クロマトグラフィー用チップの製造方法
【課題】 マイクロチャネル中に粒子を充填させたクロマトグラフィー用チップの製造方法の提供。
【解決手段】 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され前記充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板の表面側から、前記充填材を分散させたスラリーを塗布して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する充填工程と、前記充填工程後の前記基板の表面側に残った前記スラリーを除去する除去工程と、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程と、を備えた。
【解決手段】 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され前記充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板の表面側から、前記充填材を分散させたスラリーを塗布して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する充填工程と、前記充填工程後の前記基板の表面側に残った前記スラリーを除去する除去工程と、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用チップの製造方法に関し、より詳しくはマイクロ流体チップを用いたクロマトグラフィー用チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトリソグラフィーの技術による微細加工によって、平板ガラスからなるチップ上にマイクロチャネル(微細流路)が形成されたチップを、キャピラリー電気泳動用チップとして用いることにより、高性能で高速な電気泳動分離を行うことが可能であることが知られている。このキャピラリー電気泳動用チップは、ガラスやSi/SiO2などのシリコンを材料とした基板を用いて、基板上に微細加工によりキャピラリーチャネルを形成するものである。一般的に、チャネルの径(カラム径)が小さいほど感度が向上することが知られているため、このようなチップを用いたマイクロ分析システムが急速に進歩している。このマイクロ分析システムの一つとして、マイクロチップを用いたクロマトグラフィーも検討されている。
【0003】
しかしながら、クロマトグラフィーを行なう際に、試料をキャピラリー電気泳動用チップのようなマイクロチャネルをクロマトグラフィー用のカラムとして用いるためには、マイクロチャネル部分にシリカゲル等の無機多孔質粒子をリガンド修飾した微粒子を充填する必要があるが、粒子の充填はカラム径が小さくまた、カラム長が長くなればなるほど困難になる。そこで、粒子充填法に代わり、一体型(モノリス型)のクロマトグラフィー用のカラムが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−311008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、板状部材の溝に2重細孔構造のシリカゲルが充填されたクロマトグラフ用チップが開示されている。このチップは、溝内で相分離を利用したゾル−ゲル法により、ゲルを調整し、続いて湿潤状態のゲルを乾燥・加熱して得られる。これにより、微量物質の分離を可能としている。
【0005】
しかし、特許文献1のチップは製造工程で加熱して焼成させることから、熱に弱い樹脂基板は焼成することができない。また、基板の熱による変形等の問題も残る。さらに、アルカリ条件下で細孔形成を行うため、再現性を取ること自体が難しく、シリカ骨格を基板に作り込んだのちにリガンド修飾を行うことからリガンド修飾をシリカ表面全体に均一的に実施することが困難である。
【0006】
また、充填型カラムを用いた場合には、充填材がカラム内から流れ出ないよう、カラムの端部にトラップ部を設ける必要があるが、トラップ部が予め設けられた状態では、従来行われてきた粒子充填法では粒子を充填することは困難である。
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明はマイクロチャネル中に粒子を充填させたクロマトグラフィー用チップの製造方法を提供することを目的とし、より具体的には、樹脂基板のチップに形成されたマイクロチャネルにシリカゲル粒子を充填させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より具体的には本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板の表面側から、前記充填材を分散させたスラリーを塗布して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する充填工程と、前記充填工程後の前記基板の表面側に残った前記スラリーを除去する除去工程と、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0010】
(1)の発明によれば、基板の表面側から、充填材を分散させたスラリーを塗布する充填工程を備えたことによって、マイクロチャネルの両端に設けられたトラップ部の間に充填材を均一に充填させることが可能となる。また、スラリーが付着している部分は、後の封着工程でカバープレートを適切に封着することができないが、除去工程を備えたことによって基板中のマイクロチャネルが形成されていない部分に残ったスラリーを除去することが可能となる。
【0011】
ここで、「基板」とは、填材を分散させたスラリーを塗布又は注入することが可能な板状体をいう。具体的にはガラス、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、シリコーンゴム等の型で成形可能なものが好ましいが、絶縁性や成形の自由度から樹脂材料であることが好ましい。熱可塑性樹脂材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレンポリマー等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることが好ましい。また、機械的強度の観点からポリエーテルエーテルケトン樹脂脂を用いることが好ましく、より安価で生産性が高いポリジメチルシロキサンを用いることが更に好ましい。
【0012】
また、「充填工程」におけるスラリーの充填は、シリンジを用いてスラリーを注入してもよく、また、スパチュラを用いてマイクロチャネルにスラリーを埋め込んでもよい。なお、スラリーがマイクロチャネル内に均一に充填されるよう超音波等を用いてもよい。
【0013】
また、「除去工程」とは、上述のように充填工程後の基板の表面側に残ったスラリーを除去する工程をいう。カバープレートが基板表面に残っている場合、後の封着工程でカバープレートを基板に封着させることができないためである。また、「基板の表面側」とは、基板の表面そのものと、基板に例えばマスクのような被覆材が設けられている面の両方を含む。
【0014】
次いで、「封着工程」とは、基板の表面に直接カバープレートを被せて接着させる工程をいう。カバープレートの封着は接着剤や、放電プラズマ溶着等、公知の方法を用いてもよい。
【0015】
(2) 前記充填工程は、前記基板表面に前記スラリーを塗布する工程であり、前記除去工程は、前記基板表面をスキージで掻き取る工程である(1)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0016】
(2)の発明によれば、除去工程を、スキージで掻き取る工程としたことによって基板表面に残った充填材を完全に除去することが可能となる。これによって後の封着工程においてカバープレートを容易に封着させることができる。また、スキージを用いて掻き取ることによって、マイクロチャネル内に充填されたスラリーを均すことも可能となる。なお、充填剤を除去しやすいよう、チャネル以外の基板表面に充填剤との吸着性を低下させる処理(例えば、親水化処理)を施すこともできる。
【0017】
(3) 前記充填工程の前に、前記マイクロチャネル以外の部分を覆い、かつ、前記マイクロチャネル上に相当する位置に開口を有するマスクを予め前記基板上に配置するマスク配置工程を行ない、このマスク上から前記充填工程を行い、その後、前記マスクを剥離した後に、前記封着工程を行う、(1)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0018】
