説明

クロマトグラフィーレジン

【課題】理論的に非常に多数の潜在的に有用なマルチモーダルイオン交換リガンド構造が存在し、そして現在まで一定の標的に対してどれが最適なマルチモーダルイオン交換リガンドの特有の構造であるかを確定する、効率的で系統だったやり方が存在しない。
【解決手段】本発明はクロマトグラフィーに有用なレジンライブラリーを調製する方法に関し、該方法は多様なマルチモーダルイオン交換レジンを作り出すこと;およびそれぞれのレジンが他のレジンと分けられて提示されるパラレルシステムでそのような多様性を提供することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロマトグラフィーに有用なレジンを調製する方法であって、そのような多様なレジンを含む特異的ライブラリーを調製する方法、および定義された物質の精製に適したレジンを選択するための本発明に記載のライブラリーを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビナトリアルケミストリーは効果的で競争的な新薬を生み出すことに関連する時間および費用を軽減するための、医薬、農薬、およびバイオテクノロジー産業において開発された重要で新規な方法論の1種である。手短に言えば、コンビナトリアルケミストリーは、標的分子、一般には薬物標的とライブラリー中の1以上の化合物間の結合の検出によって初めに示されるような、特有の生物活性を有する分子の非常に多数を効率的にスクリーニングできる大きな分子集団、またはライブラリーを作り出すために使用される。より大きく、より多様な化合物ラブラリーを生み出すことにより、治療的および商品価値の高い新規な化合物を発見する確率は増大する。伝統的な薬物デザインと同じように、コンビナトリアルケミストリーは有機合成方法論に頼る。違いは範囲であり、単一の化合物を合成するかわりに;コンビナトリアルケミストリーはオートメーションおよび小型化を利用して、大きなライブラリーの化合物を合成する。バイオポリマーのライブラリーはアミノ酸、ヌクレオチド、もしくは糖残基、またはその組み合わせの任意の添加を基礎にした連続合成により調製され、ペプチド、RNA、多糖、グリコサミノグリカンなどを形成し、それによってオリゴマーの任意の混合物を調製する。ファージディスプレイおよび類似のテクノロジーにより核酸レベルでタンパク質またはペプチドライブラリーを調製するために適した技術も公知である。
【0003】
簡潔に述べると、創薬に使用されるスクリーニング法の一般的な特徴は、それらが非常に多様な薬物候補がスクリーニングされる第1スクリーニングを含み、その後第1ステップの結果に基づいて作り出された第2の多様な候補がスクリーニングされることである。
【0004】
米国特許第6,794,148号(Perceptive)は、関心のある標的に対するリガンドを選択するために試料をスクリーニングする、ならびにリガンドおよびその結合特性についての情報を得るための方法に関する。より明確には、開示された方法は不均一なリガンド溶液を関心のある標的と合わせて、1以上の結合特性を基礎にしてリガンドをスクリーニングすることを含む。第1の結合特性を有するリガンドは関心のある標的に結合し、それによって標的/リガンド複合体を形成する。その後複合体は場合により非結合成分から分けられてもよい。次に複合体または非結合成分は第2の結合特性を基礎にして成分を分けることが可能な第2の「次元」に導入される。試料溶液はいずれのタンパク質の消化により得られてもよく、そして標的はたとえばカラム上に固定化されてもよい。従って、この方法では、リガンド多様性は溶液中に提供され、関心のある標的は固体支持体に固定化されることになる。開示された方法は薬剤的に活性な成分の調製に有用である。
【0005】
米国特許第6,372,425号(Merck Co.Inc)は、高分子の大規模なアフィニティークロマトグラフィー、より明確には以下:
(1)(a)選択された主要中和エピトープ(SPNE)候補オリゴヌクレオチドを含む多数のオリゴヌクレオチドを発現するファージ発現ライブラリーを調製すること;
(b)本質的に純粋な抗体の調製物を固相支持体に結合すること、および固相に支持された抗体をファージライブラリーと一緒にインキュベーションし、固相に支持された抗体にSPNEを結合させることを含むプロセスにより、どの候補オリゴヌクレオチドが高分子のSPNEであるかを確定するためにファージライブラリーをスクリーニングすること;
(c)表面プラズモン共鳴を使用してSPNE‐抗体相互作用の結合定数および解離定数を確定すること、および確認されたSPNEからリガンドを選択することからなるステップを含む、リガンドを選択すること
(2)リガンドを複製して複数のリガンドを生み出すこと;
(3)支持マトリックスにリガンドを結合し、結合リガンドを生み出すこと;
(4)結合リガンドを含むクロマトグラフィーカラムを使用して、抗体を含む不純な溶液に対してカラムクロマトグラフィーを実施すること:を含む、不純な溶液中に存在する、リガンドに結合する抗体を生成する方法に関する。
【0006】
従って、液体クロマトグラフィーは、コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングにおける、とりわけ製薬産業における手段としてしばしば使用されてきた。しかし、いったんバイオテクノロジーにより生み出された1つの特有の薬物候補、たとえばタンパク質薬物候補がスクリーニングから選択されると、その工業的製造のための確かな方法を調製することからなる実質的に骨の折れる仕事が依然として存在する。そのような工業的製造は一般に、大腸菌のような細胞の遺伝的操作;タンパク質薬物を発現させるためのそのような細胞の発酵;および最後に十分な収率で薬剤的に受容できる純度に帰着する効率的な精製スキームのステップを含む。その上、液体クロマトグラフィーはワンステップとして、または連続精製ステップとしてしばしば使用される。
【0007】
