説明

クロメンをエナンチオ選択的に水素化する方法

キラル配位子を有するIr触媒の存在下でクロメン化合物を不斉水素化することによりエナンチオマのクロマンを調製する方法。この方法は、エナンチオマのエコールをエナンチオ選択的に調製することを含む。好ましいIr触媒はキラルなホスフィンオキサゾリン配位子を有する。立体選択的純度の高いエナンチオマのクロマンを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
イソフラボン類及びその多くの誘導体は、エストロゲン作用を含む広範囲の重要な生物学的特性を有している。大豆に存在するイソフラバノイド類、例えばゲニステイン及びダイゼインもまた、ホルモン依存性の症状及び疾患の治療に有効となり得る食物フィトエストロゲンとして関心を集めている。大豆イソフラボン類(通常フィトエストロゲン類と呼ばれる)のエストロゲン様活性の効果を調べるとき、該イソフラボン類及び摂取されるその抱合体のみならず、インビボでそれらから生じ得る生物学的に活性な代謝物も考慮する必要がある。ダイゼイン(大豆中のイソフラボンの一種)は、対応するクロマンS−(−)エコール(equol)(その前駆体よりも高いエストロゲン様活性を有する化合物)に変換され得る(K.D.R.Setchell,N.M.Brown,E.Lydeking−Olsen.J.Nutrition,2002,132/12,pp3577−3584参照)。この還元的な代謝変換は、「エコールプロデューサ」として知られるある割合のヒトに存在するエコール生産性腸内細菌叢の作用によってもたらされる。エコールは、1932年に妊娠した雌馬の尿から最初に分離され、その後、ヒツジの血漿中に見出された(アカツメクサ種に存在するホルモノネチンから誘導される)。1982年、それはヒトの尿中で初めて確認された。エコールは、キラル中心を有し、従って、2種のエナンチオマ形で存在し得る。S−(−)エコールは、ヒトが摂取したイソフラボンの代謝的還元により生成されるエナンチオマであるということが最近明らかになった(Setchell KDR,Clerici C,Lephart ED,Cole SJ,Heenan C,Castellani D,Wolfe B,Nechemias L−Z,Brown N,Baraldi G,Lund TD,Handa RJ,Heubi JE参照)。S−エコール(エストロゲン受容体−βに対する強いリガンド)は、腸内細菌叢によって生産される大豆イソフラボン代謝産物で専ら存在するエナンチオマ形である(American Journal of Clinical Nutrition 2005;81:1072−1079)。
【0002】
ダイゼインのトランスファー水素化に基づくラセミ体(±)エコール(7−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)−クロマン)の簡便な調製が報告されており(K.Wahala,J.K.Koskimies,M.Mesilaakso,A.K.Salakka,T.K.Leino,H.Adlercreutz.J.Org.Chem.,1997,v 62,p7690−7693)、そしてより最近ではJ.A.Katzenellenbogen他(Bioorganic & Medicinal Chem.,2004,12,pp 1559−1567)により報告されている。β−シクロデキストリンカラムを用いた(±)エコールのキラルクロマトグラフィ分割によりラセミ混合物からエナンチオマのS−エコール及びR−エコールを分離する方法が知られている(PCT公報WO03/23056(2004年1月29日公開)(引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする)参照)。しかし、この手法は、生産速度にある一定の限界があり、エナンチオ選択的エコールを商業規模の量で生産するには適していないと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、エナンチオ選択的エコール及び関連するエナンチオ選択的クロマン類を商業規模の量で合成する費用対効果の高い方法を開発することが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明は、エナンチオ選択的エコールを高純度及び高収率で合成する方法に関する。本発明は、官能化されていない環状オレフィン類、特にクロメン類のエナンチオ選択的水素化によって達成される。
【0005】
また本発明は、以下のエナンチオマのクロマン(化合物(I))
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立してH、OH、フェニル、アリール、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、OR、OC(O)R、OS(O)R、チオ、アルキルチオ、メルカプタール、アルキルメルカプタール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、及びハロからなる群から選択され、ここでRはアルキル及びアルキルアリールであり、かつR、R及びRは独立して−R及び以下
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれ独立してH及びRから選択される)から選択される)をエナンチオ選択的に調製する方法に関する。
【0010】
この方法は、1)
【0011】
【化3】

【0012】
から選択されるクロメン化合物を用意する工程、及び
2)以下の化合物(V):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、Y及びXはそれぞれ独立してS、O及びNからなる群から選択され、かつR14及びR15はそれぞれ独立してアルキル、アリール、フェニル、アルキルアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される)で示されるキラル配位子を有するIr触媒の存在下で該クロメンを水素化してクロマンを形成する工程を備える。
【0015】
また本発明はエナンチオマのエコール又は化合物(VI):
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、ZはH又はPGであり、ここでPGは水酸基保護基である)をエナンチオ選択的に調製する方法に関する。この方法は、1)
【0018】
【化6】

【0019】
から選択される3−フェニルクロメンを用意する工程、及び2)以下の化合物(V):
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、Y及びXはそれぞれ独立してS、O及びNからなる群から選択され、かつR14
及びR15はそれぞれ独立してアルキル、アリール、フェニル、アルキルアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される)で示されるキラル配位子を有するIr触媒の存在下で該3−フェニルクロメンを水素化してエナンチオマのエコールを形成する工程を備える。3−フェニルクロメン化合物が保護されている(XがPGである)場合、保護されているエナンチオマのエコール化合物(VI)を、必要に応じて(例えば酸性化により)エナンチオマのエコール及びその類似体に変換することができる。
【0022】
さらに本発明は、エナンチオマのエコール及びその類似体をエナンチオ選択的に調製する方法に関する。この方法は、1)3−フェニルクロメン−4−オンをそれに対応するクロマン−4−オンに還元する工程、2)該クロマン−4−オンを対応するクロマン−4−オールに還元する工程、3)該クロマン−4−オールを脱水して、3−フェニル−3,4クロメン及び3−フェニル−2,3クロメンから選択される対応するクロメンに変換する工程、並びに4)キラル配位子を有する化合物(V)のIr触媒の存在下で該クロメンを水素化してエナンチオマのエコール及びその類似体を形成する工程を備える。
【0023】
さらに本発明は、エナンチオマのエコールを含むエナンチオ選択的クロマンであって13C、18O、又はHの安定な同位体原子を有するものを合成することに関し、ここで、そのような原子は、中間体であるクロメン又はエナンチオ選択的クロマンの調製において、中間工程の1つで導入される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明の詳細な説明
定義
用語「エナンチオ選択的」は、一つのエナンチオマをもう一つのエナンチオマよりも優先的にもたらす化学反応を指し、すなわち、一つのエナンチオマ(通常、所望のエナンチオマ)が反応生成物中10%以上のエナンチオマ過剰率(ee)を有する反応生成物をもたらす化学反応を指す。
【0025】
「必要に応じた」又は「必要に応じて」は、その後に記載した状況が発生してもしなくてもよく、従ってその記載が、該状況が発生する場合と発生しない場合とを含むことを意味する。例えば、用語「必要に応じて置換(された)」は、所定の原子上に水素でない置換基が存在してもしなくてもよいことを意味し、従って、その記載は、水素でない置換基が存在する構造と、水素でない置換基が存在しない構造とを包含している。
【0026】
クロメンのエナンチオ選択的水素化
本発明の一実施形態は、複素環内に含まれるキラル炭素を有しかつ立体特異的配置を有するクロマン又は置換クロマンを調製する方法を提供する。得られるクロマン化合物の一般構造は、本明細書において先に記載した化合物(I)によって示されるものである。
【0027】
クロマン化合物(I)は、環中C−3炭素の位置でRによりクロマンが置換され、それにより、C−3炭素のみがキラリティを有することを示している。この場合、Rが水素でない置換基でありかつC−3炭素のみがキラリティを有するとき、R及びRはHである。合成される化合物(I)のキラル中心(C−3炭素の位置)における立体特異的配置は、イリジウム触媒(典型的に1つ以上、より典型的に2つ以上のキラル炭素中心を触媒配位子において有する)におけるキラル配位子の立体特異的配置に左右され得るとともに、いずれかの水素でない置換基R、R及びRの種類及び分子量に左右され得る。
【0028】
キラル選択的水素化のための出発化合物は、本明細書において上述した化合物(III)及び(IV)から選択される、対応するクロメンである。
【0029】
一方、クロメン化合物(III)又は(IV)は、C−4の位置(R)又はC−2の位置(R)のいずれかにおいて、水素でない置換基により置換することができ、それぞれC−4の位置又はC−2の位置において、代わりにキラリティをもたらすことができる。Rが水素でない置換基でありかつC−2炭素のみがキラリティを有するとき、R及びRはHである。Rが水素でない置換基でありかつC−4炭素のみがキラリティを有するとき、R及びRはHである。
【0030】
選択されるキラル触媒系は、化合物(V)として本明細書において先に示されたキラル配位子を有するエナンチオ選択的イリジウム触媒を含む。
【0031】
より典型的なイリジウム系触媒は、以下の化合物(IX)のキラルなホスフィン−オキサゾリン配位子を有する。
【0032】
【化8】