(3)の発明によれば、充填工程の前にマスク配置工程を設けたことによって、マイクロチャネル以外の部分にスラリーが拡散しても後の除去工程でマスクを剥離させるだけで、スラリーを容易に除去することが可能となる。その理由として、一度基板に付着した微粒子は除去しにくく、特にポリジメチルシロキサンとODS(オクタデシルシラン)微粒子は疎水的に吸着するため取り除くことが困難であるためである。また、テトラヒドロフランのように溶解力の強い有機溶剤で洗浄することも考えられるが、放電プラズマ溶着の際、カバープレートの溶着を妨げることがあるため、基材の接着面には溶剤をつけないほうが望ましいためである。
【0019】
ここで、「マスク」とは、マイクロチャネル以外の部分を覆い、かつ、このマイクロチャネル上に相当する位置に開口を有し、基板から剥離可能な板状又はフィルム状の物質をいう。具体的には、金属板や基板と同一素材のフィルム等が挙げられる。マスクの形成方法としては、例えばフォトリソグラフィー法を用いて樹脂基板又はガラス基板に形成する方法が挙げられる。
【0020】
(4) 前記マスクの開口幅は、前記マイクロチャネルの幅よりも小さくなるように前記マスクを配置する(3)に記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0021】
(4)の発明によれば、上記のマスクの開口幅をマイクロチャネルの幅よりも小さくなるようにしたことによって、マイクロチャネル以外にスラリーが拡散することを抑制することが可能となる。これによってカバープレートの封着がさらに容易になる。
【0022】
(5) 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の前後に、前記基板及び/又はカバープレートに、前記マイクロチャネルの前記トラップ部間に連通する少なくとも1箇所の注入部を形成する注入部形成工程と、この注入部から前記充填材を分散させたスラリーを注入して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する注入工程と、前記注入部を封鎖する封鎖工程と、含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0023】
(5)の発明によれば、予め基板にカバープレートを封着させたチップを用いたことによって、スラリーが基板表面に拡散することがなくなる。これによって(5)の発明に係るクロマトグラフィー用マイクロチップをより効率よく製造することが可能となる。
【0024】
ここで、「注入部」とは、基板及び/又はカバープレートの表面からマイクロチャネルへと連通するように設けられた溝や穴をいう。この注入部は、カッターやレーザ、ドリル等を用いて形成される。また、加圧すればスリットが開口するマイクロバルブ等を用いてもよい。また「注入工程」とは、具体的には上述の注入部にシリンジやホッパー等、スラリーを押し出すことが可能な手段を設け、スラリーをマイクロチャネルへと注入する工程をいう。
【0025】
更に、「封鎖工程」とは、具体的には接着剤や密栓を用いて注入部を封鎖する工程をいう。
【0026】
(6) 前記注入部は複数個形成されている(5)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0027】
(6)の発明によれば、注入部を複数個形成したことによって、スラリーがマイクロチャネルへ注入される際にかかる圧力を他の注入部から逃がすことや、複数箇所からの充填が可能となる。これによってスラリーを効率よくマイクロチャネルへ注入することができる。また、マイクロチャネルの形状によっては1ヶ所の注入部からでは、マイクロチャネルに均一にスラリーを注入することが困難である。(6)の発明によればこの注入部を複数設けたことによってマイクロチャネルの形状に関わらずスラリーを均一に注入することができる。
【0028】
(7) 前記注入工程は、一方の注入部から前記スラリーを注入すると同時に、他方の注入部又は前記マイクロチャネル内の端部より、前記マイクロチャネル内を減圧しながら行う(5)又は(6)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0029】
(7)の発明によれば、一方の注入部からスラリーを注入すると同時に、他方の注入部等からマイクロチャネル内を減圧したことによって、スラリーをより効率よくマイクロチャネル内に注入することができる。また、注入工程において、マイクロチャネル内にかかる圧力は、スラリーの注入量に比例する。(6)の発明によって注入部を複数設けたとしてもマクロチャネルの形状によっては、圧力を逃がすことができず、スラリーを注入しきれない場合があるため、(7)に係る発明のように、他方の注入部から減圧すればチャネル内の圧力上昇を未然に防ぐことも可能となる。
【0030】
(8) 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の1箇所に形成され前記充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の後に、前記マイクロチャネルの一端側から前記トラップ部に向けて前記充填材を分散させたスラリーを注入する注入工程と、前記マイクロチャネルの多端側に第2トラップ部を形成する工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0031】
(8)の発明によれば、注入工程の後に、第2トラップ部を形成する工程を設けたことによって、マイクロチャネル内に注入されたスラリーの流出を防止することが可能となる。マイクロチャネルの両端には、試料を注入するための導入口又は電極を装着するためのポートが設けられているため、マイクロチャネルの形状によってはこのポートからスラリーを注入した方がチャネル内に均一にスラリーを注入することができる場合がある。この場合、ポート付近に予めトラップ部が設けられていると、このトラップ部がスラリーの注入を妨げてしまう。従って(8)に係る発明のように後から第2トラップ部を形成する工程を設ければこの問題を解消することができる。
【0032】
なお、「第2トラップ部を形成する工程」とは具体的には、充填材よりも小さな孔を多数有する焼結体を構成し、固定することで形成することをいう。この第2トラップ部は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のカラムを製造する際の公知の技術を応用することができる。
【0033】
(9) 前記基板は、ガラス、プラスチックである(1)から(8)いずれか記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0034】
(9)の発明によれば、基板をガラス、プラスチックとしたことによって、その表面にマイクロチャネルのパターンを容易に形成することが可能となる。また、金属よりも軽量であるため、(9)の発明に係るクロマトグラフィー用マイクロチップの軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法によれば、粒子径の小さい粒子をマイクロチャネル中に均一に充填させることが可能となる。また、従来用いられていたカラムではなく、チップを用いることにより微少量の試料の前処理・分析も可能になる。また、MEMSの技術を用いることによって、基板上に複雑なパターンのマイクロチャネルを形成した場合でも、充填材を充填することが可能となるため、従来にないチャネルパターンの新しいデバイスの開発に繋がる。たとえば、限られた面積の基板を有効利用できるよう円弧部分を持ったパターンを形成した場合にも、そこに均一的に粒子を充填できるし、チャネルがアレイ状に配列したマルチチャネルパターンとして、LCによる並列分析および順次分析のシステムを想定した場合にも、均一的に粒子が充填されたマルチカラムアレイチップが実現されることになり、分析の再現性・精度を格段に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るクロマトグラフィー用チップを示した図である。このクロマトグラフィー用チップ10は、ポリジメチルシロキサンにより形成された平板状の基板12と、この基板12の上面に配設されるポリジメチルシロキサン又はガラスにより形成された平板状のカバープレート14とを有して構成されている。そして、基板12には、液体の流路としてマイクロチャネル16が形成されている。なお、カバープレート14によって、基板12の上面に形成されたマイクロチャネル16は封止(シール)されている。また、カバープレート14には、その上面14aから下面14bへ貫通するようにして形成されたサンプル導入ならびに電極装着のための2つのポート18a、18bが穿設されている。ここで、基板12の具体的な大きさとしては、長手方向が50mmから100mmであることが好ましく、70mmから90mmであることがより好ましい。短手方向は50mmから100mmであることが好ましく、60mmから80mmであることがより好ましい。また、厚さは0.1mmから10mmであることが好ましく、0.3mmから1mmであることがより好ましいが、これに限られるものではない。なお、本実施形態においては基板の材質をポリジメチルシロキサンとしているが、ガラスを用いてもよい。
