性溶媒中で行う場合、相間移動触媒及び2相溶媒系が必要である。好適な相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムハリド、ベンジルトリメチルアンモニウムハリド等である。
【0042】
反応の間、ある種の添加剤を加えてもよい。そのような好適な添加剤はシクロ[(S)-ヒスチジン-(S)-フェニルアラニン]等である。
【0043】
反応温度は−30℃〜用いる溶媒の還流温度である。好ましい温度は0℃〜100℃であり、より好ましくは40℃〜80℃である。しかし、HCN(g)(スキーム2において中間体VII、M=H)を用いる場合、必要な温度は約−30℃〜−10℃である。
【0044】
この反応はN2、HeもしくはArのような不活性雰囲気内で行ってもよい。反応時間は1時間〜3日、より好ましくは2時間〜2日である。
【0045】
2-クロロベンズアルデヒド(VI)に対して式(V)の化合物、亜硫酸水素誘導体(VIII)、及びシアニド誘導体(VII)を1〜1.2当量の比で反応させることが好ましい。こうして得られるラセミシアノ化合物(IV)は光学的に活性な(+)及び(-)形態に分割される。
【0046】
こうして得られるシアノ化合物(IV)は、スキーム1に示すように、対応する式(III)の酸、式(II)ノアミド又は式(I)の酸に転化される(R.C.Larrock、"Comprehensive Organic Transformations", John Wiley & Sons, Inc., 1999, 2nd Ed., 815-818)。
【0047】
本発明の他の態様は、スキーム1に示すように、これらの中間体II及びIIIを式Iの化合物に転化することである。式II及びIIIの中間体の各(±)、(+)もしくは(-)異性体は式Iの化合物の対応する異性体に転化される。
【0048】
式(I)の化合物を得る好ましいルートは、(±)、(+)もしくは(-)異性体シアノ化合物(IV)及びその塩のいずれかを、好適な溶媒中の好適な酸/塩基反応体の存在下において、式(II)のアミド化合物に転化することを含む。その後、コノアミドを光学活性な(+)又は(-)形態もしくはその塩に分割し、光学活性なアミドを、好適な触媒及び反応体の存在下において光学活性な式(I)のエステルに転化する。
【0049】
式(I)のシアノ化合物を式(II)のアミド化合物へ転化する反応は、酸もしくは塩基を含む反応体の存在下において行ってよい。用いることができる好適な酸は、酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、鉱酸、例えば硫酸、HCl、HBr等の水溶液もしくは無水アルコールである。出発材料がラセミ混合物である場合は塩基が好ましい。用いることができる好適な塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムt-ブトキシド、又はこれらの混合物であり、好ましくはアルカリ金属水酸化物である。アルカリ金属水酸化物と共に、過剰の過酸化水素又は過酸化金属も上記反応に用いてよい。上記反応に好適な溶媒は水性、極性もしくはプロトン性溶媒、例えば水、(C1-C4)アルコール、アセトン、酢酸、ジメチルホルムアミド、THF、DMSO、ジオキサン、DME等又はこれらの混合物であり、好ましくは水、メタノールもしくはt-BuOH又はこれらの混合物からなる溶媒である。
【0050】
この温度は20℃〜250℃、好ましくは50℃〜150℃である。上記方法に用いる反応体は0.01〜1.2モル当量である。この反応はN2、HeもしくはArのような不活性雰囲気内で行ってよい。塩基性条件における反応は好ましくは不活性雰囲気で行われる。反応時間は1/2時間〜5日、好ましくは2時間〜2日である。
【0051】
ラセミ又は光学活性な(+)もしくは(-)形態の式(II)のアミド又はその塩は、好適な溶媒中で少なくとも1当量のメタノール及び酸の存在下、式(I)の対応するメチルエステルに転化される。
【0052】
用いることのできる好適な酸は、酢酸、ポリリン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、又は鉱酸(硫酸、HCl、HBr等を含む)を含み、これはアルコールに溶解した酸、アルコール中に溶解もしくは飽和した酸無水物のような様々な形態であってよく、このアルコールはメタノールであってよい。好ましい酸は1〜50当量比の濃硫酸である。好適な溶媒は極性もしくはプロトン性溶媒、たとえば親水性溶媒(メタノール、アセトン、酢酸、THF、DMSO、ジオキサン、DME等及びこれらの混合物を含む)であってよい。好ましい溶媒は少なくとも1当量のメタノールからなり、溶媒として作用するような大過剰であってもよい。ときには不活性共溶媒、例えばトルエン、キシレン等も用いてよい。
【0053】
温度は20℃〜250℃、好ましくは50℃〜150℃である。この反応はN2、HeもしくはArのような不活性雰囲気内で行ってよい。反応時間は3時間〜5日、好ましくは4時間〜2日である。
【0054】
ラセミ又は光学活性(+)もしくは(-)形態の式(IV)の化合物又はその塩を、好適な溶媒及び反応体の存在下において式(III)の対応する酢酸誘導体に転化することが可能である。好適な溶媒は水性もしくはアルコール性である。好適な反応体は酸並びに塩基を含む。
【0055】
ラセミ又は光学活性(+)もしくは(-)形態の式(IV)のシアノ化合物又はその塩を、文献に公知の方法により好適な溶媒中、少なくとも1当量の酸及び少なくとも1当量のメタノールの存在下において、式(I)のメチルエステルに直接転化することも可能である。
【0056】
ラセミ又は光学活性(+)もしくは(-)形態の式(III)の酸又はその塩は、少なくとも1当量のメタノール及び好適な溶媒中、好適な反応体の存在下において、式(I)の対応するメチルエステルに転化される。
【0057】
用いることができる好適な反応体は、塩化チオニル、酸塩化物、例えば塩化ピバロイル、アルキルクロロホルメート(エチルもしくはメチルクロロホルメート)、及びCOOH基を活性化する他の反応体を含む。好適な溶媒は極性もしくはプロトン性溶媒、例えばメタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、THF、DMSO、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジオキサン、DME等又はこれらの混合物である。好ましい溶媒は、少なくとも1当量のメタノールからなり、溶媒として作用するような大過剰であってもよい。温度は20℃〜250℃、好ましくは50℃〜150℃である。
【0058】
上記方法において用いられる反応体は0.01モル〜等モル比であってよい。この反応はN2、HeもしくはArのような不活性雰囲気内で行ってよい。反応時間は3時間〜5日、好ましくは3時間〜2日である。
【0059】
スキーム1に示すように、式(I)の化合物の製造方法は以下の利点を有する。
1)式(I)の化合物の製造に必要な工程数が少ない。
2)入手容易な反応体/化学物質を用いる。
3)反応条件が温和である。
4)各段階(I、II、III、IV、又はV)においてキラル/光学活性な中間体を得ることができる。
5)望ましくない異性体をラセミ化し、効率を高め、環境に対する負荷を少なくすることができる。
6)上記ファクターは上記方法のコスト効率を向上させる。
【0060】
式(I)、(II)、(III)及び(IV)の化合物は様々な方法により分割され、光学活性な式(I)、(II)、(III)及び(IV)の化合物が得られ、これは所望の立体化学のクロピドグレルが得られる(R.A.Sheldon, "Chirotechnology", Marcel Dekker, Inc. NY, Basel, 1993, 173-204、A.N.Collins, G.N.Sheldrack and J Crosby, "Chirality in Industry II", John Wiley & Sons, Inc. 1997, 81-98、E.L.Eliel and S.H.Wilen, "Stereochemistry of Organic Compound", John Wiley & Sons, Inc. 1999, 297-464)。
【0061】
分割法は、ラセミ混合物(式I、II、III又はIV)を好適な溶媒に溶解し、好適なキラル剤を添加することを含む。所望により、この媒体は約5%以下の水を含む。好適な溶媒は、ジアステレオマー塩が相違して沈殿するか否かによって選ばれる。ジアステレオマー塩の分離は自然に起こり又は共溶媒の添加又は塩析又は溶媒もしくは共溶媒の蒸発により起こる。または、この分離は塩の1つが沈殿するまで溶媒中で適当な温度において拡販することにより起こる。ジアステレオマー塩の精製は好適な溶媒中で還流することにより可能である。遊離塩基は好適な塩基剤を用いることによりその塩から遊離する。ジアステレオマー塩は水と有機溶媒の混合物に溶解もしくは懸濁され、攪拌しながら塩基により中和される。遊離塩基は水層を分離し、有機溶媒を蒸発させることにより得られる。
【0062】
分割の間に用いられる溶媒は、(C1-C4)アルコール、(C1-C4)ケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、THF、ジオキアン等のような溶媒もしくはその混合物を含み、用いる溶媒は所望により5%以下の水を含んでよいが、水の存在又はその量は重要ではない。分割に好適な温度範囲は0℃〜用いる溶媒の還流温度であり、好ましくは0℃〜80℃である。ジアステレオマー塩の形成に用いられる酸キラル剤は、酒石酸、マンデル酸、乳酸、カンファスルホン酸、マレイン酸、アミノ酸等を含む。
【0063】
好適な溶媒から再結晶を繰り返すことにより、沈殿した塩は所望のジアステレオマーの右旋性異性体の塩が豊富であり、一定の光学回転の生成物が得られる。
【0064】
ジアステレオマー塩の加水分解用の好適な塩基反応体は、5℃〜25℃の温度の水性媒体中の炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムを含む。
【0065】
最後に、式(II)、(III)、又は(IV)の化合物の所望の塩、又は式(I)の化合物の医薬上許容される塩は対応する立体異性体及び好適な酸から形成される。式(I)の光学的に純粋な(S)-(+)化合物は好適な温度において適当な溶媒中の70%〜98%の硫酸を用いてその硫酸水素塩に転化され、(+)-クロピドグレル硫酸水素塩多形体Iを与える。
【0066】
