クーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置
【課題】簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができるクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置を提供する。
【解決手段】電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極2及び対極3が容器10内で隔膜4を介して配置された測定セル1の検出極2上に所定量の試料液を供給して電解を行うことにより試料液中の測定対象の定量を行うクーロメトリ式測定方法は、対極3、隔膜4及び検出極2を測定セル1の容器10内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、容器10に設けられた該容器10の検出極2が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口15が下側となるように、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向を水平に対して傾斜させた状態で、所定量の試料液を検出極2上に供給して電解を行う構成とする。
【解決手段】電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極2及び対極3が容器10内で隔膜4を介して配置された測定セル1の検出極2上に所定量の試料液を供給して電解を行うことにより試料液中の測定対象の定量を行うクーロメトリ式測定方法は、対極3、隔膜4及び検出極2を測定セル1の容器10内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、容器10に設けられた該容器10の検出極2が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口15が下側となるように、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向を水平に対して傾斜させた状態で、所定量の試料液を検出極2上に供給して電解を行う構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、食品に含まれるビタミンC(還元型アスコルビン酸)、水中の遊離残留塩素などの定量を、迅速且つ簡便に行う方法として、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法(電量分析法)が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
即ち、この方法では、電解液を含浸した導電性多孔質体から成る検出極及び対極を隔膜を介して配置した測定セルに試料液を供給して電解(電気分解)を行い、その時の電気的な変化量(検出極における電圧、電流又は電気量)を測定することにより、試料液中の測定対象成分を定量する。即ち、電解を行った時の電気的な変化量が、試料液中の測定対象成分の量に関係することから、その電気的な変化量を測定することにより、試料液中の測定対象成分を定量することができる。
【0004】
より具体的には、この方法では、検出極及び対極を構成する導電性多孔質物質としてカーボンフェルトを使用し、これらの電極を隔膜としてのイオン交換膜を介して積層状態で配置したクーロメトリ式測定セルが用いられる。即ち、測定セルは、電解液が含浸されたカーボンフェルトから成る検出極を備えた検出極室と、電解液が含浸されたカーボンフェルトから成る対極を備えた対極室とを、イオン交換膜を介して隣接させた状態で有する。そして、典型的には、電極間に一定の電圧を印加した状態で、測定対象成分を含む一定量の試料液をその測定セルの検出極上に直接供給して電解を行い、その電解に伴って流れる電気量を測定する(定電位法,定電圧法)。つまり、測定対象成分の濃度に比例した電解時間と電流の積算値を測定し、その積算値から試料液中の測定対象成分を定量することができる。別法として、電極間に一定の電流を流した状態で電解を行う定電流法を用いることもできる。
【0005】
このように、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法において用いられる測定セルでは、隔膜を介して検出極と対極とが対向して配置されている。検出極及び作用極は、典型的には、無数のカーボン繊維(炭素繊維)からなるカーボンフェルトで形成され、その表面積は非常に大きい。測定を行うには、検出極側に5μl〜100μl程度の一定量の試料液を滴下するのみでよく、一般に20〜30秒で測定は終了する。又、1つの試料液についての測定を終了した後、続けて試料液を滴下して測定することが可能であるため、多検体の測定に適している。
【0006】
例えば、遊離残留塩素を測定する場合、臭化カリウムを含む電解液を用い、試料液を検出極上に滴下すると、次の反応式(1)で示される反応が起きる。
2KBr+Cl2→Br2+2KCl ・・・(1)
【0007】