【0038】
ここで、2つのポート18a、18bとマイクロチャネル16とは、2つのポート18a、18bの一部にマイクロチャネル16の両方の端部16a、16bとがそれぞれ位置するように寸法設定されて配置されており、ポート18aと端部16aとが連通し、ポート18bと端部16bとが連通するようになされている。
【0039】
また、マイクロチャネル16の長さは、例えば、240mmに設定され、マイクロチャネル16の幅は、例えば、200μmに設定され、マイクロチャネル16の深さは、例えば、数十μmに設定されている。なお、マイクロチャネル16の長さや形状、幅等は特に限定されるものではなく、チャネル幅、長さは、充填する粒子と、耐圧性との関係から、Kozeny−Carmanの式から望ましい寸法のおおよその値を算出することができる。ここで、同じ微粒子であってもカラムの理論段数を向上させるにはカラム長が長いほうが良い。本カラムチップでは、限られた面積の数センチ角のチップ上に20cmから30cmのカラムを形成するため、図のように複数の直線部分をと複数のコーナー部分で連結して平面視で曲線状のカラム形状とし、カラム長を長く設定している。これにより、直線状の場合に比べて、理論段数の向上を図っている。コーナー部の曲率は、クロマト分離評価上、一つのサンプルの分離ピークが2分されない程度の範囲に設定される。あまり曲率が大きいと、内周と外周との速度差が生まれ同一サンプルが2つのピークとなって検出されることになるからである。さらに、マイクロチャネル16の両方の端部16a、16bの両方には、トラップ部161が設けられている。このトラップ部161については後述する。
【0040】
また、図2は、本発明に係るクロマトグラフィー用チップ10のX−X´断面におけるクロマトグラフィー用チップ10の拡大断面を示した図である。この図に示すように、マイクロチャネル16には充填材20が充填されている。本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において、充填材20は、以下に示す方法で充填される。
【0041】
図3(a)〜(d)は、本発明に係るクロマトグラフィー用チップに充填材20を充填する工程を示した図である。まず、基板12にチャネルのパターンを公知の方法で形成する(図3(a)参照)。次に、溶媒中に分散させたスラリー状充填材20を均一に塗布する(図3(b)参照)。このとき、スラリー状充填材20が均一にマイクロチャネル16中に充填されるよう、超音波等で振動させてもよい。
【0042】
ここで、スラリー状充填材20の平均粒径は、1μm〜10μmであることが好ましく1.7μm〜5μmであることが更に好ましい。なお、材質としては、多孔性シリカの表面をリガンド修飾したクロマトグラフィー(HPLC)用の充填剤を用いても、ポリマーからなるクロマトグラフィー(HPLC)用の充填剤を用いてもよい。なお、本実施形態において、スラリー状充填材20は、水、エタノール、テトラヒドロフラン、メタノール、トルエン等揮発性の溶媒中に分散させてスラリーとして用いた。特に、疎水性の高いテトラヒドロフラン、トルエンなどの溶剤を添加して用いると、ポリジメチルシロキサンと疎水性微粒子との疎水的な吸着をなくし、微粒子の流動性を高めることができるため好ましい。
【0043】
なお、本発明における「スラリー」とは、ペースト状のものも含まれる。スラリーの粘度は、チャネル内にスラリーを塗布する場合には、微粒子を密に充填できるよう、微粒子の含有量を高く設定し、流通させながら充填する場合には、目詰まりを回避するために含有量を低く設定したものを使用することが望ましい。
【0044】
次に、マイクロチャネル16に充填されきれなかったスラリー状充填材20をスキージ60で除去する(図3(c)参照)。その方法として、平坦な面を持った治具、例えばスパーテル等で除去する方法等が挙げられる。
【0045】
最後に、基板12にカバープレート14を被せ、溶着させる(図3(d)参照)。溶着方法としては、放電プラズマ溶着や、接着剤による接着等が挙げられるが、放電プラズマ溶着することが好ましい。マイクロチャネル縁の部分が、プラズマ溶着であれば、きれいに密着され、液漏れなどの可能性が少ないが、接着剤を用いた場合には、縁をきれいに密着することができないため、液漏れの可能性が生じるためである。カバープレート14の材質としては、基板12と同一素材のポリジメチルシロキサンや、ガラス板等を用いることが好ましい。
【0046】
<第2実施形態>
図4(a)〜(d)及び図5(a),(b)は、本発明の第2実施形態を示した図である。本実施形態においては、充填材をマイクロチャネル16´に充填する前にマスク141を被覆して、充填材を充填した後にマスク141を除去する工程を含む以外は、上記実施形態と同様の方法で充填を行なう。マスク141は、マイクロチャネル16´のパターンと同様のパターンが描かれた板状材やシート材を用いる。マスク141のパターンは基板に形成する方法と同じ方法で形成される。なお、マスク141をマイクロチャネル16´のパターンにぴったりと合わせるために、基板12とマスク141のそれぞれに例えば、凹凸のような合わせ印(図示せず)を付けておいてもよい。これによってマスク141の開口部分を通じてスラリー状充填材20を案内することができる。
【0047】
図5(a)に示すように、マイクロチャネル16´を隔てたマスク141同士の幅W1は、マイクロチャネル16´の幅W2と同じ幅であってもよいが、図5(b)に示すように、W1がW2よりも小さいことが好ましい。これによって、マスク141を基板12´から除去する際に、充填材がマイクロチャネル16´から零れ落ち、基板12´の表面に充填材が拡散するのを防止することが可能となる。また、マスク141の厚みは充填材の粒子径よりも小さい方が好ましい。マスク141の厚みが充填材の粒子径よりも大きくなると、充填材がマイクロチャネル16´の深さよりも更に積層されるため、はみ出しや、カラムの膨張の要因となってしまうためである。
【0048】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態を示した図である。本実施形態においては、マイクロチャネル36が形成された基板32に予めカバープレート34を溶着させたチップ30を用いて充填材を充填する点が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
【0049】
まず、カバープレート34をマイクロチャネル36が形成された基板32に放電プラズマ法により溶着させる。次に、基板32の周縁部(乃至はカバープレート34の上面部又は裏面部)からマイクロチャネル36に連通するように注入部38を設ける。本実施形態において注入部38は、カッターを用いて形成している。また、注入部38の位置や数は特に限定されないが、充填材がマイクロチャネル36の両方の端部36a、36bの少なくともどちらか一方に設けられたトラップ部361を通り抜けないよう当該トラップ部361の内側に設ける必要がある。なお、本実施形態では注入部を2箇所設けている。
【0050】
マイクロチャネル36にスラリー状充填材20を充填させる具体的な方法として、注入部38aに充填材20を供給する供給手段(例えばホッパーやシリンジ)40を差し込む。次に、この供給手段40に所定の圧力を加え、スラリー状充填材20を押出す。このとき、他方の注入部38bから圧力を開放する。なお、注入部38bに減圧ポンプ等の減圧手段を設けてもよい。これにより、スラリー状充填材20をスムーズにマイクロチャネル36内に充填させることが可能となる。なお、注入部38は、図7に示すようにカバープレート34に設けられていてもよい。ここで、注入部38は、圧力を逃がす部分として作用するのみならず、複数の注入部38から同時にスラリー状充填材20を注入してもよい。このようにすることにより、圧力が行きとどかないカラムの曲線部などに充填剤を均一に詰めていくことが可能となる。
【0051】
さらに、注入部38を、マイクロチャネル36のコーナー部に形成し、この注入部38に連結されたチューブ(図示せず)の端部からシリンジでスラリー状充填材20を注入してもよい。
