説明

クロマトグラフィー検査装置およびクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法

【課題】クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を検出し、正確な検査を行うことができるクロマトグラフィー検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】クロマトグラフィー試験片1に液体試料を展開させた状態で、所定の2点間での輝度差、あるいは、所定の領域での輝度変化量を測定し、あらかじめ定めた規格値と比較することにより、クロマトグラフィー検査中に、自動的に液体不透過性シート材8の下部における親水性の低下等の劣化を検出することができるため、正確な検査を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な信号検出を行って液体試料中の成分濃度を測定することにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置およびクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、在宅医療および医院や診療所などの地域医療の充実、更には早期診断および緊急性の高い臨床検査の増加などに伴い、臨床検査の専門家でなくても、簡易で迅速に臨床検査の高精度測定が可能な分析装置が要望されるようになってきた。そこで煩雑な操作を伴わず、短時間で信頼性の高い検査ができる、POCT(Point of Care Testing)用の分析装置が注目されている。ここで、POCTとは、一般的に開業医、専門医の診察室、病棟および外来患者向け診療所などの「患者の近いところ」で行われる検査の総称である。
【0003】
一方、免疫反応を利用したクロマトグラフィー試験片の様な乾式のバイオセンサは、試薬の調整が不要で、検査対象となる血液や尿などの液体試料を滴下する等の簡単操作だけで、液体試料中の分析対象物の分析が可能であるので、POCTの代表として多数実用化されている。
【0004】
この様な免疫クロマトグラフィー試験片の従来の構成と検査動作について、図5を用いて説明する。
図5は従来のクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図である。
【0005】
図5において、1はクロマトグラフィー用の試験片(以下、試験片と呼ぶ)で、2はクロマトグラフィー材料を支持するプラスチック等で構成された支持体である。3は液体試料を展開するニトロセルロース等からなる展開層、4は液体試料を添加或いは塗布するための試料添加部、5は標識試薬が保持された標識試薬保持部であり、展開層上を試料が展開することによって溶解可能なように配置されている。6は展開層3の領域上に特異的タンパク質等の試薬が固定化された試薬固定化部、7は液体試料を最終的に吸収する吸水部、そして8はプラスチックテープ等からなる透明な液体不透過性シート材であり、試験片1の上流側と試験片1の下流側の両端領域以外の部分を密着した状態で被覆している。また、標識試薬保持部5、試薬固定化部6、吸水部7は、展開層3の一部として構成されているものである。
【0006】
次に、この様に構成された試験片1の動作を説明する。
まず、液体試料を試料添加部4に添加すると、展開層3を展開し始め、標識試薬保持部5の領域に達する。次に、標識試薬保持部5の領域に保持された標識試薬が液体試料の展開により溶解され、液体試料とともに展開層3を下流側へ展開する。展開層3上には試薬固定化部6があり、液体試料中に分析対象物を含む場合には、試薬固定化部6に固定化されている特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して結合反応を起こし、試薬固定化部6の領域に呈色反応を示す。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には結合反応は起こらず、呈色反応も見られない。そして最終的に、液体試料は展開層3の最下流領域の吸水部7まで展開し、試験片1の動作は終了する。
【0007】
この時少なくとも、展開層3表面の上流側に位置する標識試薬保持部5から、下流側に位置する試薬固定化部6までの測定領域は、透明なプラスチックテープ等からなる液体不透過性シート材8によって密着された状態で覆われているので、水分の蒸発を防ぐことができる。また、測定領域に展開する液体試料の量を均一にし、更には一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィー検査を正確に行うことができるものである。
【0008】
ここで標識試薬に金コロイド粒子を用いた場合には、試薬固定化部6における呈色反応が目視可能となり、目視によって定性判定の結果を得ることができる。また、半定量や定量測定の精度が必要な場合には、反射分光光度計を用いて反射吸光度を読み取る方法や、カメラ等の撮像素子によって、試験片1の呈色結果を画像として取り込んで演算処理する方法等によって、液体試料中の分析対象物の濃度を検出できるものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−14097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この様な試験片について、使用期限を過ぎてしまった場合や、たとえ使用期限内であっても、それまでの保存状態が仕様とは異なる悪環境下であった場合には、液体不透過性シート材8を展開層3に密着させる為の糊材が展開層3の上部に浸透し、親水性が低下するという劣化が生じていた。この時、使用者が試験片の劣化に気付かずにそのまま使用してしまった場合には、クロマトグラフィー検査装置が誤測定を行ってしまうという問題点を有していた。
