説明

クーラント処理装置

【課題】 クリーン槽における異物の堆積、滞留を抑止したクーラント処理装置を提供する。
【解決手段】 工作機械2のから切屑とクーラントをダーティ槽10で受け、濾過ドラムにより濾過されたクーラントを第1クーラント槽20で受ける。クーラントは結合路40を経由して、第2クーラント槽30に導入される。第2クーラント槽30においては、周囲の壁から離れた平面視中央付近にポンプ31が設けられており、第2クーラント槽30からクーラントを汲み上げて工作機械2にクーラントを循環させている。第2クリーン槽30にはポンプ31を中心とした渦が発生し、槽内における異物を吸い上げるため、第2クリーン槽30における異物の堆積、滞留を抑止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から排出される切屑とクーラントを分離するクーラント処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のクーラント処理装置は、例えば、特許文献1に記載の濾過装置がある。この装置は、工作機械から排出される切屑及びクーラントをダーティ槽にて受け、スクレーパコンベアを周回させ、沈下している切屑をかき上げて切屑投棄口から投棄するものである。
【0003】
この際、スクレーパコンベアの途中に設けられた濾過ドラムによってクーラントを濾過し、濾過されたクーラントを4角形状のクリーン槽に貯溜する。クリーン槽のクーラントは、工作機械に送られて再利用されることにより、循環する。
【0004】
ダーティ槽とクリーン槽との間に配置される濾過ドラムは、外周に濾過フィルタを有しており、スクレーパコンベアにほぼ同期して回転し、濾過ドラムの外周から内側にクーラントが移動する間にクーラントを濾過する。濾過されたクーラントは、濾過ドラムの両端部からクリーン槽へ送られる。
【0005】
また、特許文献2には、ダーティ槽の両側にクリーン槽を設け、濾過ドラムで濾過されたクーラントを両側のクリーン槽に導入するとともに、片側のクリーン槽で受けたクーラントを一方の側に送り、一方の側に配置されたポンプにより工作機械へ循環供給するクーラント処理装置が開示されている。
【特許文献1】特許第2904334号公報
【特許文献2】特開2005−14179公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のクリーン槽は、角型のものであり、異物が角部に堆積、滞留していた。堆積した異物は、腐敗臭を発し、工作機械独特の悪臭を周囲に漂わせる原因となるため、クリーン槽を定期的に清掃しなければならないが、角部となる場所が多く、清掃に時間がかかるという問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、クリーン槽における異物の堆積、滞留を抑止したクーラント処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、本発明は、工作機械から排出される切屑とクーラントを受けるダーティ槽と、前記ダーティ槽のクーラントに浸漬され前記クーラントを内部に取り込む途中で濾過する濾過ドラムと、ダーティ槽の第1側面に設けられ、ダーティ槽の第1側面に設けられた開口を経由して前記濾過ドラムの内部空間から連通する経路を有する第1クーラント槽と、ダーティ槽の第2側面に設けられ、周囲を側壁で囲われた第2クーラント槽と、前記第1クーラント槽と第2クーラント槽に連通する結合路と、第2クーラント槽の周囲の壁から離れて平面視中央付近に設けられ、第2クーラント槽からクーラントを汲み上げて前記工作機械にクーラントを循環させるポンプとを有し、前記結合路は、その後方側の側壁面が前記第2クーラント槽の後方側の側壁の面に連続して延長されており、かつ前記第2クーラント槽の後方側の側壁から前方側を経てダーティ槽側の側壁に至る側壁は凹曲面を含む連続的な面として構成されていることを特徴とするクーラント処理装置。
【発明の効果】
【0009】
この構成により、第2クリーン槽にはポンプを中心とした渦が発生し、槽内における異物を吸い上げるため、クリーン槽における異物の堆積、滞留を抑止したクーラント処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
本実施例において使用されるクーラントは、水を主体とした親水性の液体である。
