説明

クロロプレン系ブロック共重合体及びその製造法

【課題】 従来のポリクロロプレン系接着剤の接着性、又はスチレンブタジエンブロック共重合体の耐油性、接着性を改良するための、新規なポリクロロプレン系共重合体、及びその簡便な製造法を提供する。
【解決手段】 クロロプレン系ポリマー(B)の片方又は両方の末端に、下記一般式(1)で示される組成を有するポリマー(A)が連結しており、かつ、炭素13核磁気共鳴分光法で求めたクロロプレン系ポリマー(B)中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和が2.0モル%以下であることを特徴とするクロロプレン系ブロック共重合体、並びに、クロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン系ポリマーの片方又は両方の末端に、クロロプレン系ポリマーとは異質なポリマーが連結した、従来にはないクロロプレン系ブロック共重合体とその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムをベースとした接着剤は、クロロプレンゴムの極性、凝集力、可撓性等の特徴を最大限に活かした用途であり、ゴム系接着剤の主流として建材、家具、製靴、車両製造等の広範な分野で重用されている。
【0003】
しかしながら、塩化ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂等の極めて極性が高い素材、或いは逆に、天然ゴム、エチレンプロピレン系ゴム、ポリオレフィン樹脂等の極めて極性が低い素材に対する接着性には問題があった。これらの素材に対する接着性を改良する方法として、クロロプレンと異種モノマーとのランダム共重合、グラフト共重合又はブロック共重合等によるクロロプレンゴムの変性が考えられる。しかし、クロロプレンはラジカル反応性が極めて高いため、異種モノマーとのランダム共重合による変性には大きな制約がある。また、スチレン、ブタジエン等のモノマーでは、リビングアニオン重合法の適用により、ポリスチレンの末端にポリブタジエンが連結又はポリブタジエンの両末端にポリスチレンが連結し且つ分子量分布が高度に制御されたブロック共重合体(スチレンブロックコポリマー、所謂SBC)を得ることが可能だが、クロロプレンの場合には、クロロプレン中の塩素原子による金属触媒被毒等の問題から、リビングアニオン重合法の適用は困難である。よって、これらの金属触媒を用いない重合法であるラジカル重合法がクロロプレンゴムの製造における一般的な方法となっている。
【0004】
また、上記SBCは、ホットメルト接着剤のベースポリマー及びゴム弾性に優れた熱可塑性エラストマーとして利用されているが、極性基を含まないため接着性、耐油性に限界があり、改良が望まれている。
【0005】
従来のラジカル重合では、ポリマーの一次構造を精密に制御し、ポリマー特性を大きく改良することは困難だったが、ポリマーの一次構造を制御できるラジカル重合法として、近年、リビングラジカル重合法が注目されている。クロロプレンへ適用した例も報告されており、例えば、特許文献1及び2には、光イニファーター重合法を利用した、ポリクロロプレンを中間ブロック(B)とし、スチレン系、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを(A)ブロックするABA型トリブロック共重合体とその製造法が開示されているが、分子量分布は2.1を超えており、通常のラジカル重合と同程度に広いものである。また、N−置換マレイミド類、ビニルニトリル類、無水マレイン酸等によるハードセグメントの改質及びジスルフィドの使用に関する記載はない。
【0006】
特許文献3には、安定ニトロキシルラジカルを利用した、ポリスチレンとポリクロロプレンが連結してなるジブロック共重合体の製造法が開示されているが、分子量分布は3.0を超えている。また、安定ニトロキシルの開裂温度が高いため、クロロプレンの沸点よりも遥かに高い80℃以上の重合温度が必要であり、ポリクロロプレンの劣化、着色が起こり易い等の欠点があった。従来のクロロプレンのラジカル重合においては、重合温度の上昇と共にクロロプレンポリマー連鎖中の1,2−及び異性化1,2結合の割合が高くなることは、RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY vol.50、49頁、1977年及びvol.51、668頁、1978年(Coleman他)で良く知られている。1,2−結合及び異性化1,2−結合など、1,4−トランス結合以外の結合様式の増加は、ポリクロロプレンの結晶化を阻害するため、接着剤としての接着強度及びその発現速度を低下させ、またこれらの結合に含まれる不安定なアリル塩素は、ポリマー劣化の開始点になることも知られている(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(2nd Edition)、vol.3、441頁、1985年)。
【0007】
特許文献4には、ジチオカルバミン酸エステル化合物を用いたクロロプレンのリビングラジカル重合について開示されているが、クロロプレンブロック共重合体に関する記載は一切ない。特許文献5及び特許文献6では、ジチオカルボン酸エステルを用いた可逆的付加開裂移動(RAFT)重合法により、種々のブロック共重合体の製造が可能な旨記載されているが、クロロプレンの重合及びポリクロロプレンブロック共重合体の合成、並びに、ブロック化率、ブロック共重合体の物性に関する記載は一切ない。
【0008】
【特許文献1】特開平2−300217
【特許文献2】特開平3−212414
【特許文献3】特開2002−348340
【特許文献4】特開2004−115517
【特許文献5】WO98/01478
【特許文献6】特開2003−155463
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来のクロロプレン系接着剤の接着性、又はSBCの耐油性、接着性を改良するための、新規なクロロプレン系ブロック共重合体及びその簡便な製造法が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の化合物の存在下でラジカル重合性モノマーをラジカル重合して得られるポリマー(A)の存在下、クロロプレン等をラジカル重合するか、又は特定の化合物の存在下でクロロプレン等をラジカル重合して得られるクロロプレン系ポリマー(B)の存在下、特定のラジカル重合性モノマーをラジカル重合すると、従来の方法では得られなかった、ポリマー(A)の末端にクロロプレン系ポリマー(B)が連結したクロロプレン系ブロック共重合体をも包含する、クロロプレン系ポリマーの片方又は両方の末端にポリマー(A)が連結したクロロプレン系ブロック共重合体が得られ、従来の課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は、クロロプレン系ポリマー(B)の片方又は両方の末端に、下記一般式(1)で示される組成を有するポリマー(A)が連結しており、かつ、炭素13核磁気共鳴分光法で求めたクロロプレン系ポリマー(B)中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和が2.0モル%以下であることを特徴とするクロロプレン系ブロック共重合体、並びにクロロプレン系ブロック共重合体の製造法である。
【0012】
【化1】

(式中、Uは、水素、メチル基、シアノ基又は置換アルキル基を表し、Vは、フェニル基、置換フェニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、置換アリロキシカルボニル基、アシロキシ基、置換アシロキシ基、アミド基又は置換アミド基を表し、Xは、水素、メチル基、塩素又はシアノ基を表し、Yは、水素、塩素又はメチル基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸エステル又はフマル酸エステルの重合残基を表し、k、n及びmは0以上の整数を表す。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体は、クロロプレン系ポリマー(B)の片方又は両方の末端に、下記一般式(1)で示される組成を有するポリマー(A)が連結しているものである。
【0014】
【化2】