【0033】
(式中、R14及びR15は先に定義したとおりである。)
好ましい配位子化合物として使用されるものは、R14がフェニルでありかつR15がメチルである。
【0034】
オキサゾリン環において(4S,5S)の配置を有するホスフィン−オキサゾリン配位子は、Adv.Synth.Catal.,2002,344,pg.40−44(Menges及びPfaltz)のThreonine−Derived Phosphinite−Oxazoline Ligands for the Ir−Catalyzed Enantioselective Hydrogenation(引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする)に記載された方法により、出発原料L−トレオニン(2S,3R)から合成することができ、また、Strem Chemical(Newburyport,MA)から入手することができる。オキサゾリン環において(4R,5R)の配置を有するホスフィン−オキサゾリン配位子は、出発原料としてL−トレオニンの代わりにD−トレオニン(2R,3S)を用いてMenges及びPfaltzの方法により合成することができる。
【0035】
この方法は、立体特異性が高いことがわかっており、典型的には、10%以上のエナンチオマ過剰率(ee)、より典型的には50%以上、さらに典型的には90%以上、一層典型的には95%以上、最高で100%、より典型的には最高で99.5%、さらに典型的には最高で99%のエナンチオマ過剰率を有するエナンチオマのクロマンを典型的に形成する。
【0036】
クロメン化合物(III)又は(IV)の水素化に先立って、水酸基であるR、R、R、R、R、R、又はRのいずれかを、水酸基保護基PGで保護することができる。典型的な保護基の一つであるメトキシメチル基(−MOM)は、初期のクロメン
前駆体(例えばダイゼイン)をメトキシメチルクロリドとともにジイソプロピルエチルアミンの存在下で還流することにより導入することができる。本発明の他の実施形態では、保護されていないヒドロキシル置換基を有するクロメンを、典型的には極性溶媒中で、不斉水素化することができる。該極性溶媒は、保護されていないクロメンの溶解度を高めるものであって、例えば、限定されることなく、酢酸エチル、メタノール、THF、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及び酢酸である。
【0037】
水素化の後、保護基は、酸性化(例えば、メタノール中過剰のHClにより0℃〜室温で2時間)により除去することができる。他の酸性加水分解試薬(例えば、酢酸TFA)を、種々の保護基放出速度で用いることができる。この工程は、化合物の脱保護とも呼ばれる。
【0038】
クロメンの水素化は、極性溶媒(典型的にはジクロロメタン)中、典型的には最高200psigの圧力の水素において、室温以上の温度で行われる。クロメンに対し約0.1mol%以上、より典型的には少なくとも約0.5〜2mol%、典型的には最高約5mol%の触媒濃度において、反応は速やかに(数分以内に)進行する。
【0039】
エナンチオ選択的水素化の後、得られたエナンチオマのクロマンは、当業者によく知られた手順によって、溶媒、反応物、及び触媒から分離することができ、そして、シリカゲルプラグフィルタでのクロマトグラフィにより精製することができる。生成物の構造は、H及び13CのNMR分析により、そして、クロマトグラフィと組み合わされた質量分析により、確認することができる。生成物の立体特異性は、光学二色性によって確認することができる。
【0040】
エナンチオマのエコールを調製するための3−フェニルクロメンのエナンチオ選択的水素化
本発明の他の実施形態における方法は、エナンチオマのエコール(7−ヒドロキシ−3−(4’−ヒドロキシフェニル)−クロマン)を調製するためのものである。
【0041】
キラル選択的水素化のための出発化合物は、
【0042】
【化9】

【0043】
(式中、ZはH又はPGであり、ここでPGは水酸基保護基であり、かつクロメン上のC−7の位置にある水酸基及び3−フェニル置換基のC−4の位置にある水酸基が保護されており、ここでPGは水酸基保護基である)から選択される保護された又は保護されていない対応する3−フェニルクロメンである。
【0044】
選択されるキラル触媒系は、上記化合物(III)で示される配位子を有するイリジウム系触媒を含む。より典型的なイリジウム系触媒は、化合物(IX)として本明細書において先に示されているホスフィン−オキサゾリン配位子を含む。好ましい配位子は、本明細書において先に化合物(X)として示された化合物である。
【0045】
合成に使用できる典型的な溶媒には、低級アルキルジハロゲン化物、例えばジクロロメタン、THF、及び酢酸エチルがある。他の必要に応じた溶媒には、単独で又は組み合わせて使用するものとして、ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸、N−メチルピロリドン(NMP)、及びメタノールがある。典型的に反応は、ジクロロメタン中、0〜室温(rt)の範囲の温度で、1分〜3時間の時間内に、0psig(混合物中に水素を吹き込む)から最高150psigの水素圧において、完全に進行する。
【0046】
文献の開示によれば、官能化線状アルケンを用いる合成において(4S,5S)−ホスフィン−オキサゾリン配位子を使用すれば、R−配置のアルカンと炭素環アルケンのS−配置が排他的に得られている(A.Pfaltz,F.Menges.Adv.Synth.Catal.2002,344/1,pp 40−44,A.Pfaltz他、Adv.Synth.Catal.2003,345/1−2,pp 33−43)。複素環式アルケンのエナンチオ選択的水素化に成功した文献データは見当たらなかった。複素環式アルケンを用いる合成では、合成される複素環式アルカン化合物において置換される炭素の立体特異性(S配置又はR配置のいずれかとして)は、触媒配位子の立体特異性と合致する可能性もあれば、反対となる可能性もある。本発明の一実施形態では、官能化複素環式アルケン(デヒドロエコール化合物(VII))を用いる合成において、(4S,5S)−ホスフィン−オキサゾリン配位子を用いることにより、R−配置のクロマン(R−エコール)が排他的に得られ、一方、(4R,5R)−ホスフィン−オキサゾリン配位子を用いることにより、S−配置のクロマン(S−エコール)が排他的に得られた。
【0047】
実施例9について示されるところによれば、3−フェニル−3,4−クロメンの水素化により、対応する2,3−クロメン中間体が形成され、次いでそれがクロマンに水素化されている。このような場合、3−フェニル−2,3−クロメンは、新規な単離された化合物であり得、そして、本発明のエナンチオ選択的水素化法にとって別の原料クロメンとなり得る。
【0048】
エコールの合成エナンチオマは、グルクロニド、スルフェート、アセテート、プロピオネート、グルコシド、アセチル−グルコシド、マロニル−グルコシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される共役物質により、C−4’又はC−7の位置においてエコール類似体又はエコール抱合体に変換することができる。
【0049】
得られるエナンチオマのエコール物質は、典型的には、10%以上のエナンチオマ過剰率(ee)、より典型的には50%以上、さらに典型的には90%以上、一層典型的には95%以上、典型的には最高で100%、より典型的には最高で99.5%、さらに典型的には最高で99%のエナンチオマ過剰率を有する。
【0050】
エコール合成のための別の出発原料は、クロメン−4−オン、例えば3−フェニル−クロメン−4−オンである。それは、ダイゼインとして又はそのメトキシ類似体であるホルモノネチンとして、天然に、又は市販品として得ることができる。ダイゼインは、公知の方法(例えば、J.Chem.Soc.Perkin Trans.,1991,pages 3005−3008(引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする)に記載された方法)によって合成することができる。原料であるダイゼインは、保護することができる(例えば、MOMのような保護基PGにより)。好ましい合成経路において、精製されたビス−MOMダイゼイン(以下に化合物(XI)として示される)を水素化し、対応する3−フェニル−クロマン−4−オン(化合物(XII)として示される)のシス体及びトランス体の混合物(1:1)を得る。
【0051】
【化10】

【0052】
メタノール溶媒中の10%Pd/C触媒及びNHCOHが、室温一夜でダイゼインをクロマン−4−オンのラセミ体に変換するのに適当であることがわかった。次いで、分離された3−フェニル−クロマン−4−オン生成物を、以下の反応に従ってビス−MOMダイゼイン−オール(化合物(XIII))の対応するシス体及びトランス体の混合物(約3.4:1)に還元する。
【0053】
【化11】

【0054】
次いで、ビス−MOMダイゼイン−オール(クロメン−オールの一種)を脱水して複素環内の3位と4位の環炭素の間に二重結合を導入し、以下の反応に従って、3,4−デヒドロエコール(化合物(XIV))の形成をもたらす。
【0055】
【化12】

【0056】
3,4−デヒドロエコールは、結晶化により精製することができ、白色の固体(粉末)を生成する。これは、フリーザにて固体の形態で保存することにより安定化させることができる。空気、水分の存在、及び溶媒中での長時間の保存は、デヒドロエコールの分解を引き起こし得る。
【0057】
一つの好ましいIr触媒系は、化合物(V)として示される配位子とIr及び((COD)Cl)とからなるIr−配位子錯体(錯体(XV))を含む。
【0058】
【化13】