【0052】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態を示した図である。本実施形態においては、注入部の替わりにマイクロチャネル56の端部に設けられた2つのポート58a、58bのどちらか一方に供給手段40を設ける点、及び、トラップ部561が1箇所のみであり、図6のトラップ部361に相当するトラップ部が形成されていない点が第3実施形態と異なる。本実施形態においても、ポート58bに減圧手段を設け、チャネル56内を減圧してもよい。
【0053】
また、第2トラップ部は、供給手段40にてスラリー状充填材20を注入した後、そのポート58aから第2トラップ部となる焼結体を所定の間隔で設置し、公知の方法を用いて固定することによって形成される。
【0054】
<トラップ部の形状>
図9は、第1実施形態に係るクロマトグラフィー用チップ10のトラップ部161の部分を示した拡大図を示した図である。このトラップ部161は複数の突起162から形成されている。それぞれの突起162同士の間隔W3は、充填材20の粒子径よりも小さくなるよう設置されている。トラップ部161は、予め金型でパターンを形成したものを転写して形成される。このパターンのバリエーションとして、図10に示すように、突起162が複数個列をなしているものや、図11に示すように、突起162の代わりに弁162´が設けられていてもよい。
【0055】
本発明に係る製造方法により得られたクロマトグラフィー用チップを、クロマトグラフィーの装置に用いる場合は、以下のような構成で用いる。それぞれポートは、ポンプと検出器にそれぞれ連結されている配管に連結されている。試料の抽出の際は、一方のポートに試料用ポンプから試料が注入される。注入された試料は、マイクロカラムを通って排出される。この試料を検出する場合、例えば、光源からの光を分析流路に入射させ、分析流路内での光の吸収を検出することができるものや、また流路に電極を挿入して電気化学変化量を測定するものなどを用いることができるが、特にこれらに限定されない。光源としては、紫外・可視域の光源、例えばHe−Cd半導体レーザ、発光ダイオード、重水素ランプ、タングステンランプを用いることができ、これらの光は光ファイバーにより導いてもよい。また、検出器としては、例えば光電子増倍管、PINダイオード、CCDカメラ、SPR測定装置などを用いることができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0056】
以下本発明の実施例について説明する。
【0057】
図12は、本発明の各実施形態に係る方法で充填したクロマトグラフィー用チップを示した図である。いずれの方法によっても同様の充填状態が実現されることを確認した。特に、図には示さないが、通常、充填することが困難なコーナー部においても均一な充填が可能であった。このことは、限られたチップスペースにおいて、長く複雑なチャネルパターンを構築できることを示している。なお、注入部にチューブを連結し、チューブの端部からシリンジでスラリー状充填材を注入する手法が、操作性などの点で優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るクロマトグラフィー用チップを示した斜視図である。
【図2】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのX−X´断面の拡大断面図である。
【図3】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第1実施形態を示した図である。
【図4】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第2実施形態を示した図である。
【図5】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第2実施形態を示した断面図である。
【図6】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第3実施形態を示した斜視図である。
【図7】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第3実施形態を示した斜視図である。
【図8】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第4実施形態を示した斜視図である。
【図9】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大図である。
【図10】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大図である。
【図11】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大図である。
【図12】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大写真である。
【符号の説明】
【0059】
10 クロマトグラフィー用チップ
12、12´、32、52 基板
14、34 カバープレート
141 マスク
16、16´、36、56 マイクロチャネル
161、161´、161´´、361 トラップ部
162 突起
18、58 ポート
20 充填材
30、50 チップ
38 注入部
40 供給手段
60 スキージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用チップの製造方法に関し、より詳しくはマイクロ流体チップを用いたクロマトグラフィー用チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトリソグラフィーの技術による微細加工によって、平板ガラスからなるチップ上にマイクロチャネル(微細流路)が形成されたチップを、キャピラリー電気泳動用チップとして用いることにより、高性能で高速な電気泳動分離を行うことが可能であることが知られている。このキャピラリー電気泳動用チップは、ガラスやSi/SiO2などのシリコンを材料とした基板を用いて、基板上に微細加工によりキャピラリーチャネルを形成するものである。一般的に、チャネルの径(カラム径)が小さいほど感度が向上することが知られているため、このようなチップを用いたマイクロ分析システムが急速に進歩している。このマイクロ分析システムの一つとして、マイクロチップを用いたクロマトグラフィーも検討されている。
【0003】
しかしながら、クロマトグラフィーを行なう際に、試料をキャピラリー電気泳動用チップのようなマイクロチャネルをクロマトグラフィー用のカラムとして用いるためには、マイクロチャネル部分にシリカゲル等の無機多孔質粒子をリガンド修飾した微粒子を充填する必要があるが、粒子の充填はカラム径が小さくまた、カラム長が長くなればなるほど困難になる。そこで、粒子充填法に代わり、一体型(モノリス型)のクロマトグラフィー用のカラムが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−311008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、板状部材の溝に2重細孔構造のシリカゲルが充填されたクロマトグラフ用チップが開示されている。このチップは、溝内で相分離を利用したゾル−ゲル法により、ゲルを調整し、続いて湿潤状態のゲルを乾燥・加熱して得られる。これにより、微量物質の分離を可能としている。
【0005】
しかし、特許文献1のチップは製造工程で加熱して焼成させることから、熱に弱い樹脂基板は焼成することができない。また、基板の熱による変形等の問題も残る。さらに、アルカリ条件下で細孔形成を行うため、再現性を取ること自体が難しく、シリカ骨格を基板に作り込んだのちにリガンド修飾を行うことからリガンド修飾をシリカ表面全体に均一的に実施することが困難である。
【0006】
また、充填型カラムを用いた場合には、充填材がカラム内から流れ出ないよう、カラムの端部にトラップ部を設ける必要があるが、トラップ部が予め設けられた状態では、従来行われてきた粒子充填法では粒子を充填することは困難である。
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明はマイクロチャネル中に粒子を充填させたクロマトグラフィー用チップの製造方法を提供することを目的とし、より具体的には、樹脂基板のチップに形成されたマイクロチャネルにシリカゲル粒子を充填させる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より具体的には本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板の表面側から、前記充填材を分散させたスラリーを塗布して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する充填工程と、前記充填工程後の前記基板の表面側に残った前記スラリーを除去する除去工程と、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0010】