上記反応式(1)の反応は速やかに進む。そして、下記式のように、上記反応式(1)に従って生じたBr2は検出極において電解によりBr-となり、対極ではその逆の反応が生ずる。
検出極:Br2+2e-→2Br-
対極: Br-→Br2+2e-
【特許文献1】特許第2633280号公報
【特許文献2】特許第2752201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置では次のような問題があった。
【0009】
即ち、試料液を検出極上に供給して静止状態で電解を行うようになっている測定セルを用いて、多検体の測定を繰り返すと、測定値が低下していく傾向がある。
【0010】
この現象の原因は、例えば上述の遊離残留塩素の測定の場合を例として説明すれば、次のように考えられる。
【0011】
即ち、多検体の測定を繰り返すことによって測定セルの検出極が配置された領域の液量が増加し、上記反応式(1)で生成したBr2が検出極を構成する繊維の表面に到達しきれずに残存していき、測定値が低下していくものと考えられる。
【0012】
又、測定セルの一定容積の領域に、定量したサンプルを滴下して測定を行うため、測定を重ねる毎にその領域に液が溜まってしまい、上記反応式(1)に従って生成したBr2の、検出極を構成する繊維の表面への速やかな拡散が阻害され、連続して測定を行うに従って測定値が低下していくものと考えられる。
【0013】
そのため、従来、ある程度測定を重ねた後に、溜まった液を抜き取ったり、新たな電解液を供給して余剰分を抜き取ることで電解液を更新したりする、特別の操作を行う必要があった。そのため、従来は、連続して測定できる検体の数が限られていた。
【0014】
ここで、特許文献1には、測定セルの検出極室及び対極室に連結された電解液流入管及び電解液流出管を設け、上記電解液流入管及び電解液流出管を使用して検出極室及び対極室内の電解液を更新することが記載されている。しかしながら、斯かる構成では、電解液を電解液流入管及び電解液流出管を通して流動させるための機構が必要であり、構成が複雑である。
【0015】
又、特許文献2には、測定セルの検出極室の上に透過膜を介して更に試料室を設けると共に、この試料室に試料の流入出用のキャピラリ及びポンプを接続して、試料を試料室に連続供給することが記載されている。しかしながら、斯かる構成も上記特許文献1の場合と同様に複雑であり、又検出極室内の液の更新を容易に行うことのできる構成ではない。
【0016】
従って、本発明は、簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができるクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は本発明に係るクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極が容器内で隔膜を介して配置された測定セルの前記検出極上に所定量の試料液を供給して電解を行うことにより試料液中の測定対象の定量を行うクーロメトリ式測定方法において、前記対極、前記隔膜及び前記検出極を前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、前記容器に設けられた該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が下側となるように、前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向を水平に対して傾斜させた状態で、前記所定量の試料液を前記検出極上に供給して前記電解を行うことを特徴とするクーロメトリ式測定方法である。本発明の一実施態様によると、前記電解のために定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給して、間欠連続測定を行う。
【0018】
第2の本発明によれば、電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極と、前記検出極と前記対極との間に配置された隔膜と、前記検出極、前記対極及び前記隔膜を収容する容器と、を備えた測定セルと、前記測定セルを支持する支持部を備えた本体と、を有するクーロメトリ式測定装置において、前記対極、前記隔膜及び前記検出極は前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層された状態で配置され、前記容器には該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が設けられており、前記本体に支持された前記測定セルの前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向は前記排出口が下側となるように水平に対して傾斜していることを特徴とするクーロメトリ式測定装置が提供される。
【0019】