(式中、Uは、水素、メチル基、シアノ基又は置換アルキル基を表し、Vは、フェニル基、置換フェニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、置換アリロキシカルボニル基、アシロキシ基、置換アシロキシ基、アミド基又は置換アミド基を表し、Xは、水素、メチル基、塩素又はシアノ基を表し、Yは、水素、塩素又はメチル基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸エステル又はフマル酸エステルの重合残基を表し、k、n及びmは0以上の整数を表す。)
ここに、ポリマー(A)は、クロロプレン系ポリマーにはない極性、親水性、接着性、粘着性、耐熱性、高軟化点、撥水性等の性質をクロロプレン系ポリマーに付与するために必要な成分である。ポリマー(A)は、クロロプレン系ポリマーとは異質なポリマーブロックであり、スチレン系ポリマー、アクリル酸エステル系ポリマー、メタクリル酸エステル系ポリマー、1,3−ブタジエン系ポリマー、ビニルエステル系ポリマー等があげられる。スチレン系ポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/メタクリル酸/アクリロニトリル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン/フマル酸エステル共重合、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/フマル酸共重合体等があげられ、アクリル酸エステル系ポリマーとしては、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル等があげられ、メタクリル酸エステル系ポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体等があげられ、1,3−ブタジエン系ポリマーとしては、ポリ2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン/メタクリル酸/2−クロロ−1,3−ブタジエン共重合体等があげられ、ビニルエステル系ポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/クロロ酢酸ビニル共重合体等があげられる。
【0015】
クロロプレン系ポリマー(B)は、クロロプレン系ゴムの性質を損なわない範囲であれば特に限定するものではなく、例えば、クロロプレンポリマー、クロロプレン/2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体、クロロプレン/スチレン共重合体、クロロプレン/メタクリル酸エステル共重合体、クロロプレン/無水マレイン酸共重合体、クロロプレン/フマル酸エステル共重合体、クロロプレン/イオウ共重合体等があげられる。これらのうち、クロロプレンポリマーとしては、ポリクロロプレン、クロロプレン/メタクリル酸共重合体等があげられ、クロロプレン/2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体としては、クロロプレン/2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合体、クロロプレン/2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン/メタクリル酸共重合体等があげられ、クロロプレン/メタクリル酸エステル共重合体としては、クロロプレン/メタクリル酸メチル共重合体、クロロプレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体等があげられる。これは、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーを用いて製造することができる。
【0016】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体は、炭素13核磁気共鳴分光法で求めたクロロプレン系ポリマー(B)中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和が2.0モル%以下である。1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和が2.0モル%を超える場合には、クロロプレン系重合体の結晶性が不要なホース、ベルト等の用途では、結晶化を抑制する点やこれらの活性塩素を反応サイトとして利用できる点でメリットがある反面、変色、ゲル化等の劣化が極めて起こり易くなるなど重大な欠点が生じる。
【0017】
炭素13核磁気共鳴分光法は、有機化合物同定法の最も一般的な手法の一つであり、ポリマーのミクロ構造解析には不可欠である。クロロプレンポリマーのミクロ構造(結合様式)は、1,4−トランス結合、1,4−シス結合、1,2−結合、異性化1,2−結合、3,4−結合、異性化3,4−結合からなり、各結合様式のモル比は、炭素13核磁気共鳴分光スペクトルにおける各ピークの面積と対応する。本発明における、クロロプレン系ポリマー(B)中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量のモル比は、上記ピーク面積の総和に対する1,2−結合及び異性化1,2−結合由来のピーク面積比により求めるものである。
【0018】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体中のポリマー(A)成分とクロロプレン系ポリマー(B)成分の含有量の割合は、使用目的、用途によって大きく異なるものであるが、クロロプレン系ポリマーの特徴を十分活かすためには、クロロプレン系ブロック共重合体中のクロロプレン系ポリマー(B)は、40〜99.5重量%であることが好ましく、特に、接着剤、熱可塑性エラストマー、ゴム相溶化剤、樹脂改質剤としての使用目的のためには、50〜99.5重量%が好ましい。
【0019】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は特に限定するものではないが、熱可塑性エラストマー等の用途において、クロロプレン系ポリマー(B)の十分なゴム弾性を損なうことなく、クロロプレン系ポリマー(B)の特徴を十分引出すためには2.5以下であることが好ましく、2.1以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法としては、ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、ジチオカルバミン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物、又はジチオカルボン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合してポリマー(A)を合成し、得られたポリマー(A)の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとをラジカル重合することがあげられる。
【0021】
ここに、ポリマー(A)の合成に使用されるラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能なモノマーであれば特に限定するものではないが、比較的穏和な条件下、比較的速い速度でラジカル重合するためには、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、1,3−ブタジエン系モノマー、又は単独重合しない無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸エステル、N−置換マレイミドとスチレン、イソブチレンなどの電子供与性モノマーとの組合せが好ましい。これらのラジカル重合性モノマーは、クロロプレン系ブロック重合体の目的に応じて選ぶことができる。例えば、クロロプレン系ポリマーに、高極性素材への接着性等を付与したい場合には、アクリル酸メチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、アクリル酸2−(イソシアナート)エチル、アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニルなどのアクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2−(イソシアナート)エチル、メタクリル酸2,4,6−トリブロモフェニルなどのメタクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー、アクリルアミドなどのアクリルアミド系モノマー、メタクリルアミドなどのメタクリルアミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸塩、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p−ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、α、α‘−ジメチルベンジルイソシアネートなどのスチレン系モノマー、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエンなどの1,3−ブタジエン系モノマー、無水マレイン酸、N−置換マレイミド類、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸エステル、イタコン酸等から選択されるモノマーを用いてポリマー(A)を合成すれば良い。低極性ゴム素材への接着性を付与したい場合には、イソプレン、ブタジエン等の1,3−ブタジエン系モノマーを用いてポリマー(A)を合成すれば良い。低極性樹脂素材への接着性を付与したい場合には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルなどのアクリル酸エステル系モノマーから選択されるモノマーを用いてポリマー(A)を合成すれば良い。この他、クロロプレン系ポリマーに、撥水性、耐熱性を付与したい場合には、アクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸2,2,3,3−テトラフロロプロピル、メタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフロロプロピル、メタクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチル等のメタクリル酸エステル系モノマーから選択されるモノマーを用いてポリマー(A)を合成すれば良い。
【0022】
そして、合成により得られたポリマー(A)の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとをラジカル重合することにより、ポリマー(A)の末端に、クロロプレン系ポリマー(B)が連結し、本発明のクロロプレン系ブロック共重合体を製造できるものである。その際に使用されるクロロプレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸エステル等があげられる。これらは、例えば、クロロプレン70重量%以上に対して30重量%以下で使用されるが、よりクロロプレンのゴム弾性、タック性を保持したい場合には、クロロプレン80重量%以上に対して20重量%以下であることが好ましい。
【0023】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体の製造で使用されるジチオカルバミン酸エステル化合物は、光イニファーター重合を可能とする機能を有する化合物、即ち、重合開始剤、連鎖移動剤及び停止剤としての機能を兼ね備えた化合物であり、ポリマーの成長反応を可逆的に停止させる能力を有する化合物であれば特に限定するものではなく、例えば、下記一般式(2)で表される化合物があげられる。
【0024】
【化3】

(式中、Rは炭素数1以上のn価の有機基を表し、Z及びZは炭素数1以上の有機基であるアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表し、nは1以上の整数を表す。)
また、本発明のクロロプレン系ブロック共重合体の製造で使用されるジチオカルボン酸エステル化合物は、上記モノマーのRAFT重合を可能にするだけの連鎖移動反応性を有する化合物であれば特に限定するものではなく、例えば、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される化合物である。
【0025】
【化4】

(式中、Rは炭素数1以上のn価の有機基を表し、Zは炭素数1以上の1価の有機基であるアリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、電子求引性基で置換されたアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
【0026】
【化5】

(式中、R2は炭素数1以上の1価の有機基を表し、Zは炭素数1以上のm価の有機基であるアリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、電子求引性基で置換されたアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
さらに、本発明のクロロプレン系ブロック共重合体の製造で使用されるジスルフィド化合物は、成長ラジカルの連鎖移動反応が可能であり、生成するチイルラジカルの重合開始能が低い化合物であれば特に限定するものではなく、例えば、下記一般式(5)で表される化合物である。
【0027】
【化6】