多くの公知のクロマトグラフィーの原理があり、たとえば抗体標的に結合するリガンドとしての抗原、標的受容体に結合する酵素リガンドなどのように、2つの化学種間の生物学的アフィニティーが利用されるアフィニティークロマトグラフィー;リガンドと、反対に荷電した標的間の電荷牽引力を利用するイオン交換クロマトグラフィー;およびリガンドの疎水性を利用して疎水性標的と相互作用する、疎水性相互作用クロマトグラフィーが挙げられる。相互作用の混合物または組み合わせを使用するより最近のクロマトグラフィーの原理は、マルチモーダルクロマトグラフィーとして公知である。たとえば、Johansson et al(Journal of Chromatography A,1016(2003)35−49:Preparation and characterization of Prototypes for multimodal separation aimed for capture of positively charged biomolecules at high−salt conditions)は、発酵飼料からタンパク質が精製される場合によくある事例である高い塩濃度でのタンパク質の捕捉にとって、カルボン酸を基礎にした芳香族マルチモーダルカチオン交換体リガンドが最適であると考えられることを開示する。開示されたマルチモーダルカチオン交換リガンドの一般的な特徴は、それらがカルボキシル基に近い水素アクセプター基を含むことである。さらに、Johansson et al(Journal of Chromatography A,1016(2003)21−33:Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation aimed for capture of negatively charged biomolecules at high−salt conditions)は、第1および第2アミンを基礎にしたマルチモーダルアニオン交換リガンドが高い塩濃度においてタンパク質の捕捉に等しく有用でありうることを開示する。これらのマルチモーダルアニオン交換体はイオン基の近傍にヒドロキシル基を含む。
【0008】
米国特許第7,144,743号(Ciphergen Biosystems)は、固体基質、および分離科学および分析生化学の状況においてそれらを作り、そして使用するプロセスに関する。より明確には、固体基質は固体支持体;複素環、複素環式芳香族、または芳香族であり、そして硫酸、スルホン酸、リン酸、またはホスホン酸基によって置換される、単環または多環基;およびメルカプト−、エーテル−、またはアミノ−含有部分を含む結合基からなる。結合基は単環または多環基を固体支持体に結合する。本明細書に記載の本固体基質の利点の1つは、イムノグロブリンのような生物学的物質に対する高度な選択性および特異性であり、先行技術の基質にとって必要な、費用が掛かり、しばしば有害なクリーニングプロセスも回避される。とりわけ2種の異なるフォーマットが企図される。フォーマットの1つでは、固体支持体はクロマトグラフィー媒体に典型的に使用される形態、すなわちビーズまたは粒子からなる。これらのビーズまたは粒子は混合モードリガンドにより誘導体化される。ビーズまたは粒子は、カラムを充填するために使用することができるクロマトグラフィー媒体を形成する。別のフォーマットでは、固体支持体はチップの形態をとる、すなわち、固体支持体は混合モードリガンドが共有結合または他の様式で結合することができるだいたいは平坦な表面を有する。そのようなバイオチップ、またはマイクロアレイフォーマットでは、捕捉試薬:本発明の状況では結合基と単環または多環基の組み合わせが結合するだいたいは平坦な表面を基質が提示する。従って、バイオチップは、定義された領域または部位、より典型的には定義された領域または部位の集まりを提示し、分析物はその上に選択的に捕捉されてもよい。捕捉されると、分析物は検出されて場合により多様な技術により性状が解析されうる。
【0009】
Webb et alはコンビナトリアルリガンドライブラリーを既に記載し:abc Technologies Conference,Basle,Switzerland,26−27 January 2005:ChemSpeed Generation of Combinatorial Libraries of Chromatography Media:Application to Purification of Therapeutic Proteins(Matthew J.Webb,Jim C.Pearson,Helen R.Tatton,Ben M.Beacom & Jason R.Betley)のポスターを参照されたい。このライブラリーのリガンドはトリアジンリガンドであり、該リガンドはアフィニティーリガンド、すなわちタンパク質の1種の生物学的機能クラスだけに結合することが可能であるリガンドと見なされる。実際、Webbリガンドはタンパク質の1種のサブクラスだけに結合可能であるため、高度に特異的なアフィニティーリガンドである。
【0010】
いくつかのより最近の特許および特許出願は、タンパク質精製および他の分離プロトコルにおける使用のための種々のマルチモーダルイオン交換リガンドに関する。しかし、理論的に非常に多数の潜在的に有用なマルチモーダルイオン交換リガンド構造が存在し、そして現在まで一定の標的に対してどれが最適なマルチモーダルイオン交換リガンドの特有の構造であるかを確定する、効率的で系統だったやり方が存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,794,148号
【特許文献2】米国特許第6,372,425号
【特許文献3】米国特許第7,144,743号
【特許文献4】欧州特許第1094899号
【特許文献5】米国特許第6,702,943号
【特許文献6】WO01/38228
【特許文献7】WO03/024588
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Johansson et al(Journal of Chromatography A,1016(2003)35−49;Preparation and characterization of Prototypes for multimodal separation aimed for capture of positively charged biomolecules at high−salt conditions
【非特許文献2】Johansson et al(Journal of Chromatography A,1016(2003)21−33:Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation aimed for capture of negatively charged biomolecules at high−salt conditions
【非特許文献3】Webb et al:abc Technologies Conference,Basle,Switzerland,26−27 January 2005:ChemSpeed Generation of Combinatorial Libraries of Chromatography Media:Application to Purification of Therapeutic Proteins(Matthew J.Webb,Jim C.Pearson,Helen R.Tatton,Ben M.Beacom & Jason R.Betley
