説明

クロマトグラフィー試験片およびクロマトグラフィー試験片の製造方法

【課題】クロマトグラフィー試験片に容易に識別情報を付与することを目的とする。
【解決手段】クロマトグラフィー試験片1の製造工程において、クロマトグラフィー試験片1にコードによる識別コードを付与することにより、クロマトグラフィー試験片1に容易に識別情報を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定項目や製造ロットに対応した検量線を用いた免疫クロマトグラフィー測定に用いるクロマトグラフィー試験片とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫クロマトグラフィー測定は、クロマトグラフィー試験片上を展開して呈色した検体の輝度を測定し、測定項目に対応した検量線を用いて呈色された検体の濃度を求めることによって行われる。また、クロマトグラフィー試験片の製造ロット毎に検体の呈色状況が異なるため、同じ測定項目でも製造ロットに対応した検量線が用いられる。そのため、免疫クロマトグラフィー測定装置は、測定項目およびクロマトグラフィー試験片の製造ロットに対応した検量線を参照できる構成を有しており、クロマトグラフィー試験片には製造ロットや測定可能な測定項目を識別できる情報が付与されている。そして、免疫クロマトグラフィー測定の際には、挿入されたクロマトグラフィー試験片から製造ロットや測定項目を読み取り、それに対応した検量線を選択して検体の濃度を測定している。クロマトグラフィー試験片に情報を付与する方法としては、クロマトグラフィー試験片を支持体に組み込み、支持体に情報を付与する方法(例えば、特許文献1参照)や、クロマトグラフィー試験片に情報を付与するための構造を設けて、そこに情報を付与する方法がとられている。
【0003】
以下、図14を用いて従来の情報が付与されたクロマトグラフィー試験片について説明する。
図14は従来の情報が付与されたクロマトグラフィー試験片の構成を示す裏面図である。
【0004】
図14に示すように、従来のクロマトグラフィー試験片21においては、クロマトグラフィー試験片21の裏面にロット間識別窓20を形成し、ロット間識別窓20に光検出や磁気検出等による識別情報が付与されている。そして、免疫クロマトグラフィー測定に際し、まず、識別情報を読み取って、測定項目や製造ロットの情報を確認し、それに応じた検量線を選択して測定した輝度から検体の濃度を求めている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−284279号公報
【特許文献2】特開平4−223267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のクロマトグラフィー試験片では、識別情報を付与するために、支持体を用いたり、識別窓を設けたりする必要があるため、クロマトグラフィー試験片の大型化やクロマトグラフィー試験片の製造工程が増大する等の問題点があった。
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明のクロマトグラフィー試験片とクロマトグラフィー試験片の製造方法は、クロマトグラフィー試験片に容易に識別情報を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のクロマトグラフィー試験片は、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片であって、前記検体を展開可能な多孔質基材と、前記検体を点着するキャピラリと、前記多孔質基材をレーザカットすることにより形成される2本の溝と、前記多孔質基材の前記溝間の領域であり前記キャピラリに点着される前記検体が展開する展開路と、前記展開路上に形成されて前記検体中の被測定物質を固定化する固定化部と、前記多孔質基材上に形成される1または複数の第1の標識コードとを有し、前記第1の標識コードが前記溝の形成時に前記レーザカットにより形成されることを特徴とする。
【0008】
また、前記多孔質基材上に保護フィルムをさらに設け、前記保護フィルム上に前記第1の標識コードを形成することを特徴とする。
また、前記第1の標識コードが1または複数本の溝からなる1次元コードであることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1の標識コードが2次元コードであることを特徴とする。
また、前記第1の標識コードが1または複数個の孔であることを特徴とする。
また、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片であって、前記検体を展開可能な多孔質基材と、前記検体を点着するキャピラリと、前記多孔質基材をレーザカットすることにより形成される2本の溝と、前記多孔質基材の前記溝間の領域であり前記キャピラリに点着される前記検体が展開する展開路と、前記展開路上に形成されて前記検体中の被測定物質を固定化する固定化部とを有し、前記キャピラリの構成部材である空間形成部材が前記固定化部を開口しながら前記展開路上に延伸されており、前記空間形成部材上に第2の標識コードが形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片であって、前記検体を展開可能な多孔質基材と、前記検体を点着するキャピラリと、前記多孔質基材をレーザカットすることにより形成される2本の溝と、前記多孔質基材の前記溝間の領域であり前記キャピラリに点着される前記検体が展開する展開路と、前記展開路上に形成されて前記検体中の被測定物質を固定化する固定化部とを有し、前記多孔質基材上に前記固定化部を露出しながら第2の標識コードが形成された識別