(式中、Zは炭素数1以上の1価の有機基であるアリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、電子求引性基で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を表す。)
上記したジチオカルバミン酸エステル化合物,ジチオカルボン酸エステル化合物は、単独で使用しても良いが、上記した上記したジスルフィド化合物と併用することが好ましい。即ち、ジチオカルバミン酸エステル化合物とジスルフィド化合物を併用する場合には、上記イニファーター重合中に起こるラジカルカップリング等の副反応を抑制することができる。また、ジチオカルボン酸エステル化合物とジスルフィド化合物を併用する場合には、より分子量分布をシャープにすることができる。
【0028】
一般式(2)で表されるジチオカルバミン酸エステル化合物に関しては、European Polymer Journal,vol.31,No.1、67−78頁、1995年(Ohtu)、工業化学雑誌、第63巻、第2号、156−160頁、1960年(大津)等に詳しく述べられており、また、一般式(3)、一般式(4)で表されるジチオカルボン酸エステル化合物及びその合成法、一般式(5)で表されるジスルフィド化合物及びその合成法に関しては、WO98/01478、WO99/31144、WO99/05099(Rizzardo他)、Tetrahedron、vol.28、3203〜3216、1972年(S.Oae他)、Synthesis、605〜622、1983年(S.R.Ramadas他)、Tetrahedron Letters、vol.23、4087−4090、1982年等に詳しく述べられており、これらの化合物を本発明でも用いることができる。
【0029】
また、上記ジチオカルバミン酸エステル化合物と同様の機能を有する化合物としてキサントゲン酸エステル化合物があり、例えば、特表2002−512653、特開平03−291265等に開示されている。このキサントゲン酸エステル化合物をさらに併用しても良い。
【0030】
本発明で使用するジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物の使用量に特に制限はない。本発明のクロロプレン系ブロック共重合体を構成するポリマー(A)及びポリマー(B)の分子量は、重合したモノマー量に比例し、ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、又はジチオカルバミン酸エステル基、ジチオカルボン酸エステル基を含有するポリマー(A)のモル数に逆比例するため、目的とするポリマーの分子量によってジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、又はジチオカルバミン酸エステル、ジチオカルボン酸エステル基を含有するポリマー(A)の量を適宜調整すれば良い。当該ジチオカルバミン酸エステル化合物、又はジチオカルボン酸エステル化合物の量は、単量体100モルに対して10モル以下が、成型可能な重合体を得るという観点から好ましい。
【0031】
ラジカル重合とは、ラジカル開始剤、熱又は紫外線、γ線などの放射線等によって重合系内にラジカルを発生させ、モノマーをラジカル機構で重合する方法であり、一般的には、有機溶剤、水等の媒体にモノマー及び連鎖移動剤等の分子量調節剤を溶解、分散又は乳化させ、過酸化物、アゾ化合物等のラジカル開始剤を添加し、又は紫外線等の放射線を照射しながら、モノマーの重合性等に応じて、常温以下から100℃程度の温度で数時間から数十時間重合するものである。
【0032】
ラジカル開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどのパーオキサイド化合物、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート等のアゾ化合物を用いることができる。ラジカル開始剤の量は、より分子量分布が狭い重合体及び高分子量体が得られる理由から、ジチオカルボン酸エステル化合物及びジチオカルボン酸エステル含有ポリマーの仕込みモル数より少ないほど好ましい。
【0033】
ラジカル重合の際の温度は特に限定するものではないが、100℃以下が好ましい。ただし、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーをラジカル重合する際の温度は、70℃以下であることが必要である。重合温度が70℃を超えると、クロロプレン系重合体中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和が2.0モル%を超えて、クロロプレン系ポリマーの安定性が損なわれる。クロロプレン系ポリマーの安定性をより確保するためには、60℃以下が好ましい。
【0034】
本発明においては、ポリマーの分子量は、ポリマーの生成量に比例し、ジチオカルバミン酸エステル、ジチオカルボン酸エステル、ジスルフィド化合物の量に逆比例するため、目標とするモノマー転化率、即ち分子量に達した時間で、フェノチアジン、2,6−ジ-t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t-ブチルフェノール)、N−フェニル−1−ナフチルアミン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t-ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ハイドロキノン等のラジカル重合停止剤を添加するなどして重合を終了すれば良い。
【0035】
モノマーの重合は無溶剤で行っても良いが、温度制御及びポリマー回収の観点から、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、塩化メチレンなどの芳香族系溶剤又はハロゲン化炭化水素を用いた溶液重合又は水媒体中での重合が好ましい。水媒体中で行う重合法としては、単量体及び分子量調節剤を適当な乳化剤を用いて水に乳化させ、ラジカル開始剤の添加により乳化剤ミセル内で重合させる乳化重合法、少量の乳化剤又は分散剤を用いて単量体、分子量調節剤及びラジカル開始剤を水中に分散させ、単量体液滴内で重合させるミニエマルジョン重合、懸濁重合が好ましい。また、本発明において、ポリマー(A)を構成するモノマーを重合後、ポリマー(A)を重合系内から一旦取り出した後、再度ポリマー(A)を前記溶剤及びモノマーに溶解し、ポリマー(B)を構成するモノマーを重合しても良いが、ポリマー(A)を取り出さず、連続でポリマー(B)を重合しても良い。特に、ポリマー(B)を構成するモノマーとして、クロロプレン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン等、ポリマー(A)を構成するモノマーよりも遥かにラジカル反応性が高いモノマーを主成分として重合する場合、ポリマー(A)の重合途中にこれらを添加しても良い。
【0036】
本発明のクロロプレン系ブロック共重合体の他の製造法としては、ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、又はジチオカルバミン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとをラジカル重合して、クロロプレン系ポリマー(B)を合成し、得られたクロロプレン系ポリマー(B)の存在下、スチレン系モノマー、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、メタクリル酸エステル系モノマー、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル、マレイン酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーをラジカル重合又は共重合することがあげられる。また、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、又はジチオカルボン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとをラジカル重合して、クロロプレン系ポリマー(B)を合成し、得られたクロロプレン系ポリマー(B)の存在下、スチレン系モノマー、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーをラジカル重合又は共重合することがあげられる。
【0037】
この製造法では、まず、ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとをラジカル重合して、クロロプレン系ポリマー(B)を合成するものである。この方法によると、クロロプレン系ポリマーの両末端にスチレン系ポリマー等の樹脂系ポリマーを容易にブロック共重合できる点で有利である。このようなトリブロック共重合体は、従来のCR系接着剤のみならず、新規な熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤、CRと他種ポリマーブレンド用の相溶化剤として利用できる。
【0038】
この製造法におけるジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、クロロプレン及びこれと共重合可能なモノマー、ラジカル重合等は、先に説明した通りである。
【0039】
そして、合成により得られたクロロプレン系ポリマー(B)の存在下、スチレン系モノマー、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル、マレイン酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーラジカル重合又は共重合することにより、クロロプレン系ポリマー(B)の片方又は両方の末端にポリマー(A)が連結し、本発明のクロロプレン系ブロック共重合体を製造できるものである。その際に使用されるスチレン系モノマーとしては、スチレン、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸塩、p−シアノスチレン、p−アセトキシスチレン、塩化p−スチレンスルホニル、エチルp−スチレンスルホニル、p-ブトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、α-メチルスチレンなどがあげられる。ビニルニトリル類としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが、N−置換マレイミド類としては、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどが、フマル酸エステルとしては、フマル酸ジブチル、フマル酸シクロヘキシル、フマル酸ブチル、フマル酸エチル等があげられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明で得られるクロロプレン系ブロック共重合体は、従来のクロロプレン系接着剤と比較して接着性が改良されているため、広範な素材への接着剤、プライマーとして利用できる。更に、当該ブロック共重合体は、ポリマー改質剤、樹脂相容化剤、分散剤、乳化剤、ホットメルト接着剤、熱可塑性エラストマーとしての利用も期待できる。
【実施例】
【0041】
本発明をより具体的に説明するため以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
なお、重合中のモノマー転化率は、島津製作所ガスクロマトグラフGC−17A(GLサイエンス社製キャピラリーカラムNEUTRABOND−5、水素炎イオン化検出器)を用い、ベンゼンを内部標準として算出した。また、本発明の重合体の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnは、東ソー(株)製GPC8220により次の条件で測定した(溶離液=テトラヒドロフラン、流速=1.0ml/min、カラム温度=40℃、ピーク検出=示差屈折計、充填カラム=TSK−gel(登録商標、以下同じ)G7000Hxl/GMHxl/GMHxl/G3000Hxl、分子量計算=ポリスチレン換算)。
【0043】
また、重合体中の塩素量は、酸素フラスコ燃焼−イオンクロマトグラフ法により以下の条件で測定した。重合体試料20mgを精秤後、フラスコ燃焼法により燃焼、30%過酸化水素水100μlを添加したN/100水酸化ナトリウム水溶液10mlからなる吸収液に吸収させた。該吸収液を純水で50mlにメスアップし、吸収液中の塩化物イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。イオンクロマトグラフィーの測定条件は、東ソー(株)製イオンクロマトグラフ、カラム=TSKgel IC−Anion−PWXL PEEK、溶離液=1.3mMグルコン酸カリウム、1.3mMホウ砂、30mMホウ酸、10体積%アセトニトリル、0.5体積%グリセリン水溶液、カラム温度=40℃、流速=1.2ml/min、検出器=電気伝導度検出器であった。
【0044】
また、共重合体のミクロ相分離構造の観察は、日本電子製透過型電子顕微鏡JEM−2000FXを用いて行った。手順は、熱硬化型エポキシ樹脂で包理した共重合体試料をRuO4蒸気又はOsO4蒸気で染色後、ウルトラミクロトームで超薄切片を作製し、加速電圧60kvで観察した。
【0045】
クロロプレン系ポリマー(B)中の結合様式は、日本電子製の炭素−13核磁気共鳴分光装置GSX−400を用い、クロロホルム中、試料濃度15重量%、測定温度室温、積算回数60,000回でスペクトルを測定し、各ピークの面積比から1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和を算出した。
【0046】
ポリマーの赤外吸収スペクトルは、パーキンエルマー製Spectrum2000を用いて全反射法で測定した。
【0047】
クロロプレン系ブロック共重合体の、溶剤系プライマーとしての性能評価は、以下の方法で行った。クロロプレン系ブロック共重合体を適当な有機溶剤に溶解し、プライマー液とした。樹脂板(120mm×25mm)に本プライマー液を刷毛塗りし、常温で15分乾燥した。次に、表1に示した組成(表1中、Y3OSは、東ソー(株)製クロロプレンゴムを表し、MEKは、メチルエチルケトンを表す。)の接着剤を、プライマー塗布面に塗布し、常温で25分乾燥後、同じく表1に示した接着剤を2回塗布し、乾燥した9号綿帆布(120mm×25mm)と貼り合せ、ハンドローラーで圧着した。常温で7日間養生後、引っ張り速度50mm/minの条件でテンシロン型引っ張り試験機を用いて180°T型剥離試験を行った。
【0048】
【表1】

上記樹脂板として、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(日本ウエーブロック(株)製、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル含量34重量%)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂及びポリプロピレン樹脂(PP)((株)サンプラテック製)を使用した。
【0049】
クロロプレン系ブロック共重合体の耐変色性は、以下の方法で評価した。共重合体の10重量%テトラヒドロフラン溶液から、キャスト法により乾燥フィルムを作製した。ギヤオーブン中70℃×4日加熱後の、又はキャストフィルムに254nmの紫外線を20℃で6時間照射した後の、フィルムの色調を目視により評価した。耐変色性は、○:薄い黄色、△:黄褐色、×:濃い黄褐色で判定した。
【0050】
クロロプレン系トリブロック共重合体の力学物性は、以下の方法で評価した。1wt%の酸化防止剤(川口化学製:W−500)を含有したトリブロック体の10wt%トルエン溶液から常温でキャストフィルムを作製した。これを細かく裁断して電熱プレス成型(180℃、ゲージ圧70kg/cm)により厚さ2ミリのシートを作製し、ダンベル状6号形(JIS K6251)に打ちぬき、テンシロン型引張り試験機にて引張り速度200mm/分で引張り物性を測定した。
【0051】
参考例
従来のクロロプレン系接着剤について接着試験を行った。すなわち、クロロプレン単独重合体(東ソー(株)製Y−30)をアセトン/メチルエチルケトン/トルエン=40/20/40重量%の混合溶剤に溶解して5重量%溶液とし、これをプライマーとして用いた他は全て上記と同じ条件で、PP樹脂、ABS樹脂及び軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した。その結果、PP樹脂、ABS樹脂及び軟質ポリ塩化ビニル界面からの剥離による接着強度は、各々15N/25mm、20N/25mm及び15N/25mmであった。
【0052】
合成例1
窒素ガス導入管を備えた200mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに下記一般式(6)で表されるカルバミン酸エステル0.30g、スチレン30.0g、アクリロニトリル4.0g、メチルエチルケトン20.0gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら20時間重合した。この時点でのスチレン及びアクリロニトリルの重合転化率は30%及び57%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体を析出させて、ポリマー(A)を得た。GPCにより測定した数平均分子量Mnは14600、重量平均分子量Mwは29100及び分子量分布Mw/Mnは1.99であった。ポリマー中のイオウ含有量は0.66wt%だった。
【0053】
【化7】