【非特許文献4】Albert Lehninger,Short Course in Biochemistry,Worth Publishers Inc.1973(ISBN 0−87901−024−X),Part1:Biomolecules,表3−4,p.54
【非特許文献5】Albert L.Lehninger(ISBN 2−257−15009−0)によるBiochimie,P.61
【非特許文献6】J.E.Jackson,A users guide to principal components,John Wiley & Sons,1991
【発明の概要】
【0013】
本発明の一側面は、えり抜きの多様なマルチモーダルイオン交換リガンドを含むクロマトグラフィーライブラリーを調製する方法を提供することである。ライブライリーが多様性の大きい比較的少数のレジンを提示し、それゆえその後の非常に多数のレジンのスクリーニングを回避するような方法が特有の側面である。
【0014】
本発明の特有の側面は、コンピュータに補助されたデザインを利用して、最も少数の候補レジンによりできるだけ大きな多様性を得ることである。このことは新規な選択性に対する効率的なスクリーニングを可能にするが、仕事量および関連する費用は軽減される。
【0015】
本発明の別の側面はレジンの多様性を含むマルチモーダルイオン交換リガンドのライブラリーを調製することであり、ここではリガンド構造、リガンド密度などのような特徴がレジン間で異なる。マルチモーダルイオン交換レジンはマルチモーダルカチオン交換リガンドまたはマルチモーダルアニオン交換リガンドを含んでいてもよい。
【0016】
本発明の付加的な側面は、少なくとも1種のクロマトグラフィーレジンの確認および選択に本発明に記載のライブライリーの使用を提供することである。
【0017】
上記の1以上の側面は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明によって達成されてもよい。本発明の付加的な側面、詳細および利点は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はカチオン交換リガンド分子ディスクリプターの前処理データのスコアプロット(PC1/PC2)である。
【図2】図2はカチオン交換リガンド分子ディスクリプターの前処理データの拡大スコアプロット(PC1/PC2)である。
【図3】図3はカチオン交換リガンド分子ディスクリプターの前処理データのスコアプロット(PC3/PC4)である。
【図4】図4は前処理データのスコアプロット(PC3/PC4)である。
【図5】図5はPCA分析後の拒絶のためのリガンド候補を示す。
【図6】図6は実施例3に記載のスクリーニングを示す。
【図7】図7は実施例5に記載のスクリーニングを示す。
【図8】本発明に記載の方法に有用なスクリーニング法を図式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
「マルチモーダル」イオン交換リガンドという用語は、本明細書では、荷電した基に加えて、疎水性基、水素結合を介して相互作用が可能な基などのような、少なくとも1つの他の官能基をさらに含むリガンドを意味する。マルチモーダルイオン交換リガンドという用語は本明細書で使用するように、非特異的であることが公知である。従って、マルチモーダルイオン交換リガンドという用語は、本明細書では以下に検討されるように、生物学的機能に従ったタンパク質の公知の分類によって定義される2種以上の異なるクラスのタンパク質を結合可能なマルチモーダルイオン交換リガンドを意味する。言い換えると、本明細書で使用するように、「非特異的マルチモーダル」イオン交換リガンドという用語は、「アフィニティー」クロマトグラフィーリガンドとして公知の特有の種類のクロマトグラフィーリガンドを含まない。
【0020】
「アフィニティーリガンド」という用語は、クロマトグラフィー分野内での慣用の意味において、すなわち「鍵穴/鍵」の種類の相互作用において標的に特異的に結合することが可能なリガンドに対して使用され、ここで「鍵」(アフィニティーリガンド)は「鍵穴」(タンパク質のクラス、サブクラスまたは化学種)に特異的である。そのような特異的アフィニティー相互作用の公知の例としては、たとえば抗原への抗体の結合;および受容体への酵素の結合がある。
【0021】
本明細書で使用する「タンパク質クラス」という用語は、当該技術分野における多くのハンドブックに記載されるように、生物学的機能に従ったタンパク質の分類を表し、たとえば、Albert LehningerによるShort Course in Biochemistry,Worth Publishers Inc.1973(ISBN 0−87901−024−X),Part1:Biomolecules,表3−4,p.54;およびAlbert L.Lehninger(ISBN 2−257−15009−0)によるBiochimie,P.61を参照されたい。簡潔に述べると、生物学的タンパク質クラスは、リボヌクレアーゼおよびトリプシンのような酵素;卵白アルブミンおよびフェリチンのような貯蔵タンパク質;アクチンおよびミオシンのような収縮タンパク質;抗体、フィブリノゲンおよびトロンビンのような血液の保護タンパク質;ボツリヌスおよびジフテリアのような毒素;インスリンおよびソマトトロピンのようなホルモン;ならびにケラチンおよびコラーゲンのような構造タンパク質である。
【0022】
「物質」という用語は、本明細書では単一要素もしくは化合物、または要素および/または化合物の混合物を意味する。
【0023】
本明細書で使用するレジン「ライブラリー」という用語は、えり抜きの異なるレジンを提供し、ここでは基礎マトリックス(天然または合成ポリマーなど)の特質;基礎マトリックスの他の特質(多孔性、粒子サイズなど);基礎マトリックスに結合したリガンドの化学構造;リガンド密度;および/または他の特質のような1以上の特質が変化している。
【0024】
2種以上のレジンの「パラレル」システムという用語は、本明細書ではレジンが実質的に同時に、および/または同じオペレーターによって、好ましくは同じ実験において使用されることを意味する。レジンが別個の試験管において並んで試験されうる慣用のラボベンチ実験に比べ、「統合パラレル」システムでは2種以上のレジンがお互いに物理的につながれたように、たとえばマルチウェルプレートもしくはバイオチップのフォーマットで提示される。
【0025】