(1)の発明によれば、基板の表面側から、充填材を分散させたスラリーを塗布する充填工程を備えたことによって、マイクロチャネルの両端に設けられたトラップ部の間に充填材を均一に充填させることが可能となる。また、スラリーが付着している部分は、後の封着工程でカバープレートを適切に封着することができないが、除去工程を備えたことによって基板中のマイクロチャネルが形成されていない部分に残ったスラリーを除去することが可能となる。
【0011】
ここで、「基板」とは、填材を分散させたスラリーを塗布又は注入することが可能な板状体をいう。具体的にはガラス、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、シリコーンゴム等の型で成形可能なものが好ましいが、絶縁性や成形の自由度から樹脂材料であることが好ましい。熱可塑性樹脂材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレンポリマー等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることが好ましい。また、機械的強度の観点からポリエーテルエーテルケトン樹脂脂を用いることが好ましく、より安価で生産性が高いポリジメチルシロキサンを用いることが更に好ましい。
【0012】
また、「充填工程」におけるスラリーの充填は、シリンジを用いてスラリーを注入してもよく、また、スパチュラを用いてマイクロチャネルにスラリーを埋め込んでもよい。なお、スラリーがマイクロチャネル内に均一に充填されるよう超音波等を用いてもよい。
【0013】
また、「除去工程」とは、上述のように充填工程後の基板の表面側に残ったスラリーを除去する工程をいう。カバープレートが基板表面に残っている場合、後の封着工程でカバープレートを基板に封着させることができないためである。また、「基板の表面側」とは、基板の表面そのものと、基板に例えばマスクのような被覆材が設けられている面の両方を含む。
【0014】
次いで、「封着工程」とは、基板の表面に直接カバープレートを被せて接着させる工程をいう。カバープレートの封着は接着剤や、放電プラズマ溶着等、公知の方法を用いてもよい。
【0015】
(2) 前記充填工程は、前記基板表面に前記スラリーを塗布する工程であり、前記除去工程は、前記基板表面をスキージで掻き取る工程である(1)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0016】
(2)の発明によれば、除去工程を、スキージで掻き取る工程としたことによって基板表面に残った充填材を完全に除去することが可能となる。これによって後の封着工程においてカバープレートを容易に封着させることができる。また、スキージを用いて掻き取ることによって、マイクロチャネル内に充填されたスラリーを均すことも可能となる。なお、充填剤を除去しやすいよう、チャネル以外の基板表面に充填剤との吸着性を低下させる処理(例えば、親水化処理)を施すこともできる。
【0017】
(3) 前記充填工程の前に、前記マイクロチャネル以外の部分を覆い、かつ、前記マイクロチャネル上に相当する位置に開口を有するマスクを予め前記基板上に配置するマスク配置工程を行ない、このマスク上から前記充填工程を行い、その後、前記マスクを剥離した後に、前記封着工程を行う、(1)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0018】
(3)の発明によれば、充填工程の前にマスク配置工程を設けたことによって、マイクロチャネル以外の部分にスラリーが拡散しても後の除去工程でマスクを剥離させるだけで、スラリーを容易に除去することが可能となる。その理由として、一度基板に付着した微粒子は除去しにくく、特にポリジメチルシロキサンとODS(オクタデシルシラン)微粒子は疎水的に吸着するため取り除くことが困難であるためである。また、テトラヒドロフランのように溶解力の強い有機溶剤で洗浄することも考えられるが、放電プラズマ溶着の際、カバープレートの溶着を妨げることがあるため、基材の接着面には溶剤をつけないほうが望ましいためである。
【0019】
ここで、「マスク」とは、マイクロチャネル以外の部分を覆い、かつ、このマイクロチャネル上に相当する位置に開口を有し、基板から剥離可能な板状又はフィルム状の物質をいう。具体的には、金属板や基板と同一素材のフィルム等が挙げられる。マスクの形成方法としては、例えばフォトリソグラフィー法を用いて樹脂基板又はガラス基板に形成する方法が挙げられる。
【0020】
(4) 前記マスクの開口幅は、前記マイクロチャネルの幅よりも小さくなるように前記マスクを配置する(3)に記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0021】
(4)の発明によれば、上記のマスクの開口幅をマイクロチャネルの幅よりも小さくなるようにしたことによって、マイクロチャネル以外にスラリーが拡散することを抑制することが可能となる。これによってカバープレートの封着がさらに容易になる。
【0022】
(5) 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の前後に、前記基板及び/又はカバープレートに、前記マイクロチャネルの前記トラップ部間に連通する少なくとも1箇所の注入部を形成する注入部形成工程と、この注入部から前記充填材を分散させたスラリーを注入して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する注入工程と、前記注入部を封鎖する封鎖工程と、含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0023】
(5)の発明によれば、予め基板にカバープレートを封着させたチップを用いたことによって、スラリーが基板表面に拡散することがなくなる。これによって(5)の発明に係るクロマトグラフィー用マイクロチップをより効率よく製造することが可能となる。
【0024】
ここで、「注入部」とは、基板及び/又はカバープレートの表面からマイクロチャネルへと連通するように設けられた溝や穴をいう。この注入部は、カッターやレーザ、ドリル等を用いて形成される。また、加圧すればスリットが開口するマイクロバルブ等を用いてもよい。また「注入工程」とは、具体的には上述の注入部にシリンジやホッパー等、スラリーを押し出すことが可能な手段を設け、スラリーをマイクロチャネルへと注入する工程をいう。
【0025】
更に、「封鎖工程」とは、具体的には接着剤や密栓を用いて注入部を封鎖する工程をいう。
【0026】
(6) 前記注入部は複数個形成されている(5)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0027】
(6)の発明によれば、注入部を複数個形成したことによって、スラリーがマイクロチャネルへ注入される際にかかる圧力を他の注入部から逃がすことや、複数箇所からの充填が可能となる。これによってスラリーを効率よくマイクロチャネルへ注入することができる。また、マイクロチャネルの形状によっては1ヶ所の注入部からでは、マイクロチャネルに均一にスラリーを注入することが困難である。(6)の発明によればこの注入部を複数設けたことによってマイクロチャネルの形状に関わらずスラリーを均一に注入することができる。
【0028】
(7) 前記注入工程は、一方の注入部から前記スラリーを注入すると同時に、他方の注入部又は前記マイクロチャネル内の端部より、前記マイクロチャネル内を減圧しながら行う(5)又は(6)記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0029】
(7)の発明によれば、一方の注入部からスラリーを注入すると同時に、他方の注入部等からマイクロチャネル内を減圧したことによって、スラリーをより効率よくマイクロチャネル内に注入することができる。また、注入工程において、マイクロチャネル内にかかる圧力は、スラリーの注入量に比例する。(6)の発明によって注入部を複数設けたとしてもマクロチャネルの形状によっては、圧力を逃がすことができず、スラリーを注入しきれない場合があるため、(7)に係る発明のように、他方の注入部から減圧すればチャネル内の圧力上昇を未然に防ぐことも可能となる。
【0030】