合成例2
窒素ガス導入管を備えた200mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに一般式(6)で表されるカルバミン酸エステル0.30g、下記一般式(7)で表されるカルバミン酸ジスルフィド0.14g、スチレン30.0g、アクリロニトリル5.0g、メチルエチルケトン20.0gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら20時間重合した。この時点でのスチレン及びアクリロニトリルの重合転化率は29%及び56%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体を析出させて、ポリマー(A)を得た。GPCにより測定した数平均分子量Mnは13100、重量平均分子量Mwは25900及び分子量分布Mw/Mnは1.98であった。ポリマー中のイオウ含有量は0.67wt%だった。
【0054】
【化8】

合成例3
合成例2において、スチレン、アクリロニトリルの代わりにメタクリル酸メチル50.0gを用い、溶媒を用いなかった他は、全て合成例2と同じ条件で重合を開始した。紫外線照射10時間後、メタクリル酸メチルの重合転化率は24%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリメタクリル酸メチルを析出させて、ポリマー(A)を得た。GPCにより測定した数平均分子量Mnは13500、重量平均分子量Mwは24900及び分子量分布Mw/Mnは1.84であった。ポリマー中のイオウ含有量は0.63wt%だった。
【0055】
合成例4
合成例3において、スチレン、アクリロニトリルの代わりにアクリル酸n−ブチル30.0gを用いた他は、全て合成例3と同じ条件で重合を開始した。紫外線照射10時間後、アクリル酸n−ブチルの重合転化率は29%だった。未反応モノマーを真空下で留去し、ポリアクリル酸n−ブチルを析出させて、ポリマー(A)を得た。GPCにより測定した数平均分子量Mnは13500、重量平均分子量Mwは25700及び分子量分布Mw/Mnは1.90であった。ポリマー中のイオウ含有量は0.63wt%だった。
【0056】
合成例5
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに下記一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステルの4.00重量%ベンゼン溶液0.69g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の1.60重量%ベンゼン溶液0.30g、ベンゼン56.51g及びメタクリル酸メチル15.01gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。119時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリメタクリル酸メチルを析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)の乾燥重量から計算した重合転化率は82.3%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは53700、重量平均分子量Mwは65000及び分子量分布Mw/Mnは1.21であった。
【0057】
【化9】

合成例6
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステルの4.00重量%ベンゼン溶液1.78g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の1.60重量%ベンゼン溶液0.89g、ベンゼン66.18g及びスチレン18.05gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。330時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリスチレンを析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)の乾燥重量から計算した重合転化率は40.0%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは16900、重量平均分子量Mwは19400及び分子量分布Mw/Mnは1.15であった。
【0058】
合成例7
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに下記一般式(9)で表されるジチオカルボン酸エステルの5.00重量%ベンゼン溶液2.91g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の1.60重量%ベンゼン溶液0.41g、ベンゼン55.00g及びアクリル酸ブチル40.05gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。44時間後、内容物を多量のメタノール/蒸留水混合液に注ぎ、ポリアクリル酸ブチルを析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)の乾燥重量から計算した重合転化率は74.0%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは45500、重量平均分子量Mwは60100及び分子量分布Mw/Mnは1.32であった。
【0059】
【化10】

合成例8
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに一般式(9)で表されるジチオカルボン酸エステルの4.00重量%ベンゼン溶液2.33g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液2.80g、ベンゼン70.71g及び単蒸留したクロロプレン19.42gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、40℃のオイルバスで加熱した。220時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリクロロプレンを析出させて、クロロプレン系ポリマー(B)を得た。得られたクロロプレン系ポリマー(B)の乾燥重量から計算した重合転化率は49.2%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは27100、重量平均分子量Mwは34400及び分子量分布Mw/Mnは1.27であった。炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定(図1,図2)より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.7モル%であった。
【0060】
合成例9
200ml褐色フラスコに、一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステルの4.00重量%ベンゼン溶液0.60g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の1.60重量%ベンゼン溶液0.25g、ベンゼン57.00g、メタクリル酸メチル15.00g、メタクリル酸グリシジル5.0gを仕込んだ他は、全て合成例5と同様の方法で重合を行った。120時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体を析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)の乾燥重量から計算した重合転化率は86.2%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは71600、重量平均分子量Mwは88800及び分子量分布Mw/Mnは1.24であった。
【0061】
合成例10
300ml褐色フラスコに、一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステルの4.00重量%ベンゼン溶液0.50g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の1.60重量%ベンゼン溶液0.40g、ベンゼン50.00g、スチレン25.00g、メタクリル酸3.00g、アクリロニトリル7.00gを仕込んだ他は、全て合成例5と同様の方法で重合を行った。144時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、スチレン/メタクリル酸/アクリロニトリル共重合体を析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)の乾燥重量から計算した重合転化率は21.0%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは44600、重量平均分子量Mwは62900及び分子量分布Mw/Mnは1.41であった。
【0062】
合成例11
300ml褐色フラスコに、一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステルの4.00重量%ベンゼン溶液2.25g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液2.54g、ベンゼン67.00g、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン10.00g、メタクリル酸2.00g、2−クロロ−1,3−ブタジエン9.00gを仕込んだ他は、全て合成例8と同様の方法で重合を行った。168時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン/メタクリル酸/2−クロロ−1,3−ブタジエン共重合体を析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマー(A)の乾燥重量から計算した重合転化率は57.2%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは50500、重量平均分子量Mwは91900及び分子量分布Mw/Mnは1.82であった。
【0063】
合成例12
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに、一般式(8)で表されるジチオカルボン酸エステルの3.95重量%ベンゼン溶液4.00g、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)の0.538重量%ベンゼン溶液7.82g、ベンゼン40.00g及び単蒸留したクロロプレン30.25gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、80℃のオイルバスで加熱した。62時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリクロロプレンを析出させて、クロロプレン系ポリマー(B)を得た。得られたクロロプレン系ポリマー(B)の乾燥重量から計算した重合転化率は62.9%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは24600、重量平均分子量Mwは38900及び分子量分布Mw/Mnは1.58であった。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は2.1モル%であった。
【0064】
合成例13
ジチオカルボン酸エステルを使用しないでポリマー(A)を合成した。すなわち、窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコにn−ドデシルメルカプタンの5.94重量%ベンゼン溶液1.32g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の1.60重量%ベンゼン溶液0.51g、ベンゼン58.19g及びメタクリル酸メチル20.33gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。62時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリメタクリル酸メチルを析出させて、ポリマー(A)を得た。得られたポリマーの乾燥重量から計算した重合転化率は74.8%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは44000、重量平均分子量Mwは77000及び分子量分布Mw/Mnは1.73であった。
【0065】
合成例14
ジチオカルボン酸エステルを使用しないでクロロプレン系ポリマー(B)を合成した。すなわち、窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコにn−ドデシルメルカプタンの5.94重量%ベンゼン溶液2.55g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.493重量%ベンゼン溶液2.01g、ベンゼン45.74g及び単蒸留したクロロプレン23.33gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、40℃のオイルバスで加熱した。140時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリクロロプレンを析出させて、クロロプレン系ポリマー(B)を得た。得られたクロロプレン系ポリマー(B)の乾燥重量から計算した重合転化率は45.9%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは36600、重量平均分子量Mwは65200及び分子量分布Mw/Mnは1.78であった。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.6モル%であった。
【0066】
合成例15
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに一般式(6)で表されるカルバミン酸エステル0.15g、一般式(7)で表されるカルバミン酸ジスルフィド、ベンゼン90.0g及び単蒸留したクロロプレン40.0gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、80℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら3時間重合した。この時点でのクロロプレンの重合転化率は35%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリクロロプレンを析出させて、ポリマー(B)を得た。GPCにより測定した数平均分子量Mnは53300、重量平均分子量Mwは121000及び分子量分布Mw/Mnは2.27であった。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は2.1モル%であった。
【0067】
実施例1
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例1で得たポリスチレン/アクリロニトリル共重合体5.00g及び単蒸留したクロロプレン80.00gを仕込み、ポリマーの溶解を確認後、凍結−脱気−融解を3回繰返し十分脱気後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら10時間重合した。この時点でのクロロプレンの重合転化率は30%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは93200、重量平均分子量Mwは195700及び分子量分布Mw/Mnは2.10であり、元のポリスチレン/アクリロニトリル共重合体のピークは完全に消失し、高分子量化したことから、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体−CRブロック共重合体が生成したと判断した。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.5モル%であった。
【0068】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。
【0069】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0070】
実施例2
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例2で得たポリスチレン/アクリロニトリル共重合体5.00g及び単蒸留したクロロプレン80.00gを仕込み、ポリマーの溶解を確認後、凍結−脱気−融解を3回繰返し十分脱気後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら10時間重合した。この時点でのクロロプレンの重合転化率は29%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは81200、重量平均分子量Mwは166500及び分子量分布Mw/Mnは2.05であり、元のポリスチレン/アクリロニトリル共重合体のピークは完全に消失し、高分子量化したことから、ポリスチレン/アクリロニトリル共重合体−CRブロック共重合体が生成したと判断した。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.5モル%であった。
【0071】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。
【0072】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0073】
実施例3
実施例2において、ポリマー(A)としてポリスチレン/アクリロニトリル共重合体の代わりに、合成例3で得たポリメタクリル酸メチル5.00gを用いた他は全て実施例2と同じ方法でクロロプレンの重合を開始した。10時間紫外線照射後、クロロプレンの重合転化率は31%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは83100、重量平均分子量Mwは165400及び分子量分布Mw/Mnは1.99であり、元のポリメタクリル酸メチルのピークが完全に消失し、高分子量化していたことから、ポリメタクリル酸メチル−CRジブロック共重合体が生成したと判断した。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.6モル%であった。
【0074】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、25N/25mmの剥離強度が発現した。
【0075】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0076】
実施例4
実施例2において、ポリマー(A)としてポリスチレン/アクリロニトリル共重合体の代わりに、合成例4で得たポリアクリル酸n−ブチル5.00gを用いた他は全て実施例2と同じ方法でクロロプレンの重合を開始した。10時間紫外線照射後、クロロプレンの重合転化率は31%だった。内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリマーを析出させた。GPCにより測定した数平均分子量Mnは83100、重量平均分子量Mwは174500及び分子量分布Mw/Mnは2.10であり、元のポリアクリル酸n−ブチルのピークが完全に消失し、高分子量化していたことから、ポリアクリル酸n−ブチル−CRジブロック共重合体が生成したと判断した。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.4モル%であった。
【0077】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、PP樹脂の接着試験を実施した結果、22N/25mmの剥離強度が発現した。
【0078】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0079】
実施例5
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた100ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例5で得たポリメタクリル酸メチル7.16g及びベンゼン25.11gを仕込み、ポリメタクリル酸メチルの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン7.71g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.18重量%ベンゼン溶液2.12gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返し十分脱気後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。15時間後、60時間後及び200時間後に反応液をシリンジで0.5〜1ml吸引し、予め極微量の重合停止剤(川口化学製:W−500)を入れたガラス製サンプル瓶に抜き出し、重合を停止させ、ポリマーを得た。その後、未反応クロロプレンとベンゼンを風乾することにより、乾燥重量からクロロプレンの重合転化率を算出した。また、この乾燥サンプルをGPC分析に用いた。GPCによって測定した分子量分布の関係を図3に示す。ポリマー(A)であるポリメタクリル酸メチルのGPC曲線が、クロロプレンの重合に従って高分子量側に移動していることが明らかである。
【0080】
200時間後のクロロプレン重合転化率は43.8%、数平均分子量Mnは95300、重量平均分子量Mwは135000、Mw/Mnは1.40であった。該ポリマー中の塩素含量は12.4重量%であり、クロロプレン転化率から計算した、生成ポリマー中のポリクロロプレン含量32重量%とほぼ一致した。更に、該ポリマーは、ポリクロロプレンの非溶媒でありポリメタクリル酸メチルの溶媒であるアセトンに可溶であり、図4に示したようなポリメタクリル酸メチルのマトリックスに直径0.02〜0.03μ程度のポリクロロプレンドメインが分散したミクロ相分離構造を示した。
【0081】
以上の結果を総合すると、クロロプレンがポリマー(A)、すなわちポリメタクリル酸メチル鎖末端のジチオカルボン酸エステル基へ、可逆的に連鎖移動しながらラジカル重合した結果、下記一般式(10)に示す平均組成を有する、ポリメタクリル酸メチルの末端に、クロロプレンポリマーが連結した、クロロプレンブロック共重合体が生成したものと推測される。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.8モル%であった。
【0082】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、25N/25mmの剥離強度が発現した。
【0083】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0084】
【化11】