第1の側面では、本発明はレジンのライブライリーを調製する方法に関し、該方法はレジンの多様性を作り出すこと;およびレジンがお互いに分けられて提示されるパラレルシステムで多様性を提供することを含む。好都合な態様では、レジンはクロマトグラフィーレジンである。そのようなレジンは分離法において有用ないずれかの公知のフォーマット、たとえばクロマトグラフィーゲルのような粒子;膜、表面などであってもよい。クロマトグラフィーレジンはイオン交換レジンまたは疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)レジンであってもよい。好都合な態様では、レジンはマルチモーダルイオン交換リガンドを含む。マルチモーダルイオン交換リガンドは公知であり、記載されている。マルチモーダルカチオン交換リガンドおよびそれらの特徴の検討に関しては、たとえば、Johansson et alによる、Journal of Chromatography A,1016(2003)35−49:“Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation media aimed for capture of positively charged biomolecules at high−salt conditions”および欧州特許第1094899号を参照されたい。マルチモーダルアニオン交換リガンドおよびそれらの特徴の検討に関しては、たとえばJohansson et alによる、Journal of Chromatography A,1016(2003)21−33:“Preparation and Characterization of prototypes for multi−modal separation media aimed for capture of negatively charged biomolecules at high−salt conditions”および米国特許第6,702,943号を参照されたい。
【0026】
当該技術分野では公知のように、マルチモーダルイオン交換リガンドは非特異的であり、そのことは、それらが2種以上の異なる生物学的クラスのタンパク質を結合可能であることを意味する。従って、言い換えると、本発明のライブライリーのリガンドはアフィニティークロマトグラフィーリガンドではなく、公知のようにアフィニティークロマトグラフィーリガンドは、1種の単一生物学的クラスのタンパク質、またはその1種の単一サブクラス、それどころか化学種のいずれかだけに結合する能力によって特徴付けられる。
【0027】
本レジンは、それらがマルチモーダルイオン交換リガンドを含むという意味でマルチモーダルであってもよく、ここではそれぞれのリガンドはその荷電基の他に官能基を提示する。しかし、本発明はまた、それらが確率論的であるという意味でマルチモーダルであるレジンを包含し、そのことは本明細書では、同じ粒子またはキャリアに固定化された異なるリガンドのように、同じ標的との相互作用を可能にするほど近接した異なる官能基をそれらが提示することを意味する。従って、同じ基礎リガンド上に存在する異なる官能基を有する代わりに、それらは別個のリガンド上に提供されるが、お互いに十分に近接し、標的のマルチモーダル結合に帰着しうる。従って、本発明はまた、異なるマルチモーダルリガンドの組み合わせ、および第2の相互作用の量が確率論的構造において変化する態様を包含する。本発明に従って調製されたライブライリーは2以上、たとえば約5または6のように、10までの複製物を許可してもよい。
【0028】
このような状況では、「多様性」という用語は、レジン間で少なくとも1つの、ディスクリプターとも表される特性が異なることを意味すると理解される。多様性は、たとえば異なるpka、疎水性、および/または電荷数を有するリガンドを基礎にしていてもよい。本発明の方法において有用なディスクリプターの付加的な例としては、たとえば分子量、水素結合ドナーおよびアクセプター、異なるpHにおけるLogD、異なるpHにおける電荷、原子数、リガンド密度、たとえばリガンドを基礎マトリックスにカップリングするスペーサーのようなカップリングケミストリーなどが挙げられる。
【0029】
先に述べたように、本発明に記載のライブライリーでは、クロマトグラフィーレジンはお互いに物理的に分けられて、すなわち空間的に十分に分けられて提示され、レジン間の妨害となるいずれかの相互作用を妨げ、その独立した解析を可能にする。従って、レジンは2以上のパラレルユニット、たとえばクロマトグラフィーカラムのようないずれか適切なフォーマットに提示されてもよい。そのようなカラムは実験室用には小さくてもよい。従って、本発明の好都合な態様では、レジンは、バイオチップのような平坦な表面に比較して、好ましくは壁を有する、物理的に分けられた容器(vessel)、容器(container)またはコンパートメントのシステム中に提示される。好都合な態様では、システムは統合されたパラレルシステムであり、ここではレジンは自動操作に適した一般的に使用されるフォーマットである、マルチウェルプレートのような単一フォーマットの一部である。例となる態様では、プレートは96ウェルプレートである。それぞれのウェルは問題となっている実験に適切なサイズ、たとえば50μlのように、1〜100μlからなっていてもよい。当業者は理解するように、それぞれのウェルに異なるレジンを有することは必要でなく;本明細書で検討されたライブライリーの多様性が得られるのなら、2以上のウェルが同じ種類のレジンを含んでいてもよい。一般に、それぞれのライブライリーは16〜32のレジンを含んでいてもよい。しかし、本発明はまた、2以上のレジンがクロマトグラフィーカラムでのように、パラレル試験に対して配列される方法を包含し、そのような試験は自動でも手動でもよい。当業者は理解するように、本発明の方法において使用される多様なレジンはお互いに十分に分けられ、抗体のようなタンパク質;ペプチド;核酸;有機分子などのような標的分子の結合および/または溶出に対する独立した試験を可能にするべきである。代わりとなる特有の態様では、多様なレジンは実質的に平坦な表面、たとえばチップまたはバイオチップ上にお互い分けられて提示される。
【0030】
一態様では、本方法はレジンの2以上のディスクリプターを計算し、その後これらのディスクリプターを多変量解析と共に使用して、レジンの多次元マップを生み出すことを含む。好都合な態様では、多変量解析は、当該技術分野において当業者に公知の方法である主成分分析(PCA)である。従って、本発明は、好ましくはコンピュータ手段による、2、3、4、5種の、またはそれよい多いディスクリプターの計算を含んでいてもよい。例となる態様では、方法は4種のレジンディスクリプターを計算すること、およびPCAを使用して第1の4種の主成分によるレジンの4次元マップを生み出すこと、およびマップを指針として使用してレジンを選択することを含む。
【0031】