図1に、本実施例によるクーラント処理装置1を示す。クーラント処理装置1は、図1Aに破線で示す工作機械2の後方(図中右側)に配置される。工作機械2においては、歯具3や被加工物にクーラントを供給しながら、切削加工を行う。クーラントと切削により発生した切屑は、ダーティ槽10の先端部の開口11に落される。ダーティ槽10は、工作機械2の後ろ側に伸びており、その内部にはスクレーパを多数設けたスクレーパコンベア(図示せず)が矢印イ方向に周回している。ダーティ槽10の底に沈下した切屑をスクレーパでかき出し、工作機械2の後方に位置する切屑投棄口12までかき上げて、バケット(図示せず)に投棄する。スクレーパの各々は、無端チェーン機構に取付けられており、切屑投棄口12の横壁に設置された駆動系装置13により周回駆動される。
【0011】
工作機械2の後方において、ダーティ槽10の両側面にクリーン槽が2つに分離されて設けられており、図中下側側面のクリーン槽を第1クリーン槽20、上側側面のクリーン槽を第2クリーン槽30と呼ぶ。第1クリーン槽20から第2クリーン槽30へは、ダーティ槽10の後端において結合路40が設けられている。第1クリーン槽20及び第2クリーン槽30とも、平面視において、曲線となった周壁を有している。第1クリーン槽20、ダーティ槽10、第2クリーン槽30を合わせた幅W1は、工作機械2の幅W2と等しく、又は小さくなっており、これにより、複数の工作機械を縦列に配置した際の設置効率を良くするものとなっている。
【0012】
第2クリーン槽30の周壁に囲まれた中心付近には、第1ポンプ31が設置されており、その後方には、オイルスキマー34が設置されている。また、結合路40から第2クリーン槽30内の直線上に存在する周壁部分35の前方には、第2ポンプ32が設置されており、かつその後方には液面の高さを測定するフロート33が設けられている。第1ポンプ31および第2ポンプ32からは、工作機械2に向けて夫々配管が設けられており、第1ポンプ31からの配管36は途中で分岐し、ダーティ槽10及び第2クリーン槽30に導入されている。ここにおいて、第1ポンプ31から取水されるクーラントよりも、第2ポンプ32から取水されるクーラントの方が異物の混入量が少ないが、これについては後述する。
【0013】
図2は、第2クリーン槽30側から見た一部断面図である。ダーティ槽10内部には、スクレーパコンベア60が周回しており、スクレーパコンベア60は、無端チェーン機構61にスクレーパ62を多数設けられている。無端チェーン機構61は、切屑投棄口12に設けられたチェーン回転軸63により回転駆動され、この軸で折り返されて、ダーティ槽10の先端部の開口11に向かう。ダーティ槽10の先端部には、従動軸(図示せず)が設けられており、折り返されて周回駆動されるのである。チェーン回転軸63は、駆動系装置13(図1参照)により動力を得ている。ダーティ槽の左右側壁14、15には、スクレーパコンベア60の搬送方向に直交する方向の軸に支持された2台の濾過ドラム70、80が設けられている。濾過ドラム70、80の一端周には、無端チェーン機構61と噛み合うスプロケット71、81が敷設されており、無端チェーン機構61の周動により回転駆動される。スプロケット71、81には、4箇所、扇型の開口73、83が設けられている(図6参照)。濾過ドラム70、80は、円筒状に巻かれたシート状フィルタ72、82を有しており、ダーティ槽10に漬って、クーラントを円筒内部に濾過するようになっている。本実施例においては、濾過ドラムは2台としているが、装置仕様によっては1台又は3台以上のものとされる場合もある。
【0014】
ダーティ槽10の第1クリーン槽20側の壁14には第1クリーン槽20に至る開口144が設けられている(図中、濾過ドラム80の開口のみ示す。濾過ドラム70側にも同様な開口145(図7参照)がある。濾過ドラム70、80内に濾過されたクーラントはこの開口144、145を通して、第1クリーン槽20に導入される。
【0015】
第1ポンプ31からの配管36は途中で分岐して、配管36a、配管74、84に接続されている。配管36aは、ポンプ31からクーラントを第2クリーン槽30内に案内し、周方向に吐出する。一方、配管74、84は、夫々濾過ドラム70、80の軸となるパイプ軸(後述)に接続して、クーラントを濾過ドラム70、80内に送っている。このようにして送られたクーラントは、ノズル(図中、濾過ドラム80内のノズル85を示した)から、シート状フィルタの内壁面に向けて噴出させている。