または、形成されたジアステレオマーは従来の精製方法、例えば分画結晶化、カラムクロマトグラフィー等により分離され、次いで塩を分裂させ、所望の立体化学の生成物を得ることができる。中間体I、II、III又はIVのR又はS立体異性体のいずれかのジアステレオマーを選択的に形成することができるキラル剤を用いることが好ましい。用いられるキラル剤は0.5〜1.1モル比である。
【0067】
(+)-右旋性及び(-)左旋性エナンチオマーのエナンチオマー純度の決定は、キラル希土類反応体(シフト反応体)の添加によるプロトンNMRにより又はキラル相を用いるHPLC並びに光学回転の測定により行われる。
【0068】
II、III又はIV化合物のジアステレオマー塩の立体化学は従来の方法、例えばX線結晶回折を用いて決定される。キラル化合物の立体化学は標準と比較することにより決定される。
【0069】
クロピドグレルの光学活性なエナンチオマーの医薬上許容される無機及び有機酸塩は、様々な酸性塩を用いて形成され、これは本発明の一部を構成するが、硫酸水素、ヒドロハリド、タウロコレート等に限定されない。
【0070】
詳細には、本発明の方法は、融点が184±3℃であるクロピドグレル硫酸水素塩を与え、これはクロピドグレル硫酸水素塩フォームIの特徴である。または、クロピドグレル硫酸水素塩フォームIIは公知の方法(WO 99/65915、FR 98 07464)により製造される。
【0071】
本発明の方法は、ラセミ化により望まない立体異性体をリサイクルする工程を含む。式II、III又はIVの中間体並びに最終生成物Iのすべてのラセミ化の条件は、等モル量の同じ溶媒及び触媒を含む。好適な触媒は塩基、例えばLDA(リチウムジイソプロピルアミド)、KOH、NaOH、K+-t-BuO-、NaOMe、NaH、KH等である。分割の間に用いられる好適な溶媒は、(C1-C4)アルコール、(C1-C4)ケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、THF、ジオキアン等のような溶媒もしくはその混合物を含み、用いる溶媒は所望により5%以下の水を含んでよい。分割に好適な温度は0℃〜用いる溶媒の還流温度であり、好ましくは0℃〜80℃である。
【0072】
本発明の方法を以下の実施例により説明する。これらの例は説明であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0073】
例1
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
水(27mL)中の8.98g(86.33mmole)の硫酸水素ナトリウムの溶液に、o-クロロベンズアルデヒド12.4g(86.33mmole)を加え、白色の沈殿を得た。この沈殿に、15g(0.107mole)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを加え、次いで4.4g(89.7mmole)のNaCN(15mLの水に溶解)を加えた。この反応混合物を40〜50℃に6時間加熱し、水(50mL)に注ぐことにより急冷した。この混合物を2×100mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。表題の生成物の収率は24g(97%)である。
【0074】
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、結果を以下に示す。
IRスペクトル(cm-1):2227(w, CN基)
マススペクトル(m/z):289.1(M+H)+
13C-NMR(CDCl3):δ136.46、132.78、132.38、130.69、130.46、130.38、129.90、126.73、124.96、123.01、115.09、59.12、49.30、47.66、25.47
1H-NMR(CDCl3):δ7.2-7.7(4H,m)、7.0(1H,d)、6.69(1H,d)、5.32(1H,s)、3.78(1H,d)、3.65(1H,d)、2.8-δ3.0(4H,m)
【0075】
例2
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
140.5g(1mol)のo-クロロベンズアルデヒド及び65g(1.01mol)のKCNを3.5Lのメタノールに加えた。この反応混合物に139.05g(1mol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン及び190mLの氷酢酸を加え、攪拌しながら60℃に20時間加熱した。8時間後、沈殿が現れ始め、次いで反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチル(2×25mL)で抽出した。減圧下で溶媒を除去し、残留物を例1と同様にして精製した。生成物の収率は187g(65%)であり、融点は123〜124℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0076】
例3
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
27.6g(266mmol)の亜硫酸水素ナトリウムを100mLの水に溶解し、38.2g(271mmol)のo-クロロベンズアルデヒドを100mLのメタノールに溶解した後加えた。粘稠な白色のスラリーが得られ、これを60℃に1時間加熱し、次いで36.97g(266mmol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを40℃において加え、2時間攪拌した。この反応混合物に50mLの水に溶解した17.29g(266mmol)のKCNを注意して加え、40℃に5〜6時間加熱を続け、白色の沈殿を得た。この反応混合物を例1と同様にして処理し、得られた収率は54.6g(72%)であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0077】
例4
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
4.5g(25.64mmol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]-5-ピリジニウムヒドロクロリドを10℃にて2mLの氷水中の1.95g(30mmol)のシアン化カリウムの溶液に加え、次いで5mLの濃塩酸を0℃にて滴加した。HClを添加した後、50mLのメタノールに溶解した3.3g(23.47mmol)のo-クロロベンゼンを滴加した。この反応混合物を室温に3日間保持し、その後50℃に3時間保持した。pHはNH4OHを滴加することにより7.5〜8.0に調整し、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。溶媒を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。得られた生成物の収率は1.67g(18%)であり、融点は122〜124℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0078】
例5
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
6.25g(44.46mmol)のo-クロロベンズアルデヒドを60mLのトルエンに溶解した。同じフラスコに、10mLの氷酢酸及び1.24g(4.343mmol)のシクロ[(S)-ヒスチジン-(S)-フェニルアラニン]を加え、温度を−25℃に下げた。次いで7g(50.35mmol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを加え、反応フラスコを−25℃で6時間HCNガスでパージし(30バブル/分の速度)、その後31℃で2日間攪拌した。真空下で溶媒を除去し、残留物を例1と同様にして精製した。得られた生成物の量は5.5g(43%)であり、融点は124〜125℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0079】
例6
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
例5と同様にし、104.3g(1mol)の亜硫酸水素ナトリウム及び144.39g(1.02mol)のo-クロロベンズアルデヒドから付加物を形成し、これに150g(1.078mol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを31℃にて加え、1時間攪拌した。102gのTMS−CNを滴加し、温度を31℃に6時間保持し、白色の生成物が得られ、これを単離し、例1と同様にして精製した。得られた収率は30g(10%)であり、融点は123〜124℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0080】
例7
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
水(20mL)に溶解した19.5g(250mmol)のKCNに43g(250mmol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを加え、次いで50mLの濃塩酸を滴加した。添加終了後、100mLのメタノール中の33g(230mmol)のo-クロロベンズアルデヒドの溶液を滴加し、31℃にて8時間攪拌した。NH4OHを用いて反応混合物のpHを7.5〜8.0に調整し、生成物を酢酸エチルで抽出し(2×500mL)、水(2×500mL)、塩水(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。減圧下で溶媒を蒸発させ、50g(74%)の生成物を得た。その融点は約123〜125℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0081】
例8
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
35mLの水中の35.5g(342mmol)の亜硫酸水素ナトリウムの溶液に49.1g(349mmol)のo-クロロベンズアルデヒドを滴加し、その際、固体付加物がすぐに形成した。これに50g(284.9mmol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを加え、5時間還流した。精製することにより40g(40%)の生成物が得られた。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例1で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0082】