【0059】
Ir−配位子錯体は、ジクロロメタン中、標準的な条件下で約1時間、ホスフィン−オキサゾリン配位子を[Ir(COD)Cl]とともに還流することにより、得ることができる。次いで、Ir−配位子錯体は、含水ジクロロメタン中で、対イオンと反応させられ、Adv.Synth.Catal.2002,344/1,pp40−44でA.Pfaltzが記載するように、キラルIr触媒系を生成させる。好ましいイリジウム触媒配位子は、本明細書で先に示したホスフィン−オキサゾリン配位子化合物(IX)を含む。好ましい対イオンは、以下に化合物(XVI)として示されるNaB(Arである。
【0060】
【化14】

【0061】
官能基又は置換基(例えば水酸基、スルフヒドリル基、あるいはアミノ基)が「保護されている」と言われる場合、該置換基は、保護される部位において不要な副反応を排除するため修飾されている。本発明の化合物に適する保護基は、標準的な教本(例えばGreene他,Protective Groups in Organic Synthesis(New York:Wiley,1991))を参照するとともに、当該技術水準を考慮すれば、本願から明らかなことである。
【0062】
本実施形態において有用な水酸基水酸基保護基には、例えば、アルキル基(典型的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基、及びベンジル基)、アルコキシアルキル基(典型的にはメトキシメチル基(MOM)、ベンジルオキシメチル基、p−メトキシベンジル基、及びジメトキシベンジル基)、トリアルキルシリル部分を含むシリル部分(例えば、トリイソプロピルシリル部分(TIPS)及びトリメチルシリル部分(TMS))、アシル部分(例えば、アセチル部分及びベンゾイル部分)、テトラヒドロピラニル部分及び関連する部分、メチルチオメチル部分、並びに、スルホニル部分(例えば、メタンスルホニル部分及びベンゼンスルホニル部分)があるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
通常の試薬及び方法を用いて保護基を除去することができ、それにより保護されていないクロマンまたはクロメンが得られる。
【0064】
エナンチオマのエコールの使用
合成された立体選択的エナンチオマのエコール化合物(S−エコール及びR−エコール)は、市販又は業務用の製品を製造するため、単離されたエナンチオマとして、又は、ラセミ混合物(1:1)もしくは非ラセミ混合物として使用することができる。エナンチオマのエコール又はそれから調製される組成物又は製品は、経口摂取することができ、あるいは、局所的に、皮内に、皮下に投与することができ、あるいは、担体において吸入することができ、そして、市販又は業務用の食品、医薬、OTC(薬局向け)医薬、軟膏、液体、クリーム、又は局所投与に適する他の材料を含むことができる。典型的な食品組成物は、1食あたり、1mg以上、最高200mgまでのエコールのエナンチオマを含むことができる。経口投与される医薬は、1用量あたり、1mg以上、最高200mgまでのエコールのエナンチオマを含むことができる。局所投与用の製品は、0.1重量%以上、最高10重量%までのエコールのエナンチオマを含むことができる。
【0065】
エナンチオマのエコール又はそれから調製される組成物若しくは製剤は、エコールに関連する病気及び症状を治療及び/若しくは予防するため、又は該病気及び症状にかかりやすい傾向を減らすために、対象に投与することができる。組成物又は製品は、1種以上の製薬上許容される佐剤、担体及び/又は賦形剤をさらに含むことができる。エナンチオマのエコールから調製することができる他の組成物及び製品、並びにそれを病気及び症状の治療又は予防に使用することは、PCT公報WO2004/23056(2004年1月29日公開)及びPCT公報WO2004/039327(2004年5月13日公開)(これらの内容は引用により本明細書に記載されたものとする)に開示されている。
【0066】
方法
A.(4R,5R)−ホスフィン−オキサゾリン配位子の合成法
本明細書において先に化合物(X)として示した(4R,5R)−ホスフィン−オキサゾリン配位子を、Pfaltz他に発行された米国特許第6632954号(その内容は引用により本明細書に記載されたものとする)の実施例A12及びB12にほぼ従って合成した。PfaltzはL−トレオニンから出発して(4S,5S)−ホスフィン−オキサゾリンを調製したが、この方法はD−トレオニンから出発した。
【0067】
a)D−トレオニンメチルエステルの調製
ガス状HClのメチルアルコール溶液(2Nの210ml又は0.46mol)を、磁気攪拌器、熱電対、窒素導入管、冷却器、及び加熱マントルを備える0.5Lの3つ口丸底フラスコに入れた。合計25.1g(0.21mol)のD−トレオニン(98%、Aldrich)を、HCl/MeOH溶液に室温で加え、そして得られた混合物を一夜還流した。EtOAc/MeOH/AcOH=7:2.5:0.5の混合物を移動相として用いるTLCにより反応をモニターした。D−トレオニンのすべてが実質的に消費されたときに反応を停止した(D−トレオニンメチルエステルはRf=0.39でニンヒドリンにより「ニンジン」色のスポットをもたらし、D−トレオニンはRf=0.19でニンヒドリンにより赤色のスポットをもたらす)。ロータリーエバポレータで溶媒を除去して39.49g(110%収率)のガラス状物質を得た。これを精製することなく次の工程に使用した。
【0068】
b)N−ベンゾイル−D−トレオニンメチルエステルの調製
粗D−トレオニンメチルエステル(39.49g)を300mLのメタノールに溶解させ、そして、熱電対、磁気攪拌器及び氷冷浴を備える1Lの3つ口丸底フラスコに移した。溶液を12℃に冷却し、そして合計64.1g(0.63mol、3当量)をフラスコに加え、−10℃に冷却した。合計30.9g(0.21mol)の塩化ベンゾイルを溶液に加え、得られた混合物を0℃で1時間撹拌した。この時間の後、溶媒をロータリーエバポレータで除去して、粘性の半固体を得た。合計300mLの冷水をこの残渣に加え、
有機物質を酢酸エチル(2×300mL)で抽出した。有機相を分離して、食塩水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をロータリーエバポレータで除去して52.02g(104%)の透明な黄色油を得た(EtOAc/ヘキサン=6:4でRf=0.39)。得られた油を200mLのエーテルから結晶化し、白色固体を得た。これを、ろ過して、ヘキサン(2×100mL)で洗浄し、吸引下で乾燥した。真空デシケータでさらに乾燥して、42.35g(2工程で84.7%の収率)を得た。
【0069】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3, δ): 1.25 (d, J = 6.3 Hz, 3H, CH3), 3.42 (d, 1H, OH), 3.78 (s, 3H, OCH3), 4.42 (dq, J = 2.6 Hz, J = 6.3 Hz, 1H, CH-O), 4.78 (dd, J = 2.4 Hz, J = 8.7 Hz, 1H, CH-N), 7.2 (bd, J = 9. 0 Hz, 1H, NH), 7.40 (t, J = 7.3 Hz, 2H, Ph), 7.43 (t, J = 7.3 Hz, 1H, Ph), 7.82 (d, J = 7.3 Hz, 2H, Ph)。
【0070】
13C APT NMR (75 MHz, CDCl3, δ): 19.94, 52.47, 57.79, 67.97, 127.14, 128.48, 131.80, 133.56, 168.07, 171.49。
【0071】
c)(4R,5R)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4−カルボン酸メチルエステルの調製
過剰の塩化チオニル(75mL)を、熱電対、磁気攪拌器、苛性スクラバー、及びドライアイス/アセトン冷却浴を備える250mLの丸底フラスコに入れ、−35℃に冷却した。反応温度を−20℃に維持しながら、固体のN−ベンゾイル−D−トレオニンメチルエステル(25.75g、0.108mol)を少しずつフラスコに加えた。完全に加えた後、得られた混合物をゆっくり室温にまで暖め、さらに1時間撹拌した。反応を〜5℃で一夜保持した後、過剰の塩化チオニルを真空下〜30℃で除去した。得られた油を、冷飽和重炭酸ナトリウム(1.5L)で洗浄し、ジクロロメタン(3×200mL)で抽出し、そして有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をロータリーエバポレータで除去して22.93gの透明な油を得た。この油を、CHCl/ヘキサン=1:1を溶離液として用いた13×9cmシリカゲルプラグで精製して、19.88g(83.6%収率)の透明な油を得た。これを白色固体にゆっくり結晶化させた(CHCl/ヘキサン=1:1でRf=0.17)。
【0072】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3, δ): 1.40 (d, J = 6.3 Hz, 3H, CH3), 3.80 (s, 3H, OCH3), 4.97 (d, J = 10.2 Hz, 1H, CH-N=C), 5.05 (J = 6.0 Hz, J = 10.2 Hz, 1H, CH-O), 7.41 (t, J = 7.5 Hz, 2H, Ph), 7.50 (t, J = 7.3 Hz, 1H, Ph), 7.43 (t, J = 7.3 Hz, 1H, Ph), 8.00 (d, J = 7.3 Hz, 2H, Ph)。
【0073】
13C NMR (75 MHz, CDCl3, δ): 16.13, 51.96, 71.67, 77.55, 127.17, 128.21, 128.44, 131.69, 166.06, 170.31。
【0074】
d)(4R,5R)−2−(5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4−イル)−1,3−ジフェニル−プロパン−2−オールの調製
無水ジエチルエーテル200mL中(4R,5R)−5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4−カルボン酸メチルエステル8.61g(39.27mmol)の溶液を、熱電対、窒素導入管、磁気攪拌器、及びドライアイス/アセトン冷却浴を備える200mLの3つ口丸底フラスコに入れた。ジエチルエーテル中1Mの塩化ベンジルマグネシウム溶液を合計120mL(120mmol、3当量)、シリンジを介して−78℃で反応物に加えた。冷却浴を取り除き、そして反応混合物を2時間内に室温にまで暖め、この温度で1時間撹拌した。得られた乳状の溶液を、塩化アンモニウムの冷水溶液(1.2L)に注ぎ、そして酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。有機層を水(200mL)及び食塩水(100mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、16.95gの透明な油を得た。この粗生成物を、ヘキサン/酢酸
エチル=25/1混合物を溶離液として用いたシリカゲルカラムで精製して、13.75g(86%収率)の純粋な物質を白色の発泡体/粉末として得た(EtOAc/ヘキサン=1:9でRf=0.49)。
