説明

クローラ型壁面吸着走行ロボット

【課題】 クローラ型壁面吸着走行ロボットの構造の簡素化、走行性能向上
【解決手段】 このクローラ型壁面吸着走行ロボット10は、略矩形のフレーム11の左右両側、内側に、前側と後側に、それぞれ対向させて取り付けた一対のスプロケット12〜15と、スプロケット14を回転駆動させる駆動手段16と、前後左右のスプロケット12〜15に掛け回してフレーム11の内側に張設した、複数のクローラ板51を無端チェーン状に連結したクローラチェーン17と、クローラ板51の外側面に取り付けたベローズ18と、ベローズ18の先端に取り付けた吸着パッド19と、吸着パッド19内の空気を吸引する吸引手段20と、フレーム11の下側に位置するクローラ板の吸引手段を作動させる制御手段21とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクローラ型壁面吸着走行ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な床面はもちろんのこと、垂直な壁面等を自由に走行して各種作業を行うための作業ロボットとして、左右一対のクローラを走行壁面に吸着させるようにしたクローラ型壁面吸着走行ロボットが提案されている。
【0003】
例えば、特開平5−4594号のクローラ型壁面吸着走行ロボットは、フレームの前後に取り付けた回転軸に、それぞれ回転自在に左右一対のスプロケットを取り付け、斯かるスプロケットに無端チェーンを巻き掛けたものである。無端チェーンは、走行壁面に対して密着し得る吸着パッドを先端に備えたベローズを備えている。そして、走行に伴い、走行壁面に当接するベローズを真空引きして、当該ベローズの吸着パッドを走行壁面に吸着させる構造を備えている。
【特許文献1】特開平5−4594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平5−4594号公報に開示されたものは、フレームにスプロケットの回転軸を横断させて設けており、クローラチェーンに配設する吸気配管や電気系統のケーブルなどを、斯かる回転軸に絡まないように、フレームの外側に配設していた。このため、クローラチェーンに配設する吸気配管や電気系統のケーブルなどの配管や配線が複雑であるとともに、走行時などにおいて、クローラチェーンに配管や配線が引っ掛かったり、絡まったりするなどの不具合が生じる場合があった。また、走行壁面側に当たるフレームの下側に位置するクローラ板に吸引手段のスイッチを取り付けていたが、走行壁面に凹凸がある場合には、クローラ板が上下するため、吸引手段の誤作動が生じ易く、信頼性が低い。また、クローラ型壁面吸着走行ロボットの走行性能も向上を図る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットは、略矩形のフレームの左右両側、内側に、前側と後側に、それぞれ対向させて取り付けた一対のスプロケットと、スプロケットを回転駆動させる駆動手段と、前後左右のスプロケットに掛け回してフレームの内側に張設した、複数のクローラ板を無端チェーン状に連結したクローラチェーンと、クローラ板の外側面に取り付けたベローズと、ベローズの先端に取り付けた吸着パッドと、吸着パッド内の空気を吸引する吸引手段と、フレームの下側に位置するクローラ板の吸引手段を作動させる制御手段とを備えている。
【0006】
この場合、前後のスプロケットの中間部位において、フレームに回転継手を取り付けてクローラチェーンの内側に配設した吸引手段の吸引配管と、フレームの外側に配設した吸引手段の吸引配管を連結してもよい。スプロケットは正方形にしてもよい。クローラチェーンの下側のクローラ板と、フレームとを、弾性的に連結してもよい。また、クローラチェーンの周方向において、吸着パッドの長さをベローズの直径よりも小さくしてもよい。
【0007】
吸引手段を作動させる電気的なスイッチ機構を備え、前後のスプロケットの中間部位においてフレームに電気スリップリングを取り付けて、クローラチェーンの内側に配設した電気配線と、フレームの外側に配設した電気配線を連結してもよい。また、制御手段は、フレームの上側に位置するクローラ板を検知して、検知したクローラ板に基づいてフレームの下側に位置するクローラ板の吸引手段を作動させるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