例9
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)
123.83g(880mmol)のo-クロロベンズアルデヒド及び44g(897mmol)のシアン化ナトリウムを100mLのメタノールと水の混合物(1:1)に加えた。これに150g(1070mmol)の6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジンを加え、次いで10mLの濃塩酸を加え、31℃にて2日間攪拌した。NH4OHを用いて反応混合物のpHを7.5〜8.0に調整した。生成物を酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、水(2×50mL)及び塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、例1と同様にして単離した。白色固体生成物の量は33g(13%)であった。
【0083】
例10
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
48g(0.166mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを240mLのt-BuOHに懸濁し、18.26g(0.332mol)のKOHを1回で加え、30℃に冷却し、240mLの水を加え、20分攪拌した。下の水層を分離し、720mLの冷水(5〜10℃)を加え、水(2×50mL)、塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで減圧下で溶媒を蒸発させることにより単離した。ヘキサンで処理すると個体が得られた。生成物の収率は48g(94%)であった。
【0084】
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、結果を以下に示す。
IRスペクトル(cm-1):1656(s, C=O基)、2333.7(N−H)
マススペクトル(m/z):307.2(M+H)+
13C-NMR(CDCl3):δ173.82、135.32、133.42、133、130.27、129.99、126.98、125.18、122.98、69.12、50.77、49.10、25.82
1H-NMR(CDCl3):δ7.4-7.5(4H,m)、7.24(1H,d)、7.0(1H,s)、6.66(1H,d)、6.0(1H,s)、4.88(1H,d)、3.61(2H,q)、2.88(4H,m)
融点:125〜127℃
【0085】
例11
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
例1〜9に従って製造した100mg(0.3466mmol)の式(IV)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを5mLのHClに溶解し、1mLのトリフルオロ酢酸及び5mLのt-ブタノールを加え、4時間還流した。反応終了後、例10と同様にして生成物を単離した。この生成物の収率は40mg(38%)であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0086】
例12
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
100mg(0.346mmol)の式(IV)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(例1〜9に従って製造)に5mLの蟻酸及び5mLの濃塩酸を加え、この反応混合物を25〜30℃にて48時間攪拌し、その後約100℃にて6時間還流し、25〜30℃にて8日間攪拌した。反応終了後、例10と同様にして生成物を単離した。この生成物の収率は50mg(47%)であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0087】
例13
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
例1〜9に従って製造した200mg(0.694mmol)の式(IV)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを5mLのHBr及び5mLのH2Oに加え、室温で72時間攪拌した。この反応混合物を100℃にて11時間還流し、例10と同様にして生成物を単離した。この生成物の収率は50mg(47%)であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0088】
例14
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
1g(3.47mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを5mLのH2SO4(50%)に溶解した。この反応混合物に0.405gの無水NaClを加え、2〜3時間還流した。反応の最後において、例10と同様にして生成物を単離した。この生成物の収率は600mg(57%)であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0089】
例15
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
1g(3.47mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを5g(5mmol)のHClOに溶解し、この反応混合物に10mLのH2Oを加えた。この反応混合物を105℃にて7時間還流し、その後室温にて12時間攪拌した。10%w/vのNaOH溶液を用いてpHを10〜12mで高め、その後50mLのジクロロメタンで抽出した。有機層を単離し、水で洗浄し、減圧下で蒸発させた。残留物をヘキサンで処理し、50mg(47%)の固体が得られ、その融点は125〜127℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0090】
例16
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
1g(3.47mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを10mLのt-BuOHに懸濁し、277mg(6.925mmol)の粉砕したNaOHを攪拌しながら加えた。この反応混合物を80〜82℃にて4時間還流し、その後室温に冷却した。酢酸エチルによる抽出によって生成物を単離した。有機抽出液を蒸発させ、油状の物質をヘキサンで処理し、400mg(38%)の固体を得た。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0091】
例17
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
3g(0.01mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを50mLのアセトンに懸濁した。この溶液に、10mLの水に溶解した1g(0.023mol)のNaOHを加え、次いで5mLのH22(0.05mol、30%w/v)を1回で加え、3時間還流した。この反応混合物を室温に冷却し、5mLのH22(0.05mol、30%w/v)を再び加え、12時間攪拌した。過剰の水を加えることにより生成物を単離し、1Lの酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を蒸発させ、2.8gの油状の物質を得た。これをヘキサンで処理し、1g(31%)の固体を得た。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0092】
例18
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
30mLのイソプロピルアルコールに懸濁した10g(0.0346mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルに3.9g(0.0589mol)の粉砕したKOH(85%)をゆっくり加え、この混合物を温め、120mLの水を加えた。希塩酸を用いて水層のpHを7にした。白色固体沈殿を濾過し、100mLの水で洗浄した。生成物の収率は9g(85%)であり、融点は122℃であった。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例10で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0093】
例19
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド硫酸水素塩(II)
2g(6.48mol)の式(IV)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを10mLのアセトンに溶解した。この反応混合物に1mLの硫酸を加え、0.5時間攪拌した。その後、5mLのジエチルエーテルを加え、室温において一晩攪拌し、塩を得た。この塩2g(76%)を濾過によって単離し、アセトンで洗浄した。
融点:199.1℃
IRスペクトル:1682.8、3116(cm-1)
【0094】
例20
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)酢酸(III)
100g(0.3455mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを2mLのt-ブタノールに溶解し、1.5mLのHClを加えた。この反応混合物を100℃にて9時間還流した。その最後において、反応終了後、水を加え、10%KOH溶液によりpHを4にした。生成物を5mLのジクロロメタンで抽出し、上記例と同様にして処理した。収率は40mg(38%)であった。
【0095】
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、結果を以下に示す。
IRスペクトル(cm-1):1637.5(s, C=O基)、339.3(O−H)
マスピーク(m/z):308.1(M+H)+
1H-NMR(δppm):δ7.22-7.89(4H,m)、δ7.11-7.12(1H,d)、δ6.61-6.63(1H,d)、δ3.57-3.67(2H,d)、δ4.13(2H,s)、δ3.32-3.42(2H,s)