実施例6
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例6で得たポリスチレン5.40g及びベンゼン40.05gを仕込み、ポリスチレンの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン9.56g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.18重量%ベンゼン溶液5.60gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、40時間後、110時間後及び250時間後に反応液を抜き出してポリマーを得て、クロロプレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。クロロプレンの重合転化率とGPCによって測定した分子量分布の関係を図5に示す。ポリマー(A)であるポリスチレンのGPC曲線が、クロロプレンの重合に従って高分子量側に移動していることが明らかである。250時間後のクロロプレン重合転化率は37.9%、GPCで測定した数平均分子量Mnは34600、重量平均分子量Mwは44600、Mw/Mnは1.29であった。また、該ポリマーは、ポリクロロプレンの非溶媒であるアセトンに可溶だった。
【0085】
以上の結果から、生成ポリマーは、下記一般式(11)で示されるような平均組成を有する、ポリスチレン末端に、クロロプレンポリマーが連結した、クロロプレンブロック共重合体であると推測される。即ち、クロロプレンが、ポリマー(A)末端のジチオカルボン酸エステル基へ、可逆的に連鎖移動しながらラジカル重合した結果と考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.9モル%であった。
【0086】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、30N/25mmの剥離強度が発現した。
【0087】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0088】
【化12】

実施例7
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例7で得たポリアクリル酸ブチル7.49g及びベンゼン55.46gを仕込み、ポリアクリル酸ブチルの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン17.15g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液2.02gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、20時間後、64時間後及び230時間後に反応液を抜き出してポリマーを得て、クロロプレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。クロロプレンの重合転化率とGPC分子量分布の関係を図6に示す。ポリマー(A)であるポリアクリル酸ブチルのGPC曲線が、クロロプレンの重合に従って高分子量側に移動していることが明らかである。230時間後のクロロプレンの重合転化率は48.6%であり、GPCで測定した数平均分子量Mnは100000、重量平均分子量Mwは163500、Mw/Mnは1.63であった。また、該ポリマーは、ポリクロロプレンの非溶媒であり、ポリアクリル酸ブチルの溶媒であるアセトンに可溶だった。
【0089】
以上の結果から、該ポリマーは、ポリアクリル酸ブチルからなるポリマー(A)の末端に、クロロプレンポリマー(B)が連結し、下記一般式(12)で示されるような平均組成を有するクロロプレンブロック共重合体であると推測される。即ち、クロロプレンが、ポリマー(A)末端のジチオカルボン酸エステル基へ、可逆的に連鎖移動しながらラジカル重合した結果と考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.7モル%であった。
【0090】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、PP樹脂の接着試験を実施した結果、22N/25mmの剥離強度が発現した。
【0091】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0092】
【化13】