【0016】
図3は、ダーティ槽10から第1、2クリーン槽20、30に至るクーラントの流れを示す図である。濾過ドラムから開口73、83を介して第1クリーン槽20へ導入されたクーラントは、ガイド板21により、一端工作機械2側に流れ、曲線を描く前部側壁22を伝わって流れの向きを180度転換される。そして、後部側壁23の曲面により、ダーティ槽後側に設けられた結合路40を流れる方向に転換され、第2クリーン槽30へ導入される。
【0017】
結合路40は、筒状の経路であり、第1クリーン槽20と第2クリーン槽30とを接続している。尚、第1クリーン槽20と第2クリーン槽30、及び結合路40の底面は同一の水平レベルである。
【0018】
第2クリーン槽30ではクーラントを工作機械2側へ循環供給するために、第2クリーン槽30の平面視中央付近において第1ポンプ31がクーラントを汲み上げている。結合路40を経て第2クリーン槽30に流れ込んだクーラントは、側壁35に倣って進行し、方向を変えて第1ポンプ31の横を通り、前方側壁38に至る。側壁38の曲面39により、クーラントの流れは連続的に180度転換する。これらの側壁35、38により、第1ポンプ31を中心として平面左向きの渦が発生する。第1クリーン20槽及び第2クリーン槽30の側壁の形状は曲線を含んで連続しているので、クーラントは第1クリーン槽20及び第2クリーン槽30の凹状の曲面により構成された側壁を伝わって、途中に滞留することなく、第2クリーン槽30の第1ポンプ31に吸い込まれる。
【0019】
第2クリーン槽30には、第2ポンプ32が側壁35の前方に設けられており、結合路40からのクーラントの流れの中央付近から取水する。クーラントの流れの中心付近の流速が早いものであるため、その位置から取水することにより、第1ポンプの取水よりも異物の混入が少ないクーラントを取得できる。この場合において、第2ポンプ32の取水量は第1ポンプ31のものよりも小さいものであり、第1ポンプ31により作られる渦に影響を与えることが少ない。
【0020】
第1クリーン槽20と第2クリーン槽30のクーラントの流路の形状を説明する。
以降、クーラント断面積と言う語を使用するが、これはクーラントの流れる方向にクーラントを垂直に切った断面の面積であり、第1クリーン槽20と第2クリーン槽30及び結合路40の側壁で構成される流路の形状が矩形で無い場合を想定して、本明細書において使用するものとする。尚、第1クリーン槽20と第2クリーン槽30及び結合路40の側壁で構成される流路が垂直に起立した状態であって、クーラント底面が同一高さであるならば、クーラント断面積を規定する部材間の幅と読み替えても良いことは明らかである。
【0021】
第1クリーン槽20は、断面矩形の箱状体であり、幅方向にD3の長さを持っており、この幅をガイド板21により分割されてクーラントの流路が形成されている。ガイド板21は、第1クリーン槽20の底からクーラント液面上まで延長されている。扇形の開口73、83の後ろ位置20aの側壁14にガイド板21が接続しており、クーラント断面積L2を有する断面211を持つ流路として工作機械2側に延びており、手前20bで終端している。ガイド板21の20bの位置においては、クーラントの流れを円滑とするように曲面が形成されており、L2よりも大きなクーラント断面積R1となる断面210の流路が形成されている。第1クリーン槽20の側壁22に倣ってクーラントが流れ、ガイド板21の裏側の流路に至る。開口73、83から流入したクーラントは、第1クリーン槽20の前方壁側22に流れ、曲線を描く前部側壁22を伝わって流れの向きを180度転換し、後部側壁23の曲面により、結合路40を流れる方向に転換される。結合路40の断面200はクーラント断面積L4(第1の断面積)であり、クーラント断面積L3よりも小さく設定されているため、結合路40へ至る手前の領域20cにおける流速も早いものとなっている。
【0022】