第2の側面では、本発明は多様なマルチモーダルイオン交換レジンを含むライブライリーに関する。先に検討したように、そのようなレジンは当該技術分野で公知である。
【0032】
第1の態様では、本ライブライリーは多様なマルチモーダルアニオン交換レジンライブラリーである。異なるレジンはいずれかのマルチモーダルアニオン交換リガンドを含んでいてもよく;たとえばJohansson et alによる先に言及した論文を参照されたい。リガンドはアミンまたは他の正に荷電した基を含んでいてもよい。機能的アミンは、第1、第2および第3および第4アミン;ヒドラジン、たとえばモノ‐置換ヒドラジンおよびジ‐置換ヒドラジン;ポリアミン;ポリイミン;ポリ‐Q(Qは第4アンモニウム基を表す);アニリン;ならびにヒドロキシルアミンからなる群から選択されうる。一態様では、確率論的レジンは、異なるレベルのフェニル基、ブチル基、PEG、フッ素含有リガンドおよび荷電した基と結合したアミン基の1つの型を基礎にする。
【0033】
別の態様では、本ライブライリーはマルチモーダルカチオン交換レジンライブラリーである。異なるレジンが、カルボキシルまたは他の負に荷電した基を含むリガンドのような、いずれかのマルチモーダルカチオン交換リガンドを含んでいてもよく;たとえばJohansson et alによる先に言及した論文またはWO01/38228を参照されたい。
【0034】
第3の側面では、本発明は定義された標的物質の精製に適したリガンドを選択するための本発明に記載のライブライリーの使用に関する。公知のように、市販のクロマトグラフィーの成功にきわめて重要なパラメータは、たとえばタンパク質キャパシティー;タンパク質回収率;化学的安定性;および塩耐性である。本発明は1以上のこれらのパラメータを基礎にした効率的なスクリーニングおよび選択を可能にする。好都合な態様では、本発明は本発明に記載のライブライリーの使用に関し、そのような使用は2以上のスクリーニング操作のような、一連のスクリーニング操作である。そのような使用はクロマトグラフィープロセスをまねることであってもよい。
【0035】
特有の態様では、本発明はマルチモーダルイオン交換ライブライリーの使用に関し;ここで第1のステップは、たとえば100より多いような、比較的多数の候補をスクリーニングすることを含み;このライブラリーはレジンの約半数の制限されたライブライリーに対する第1のスクリーニング結果を基礎にして限定され;この第2のライブラリーがスクリーニングされ、コンピュータに補助された多様性評価を使用して、たとえば30〜40候補のように、さらに限定された数の候補からなる最終ライブラリーが提供される。たとえばSYBYL(7.1)(登録商標)およびACD Labs(登録商標)のような、本スクリーニングに利用可能ないくつかの市販のプログラムがある。当業者は理解するように、最適なクロマトグラフィーレジンを確認するための包括的なプロセスにおいて付加的なスクリーニングステップを添加することも可能であり、そのようなプロセスは基本的情報を集めるため;適切な選択基準を樹立するため;および多様性評価のためのはじめのコンピュータに補助されるステップ;ならびにレジン候補を査定するためのクロマトグラフィー評価を含む1以上のラボワークステップを含むことになる。クロマトグラフィー評価に有用なスクリーニングパラメータには、定置洗浄(CIP)、異なるタンパク質、結合能力、pH、伝導度、溶出、選択性、有機溶媒、バッファー、および界面活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0036】
付加的な側面では、本発明はパラレルクロマトグラフィーシステムを使用した少なくとも2種の異なるマルチモーダルイオン交換レジンへの標的物質の相対的結合を解析する方法に関し、該方法は以下のステップ:
(a)標的物質を含む溶液を提供すること;
(b)該溶液を少なくとも2種の異なるレジンとパラレルに接触させること;
(c)標的物質をレジンに結合させること;
(d)少なくとも2種の異なる該レジンの相対的結合を査定すること;を含む。
【0037】
一態様では、パラレルクロマトグラフィーシステムはマルチウェルプレートを含み、ここでは異なるレジンは異なるウェルに提示される。別の態様では、パラレルクロマトグラフィーシステムはパラレルクロマトグラフィーカラムを含む。
【0038】
結合の査定は、UV検出のような、フロースルー測定により実行されてもよい。そのような方法は当業者に公知である。
【0039】
本発明はまた、パラレルクロマトグラフィーシステムを使用して、異なるマルチモーダルイオン交換レジンからの標的物質の溶出を解析する方法を含み、ここでは多様なレジンが溶出特性に関して試験される。溶出は、たとえば、異なる塩濃度のバッファーを添加することによる、および/またはpH条件を変化させることによる伝導度の変化によって、および/またはpH条件を変化させることによって得られてもよい。
【0040】
本発明の最後の側面は、パラレルシステムで2以上のクロマトグラフィーレジンを提供することを含む、クロマトグラフィーレジンに由来する溶出条件を査定する方法であり、方法は第1実験セットにおけるそれぞれのレジンのnステップの異なる溶出条件;および第2実験セットにおけるそれぞれのレジンのmステップの異なる溶出条件からなり、ここでは第1および第2実験セット間の試験条件において、好都合には1ステップの重複がある。好都合な態様では、第3実験セットは第2のセットに従い、ここでは第2および第3セット間に重複がある。それぞれの実験セットは3、4、または5条件のような、いずれか適切な数の条件からなっていてもよい。従って、nは3〜5のいずれかの整数であってもよく、そしてmは3〜5のいずれかの整数であってもよい。好都合な態様では、試験される条件は異なる塩濃度であり、そして重複は1種の塩濃度である。好都合な態様では、本発明の方法は第3実験セットを含み、ここでは第2および第3実験間に重複がある。当業者は理解するように、該方法はまた、第4またはいずれかの数の付加的な実験を含んでいてもよい。この側面の原理は図8で説明される。
図面の詳細な説明
図1は以下の実施例で検討する、カチオン交換リガンド分子ディスクリプターの前処理データのスコアプロット(PC1/PC2)である。
【0041】
図2は以下の実施例で検討する、カチオン交換リガンド分子ディスクリプターの前処理データの拡大スコアプロット(PC1/PC2)である。
【0042】
図3は以下の実施例で検討する、カチオン交換リガンド分子ディスクリプターの前処理データのスコアプロット(PC3/PC4)である。
【0043】
図4は以下の実施例で検討する、前処理データのスコアプロット(PC3/PC4)である。
【0044】
図5は本発明に記載のPCA分析後の拒絶のためのリガンド候補を示す。