【0096】
例21
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)酢酸(III)
5g(17.33mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルを100mLのHClに加え、この混合物を2日間攪拌し、その後15時間還流した。その最後において、反応混合物を水に加え、10%KOH溶液によりpHを4にした。生成物を2Lのジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、有機層を蒸発させて残留物を得た。この残留物を精製し、2g(38%)の固体を得た。
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、例20で得られた生成物と同一であることが見出された。
【0097】
例22
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
10g(32.62mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(例15に従って製造)を100mLのメタノール中の19.8g(161.7mmol)のDMFDMA(ジメチルホルムアミドジメチルエチルアセタール)と混合した。この混合物を70℃で14時間還流した。その後、この反応混合物を水中で冷却し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を減圧下で蒸発させ、5gの油状生成物を得た(48%)。このオイルをさらに処理しないで用いてエステルの塩(I)を製造した。
【0098】
例23
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
15g(0.0490mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを攪拌しながら105mLのメタノールに溶解した。この溶液に、室温において1.5時間かけて45mL(0.823mol)の濃硫酸(98%)を滴加した。その後、この反応混合物を80℃で26時間還流し、次いでメタノールを蒸発させた。この残留物に0℃〜5℃において200mLの酢酸エチルを攪拌しながら加えた。添加後、300mLの水に溶解した99g(1.764mol)のKOHを加え、0.5時間攪拌した。最後に、反応混合物を濾過し、静置した。有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥した。溶媒を蒸発させ、油状の生成物を得た。収率は10g(64%)であった。
【0099】
例24
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)
例22に従って製造した10gの(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを100mLの氷冷アセトンに溶解し、0℃〜5℃において2mLの濃硫酸を加えた。この溶液に、室温において1.5時間かけて45mL(0.823mol)の濃硫酸(98%)を加えた。形成した白色の結晶を濾過によって単離し、20mLのアセトンで洗浄した。得られた生成物を真空オーブン中で50℃にて乾燥させた。表題の生成物の収率は7.2g(56%)であった。
【0100】
例25
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
2g(0.00652mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド及び2mL(0.0308mol)のメタンスルホン酸及び20mLのメタノールを混合し、この溶液を85℃で12時間還流した。減圧下で過剰の溶媒を除去した。0℃において炭酸水素ナトリウムの水溶液によりpHを約9に調整し、生成物を70mLの酢酸エチルで抽出した。合せた有機抽出液を無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた残留物を濃縮し、窒素雰囲気において保存し、塩に転化するまで冷蔵庫内に保存した。表題の生成物の収率は0.419g(20%)であった。
【0101】
例26
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
1g(0.00326mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを20mLのメタノールに溶解し、85℃で還流した。還流の間、10mLのポリリン酸を1時間かけて滴加し、還流を6時間続けた。減圧下において過剰の溶媒を除去した。この残留物に、0℃において50mLの酢酸エチルを加え、NaHCO3水溶液によりこの反応混合物をpH9の塩基性にした。2層に分離し、有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた残留物を、流出液としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた生成物を窒素雰囲気において保存し、塩に転化するまで冷蔵庫内に保存した。表題の生成物の収率は310mg(30%)であった。
【0102】
例27
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
1g(0.00326mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを攪拌しながら0℃において2mLのトルエンに溶解し、次いで1mLの四塩化チタンを加え、0℃で1時間攪拌した。その後、18mLのメタノールを加え、29℃において36時間攪拌し、3時間還流した。減圧下において溶媒を蒸発させ、残留物を0℃において無水炭酸ナトリウムに加え、生成物を20mLの酢酸エチルで抽出し、有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、流出液としてヘキサン:酢酸エチルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた生成物を窒素雰囲気において保存し、塩に転化するまで冷蔵庫内に保存した。表題の生成物の収率は0.157g(12〜15%)であった。
【0103】
例28
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
5g(16.31mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドに25mLのPOCl3を攪拌しながら加えた。内容物をアミドが完全になくなるまで(約4時間)還流した。その後20mLのメタノール及び5mLの濃H2SO4を加え、室温において1時間攪拌した。次いでこの反応混合物を1時間還流した。この反応混合物を0℃のNa2CO3水溶液により冷却し、200mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮し、流出液としてヘキサン:酢酸エチルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた生成物を窒素雰囲気において保存し、塩に転化するまで冷蔵庫内に保存した。表題の生成物の収率は0.943g(18%)であった。
【0104】
例29
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
1g(0.00326mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを10mLのメタノールに溶解した。この反応混合物を0℃においてHCl(g)で飽和させ、室温において4時間攪拌し、6時間還流した。減圧下において溶媒を除去した。この残留物に10mLの酢酸エチル及びpHが9になるまでNaHCO3水溶液を加えた(0℃)。有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。残留物を、流出液としてヘキサン:酢酸エチルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた生成物を窒素雰囲気において保存し、塩に転化するまで冷蔵庫内に保存した。表題の生成物の収率は0.188g(18%)であった。
【0105】
例30
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
1g(0.00326mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドに、3g(24.2mmol)のDMFDMA(ジメチルホルムアミドジメチルアセタール)及び10mLのメタノールを加えた。この反応混合物を70℃において14時間還流し、次いで水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。合せた有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。残留物を、流出液としてヘキサン:酢酸エチルを用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。表題の生成物の収率は500mg(48%)であった。
【0106】
例31
(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
a)100mLのアセトン中の5g(16.31mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(例10〜15に示すようにして製造)及び4.15g(16.2mmol)の(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸一水和物の溶液を室温において20時間攪拌した。次いで、これを冷凍庫に1週間保存した。減圧下において溶媒を蒸発させることにより数個の結晶が現れ、数日冷凍庫内で結晶化を繰り返し、3.3g(75%)の(S)-2-(2-クロロフェニル)-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(+)カンファスルホン酸塩を得た。この塩を、一定の旋光が得られるまでアセトン中の再結晶化によりさらに精製した。
【0107】
得られた生成物を乾燥した。得られた生成物の典型的な物理化学特性は以下の通りである。
融点:223〜225℃(dec.)