実施例8
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例9で得たメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体6.02g及びベンゼン55.02gを仕込み、メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体の溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン18.15g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液1.72gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、ポリマーを得て、クロロプレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。230時間後のクロロプレンの重合転化率は45.6%であり、GPCで測定した数平均分子量Mnは162000、重量平均分子量Mwは288000、Mw/Mnは1.73であり、ポリマー(A)のGPCピークは、クロロプレンの重合によって高分子量側へシフトした。よって、ポリメタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体とポリクロロプレンのブロック共重合体が生成したものと考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.7モル%であった。
【0093】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、25N/25mmの剥離強度が発現した。
【0094】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0095】
実施例9
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた500ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例10で得たスチレン/メタクリル酸/アクリロニトリル共重合体2.00g及びベンゼン20.00gを仕込み、スチレン/メタクリル酸/アクリロニトリル共重合体の溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン70.00g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液1.32gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、30℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、ポリマーを得て、クロロプレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。144時間後のクロロプレンの重合転化率は7.7%であり、GPCで測定した数平均分子量Mnは198000、重量平均分子量Mwは376200、Mw/Mnは1.90であり、ポリマー(A)のGPCピークは、クロロプレンの重合によって高分子量側へシフトした。よって、スチレン/メタクリル酸/アクリロニトリル共重合体とポリクロロプレンのブロック共重合体が生成したものと考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.5モル%であった。
【0096】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、35N/25mmの剥離強度が発現した。
【0097】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0098】
実施例10
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例11で得た2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン/メタクリル酸/2−クロロ−1,3−ブタジエン共重合体5.00g及びベンゼン55.00gを仕込み、当該共重合体の溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン20.04g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液1.60gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、ポリマーを得て、クロロプレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。230時間後のクロロプレンの重合転化率は52.3%であり、GPCで測定した数平均分子量Mnは126300、重量平均分子量Mwは246300、Mw/Mnは1.95であり、ポリマー(A)のGPCピークは、クロロプレンの重合によって高分子量側へシフトした。よって、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン/メタクリル酸/2−クロロ−1,3−ブタジエン共重合体とポリクロロプレンのブロック共重合体が生成したものと考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.7モル%であった。
【0099】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、30N/25mmの剥離強度が発現した。
【0100】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0101】
実施例11
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた500ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例5で得たポリメタクリル酸メチル1.02g及びベンゼン15.34gを仕込み、ポリメタクリル酸メチルの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン65.17g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.49重量%ベンゼン溶液0.20gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、30℃のオイルバスで、実施例5と同様の方法で重合を行い、ポリマーを得た。139時間後のクロロプレン重合転化率は7.4%、数平均分子量Mnは298000、重量平均分子量Mwは506600、Mw/Mnは1.70であった。GPC測定において、ポリマー(A)のピークがクロロプレンの重合に従って、完全に高分子量側へシフトしたことから、実施例2と同様、ポリメタクリル酸メチルとポリクロロプレンのブロック共重合体が生成したものと考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.6モル%であった。
【0102】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、34N/25mmの剥離強度が発現した。
【0103】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0104】
実施例12
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた500ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例5で得たポリメタクリル酸メチル1.60g及びベンゼン15.34gを仕込み、ポリメタクリル酸メチルの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン70.00g、メタクリル酸5.99g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.49重量%ベンゼン溶液0.20gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、30℃のオイルバスで、実施例11と同様の方法で重合を行い、ポリマーを得た。139時間後のクロロプレン重合転化率は8.6%、数平均分子量Mnは278000、重量平均分子量Mwは480900、Mw/Mnは1.73であった。GPC測定において、ポリマー(A)のピークがクロロプレンの重合に従って、完全に高分子量側へシフトしたことから、実施例5と同様、ポリメタクリル酸メチルとポリクロロプレン−メタクリル酸共重合体のブロック共重合体が生成したものと考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.5モル%であった。
【0105】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、32N/25mmの剥離強度が発現した。
【0106】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0107】
実施例13
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた100ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例5で得たポリメタクリル酸メチル5.00g及びベンゼン20.00gを仕込み、ポリメタクリル酸メチルの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン7.00g、2,3−ジクロロブタジエン3.00g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.18重量%ベンゼン溶液2.00gを仕込み、以下、実施例5と同じ方法でブロック共重合を行い、ポリマーを得た。200時間後の重合転化率は48.3%、数平均分子量Mnは75200、重量平均分子量Mwは120400、Mw/Mnは1.60であった。GPC測定において、ポリマー(A)のピークが、重合の進行によって完全に高分子量側へシフトしたことから、ブロック共重合体が生成したものと考えられる。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は0.6モル%であった。
【0108】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。
【0109】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0110】
実施例14
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた100ml褐色フラスコに、クロロプレン系ポリマー(B)として、合成例8で得たポリクロロプレン2.94g及びベンゼン18.74gを仕込み、ポリクロロプレンの溶解を確認後、スチレン20.00g及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.16重量%ベンゼン溶液2.02gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、60℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、24時間後、90時間後及び188時間後に反応液を抜き出してポリマーを得て、スチレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。スチレンの重合転化率とGPC分子量分布の関係を図7に示す。クロロプレン系ポリマー(B)であるポリクロロプレンのGPC曲線が、スチレンの重合に従って高分子量側に移動していることが明らかである。188時間後のスチレンの重合転化率は19.1%であり、GPCで測定した数平均分子量Mnは41200、重量平均分子量Mwは55200、Mw/Mnは1.34であった。以上の結果から、該ポリマーは、ポリマー(A)であるポリスチレンの末端に、ポリクロロプレンからなるクロロプレン系ポリマー(B)が連結したブロック共重合体であると推測される。
【0111】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。
【0112】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0113】
実施例15
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、クロロプレン系ポリマー(B)として、合成例8で得たポリクロロプレン4.59g及びベンゼン40gを仕込み、ポリクロロプレンの溶解を確認後、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン8.46g及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.15重量%ベンゼン溶液3.00gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。52時間後、内容物を多量のメタノール(安定剤としてジ−t−ブチルヒドロキシトルエン含有)に投入し、ポリマーを析出させた。乾燥ポリマー重量から求めた2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの転化率は37%だった。該ポリマーを常温でテトラヒドロフランに溶解したが、57%が可溶、43%は不溶だった。可溶分をGPC測定した結果、数平均分子量Mnは46,600、重量平均分子量Mwは55,900、Mw/Mnは1.20であり、オリジナルのポリクロロプレンのピークは完全に消失していた。以上の結果から、該ポリマーは、ポリマー(A)であるポリ2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエンの末端に、ポリクロロプレンからなるクロロプレン系ポリマー(B)が連結したブロック共重合体であると推測される。
【0114】
該ブロック共重合体をトルエンに60℃で溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、27N/25mmの剥離強度が発現した。
【0115】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0116】
実施例16
(一段目の重合)
窒素ガス導入管を備えた300mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに下記一般式(13)で表されるカルバミン酸エステル0.15g、一般式(7)で表されるカルバミン酸ジスルフィド0.06g及び単蒸留したクロロプレン100.0gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら5時間重合した。この時点でのクロロプレンの重合転化率は10%だった。フラスコを開放することなく、真空下で未反応クロロプレンを留去させてクロロプレンポリマー(B)を得た。GPCにより測定した数平均分子量Mnは51200、重量平均分子量Mwは98900及び分子量分布Mw/Mnは1.93であった。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.0モル%であった。
(二段目の重合)
引き続いて、上記フラスコにスチレン100.0gを添加し、窒素雰囲気下、攪拌しながらポリクロロプレン(B)を完全に溶解した後、一段目と同様、十分脱気後、攪拌下、30℃で6時間紫外線を照射した。この時点でのスチレンの重合転化率は2%だった。内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは72100、重量平均分子量Mwは154100及び分子量分布Mw/Mnは2.10であり、更に、図8に示したような、海島状のミクロ相分離構造を示したことから、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレンポリマー(A)が連結したトリブロック共重合体であると推測される。
【0117】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、樹脂ブロックを両末端に有するクロロプレンポリマーであるため、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力5MPa、破断伸び750%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤として有用である。
【0118】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0119】
【化14】

実施例17
実施例16の二段目の重合において、スチレン100.0gの代わりに、スチレン95.0g及び無水マレイン酸2.0gを用いた他は全て実施例16と同じ方法で二段目の重合を開始した。30℃で6時間紫外線照射後のスチレン及び無水マレイン酸の重合転化率は各々2.2%及び98%だった。内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは84500、重量平均分子量Mwは164000及び分子量分布Mw/Mnは1.94であり、元のクロロプレンポリマーのピークが消失し、高分子量化していたことから、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレン/無水マレイン酸共重合ポリマー(A)が連結したトリブロック共重合体であると推測される。
【0120】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、樹脂ブロックを両末端に有するクロロプレンポリマーであるため、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力4MPa、破断伸び800%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤として有用である。
【0121】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0122】
実施例18
実施例16の二段目の重合において、スチレン100.0gの代わりに、スチレン95.0g及びN−フェニルマレイミド2.0gを用いた他は全て実施例16と同じ方法で二段目の重合を開始した。30℃で6時間紫外線照射後のスチレン及びN−フェニルマレイミドの重合転化率は各々2.2%及び97%だった。内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは86300、重量平均分子量Mwは171000及び分子量分布Mw/Mnは1.98であり、元のクロロプレンポリマーのピークが消失し、高分子量化していたことから、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレン/無水マレイン酸共重合ポリマー(A)が連結したトリブロック共重合体であると推測される。
【0123】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、樹脂ブロックを両末端に有するクロロプレンポリマーであるため、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力5MPa、破断伸び700%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤として有用である。
【0124】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0125】
実施例19
実施例16の二段目の重合において、スチレン100.0gの代わりに、スチレン45.0g、マレイン酸5.0g、メチルエチルケトン50.0gを用いた他は全て実施例16と同じ方法で二段目の重合を開始した。30℃で12時間紫外線照射後のスチレン及びマレイン酸の重合転化率は各々4.5%及び81%だった。内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは89200、重量平均分子量Mwは187300及び分子量分布Mw/Mnは2.10であり、元のクロロプレンポリマーのピークが消失し、高分子量化していたことから、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレン/マレイン酸共重合ポリマー(A)が連結したトリブロック共重合体であると推測される。
【0126】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、樹脂ブロックを両末端に有するクロロプレンポリマーであるため、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力5MPa、破断伸び750%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤として有用である。
【0127】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0128】
実施例20
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに、下記一般式(14)で表されるジチオカルボン酸エステルの5.12重量%ベンゼン溶液2.00g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.15重量%ベンゼン溶液2.0g及び単蒸留したクロロプレン75.25gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。32時間後、フラスコを開放することなく、真空下で未反応クロロプレンを留去させてクロロプレンポリマー(B)を得た。重合溶液の固形分から計算したクロロプレンの重合転化率は23.2%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは81500、重量平均分子量Mwは154900及び分子量分布Mw/Mnは1.90であった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.4モル%であった。引き続いて、上記フラスコにスチレン134gを添加し、窒素雰囲気下、攪拌しながらポリクロロプレン(B)を完全に溶解した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.15wt%ベンゼン溶液2.20gを添加し、上記同様、十分脱気後、攪拌下、50℃のオイルバスで加熱した。80時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。ポリマーの乾燥重量から計算したスチレンの転化率は4.1%だった。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは93600、重量平均分子量Mwは191900及び分子量分布Mw/Mnは2.05だった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。更に、図9に示したような、海島状のミクロ相分離構造を示したことから、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレンポリマー(A)が連結したトリブロック共重合体であると推測される。
【0129】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、樹脂ブロックを両末端に有するクロロプレンポリマーであるため、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力6MPa、破断伸び700%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤として有用である。
【0130】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0131】
【化15】