【0010】
従って、本発明は、上記問題点を解決するために、クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を検出し、正確な検査を行うことができるクロマトグラフィー検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載のクロマトグラフィー検査装置は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、前記撮像した結果から前記標識試薬保持部の輝度と前記標識試薬保持部の展開方向下流側領域の輝度との差を求めてあらかじめ規定した規格値より大きい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部とを有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載のクロマトグラフィー検査装置は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、前記撮像した結果から前記液体試料が展開した領域の輝度と前記液体試料が展開した領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求めてあらかじめ規定した規格値より小さい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部とを有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載のクロマトグラフィー検査装置は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、前記撮像した結果から前記液体試料が展開した領域の輝度変化量を求めてあらかじめ規定した規格値より大きい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部とを有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載のクロマトグラフィー検査装置は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、前記撮像した結果から前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域の輝度と前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求めてあらかじめ規定した規格値より大きい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部とを有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載のクロマトグラフィー検査装置は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のクロマトグラフィー検査装置において、劣化していると判定した場合には、さらに検査動作を中止することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載のクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、前記液体試料を展開後に前記標識試薬保持部の輝度と前記標識試薬保持部の展開方向下流側領域の輝度との差を求める工程と、求めた輝度の差をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より大きい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程とを有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とする。
【0017】
請求項7記載のクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、前記液体試料を展開後に前記液体試料が展開した領域の輝度と前記液体試料が展開した領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求める工程と、求めた輝度の差をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より小さい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程とを有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とする。
【0018】