このクローラ型壁面吸着走行ロボットによれば、略矩形のフレームに対して、フレームの左右両側の内側に、前側と後側に、それぞれ対向させて取り付けた一対のスプロケットを取り付け、前後左右のスプロケットにクローラチェーンを掛け回してフレームの内側に張設したので、スプロケットの回転軸がフレームを横断していない。このため、クローラチェーンに配設する吸気配管や電気系統のケーブルなどを、フレームに装着したクローラチェーンの内側に配設することができる。これにより、クローラチェーンに配設する吸気配管や電気系統のケーブルなどの配管や配線を簡単にでき、また、配管や配線を出来る限りクローラチェーンの内側に配設できるので、走行時などにおいて、クローラチェーンに配管や配線が引っ掛かったり、絡まったりするのを防ぐことができる。
【0009】
また、前後のスプロケットの中間部位において、フレームに回転継手を取り付けてクローラチェーンの内側に配設した吸引手段の吸引配管と、フレームの外側に配設した吸引手段の吸引配管を連結したものは、回転継手により、クローラチェーンの走行に追従して、クローラチェーンの内側に配設した吸引配管が回転するので、クローラチェーンの内側に配設した吸引配管がクローラチェーンの内側で絡むのを防止することができる。
【0010】
また、スプロケットを正方形にしたものは、スプロケットに対するクローラチェーンの引っ掛かりを良くすることができ、クローラ型壁面吸着走行ロボットの走行性能を向上させることができる。
【0011】
また、クローラチェーンの下側のクローラ板と、フレームとを、弾性的に連結したものは、垂直な壁面を走行させる場合でも、ばねの弾性反力により重力に抗してクローラチェーンの下側のクローラ板に、フレームを引き付けることができる。これにより、垂直な壁面を走行させる場合にも、吸着パッドに掛かる負荷を低く抑えることができ、クローラ型壁面吸着走行ロボットの走行を安定させることができる。
【0012】
また、クローラチェーンの周方向において、吸着パッドの長さをベローズの直径よりも小さくしたものは、走行時に走行壁面に対して吸着パッドがスムーズに接離するので、クローラ型壁面吸着走行ロボットの走行性能を向上させることができる。
【0013】
吸引手段を作動させる電気的なスイッチ機構を備え、前後のスプロケットの中間部位においてフレームに電気スリップリングを取り付けて、クローラチェーンの内側に配設した電気配線と、フレームの外側に配設した電気配線を連結したものは、電気スリップリングにより、クローラチェーンの走行に追従して、クローラチェーンの内側に配設した電気配線が回転するので、クローラチェーンの内側に配設した電気配線がクローラチェーンの内側で絡むのを防止することができる。
【0014】
また、フレームの上側に位置するクローラ板を検知して、検知したクローラ板に基づいてフレームの下側に位置するクローラ板の吸引手段を作動させるように制御手段を構成したものは、走行壁面の凹凸に左右されないフレームの上側に位置するクローラ板を検知するので、走行壁面の凹凸に左右されず、確実に走行壁面側に当たるフレームの下側のクローラ板の吸引手段を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットを図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係るクローラ型壁面吸着走行ロボット10は、図1、2に示すように、フレーム11と、スプロケット12〜15と、スプロケット12〜15を回転駆動させる駆動手段16と、クローラチェーン17と、ベローズ18と、吸着パッド19と、吸着パッド19内の空気を吸引する吸引手段20と、吸引手段20を作動させる制御手段21を備えている。
【0017】
フレーム11は、図3に示すように、矩形のフレームであり、この実施形態では、左右両側の長辺を構成する中空角棒31、32で、前後両側の短辺を構成する断面L字形の片材33、34を矩形に組み付けて、前後両側に対して左右両側が長い長方形の枠組みを構成している。
【0018】
フレーム11の左右両側の内側には、前側と後側に、それぞれ対向させて一対のスプロケット12〜15を取り付けている。この実施形態では、スプロケット12〜15は、図4(a)(b)に示すように、略正方形で片面に、スプロケット12〜15よりも少し大きい正方形のスラスト板36〜39を取り付けており、中心に回転軸40を取り付けている。スプロケット12〜15は、図3に示すように、スラスト板36〜39を取り付けた側をフレーム11の左右両内側に向け、スプロケット12〜15をフレーム11の内側に向けて、回転軸40をフレーム11に回転自在に取り付けている。スラスト板36〜39は、スプロケット12〜15が左右に振れ動くのを押さえる機能を備えている。
【0019】