【0075】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3, δ): 1.70 (d, J = 6.6 Hz, 3H, CH3), 2.10 (s, 1H, OH), 2.67 (d, J = 13.8 Hz, 1H, CH2), 2.92 (J = 13.8 Hz, 1H, CH2), 3.11 (d, J = 14.1 Hz, 1H, CH2 3.17 (d, J = 13.8 Hz, 1H, CH2), 4. 10 (d, J = 9.3 Hz, 1H, CH-N=C), 4.81 (dq, J = 6.9 Hz, J = 9.3 Hz, 1H,CH-O), 7. 20-7.30 (m, 13H, Ph), 8.05 (d, J = 7.3 Hz, 2H, Ph)。
【0076】
13C NMR (75 MHz, CDCl3, δ): 16.70, 42.22, 42.75, 71.81, 76.13, 79.34, 126.42,
128.08, 128.10, 128.23, 130.95, 131.31, 137.11, 137.22, 164. 06。
【0077】
e)(4R,5R)−O−[1−ベンジル−1−(5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4−イル)−2−フェニルエチル]−ジフェニル−ホスフィナイトの調製
無水ペンタン200mL中(4R,5R)−2−(5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4−イル)−1,3−ジフェニル−プロパン−2−オール6.64g(16.44mmol)の溶液を、熱電対、窒素導入管、磁気攪拌器、及びドライアイス/アセトン冷却浴を備える500mLの3つ口丸底フラスコに入れた。ヘキサン中1.6Mのn−ブチルリチウム溶液を合計13mL(20.8mmol、1.26当量)−78℃でフラスコに加え、続いて4.32g(37.17mmol、2.26当量)のN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを加えた。冷却浴を取り除き、そして混合物を1時間内に0℃にまで暖め、さらに1.5時間撹拌した。この時間の後、合計4.10g(18.58mmol)のジフェニルクロロホスフィンを反応物に加えた。そして得られた混合物を室温まで暖めた。この温度で3時間撹拌した後、溶媒をロータリーエバポレータで除去してオフホワイトの半固体を得た。粗生成物を、最小限の量のジクロロメタンに溶解し、EtOAc/ヘキサン=1:20を溶離液として用いたシリカゲルプラグにより精製して、8.78g(96%収率)の白色発泡体を得た(EtOAc/ヘキサン=1:9でRf=0.56)。分離した発泡体を、シリカゲルカラム及びEtOAc/ヘキサン=1:50によりもう一度精製して、5.56g(61%収率)の純粋な生成物を塊状の白色粉末として得た。
【0078】
f)テトラキス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)−フェニル]−ホウ酸ナトリウムの調製(D.L.Reger,T.D.Wright,C.A.Little,J.J.S.Lamba,M.D.SmithによるInorg.Chem.,2001,40,3810−3814に記載されたとおり)
工程f−1:合計3.49g(31.7mmol、1当量)のテトラフルオロホウ酸ナトリウム、4.98g(205mmol、6.45当量)、及び600mLの無水エーテルを、オーバーヘッド攪拌器、滴下漏斗、熱電対、冷却器、窒素導入管、及び加熱マントルを備える2Lの4つ口丸底フラスコに充填した。ジブロモエタン(〜1mL)を加え、そしてフラスコを徐々に加熱して反応を開始させた。熱を除去し、エーテル100mL中3,5−ビス−(トリフルオロメチル)−ブロモベンゼン50.94g(174mmol、5.47当量)の溶液を30分で滴下し、それにより溶液をゆっくり還流させた。一旦すべての臭化物を加えたら、反応物を加熱マントルで加熱してさらに1時間還流を続けた。次いで熱を除去し、そして得られた混合物を室温で一夜撹拌した。この時間の後、反応混合物を、炭酸ナトリウムの冷溶液(水950mL中NaCO77g)に注ぎ、30分間撹拌した。上層にある褐色の有機層を分離し、底にある乳状の水性層をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、17gの炭とともに2時間室温で撹拌した。混合物を、セライトパッドでろ過し、エーテルをロータリ
ーエバポレータで除去して32.4gの褐色半固体を得た。得られた粗生成物を、800mLのベンゼンに溶解し、ディーン−スタークトラップを用いて3時間の共沸蒸留により水を除去した。溶媒の体積を約200mLにまで減らし、そして残渣を氷浴で冷却して、固体と重い褐色油の混合物を生成させた。この不均一混合物をろ過し、ベンゼン(3×50mL)、次いでヘキサン(1×100mL)で洗浄した。分離した固体を、吸引下及び窒素気流下で乾燥して、13.28g(47%収率)の白色固体を得た(EtOAcでRf=0.15)。
【0079】
工程f−2:キラル(4R,5R)−イリジウム錯体:(Adv.Synth.Catal.2002,344/1,pp 40−44においてA.Pfaltzにより記載される4S,5S−イリジウム錯体の合成と類似の方法により)ジクロロメタン150mL中(4R,5R)−O−[1−ベンジル−1−(5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4−イル)−2−フェニルエチル]−ジフェニル−ホスフィナイト5.49g(9.88mmol、1.82当量)の溶液を、熱電対、磁気攪拌器、冷却器、窒素導入管、及び加熱マントルを備える500mLの3つ口丸底フラスコに入れた。合計3.65g(5.43mmol、1当量)のイリジウム錯体[Ir(COD)Cl]を少しずつフラスコに加え、生成した赤色溶液を2時間還流した。加熱マントルを取り外し、そして10.25g(11.56mmol、1.17当量)の固体のテトラキス[3,5−ビス−(トリフルオロメチル)−フェニル]−ホウ酸ナトリウムを反応混合物に加えた。得られた混合物を5分間激しく撹拌した後、130mLの水で希釈した。この不均一混合物をさらに15分間撹拌し、層分離させた。水相をジクロロメタン(2×100mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を蒸発させて、19.05gの橙色発泡体を得た。得られた粗物質を、CHCl/ヘキサン=1:1を溶離液として用いたシリカゲルプラグ(366gのSiO)により精製した。溶媒をロータリーエバポレータで除去して、14.81g(79%収率)の触媒を明るい橙色の粉末として得た(CHCl/ヘキサン=6:4でRf=0.28)。
【0080】
B.TMS誘導体化及びTBDMS誘導体化の方法
a.TMS:20μgのR−エコール及びS−エコールを別々の誘導体化バイアルに入れ、窒素下で乾燥させた。Tri−Sil試薬を6滴、それぞれのバイアルにガラスピペットを用いて加えた。そして内容物を30分間65℃で加熱した。処理した試料を窒素下で乾燥し、50μLのヘキサンで戻した。次いでこの試料をGC/MSにかけた。
【0081】
b.TBDMS:20μgのR−エコール及びS−エコールを別々の誘導体化バイアルに入れ、窒素下で乾燥させた。100μLのアセトニトリル及び100μLのMTBSTFA+1%t−BDMCSを各バイアルに加え、そして内容物を1時間100℃で加熱した。処理した試料を窒素下で乾燥し、50μLのヘキサンで戻した。次いでこの試料をGC/MSにかけた。
【0082】
C.GC/MS分析及びLC/MS分析
GCMS:生成物及び中間生成物を、HPガスクロマトグラフ5890シリーズIIを装備したVG Autospec磁場型質量分析計を用いて分析した。ソリッドガラス針注射器を用い、ヘリウムをキャリアガスとして用いて、試料をJ&W Scientific DB1カラム(0.25mm I.D.、0.25μmフィルム)に注入した。最初に225℃で1.0分間、次いで310℃まで上昇、そして10分間保持の温度勾配を使用し、その後、次の注入を行った。EI磁気走査分析により100〜900の質量範囲でフルスキャントレースを得るとともにすべての生成物のスペクトルを得た。
【0083】
LCMS:生成物及び中間生成物を、Waters Acquity UPLCを装備したWater Quattro Micro APIタンデム型質量分析計を用いて分
析した。水を使用する二移動相系、2mM酢酸アンモニウム(移動相A)及びメタノール、2mM酢酸アンモニウム(移動相B)+0.1%蟻酸を、50/50の定組成に維持した。プローブの前にレオダイン注射器をすみやかに配置し、装置へのダイレクトループ注入を可能にした。キャピラリー電位3.5kV、コーン18V、衝突ガス18、質量範囲100〜500、ESI+のMS分析を行うことにより、フルスキャントレースを得るとともにすべての生成物のスペクトルを得た。
【0084】
実施例
実施例1:MOM−保護されたクロメン−オン(ビス−MOMダイゼイン,7−メトキシメトキシ−3−(4’−メトキシメトキシ−フェニル)−2H−クロメン−4−オン)の合成
熱電対、オーバーヘッド攪拌器、加熱マントル、滴下漏斗、及び窒素導入管を備える12Lの4つ口丸底フラスコにおいて、合計329g(1.29mol)の97%ダイゼイン(LLC Laboratoriesより入手)を4.5Lのジクロロメタンと混合した。得られた白色懸濁液を8℃に冷却し、そして、合計655.8g(5.07mol、3.9当量)のジイソプロピルエチルアミン(DIEA)をこのポットに加えた。20分の後、合計373g(4.63mol、3.59当量)のクロロメチルメチルエーテル(MOM−Cl)を8℃において滴下漏斗を介して混合物に加えた。氷浴を取り除き、代わりに加熱マントルを用いて2時間で室温まで暖めた。ポット温度を40℃に保持し、ダイゼイン及びモノ−MOM中間体がTLC(EtOAc/ヘキサン=1:1でダイゼインはRf=0.23、モノ−MOMはRf=0.38、ビス−MOM−ダイゼインはRf=0.62)において消えるまで、反応をこの温度で保持した(通常、一夜)。得られた透明な褐色溶液を室温に冷却し、撹拌下、ゆっくり、水4L、氷1kg、飽和重炭酸ナトリウム1L、及びジクロロメタン3Lの冷混合物に注いだ。この混合物は、強力なオーバーヘッド攪拌器及び熱電対を備える20Lのプラスチックバケツにおいて調製した。生成物の分解を回避するため、この工程中、生成する溶液のpHを塩基性にしておかなければならない。有機相を分離し、水相を再度ジクロロメタン(2×1L)で抽出した。有機層を合わせ、水(2×3L)、重炭酸ナトリウム(3L)で洗浄し、硫酸ナトリウム(500g)で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して431g(97%収率)の生成物を黄色固体として得た。この物質を熱(56℃)酢酸エチル3.5Lからの結晶化により精製した後、ろ過及びそれに伴うEtOAc/ヘキサン=3:1(2L)での洗浄を行った。分離した固体を35℃で真空オーブンにおいて一夜乾燥し、340.6g(77%の分離収率)のビス−MOM−ダイゼインを白色固体として得た。母液からもう一度分離(合計66.31gの生成物)を行うことにより、合わせて91.78%の収率でビス−MOM−ダイゼインを得た。
【0085】
ガスクロマトグラフィ質量分析(GC−MS)によるトレース及びスペクトルを、「方法」の項で記載したGC−MS法に従い、ビス−MOMダイゼイン生成物について得た。それらを図1A及び1Bにそれぞれ示す。液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)によるトレース及びスペクトルを、「方法」の項で記載したLC−MS法に従い、ビス−MOMダイゼイン生成物について得た。それらを図1C及び1Dにそれぞれ示す。
【0086】
H NMR及び13C NMRのデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, .): 8.21 (d, 1H, J = 9.3 Hz), 7.92 (s, 1H), 7. 48 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 7.07 (m, 4H), 5.26 (s, 2H, OCH2O), 5.20 (s, 2H, CH2O), 3.50 (s,