(8) 所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の1箇所に形成され前記充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の後に、前記マイクロチャネルの一端側から前記トラップ部に向けて前記充填材を分散させたスラリーを注入する注入工程と、前記マイクロチャネルの多端側に第2トラップ部を形成する工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0031】
(8)の発明によれば、注入工程の後に、第2トラップ部を形成する工程を設けたことによって、マイクロチャネル内に注入されたスラリーの流出を防止することが可能となる。マイクロチャネルの両端には、試料を注入するための導入口又は電極を装着するためのポートが設けられているため、マイクロチャネルの形状によってはこのポートからスラリーを注入した方がチャネル内に均一にスラリーを注入することができる場合がある。この場合、ポート付近に予めトラップ部が設けられていると、このトラップ部がスラリーの注入を妨げてしまう。従って(8)に係る発明のように後から第2トラップ部を形成する工程を設ければこの問題を解消することができる。
【0032】
なお、「第2トラップ部を形成する工程」とは具体的には、充填材よりも小さな孔を多数有する焼結体を構成し、固定することで形成することをいう。この第2トラップ部は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のカラムを製造する際の公知の技術を応用することができる。
【0033】
(9) 前記基板は、ガラス、プラスチックである(1)から(8)いずれか記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【0034】
(9)の発明によれば、基板をガラス、プラスチックとしたことによって、その表面にマイクロチャネルのパターンを容易に形成することが可能となる。また、金属よりも軽量であるため、(9)の発明に係るクロマトグラフィー用マイクロチップの軽量化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法によれば、粒子径の小さい粒子をマイクロチャネル中に均一に充填させることが可能となる。また、従来用いられていたカラムではなく、チップを用いることにより微少量の試料の前処理・分析も可能になる。また、MEMSの技術を用いることによって、基板上に複雑なパターンのマイクロチャネルを形成した場合でも、充填材を充填することが可能となるため、従来にないチャネルパターンの新しいデバイスの開発に繋がる。たとえば、限られた面積の基板を有効利用できるよう円弧部分を持ったパターンを形成した場合にも、そこに均一的に粒子を充填できるし、チャネルがアレイ状に配列したマルチチャネルパターンとして、LCによる並列分析および順次分析のシステムを想定した場合にも、均一的に粒子が充填されたマルチカラムアレイチップが実現されることになり、分析の再現性・精度を格段に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0037】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るクロマトグラフィー用チップを示した図である。このクロマトグラフィー用チップ10は、ポリジメチルシロキサンにより形成された平板状の基板12と、この基板12の上面に配設されるポリジメチルシロキサン又はガラスにより形成された平板状のカバープレート14とを有して構成されている。そして、基板12には、液体の流路としてマイクロチャネル16が形成されている。なお、カバープレート14によって、基板12の上面に形成されたマイクロチャネル16は封止(シール)されている。また、カバープレート14には、その上面14aから下面14bへ貫通するようにして形成されたサンプル導入ならびに電極装着のための2つのポート18a、18bが穿設されている。ここで、基板12の具体的な大きさとしては、長手方向が50mmから100mmであることが好ましく、70mmから90mmであることがより好ましい。短手方向は50mmから100mmであることが好ましく、60mmから80mmであることがより好ましい。また、厚さは0.1mmから10mmであることが好ましく、0.3mmから1mmであることがより好ましいが、これに限られるものではない。なお、本実施形態においては基板の材質をポリジメチルシロキサンとしているが、ガラスを用いてもよい。
【0038】
ここで、2つのポート18a、18bとマイクロチャネル16とは、2つのポート18a、18bの一部にマイクロチャネル16の両方の端部16a、16bとがそれぞれ位置するように寸法設定されて配置されており、ポート18aと端部16aとが連通し、ポート18bと端部16bとが連通するようになされている。
【0039】
また、マイクロチャネル16の長さは、例えば、240mmに設定され、マイクロチャネル16の幅は、例えば、200μmに設定され、マイクロチャネル16の深さは、例えば、数十μmに設定されている。なお、マイクロチャネル16の長さや形状、幅等は特に限定されるものではなく、チャネル幅、長さは、充填する粒子と、耐圧性との関係から、Kozeny−Carmanの式から望ましい寸法のおおよその値を算出することができる。ここで、同じ微粒子であってもカラムの理論段数を向上させるにはカラム長が長いほうが良い。本カラムチップでは、限られた面積の数センチ角のチップ上に20cmから30cmのカラムを形成するため、図のように複数の直線部分をと複数のコーナー部分で連結して平面視で曲線状のカラム形状とし、カラム長を長く設定している。これにより、直線状の場合に比べて、理論段数の向上を図っている。コーナー部の曲率は、クロマト分離評価上、一つのサンプルの分離ピークが2分されない程度の範囲に設定される。あまり曲率が大きいと、内周と外周との速度差が生まれ同一サンプルが2つのピークとなって検出されることになるからである。さらに、マイクロチャネル16の両方の端部16a、16bの両方には、トラップ部161が設けられている。このトラップ部161については後述する。
【0040】
また、図2は、本発明に係るクロマトグラフィー用チップ10のX−X´断面におけるクロマトグラフィー用チップ10の拡大断面を示した図である。この図に示すように、マイクロチャネル16には充填材20が充填されている。本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において、充填材20は、以下に示す方法で充填される。
【0041】
図3(a)〜(d)は、本発明に係るクロマトグラフィー用チップに充填材20を充填する工程を示した図である。まず、基板12にチャネルのパターンを公知の方法で形成する(図3(a)参照)。次に、溶媒中に分散させたスラリー状充填材20を均一に塗布する(図3(b)参照)。このとき、スラリー状充填材20が均一にマイクロチャネル16中に充填されるよう、超音波等で振動させてもよい。
【0042】
ここで、スラリー状充填材20の平均粒径は、1μm〜10μmであることが好ましく1.7μm〜5μmであることが更に好ましい。なお、材質としては、多孔性シリカの表面をリガンド修飾したクロマトグラフィー(HPLC)用の充填剤を用いても、ポリマーからなるクロマトグラフィー(HPLC)用の充填剤を用いてもよい。なお、本実施形態において、スラリー状充填材20は、水、エタノール、テトラヒドロフラン、メタノール、トルエン等揮発性の溶媒中に分散させてスラリーとして用いた。特に、疎水性の高いテトラヒドロフラン、トルエンなどの溶剤を添加して用いると、ポリジメチルシロキサンと疎水性微粒子との疎水的な吸着をなくし、微粒子の流動性を高めることができるため好ましい。
【0043】
なお、本発明における「スラリー」とは、ペースト状のものも含まれる。スラリーの粘度は、チャネル内にスラリーを塗布する場合には、微粒子を密に充填できるよう、微粒子の含有量を高く設定し、流通させながら充填する場合には、目詰まりを回避するために含有量を低く設定したものを使用することが望ましい。
【0044】
次に、マイクロチャネル16に充填されきれなかったスラリー状充填材20をスキージ60で除去する(図3(c)参照)。その方法として、平坦な面を持った治具、例えばスパーテル等で除去する方法等が挙げられる。
【0045】
最後に、基板12にカバープレート14を被せ、溶着させる(図3(d)参照)。溶着方法としては、放電プラズマ溶着や、接着剤による接着等が挙げられるが、放電プラズマ溶着することが好ましい。マイクロチャネル縁の部分が、プラズマ溶着であれば、きれいに密着され、液漏れなどの可能性が少ないが、接着剤を用いた場合には、縁をきれいに密着することができないため、液漏れの可能性が生じるためである。カバープレート14の材質としては、基板12と同一素材のポリジメチルシロキサンや、ガラス板等を用いることが好ましい。
【0046】