また、この実施形態では、フレーム11の後部片側に取り付けたスプロケット14は、図1、図3に示すように、スラスト板38の外側でフレーム11との間に駆動モータ41から動力を受ける歯車42を装着している。斯かる歯車42を装着した側では、フレーム11の前側に取り付けられるスプロケット12のスラスト板36とフレーム11との間にスペーサ43を装着している。スプロケット14を回転駆動させる駆動手段16としての駆動モータ41は、フレーム11に取り付け、スプロケット12〜15に取り付けた歯車42に、駆動モータ41の出力軸に取り付けた歯車44を噛合させている。これにより、フレーム11の後部片側のスプロケット14が駆動スプロケットとなり、他のスプロケット12、13、15が従動スプロケットとなっている。
【0020】
クローラチェーン17は、図1、図5に示すように、複数のクローラ板51を無端チェーン状に連結したものであり、フレーム11の前後左右に取り付けたスプロケット12〜15に掛け回して張設している。この実施形態では、図6に示すように、クローラ板51は、クローラチェーン17の内側において蝶番55で連結している。前述したスプロケット12〜15の一辺の長さは、クローラチェーン17のクローラ板51が引っ掛かるように、クローラチェーン17の一つのクローラ板51の長さに合わせている。また、フレーム11に取り付けた左右のスプロケット12〜15の間隔は、クローラ板51の幅に合わせている。また、フレーム11の前後に取り付けたスプロケット12〜15の間隔は、前後のスプロケット12〜15にクローラ板51を引っ掛けた状態で、クローラチェーン17を適切に張設できるように設定している。
【0021】
ベローズ18は、図1、5に示すように、クローラ板51の外側面に取り付けたものである。この実施形態では、ベローズ18は、蛇腹部分に弾性付勢手段としてのばねを組み込んでおり、ベローズ18をクローラ板51に取り付けたとき、ベローズ18に外力が作用しない状態では、ベローズ18が立ち上がるようになっている。なお、ベローズ18は、外力が作用しない状態でクローラ板51から立ち上がり、かつ、走行時に、ベローズ18の先端に取り付けた吸着パッド19が走行壁面1に対してスムーズに接離するように、長さや弾性を設定している。
【0022】
吸着パッド19は、ベローズ18の先端に取り付けている。この実施形態では、吸着パッド19は、図7(a)(b)に示すように、パッドベース61と、パッドベース61の外側面の周縁部にシールリング62を装着している。シールリング62は、走行壁面1に多少の凹凸がある場合でも、シールリング62が走行壁面1に密着できるように、弾性変形可能な発泡樹脂などで構成している。パッドベース61は、中央部にベローズ18内に連通する吸引穴63を形成している。また、パッドベース61には走行壁面1に吸着する側の面にゴム板64を取り付けている。このゴム板64は、図1に示すように吸着パッド19を真空引きしたときに、走行壁面1に密着してクローラ型壁面吸着走行ロボット10の自重を支持し、シールリング62が過度に圧縮されたり、シールリング62に過度の剪断力が作用したりして、シールリング62が破損するのを防止している。また、ゴム板64の他の機能としては、パッドベース61を走行壁面1から少し浮かせ、吸着パッド19内をより確実に真空引きすることができるようにするとともに、吸着パッド19のすべり止めとなっている。なお、図7(a)中の65は、ベローズ18を取り付けているビスである。
【0023】
また、この実施形態では、クローラチェーン17の周方向において、吸着パッド19の長さをベローズ18の直径よりも小さくしている。この吸着パッド19は、図7(a)に示すように、略矩形であり、走行時に吸着パッド19が走行壁面1に対してスムーズに接離するように、クローラチェーン17の回転方向の長さは、ベローズ18の直径に対して80%〜90%の長さにしており、クローラチェーン17の幅方向の長さは、ベローズ18の直径に対して150%〜200%の長さにしている。
【0024】
吸着パッド19内の空気を吸引する吸引手段20は、この実施形態では、図7(b)に示すように、エジェクタポンプ71と、外部のコンプレッサ73で構成している。エジェクタポンプ71は、クローラチェーン17の内側において各クローラ板51に取り付けており、クローラ板51に開けた穴51aにエジェクタポンプ71の吸引配管71aを連結している。これにより、エジェクタポンプ71と、ベローズ18および吸着パッド19を連通している。エジェクタポンプ71は、コンプレッサ73に連結され、コンプレッサ73から圧縮空気の供給を受けて内部で負圧を形成し、吸着パッド19内の空気を吸引するものである。このエジェクタポンプ71は、図示は省略するが電磁弁が付いており、外部のコンプレッサ73に連結され、電気的なスイッチ機構により、スイッチがONになったときに、ベローズ18および吸着パッド19を真空引きするようになっている。