3H, CH3O), 3.48 (s, 3H, CH3O).。
【0087】
13C NMR (75 MHz, CDCl3, .): 175.697, 161.337, 157.543, 152.228, 130.045, 127.716, 125.329, 124.690, 119.076, 116.147, 115.370, 102.969, 94.280, 56.290, 55.861。
【0088】
実施例2:クロメン−オンの水素化によるクロマン−オン(7−メトキシメトキシ−3−(4’−メトキシメトキシ−フェニル)クロマン−4−オン)の生成
冷却器、熱電対、オーバーヘッド攪拌器、加熱マントル、及び窒素導入管を備える12Lの4つ口丸底フラスコに、合計336.5g(0.983mol)のビス−MOM−ダイゼイン及び3.3Lのメタノールを投入した。固体の蟻酸アンモニウム(309.4g、4.906mol、5当量)を撹拌下フラスコに加え、生じたスラリーを20分間室温で撹拌した。合計23.2g(6.89重量%)の乾燥10%Pd/Cを、窒素雰囲気下で慎重にポットに移し、そして反応温度を45℃に維持した。出発原料がすべてなくなるまで(通常、5時間を要する)TLC(EtOAc/ヘキサン=2:8でビス−MOM−ダイゼインはRf=0.22、生成物はRf=0.29)により反応をモニターした。温かい(〜30℃)反応混合物を、セライト(142g)ろ過して触媒を除去し、そしてフィルタを2Lのジクロロメタンで洗浄した。有機ろ液を合わせ、そして溶媒を減圧下で除去し、黄色の固体を得た。これをメタノール−ヘキサンから再結晶化して241.2g(71.3%収率)の生成物を白色固体として得た。母液からさらに分離(36.94g)を行い、合わせて82.2%の収率で生成物を得た。
【0089】
クロマン−4−オン生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図2A及び2Bにそれぞれ示す。クロマン−4−オン生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図2C及び2Dにそれぞれ示す。
【0090】
H NMR及び13C NMRのデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, .): 9.0 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 7.95 (dd, 2H, J = 9. 0Hz,
J = 2.4Hz), 7.00 (dd, 2H, J = 9.0 Hz, J = 2.4 Hz), 6.70 (dd, 1H, J = 8.7 Hz, J = 2.1 Hz), 6.62 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 5.20 (s, 2H, OCH2O), 5.15 (s, 2H, OCH2O), 4.62 (d, 1H, CH2O, J = 0.6 Hz), 4.60 (d, 1H, CH2O, J = 2.7 Hz), 3.87 (dd, 1H, CH,
J = 7.8 Hz, J = 6.0 Hz), 3.47 (s, 3H, CH3O), 3.45 (s, 3H, CH3O)。
【0091】
13C NMR (75 MHz, CDCl3, .): 190.98, 163.441, 163.174, 156.686, 129.560, 129.423, 128.516, 94.312, 94.029, 71.782, 56.290, 55.853, 51.145。
【0092】
実施例3:クロマン−オンの還元によるクロマン−オール(7−メトキシメトキシ−3−(4’−メトキシメトキシ−フェニル)クロマン−4−オール)のシス及びトランス異性体混合物としての生成
熱電対、オーバーヘッド攪拌器、氷/メタノール冷却浴、滴下漏斗、及び窒素導入管を備える12Lの4つ口丸底フラスコに、合計25.33g(0.67mol)の固体の水素化ホウ素ナトリウムを投入した。合計3Lの乾燥THFをフラスコに加え、得られた懸濁液を1.4℃に冷却した。氷酢酸(52.54g、0.875mol)をTHF200mL中の溶液としてフラスコにゆっくり加え、そして混合物を10℃で20分間撹拌した。反応物を−4℃に冷却し、THF1.3L中ビス−クロマン−4−オン230.1g(0.668mol)の溶液をフラスコに加えた。反応物を3日間室温においてゆっくり撹拌し、原料ケトンがすべてなくなるまでTLCによりモニターした。塩化アンモニウムの冷飽和溶液12Lに加えることにより反応を失活させ、有機層を分離し、水相をジクロロメタン(2×1L)で抽出した。合わせた有機相を水(1×3L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去して229.7g(99.2%収率)の生成物を無色の粘稠油として得た(シス:トランス=3:1異性体の混合物として)。この物質を精製することなく次工程に使用した。
【0093】
クロマン−オール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図3A及び3Bにそれぞれ示す。クロマン−オール生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図3C及び3
Dにそれぞれ示す。各質量分析ではクロマン−オール生成物に対しMWが328として示されている一方、実際のMWは346であり、18の差がある。NMRデータにより生成物の構造が確認されるため、クロマン−オール生成物は質量分析中に試料のイオン化によって脱水を受けると考えられる。その結果、1つの水分子が失われ、これが、質量分析において荷電した分子イオンをもたらし、18原子質量単位(a.m.u.)の減少を生じさせると考えられる。
【0094】
H NMR及び13C NMRのデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3., トランス異性体): 7.32 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 7.12 (dd, 2H, J = 8.7 Hz, J = 2.l Hz), 6.98 (dd, 2H, J = 8.4 Hz, J = 1.8 Hz), 6.63 (dd, 1H, J = 8.4 Hz, J = 2.7 Hz), 6.54 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 5.12 (s, 4H, OCH2O), 4. 81 (dd, 1H, CHOH, J = 7.5 Hz, J = 5.1 Hz), 4.30 (dd, 1H, CH2O, J = 10.8 Hz, J = 3.3
Hz), 4.18 (dd, 1H, CH2O, J = 11.4 Hz, J = 8.4 Hz), 3.44 (s, 6H, CH3O), 3.04 (ddd, 1H, CH, J = 11.4 Hz, J = 8.3 Hz, J = 3.3 Hz), 2.27 (d, 1H, OH)。
【0095】
シス異性体について: 7.20-7.10 (m, 3H), 7.05-6.95 (m, 2H), 6.68-6.52 (m, 2H), 5.14 (s, 2H, OCH2O), 5.13 (s, 2H, OCH2O), 4.68 (br.s, 1H), 4.51 (dd, 1H, J = 12.0 Hz, J = 10.5 Hz), 4.3-4.1 (m, 1H), 3.45 (s, 6H, CH3O), 3.23 (ddd, 1H, J = 11.7
Hz, J = 6.6 Hz, J = 3.3 Hz,
13C NMR (75 MHz, CDCl3, トランス異性体): 157.964, 156.443, 131.971, 129.366, 129.204, 128.921, 118.331, 116.608, 109.489, 109.327, 103.810, 94.337, 94.304, 69.023, 68.069, 55.910, 55.877, 46.186。
【0096】
実施例4:クロマン−オールの脱水によるクロメン(ビス−MOM−デヒドロエコール(7−メトキシメトキシ−3−(4’−メトキシメトキシ−フェニル)−2H−クロメン))の生成
上記アルコール(シス−トランス異性体の混合物として)227.7g(0.658mol)の溶液をTHF3.5Lに溶解し、そして、熱電対、オーバーヘッド攪拌器、氷/メタノール冷却浴、滴下漏斗、及び窒素導入管を備える12Lの4つ口丸底フラスコに移した。合計667.3g(6.58mol)のEtNを−8℃で該アルコール溶液に加え、その後、THF1.5L中無水メタンスルホン酸222.7g(1.28mol)を加えた。アルコールがすべてなくなるまで(約2時間)HPLCによるモニター及び撹拌を行いながら、反応物を室温まで暖めた。冷水10Lに加えることにより反応を失活させた。有機層を分離し、水相をジクロロメタン(2×2L)で抽出した。合わせた有機層を水(2×3L)で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去して粘稠な半固体の物質を生成させた。得られた混合物をヘキサン(1.5L)で希釈し、氷上で冷却した。析出した固体をろ過し、ヘキサン(2×1L)で洗浄し、窒素下で乾燥して136g(63%収率)のビス−MOM−デヒドロエコールを白色固体として得た。さらに10gを母液から分離して合計146gの生成物を69%の総収率で得た。分離したアルケン(131.6g)を、ジクロロメタンを溶離液として用いたシリカゲルプラグでさらに精製して、124.8g(94.8%回収率)のビス−MOM−デヒドロエコールを白色固体として得た。この物質を不斉水素化に用いた。
【0097】
ビス−MOM−デヒドロエコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図4A及び4Bにそれぞれ示す。ビス−MOM−デヒドロエコール生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図4C及び4Dにそれぞれ示す。
【0098】
H NMR及び13C NMRのデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, .): 7.33 (dd, 2H, J = 8.7 Hz, J = 2.1 Hz), 7.03 (dd, 2H, J = 8.7 Hz, J = 1.8Hz), 6.97 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 6.67 (s, 1H, HC=C), 6.59 (d
d, 2H, J = 7.2 Hz, J = 2.4 Hz), 5.17 (s, 2H, OCH2O), 5.14 (s, 2H, OCH2O), 5.09 (d, 2H, OCH2C=C, J = 1.2 Hz), 3.46 (s, 6H, CH3O)。
【0099】
13C NMR (75 MHz, CDCl3, .): 157.883 (C7), 156.855 (C9), 154.153 (C4’), 130.596 (C10), 128.816 (C3), 127.360 (C8), 125.750 (C6), 118.323 (C4), 117.401 (C1’),
116.390 (C3’), 109.319 (C5), 103.842 (C2’), 94.377 (OCH2O), 94.329 (OCH2O), 67.171 (C2), 55.958 (CH3O)。
【0100】