第2クリーン槽30は、断面が矩形状の箱状体であり、周囲を底部から垂直に立ち上がった壁で囲まれている。第1ポンプ31は、第2クリーン槽30の中心に設置される。具体的には、第2クリーン槽30の幅方向長さD2の中央であり、長さ方向の長さD3の中央である。第1ポンプ31がクーラントを汲み上げることにより、第1ポンプ31を中心とした渦が第1ポンプ31の回りに発生する。この渦を維持するためには、第2クリーン槽30の形状は、図中、破線で示すように、第1ポンプ31を中心とし、直近の壁を半径する円とするのが良い。しかしながら、ダーティ槽10から第1クリーン槽20に流れ込む水量が円の半径で規定される範囲に蓄えておける水量よりも大きい場合を想定して、第2クリーン槽30の幅として許容できる長さD1までポンプの中心Oを前後O1、O2に、移動した場合の円c1、c2の一部を側壁の凹曲面としている。その結果、直近の壁を半径する円(本実施例の場合、半径L8の円)よりも大きい容量を第2クリーン槽30は有することになる。
【0023】
また、結合路40の流速を早くするため、第2クリーン槽30で作られる渦半径を流れるクーラント断面積(すなわち、第1ポンプ31と壁39、42、50若しくは側壁15とで挟まれたの間隔を流れるクーラント断面積L6、L7)を、結合路のクーラント断面積L4よりも大きくしている。言い換えると、第1ポンプは、少なくとも結合路40のクーラント断面積L4よりも大きなクーラント断面積となるように周囲の壁から離れた位置に置かれている。別な言い方をすれば、第2クリーン槽30は周囲の壁39、42、50、15等が垂直に立ち上がっているため、ポンプ31は少なくとも断面積L4をクーラント液面高さで除した値よりも大きな距離で周囲の壁から離れた位置に置かれている。尚、ポンプ31と壁との間のクーラント断面積の算定に当たっては、ポンプ31の吸い込み口311の直径は含まないものとする。
【0024】
配管36aにより、渦の旋回を補助するように「ハ」方向にクーラントが流されている。配管36aによる流れを強くすれば、上記に規定したクーラントの断面積の関係L4、L6、L7の関係は多少崩れても良くなる。すなわち、断面積L4が断面積L6或いはL7よりも大きくても渦を維持できるようになるが、ポンプ31の能力のうち渦発生のために用いる割合が増加し効率は下がる。
【0025】
結合路40から第2クリーン槽30に入ったクーラントは、結合路40の後側の側壁41が第2クリーン槽の後側の側壁42に連続するものであり、かつ渦の半径を流れるクーラント断面積が結合路40クーラント断面積よりも大きいため、結合路40から流れ込むクーラントは、渦に吸い込まれることになる。曲面を描く壁35の付近では流れこんだクーラントの中心部の流速が早いまま維持されている。クーラントは、壁35に倣って進行し、方向を変えて第1ポンプ31の横を通り、壁38に至る。側壁38の曲面39により、クーラントの流れは連続的に180度転換する。第2クリーン槽30の中央部において、クーラントは第1ポンプ31から汲み上げられる。このように、第1クリーン槽20及び第2クリーン槽30の側壁の形状が曲線を含んで連続しており、クーラントは滞留することなく第1ポンプ20に吸い込まれる。
【0026】
図4は、第1ポンプ31と第2ポンプ32の吸い込み口の位置関係を示す図である。図において、第1ポンプ31は、第2ポンプ32より低い位置H2に吸い込み口311が設定されており、濾過ドラム70、80を通過した細かな異物も吸い上げる。一方、第2ポンプ32の吸い込み口321は、第1ポンプ31の吸い込み口311よりも高い位置H1に設定されており、この位置においては、結合路40から第2クリーン槽30に入った流速の早い状態のクーラントの流れ中心部にあたるため、クーラントの流速が早い。濾過ドラム70、80を通過した細かな異物Qは、クーラントの比重よりも重いため、流れの中心よりも流れの周囲に集まっており、第2ポンプ32は、異物の混入の少ないクーラントを吸い上げることができる。第2ポンプの設置場所としては、結合路40の出口付近が良いが、少なくとも第1ポンプの後方(工作機械2の裏側)に位置し、渦を1/4周回ったところまでの範囲であって、直近の壁から第2ポンプ32までの間を流れるクーラント断面積がL4を越えない位置に設置する。尚、図中、H3、H4は、第2クリーン槽30の最高水位、最低水位を示している。
【0027】
一方、第1ポンプ31から吸い上げられた細かな異物は、工作機械2に導入されたり、再度濾過ドラム70、80のフィルタの洗浄に利用されるが、このように循環している間に、大きな切り屑に付着して、最終的には切屑投棄口12(図1から)掻き出されることになる。
【0028】