請求項8記載のクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、前記液体試料を展開後に前記液体試料が展開した領域の輝度変化量を求める工程と、前記輝度変化量をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より大きい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程とを有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とする。
【0019】
請求項9記載のクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法は、上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、前記液体試料を展開後に前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域の輝度と前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求める工程と、求めた輝度の差をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より大きい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程とを有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とする。
【0020】
以上により、クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を検出し、正確な検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、クロマトグラフィー試験片に液体試料を展開させた状態で、所定の2点間での輝度差、あるいは、所定の領域での輝度変化量を測定し、あらかじめ定めた規格値と比較することにより、クロマトグラフィー検査中に、自動的に液体不透過性シート材の下部における親水性の低下等の劣化を検出することができるため、正確な検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明のクロマトグラフィー検査装置の実施の形態を、図面と共に詳細に説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1におけるクロマトグラフィー検査装置の動作を、図1と図2を用いて説明する。図1は試験片とその呈色結果を測定するクロマトグラフィー検査装置の構成を示した概略図である。
【0023】
試験片1は、従来例の図5で説明したものと同様な構成になっているため説明は省略する。また、図1に示すクロマトグラフィー検査装置は、発光素子9、絞り10、集光レンズ11、撮像素子12及び計測部20を備えている。
【0024】
発光素子9としてはランプや発光ダイオードや半導体レーザ等を使用し、試験片1を照明する機能をもつ。絞り10は試験片1からの散乱光の絞りを行う。集光レンズ11は撮像素子12に散乱光を集光させ、試験片1の表面の像を撮像素子12の面上に結像させる。そして、撮像素子12ではその光を電気信号に変換する。また、計測部20は、撮像素子12からの電気信号を信号変換部13でデジタル信号に変換し、画像処理部14で撮像素子12の各画素についてのノイズ成分を除去及び測定領域を抽出する画像処理を行う。画像処理を行った後に、吸光度算出部15で試薬固定化部6の呈色の度合を吸光度として算出し、前記吸光度を利用して濃度判定部16であらかじめ装置に入力されている濃度換算式から液体試料中の分析対象物の濃度を計算し、出力部17で前記濃度を表示する。
【0025】
ここでは、発光素子9に波長が610nmの発光ダイオードを使用する。この波長は、金コロイド(標識試薬)と血液(液体試料)との吸光度差が十分得られる条件から選択したものである。この後の説明においては、標識試薬に金コロイド、また液体試料に血液を用いた場合について説明する。なお、発光素子9にランプを使用して、光学フィルタで波長を制限して照明しても同様の効果が得られる。また、撮像素子12にはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを使用する。
【0026】
次に、試験片1の劣化(液体不透過性シート材8の下部における親水性の低下)を判定する為のクロマトグラフィー検査装置の動作を、図1と図2を用いて説明する。
図2は実施の形態1におけるクロマトグラフィー検査装置での劣化検出方法を説明する図であり、試験片1への液体試料の展開の状態と、輝度信号の例を位置関係が分かり易いように、縦に並べて同時に表記したものである。図2(a−1)と(b−1)と(c−1)は、図1における試験片1を、図1における一点鎖線A−A’の断面で表示したものである。また、図2(a−2)と(b−2)と(c−2)は、図2で示しているB点とC点において撮像素子で撮像した各輝度信号のレベルを、B点とC点の差が分かり易い様に模式的に図示したものである。横軸は試験片1の一点鎖線A−A’に沿った位置、縦軸は輝度信号のレベルを示す。ここでB点とC点は、標識試薬保持部5の下流側端部前後に位置する点であり、B点は標識試薬保持部5上に位置する。