実施例5:ビス−MOM−デヒドロエコールのエナンチオ選択的水素化によるMOM−保護されたS−エコール((S)−7−(メトキシメトキシ)−3−(4’−メトキシメトキシ)−フェニルクロマン)の生成
磁気攪拌器、熱電対、ガス導入管、及び圧力逃し弁を備える2Lのガラス反応器に、ジクロロメタン1.3L中ビス−MOM−デヒドロエコール60.48g(0.184mol)及び((4R,5R)−(−)−O−[1−ベンジル−1−(5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール−4−イル)−2−フェニルエチル]−ジフェニルホスフィナイト−(1,5−COD)−イリジウム(I)テトラキス−(3,5−ビス−トリフルオロメチル)−フェニルボレート3.10g(0.0018mol、1mol%)の溶液を入れた。空気を窒素で置換した後、水素によるパージを行って、60psigの水素圧を維持した。反応混合物をTLCでモニターした(酢酸エチル/ヘキサン=1:9にて、原料であるビス−MOM−デヒドロエコールはRf=0.26で、ホットプレート上PMAにより緑がかったスポットとなり、ビス−MOM−エコールはRf=0.28でPMAにより紫色スポットとなる)。反応をGC−MSでモニターしてもよい(HP5890及びMS5972を使用した。カラムDB−5MS、30m長、0.25mmID、0.25μmフィルム、Heキャリアガス、流速1.7mL/分、温度プログラム:50℃1分間、20℃/分で300℃まで、300℃で5分間保持、実行時間18.5分。生成物の保持時間は15.77分であり、出発原料の保持時間は16.41分である)。
【0101】
出発原料がすべて消費されるまで、この反応を60psigの水素圧で110分間保持した。水素を速やかに窒素に置換し、透明な赤色溶液を、塩化アンモニウムの冷溶液(飽和塩化アンモニウム1Lと氷2kg)で失活させた。有機物をジクロロメタン(2×1L)で抽出し、合わせた有機相を2Lの水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をロータリーエバポレータで除去し、赤色油を、酢酸エチル/ヘキサン=2:8混合物を溶離液として用いるシリカゲルにより精製して、42.8g(70.3%収率)のビス−MOM−エコールをmp37〜38℃の白色固体として得た。
【0102】
MOM−保護されたS−エコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図5A及び5Bにそれぞれ示す。MOM−保護されたS−エコール生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図5C及び5Dにそれぞれ示す。
【0103】
H NMR及び13C NMRのデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, .): 7.16 (d, 2H, J = 8.7 Hz) , 7.02 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 6.9 (s, 1H), 6.59 (dd, 1H, J = 9.0 Hz, J = 2.4 Hz), 6.58 (s, 1H), 5.17 (s, 2H, CH2O), 5.14 (s, 2H, CH2O), 4.30 (ddd, 1H, J = 10.8 Hz, J = 4.2 Hz, J = 1.5Hz),
3.96 (t, 1H, J = 10.8 Hz), 3.47 (s, 6H, CH3O), 3.17 (m, 1H, CH), 2.93 (d, 2H, J
= 8.7 Hz, CH2)。
【0104】
13C NMR (75 Mhz, CDCl3, .): 156.653 (C7), 156.265 (C9), 154.938 (C4’), 134.681 (C10), 130.151 (C8), 128.330 (C6), 116.576 (C3’), 115.532 (C1’), 109.020 (C5), 104.344 (C2’), 94.571 (OCH2O), 94.498 (OCH2O), 71.022 (C2), 55.950 (CH3O), 5
5.918 (CH3O), 37.893 (C3), 31.891 (C4)。
【0105】
実施例6:ビス−MOM−S−エコールの脱保護によるS−エコール((S)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−クロマン−7−オール)の生成
CHCl/MeOHの1:1混合物200mL中(S)−ビス−MOM−エコール42.17g(0.128mol)の溶液を、磁気攪拌器、熱電対、氷冷浴、及び窒素導入管を備える1Lの3つ口丸底フラスコに入れた。合計200mLのMeOH中10重量%HCl溶液(0.438mol、3.4当量)を、予め冷却した(4.8℃)ビス−MOM−エコール溶液にゆっくり加えた。反応混合物を室温まで暖め、出発原料がすべてS−エコールに変換されるまでTLCによりモニターした(酢酸エチル/ヘキサン=2:8にて、ビス−MOM−エコールはRf=0.58であり、モノ−MOM−エコールはRf=0.28であり、S−エコールはRf=0.10である)。室温6時間の後、完全な脱保護が確認された。溶媒を減圧下で除去し、析出した固体を500mLの氷冷水で処理し、酢酸エチル(2×400mL)で抽出し、そして合わせた有機相を希重炭酸ナトリウム(400mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして溶媒の体積を約100mLにまで減らした。得られた黄色がかった溶液を、400mLのヘキサンで慎重に希釈し、得られた透明溶液を撹拌しながら氷浴上で冷却した。析出した白色固体をろ過し、ヘキサン(3×200mL)で洗浄し、真空オーブンで一夜乾燥して、25.24gのS−エコールを白色固体として得た。さらに3.54gの生成物を母液から得た。合計28.78g(93%の分離収率)のS−エコールをmp162℃の白色固体として得た。合成したS−エコールのHPLCによる化学純度及び光学純度は、それぞれ96.69%及び100%eeであった。
【0106】
化学純度の測定に使用した逆相HPLC:
カラム:Waters Symmetry C18、3.5ミクロン粒子、4.6×75mm
移動相A:水中0.1%TFA
移動相B:アセトニトリル中0.1%TFA
濃度勾配:5%B〜100%B16分、16分で初期状態に戻る
検出器の波長=280nm
注入量=5マイクロリットル
保持時間:7.87分
HPLC純度:96.69%
光学純度は以下のキラルHPLCにより測定した。
カラム:Chiracel OJ、4.6×250mm
定組成、75%(水中0.2%リン酸)、25%アセトニトリル
流速:0.75mL/分
検出器の波長=215nm
保持時間:54.28分
キラル純度:100%ee
旋光度:[α]=−19.1°
含水エタノールから結晶化されたS−エコールについて報告されている旋光度は[α]=−21.5°(The Merck Index,1996,第12版,p618)。
【0107】
S−エコール生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図6A及び6Bにそれぞれ示す。
【0108】
H NMR及び13C NMRのデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3, .): 9.32 (s, 1H, OH), 9.21 (s, 1H, OH), 7.09 (d, 2H, J
= 8.4 Hz), 6.86 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 6.72 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 6.30 (dd, 1H, J
= 8.4 J = 2.1), 6.21 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 4.15 (ddd, 1H, CH2O, J = 10. 5 Hz, J =
1.80 Hz), 3.88 (t, 1H, CH2O, J = 10.2 Hz), 3.00 (m, 1H, CH), 2.78 (m, 2H, CH2)。
【0109】
13C NMR (75 MHz, CDCl3, .): 156.515 (C7), 156.151 (C4’), 154.557 (C9), 131.711 (C10), 130.134 (C8), 128.346 (C6), 115.321 (C3’), 112.627 (C1’), 108.048 (C5), 102.547 (C2’), 70.309 (C2), 37.197 (C3), 31.324 (C4)。
【0110】
次いで、質量分析中のS−エコール化合物の揮発性を高めるため、得られたS−エコール生成物を、「方法」の項に記載した方法に従って、TMS誘導体及びTBDMS誘導体に変換した。TMS−誘導体化S−エコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図9A及び9Bにそれぞれ示す。TBDMS−誘導体化S−エコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図9C及び9Dにそれぞれ示す。
【0111】
実施例7:ビス−MOM−デヒドロエコールのエナンチオ選択的水素化によるMOM−保護されたR−エコール((R)−7−(メトキシメトキシ)−3−(4−メトキシメトキシ)−フェニルクロマン)の生成
磁気攪拌器、熱電対、ガス導入管、及び圧力逃し弁を備える2Lのガラス反応器に、ジクロロメタン300mL中ビス−MOM−デヒドロエコール14.02g(42.69mmol)及び((4S,5S)−(−)−O−[1−ベンジル−1−(5−メチル−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−オキサゾール−4−イル)−2−フェニルエチル]−ジフェニルホスフィナイト−(1,5−COD)−イリジウム(I)テトラキス−(3,5−ビス−トリフルオロメチル)−フェニルボレート(Stremから購入)0.650g(0.378mmol、0.88mol%)の溶液を入れた。空気を窒素で置換した後、水素によるパージを行って、60psigの水素圧を維持した。反応混合物をTLCでモニターした(酢酸エチル/ヘキサン=1:9にて、原料であるビス−MOM−デヒドロエコールはRf=0.26で、ホットプレート上PMAにより緑がかったスポットとなり、ビス−MOM−エコールはRf=0.28でPMAにより紫色スポットとなる)。出発原料がすべて消費されるまで、この反応を60psigの水素圧で室温にて35分間保持した。水素を速やかに窒素に置換し、透明な赤色溶液を、塩化アンモニウムの冷溶液(水300mL中NHCl30g、氷50g)によりできる限り速やかに失活させた。有機物をジクロロメタン(2×200mL)で抽出し、合わせた有機相を300mLの水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をロータリーエバポレータで除去し、赤色油を、酢酸エチル/ヘキサン=2:8(2L)混合物及び3:7(1.5L)混合物を溶離液として用いたシリカゲルプラグ(400gのSiO)で精製して、14.00g(99.2%収率)の黄色がかった油を得た。これをゆっくり結晶化してmp37〜38℃のオフホワイトの固体とした。この物質を精製することなく次工程で使用した。
【0112】
MOM−保護されたR−エコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図7A及び7Bにそれぞれ示す。MOM−保護されたR−エコール生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図7C及び7Dにそれぞれ示す。