上記第2の本発明において、一実施態様によると、クーロメトリ式測定装置は更に、定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給する液供給手段を有する。前記液供給手段は、液を収容可能な複数の液体容器を担持するテーブルと、前記テーブルに担持された前記液体容器からノズルを介して液をサンプリングすると共に、該サンプリングした液を前記ノズルを介して前記測定セルの前記検出極上に供給する分注器と、前記液体容器から液をサンプリングするサンプリング位置と該サンプリングした液を前記測定セルの前記検出極上に供給する供給位置との間で前記ノズルを移動させる移動手段と、を有していてよい。好ましい一実施態様によれば、前記分注器は、前記テーブル上に配列された複数の前記液体容器の隣接する液体容器から順次に液をサンプリングして前記測定セルの前記検出極上に供給するようになっており、前記テーブル上には試料液を収容した複数の前記液体容器が配列されると共に、該試料液を収容した複数の前記液体容器の一定間隔毎に電解液を収容した前記液体容器が配置される。又、好ましい一実施態様によれば、前記テーブルは回転可能であり、複数の前記液体容器は、前記テーブルの回転方向に沿って配列される。
【0020】
又、上記第2の本発明の一実施態様によると、前記排出口を介して排出された液を導く排出路を有する。又、上記第2の本発明の他の実施態様によると、前記排出路内には、前記排出口を介して排出された液が浸透する芯部材が配設されている。更に、上記第2の本発明の好ましい一実施態様によると、前記測定セルは、前記本体に対して着脱可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0023】
実施例1
図1は、本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの要部断面構成を示す模式図である。図2及び図3は、本実施例に従う測定セルのより具体的な構成を示す外観図である。図4は、図2及び図3に示す測定セル1を使用する本実施例のクーロメトリ式測定装置100の外観図である。尚、本実施例では、クーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置は、水中の遊離残留塩素の測定に適用されるものとする。
【0024】
図1を参照して、測定セル1は、電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極(作用極)2及び対極3と、検出極2と対極3との間に配置された隔膜4と、検出極2、対極3及び隔膜4を収容する容器10と、を備えている。又、検出極2に接続された検出極リード線5及び対極3に接続された対極リード線6が容器10内から引き出されている。
【0025】
容器10は、隔膜4を挟んで両側にそれぞれ設けられた検出極室11及び対極室12を有している。そして、検出極室11には検出極用の電解液が含浸された検出極2が充填され、対極室12には対極用の電解液が含浸された対極3が充填されている。対極3、隔膜4及び検出極2は、容器10内において、それぞれの主平面が略平行となるように下からこの順番で積層された状態で配置されている。そして、容器10には、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面の少なくとも一部を容器10の外部に露出させるように、液供給開口部13が設けられている。又、液供給開口部13を画成する縁部14が、環状突出部として検出極2の液が供給される面よりも上方に突出するように設けられている。
【0026】
尚、対極3、隔膜4及び検出極2の主平面は、これらの積層方向に略直交する方向に沿う平面であり、本実施例では、それぞれの両側面と平行な平面である。
【0027】
検出極2及び対極3を構成する導電性多孔質体としては、導電性繊維の集合体が好適に用いられる。又、この導電性繊維の集合体としては、好ましくは、カーボン繊維の集合体であるカーボンフェルト、カーボンクロスなどが用いられる。本実施例では、検出極2及び対極3は、カーボンフェルトで形成した。検出極2及び対極3の形状、大きさは、特に制限されるものではないが、通常、厚さ2mm〜10mm、直径15mm〜50mmの円板状のものを用いることで好結果が得られる。本実施例では、検出極2としては厚さ3mm、直径25mmの円板状のものを用い、対極3としては厚さ5mm、直径24mmの円板状のものを用いた。
【0028】
検出極2及び対極3に含浸される電解液は、測定対象によって選択され、又適宜調整されるものであって、特に制限されるものではないが、一般に、各種のpH緩衝液や、該pH緩衝液に電解補助物質(電子移動媒体)としてKI、KBrなどのハロゲン化物、金属錯体、ハロゲンイオン、錯配位子、酵素などを溶解又は分散させたものが使用される。本実施例では、測定対象は水中の遊離残留塩素である。従って、本実施例では、検出極用の電解液としては、臭化カリウム(KBr)を含む酸性溶液を用いた。又、本実施例では、対極用の電解液としては、臭化カリウム(KBr)を含む酸性溶液を用いた。
【0029】
隔膜4としては、イオン交換膜が好適に用いられる。本実施例では、陽イオン交換膜を用いた。隔膜4は、対極室12を液密的に封止するように容器10に取り付けられている。
【0030】
リード線5、6としては、白金などの貴金属材料から成る導電を好適に用いることができる。リード線5、6の容器10からの引き出し部は液密的に封止されている。