<第2実施形態>
図4(a)〜(d)及び図5(a),(b)は、本発明の第2実施形態を示した図である。本実施形態においては、充填材をマイクロチャネル16´に充填する前にマスク141を被覆して、充填材を充填した後にマスク141を除去する工程を含む以外は、上記実施形態と同様の方法で充填を行なう。マスク141は、マイクロチャネル16´のパターンと同様のパターンが描かれた板状材やシート材を用いる。マスク141のパターンは基板に形成する方法と同じ方法で形成される。なお、マスク141をマイクロチャネル16´のパターンにぴったりと合わせるために、基板12とマスク141のそれぞれに例えば、凹凸のような合わせ印(図示せず)を付けておいてもよい。これによってマスク141の開口部分を通じてスラリー状充填材20を案内することができる。
【0047】
図5(a)に示すように、マイクロチャネル16´を隔てたマスク141同士の幅W1は、マイクロチャネル16´の幅W2と同じ幅であってもよいが、図5(b)に示すように、W1がW2よりも小さいことが好ましい。これによって、マスク141を基板12´から除去する際に、充填材がマイクロチャネル16´から零れ落ち、基板12´の表面に充填材が拡散するのを防止することが可能となる。また、マスク141の厚みは充填材の粒子径よりも小さい方が好ましい。マスク141の厚みが充填材の粒子径よりも大きくなると、充填材がマイクロチャネル16´の深さよりも更に積層されるため、はみ出しや、カラムの膨張の要因となってしまうためである。
【0048】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態を示した図である。本実施形態においては、マイクロチャネル36が形成された基板32に予めカバープレート34を溶着させたチップ30を用いて充填材を充填する点が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
【0049】
まず、カバープレート34をマイクロチャネル36が形成された基板32に放電プラズマ法により溶着させる。次に、基板32の周縁部(乃至はカバープレート34の上面部又は裏面部)からマイクロチャネル36に連通するように注入部38を設ける。本実施形態において注入部38は、カッターを用いて形成している。また、注入部38の位置や数は特に限定されないが、充填材がマイクロチャネル36の両方の端部36a、36bの少なくともどちらか一方に設けられたトラップ部361を通り抜けないよう当該トラップ部361の内側に設ける必要がある。なお、本実施形態では注入部を2箇所設けている。
【0050】
マイクロチャネル36にスラリー状充填材20を充填させる具体的な方法として、注入部38aに充填材20を供給する供給手段(例えばホッパーやシリンジ)40を差し込む。次に、この供給手段40に所定の圧力を加え、スラリー状充填材20を押出す。このとき、他方の注入部38bから圧力を開放する。なお、注入部38bに減圧ポンプ等の減圧手段を設けてもよい。これにより、スラリー状充填材20をスムーズにマイクロチャネル36内に充填させることが可能となる。なお、注入部38は、図7に示すようにカバープレート34に設けられていてもよい。ここで、注入部38は、圧力を逃がす部分として作用するのみならず、複数の注入部38から同時にスラリー状充填材20を注入してもよい。このようにすることにより、圧力が行きとどかないカラムの曲線部などに充填剤を均一に詰めていくことが可能となる。
【0051】
さらに、注入部38を、マイクロチャネル36のコーナー部に形成し、この注入部38に連結されたチューブ(図示せず)の端部からシリンジでスラリー状充填材20を注入してもよい。
【0052】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態を示した図である。本実施形態においては、注入部の替わりにマイクロチャネル56の端部に設けられた2つのポート58a、58bのどちらか一方に供給手段40を設ける点、及び、トラップ部561が1箇所のみであり、図6のトラップ部361に相当するトラップ部が形成されていない点が第3実施形態と異なる。本実施形態においても、ポート58bに減圧手段を設け、チャネル56内を減圧してもよい。
【0053】
また、第2トラップ部は、供給手段40にてスラリー状充填材20を注入した後、そのポート58aから第2トラップ部となる焼結体を所定の間隔で設置し、公知の方法を用いて固定することによって形成される。
【0054】
<トラップ部の形状>
図9は、第1実施形態に係るクロマトグラフィー用チップ10のトラップ部161の部分を示した拡大図を示した図である。このトラップ部161は複数の突起162から形成されている。それぞれの突起162同士の間隔W3は、充填材20の粒子径よりも小さくなるよう設置されている。トラップ部161は、予め金型でパターンを形成したものを転写して形成される。このパターンのバリエーションとして、図10に示すように、突起162が複数個列をなしているものや、図11に示すように、突起162の代わりに弁162´が設けられていてもよい。
【0055】
本発明に係る製造方法により得られたクロマトグラフィー用チップを、クロマトグラフィーの装置に用いる場合は、以下のような構成で用いる。それぞれポートは、ポンプと検出器にそれぞれ連結されている配管に連結されている。試料の抽出の際は、一方のポートに試料用ポンプから試料が注入される。注入された試料は、マイクロカラムを通って排出される。この試料を検出する場合、例えば、光源からの光を分析流路に入射させ、分析流路内での光の吸収を検出することができるものや、また流路に電極を挿入して電気化学変化量を測定するものなどを用いることができるが、特にこれらに限定されない。光源としては、紫外・可視域の光源、例えばHe−Cd半導体レーザ、発光ダイオード、重水素ランプ、タングステンランプを用いることができ、これらの光は光ファイバーにより導いてもよい。また、検出器としては、例えば光電子増倍管、PINダイオード、CCDカメラ、SPR測定装置などを用いることができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0056】
以下本発明の実施例について説明する。
【0057】
図12は、本発明の各実施形態に係る方法で充填したクロマトグラフィー用チップを示した図である。いずれの方法によっても同様の充填状態が実現されることを確認した。特に、図には示さないが、通常、充填することが困難なコーナー部においても均一な充填が可能であった。このことは、限られたチップスペースにおいて、長く複雑なチャネルパターンを構築できることを示している。なお、注入部にチューブを連結し、チューブの端部からシリンジでスラリー状充填材を注入する手法が、操作性などの点で優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るクロマトグラフィー用チップを示した斜視図である。
【図2】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのX−X´断面の拡大断面図である。
【図3】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第1実施形態を示した図である。
【図4】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第2実施形態を示した図である。
【図5】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第2実施形態を示した断面図である。
【図6】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第3実施形態を示した斜視図である。
【図7】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第3実施形態を示した斜視図である。
【図8】本発明に係るクロマトグラフィー用チップの製造方法において充填材を充填する第4実施形態を示した斜視図である。
【図9】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大図である。
【図10】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大図である。
【図11】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大図である。
【図12】本発明に係るクロマトグラフィー用チップのトラップ部を示した拡大写真である。
【符号の説明】
【0059】
10 クロマトグラフィー用チップ
12、12´、32、52 基板
14、34 カバープレート
141 マスク