部材が貼り付けられることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明のクロマトグラフィー試験片の製造方法は、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、前記レーザカットの工程と同時に前記多孔質基材に1または複数の第1の標識コードをレーザカットにより形成する工程と、前記検体を点着するキャピラリを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、前記検体を展開可能な多孔質基材上に1または複数の第1の標識コードが形成された保護フィルムを形成する工程と、前記保護フィルムおよび前記多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、前記検体を点着するキャピラリを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
また、前記第1の標識コードが1または複数の溝または孔であることを特徴とする。
また、前記第1の標識コードが印刷により形成されることを特徴とする。
また、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、前記検体を点着するキャピラリの構成部材である空間形成部材を形成する工程と、前記空間形成部材上にカバーシートを貼り付けて前記キャピラリを完成させる工程とを有し、前記空間形成部材が前記展開路上の固定化部を開口しながら前記展開路上に延伸されており、前記空間形成部材上に第2の標識コードが予め形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、前記検体を点着するキャピラリを形成する工程と、前記展開路上の固定化部を露出しながら前記多孔質基材上に第2の標識コードが形成された識別部材を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0015】
また、検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、前記レーザカットの工程と同時に前記多孔質基材に1または複数の第1の標識コードをレーザカットにより形成する工程と、前記検体を点着するキャピラリを形成する工程と、前記展開路上の固定化部を露出しながら前記多孔質基材上に第2の標識コードが形成された識別部材を形成する工程とを有することを特徴とする。
以上により、クロマトグラフィー試験片に容易に識別情報を付与することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、クロマトグラフィー試験片の製造工程において、クロマトグラフィー試験片にコードによる識別コードを付与することにより、クロマトグラフィー試験片に容易に識別情報を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施の形態におけるクロマトグラフィー試験片およびクロマトグラフィー試験片の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
まず、実施の形態1におけるクロマトグラフィー試験片およびクロマトグラフィー試験片の製造方法について、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1はクロマトグラフィー試験片の基本構成を示す分解斜視図、図2は実施の形態1におけるクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図、図3は実施の形態1におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法を説明するフロー図である。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態のクロマトグラフィー試験片1は、支持基材2上に多孔質基材3と保護フィルム4を貼り付けて検体が展開する展開層を形成されている。支持基材2上にはさらに、スペーサ5、空間形成部材6、カバーシート7を貼り付けて点着した検体を溜め置くキャピラリを形成している。
【0020】
支持基材2は、不透明で且つクロマトグラフィー試験片1を保持できるものであれば、どのような材質のものも使用可能である。
多孔質基材3は、メンブレンシート、不織布など多孔質状のシートであればどのようなものでも使用が可能である。また、多孔質基材3上には、検体中の被測定物質を固定化する固定化部9を有している。
【0021】
保護フィルム4は、透明で空気を不透過の材質であればどのようなものも使用可能である。ただし、極力薄いほうが望ましい。
スペーサ5は多孔質基材3とほぼ同じ厚みの部材で構成し、空間形成部材6はU字形状としてキャピラリが構成できるようになっている。また、カバーシート7には空気孔8を設けて、検体の吸引を容易にしている。
【0022】
本実施の形態のクロマトグラフィー試験片1は、さらに、識別情報として図2で示すような識別コードを設ける。
図2に示すように、実施の形態1のクロマトグラフィー試験片1は、展開層を図中記載の流れ方向に対して平行にレーザカットしてレーザカット溝10を形成し、レーザカット溝10によって3分割して検体の展開路12を形成している。この展開路12の幅は、空間形成部材6におけるU字部の開口の幅および空気孔8の幅にほぼ等しく形成している。
【0023】