SOR:+51°(C=1、MeOH)
【0108】
b)3.3gの(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(+)カンファスルホン酸塩を20mLの飽和Na2CO3水溶液に加え、生成物を20mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。生成物はオイルであり、これを精製すると、1.6gの白色結晶が得られた(64%)。
【0109】
得られた生成物をIRスペクトル、マススペクトル、13C-NMR及び1H-NMRにより測定し、結果を以下に示す。
融点:153〜154℃
SOR:+41°(C=1、MeOH)
光学純度:99.5%、キラルHPLCカラムによる
IRスペクトル(cm-1):1656(s, C=O基)、2333.7(m, C−N)、3357.9(s, N−H)
マスピーク(m/z):307.2(M+H)+
13C-NMR(CDCl3):δ173.25、134.84、132.87、132.65、129.98、129.56、129.0、126.72、124.87、122.64、68.65、50.43、48.73、25.28
1H-NMR(CDCl3):δ7.4-7.5(4H,m)、7.07(1H,d)、7.06(1H,d)、6.66(1H,d)、6.5(1H,s)、4.9(1H,s)、3.6(2H,q)、2.88(4H,m)
HPLC純度:99.85%
【0110】
例32
(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
a)2g(6.5mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを30mLのアセトンに加えた。10mLのアセトン中の0.82g(3.28mmol)の(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸一水和物を、15〜20℃において加えた。この反応混合物をさらに5分攪拌し、数個の結晶が形成した。減圧下において溶媒を蒸発させ、次いで反応混合物を8度以下の冷条件に保存した。形成した沈殿を濾過し、溶媒で洗浄した。表題の生成物の収率は1.2g(60%)であり、融点は223〜225℃であり、[α]D=+51°(C=1、CH3OH)であった。
【0111】
b)50mLの水中の1.1gの(+)-(S)-(2-クロロフェニル)-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(1S)-(+)カンファ-10-スルホン酸塩の懸濁液に50mLの飽和Na2CO3水溶液を加えた。この反応混合物を数分間攪拌し、次いで100mLの酢酸エチルを加えた。有機層を単離し、蒸留して表題の生成物を得た。得られた生成物の量は600mg(60%、ラセミ混合物に存在する右旋異性体を基準)であった。
【0112】
得られた生成物の物性は以下の通りであった。
融点:149〜153℃
[α]D=+31°(C=1、CH3OH)、%ee=97.24%
【0113】
例33
(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
a)5g(16.3mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを60mLの酢酸エチルに加えた。2g(8.6mmol)の(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸一水和物を少量の水に溶解し、上記溶液に1回で加え、35〜40℃において攪拌した。短時間で塩が形成し、これを単離し、50mLのアセトンで洗浄し、乾燥した。得られた生成物の量は1.81g(36%)であった。
【0114】
得られた生成物の物性は以下の通りであった。
融点:223〜225℃
[α]D:+52.12°(C=1、CH3OH)
【0115】
b)100mLの水中の1.8gの(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(1S)-(+)カンファ-10-スルホン酸塩の懸濁液に50mLの炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。この反応混合物を攪拌後、150mLの酢酸エチルを加えた。合わせた有機層を蒸留し、表題の生成物を得た。得られた生成物の量は1g(56%)であった。
【0116】
得られた生成物の物性は以下の通りであった。
融点:153〜154℃
[α]D=+42°(C=1、CH3OH)、%ee=100%(キラルHPLCカラムクロマトグラフィーによる)
【0117】
例34
(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
a)5g(0.016mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(I)を60mLの酢酸エチルに加え、この溶液に5mLの水中の2g(0.0086mol)の(1S)-(-)-カンファ-10-スルホン酸一水和物を1回で加えた。この反応混合物を周囲温度において1時間攪拌した。その後、この反応混合物を冷凍庫に1週間保存し、数個の結晶がみられた。その後、減圧下で溶媒を蒸発させ、冷条件で保存し、塩が沈殿し、これを濾過し、50mLのアセトンで洗浄した。得られた生成物の量は1.7g(39%)であった。
【0118】
得られた生成物(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド及びその(-)-CSA塩の物性は以下の通りであった。
融点(-)-CSA-(-)アセトアミド:219〜220℃
[α]D(-)-CSA-(-)アセトアミド:−52.12°(C=1、CH3OH)
【0119】
b)100mLの水中の1.6gの(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(1R)-(-)カンファ-10-スルホン酸塩の懸濁液に50mLの炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。この混合物を攪拌後、150mLの酢酸エチルを加えた。有機層を抽出し、合わせた有機層を蒸留し、表題の生成物を得た。得られた生成物の量は900mg(36%)であった。
【0120】
得られた生成物の物性は以下の通りであった。
融点:145〜149℃
[α]Dアセトアミド:−36.49°(C=1、CH3OH)
【0121】
例35
(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)
15gの(S)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(0.0489mol)を例23と同様にして対応するエステルに転化した。このエステルを例24に示す方法により、その硫酸水素塩に転化した。得られた生成物の量は7g(55.5%)であり、融点は184〜185℃である。
【0122】
得られた生成物の融点、IRスペクトル及びXRDはEP 281459及びUS 4847265で得られた生成物、すなわちクロピドグレル硫酸水素塩のフォームI多形体のものと類似している。
【0123】
得られた生成物の物性は以下の通りであった。
[α]D:+55°(C=1、CH3OH)
融点:185℃±2℃
IRスペクトル:2980、1755、1224、1175及び840
XRDはWO99/65915に報告されているフォームIのXRDと一致した。
【0124】
例36
(R)-(-)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)
上記例34で得られた5gの(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを例23と同様にして対応するエステルに転化した。このエステルを例24に示す方法により、その硫酸水素塩に転化した。得られた生成物の量は3.01g(44%)であった。
【0125】
得られた生成物の物性は以下の通りであった。
[α]D:−52°(C=1、CH3OH)
【0126】
例37
(S)-(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)
a)10g(0.0185mol)の(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドの(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸塩を0℃において40mLのメタノールに溶解した。この溶液に15mL(0.28mol)の濃H2SO4を1.5時間かけて滴加した。徐々に反応温度が上昇し、26時間還流した。その最後において、減圧下で溶媒を蒸留した。残留物を120mLの酢酸エチルと混合し、炭酸ナトリウム水溶液によりpHを9〜10に調整した。有機層を単離し、無水Na2SO4上で乾燥し、真空下で蒸発させた。得られた生成物を流出液としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。合せた流出液を減圧下で蒸発させ、5.76g(97%)の生成物を得た。
【0127】
b)例24の方法により、2gの(S)-(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートを硫酸水素塩に転化した。得られた生成物は2.2g(84%)であり、例35で得られた生成物と同一であった。
【0128】
例38
(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)の多形体I
52.5mLの氷冷アセトンを、0℃において攪拌しながら17.5gの(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートに加えた。3.6mLの濃H2SO4を滴加し、温度を5℃以下の保った。さらに20mLのアセトンを加え、この反応混合物を室温において4時間攪拌した。沈殿を単離し(17g、74%)、真空下50℃を越えない温度において乾燥した。
【0129】
得られた生成物の特性は、以下に示すように例35で得られたものと同一であった。
比旋光:+54°(C=1、CH3OH)
融点:185℃±2℃
IR及びXRDは文献に報告されたものと一致した。
【0130】
例39
(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)の多形体I
7.6mLのアセトンを2.1gの(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートに加え、透明な溶液を得た。この溶液に、0.887gのH2SO4(80%)をゆっくり加え、窒素雰囲気において温度を約20℃に保った。その後、この反応混合物を−20℃に2時間保持し、次いで温度を室温(20℃)にした。この反応混合物を20〜25℃において攪拌した。沈殿を単離し(600mg)、真空下50℃を越えない温度において乾燥した。
【0131】
得られた生成物の特性は、以下に示すように例35で得られたものと同一であった。
比旋光:+54.03°(C=1、CH3OH)
融点:185℃±1℃
IR及びXRDは文献に報告されたものと一致した。
【0132】
例40