16、16´、36、56 マイクロチャネル
161、161´、161´´、361 トラップ部
162 突起
18、58 ポート
20 充填材
30、50 チップ
38 注入部
40 供給手段
60 スキージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、
前記基板の表面側から、前記充填材を分散させたスラリーを塗布して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する充填工程と、
前記充填工程後の前記基板の表面側に残った前記スラリーを除去する除去工程と、
前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項2】
前記充填工程は、前記基板表面に前記スラリーを塗布する工程であり、
前記除去工程は、前記基板表面をスキージで掻き取る工程である請求項1記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項3】
前記充填工程の前に、前記マイクロチャネル以外の部分を覆い、かつ、前記マイクロチャネル上に相当する位置に開口を有するマスクを予め前記基板上に配置するマスク配置工程を行ない、
このマスク上から前記充填工程を行い、
その後、前記マスクを剥離した後に、前記封着工程を行う、請求項1記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項4】
前記マスクの開口幅は、前記マイクロチャネルの幅よりも小さくなるように前記マスクを配置する請求項3に記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項5】
所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、
前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の前後に、前記基板及び/又はカバープレートに、前記マイクロチャネルの前記トラップ部間に連通する少なくとも1箇所の注入部を形成する注入部形成工程と、
この注入部から前記充填材を分散させたスラリーを注入して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する注入工程と、
前記注入部を封鎖する封鎖工程と、含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項6】
前記注入部は複数個形成されている請求項5記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項7】
前記注入工程は、一方の注入部から前記スラリーを注入すると同時に、他方の注入部又は前記マイクロチャネル内の端部より、前記マイクロチャネル内を減圧しながら行う請求項5又は6記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項8】
所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の1箇所に形成され前記充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、
前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の後に、前記マイクロチャネルの一端側から前記トラップ部に向けて前記充填材を分散させたスラリーを注入する注入工程と、
前記マイクロチャネルの多端側に第2トラップ部を形成する工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項9】
前記基板は、ガラス、プラスチックである請求項1から8いずれか記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項1】
所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、
前記基板の表面側から、前記充填材を分散させたスラリーを塗布して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する充填工程と、
前記充填工程後の前記基板の表面側に残った前記スラリーを除去する除去工程と、
前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項2】
前記充填工程は、前記基板表面に前記スラリーを塗布する工程であり、
前記除去工程は、前記基板表面をスキージで掻き取る工程である請求項1記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項3】
前記充填工程の前に、前記マイクロチャネル以外の部分を覆い、かつ、前記マイクロチャネル上に相当する位置に開口を有するマスクを予め前記基板上に配置するマスク配置工程を行ない、
このマスク上から前記充填工程を行い、
その後、前記マスクを剥離した後に、前記封着工程を行う、請求項1記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項4】
前記マスクの開口幅は、前記マイクロチャネルの幅よりも小さくなるように前記マスクを配置する請求項3に記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項5】
所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の少なくとも2箇所に形成され充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、
前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の前後に、前記基板及び/又はカバープレートに、前記マイクロチャネルの前記トラップ部間に連通する少なくとも1箇所の注入部を形成する注入部形成工程と、
この注入部から前記充填材を分散させたスラリーを注入して、前記マイクロチャネル内の前記トラップ部間に前記充填材を充填する注入工程と、
前記注入部を封鎖する封鎖工程と、含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項6】
前記注入部は複数個形成されている請求項5記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項7】
前記注入工程は、一方の注入部から前記スラリーを注入すると同時に、他方の注入部又は前記マイクロチャネル内の端部より、前記マイクロチャネル内を減圧しながら行う請求項5又は6記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項8】
所定の形状のマイクロチャネルが表面に形成された基板と、この基板表面に封着されたカバープレートと、前記マイクロチャネル内の1箇所に形成され前記充填材の流動を制限するためのトラップ部と、前記マイクロチャネル内に充填された充填材と、を有するクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法であって、
前記基板表面にカバープレートを封着する封着工程の後に、前記マイクロチャネルの一端側から前記トラップ部に向けて前記充填材を分散させたスラリーを注入する注入工程と、
前記マイクロチャネルの多端側に第2トラップ部を形成する工程と、を含むクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【請求項9】
前記基板は、ガラス、プラスチックである請求項1から8いずれか記載のクロマトグラフィー用マイクロチップの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−284440(P2006−284440A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106442(P2005−106442)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(390024442)株式会社ワイエムシィ (22)
【出願人】(503021456)フルイドウェアテクノロジーズ株式会社 (2)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(390024442)株式会社ワイエムシィ (22)
【出願人】(503021456)フルイドウェアテクノロジーズ株式会社 (2)
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