【0027】
図2(a−1)は血液(液体試料)を添加していない状態であり、展開層3の上面には液体不透過性シート材8が密着されており、展開層3上には標識試薬保持部5と試薬固定化部6が存在している。この時、図2(a−2)に示すように、B点とC点の輝度信号21と輝度信号22のレベルを比較すると、輝度信号21の方が極端に小さくなる。これは、金コロイド(標識試薬)において照明光が吸収されている為である。
【0028】
図2(b−1)は、正常な試験片1に対して血液(液体試料)23を添加した後、血液(液体試料)23の展開先端部(液体試料が浸透する時の最も先頭の位置)24が標識試薬保持部5を超えて液体不透過性シート材8が貼り付けられている範囲に存在している状態を示している。ここで、標識試薬保持部5の領域で保持されていた金コロイド(標識試薬)は、展開した血液(液体試料)23によって全て溶解される。従って、図2(b−2)に示すように、溶解直後において、B点とC点の輝度信号25と輝度信号26のレベルを比較すると、ほぼ同等となる。
【0029】
図2(c−1)は、劣化した試験片1に対して血液(液体試料)23を添加した後、血液(液体試料)23の展開先端部24が標識試薬保持部5を超えて液体不透過性シート材8が貼り付けられている範囲に存在している状態を示している。ここで27は、液体不透過性シート材8を展開層3に密着させる為の糊材が展開層3の上部に浸透し、親水性が低下している領域を示している。この親水性低下の為に、試験片1に添加された血液(液体試料)23は、親水性低下領域27を避けるように展開する。この時、図2(c−2)に示すように、B点とC点の輝度信号28と輝度信号29のレベルを比較すると、輝度信号28の方が小さくなる。これは、標識試薬保持部5と親水性低下領域27が重なる部分では、親水性低下領域27において、血液(液体試料)23が展開しない為に金コロイド(標識試薬)が溶解せずに残留しており、この部分での照明光がより多く吸収されているからである。よって、図2(b−2)の場合と比較すると、図2(c−2)におけるB点とC点間の輝度レベル差の方が大きくなるので、この相異の検出によって試験片1の劣化の判定が可能となる。
【0030】
以上のことから、クロマトグラフィー検査装置は次の動作によって、試験片の劣化の判断を行う。まず、撮像素子12で試験片1を撮像して電気信号に変換し、信号変換部13で電気信号をデジタル信号に変換した後、画像処理部14で撮像素子12の各画素についてのノイズ成分を除去及び測定領域を抽出する画像処理を行う。そして、信号測定部18でB点とC点を抽出後、両点における輝度信号レベルを検出する。ここで、あらかじめ装置に入力していた時間間隔(実用的には1秒程度が望ましい)で、C点の輝度信号レベルを継続的に監視し、あらかじめ装置に入力していたレベルより低下した時に、血液(液体試料)23の展開がC点を通過したと判断する。この時、劣化判定部19でB点とC点のレベル差(C−B)を求め、あらかじめ装置に入力していた別の規格値と比較し、規格値よりも大きい場合には劣化状態と判断する。ここで、あらかじめ入力される時間間隔や規格値はクロマトグラフィー検査装置に記憶装置を設けて記憶しても良いし、劣化判定部19に記憶装置を設けて記憶しても良い。そして劣化状態と判断したら、クロマトグラフィー検査装置は出力部17にエラー表示によって使用者に警告を行い、検査中であった試験片の検査動作を中止する。
【0031】
従って、クロマトグラフィー検査を行う際に、液体試料が展開した状態で、標識試薬保持部と液体試料が展開した標識試薬保持部の下流部分との輝度を測定し、輝度レベルの差を検出することにより、輝度レベルの差があらかじめ定めた規格値より大きい場合に、クロマトグラフィー試験片に親水性が低下する劣化が生じていると判断して検査を中止することができるため、クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を自動的に検出し、正確な検査を行うことができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2におけるクロマトグラフィー検査装置の動作を、図1と図3を用いて説明する。また、本実施の形態2では、試験片の2種類の劣化判定方法を一緒に説明する。
【0032】
図3は実施の形態2におけるクロマトグラフィー検査装置での劣化検出方法を説明する図であり、試験片1への血液(液体試料)33の展開の状態と、輝度信号の例を位置関係が分かり易いように、縦に並べて同時に表記したものである。図3(a−1)と(b−1)と(c−1)は、図1における試験片1を、図1における一点鎖線A−A’の断面で表示したものである。また、図3(a−2)と(b−2)と(c−2)は、図3で示しているD点とE点において撮像素子で撮像した各輝度信号のレベルを、D点とE点の差が分かり易い様に模式的に図示したものである。横軸は試験片1の一点鎖線A−A’に沿った位置、縦軸は輝度信号のレベルを示す。ここでD点とE点は、液体不透過性シート材8が存在する範囲であり、且つ試薬固定化部6よりも下流側の領域に位置している。そして、液体試料がD点とE点の間まで展開するのを待って、劣化の検出を行うようにする。
【0033】