図5は、濾過ドラム70、80の中心線断面を示す図である。以下、代表して濾過ドラム70のみを説明するが、濾過ドラム80も同様な構成となっている。濾過ドラム70はダーティ槽10の左右側壁14、15間に固定されるパイプ軸76と、パイプ軸76にベアリング90を介して回転自在に支持される一対の側面部材を有している。この側面部材のうち一方の側面部材はスプロケット71であり、他方の側面部材は円板状部78である。スプロケット71は、ベアリング90に対してボルト93により固定されている。円板状部78には、無端チェーン機構61と噛み合う歯が設けられておらず、スプロケット71の歯の底の位置に対応する半径を持つ円板状となっており、無端チェーン機構61は円板状部78の周上を滑る状態となっている。濾過ドラム70の両側にスプロケットを設けないのは、コスト低減の目的であり、両者をスプロケットとしても良いものである。
【0029】
図6はスプロケット71の正面図である。スプロケット71には、扇状の開口73が4箇所設けられており、この開口73が浄化されたクーラントの通り道となる。一方、円板状部材77は、クーラントの通り道となる貫通孔は存在しない。スプロケット71と円板状部材77―の内側には、濾過フィルターの取り付け桟91が円筒状に設けられており、この取り付け桟91に、フィルター72が捲回状態にされて、交換可能に固定されている。
【0030】
パイプ軸76の一方側には、第1ポンプ31からのクーラント配管74を受けるソケット77が設けられている。また、パイプ軸76には、噴射管75が設けられている。パイプ軸には第2クリーン槽のクーラントが導入されており、噴射管75から濾過ドラムの内側上方に向けてクーラントを噴出する。
【0031】
スプロケット71の外側側面には、軟質ゴム素材のVシール92が、スプロケット71の扇状の開口73が4箇所の外側の円周を囲うように設けられている。一方、パイプ管76のベアリング90外側のハブ97には、円盤状の補強板96、99がボルト94により、固定されている。ダーティ槽の側壁14側の補強板96は、パイプ軸76に固定したさいに、スプロケット71の扇状の開口73の内外半径と同じ位置に開口が重なるように下側に半円扇状の開口98(図7B参照)を有している。ダーティ槽の側壁15側の補強板99には半円扇状の開口は存在しない。また、補強板96、99は、パイプ軸76に固定したさいに、一対の側面部材(スプロケット71、円盤状部材78)に設けられたVシール92と当接し、スライド面を提供するものである。この補強板96のスライド面は、窒化処理されており、板の硬度を上げている。補強板96の周付近には、ダーティ槽10と接続するためのネジ孔142が等角度間隔に設けられており、ダーティ槽10の側壁14に同様に設けられた孔143にボルト95により固定されている。
【0032】
第7図に、濾過ドラム70をダーティ槽10から取り外す様子を示す。図7Aに示すように、ダーティ槽10の側壁14には、扇型の開口144とU字状の溝141が設けられており、この溝141の底部にパイプ軸76が位置している。図示していないが、側壁15には側壁14のU字状に対応する位置に同様のU字状の溝が設けられており、扇型の開口は存在しない。ダーティ槽10の上面を覆う板を取り外すことにより、側壁14と側壁15のU字状の溝の上部が開放され、濾過ドラムへアクセスする作業空間が確保される。
【0033】
そして、円盤状の補強板96の外周付近においてダーティ槽10の側壁14に、補強板96がボルト95により固定されており、これにより、パイプ軸76を支持している。側壁15の側も同様な濾過ドラム70をダーティ槽10から取り外す際には、まず、スプロケット71に掛けられているチェーン61を取り外す。そののち、ボルト95を取り外すことにより、濾過ドラム70は、補強板96、99とともに、ダーティ槽10から分離され、U字溝141を通して取り外すことができる(図7B)。その際、パイプ軸76にパイプ軸76よりも長い棒を差し込んで側壁14、15の外側から、パイプ軸76の両端から突出した棒にワイヤを掛けて上からクレーンにより宙吊り状態とすることにより、簡単に交換することができる。パイプ軸76をダーティ槽10の側壁14、15から突出する長さにしておけば、パイプ軸76に直にクレーンのワイヤを掛けることができる。
【0034】
このように、ダーティ槽10から取り外した濾過ドラム70は、補強板96を有したユニット構成となっている。そのため、補強板96とVシール92の摺動面が破損した際において、ダーティ槽14自体を交換することなく、摺動面を一体化した部品として、ダーティ槽10に取り付けることができる。上記の構成は、濾過ドラム80においても同様である。