【0045】
図6は実施例3に記載のスクリーニングを示す。
【0046】
図7は実施例5に記載のスクリーニングを示す。
【0047】
図8は異なる溶出条件に対する本発明に記載のライブライリーをスクリーニングする原理を示す。マルチモーダルイオン交換システムの場合、タンパク質負荷は50mM以下のカウンターイオン濃度を含むバッファーを使用して実行された。溶出は連続ステップフォーマットで実行された。それぞれの媒体は3種の異なるウェルに負荷され、それぞれのウェルは図8に示すように溶出された。
【実施例】
【0048】
本発明の実施例は説明のためだけに本明細書に提示され、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
実施例1:マルチモーダルイオン交換レジンの多様なライブラリーの調製
IEXのためのマルチモーダルリガンドを含むいくつかのゲルを選択する方法
ここで記載される実体は、種々のリガンド密度を持つアガロースに結合したマルチモーダルリガンドを含むレジンである。以下に、試験されることになるレジンの数を減らすために、強化された多様性基準を基礎にしていくつかの実体を選択するために使用される方法が開示される。創薬におけるリガンド選択方法とは対照的に、本発明の手順はリガンド密度も含む。別の違いは、クロマトグラフィー適用ではpHが重要な制御因子であるため、種々のpH値が考慮されることである。手順は、実体のいくつかのディスクリプターを計算し、次にこれらのディスクリプターを主成分分析(PCA)と一緒に使用して、第1の4種の主成分を持つ実体の4次元マップを生み出すことからなる。選択は指針としてこのマップを使用して実行される(以下を参照されたい)。
分子ディスクリプターの計算
市販のプログラムは創薬においてそれらの特有のアプリケーションを有するように、本発明に従った分子ディスクリプターの計算に使用されうる多くのそのようなプログラムがある。2つの例としてはSYBYL(Tripos Inc)および、ACD/Labs suite 4.06版由来のプログラムpKaおよびLogDが挙げられる。分子ディスクリプターの計算のための化合物の構造を調製するために異なるやり方がある。たとえば、1つのISIS(MDL Inc)データベースは計算を促進するためにすべての適切な構造と共に組み立てられた。MDLフォーマットsdfのファイルはデータベースから運び出され、SYBYLに持ち込まれる。SYBYLで計算されるディスクリプターは分子スプレッドシートのオートフィル機能を使用して計算され、それらは分子量(MW)、疎水性センター数(Hydrophobes)、水素結合ドナー数(Donors)、水素結合アクセプター数(Acceptors)、回転可能な結合数(RotBonds)、原子数(AtomCount)、結合数(BondCounts)およびキラルセンター数(Chirals)である。ACDソフトウェアによって計算されたディスクリプターは、pKaプログラムおよび結果の目視検査を使用した、pH3、7および11における荷電、ならびにpH3、7および8におけるオクタノールと水間の計算された分配係数(CLogD)であった。第4級窒素原子を持つ構造のCLogDを計算することは不可能であり、そのような構造に対しては、ディスクリプターはプロトン化された第3級窒素を持つ類似の構造のディスクリプターとして推測された。結局、そして分子が事実上双極性イオンである場合、そしてこのディスクリプター(双極性イオン)が0にセットされなかった場合、これは1と認められた。
レジンのディスクリプターの計算
計算される場合、リガンドの固定化の程度を考慮する実体のディスクリプター。たとえば、固定化の程度xμmol/mlのリガンドXとyμmol/mlを持つリガンドYを組み合わせた場合、組み合わせのディスクリプターはディスクリプター(X)x/100+ディスクリプター(Y)y/100によって与えられた。
【0049】
PCA分析のために使用可能な多くの市販のプログラムがあり;たとえばプログラム「The unscrambler」(CAMO Norway)9.0版は4成分を必要とする主成分分析(PCA)に使用された。著しく逸脱した対象を除いて、それぞれのライブラリーに対して1つのPCAモデルが作成された。
PCA分析によるマルチモーダルイオン交換リガンドの選択
ディスクリプターデータセットにおけるデータは主成分分析(PCA)により説明された。PCAは多変量技術であり、その中でいくつかの相関する変数はより小さな非相関変数のセットに変換される。主成分モーダルを見る1方法は変換であり、そのような変換では、多くの元の次元がより少ない次元を持つ別の同等のシステムに変換される(J.E.Jackson,A users guide to principal components,John Wiley & Sons,1991)。データはPCAの前に集められ、1/Sdevによって評価された。スコアプロットでは、お互いに接近したオブジェクト(object)(リガンド)は化学的に類似し、お互いに離れたものは類似しない。オリジンから離れたオブジェクトは両極端であり、オリジンに接近したものは最も典型的である。スコアプロットPC1/PC2においてお互いに接近したオブジェクト/リガンドはグループ分けされていて、それぞれの群のリガンドは除かれることになる候補として評価されている。スコアプロットPC1/PC2に由来する候補がライブラリーから除外されうるかどうかは、スコアプロットPC3/PC4から決定される。PC1/PC2プロットにおいてお互いに接近したリガンド対はまた、それらの1つを除外するために、PC3/PC4プロットにおいてお互いに接近して配置されるべきである。
マルチモーダルカチオン交換ライブライリーに由来する結果
いくつかのマルチモーダルカチオン交換リガンドの分子ディスクリプターのスコアプロット(PC1/PC2)は図1および図2(拡大プロット)に提示される。いくつかの群(お互いに接近したリガンドからなる)は丸く囲まれている(図1および2におけるグループA〜O)。これは説明的な例にすぎず、グループのサイズは変化しうる。スコアプロット(PC1/PC2)はデータセットにおける全変動の65%を説明することが認められうる。従って、PC1/PC2プロットにおいて丸で囲まれたリガンドはまた、PC3/PC4プロットにおいて印を付けられている(図3および4)。PC3/PC4プロットから、全変動の21%がこれらの主成分によって説明されることが理解されうる。このことは、4種のPCがデータセットにおける全変動の86%を説明することを意味する。この事例では、これがリガンド特性における変動を表現するために十分であると我々は結論を下している。従って、2つのスコアプロット(PC1/PC2およびPC3/PC4)においてお互いに接近して位置するリガンドは、parにおけるリガンドプロトタイプの1つが除外されうることを意味する。この実施例に関する拒絶のためのリガンド候補は図5に示す。