図3(a−1)は血液(液体試料)を添加していない状態であり、展開層3の上面には液体不透過性シート材8が密着されており、展開層3上には標識試薬保持部5と試薬固定化部6が存在している。この時、図3(a−2)に示すように、D点とE点の輝度信号31と輝度信号32のレベルを比較すると、殆ど同等となる。これは展開層3の同じ表面状態の輝度を比較している為である。
【0034】
また、図3(a−2)には、観測位置に対する輝度信号の細かな変化(以下、「輝度変化」と呼び、その変化の量を輝度変化量と呼ぶ)も表記している。この変化は、展開層3の繊維の凹凸を撮像すると、照明光によって凸の部分は明るく見え、凹の部分は影になって暗く見えることで発生している。実施の形態1で説明した図2においても同様の輝度変化が存在するはずであるが、分かり易くする為に図2では省略している。
【0035】
次に、図3(b−1)は、正常な試験片1に対して血液(液体試料)33を添加した後、血液(液体試料)33が試薬固定化部6を超えて、D点とE点の中間位置まで展開した状態を示している。この時、図3(b−2)に示すように、D点とE点の輝度信号35と輝度信号36のレベルを比較すると、輝度信号35の方が小さくなる。これは、D点では金コロイド(標識試薬)が溶解した血液(液体試料)33が存在する為に、この部分で照明光が吸収されているからである。
【0036】
また、輝度信号35前後における輝度変化量Ndと輝度信号36前後における輝度変化量Neを比較すると、Ndの方が小さくなっている。これは、輝度信号36前後においては前述の通り、展開層3が乾燥している為に繊維の凹凸による明暗が鮮明に撮像されることに対して、輝度信号35前後においては展開層3の繊維中に血液(液体試料)33が満たされているので、凹凸が見えにくくなる為である。
【0037】
次に、図3(c−1)は、劣化した試験片1に対して血液(液体試料)33を添加した後、血液(液体試料)33が試薬固定化部6を超えて、D点とE点の中間位置まで展開した状態を示している。ここで27は、液体不透過性シート材8を展開層3に密着させる為の糊材が展開層3の上部に浸透し、親水性が低下している領域を示している。この親水性低下の為に、試験片1に添加された血液(液体試料)33は、親水性低下領域27を避けるように展開する。この時、図3(c−2)に示すように、D点とE点の輝度信号37と輝度信号38のレベルを比較すると、輝度信号37の方が小さくなる。これは、親水性低下領域27より下部には金コロイド(標識試薬)が溶解した血液(液体試料)33が存在する為に、発光素子9からの照明光の一部がここで吸収されてしまうからである。しかし、図3(b−2)D点の場合と比較すると、図3(c−2)D点の方が親水性低下領域27に血液(液体試料)33が存在しない分、照明光の吸収量は小さくなるので、この相異の検出によって試験片1の劣化の判定が可能となる。
【0038】
また、輝度信号37前後における輝度変化量Ndと輝度信号38前後における輝度変化量Neを比較すると、ほぼ同等となっている。これは、輝度信号37と輝度信号38のどちらの位置前後においても、試験片1の表面は展開層3の乾燥状態(親水性低下領域27)であって、繊維の凹凸による明暗が鮮明に撮像される為である。よって、図3(b−2)の場合と比較すると、図3(c−2)のNdの方が大きくなるので、この相異の検出によって試験片1の劣化の判定が可能となる。
【0039】
従って、クロマトグラフィー検査装置は次の動作によって、試験片1の劣化の判断を行う。
まず、第1の方法では、撮像素子12で試験片1を撮像して電気信号に変換し、信号変換部13で電気信号をデジタル信号に変換した後、画像処理部14で撮像素子12の各画素についてのノイズ成分を除去及び測定領域を抽出する画像処理を行う。そして、信号測定部18でD点とE点を抽出後、両点における輝度信号レベルを検出する。ここで、あらかじめ装置に入力していた時間間隔(実用的には1秒程度が望ましい)で、D点の輝度信号レベルを継続的に監視し、あらかじめ装置に入力していたレベルより低下した時に、血液(液体試料)33の展開がD点を通過したと判断する。この時、劣化判定部19でD点とE点のレベル差(E−D)を求め、あらかじめ装置に入力していた別の規格値と比較し、規格値よりも小さい場合には劣化状態と判断する。ここで、あらかじめ入力される時間間隔や規格値はクロマトグラフィー検査装置に記憶装置を設けて記憶しても良いし、劣化判定部19に記憶装置を設けて記憶しても良い。そして劣化状態と判断したら、クロマトグラフィー検査装置は出力部17にエラー表示によって使用者に警告を行い、検査中であった試験片1の検査動作を中止する。
【0040】
また、第2の方法では、信号測定部18でD点における輝度変化の大きさNdを検出して、劣化判定部19であらかじめ装置に入力していた別の規格値と比較し、規格値よりも大きい場合には劣化状態と判断する。そして劣化状態と判断したら、クロマトグラフィー検査装置は出力部17にエラー表示によって使用者に警告を行い、検査中であった試験片1の検査動作を中止する。
【0041】
従って、クロマトグラフィー検査を行う際に、液体試料が展開した状態で、液体試料が展開した領域と液体試料が展開した領域端部の下流部分との輝度を測定し、輝度レベルの差を検出することにより、輝度レベルの差があらかじめ定めた規格値より小さい場合に、クロマトグラフィー試験片に親水性が低下する劣化が生じていると判断して検査を中止することができるため、クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を自動的に検出し、正確な検査を行うことができる。
