説明

クローポール型ステッピングモータ

【課題】 回転のより滑らかで低振動のPM型ステッピングモータを提供する。
【解決手段】 PM型ステッピングモータのステータは、極歯23、24とロータマグネット111との間のスキマが周方向に沿って、滑らかに大→小→大と変化するように形成されている。極歯23、24の内面が平面であり、その形状が台形、山形又は流線型である。このような構成により、極歯23、24とマグネットとの間に働く吸引力と反発力の変化が滑らかになり、ディテントトルクが低減され、回転子を滑らかに駆動させることができるとともに騒音の発生を抑えることができる。また、マグネット111の各磁極の中心と極歯23、24の中心との間隔が最も狭くなるときに、周方向において各極歯の中心にマグネットの各磁極の中心が合うので、回転子を固定子に対して正確に位置決めでき、モータの位置決め精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ用フォーカス、ズーム、アイリス駆動及び低振動を必要とする製品に使用されるPM型ステッピングモータに関する。特には、クローポール(極歯)の形状を改良して回転をより滑らかにしうるPM型ステッピングモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2相PM型ステッピングモータの全体構造の一例を説明する。
図2は、従来の2相PM型ステッピングモータの構造を示す分解斜視図である。
ステッピングモータ101は、回転子110と、同回転子110の外周域に配置される固定子120を含む。
図3は、図2のステッピングモータの断面図である。
回転子110は、外周にN極とS極が交互に複数着磁された、円柱状の永久磁石111と、回転軸112とを有する。回転軸112の一端は、固定子120の一端に取り付けられた軸受129に支持されるとともに、スラストバネ130で軸方向に付勢されている。
固定子120は、永久磁石111の磁極と同数の極歯(クローポール)123、124を有するステータ121と、ステータ121の磁極を磁化するコイル127(図2には図示されず)とを有する。
【0003】
ステータ121は、回転軸方向に並んだA相ステータ121AとB相ステータ121Bとからなる。各相ステータは、極歯123付きヨーク(ステータヨーク)122と、極歯124が設けられた中央ヨーク126と、コイル127が収容されるボビン125と、を有する。ステータヨーク122は、円筒状部122aと、同部の内周縁から内方向に張り出したフランジ部122bとを有し、フランジ部122bの内縁から複数の極歯123が回転軸方向に突出している。中央ヨーク126はリング状で、内縁から複数の磁極124が回転方向に突出している。極歯123、124は、回転軸方向の両側から突き合わされて、円周方向に等間隔で交互になるように配置されている。各相ステータにおいて、ステータヨーク122は回転軸方向外側に配置されており、中央ヨーク126は同方向内側に配置されている。
【0004】
コイルボビン125の内周面には、凹部125aが形成されており、同凹部125a内に極歯123、124が収容されている。ボビン125は樹脂製であり、極歯123、124はこの樹脂の中に埋め込まれて、内周面がボビン125の内周面に現れている。
コイルボビン125の外周面には、円周方向に延びる凹部125bが形成され、同凹部125b内にコイル127が収容されている(図3参照)。
【0005】
ステータ121A、121Bは、コイルボビン125を両側から挟んで、極歯123、124が互いに1/2ピッチ円周方向にずれるように配置され、レーザ溶接などにより固定されている。
【0006】
次に、極歯の形状について説明する。
図4は、極歯の形状の一例を模式的に説明する図であり、図4(A)は展開図、図4(B)は平面図、図4(C)は斜視図である。
図4(A)、(C)に示すように、ステータヨークのフランジ部122bの内周縁の形状は円形であり、その内周縁から極歯123が軸方向に延びている。この極歯123と、コイルボビンに埋め込まれた極歯124の平面形状は二等辺三角形状であり、内周面は、マグネット111の外周面に沿うように凹状に湾曲している。つまり、極歯123、124の内周面の曲率はマグネット111の外周面の曲率とほぼ等しく、両者の間隔は、円周方向においてほぼ均一となっている。
【0007】
図5は、極歯の形状の他の例を模式的に説明する図であり、図5(A)は展開図、図5(B)は平面図、図5(C)は斜視図である。