3分割した展開層のうち展開路12の両側部に形成される2つの領域における保護フィルム4上に第一識別コード11と第二識別コード17を形成する。この識別コードはクロマトグラフィー試験片1の製造Lot情報または、固定化部9に固定化されている被測定物質の量を光学的に読み取るときに濃度に換算する検量線の情報等を示している。第一識別コード11および第二識別コード17としては、1または複数本の溝からなるバーコードのような1次元のコードが望ましいが、独自の規則を有するコードまたはQRコード、データマトリックスなどの2次元コードの使用も可能である。
【0024】
実施の形態1におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法は、図3に示すように、まず、工程Aにおいて、支持基材2の上に、多孔質基材3、保護フィルム4、スペーサ5を順番に貼り付けて展開層を形成する。
【0025】
次に、工程Bにおいて、工程Aで作成した展開層に対してレーザカットを行い、展開路12を作成する。レーザとしてはCOレーザなど一般的な加工用レーザを使用することができ、加工深さは保護フィルム4と多孔質基材5を切断して支持基材2は切断しない程度に調整する。このレーザカット溝10を形成する際に、第一識別コード11と第二識別コード17を同時にレーザカットによって形成する。このように、工程B内で展開路12と識別コードを同じタイミングで形成することで、識別コードを付与するための支持体や識別窓が不要となり、工程のロスなく効率的にクロマトグラフィー試験片1を作成でき、クロマトグラフィー試験片に容易に識別情報を付与することができる。
【0026】
最後に、工程Cに示すように、展開路12および識別コードを形成したクロマトグラフィー試験片1に空間形成部材6とカバーシート7を貼り付けてキャピラリ部分を形成する。このような工程A〜Cを経てクロマトグラフィー試験片1は作成される。
【0027】
上記のような溝状の識別コードの他に、レーザカット工程において、穴状の識別コードを形成することもできる。
以下、穴状の識別コードについて、図4〜図6を用いて説明する。
【0028】
図4は実施の形態1における識別マークとして貫通孔を用いた場合のクロマトグラフィー試験片の構成を示す概略図、図5は試験片情報マークである貫通孔を用いた識別コードの構成を説明する図、図6は貫通孔を用いた2種類の識別コードの構成を説明する図である。
【0029】
図4に示すように、穴状の識別コードが付与されたクロマトグラフィー試験片は、位置を特定するための基準位置を示す2つの基準マーク13が設けられているクロマトグラフィー試験片1に対して、さらに、クロマトグラフィー試験片1の展開路12以外の領域に第一識別コード11を設ける。第一識別コード11としては、0個から7個までの穴状の試験片情報マーク14が設けられており、この試験片情報マーク14の並びでクロマトグラフィー試験片1に識別コードを付与している。
【0030】
識別コードの構成は、図5に示すように、2つの基準マーク13間を9等分する8つの線分を想定して右から順にbit0〜bit7までのビット記録位置とし、それぞれのビットが0か1かの2進数として示され、ビット記録位置に試験片情報マーク14を配置すると1、配置しないと0として情報を記録するものである。
【0031】
図5の例では、2進数の00000011(10進数の3)が記録されている。この例では8ビットの情報が記録可能である。
ここで、基準マーク13および試験片情報マーク14はレーザカットでクロマトグラフィー試験片1を溶融して形成した貫通孔あるいは貫通しない孔である。
【0032】
また、図6に示すように、1つのクロマトグラフィー試験片1上に第一識別コード11と第二識別コード17の2つの独自識別コードを設けても良い。図6の場合、2進数の00101000(10進数の40)と2進数の00000011(10進数の3)が記録されている。この例では、16ビットの情報が記録可能である。
【0033】
ここで、図6の例では、基準マーク13と試験片情報マーク14が同じ形状で混在しているが、基準マーク13は識別マークの形成領域より外側に形成されるため、基準マーク13同士は固有の間隔(図中D)を空けて配置されており、この間隔を空けたマークが試験片情報マーク14も含めて、基準マーク13同士のほかに出現することは無い。従って、基準マーク13と試験片情報マーク14の形状や作成方法が同じであっても、両者の区別ができるようになっている。
【0034】
以上のように、実施の形態1では、展開路12をレーザカットで形成する際に、同時に第一識別コード11や第二識別コード17を同じくレーザカットで作成するようにすることで、付加的な工程の増加を防止できるので、クロマトグラフィー試験片1に容易に識別情報を付与することができ、クロマトグラフィー試験片1の生産効率の低下および生産コストの増加を最低限に抑えることが可能である。
【0035】
本実施の形態では、クロマトグラフィー試験片1上には第一識別コード11と第二識別コード17を設けているが、それ以上の数の識別コード、あるいはいずれかの識別コードを設ける場合も同様である。
(実施の形態2)
実施の形態2のクロマトグラフィー試験片およびクロマトグラフィー試験片の製造方法について、実施の形態1と異なる点のみを図7を用いて説明する。
【0036】
図7は実施の形態2におけるクロマトグラフィー試験片の保護フィルムの構成を説明する図である。
図7に示すように、実施の形態2におけるクロマトグラフィー試験片では、保護フィルム4に第一識別コード11と第二識別コード17を予め印刷しておき、この保護フィルム4を実施の形態1における図3の工程Aで貼り付けることで、工程Bではレーザカットによる識別コードの形成が不要になる。識別コードとしては、実施の形態1に記載のように様々な種類のコードが使用可能であり、第一識別コード11のみを付与することも可能である。また、識別コードの形成は印刷に限らず、レーザカット等、識別可能なコードが付与できれば、いかなる方法でも形成可能である。