【0042】
尚ここで、本実施の形態2の第2の方法について補足説明を行う。本実施の形態では、試験片1上の一点鎖線A−A’における輝度変化量で、試験片1の劣化を判定する説明を行った。実はこの時、親水性低下領域27が液体不透過性シート材8の下部一面に生成された場合を想定していた。しかし本方法であれば、親水性低下領域27が液体不透過性シート材8の下部の一部のみに生成された場合でも検知が可能となる。つまり、液体試料33が液体不透過性シート材8の下部を全て展開した後に、液体不透過性シート材8の領域における輝度変化量の平面的な分布を求める。そして、輝度変化量があらかじめ装置に入力していた規格値より小さくなる範囲の面積総和が、別の規格値より大きくなった場合に、試験片1の劣化と判断するものである。これによれば、僅かの劣化も見落とさずに判断できるので、更に信頼性を向上させたクロマトグラフィー検査装置となる。
【0043】
尚、本実施の形態2においては、展開層3上に標識試薬保持部5を配置した場合について説明したが、この様な配置を行わずに、血液(液体試料)に金コロイド(標識試薬)を予め混合した状態で展開層3を展開させても同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3におけるクロマトグラフィー検査装置の動作を、図1と図4を用いて説明する。
【0044】
図4は実施の形態3におけるクロマトグラフィー検査装置での劣化検出方法を説明する図であり、試験片1への血液(液体試料)の展開の状態と、輝度信号の例を位置関係が分かり易いように、縦に並べて同時に表記したものである。図4(a−1)と(b−1)と(c−1)は、図1における試験片1を、図1における一点鎖線A−A’の断面で表示したものである。また、図4(a−2)と(b−2)と(c−2)は、図4で示しているF点とG点において撮像素子で撮像した各輝度信号のレベルを、F点とG点の差が分かり易い様に模式的に図示したものである。横軸は試験片1の一点鎖線A−A’に沿った位置、縦軸は輝度信号のレベルを示す。ここでF点とG点は、液体不透過性シート材8の展開下流側端部前後に位置する点であり、F点は液体不透過性シート材8上の点、G点は液体不透過性シート材8が貼り付けられていない吸水部7上の点である。
【0045】
図4(a−1)は血液(液体試料)を添加していない状態であり、展開層3の上面には液体不透過性シート材8が密着されており、展開層3上には標識試薬保持部5と試薬固定化部6が存在している。この時、図4(a−2)に示すように、F点とG点の輝度信号41と輝度信号42のレベルを比較すると、殆ど同等となる。これは展開層3の同じ表面状態の輝度を比較している為である。尚、図3では輝度変化の状態を表記したが、図4では分かり易くする為に省略する。
【0046】
図4(b−1)は、正常な試験片1に対して血液(液体試料)43を添加した後、血液(液体試料)43の展開先端部44が液体不透過性シート材8の展開下流側端部を超えて、吸水部7まで展開した状態を示している。この時、図4(b−2)に示すように、F点とG点の輝度信号45と輝度信号46のレベルを比較すると、殆ど同等となる。これは、F点には不透過性シート材8が存在しているが、透明であることから輝度信号への影響はなく、結局展開層3の同じ表面状態の輝度を比較していることになる為である。
【0047】
図4(c−1)は、劣化した試験片1に対して血液(液体試料)43を添加した後、血液(液体試料)43の展開先端部44が液体不透過性シート材8の展開下流側端部を超えて、吸水部7まで展開した状態を示している。ここで27は、液体不透過性シート材8を展開層3に密着させる為の糊材が展開層3の上部に浸透し、親水性が低下している領域を示している。この親水性低下の為に、試験片1に添加された血液(液体試料)43は、親水性低下領域27を避けるように展開する。この時、図4(c−2)に示すように、F点とG点の輝度信号47と輝度信号48のレベルを比較すると、輝度信号48の方が小さくなる。これは、G点には不透過性シート材8及び親水性低下領域27が存在しないことから、展開層3の表面まで血液(液体試料)43が浸透しており、この血液(液体試料)によって照明光が吸収される為である。よって図4(b−2)の場合と比較すると、図4(c−2)におけるF点とG点間のレベル差の方が大きくなるので、この相異の検出によって試験片1の劣化の判定が可能となる。
【0048】
以上のことから、クロマトグラフィー検査装置は次の動作によって、試験片1の劣化の判断を行う。まず、撮像素子12で試験片1を撮像して電気信号に変換し、信号変換部13で電気信号をデジタル信号に変換した後、画像処理部14で撮像素子12の各画素についてのノイズ成分を除去及び測定領域を抽出する画像処理を行う。そして、信号測定部18でF点とG点における輝度信号レベルを検出する。ここで、あらかじめ装置に入力していた時間間隔(実用的には1秒程度が望ましい)で、G点の輝度信号レベルを継続的に監視し、あらかじめ装置に入力していたレベルより低下した時に、血液(液体試料)23の展開がG点を通過したと判断する。この時、劣化判定部19でF点とG点のレベル差(F−G)を求め、あらかじめ装置に入力していた別の規格値と比較し、規格値よりも大きい場合には劣化状態と判断する。ここで、あらかじめ入力される時間間隔や規格値はクロマトグラフィー検査装置に記憶装置を設けて記憶しても良いし、劣化判定部19に記憶装置を設けて記憶しても良い。そして劣化状態と判断したら、クロマトグラフィー検査装置は出力部17にエラー表示によって使用者に警告を行い、検査中であった試験片1の検査動作を中止する。