実施例2:マルチモーダルカチオン交換レジンライブラリーの調製
以下のライブラリーは先の実施例1に記載された原理に従って調製された。本マイクロタイタープレートは16プロトタイプ(16x2レベルx3デュプリケート=96)を含むことになるが、24プロトタイプも可能である(24x2レベルx2デュプリケート=96)。当業者は理解するように、より多様なライブラリーを生み出すために、たとえば29の異なるリガンドを伴うシナリオが考慮されうる((10+19x2レベル)x2デュプリケート=96)ように、レジンの一部はただ1つのレベルの置換を伴って存在することが可能であった。
【0050】
プロトタイプの2つのロットはカルボキシル基を基礎にした。第1のカルボキシル基含有プロトタイプはスカフォールドとしてホモシステインチオラクトンを使用して作り出された。予備の選択は本発明者らの経験を基礎にした。代わりの構造は、結合力の低下と潜在的に促進される溶出を提示しうる基を含む。プロトタイプは以下に要約される。すべてのレジンはスタンダードケミストリー(たとえば、WO03/024588,Thevenin et alを参照されたい)を使用して合成され、約50〜60μmol/mlの第1および約100〜120μmol/mlの第2レベルの2種のレベルのリガンド置換を伴った。
【0051】
【化1】

【0052】
カルボキシル基‐含有プロトタイプの第2ロットは確率的構築を基礎にし、最終レジンにおいて多様な相互作用間に異なる比を有する可能性を許した。プロトタイプは以下に要約される。
【0053】
【化2】

【0054】
マルチモーダルカチオン交換リガンドの第2群は以下に記載のもののような、リガンドとしてスルホン基を基礎にしたプロトタイプであった。
【0055】
【化3】

【0056】
スルホン基確率的プロトタイプを基礎にした付加的なマルチモーダルカチオン交換リガンドプロトタイプは以下の確率的構築であった:
【0057】
【化4】

【0058】
スルホン基を基礎にしたマルチモーダルカチオン交換リガンドプロトタイプの第3ロットは、オンサーフェスエクステンダー(on surface extender)および重合法を使用して作り出された。キャリアにスルホプロピルリガンドを結合するためのエクステンダーとしてデキストランが使用される場合、余分な結合キャパシティーが生み出される。
【0059】
【化5】

【0060】
マルチモーダルカチオン交換レジンの第3および最後の群はリガンドとしてのホスホン酸基を基礎にした。以下はいくつかの一般的なマルチモーダル構造である。
【0061】
【化6】

【0062】
ホスホン酸基を含む確率的構築は以下の通りであった。
【0063】
【化7】

【0064】
ホスホン酸基を基礎にしたマルチモーダルカチオン交換リガンドプロトタイプの第3ロットは以下のように、オンサーフェスエクステンダーおよび重合法を使用して作り出された。
【0065】
【化8】

【0066】
実施例3:タンパク質(インスリン)を伴うマルチモーダルカチオン交換レジン(MMC)のスクリーニング
96‐ウェルフィルタープレート(底にフィルターのあるマイクロタイタープレート)に、自動マルチチャンネルポンプを使用して400μlの種々のマルチモーダルカチオン交換レジン溶液を載せ、沈降ゲル20μlのベッド容量を得た。種々のゲルは3x200μlの50mM酢酸ナトリウムpH4.0をマルチチャンネルピペットで加えることにより平衡化した。はじめの2回の洗浄のために、溶液は減圧によりベッドを通し、3回目の洗浄のために、JS−5.3ローターを備えたBeckman Coulter AvantiJ−20XPを使用して1300rpm(約350rcf)で1分間遠心分離した。50mM酢酸ナトリウムpH2.8に溶かした50μl(0.5mg/ml)インスリン(Sigma)はフィルタープレートに載せた。レジンは先に記載のように3x200μlの50mM 酢酸ナトリウムpH4.0により洗浄し、50mM酢酸ナトリウムpH4.0中、200μlの以下の連続した異なる塩濃度:50mM、100mM、200mM、500mMおよび1000mMで溶出した。
【0067】
溶離液は、Spectra Max plusプレートリーダーを使用して280nmでUV吸光度を測定することにより分析した。
【0068】
試料は濃度0.5mg/mlに至るまで50mM酢酸ナトリウムpH2.8に溶解した純粋なインスリンであった。
・平衡化 3x200μ 50mM酢酸ナトリウムpH3.2
・試料添加 50μl(0.5mg/ml)
・洗浄 3x200μl 50mM酢酸ナトリウムpH3.2
溶出: 100μl溶出バッファー
1 50mM NaCl中200μl 50mM酢酸ナトリウム pH3.2
2 100mM NaCl中 pH3.2
3 200mM NaCl中 pH3.2
4 500mM NaCl中 pH3.2
5 1000mM NaCl中 pH3.2
溶離液は280nmにおけるUV吸収を記録することにより分析した。
【0069】
本実施例では、異なるレジン間の選択性に著しい違いがある。レジンプロトタイプのいくつか、たとえばMMC16および18は、フロースルー(FT)における高い吸光度のためにいずれのインスリンも結合しないように見える。MMC7および11の場合、それらがFTにおける高い吸光度のためにまるで結合能力が低いように見えるが、同時に少なくとも高い塩濃度においてカラムからインスリンを溶出することが可能である。第3の媒体グループは、インスリンを非可逆的に結合するもの、たとえばMMC3および30である。FTにおいて、または溶離液においてインスリンは全く検出することができない。
【0070】
MMC15および24は、それらがFTにおいてインスリンの損失を全く示さず、溶出中に高い回収率を示したため、インスリンを精製することにおける最も優れた候補であるように見えた。
実施例4:マルチモーダルアニオン交換レジンライブラリーの調製
以下のライブラリーは先の実施例1に記載の原理に従って調製された。リガンドのリストは37の異なるリガンドからなり、その多様性の供給源としてリガンド置換レベルを加えた後、52のプロトタイプに帰着する。
【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

【0073】
【化11】

【0074】
実施例5:タンパク質(インスリン)を伴うマルチモーダルアニオン交換(MMA)ライブラリーのスクリーニング