【0037】
以上のように本実施の形態2では、予め識別コードを付与した保護フィルム4を使用してクロマトグラフィー試験片1に識別コードを設けることにより、識別コードを付与するために支持体やロット間識別窓等が不要となるので、クロマトグラフィー試験片1に容易に識別情報を付与することができる。そのため、クロマトグラフィー試験片1の生産効率の低下および生産コストの増加を最低限に抑えることが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態3のクロマトグラフィー試験片およびクロマトグラフィー試験片の製造方法について、実施の形態1〜2と異なる点のみを図8〜図10を用いて説明する。
【0038】
図8は実施の形態3におけるクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図、図9は実施の形態3における複数の識別コードを付与したクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図、図10は実施の形態3におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法を説明するフロー図である。
【0039】
実施の形態1〜2では保護フィルム4上に識別コードをレーザカットまたは印刷によって形成していたが、本実施の形態では、図8に示すように、空間形成部材6を保護フィルム4の端点まで流れ方向に対して延長し、空間形成部材6上に予め識別コードを付与しておく。ここでの空間形成部材6は、実施の形態1〜2とは異なり、不透明(望ましくは白色)の材質のシートを用いる。測定穴15は、少なくとも固定化部9とその周辺の多孔質基材3が露出するように形成し、免疫クロマトグラフィー測定に支障がないようにする。そして、空間形成部材6上の測定穴15より下流位置に第三識別コード16を設けておく。第三識別コード16としてはバーコードなどの1次元コードおよびQRコード、データマトリックスなどどのような2次元コードも使用可能であり、クロマトグラフィー試験片1の製造LOT情報または検量線情報等を与える。
【0040】
また、図9に示すように、第一識別コード11、第二識別コード17、第三識別コード16を併用することも可能である。実施の形態1、2と同じように展開層上の展開路12を避けるように空間形成部材6上に第一識別コード11および第二識別コード17を設ける。複数のコードを併用して使用することで、より多くの情報をクロマトグラフィー試験片1に持たせることが可能である。識別コードとしては実施の形態1に記載の孔や貫通孔等も使用できる。
【0041】
次に、本実施の形態3でのクロマトグラフィー試験片1の製造方法を図10の工程図を用いて説明する。
図10において、まず、工程Aは実施の形態1と同様に支持基材2上に多孔質基材3、保護フィルム4、スペーサ5を貼り付ける。次に、工程Bのレーザカット工程では展開路12の形成のみを行う。最後に、工程Cでは、予め第一識別コード11、第二識別コード17および第三識別コード16の内、任意の組み合わせの識別コードを印刷などの手段を用いて空間形成部材6上の測定穴15以外の領域に形成しておいた空間形成部材6を使用する。空間形成部材6、カバーシート7の順番で貼り付けて、クロマトグラフィー試験片1の製作を行う。
【0042】
以上のように、本実施の形態3では、長さを延長して、予め、識別コードを付与した不透明な空間形成部材6を使用することにより、クロマトグラフィー試験片1の製造の際には付加的な工程の追加すること無しに、クロマトグラフィー試験片1上に容易に識別情報を持たせることが可能となり、生産効率の低下および生産コストの増加を最低限に抑えることができる。
【0043】
本実施の形態では、空間形成部材6を延長してその上に試験片情報を有するコードを形成するようにしたが、カバーシート7を同様に延長して、その上に識別コードを形成するようにしても同じ効果が得られる。その場合は、カバーシート7は不透明な材質のものを使用し、空間形成部材6の材質は不透明でも透明でもどちらでもよい。
【0044】
また、本実施の形態では空間形成部材6上に2種類の2つのコードを形成しているが両者ともに1次元コード、両者共に2次元コードでもかまわない。さらに、単一個数または複数個数のコードのいずれの場合でも同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
本実施の形態のクロマトグラフィー試験片およびクロマトグラフィー試験片の製造方法について、実施の形態1〜3とは異なる点のみを図11〜図13を用いて説明する。
【0045】
図11は実施の形態4におけるクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図、図12は実施の形態4における複数の識別コードを付与したクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図、図13は実施の形態4におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法を説明するフロー図である。
【0046】
図11に示すように、実施の形態4におけるクロマトグラフィー試験片では、クロマトグラフィー試験片1に予め識別コードが形成された識別部材18を付加した構成になっている。識別部材18は不透明な材質で作成して保護フィルム4上に固定化部9を避けるようにして張り付ける。また、その表面上には、予め第三識別コード16を設けておく。第三識別コード16としては、バーコードなどの1次元コードおよびQRコード、データマトリックスなどの2次元コードなど、どのようなものも使用可能である。
【0047】