図5(A)、(C)に示すように、この例においてもステータヨークのフランジ部122bの内周縁の形状は円形であり、その内周縁から極歯123´が軸方向に延びている。極歯123´、124´の平面形状は、この例では角の丸められた長方形状であり、内周面は、マグネット111の外周面に沿うように凹状に湾曲している。この例においても、極歯123´、124´の内周面の曲率はマグネット111の外周面の曲率とほぼ等しく、両者の間隔は、円周方向においてほぼ均一となっている。
【0008】
一方、コギングトルクやトルクリップルの低減を目的として、回転子の各極の永久磁石を、断面形状が円弧状とした(中央部の径方向厚さを、磁極境界部の径方向厚さよりも大きくした)モータ(ブラシレスモータ)が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。このように、永久磁石と極歯間の間隔を円周方向で変化させることにより、磁束密度分布が正弦波形状に近づき、コギングトルクが低減できるとされている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−217478
【特許文献2】特開2001−275285
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述の永久磁石と極歯間の間隔を円周方向で変化させる手法を適用した、回転のより滑らかなクローポール型ステッピングモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のクローポール型ステッピングモータは、 外周にN極とS極が交互に複数着磁されたロータマグネット及び回転軸を有する回転子と、 該回転子の磁極に対向する複数の磁極を有するステータ及び、該ステータの磁極を磁化するコイルを有し、前記回転子の外周域に配置される固定子と、を備え、 前記ステータが、複数の極歯の形成されたステータヨーク及び、前記コイルが収容される凹部の形成されたボビンを含み、 前記各極歯と前記ロータマグネットとの間のスキマが周方向に沿って、滑らかに大→小→大と変化するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、 前記各極歯の内面が平面であり、その形状が台形、山形又は流線型であることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、極歯とマグネットとの間に働く吸引力と反発力の変化が滑らかになり、ディテントトルクが低減され、回転子を滑らかに駆動させることができるとともに騒音、振動の発生を抑えることができる。また、マグネットの各磁極の中心と各極歯の中心との間隔が最も狭くなるときに、周方向において各極歯の中心にマグネットの各磁極の中心が合うので、回転子を固定子に対して正確に位置決めできる。したがって、モータの位置決め精度が向上する。
【0014】
本発明においては、 前記ステータヨークの内周面が略多角形であることとすると、ステータヨークに平面形状がフラットな極歯を設けやすい。
【0015】
本発明においては、 前記コイルが平角のコイル線を巻き回したものであることが好ましい。
コイルを平角のコイル線で形成することにより、断面におけるコイル線の密度を高くすることができるので、線積が多くなる。したがって、形成される磁場の強度を高くすることができ、トルクが向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、振動や騒音が少ないステッピングモータを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明のステッピングモータの全体の構造は、図2、3に示した従来のステッピングモータの全体の構造とほぼ同じであってよい。同ステッピングモータの特徴は、極歯(ステータヨーク含む)の形状とコイルにあるので、以降ではステータヨーク及び極歯の形状とコイルの種類について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータの極歯の形状を説明する図であり、図1(A)は展開図、図1(B)は平面図、図1(C)は図1(B)の一部拡大図、図1(D)は斜視図である。
図1に示すように、ステータヨークのフランジ部122bの内周縁の形状は多角形(この例では10角形)であり、内周縁の一つおきの辺から、極歯23が軸方向に突出するように設けられている。極歯23は、平面形状が山形状で、一定の肉厚の平板である。つまり、各々の極歯23の内面は平面である。このため、極歯23の内周面の曲率とマグネット111の外周面の曲率は異なり、両者の間隔は、円周方向において大→小→大と滑らかに変化する。
【0018】