実施例21
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに、合成例6で得たスチレン系ポリマー(A)5.30g、単蒸留したクロロプレン86.50g、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.35wt%ベンゼン溶液0.79g、ベンゼン22.25gを添加し、ポリマー(A)を完全に溶解した後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。32時間後、フラスコを開放することなく、真空下で未反応クロロプレンを留去させてポリマー(A)/クロロプレンポリマー(B)からなるジブロック体を得た。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.4モル%であった。重合溶液の固形分から計算したクロロプレンの重合転化率は16.0%だった。ここにスチレン100.52gを加えて共重合体を完全溶解後、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.35wt%ベンゼン溶液0.65gを添加して脱気後、50℃のオイルバスで加熱した。24h時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを沈殿、回収した。乾燥後のポリマー重量から算出したスチレンの重合転化率は約2.9%、GPCで測定した数平均分子量は89200、重量平均分子量は124500、Mw/Mn1.40だった。図10に示したような、層状のミクロ相分離構造を示したことから、該共重合体は、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレンポリマー(A)が連結したトリブロック共重合体であると推定される。
【0132】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力21MPa、破断伸び600%を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤としても有用と考えられる。
【0133】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0134】
実施例22
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに、下記一般式(15)で表されるジチオカルボン酸エステルの6.00重量%ベンゼン溶液2.00g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.15重量%ベンゼン溶液2.0g及び単蒸留したクロロプレン76.02gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。34時間後、フラスコを開放することなく、真空下で未反応クロロプレンを留去させてクロロプレンポリマー(B)を得た。重合溶液の固形分から計算したクロロプレンの重合転化率は24.5%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは65000、重量平均分子量Mwは122000及び分子量分布Mw/Mnは1.88であった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.5モル%であった。引き続いて、上記フラスコにスチレン120.01g、無水マレイン酸20.00gを添加し、窒素雰囲気下、攪拌しながらポリクロロプレン(B)を完全に溶解した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.15wt%ベンゼン溶液3.00gを添加し、上記同様、十分脱気後、攪拌下、50℃のオイルバスで加熱した。80時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。ポリマーの乾燥重量から計算したスチレン、無水マレイン酸を合わせた転化率は5.1%であり、1700〜1870cm-1付近にカルボニル特有の赤外吸収ピークを示した。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは87300、重量平均分子量Mwは173700及び分子量分布Mw/Mnは1.99だった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、30N/25mmの剥離強度が発現した。また該共重合体は、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力7MPa、破断伸び750%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤としても有用と考えられる。
【0135】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0136】
【化16】

実施例23
実施例22において、スチレン120.01g及び無水マレイン酸20.00gの代わりに、スチレン60.0g、マレイン酸10.0g及びジオキサン60.0gを用いた他は、全て実施例22と同様の方法で重合した。150時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。スチレン及びマレイン酸の重合転化率は11%及び54%であり、1700〜1870cm-1付近にカルボニル特有の赤外吸収ピークを示した。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは93100、重量平均分子量Mwは186200及び分子量分布Mw/Mnは2.00だった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また該共重合体は、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力6.5MPa、破断伸び730%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤としても有用と考えられる。
【0137】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0138】
実施例24
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに下記一般式(16)で表されるジスルフィド化合物の6.00重量%ベンゼン溶液3.00g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.11重量%ベンゼン溶液3.50g及び単蒸留したクロロプレン100.01gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。24時間後、未反応のクロロプレンを真空下で除去した。重合溶液の固形分から求めたクロロプレンの重合転化率は10.2%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは24000、重量平均分子量Mwは45600及び分子量分布Mw/Mnは1.90であった。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.4モル%であった。ここにスチレン120.00gを加えて共重合体を完全溶解後、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.35wt%ベンゼン溶液0.65gを添加して脱気後、50℃のオイルバスで加熱した。24h時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを沈殿、回収した。乾燥後のポリマー重量から算出したスチレンの重合転化率は約1.9%、GPCで測定した数平均分子量Mnは32000、重量平均分子量Mwは65600及び分子量分布Mw/Mnは2.05であった。
【0139】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。
【0140】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0141】
【化17】