図12に示すように、図11のクロマトグラフィー試験片1に実施の形態1、2と同様にして空間形成部材6上に第一識別コード11または第二識別コード17あるいはその両方を設けることも可能である。
【0048】
次に、本実施の形態でのクロマトグラフィー試験片1の製造方法について図13を用いて説明する。
図13において、まず、工程Aにしめすように、実施の形態1の図3と同様にして支持基材2上に多孔質基材3、保護フィルム4、スペーサ5を貼り付ける。次に、工程Bでは、レーザカットを行って展開路12を形成する。最後に、工程Cにて空間形成部材6、カバーシート7、識別コードが付与された識別部材18を貼り付けてクロマトグラフィー試験片1を作成する。空間形成部材6上に識別コードを設ける場合は、実施の形態1または2と同様に工程Bのレーザカットにて形成するか、予め識別コードを形成済みの保護フィルム4を工程Aで貼り付ける。
【0049】
以上のように、本実施の形態4では、予め第三識別コード16を付与した不透明な識別部材18を設置することにより、クロマトグラフィー試験片1を支持体内に装着したり、識別コードを付与するためにクロマトグラフィー試験片1の製造工程でクロマトグラフィー試験片1を加工したりする工程を追加すること無しに、クロマトグラフィー試験片1上に容易に識別情報を持たせることが可能となり、生産効率の低下および生産コストの増加を最低限に抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、クロマトグラフィー試験片に容易に識別情報を付与することができ、測定項目や製造ロットに対応した検量線を用いた免疫クロマトグラフィー測定に用いるクロマトグラフィー試験片とその製造方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】クロマトグラフィー試験片の基本構成を示す分解斜視図
【図2】実施の形態1におけるクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図
【図3】実施の形態1におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法を説明するフロー図
【図4】実施の形態1における識別マークとして貫通孔を用いた場合のクロマトグラフィー試験片の構成を示す概略図
【図5】試験片情報マークである貫通孔を用いた識別コードの構成を説明する図
【図6】貫通孔を用いた2種類の識別コードの構成を説明する図
【図7】実施の形態2におけるクロマトグラフィー試験片の保護フィルムの構成を説明する図
【図8】実施の形態3におけるクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図
【図9】実施の形態3における複数の識別コードを付与したクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図
【図10】実施の形態3におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法を説明するフロー図
【図11】実施の形態4におけるクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図
【図12】実施の形態4における複数の識別コードを付与したクロマトグラフィー試験片の構成を示す斜視図
【図13】実施の形態4におけるクロマトグラフィー試験片の製造方法を説明するフロー図
【図14】従来の情報が付与されたクロマトグラフィー試験片の構成を示す裏面図
【符号の説明】
【0052】
1 クロマトグラフィー試験片
2 支持基材
3 多孔質基材
4 保護フィルム
5 スペーサ
6 空間形成部材
7 カバーシート
8 空気孔
9 固定化部
10 レーザカット溝
11 第一識別コード
12 展開路
13 基準マーク
14 試験片情報マーク
15 測定孔
16 第三識別コード
17 第二識別コード
18 識別部材
20 ロット間識別窓
21 クロマトグラフィー試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片であって、
前記検体を展開可能な多孔質基材と、
前記検体を点着するキャピラリと、
前記多孔質基材をレーザカットすることにより形成される2本の溝と、
前記多孔質基材の前記溝間の領域であり前記キャピラリに点着される前記検体が展開する展開路と、
前記展開路上に形成されて前記検体中の被測定物質を固定化する固定化部と、
前記多孔質基材上に形成される1または複数の第1の標識コードと
を有し、前記第1の標識コードが前記溝の形成時に前記レーザカットにより形成されることを特徴とするクロマトグラフィー試験片。
【請求項2】
前記多孔質基材上に保護フィルムをさらに設け、
前記保護フィルム上に前記第1の標識コードを形成することを特徴とする請求項1記載のクロマトグラフィー試験片。
【請求項3】
前記第1の標識コードが1または複数本の溝からなる1次元コードであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のクロマトグラフィー試験片。
【請求項4】
前記第1の標識コードが2次元コードであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のクロマトグラフィー試験片。
【請求項5】
前記第1の標識コードが1または複数個の孔であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のクロマトグラフィー試験片。
【請求項6】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片であって、
前記検体を展開可能な多孔質基材と、