【0025】
この実施形態では、各エジェクタポンプ71は、図6に示すように、クローラチェーン17の内側に配設した可撓性を有する無端連結管72に連結している。そして、無端連結管72の一端に接続管74を取り付け、伸縮可能な螺旋配管75を取り付けている。螺旋配管75は、図8に示すように、前後のスプロケット12、14の中間部位にフレーム11に取り付けた回転継手76を介して、クローラチェーン17の内側に配設したエジェクタポンプ71に連結した無端連結管72と、フレーム11の外側に配設したコンプレッサ73の圧縮空気供給配管77を連結している。
【0026】
すなわち、この無端連結管72は、螺旋配管75および回転継手76を介してフレーム11の外側に配設したコンプレッサ73の圧縮空気供給配管77に連結している。螺旋配管75を採用しているので、クローラチェーン17の回転に伴って、螺旋配管75の一端を連結している無端連結管72の連結部と、フレーム11に取り付けた回転継手76との距離が刻々と変動するが、螺旋配管75の伸縮により斯かる変動を吸収することができる。また、螺旋配管75のフレーム11側の基端に回転継手76を取り付けているので、クローラチェーン17が回転しても、螺旋配管75が捩れることがなく、クローラチェーン17の回転を阻害しない。
【0027】
次に、吸引手段20を作動させる制御手段21は、走行壁面1側に当たるフレーム11の下側に位置するクローラ板51の吸引手段20としてのエジェクタポンプ71を作動させるものである。この場合、フレーム11の下側に位置し、ベローズ18を真空引きすべきクローラ板51を検知して、当該クローラ板51のエジェクタポンプ71を作動させるようにすることができる。しかし、フレーム11の下側のクローラ板51は、走行壁面1に凹凸がある場合には、これに追従してフレーム11に対して上下するので、フレーム11に対するクローラ板51の位置が不安定である。このため、クローラ板51の検知の仕方によっては、ベローズ18を真空引きすべきクローラ板51を適切に検知できない場合が生じる。
【0028】
そこで、この実施形態では、制御手段21は、フレーム11の上側に位置するクローラ板51を検知して、検知したクローラ板51に基づいて、フレーム11の下側に位置するクローラ板51の吸引手段20を作動させるように構成している。具体的には、図9に示すように、クローラ板51に取り付けたエジェクタポンプ71を作動させる電磁弁のスイッチ81を、クローラチェーン17上の回転対称位置にあるクローラ板51に取り付けている。図示は省略するが、当該回転対称位置にあるスイッチ81と、クローラ板51に取り付けたエジェクタポンプ71を連結する電気配線82は、クローラチェーン17の内側に沿って配線している。そして、斯かるスイッチ81を設けたクローラ板51がフレーム11の上側に位置するときに、当該クローラ板51に取り付けた電磁弁のスイッチ81をONにして、クローラチェーン17上の回転対称位置にあるクローラ板51のエジェクタポンプ71を作動させている。
【0029】
この実施形態では、図9に示すように、クローラ板51に設けたスイッチ81は、クローラ板51の内側面に右側に電気的なスイッチ81を取り付けており、これに対して、スイッチ81のON/OFFを切り替える操作板83をフレーム11の枠材31の上に立設させている。
【0030】
上記の構成により、フレーム11の上側に位置するクローラ板51を検知して、検知したクローラ板51に基づいて、フレーム11の下側に位置するクローラ板51の吸引手段20を作動させるようにしたので、走行壁面1に凹凸があり、下側のクローラ板51が上下する場合でも、適切に走行壁面1に当接しているクローラ板51のエジェクタポンプ71を作動させることができる。これにより、走行壁面1の凹凸に追従して、フレーム11の下側に位置するクローラ板51の吸着パッド19を適切に走行壁面1に吸着させることができる。
【0031】
この制御手段により、走行壁面1側に当たるフレーム11の下側に位置するクローラ板51のエジェクタポンプ71を確実に作動させることができ、走行壁面1に当接した吸着パッド19を確実に真空引きすることができるので、当該吸着パッド19を確実に走行壁面1に吸着させることができる。これにより、例えば、走行壁面1が垂直な壁面であってもクローラ型壁面吸着走行ロボット10を走行させることができる。
【0032】