【0035】
図8は、オイルスキマー34を示している。オイルスキマー34は、第1ポンプ31の後ろ側の位置で、かつダーティ槽10の壁面15側であって、第2クリーン槽30の側壁からクーラント断面積L4以上を確保するのに必要な位置に離れて配置されている。第2クリーン槽30の側壁からクーラント断面積L4以上としたのは、結合路40から直接、第2クリーン槽30に流入する水流の位置を避けたからである。また、第1ポンプ31の後ろ側としたのは、第1ポンプ31の工作機械2側には、工作機械2への配管36が伸びているからである。
【0036】
ダーティ槽10から回収されたクーラント中には上記加工によって生じたスラッジを含んでいる。スラッジとしては,例えば切粉,微粉スカム等がある。また,このスラッジと共に工作機械2で用いられる油が上記スラッジと共に含まれてくる。これらは、クーラントよりも比重が小さな油に取り込まれ、クーラント液面に夾雑物Pとして浮遊している。これをこのまま放置すると、油にバクテリアが繁殖し,腐食を生じ,異臭が発生する。
【0037】
第2クリーン槽30には、クーラントによる渦が生じており、液面に浮遊した油とスラッジとからなる夾雑物Pが、第1ポンプ31の後方へ流れる。オイルスキマー34は、この位置に流れ着いた夾雑物Pを吸着して取り出す。オイルスキマー34は第2クリーン槽30の中にクーラントに浸漬させて配設した従動ロール101と,従動ロールの上方に配設した戻しロール102と,両者の間に,回動可能に張設した吸着ベルト103とを有する。吸着ベルト103のベルト面は、ダーティ槽10の壁面15側に向けて設定されている。戻しロール102には,駆動用モータ(図示せず)が接続されている。
【0038】
戻しロール102から戻ってくる吸着ベルト103の側面には,夾雑物P及び水分からなる混合物が吸着しており、これを掻きとるための掻き取りシュート104を有する。また,掻き取りシュート104の下方には,混合物中に含まれている夾雑物とクーラントとを分離するための分離タンク105を有している。
【0039】
図8Bは、図8Aのハ−ハの面において、掻き取りシュート104を吸着ベルト側から見た図である。シュート104は吸着ベルト103のベルト幅に広がったV字状の面を有しており、この面によって吸着ベルトに付着した夾雑物及び水分を掻き取る。V字状の面であるため、ベルト面の周方向に対して垂直の方向から夾雑物を掻き取る方向成分を有することになり、掻き取り効率が向上する。掻き取った夾雑物は、V字状の谷に集まって重量を増加して落下するため、分離タンク105に落下しやすくなる。このようなV字状のシュートに変えて、図8Cに示すような、U字状のシュートも採用することができる。このようなシュートによっても、ベルト面の周方向に対して垂直の方向から夾雑物を掻き取る方向成分を有しており、掻き取り効率が向上させることができる。V字状にしても、U字状にしても吸着ベルトに当接する面の形状が中央部で凹み形状であれば、掻き取り効率の向上が見込める。
【0040】
図9は、チェーン61を駆動する駆動系装置13の取り付け構造を示す図である。モータ110は減速機112と一体的に固定されており、駆動系装置13を構成している(図9B)。基台113は、切屑投棄口12の一方側の側壁に取り付けられている。基台113には、チェーン回転軸6の軸枠118(図9D)を「ヘ」方向に案内するスライドレール114が上下一対設けられており、軸枠118は位置を「ヘ」方向に変更できるようになっている。チェーン回転軸6の位置の調整は、調整ネジ120によって行われる。調整ネジ120は、基台113の側壁122に設けられたナット121に螺合しており、調整ネジ120を回転させることにより軸枠118を「ヘ」方向に移動させる。一方、モータ枠111(図9C)は、上下のスライドレール114の間を摺動する上下側面111aを有している。駆動系装置13、モータ枠111の開口111bを通して、チェーン回転軸6に連結しているが、それ以外の場所では基台113にもモータ枠119にも固定されていない。この結果、駆動系装置13全体がチェーン回転軸63を中心として回動可能となっている。
【0041】
モータ軸123は、減速機112内の歯車の機構により回転方向を垂直に変換されている。本実施例の減速機112においては、ハイボイドギアにより回転の方向を変換している。この他の減速機として、ウォームギア、ネジ歯車のくいちがい軸歯車、かさ歯車を利用した減速機も存在している。