前記検体を点着するキャピラリと、
前記多孔質基材をレーザカットすることにより形成される2本の溝と、
前記多孔質基材の前記溝間の領域であり前記キャピラリに点着される前記検体が展開する展開路と、
前記展開路上に形成されて前記検体中の被測定物質を固定化する固定化部と
を有し、前記キャピラリの構成部材である空間形成部材が前記固定化部を開口しながら前記展開路上に延伸されており、前記空間形成部材上に第2の標識コードが形成されていることを特徴とするクロマトグラフィー試験片。
【請求項7】
前記キャピラリの構成部材である空間形成部材が前記固定化部を開口しながら前記展開路上に延伸されており、前記空間形成部材上に第2の標識コードが形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のクロマトグラフィー試験片。
【請求項8】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片であって、
前記検体を展開可能な多孔質基材と、
前記検体を点着するキャピラリと、
前記多孔質基材をレーザカットすることにより形成される2本の溝と、
前記多孔質基材の前記溝間の領域であり前記キャピラリに点着される前記検体が展開する展開路と、
前記展開路上に形成されて前記検体中の被測定物質を固定化する固定化部と
を有し、前記多孔質基材上に前記固定化部を露出しながら第2の標識コードが形成された識別部材が貼り付けられることを特徴とするクロマトグラフィー試験片。
【請求項9】
前記多孔質基材上に前記固定化部を露出しながら前記第2の標識コードが形成された識別部材が貼り付けられることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のクロマトグラフィー試験片。
【請求項10】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、
前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、
前記レーザカットの工程と同時に前記多孔質基材に1または複数の第1の標識コードをレーザカットにより形成する工程と、
前記検体を点着するキャピラリを形成する工程と
を有することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の製造方法。
【請求項11】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、
前記検体を展開可能な多孔質基材上に1または複数の第1の標識コードが形成された保護フィルムを形成する工程と、
前記保護フィルムおよび前記多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、
前記検体を点着するキャピラリを形成する工程と
を有することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の製造方法。
【請求項12】
前記第1の標識コードが1または複数の溝または孔であることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載のクロマトグラフィー試験片の製造方法。
【請求項13】
前記第1の標識コードが印刷により形成されることを特徴とする請求項11記載のクロマトグラフィー試験片の製造方法。
【請求項14】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、
前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、
前記検体を点着するキャピラリの構成部材である空間形成部材を形成する工程と、
前記空間形成部材上にカバーシートを貼り付けて前記キャピラリを完成させる工程と
を有し、前記空間形成部材が前記展開路上の固定化部を開口しながら前記展開路上に延伸されており、前記空間形成部材上に第2の標識コードが予め形成されていることを特徴とするクロマトグラフィー試験片の製造方法。
【請求項15】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、
前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、
前記検体を点着するキャピラリを形成する工程と、
前記展開路上の固定化部を露出しながら前記多孔質基材上に第2の標識コードが形成された識別部材を形成する工程と
を有することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の製造方法。
【請求項16】
検体を点着することによりクロマトグラフィー測定を行うクロマトグラフィー試験片を製造するに際し、
前記検体を展開可能な多孔質基材上にレーザカットにより溝を形成して展開路を形成する工程と、
前記レーザカットの工程と同時に前記多孔質基材に1または複数の第1の標識コードをレーザカットにより形成する工程と、
前記検体を点着するキャピラリを形成する工程と、
前記展開路上の固定化部を露出しながら前記多孔質基材上に第2の標識コードが形成された識別部材を形成する工程と
を有することを特徴とするクロマトグラフィー試験片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−107401(P2010−107401A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280621(P2008−280621)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】