また、斯かるエジェクタポンプ71の電磁弁を作動させる電気系統の配線82は、図6に示すように、無端連結管72に沿って配設している。そして、無端連結管72の一端で一つに纏めた配線82は、図8に示すように、無端連結管72に取り付けた螺旋配管75に沿って配線し、前後のスプロケット12、14の中間部位において、中空の電気スリップリング84を、外部コンプレッサ73の圧縮空気供給配管77の回転継手76と同軸に取り付けて、フレーム11の外側に配設した電気配線85を連結している。
【0033】
この実施形態では、クローラチェーン17の内側に配設した電気配線82は一つに纏めて螺旋配管75に沿って配線しているので、クローラチェーン17の走行により、クローラチェーン17の内側に配設した電気配線82と、フレーム11に取り付けた回転継手76との距離が刻々と変動が、螺旋配管75と同様に伸縮により斯かる変動を吸収することができる。また、前後のスプロケット12、14の中間部位においてフレーム11に電気スリップリング84を取り付けて、クローラチェーン17の内側に配設した電気配線84と、フレームの外側に配設した電気配線85を連結しているので、クローラチェーン17の走行に追従して、クローラチェーン17の内側に配設した電気配線82が回転したときに、クローラチェーン17の内側に配設した電気配線82がクローラチェーン17の内側で絡むのを防止している。
【0034】
ところで、垂直に近い走行壁面1を走行させる場合、クローラ型壁面吸着走行ロボット10は吸着パッド19の吸着力で支持されているが、自重が背面側に作用し、走行壁面1からクローラ型壁面吸着走行ロボット10を引き離すように重力が作用すると、吸着パッド19の吸着力が低下するおそれがある。クローラ型壁面吸着走行ロボット10の重量が軽い場合には問題は生じない場合もあるが、クローラ型壁面吸着走行ロボット10の重量が重い場合や、クローラ型壁面吸着走行ロボット10に付属装置を乗せている場合などでは、走行壁面1に吸着している吸着パッド19に掛かる負担が大きくなり、クローラ型壁面吸着走行ロボット10の姿勢が不安定になる。
【0035】
このため、クローラチェーン17の下側のクローラ板51とフレーム11を弾性的に連結して、フレーム11が吸着側のクローラ板51に引き付けられるようにするとよい。この実施形態では、図1、図9に示すように、フレーム11に取り付けた腕部91で、クローラチェーン17の下側のクローラ板51と、フレーム11を弾性的に連結している。腕部91の上端92は蝶番を介してフレーム11に取り付けてあり、腕部91の下端は蝶番を介して、クローラチェーン17の下側のクローラ板51を下支えする支持部93を取り付けている。腕部91の中間部と、フレーム11との間にばね94を伸張させた状態で取り付けている。この腕部91およびばね94は、垂直に近い走行壁面1を走行させる場合、ばね94の弾性反力で重力に対抗してクローラ型壁面吸着走行ロボット10のフレーム11を、フレーム11の下側に位置するクローラ板51に引き付ける。これにより、クローラ型壁面吸着走行ロボット10の姿勢を、走行壁面1に近づけることができ、重力の作用を緩和し、走行壁面1に吸着している吸着パッド19に掛かる負担を小さくすることができる。これにより、垂直な壁面を走行させるときでもクローラ型壁面吸着走行ロボット10の走行を安定させることができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットを説明したが、本発明に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットは上記実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、制御手段21は、フレーム11の上側に位置するクローラ板51を検知して、検知したクローラ板51に基づいて、フレーム11の下側に位置するクローラ板51の吸引手段20を作動させるように構成として、クローラ板51に取り付けたエジェクタポンプ71を作動させる電磁弁のスイッチ81を、クローラチェーン17上の回転対称位置にあるクローラ板51に取り付けたものを例示したが、これには限定されない。例えば、フレーム17の上側の所定位置において、当該所定位置を通過したクローラ板51を検知し、このクローラ板51に基づいて、フレーム17の下側で作動させるエジェクタポンプ71が抽出されるようにしてもよい。
【0038】
また、スプロケットを回転駆動させる駆動手段や、吸着パッド内の空気を吸引する吸引手段や、クローラ板の吸引手段を作動させる制御手段は、それぞれ公知の他の形態を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットを示す側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットを示す平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットのフレームを示す平面図。