【0042】
モータ枠111は、モータ110を下から支えて図面の紙面においてモータ110の上下位置を調整する支えボルト109と、モータ110の上側に延長した腕部119を構成する部分を有している。腕部119は、外周に螺子山が設けられた円筒のスプリングケース119aがさらに設けられている。袋ナット119bは、スプリングケース119aの外周の螺子山に螺合し、スプリングケース119a内に挿入されるスプリング119cの一端が当接されている。スプリング119cの他端は、ロッド124に接続しており、ロッド124の先端には、モータ110の側面に当接するコロ124aが設けられている。従って、モータ110は、支えボルト109とコロ124aとの間に挟まれている状態である。
【0043】
スプリング119cの荷重は、無端チェーン機構61が通常負荷のときには、モータ110が支えボルト109に当接するように、設定がされる。この設定は、袋ナット119bを回転させてスプリング119cの縮み量を調節することによって行う。この設定によってモータ本体が、適正負荷の状態下においては、チェーン回転軸63の回りに回転移動しないように制限している。一方、無端チェーン機構61の負荷が通常負荷を超えたときに、モータ110がチェーン回転軸63を中心に回動移動をする。モータ枠111には近接スイッチ(図示せず)が設けられており、近接スイッチがロッド124の動きを検知するものとされている。異常負荷時に、モータ110がチェーン回転軸63を中心に回動移動すると、ロッド124が「ホ」方向に押し上げられ、近接スイッチが異常を電気的に検知する。この検知情報は、モータ110の主電源制御回路(図示せず)に伝えられて、モータ110の運転を停止させる。
【0044】
この例においては、モータ台111の動きを検知したが、駆動系装置13全体が回動可能となっているため、駆動系装置13のいずれか位置で検知すれば良い。スプリング119cの代わりに他の弾性体を利用できるのはもちろんのことである。
【0045】
異常負荷時におけるモータ110の異常電流を検出する方法では、モータ110内に異常電流が流れてしまってから異常検出となるが、この構成によれば、モータ軸123がまだ回転している最中に異常が検出できるため、モータ110の焼損を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施例のクーラント処理装置を示す図である。
【図2】クーラント処理装置の一部断面図である。
【図3】第1、第2クリーン槽内におけるクーラントの流れを示す図である。
【図4】第1、第2ポンプの設置状況を示す図である。
【図5】濾過ドラムの断面図である。
【図6】スプロケットの正面図である。
【図7】濾過ドラムを取り外す状況を示す断面図である。
【図8】オイルスキマーを示す図である。
【図9】駆動系装置を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1…クーラント処理装置
10…ダーティ槽
13…駆動系装置
20…第1クリーン槽
30…第2クリーン槽
31…第1ポンプ
32…第2ポンプ
34…オイルスキマー
40…結合路
60…無端チェーン機構
70、80…濾過ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械から排出される切屑とクーラントを受けるダーティ槽と、
前記ダーティ槽のクーラントに浸漬され前記クーラントを内部に取り込む途中で濾過する濾過ドラムと、
ダーティ槽の第1側面に設けられ、ダーティ槽の第1側面に設けられた開口を経由して前記濾過ドラムの内部空間から連通する経路を有する第1クーラント槽と、
ダーティ槽の第2側面に設けられ、周囲を側壁で囲われた第2クーラント槽と、
前記第1クーラント槽と第2クーラント槽に連通する結合路と、
第2クーラント槽の周囲の壁から離れて平面視中央付近に設けられ、第2クーラント槽からクーラントを汲み上げて前記工作機械にクーラントを循環させるポンプとを有し、
前記結合路は、その後方側の側壁面が前記第2クーラント槽の後方側の側壁の面に連続して延長されており、かつ前記第2クーラント槽の後方側の側壁から前方側を経てダーティ槽側の側壁に至る側壁は凹曲面を含む連続的な面として構成されていることを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項2】