【0049】
従って、クロマトグラフィー検査を行う際に、液体試料が展開した状態で、液体不透過性シート材8における展開下流側端部前後の部分の輝度を測定し、輝度レベルの差を検出することにより、輝度レベルの差があらかじめ定めた規格値より大きい場合に、クロマトグラフィー試験片に親水性が低下する劣化が生じていると判断して検査を中止することができるため、クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を自動的に検出し、正確な検査を行うことができる。
【0050】
尚、本実施の形態3においては、展開層3上に標識試薬保持部5を配置した場合について説明したが、この様な配置を行わずに、血液(液体試料)に金コロイド(標識試薬)を予め混合した状態で展開層3を展開させても同様の効果が得られる。
【0051】
尚、本実施の形態1から3において、検体試料が血液サンプルの場合について述べたが、尿や唾液や体液などの他の試料であっても何ら支障はない。
また、本実施の形態1から3において、液体不透過性シート材の糊材の浸透によって発生する展開層の親水性低下を検知する装置について述べたが、別の部材や試薬によって同様の親水性低下領域が発生した場合にも適用が可能なものである。
【0052】
また、本実施の形態1から3において、試験片1の像を撮像素子で撮像した信号を利用する場合について述べたが、照明光を集光して試験片1に照射し、照明光と試験片1を相対的に移動させた時の散乱光量変化を信号として利用する場合でも、同様に適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、クロマトグラフィー検査時に試験片の劣化を検出し、正確な検査を行うことができ、光学的な信号検出を行って液体試料中の成分濃度を測定することにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置およびクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】試験片とその呈色結果を測定するクロマトグラフィー検査装置の構成を示した概略図
【図2】実施の形態1におけるクロマトグラフィー検査装置での劣化検出方法を説明する図
【図3】実施の形態2におけるクロマトグラフィー検査装置での劣化検出方法を説明する図
【図4】実施の形態3におけるクロマトグラフィー検査装置での劣化検出方法を説明する図
【図5】従来のクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図
【符号の説明】
【0055】
1 試験片
2 支持体
3 展開層
4 試料添加部
5 標識試薬保持部
6 試薬固定化部
7 吸水部
8 液体不透過性シート材
9 発光素子
10 絞り
11 集光レンズ
12 撮像素子
13 信号変換部
14 画像処理部
15 吸光度算出部
16 濃度判定部
17 出力部
18 信号測定部
19 劣化判定部
20 計測部
21,25,28 輝度信号
22,26,29 輝度信号
23,33,43 血液(液体試料)
24,34,44 展開先端部
31,35,37 輝度信号
32,36,38 輝度信号
41,45,47 輝度信号
42,46,48 輝度信号
27 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、
前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、
前記撮像した結果から前記標識試薬保持部の輝度と前記標識試薬保持部の展開方向下流側領域の輝度との差を求めてあらかじめ規定した規格値より大きい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部と
を有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とするクロマトグラフィー検査装置。
【請求項2】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、
前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、
前記撮像した結果から前記液体試料が展開した領域の輝度と前記液体試料が展開した領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求めてあらかじめ規定した規格値より小さい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部と
を有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とするクロマトグラフィー検査装置。