この実施例はマルチモーダルアニオン交換レジンに対して、先に記載の手順(実施例3)に基本的に従ったが、マルチモーダルカチオン交換レジンおよび以下に記載のバッファーを使用した。32の候補レジンを含むマルチモーダルアニオン交換リガンドライブラリーは、標的としてインスリンを使用してスクリーニングされた。試料は濃度0.5mg/mlに至るまで50mM Tris−HCl pH8.5に溶解した純粋なインスリンであった。
・平衡化 3x200μl 50mM Tris−HCl pH8.5
・試料添加 50μl(0.5mg/ml)
・洗浄 3x200μl 50mM Tris−HCl pH8.5
溶出: 100μl 溶出バッファー
1 50mM NaCl中200μl 50mM Tris−HCl pH8.5
2 100mM NaCl中 pH8.5
3 200mM NaCl中 pH8.5
4 500mM NaCl中 pH8.5
5 1000mM NaCl中 pH8.5
本実施例では、レジン間に大きな多様性があり、溶離液画分の吸光度によって判断すると、それらは均一に広がっているように見える。図1では、はみ出し、そして注釈を加えられることになるいくつかのレジンがある。
【0075】
MMA2および21は、それらのフロースルー(FT)および洗浄におけるかなり高い吸光度のために結合が十分でないことを示し、インスリンの結合および溶出に適した候補ではないように見える。それらはまた、溶出中の低い回収率を示す。それらの媒体を除いて残りの大部分は、かなり効果的なやり方でインスリンを結合し、溶出するように見え、その場合MMA10は残りのものよりわずかに優れているように見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーレジンのライブラリーを調製する方法であって、多様なマルチモーダルイオン交換レジンを作り出すこと;およびレジンがお互いに分けられて提示されるパラレルシステムで多様性を提供することを含む、方法。
【請求項2】
多様性を作り出すことがレジンの2以上のディスクリプターを計算すること、および計算されたディスクリプターを多変量解析と一緒に使用して第1主成分を持つレジンの多次元マップを生み出すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マップを指針として使用してタンパク質精製に適切なレジンを選択する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パラレルシステムがマルチウェルプレートである、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
多様性が、基礎マトリックス特性;カップリングケミストリー;リガンド特性およびリガンド密度からなる群から選択される少なくとも1つの特性の変動を含む、先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
離れたコンパートメント中に提示される多様なマルチモーダルイオン交換レジンを含むライブラリー。
【請求項7】
レジンが非特異的なマルチモーダルイオン交換リガンドを含む、先の請求項のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項8】
マルチモーダルアニオン交換レジンを含む、請求項7に記載のライブラリー。
【請求項9】
マルチモーダルカチオン交換レジンを含む、請求項7に記載のライブラリー。
【請求項10】
少なくとも2つのウェルに異なるクロマトグラフィーレジンを有するマルチウェルプレートからなる、請求項6〜9のいずれか1項に記載のライブラリー。
【請求項11】
タンパク質のような定義された物質の精製に適したリガンドを選択するための請求項6〜11のいずれか1項に記載のライブラリーの使用。
【請求項12】
連続した2以上のスクリーニング手順を含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
パラレルクロマトグラフィーシステムを使用して少なくとも2つの異なるマルチモーダルイオン交換レジンへの標的物質の相対的結合を分析する方法であって以下のステップ:
(a)標的物質を含む溶液を提供すること;
(b)該溶液を少なくとも2種の異なるレジンとパラレルに接触させること;
(c)標的物質をレジンに結合させること;
(d)少なくとも2種の異なるレジンの相対的結合を査定することを含む、方法。
【請求項14】
レジンから物質を溶出するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
異なるレジンが異なるウェル中に提示されるマルチウェルプレートをパラレルクロマトグラフィーシステムが含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
パラレルクロマトグラフィーシステムが少なくとも2種のクロマトグラフィーカラムを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
結合の査定がフロースルー(folow−through)測定によって実行される、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
クロマトグラフィーレジンに由来する溶出条件を査定する方法であって、2以上のクロマトグラフィーレジンをパラレルシステムで提供すること;第1の実験セットにおいてそれぞれのレジンに対するn個の異なる溶出条件を試験すること;および第2の実験セットにおいてそれぞれのレジンに対するm個の異なる溶出条件を試験することを含み、第1および第2の実験セット間の試験条件に重複が存在する、方法。
【請求項19】
試験条件が異なる塩濃度であり、そして重複が1種の塩濃度である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1の実験が塩濃度C1、C2、C3およびC4を含み、第2の実験が塩濃度C4、C5、C6およびC7を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第3の実験セットを含み、第2および第3の実験間に重複が存在する、請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−515917(P2010−515917A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545520(P2009−545520)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000016
【国際公開番号】WO2008/085116
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509088240)ジーイー・ヘルスケア・バイオ−サイエンシズ・アーベー (22)