請求項1のクーラント処理装置において、前記第2クーラント槽の後方側の側壁から前方側を経てダーティ槽側の側壁に至る側壁は、前記ポンプを中心とし、前記ポンプに直近の第2クーラント槽の側壁との間隔を半径とする円の範囲よりも大きい範囲を囲む凹曲面を含む連続的な面で構成されていることを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項3】
請求項1のクーラント処理装置において、前記第1クーラント槽は、第1クーラント槽の底面から延長され前記ダーティ槽の第1側面に並列したガイド板を有し、前記ガイド板は前記濾過ドラムから流入したクーラントを前記ダーティ槽の第1側面側では前記第1クーラント槽の前方に向けて案内し、前記ダーティ槽の第1側面から離れた側では前記第1クーラント槽の後方に向けて案内することを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項4】
請求項1のクーラント処理装置において、前記結合路から流出したクーラントが、前記第2クーラント槽の後方側の側壁から前記ポンプを1/4周回るまでの間の位置に、前記ポンプよりも高い位置からクーラントを汲み出す第2ポンプが設けられていることを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項5】
請求項1のクーラント処理装置において、前記ダーティ槽内を周回し、工作機械から排出された切り屑を搬送するスクレーパコンベアと、前記スクレーパコンベアの駆動軸を駆動する駆動系装置とを有し、さらに前記駆動系装置はスクレーパコンベアの駆動軸の回りに回動可能に設置されており、第1の弾性力でもって前記駆動系装置の回動を抑止する弾性体と、前記第1の弾性力を超える前記駆動系装置を回動させる力が加わったときに、前記駆動系装置の回動移動を検知するスイッチと、前記スイッチが回動移動を検知すると前記駆動系装置の回転を停止させる手段とを有することを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項6】
請求項1のクーラント処理装置において、前記濾過ドラムは、パイプ軸と、パイプ軸に回転自在に支持された一対の側面部材と、一対の側面部材の外側面円周上に設けられた一対の弾性シールと、前記パイプ軸に固定され、前記一対の側面部材に対面して外側に設けられた一対の補強板であって、前記弾性シールの摺動面が設けられた補強板とを有し、前記ダーティ槽の第1側面とその対面となる第2側面の間に、前記一対の補強板を設定して固定することを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項7】
請求項1の浮遊夾雑物回収装置において、前記結合路は濾過されたクーラントを第1の断面積で流す経路であって、前記ポンプと周囲の壁とは、これらの間のクーラントが前記第1の断面積よりも大きな断面積を持つように配置されていることを特徴とするクーラント処理装置
【請求項8】
請求項7のクーラント処理装置において、前記ポンプの後ろ側の位置で、かつダーティ槽の第2側面側に配置され、第2クリーン槽内のクーラント液面上下にベルトを周回させるオイルスキマーであって、当該オイルスキマーと第2クリーン槽の側壁との間に位置するクーラントが前記第1の断面積よりも大きな断面積を持つように配置されており、かつオイルスキマーは前記ベルトに付着した夾雑物を掻き取るシュートを有し、当該シュートのベルト当接面が中央凹み形状となっていることを特徴とするクーラント処理装置。
【請求項9】
請求項1の浮遊夾雑物回収装置において、前記ポンプからクーラントを第2クリーン槽内に案内し、周方向に吐出させる配管を有することを特徴とするクーラント処理装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−226491(P2009−226491A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70969(P2008−70969)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000133939)テラル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】