【0113】
H NMR(300MHz、CDCl)及び13C NMR(75MHz、CDCl)は、ビス−MOM−S−エコールと同様であった。
【0114】
実施例8:ビス−MOM−R−エコールの脱保護によるR−エコール((R)−3−(4−ヒドロキシフェニル)−クロマン−7−オール)の生成
CHCl/MeOHの1:1混合物70mL中(R)−ビス−MOM−エコール14.0g(42.37mmol)の溶液を、磁気攪拌器、熱電対、氷冷浴、及び窒素導入管を備える0.5Lの3つ口丸底フラスコに入れた。合計80mLのMeOH中10重量
%HCl溶液(175.3mmol、4.1当量)を、予め冷却した(6.3℃)ビス−MOM−エコール溶液にゆっくり加えた。反応混合物を室温まで暖め、出発原料がすべてR−エコールに変換されるまでTLCによりモニターした(酢酸エチル/ヘキサン=2:8にて、ビス−MOM−エコールはRf=0.58であり、モノ−MOM−エコールはRf=0.28であり、R−エコールはRf=0.10である)。室温6時間の後、完全な脱保護が確認された。溶媒を減圧下で除去し、析出した固体(28.3g)を325mLの氷冷水で処理し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。合わせた有機相を希重炭酸ナトリウム(水200mL中NaHCO10g)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして溶媒をロータリーエバポレータで除去して12.5gのオフホワイトの固体を得た。この固体を、EtOAc/ヘキサン=3:7混合物(3L)を溶離液として用いたシリカゲル層(200gのシリカ)に通した。溶媒の体積を約100mLにまで減らし、そして10gの炭を加えた。得られた混合物を10分間撹拌し、炭をろ過し、そしてヘキサンをろ液に加えて生成物を析出させた。この析出した物質をろ過し、ヘキサン(2×50mL)で洗浄し、真空オーブンで乾燥して4.25g(41%収率)のR−エコールをmp163℃の白色固体として得た。母液からのR−エコールのさらなる回収は試みなかった。S−エコールについて記載したのと同じ方法を用いて化学純度及び光学純度を測定し、98.31%(保持時間7.82分)及び98.6%ee(保持時間57.82分)であることがわかった。
【0115】
S−エコール生成物のLC−MSトレース及びスペクトルを図8A及び8Bにそれぞれ示す。
【0116】
H NMR(300MHz、CDCl)及び13C NMR(75MHz、CDCl)はS−エコールと同様であった。
【0117】
次いで、質量分析中のR−エコール化合物の揮発性を高めるため、得られたR−エコール生成物を、「方法」の項に記載した方法に従って、TMS誘導体及びTBDMS誘導体に変換した。TMS−誘導体化R−エコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図10A及び10Bにそれぞれ示す。TBDMS−誘導体化R−エコール生成物のGC−MSトレース及びスペクトルを図10C及び10Dにそれぞれ示す。
【0118】
実施例9:2,3−デヒドロエコール中間生成物の合成
実施例6に従い、1mol%のイリジウム触媒及び60psigの水素圧を用いて、ビス−MOM−3,4−デヒドロエコール60gをエナンチオ選択的エコールに水素化した。水素化中、反応混合物を定期的にサンプリングし、GC−MSにより分析した(HP5890及びMS5972、カラムDB−5MS、30m長、0.25mmOD、0.25μmフィルム、Heキャリアガス、流速1.7mL/分)。温度を以下のようにプログラムした:50℃1分間、20℃/分で300℃まで温度上昇、300℃で5分間保持。総実行時間は18.5分である。GC−MSにおいてエコール生成物の保持時間は15.77分であり、出発原料であるデヒドロエコールの保持時間は16.41分である。
【0119】
実行時間中、GC−MSにより、出発原料3,4−デヒドロエコール及び生成物S−エコールとは異なる中間生成物のピークを確認した。この中間生成物は出発原料と同じ分子量(MW)を有していた。合成経路からの妥当な推定により、中間生成物は2,3−デヒドロエコールであるとの結論に達した。試料中の質量比及び測定した分子量を、出発原料(3,4−デヒドロエコール)、中間生成物(2,3−デヒドロエコール)、及び最終生成物(S−エコール)について以下の表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例10:ビス−MOM3,4−デヒドロエコール[3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン−7−オール]の脱保護
ジクロロメタン20mL中7−メトキシメトキシ−3−(4−メトキシメトキシ−フェニル)−2H−クロメン(ビス−MOM−デヒドロエコール)0.42g(1.28mmol)の溶液を、0℃において、10%HCl/MeOH(17.3mmol、13.5当量)8mLと混合した。得られた溶液を、この温度で2日間保持し、そして出発原料がすべてなくなるまで反応をTLCでモニターした(EtOAc/ヘキサン=3:7でビス−MOM−デヒドロエコールはRf=0.65であり、デヒドロエコールはRf=0.14である)。反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮し、その残渣を酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム(200mL)で失活させた。有機層を分離し、水相を酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。有機層を合わせ、食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮して0.32g(104%収率)のピンクの固体を得た。この固体を最小限の量の酢酸エチルに溶解させ、酢酸エチル/ヘキサン=1:2混合物及び1:1.5混合物を溶離液として用いたシリカゲルプラグにて精製した。デヒドロエコールを含む画分を集め、濃縮して白色の固体を得た。分離した固体を酢酸エチル(約15mL)に溶解させ、ろ過し、溶液にヘキサン(約15mL)を慎重に加えて結晶化を行った。析出した固体をろ過し、ヘキサン(2×20mL)で洗浄し、窒素下で乾燥して0.139g(45%収率)のデヒドロエコールをかすかにピンクがかった白色固体として得た。ろ液からさらに回収(80mg)を行い、合計0.219g(71%の分離収率)のデヒドロエコール生成物(7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−2H−クロメン)を得た。
【0122】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6, .): 5.02 (s, 2H, CH2), 6.25 (bs, 1H, C=C-H), 6.33 (dd, 1H, J = 1.8 Hz, J = 8.4 Hz, ArH), 6.75 (s, 1H, ArH) , 6.77 (d, 2H, J = 8.7 Hz, ArH), 6.93 (d, 1H, J = 7.8 Hz, ArH), 7.33 (d, 2H, J = 8.4 Hz, ArH), 9.58 (bs, 2H, OH)。
【0123】
13C NMR(75 MHz, DMSO-d6, .): 66.264, 102.296, 108.525, 114.739, 115.426, 116.688, 125.587, 127.124, 127.254, 127.448, 153.691, 157.016, 158.019。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1A、1B、1C、及び1Dは、ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC−MS)によるトレース(チャート)及びスペクトル、並びに液体クロマトグラフィ質量分析法(LC−MS)によるトレース及びスペクトルを、本発明に従うビス−MOMダイゼイン中間生成物についてそれぞれ示す図である。
【図2】図2A、2B、2C、及び2Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトル、並びにLC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うクロマン−4−オン中間生成物についてそれぞれ示す図である。
【図3】図3A、3B、3C、及び3Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトル、並びにLC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うクロマン−オール中間生成物(脱水された)についてそれぞれ示す図である。
【図4】図4A、4B、4C、及び4Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトル、並びにLC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うビス−MOM−デヒドロエコール中間生成物についてそれぞれ示す図である。
【図5】図5A、5B、5C、及び5Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトル、並びにLC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うMOM−保護されたS−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。
【図6】図6A及び6Bは、LC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うS−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。
【図7】図7A、7B、7C、及び7Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトル、並びにLC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うMOM−保護されたR−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。
【図8】図8A及び8Bは、LC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うR−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。
【図9】図9A及び9Bは、GC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うTMS−誘導体化S−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。9C及び9Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うTBDMS−誘導体化S−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。
【図10】図10A及び10Bは、GC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うTMS−誘導体化R−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。10C及び10Dは、GC−MSによるトレース及びスペクトルを、本発明に従うTBDMS−誘導体化R−エコール生成物についてそれぞれ示す図である。
【図1−1】