(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)の多形体I
5mLのアセトンを2gの(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートに加え、25〜30℃において攪拌した。反応混合物の温度を25から65℃に高め、65℃に5分間保った。50〜52℃の温度において、0.676gの濃H2SO4を加えた。この反応混合物を52℃から5℃に冷却し、さらにアセトンを加え、5分間攪拌した。その後、この反応混合物を20〜25℃において12時間攪拌し、得られた沈殿を濾過し、5mLのアセトンで洗浄し、残留物を真空オーブンで乾燥した。得られた表題の生成物の収率は1.27g(47%)であった。
【0133】
得られた生成物の特性は、以下に示すように例35で得られたものと同一であった。
比旋光:+54.03°(C=1.89、CH3OH)
融点:185℃±1℃
キラル純度:99.80%(ee)
IR及びXRDは文献に報告されたものと一致した。
【0134】
例41
(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート硫酸水素塩(I)の多形体I
5mLのアセトンを1.98gの(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートに加え、25〜30℃において攪拌した。反応混合物の温度を25から50〜52℃に高め、0.7gの濃H2SO4を攪拌しながら加え、反応混合物を0℃〜−5℃に10分間冷却した。その後、この反応混合物を25〜30℃において12時間攪拌し、得られた沈殿を濾過し、5mLのアセトンで洗浄し、残留物(1.6g、62%)を真空オーブンで乾燥した。
【0135】
得られた生成物の特性は、以下に示すように例35で得られたものと同一であった。
比旋光:+55.96°(C=1.89、CH3OH)
融点:185℃±1℃
キラル純度:99.85%(ee)
IR及びXRDは文献に報告されたものと一致した。
【0136】
例42
(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)のラセミ化
20gの式(II)の左旋性(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドの混合物及び100mLのt-ブタノール中の11gのカリウムt-ブトキシドを25℃〜30℃において30分間攪拌した。反応終了後、反応混合物を750mLの冷水に注ぎ、黄色の沈殿を得た。得られた固体を濾過し、メチレンジクロリドに溶解した。有機層を2×100mLのDM水で洗浄し、濃縮して18gの対応するラセミアミド、すなわち(±)-2-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを得た。ラセミアミド(II)の比旋光は±1°(C=1、CH3OH)であった。
【0137】
例43
(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)のラセミ化
1gの式(II)の左旋性(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドの混合物及び20mLのDMSO中の1gのカリウムt-ブトキシドを50℃〜60℃において3時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を150mLの冷水に注ぎ、黄色の沈殿を得た。得られた固体を濾過し、メチレンジクロリドに溶解した。有機層を2×25mLのDM水で洗浄し、濃縮して0.8gの対応するラセミアミド、すなわち(±)-2-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを得た。ラセミアミド(II)の比旋光は±0.5°(C=1、CH3OH)であった。
【0138】
例44
(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)のラセミ化
1gの式(II)の左旋性(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドの混合物及び乾燥テトラヒドロフラン中の250mgの水素化ナトリウムを25℃〜30℃において3時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を150mLの冷水にゆっくり注ぎ、黄色の沈殿を得た。得られた固体を濾過し、メチレンジクロリドに溶解した。有機層を2×25mLのDM水で洗浄し、濃縮して0.95gの対応するラセミアミド、すなわち(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを得た。
【0139】
例45
(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)のラセミ化
1gの式(II)の左旋性(R)-(-)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドの混合物及び100mLのDMSO中の21gのカリウムt-ブトキシドを50℃〜60℃において3時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を750mLの冷水に注ぎ、黄色の沈殿を得た。得られた固体を濾過し、メチレンジクロリドに溶解した。有機層を2×100mLのDM水で洗浄し、濃縮して0.8gの対応するラセミアミド、すなわち(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを得た。
【0140】
例46
(S)-(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
5gの(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを35mLのメタノールに溶解し、この溶液を0〜−5℃に冷却した。15mLの濃H2SO4(98%)をゆっくり加え、温度を−5℃に保った。添加終了後、この反応混合物を室温で30分攪拌した。溶液を60℃にて36時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で溶媒を蒸発させた。残留物を200mLの冷水に加え、−5℃に冷却した。反応混合物のpHは炭酸ナトリウム水溶液を用いて9〜10に調整した。残留物を100mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で蒸発させた。合せた流出液を減圧下で蒸発させ、3.2gの粗精製物を得た。これを流出液としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0141】
例47
(S)-(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
5gの(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを45mLのメタノールに溶解し、次いで15mLのトルエン、5mL(0.28mol)の濃H2SO4をすぐに加え、さらに10mLの濃H2SO4をゆっくり加え、その間温度を90℃に保った。その後、この反応混合物を90℃で13時間還流した。減圧下で溶媒を蒸発させた。残留物に50mLの水を加え、反応混合物のpHを炭酸ナトリウム水溶液を用いて9〜10に調整した。残留物を100mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で蒸発させた。合せた流出液を減圧下で蒸発させ、2.8gの粗精製物を得た。これを流出液としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0142】
例48
(S)-(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
5gの(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを50mLのメタノールに溶解し、この溶液を−15℃に冷却した。15mLの濃H2SO4(98%)を1時間かけて加え、その間温度を−15℃に保った。添加終了後、この反応混合物は徐々に昇温し、31℃で30分攪拌し、次いで70℃で21時間還流した。減圧下で溶媒を蒸発させ、残留物に50mLの水を加え、30分攪拌し、次いで−5℃に冷却した。反応混合物のpHは炭酸ナトリウム水溶液を用いて9〜10に調整した。残留物を100mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で蒸発させた。得られた生成物を流出液としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製した。合せた流出液を減圧下で蒸発させ、3.8gの精製した生成物を得た。
【0143】
例49
(S)-(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)
5gの(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミドを20mLのメタノールに溶解し、この溶液を65〜70℃に温めた。15mL(0.28mol)の冷却した濃H2SO4(98%、−15℃)を1時間かけて加え、その間温度を−15℃に保った。添加終了後、この反応混合物を70℃に16時間加熱した。減圧下で溶媒を蒸発させ、残留物に50mLの水を加え、30分攪拌し、次いで−5℃に冷却した。反応混合物のpHは炭酸ナトリウム水溶液を用いて9〜10に調整した。残留物を100mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で蒸発させた。合せた流出液を減圧下で蒸発させ、2.8gの粗精製物を得た。これを流出液としてヘキサン:酢酸エチル(9:1)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、2gの表題の化合物(I)及び1gの出発材料(S)-(+)-(II)を得た。
【0144】
例50
(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(II)
a)100mLのアセトン中の5g(16.31mmol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(例10〜15に示すようにして製造)及び4.15g(16.2mmol)の(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸一水和物の溶液を20時間温め、次いで10℃以下の温度に保存した。数個の結晶が現れ、母液を濃縮し、再結晶化を繰り返した。その後、冷条件に数日保存し、3.1g(70%)の(S)-2-(2-クロロフェニル)-(4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド(+)-カンファスルホン酸塩を得た。この塩を、一定の比旋光が得られるまでアセトン中の再結晶化によりさらに精製した。
【0145】
得られた生成物を乾燥した。得られた生成物の物性は以下の通りである。
融点:223〜225℃(dec.)