すなわち、図1(C)に示すように、極歯23の一方の端部(マグネット111の回転方向における入口)23aにおいては、極歯−マグネット間のスキマx1は比較的大きく(マグネット111の径4.4mmの場合、例えば0.39mm)、極歯23の中央に行くに従い徐々に狭くなり、中央23bではスキマx2が最も狭くなる(例えば0.2mm)。そして、もう一方の端部(出口)23cに行くに従い徐々に広くなり、同端部のスキマx3は、入口23aのスキマx1と等しくなる。
【0019】
図1(A)における符号24は、図2の中央ヨーク126に設けられた極歯を示し、極歯23と同じ形状及びマグネット111との位置関係を有する。
【0020】
この例では、極歯23、24の平面形状がフラットな山形の場合について説明したが、台形や流線型であってもよい。
【0021】
このような形状のステータヨークを作製するには、図4に示す従来のステータヨークと同様にプレス加工によることができる。
【0022】
このように極歯23、24の内周面とマグネット111の外周面との間の間隔を円周方向において大→小→大と変化させることにより、極歯23、24とマグネット111との間に働く吸引力と反発力の変化が滑らかになり、ディテントトルクが低減される。これにより、回転子を滑らかに駆動させることができるとともに騒音の発生を抑えることができる。また、マグネット111の各磁極の中心と各極歯23、24の中心との間隔が最も狭くなるときに、周方向において極歯23、24の中心にマグネット111の各磁極の中心が合うので、回転子110を固定子120に対して正確に位置決めできる。したがって、モータの位置決め精度が向上する。
【0023】
この例においては、コイル127は、断面形状が平角の細線(径が100μm以下)を、ボビン125の凹部125b内に巻き回したものである。このような平角の細線を使用することにより、コイルと比べて、線積が約10%〜15%アップし、トルクを向上させることができる。このコイル127は、ボビン125により極歯23、24と絶縁されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るステッピングモータの極歯の形状を説明する図であり、図1(A)は展開図、図1(B)は平面図、図1(C)は図1(B)の一部拡大図、図1(D)は斜視図である。
【図2】従来の2相PM型ステッピングモータの構造を示す分解斜視図である。
【図3】図2のステッピングモータの断面図である。
【図4】極歯の形状の一例を模式的に説明する図であり、図4(A)は展開図、図4(B)は平面図、図4(C)は斜視図である。
【図5】極歯の形状の他の例を模式的に説明する図であり、図5(A)は展開図、図5(B)は平面図、図5(C)は斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
23、24 極歯
101 ステッピングモータ 110 回転子
111 永久磁石 112 回転軸
120 固定子 121 ステータ
122 ステータヨーク 123、124 極歯
125 ボビン 126 中央ヨーク
127 コイル 129 軸受
130 スラストバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にN極とS極が交互に複数着磁されたロータマグネット及び回転軸を有する回転子と、
該回転子の磁極に対向する複数の磁極を有するステータ及び、該ステータの磁極を磁化するコイルを有し、前記回転子の外周域に配置される固定子と、
を備え、
前記ステータが、複数の極歯の形成されたステータヨーク及び、前記コイルが収容される凹部の形成されたボビンを含み、
前記各極歯と前記ロータマグネットとの間のスキマが周方向に沿って、滑らかに大→小→大と変化するように形成されていることを特徴とするクローポール型ステッピングモータ。
【請求項2】
前記各極歯の内面が平面であり、その形状が台形、山形又は流線型であることを特徴とする請求項1記載のクローポール型ステッピングモータ。
【請求項3】
前記ステータヨークの内周面が略多角形であることを特徴とする請求項1又は2記載のクローポール型ステッピングモータ。
【請求項4】
前記コイルが平角のコイル線を巻き回したものであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のクローポール型ステッピングモータ。
とができ、トルクが向上する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−178178(P2008−178178A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7577(P2007−7577)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(593137554)株式会社東京マイクロ (23)