【図1−2】

【図2−1】

【図2−2】

【図3−1】

【図3−2】

【図4−1】

【図4−2】

【図5−1】

【図5−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオマのエコール及びその類似体をエナンチオ選択的に調製する方法であって、
1)以下の
【化1】

(式中、PGは水酸基保護基、好ましくはメトキシメチル基である)
から選択される保護された3−フェニルクロメンを用意する工程、
2)以下のキラル配位子(化合物(V)):
【化2】

(式中、Y及びXはそれぞれ独立してS、O及びNからなる群から選択され、かつR14及びR15はそれぞれ独立してアルキル、アリール、フェニル、アルキルアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される)を有するIr触媒の存在下で該保護されたクロメンを水素化して以下の保護されたエナンチオマのエコール(化合物(VIb))
【化3】

を形成する工程、および
3)該保護されたエコールを酸性化してエナンチオマのエコール及びその類似体を形成する工程を備える、方法。
【請求項2】
該キラル配位子が以下の化合物(IX):
【化4】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該水素化の工程が、約0〜150psig、約5℃〜ほぼ室温の温度で、ジハロゲン化ジアルキル溶媒から選択される溶媒を用いて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該クロメンに対して、該Ir触媒の濃度が約0.1〜5mol%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該保護されたクロメンは、クロマン−オール化合物を脱水することにより調製され、該クロマン−オール化合物は、好ましくは、クロマン−オン又はクロメン−オンを還元して調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該保護された3−フェニルクロメンは、
1)3−フェニル−クロメン−4−オン、好ましくはダイゼイン、ホルモノネチン、及びそれらの混合物から選択される3−フェニル−クロメン−4−オンを、3−フェニル−クロマン−4−オンに還元する工程、
2)該3−フェニル−クロマン−4−オンを3−フェニル−クロマン−4−オールに還元する工程、及び
3)該3−フェニル−クロマン−4−オールを脱水して、3−フェニル−3,4クロメン(VII)及び3−フェニル−2,3クロメン(VIII)から選択される3−フェニル−クロメンに変換する工程
により調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
14がフェニルであり、かつR15がメチルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
以下のエナンチオマのクロマン(化合物(I))
【化5】

(式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立してH、OH、フェニル、アリール、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、OR、OC(O)R、OS(O)R、チオ、アルキルチオ、メルカプタール、アルキルメルカプタール、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、及びハロからなる群から選択され、ここでRはアルキル及びアルキルアリールであり、かつR、R及びRは独立して−R及び
以下
【化6】

(式中、R、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれ独立してH及びRから選択される)から選択される)をエナンチオ選択的に調製する方法であって、
1)以下の
【化7】

から選択されるクロメン化合物を用意する工程、及び
2)以下の化合物(V):
【化8】

(式中、Y及びXはそれぞれ独立してS、O及びNからなる群から選択され、かつR14及びR15はそれぞれ独立してアルキル、アリール、フェニル、アルキルアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される)として示されるキラル配位子を有するIr触媒の存在下で該クロメンを水素化して対応するクロマンを形成する工程を備える、方法。
【請求項9】
クロメン化合物を用意する工程が、R、R、R、R、R、又はRのいずれかのヒドロキシル置換基を水酸基保護基で保護する工程をさらに備え、水素化の工程の後、生成物を酸性化することにより該保護基を除去する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該配位子(V)における4位及び5位の炭素がともにS配置である場合、化合物(I)の3位で得られるキラル炭素がR配置であり、かつ、該Ir触媒(V)における4位及び5位の炭素がともにR配置である場合、化合物(I)の3位で得られるキラル炭素がS配置であり、かつ該Ir触媒は、以下の錯体(XV):
【化9】

として示されるIr−配位子錯体、及び、以下の化合物(XVI):
【化10】

として示される対イオンからなる、請求項8又は9に記載の方法。

【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公表番号】特表2009−503079(P2009−503079A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525065(P2008−525065)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/029589
【国際公開番号】WO2007/016423
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508033649)ギリンダス・アメリカ・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】GIRINDUS AMERICA INC.
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【Fターム(参考)】