実施例25
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに、一般式(14)で表されるジチオカルボン酸エステルの5.12重量%ベンゼン溶液2.10g、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.15重量%ベンゼン溶液2.1g及び単蒸留したクロロプレン76.15gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。32時間後、フラスコを開放することなく、真空下で未反応クロロプレンを留去させてクロロプレンポリマー(B)を得た。重合溶液の固形分から計算したクロロプレンの重合転化率は23.8%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは82200、重量平均分子量Mwは157000及び分子量分布Mw/Mnは1.91であった(GPC主ピークの両サイドにショルダーが発生した)。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.4モル%であった。
【0142】
引き続いて、上記フラスコにスチレン150gを添加し、窒素雰囲気下、攪拌しながらポリクロロプレン(B)を完全に溶解した後、N−フェニルマレイミド20g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.15wt%ベンゼン溶液2.00gを添加し、上記同様、十分脱気後、攪拌下、50℃のオイルバスで加熱した。80時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。ポリマーの乾燥重量から計算したスチレン、N−フェニルマレイミドを合わせた転化率は3.9%であり、該ポリマーは1700〜1850cm−1にイミド特有の赤外吸収を示した。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは95300、重量平均分子量Mwは192500及び分子量分布Mw/Mnは2.02だった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。更に、該ブロック共重合体は、実施例16と同様、海島状のミクロ相分離構造を示したことから、クロロプレン系ポリマー(B)の両末端にスチレン/N−フェニルマレイミド共重合体(A)が連結したトリブロック共重合体であると推測される。
【0143】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、31N/25mmの剥離強度が発現した。また、該共重合体は、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力7MPa、破断伸び650%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤としても有用と考えられる。
【0144】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0145】
実施例26
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた300ml褐色フラスコに、一般式(15)で表されるジチオカルボン酸エステルの6.00重量%ベンゼン溶液2.00g、一般式(16)で表されるジスルフィド化合物の6.00重量%ベンゼン溶液3.00g及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.15重量%ベンゼン溶液2.0g及び単蒸留したクロロプレン80.00gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、マグネチックスターラーで攪拌しながら、60℃のオイルバスで加熱した。34時間後、フラスコを開放することなく、真空下で未反応クロロプレンを留去させてクロロプレンポリマー(B)を得た。重合溶液の固形分から計算したクロロプレンの重合転化率は21.5%だった。GPCにより測定した数平均分子量Mnは53000、重量平均分子量Mwは84300及び分子量分布Mw/Mnは1.59であった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。合成例8と同様に、炭素−13核磁気共鳴分光装置を用いた測定より算出した、該ポリマー中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和は1.5モル%であった。引き続いて、上記フラスコにスチレン140.0gを添加し、窒素雰囲気下、攪拌しながらポリクロロプレン(B)を完全に溶解した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.15wt%ベンゼン溶液3.00gを添加し、上記同様、十分脱気後、攪拌下、50℃のオイルバスで加熱した。80時間後、内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。ポリマーの乾燥重量から計算したスチレンの重合転化率は4.3%であり、GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは73000、重量平均分子量Mwは129900及び分子量分布Mw/Mnは1.78だった(GPC主ピークの両サイドにショルダーあり)。該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。また該共重合体は、同程度の分子量、結晶性を有する未加硫のクロロプレン系ゴムでは発現し得ない破断応力6.0MPa、破断伸び750%の引張り物性を示したことから、熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤としても有用と考えられる。
【0146】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0147】
比較例1
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた100ml褐色フラスコに、ポリマー(A)として、合成例13で得たポリメタクリル酸メチル4.93g及びベンゼン25.81gを仕込み、ポリマーの溶解を確認後、単蒸留したクロロプレン9.21g及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.177%重量%ベンゼン溶液1.67gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、40℃のオイルバスで加熱した。192時間後、内容物を多量のメタノールに注ぎ、ポリマーを析出させた。ポリマーの乾燥重量から求めたクロロプレンの重合転化率は31.7%、GPCで測定した数平均分子量Mnは73400、重量平均分子量Mwは415800、Mw/Mnは5.77であった。ジチオカルボン酸エステルを使用しないで合成したポリマー(A)を用いてクロロプレンを重合しても、ブロック共重合が進行しなかったため、クロロプレンの単独重合体が生成したと考えられる。
【0148】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、14N/25mmの剥離強度しか得られなかった。
【0149】
比較例2
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、クロロプレン系ポリマー(B)として、合成例14で得たポリクロロプレン3.20g及びベンゼン10.00gを仕込み、ポリクロロプレンの溶解を確認後、スチレン41.33g及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.16重量%ベンゼン溶液1.60gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、60℃のオイルバスで加熱した。その後は、実施例5と同様の手順で、20時間後、48時間後及び90時間後に反応液を抜き出してポリマーを得て、スチレン転化率及び生成ポリマーのGPC測定を行った。スチレンの重合転化率とGPCで測定した分子量分布の関係を図11に示す。ポリマー(B)であるポリクロロプレンのGPC曲線ピークが、スチレンの重合に関わらず殆ど移動していないこと、及び多量の高分子量成分が生成していることが明かである。90時間後のスチレンの重合転化率は10.3%、GPCで測定した数平均分子量Mnは47700、重量平均分子量Mwは144800、Mw/Mnは3.04であった。
【0150】
以上の結果から、本条件では、スチレンが、ポリクロロプレン末端に連鎖移動することなく、ほぼ単独でラジカル重合したものと推測される。
【0151】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、ABS樹脂からの界面剥離による接着強度は15N/25mmであり、参考例と同様に劣っていた。
【0152】
該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは薄い黄色であり、耐変色性は○と判定した。
【0153】
比較例3
ポリマー(A)として、合成例12で得られたポリクロロプレンを用いた他は、全て実施例14と同じ条件でスチレンの重合を行った。188時間後のスチレンの重合転化率は18.5%であり、GPCで測定した数平均分子量Mnは54400、重量平均分子量Mwは96800、Mw/Mnは1.78であり、スチレンの重合によって、オリジナルのクロロプレン重合体のピークはほぼ消失していた。
【0154】
以上の結果から、該ポリマーは、ポリクロロプレンからなるポリマー(A)の末端に、スチレンポリマー(B)が連結したブロック共重合体であると推測される。
【0155】
該ブロック共重合体を、アセトン/メチルエチルケトン/トルエン=20/50/30重量%の混合溶剤に溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、軟質ポリ塩化ビニルの接着試験を実施した結果、30N/25mmの剥離強度が発現した。
【0156】
しかしながら、実施例14と同様、該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは黄褐色であり、耐変色性は△と判定した。即ち、クロロプレン系重合体(B)の重合温度が高く、1,2−及び1,2−結合量が多いため、脱塩酸等の劣化が起こり易く耐変色性が劣ったものと考えられる。
【0157】
比較例4
窒素ガス導入管を備えた300mlパイレックス(登録商標)ガラスフラスコに、クロロプレン系ポリマー(B)として合成例15で得たポリクロロプレン5.0g及びスチレン50.0gを仕込んだ後、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、攪拌しながら、30℃の恒温槽内において80mmの距離から紫外線(ウシオ電気(株)製、UM452(450W))を照射しながら10時間重合した。この時点でのスチレンの重合転化率は7%だった。内容物を多量のメタノールに注いでポリマーを析出させて、ブロック共重合体を得た。GPCにより測定したブロック共重合体の数平均分子量Mnは126000、重量平均分子量Mwは315000だった。スチレンの重合によってポリクロロプレンの分子量が高分子量にシフトしたことから、クロロプレン系ポリマー(B)にスチレンポリマー(A)が連結したジブロック共重合体であると推測される。
【0158】
該ブロック共重合体をトルエンに溶解し、5重量%プライマー液を調製した。これをプライマーとして用いて、ABS樹脂の接着試験を実施した結果、29N/25mmの剥離強度が発現した。
【0159】
しかしながら、該ブロック共重合体の耐変色性を評価した結果、ギヤオーブン加熱後及び紫外線照射後、何れの場合もフィルムは黄褐色であり、耐変色性は×と判定した。即ち、クロロプレン系重合体(B)の重合温度が高く、1,2−及び1,2−結合量が多いため、脱塩酸等の劣化が起こり易く耐変色性が劣ったものと考えられる。
【0160】
比較例5
窒素ガス導入管及び還流冷却管を備えた200ml褐色フラスコに、クロロプレン系ポリマー(B)として、合成例8で得たポリクロロプレン3.12g及びベンゼン23.27gを仕込み、ポリクロロプレンの溶解を確認後、メタクリル酸メチル8.14g及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の0.16重量%ベンゼン溶液1.60gを仕込み、凍結−脱気−融解を3回繰返して十分脱気した後、窒素雰囲気下、60℃のオイルバスで加熱した。90時間後、内容物を多量のメタノール(安定剤としてジ−t−ブチルヒドロキシトルエン含有)に投入し、ポリマーを析出させた。乾燥ポリマー重量から求めたメタクリル酸メチルの転化率は52.3%だった。GPCで測定した数平均分子量Mnは47700、重量平均分子量Mwは144800、Mw/Mnは3.03であり、オリジナルのポリクロロプレンのピークが移動せず残っていた。以上の結果から、メタクリル酸メチルは、クロロプレン系ポリマー(B)であるポリクロロプレンの末端に連鎖移動せず単独で重合したものと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】合成例8で得られたポリクロロプレンの、炭素13核磁気共鳴スペクトルを示した図のうちの化学シフト20〜55ppmの範囲を示したものである。
【図2】合成例8で得られたポリクロロプレンの、炭素13核磁気共鳴スペクトルを示した図のうちの化学シフト95〜150ppmの範囲を示したものである。
【図3】実施例5における、クロロプレンの重合転化率と、GPCで測定した分子量分布との関係を示した図である。
【図4】実施例5で得られたクロロプレン系ブロック共重合体の透過型電子顕微鏡写真を示したものである。
【図5】実施例6における、クロロプレンの重合転化率と、GPCで測定した分子量分布との関係を示した図である。
【図6】実施例7における、クロロプレンの重合転化率と、GPCで測定した分子量分布との関係を示した図である。
【図7】実施例14における、スチレンの重合転化率と、GPCで測定した分子量分布との関係を示した図である。
【図8】実施例16で得られたクロロプレン系ブロック共重合体の透過型電子顕微鏡写真を示したものである。
【図9】実施例20で得られたクロロプレン系ブロック共重合体の透過型電子顕微鏡写真を示したものである。
【図10】実施例21で得られたクロロプレン系ブロック共重合体の透過型電子顕微鏡写真を示したものである。
【図11】比較例2における、スチレンの重合転化率と、GPCで測定した分子量分布との関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン系ポリマー(B)の片方又は両方の末端に、下記一般式(1)で示される組成を有するポリマー(A)が連結しており、かつ、炭素13核磁気共鳴分光法で求めたクロロプレン系ポリマー(B)中の1,2−結合及び異性化1,2−結合の量の総和が2.0モル%以下であることを特徴とするクロロプレン系ブロック共重合体。
【化1】

(式中、Uは、水素、メチル基、シアノ基又は置換アルキル基を表し、Vは、フェニル基、置換フェニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、置換アリロキシカルボニル基、アシロキシ基、置換アシロキシ基、アミド基又は置換アミド基を表し、Xは、水素、メチル基、塩素又はシアノ基を表し、Yは、水素、塩素又はメチル基を表し、Qは無水マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸エステル又はフマル酸エステルの重合残基を表し、k、n及びmは0以上の整数を表す。)
【請求項2】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が2.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項3】
ポリマー(A)が、ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジチオカルバミン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物、又はジチオカルボン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、1,3−ブタジエン系モノマー、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル、マレイン酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーを用いてラジカル重合して得られるポリマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクロロプレン系ブロック共重合体。
【請求項4】
ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、ジチオカルバミン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物、又はジチオカルボン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、ラジカル重合性モノマーをラジカル重合してポリマー(A)を合成し、得られたポリマー(A)の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとを70℃以下の温度でラジカル重合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【請求項5】
ラジカル重合性モノマーが、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエステル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、1,3−ブタジエン系モノマー、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル、マレイン酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーであることを特徴とする請求項4に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【請求項6】
ジチオカルバミン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、又はジチオカルバミン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとを70℃以下の温度でラジカル重合してクロロプレン系ポリマー(B)を合成し、得られたクロロプレン系ポリマー(B)の存在下、スチレン系モノマー、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、メタクリル酸エステル系モノマー、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル、マレイン酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーをラジカル重合又は共重合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【請求項7】
ジチオカルボン酸エステル化合物、ジスルフィド化合物、又はジチオカルボン酸エステル化合物及びジスルフィド化合物の存在下、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能なモノマーとを70℃以下の温度でラジカル重合してクロロプレン系ポリマー(B)を合成し、得られたクロロプレン系ポリマー(B)の存在下、スチレン系モノマー、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、又はスチレン系モノマー及びスチレン系モノマーと共重合可能な無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸、イタコン酸、N−置換マレイミド類、フマル酸エステル、マレイン酸エステル若しくはビニルニトリル系モノマーをラジカル重合又は共重合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【請求項8】
ジチオカルバミン酸エステル化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【化2】

(式中、Rは炭素数1以上のn価の有機基を表し、Z及びZは炭素数1以上の有機基であるアルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【請求項9】
ジチオカルボン酸エステル化合物が、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項4、請求項5又は請求項7のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【化3】

(式中、Rは炭素数1以上のn価の有機基を表し、Zは炭素数1以上の1価の有機基であるアリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、電子求引性基で置換されたアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
【化4】

(式中、R2は炭素数1以上の1価の有機基を表し、Zは炭素数1以上のm価の有機基であるアリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、電子求引性基で置換されたアルキル基又はアルコキシ基を表す。)
【請求項10】
ジスルフィド化合物が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体の製造法。
【化5】

(式中、Zは炭素数1以上の1価の有機基であるアリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、電子求引性基で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を表す。)
【請求項11】
請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のクロロプレン系ブロック共重合体を含むことを特徴とする接着剤、プライマー、熱可塑性エラストマー、ゴム相溶化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−39654(P2007−39654A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139463(P2006−139463)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】