SOR:+52°(C=1、MeOH)
【0146】
b)3.1gの(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド10-D-カンファスルホン酸塩を20mLの飽和Na2CO3溶液に加え、生成物を20mLの酢酸エチルで抽出した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、減圧下で濃縮した。生成物はオイルであり、これを精製すると、1.5gの白色結晶が得られた(60%)。
【0147】
例51
過剰の(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)を含む混合物からの(-)立体異性体のキラル除去
2g(0.0173mol)のメチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(eeは80%)を10mLのアセトンに溶解し、この反応混合物を10分攪拌し、次いで還流した。この反応混合物に0.8mLの水中の1.49gの(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸水和物を加え、次いで1mLのアセトンを加えた。次いで、反応混合物全体を1時間還流し、徐々に冷却した。その後室温で一晩攪拌した。透明な溶液を0〜−5℃で冷却し、沈殿が得られた。形成した塩を酢酸エチルと水に加え、NaHCO3により塩基性にし、有機層を水で洗浄し、減圧下で濃縮し、キラル純度=99.85%(+)異性体(ee=99.7%)の遊離塩基を0.386g得た。
【0148】
例52
過剰の(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)を含む混合物からの(-)立体異性体のキラル除去
2g(0.0173mol)のメチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(eeは90%)を10mLのアセトンに溶解し、この反応混合物を10分攪拌し、次いで還流した。この反応混合物に0.8mLの水中の1.49gの(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸水和物を加え、次いで1mLのアセトンを加えた。次いで、反応混合物全体を1時間還流し、徐々に冷却した。その後室温で一晩攪拌した。透明な溶液を0〜−5℃で冷却し、沈殿が得られた。形成した塩を酢酸エチルと水に加え、NaHCO3により塩基性にし、有機層を水で洗浄し、減圧下で濃縮し、キラル純度=99.85%(+)異性体(ee=99.7%)の遊離塩基を0.386g得た。
【0149】
例53
過剰の(+)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)を含む混合物からの(-)立体異性体のキラル除去
2g(0.0173mol)のメチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(eeは95%)を10mLのアセトンに溶解し、この反応混合物を10分攪拌し、次いで還流した。この反応混合物に0.8mLの水中の1.49gの(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸水和物を加え、次いで1mLのアセトンを加えた。次いで、反応混合物全体を1時間還流し、徐々に冷却した。その後室温で一晩攪拌した。透明な溶液を0〜−5℃で冷却し、沈殿が得られた。形成した塩を酢酸エチルと水に加え、NaHCO3により塩基性にし、有機層を水で洗浄し、減圧下で濃縮し、キラル純度=99.85%(+)異性体(ee=99.7%)の遊離塩基を0.386g得た。
【0150】
例54
(±)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテート(I)の分割
33g(0.1mol)の(±)-メチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセテートを200mLのアセトンに溶解し、この反応混合物を60〜70℃に加熱し、15分還流した。この反応混合物に、水に溶解した25.6gの(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸水和物を加え、60〜70℃において塩の形成が開始した。塩の形成終了後、反応混合物を徐々に室温まで冷却し、次いで0℃〜5℃に冷却した。濾過によってジアステレオマー塩を単離し、アセトンで洗浄し、乾燥した。ジアステレオマー生成物の収率は20.5g(70%)であった。炭酸水素ナトリウム溶液を用い、酢酸エチルで抽出し、溶媒を除去することにより、表題の化合物を10.9g(66%)得た。
【0151】
例55
(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル(IV)の分割
a)100mLのアセトンに溶解した5g(0.0173mol)の(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリルに、60〜62℃において5mLの水中の4.35g(0.0174mol)の(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸水和物を加えた。この混合物を60℃において60時間攪拌し、次いで一晩攪拌を続け、その後冷蔵庫に1日保存した。沈殿したジアステレオマー塩を濾過し、730mgの生成物を得た。
【0152】
b)20mLの水中の730mgの(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトニトリル-(1S)-(+)-カンファ-10-スルホン酸塩に、10mLの(5%)Na2CO3溶液を加えた(pH=10)。この混合物を攪拌した後、100mLの酢酸エチルを加え、有機層を加えた。次いで有機層を分離し、蒸留して生成物を得た。この生成物の収率は400mg(16%)であった。
比旋光(αD):+7.5787°(C=1、DMF)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)
【化1】

(上式中、Xは水素、フッ素、塩素、臭素又は沃素原子、好ましくは2-クロロを表す)
の化合物の製造方法であって、
i)下式(V)の化合物又はその塩を式(VII)のシアニドと反応させ、次いで式(VI)の化合物を添加し、式(IV)のラセミ化合物を得ること、
【化2】

(上式中、Mはアルカリ金属、トリメチルシリル、Cu又は水素を表し、Xは上記と同じである)
ii)(±)又はその光学活性な(+)もしくは(−)形態の式(IV)の化合物を酸性もしくは塩基性反応体と反応させて式(II)の化合物又はその形状を保持する塩を得ること、
【化3】

iii)(±)又はその光学活性な(+)もしくは(−)形態の式(II)の化合物を、メタノールの存在下において酸性反応体と反応させて式(I) の化合物又はその形状を保持する塩を得ること、
【化4】

iv)最後に、式(I)の(±)化合物又はその塩をその光学異性体に分割すること
を含む方法。
【請求項2】
所望により、式(IV)のラセミ化合物をその光学異性体に分割し、又はこのラセミ化合物もしくはその光学異性体をその塩に変換し、次いでこの混合物から塩を遊離させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
所望により、式(II)のラセミ化合物をその光学異性体に分割し、又はこのラセミ化合物もしくはその光学異性体をその塩に変換し、次いでこの混合物から塩を遊離させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
下式(III)の化合物又はその塩の製造方法であって、
i)適当な溶媒中で酸性/塩基性触媒の存在下において、あらゆるその光学形態の式(IV)の化合物又はその塩を反応させて、出発材料と同じ形状の式(III)の酸又はその塩を与えること、
【化5】

(上式中、Xは水素、塩素、臭素又は沃素原子、好ましくは2-クロロを表す)
ii)所望により、最後に、式(III)のラセミ化合物又はその塩をその光学的に純粋な(+)及び(−)異性体に分割すること
を含む方法。
【請求項5】
下式(II)
【化6】

(上式中、Xはハロゲン原子、例えば塩素、臭素、沃素置換基、より好ましくは2-クロロを表す)
の化合物(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジ-5-イル)アセトアミド)もしくはその光学活性異性体もしくはその塩が、
i)式(IV)の化合物もしくはその塩もしくはその光学形態を、出発材料がラセミである場合塩基性反応体により、又は出発材料が光学活性である場合酸性触媒により、適当な溶媒の存在下において処理すること、