【図4】(a)は本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットのスプロケットを示す平面図、(b)はスプロケットの側面図。
【図5】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットのクローラチェーンを示す側面図。
【図6】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットのクローラチェーンの内側を示す図。
【図7】(a)は本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットのクローラ板の底面図。(b)はそのA−A断面図。
【図8】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットの螺旋配管の連結構造を示す図。
【図9】本発明の一実施形態に係るクローラ型壁面吸着走行ロボットのB−B横断端面図。
【符号の説明】
【0040】
1 走行壁面
10 クローラ型壁面吸着走行ロボット
11 フレーム
12-15 スプロケット
16 駆動手段
17 クローラチェーン
18 ベローズ
19 吸着パッド
20 吸引手段
21 制御手段
36-39 スラスト板
40 回転軸
41 駆動モータ
42 歯車
43 スペーサ
44 歯車
51 クローラ板
61 パッドベース
62 シールリング
63 吸引穴
64 ゴム板
71 エジェクタポンプ
71 各エジェクタポンプ
72 無端連結管
73 コンプレッサ
74 接続配管
75 螺旋配管
76 回転継手
77 圧縮空気供給配管
81 スイッチ
82 電気配線
83 操作板
84 スリップリング
91 腕部
92 上端
93 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形のフレームと、
前記フレームの左右両側の内側に、前側と後側に、それぞれ対向させて取り付けた一対のスプロケットと、
前記スプロケットを回転駆動させる駆動手段と、
前記前後左右のスプロケットに掛け回してフレームの内側に張設した、複数のクローラ板を無端チェーン状に連結したクローラチェーンと、
前記クローラ板の外側面に取り付けたベローズと、
前記ベローズの先端に取り付けた吸着パッドと、
前記吸着パッド内の空気を吸引する吸引手段と、
前記フレームの下側に位置するクローラ板の吸引手段を作動させる制御手段と、
を備えたクローラ型壁面吸着走行ロボット。
【請求項2】
前後のスプロケットの中間部位において、フレームに回転継手を取り付けてクローラチェーンの内側に配設した吸引配管と、フレームの外側に配設した吸引配管を連結したことを特徴とする請求項1に記載のクローラ型壁面吸着走行ロボット。
【請求項3】
前記スプロケットを正方形にしたことを特徴とする請求項1に記載のクローラ型壁面吸着走行ロボット。
【請求項4】
クローラチェーンの下側のクローラ板と、フレームとを、弾性的に連結したことを特徴とする請求項1に記載のクローラ型壁面吸着走行ロボット。
【請求項5】
前記クローラチェーンの周方向において、吸着パッドの長さをベローズの直径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のクローラ型壁面吸着走行ロボット。
【請求項6】
前後のスプロケットの中間部位においてフレームに電気スリップリングを取り付けて、クローラチェーンの内側に配設した電気配線と、フレームの外側に配設した電気配線を連結したことを特徴とする請求項1に記載のクローラ型壁面吸着走行ロボット。
【請求項7】
前記制御手段は、フレームの上側に位置するクローラ板を検知して、検知したクローラ板に基づいてフレームの下側に位置するクローラ板の吸引手段を作動させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のクローラ型壁面吸着走行ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−30852(P2007−30852A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221640(P2005−221640)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(503452867)有限会社ピノキオ (10)