【請求項3】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、
前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、
前記撮像した結果から前記液体試料が展開した領域の輝度変化量を求めてあらかじめ規定した規格値より大きい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部と
を有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とするクロマトグラフィー検査装置。
【請求項4】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査装置であって、
前記液体試料が展開された状態の前記クロマトグラフィー試験片を撮像する撮像素子と、
前記撮像した結果から前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域の輝度と前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求めてあらかじめ規定した規格値より大きい場合には前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する計測部と
を有し、劣化していると判定した場合には警告を発することを特徴とするクロマトグラフィー検査装置。
【請求項5】
劣化していると判定した場合には、さらに検査動作を中止することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のクロマトグラフィー検査装置。
【請求項6】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、
前記液体試料を展開後に前記標識試薬保持部の輝度と前記標識試薬保持部の展開方向下流側領域の輝度との差を求める工程と、
求めた輝度の差をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より大きい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程と
を有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法。
【請求項7】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、
前記液体試料を展開後に前記液体試料が展開した領域の輝度と前記液体試料が展開した領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求める工程と、
求めた輝度の差をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より小さい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程と
を有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法。
【請求項8】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、
前記液体試料を展開後に前記液体試料が展開した領域の輝度変化量を求める工程と、
前記輝度変化量をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より大きい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程と
を有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法。
【請求項9】
上部に液体不透過性シート材が貼り付けられたクロマトグラフィー試験片の展開層に液体試料を展開させ標識試薬保持部に保持された標識試薬を溶解して試薬固定化部で呈色させることにより検査を行うクロマトグラフィー検査の際に、同時に前記クロマトグラフィー試験片の劣化判定を行う方法であって、
前記液体試料を展開後に前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域の輝度と前記液体不透過性シート材が貼り付けられた領域端部の展開方向下流側領域の輝度との差を求める工程と、
求めた輝度の差をあらかじめ規定した規格値と比較して前記規格値より大きい場合に前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定する工程と
を有し、検査中において前記クロマトグラフィー試験片が劣化していると判定した場合には、検査動作を中止することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の劣化判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−115470(P2009−115470A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285616(P2007−285616)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】