ii)最後に、式(II)のラセミ化合物の塩を形成すること、これは対応する光学的に純粋な(+)及び(−)形態に分割される、
を含む方法により製造される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
用いる塩基性反応体が水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びカリウムt−ブトキシドであることを特徴とする、式(II)の化合物の製造を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記酸性反応体が、酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、パークロロ酸、蟻酸又は鉱酸、例えば無水アルコール性ハロゲン化水素、又は塩酸、硫酸、HBr又はこれらの混合物からなる群より選ばれる、式(II)の化合物の製造を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
用いる溶媒が水、(C1-C4)アルコール、アセトン、酢酸、ジメチルホルムアミド、THF、DMSO、ジオキサン、DME又はこれらの混合物、好ましくは水、メタノールもしくはt−BuOHの混合物である、式(II)の化合物の製造を含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
溶媒、例えば水、アセトン、酢酸エチル又はこれらの混合物の存在下において1-(R)もしくは1-(S)-カンファスルホン-10-酸、酒石酸、詳細には1-(R)もしくは1-(S)-カンファスルホン-10-酸を用いて式(II)の化合物(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリド-5-イル)アセトアミドを(−)及び(+)形態に分割し、用いる塩が0.5〜1.1当量のモル比である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリド-5-イル)アセトアミドをその対応する塩に変換し、この塩がD-カンファスルホネート、L-カンファスルホネート、D-酒石酸、L-酒石酸、又は硫酸水素である、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記式(I)の化合物がメチル(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリド-5-イル)アセテート又はその光学異性体又はその塩であり、
【化7】

(上式中、Xは水素、フッ素、塩素、臭素又は沃素原子、好ましくは2-クロロを表す)
i)式(II)の化合物又はその塩又はその光学異性体を好適な溶媒中で酸性反応体により処理すること、
ii)最後に、式(I)のラセミ化合物の塩を形成し、その光学的に純粋な(+)及び(−)形態に分割すること
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記酸性反応体が1〜50当量の濃硫酸であり、好ましくは0℃〜5℃又は用いる溶媒の還流温度において添加を行う、請求項11記載の方法。
【請求項13】
用いる溶媒が、トルエン、DMSO、キシレン等もしくはこれらの混合物と共に3〜30体積のメタノールである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
反応時間が4時間〜4日である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
反応を40℃〜140℃において行う、請求項1記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物を、水、アセトン、酢酸エチルもしくはこれらの混合物の存在下において、1-(R)もしくは1-(S)-カンファスルホン-10-酸、(R)もしくは(S)-酒石酸、詳細には1-(R)もしくは1-(S)-カンファスルホン-10-酸を用いて分割する、請求項11記載の方法。
【請求項17】
様々な範囲の2種のエナンチオマー(-)-I及び(+)-Iを含む混合物が(+)-(I)立体異性体リッチであるか、又は(-)-I及び(+)-I立体異性体の様々な混合物から(-)-(I)エナンチオマーを除去する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
下式(IV)の化合物及びその塩の製造方法であって、
【化8】

(上式中、Xは塩素、臭素又は沃素のようなハロゲン原子、好ましくは2-クロロを表す)
i)下式(V)の化合物又はその酸付加塩を式(VII)のシアニドと反応させ(ここでMはアルカリ金属、TMS、Cu、及び水素を表す)、次いで式(VI)のハロゲノベンズアルデヒド(ここでXはハロゲン原子である)と反応させ、その光学異性体に分割し、所望によりその塩を遊離させもしくはその塩に変換し、
ii)式(VI)のハロゲノベンズアルデヒド(Xはハロゲン原子である)を式(VII)のシアニド(Mは上記の規定と同じである)と反応させ、次いで現場で式(V)の化合物又はその酸付加塩と反応させ、
iii)式(VI)のハロゲノベンズアルデヒド(Xはハロゲン原子である)を式(VIII)の亜硫酸水素(Mは上記の規定と同じである)と反応させ、最後に式(VII)のシアニド(Mは上記規定と同じである)と反応させ、その後現場で式(V)の化合物又はその酸付加塩と反応させ、
iv)最後に、式(IV)の化合物又はその塩をその光学的に純粋な式(IV)の(+)及び(-)形態の化合物又はその塩に分割すること
を含む方法。
【請求項19】
反応を0℃〜100℃の温度で行い、HCNにより、反応温度をさらに−30℃まで低下させる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
反応を酢酸、プロピオン酸、メタノール及びHCl/MeOHのような酸を含む水性もしくは非水性媒体中で行う、請求項18記載の方法。
【請求項21】
乾燥塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸又は酢酸のような触媒酸を用いる、請求項18記載の方法。
【請求項22】
式(IV)の化合物(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリド-5-イル)アセトニトリルを、アセトン、酢酸エチルもしくはこれらの混合物及び水の存在下において、1-(R)もしくは1-(S)-カンファスルホン-10-酸、-酒石酸、詳細には1-(R)もしくは1-(S)-カンファスルホン-10-酸を用いて(-)及び(+)形態に分割する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
(±)、(-)もしくは(+)形態の式(IV)の化合物(±)-(2-クロロフェニル)-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリド-5-イル)アセトニトリルをその塩に分割し、この塩がD-カンファスルホネート、L-カンファスルホネート、D-酒石酸、L-酒石酸又は硫酸水素である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
式(II)の化合物の(-)異性体のラセミ化を、適当な溶媒中のLDA、KOH、NaOH、K−t−BuOH、NaOMe、NaH、KHのような塩基を用いて、(+)立体異性体を含むであろう混合物中で行い(±)化合物を得る、請求項18記載の方法。
【請求項25】
式(I)の化合物の(-)異性体のラセミ化を、適当な溶媒中のLDA、NaOMe、NaH、KHのような塩基を用いて、(+)立体異性体を含むであろう混合物中で行い(±)化合物を得る、請求項1記載の方法。
【請求項26】
分割を、5%までの水を含んでよい、5〜10体積の溶媒としてのアセトンの存在下において行う、請求項17記載の方法。
【請求項27】
前記好適なキラル剤が1:1モル比である、請求項17記載の方法。
【請求項28】
好適な温度が0℃〜溶媒の還流温度である、請求項27記載の方法。

【公開番号】特開2009−29805(P2009−29805A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179540(P2008−179540)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【分割の表示】特願2002−559430(P2002−559430)の分割
【原出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【出願人】(502262953)カディラ ヘルスケア リミティド (2)
【Fターム(参考)】