【0031】
斯かる構成の測定セル1を用いて、試料中の測定対象成分、即ち、本実施例では水中の遊離残留塩素を定量する際には、ピペットやシリンジにより計り取った所定量の試料液(水)を、液供給開口部13から直接検出極2上に供給(滴下)する。この時、検出極2と対極3との間に所定の電圧を印加しておくことによって、定電位法による電解が行われる。そして、この時流れる電気量から、試料液(水)中の遊離残留塩素が定量される。前述のように、本実施例では、試料液は検出極2に含浸された電解液と反応し、この反応物が隔膜4を越えて対極3に達することによって測定が可能となる。
【0032】
ここで、前述のように、従来の導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定セルを用いて多検体の測定を繰り返すと、徐々に測定セル1の検出極2が配置された領域、即ち、検出極室11に液が溜まってくる。図11は、従来の測定セルにおいて検出極2上に残液Lが溜まった状態を模式的に示す。尚、図11中、図1に示す測定セル1と同様の機能、構成を有する要素には同じ参照番号を付している。
【0033】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上述のようにして溜まった液を除去すれば、連続して行うことのできる測定の回数を増加させることが可能であることを見出した。
【0034】
そこで、上述のように、電解液が含浸された導電性多孔質体としてのカーボンフェルトから成る検出極2及び対極3が、容器10内で隔膜4を介して配置された測定セル1の検出極2上に、所定量の試料液を供給して電解を行うことにより、試料液中の測定対象の定量を行う、本実施例に係るクーロメトリ式測定方法では、特に、次のようにして電解を行うようにする。つまり、対極3、隔膜4及び検出極2を測定セル1の容器10内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、容器10に設けられた該容器10の検出極2が配置された領域、即ち、検出極室11からの液の排出を可能とする排出口15が下側となるように、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向を水平(図中Hで表された水平面)に対して傾斜させた状態で、所定量の試料液を検出極2上に供給して電解を行う。
【0035】
即ち、本実施例では、測定セル1を傾斜させ、且つ、測定セル1の検出極室11に排出口15を設ける。これにより、検出極室11に注入した試料液相当の液が排出される。その結果、検出極室11の内部の液量は常に一定に保たれ、連続的な測定を行うことによる測定値の低下を大幅に抑制することができる。従って、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【0036】
図2及び図3をも参照して更に説明すると、測定セル1は、使用状態で水平に対して傾けて配置される。そして、その傾斜の下流側に位置する容器10の端面、本実施例では検出極室11内の検出極2の表面よりも上方に張り出した縁部14に、排出口(穴)15が開けられている。これにより、この排出口15から液が自然に排出されるようになっている。
【0037】
本実施例では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面に隣接して設けられている。又、本実施例では、排出口15は、測定セル1の検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面より上に露出して設けられている。
【0038】
又、本実施例では、測定セル1は、排出口15を介して排出された液を導く排出路(排出管)7を有する。この排出路7は、その内部の液流通部が排出口15と連通するように、液密的に縁部14に連結されている。排出路7としては、単に内部に液流通部を有する中空部材を用いてもよいが、排出口15を介して排出される液の導出を促進するために、排出口15を介して排出された液が浸透する芯部材を内部に有していてもよい。このような浸部材としては、親水性の繊維、例えば、ポリエチレンなどで形成されたフェルトを好適に用いることができる。
【0039】
尚、排出口15は、液供給開口部13の縁部14に形成されることに限定されるものではなく、傾斜した測定セル1の下方に位置する容器10の一部をなす端面に形成すればよく、種々の変形例については実施例2において更に説明する。
【0040】
又、測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向(即ち、対極、隔膜4及び検出極2の各々主平面方向)が水平に対してなす角度(図1中の角度θ)は、5度〜60度であることが好ましい。この角度が5度未満であると、過剰になった液を測定セル1から自然に排出する能力が限られ、例えば複数回の測定における測定と測定との間隔を長く取る必要が生じるなどして好ましくない。一方、この角度が60度を越えると、サンプル滴下操作が困難となると共に、滴下した試料液が検出極2へ浸透することなく排出されてしまい好ましくない。
【0041】
検出極室11における液量は、検出極2を構成するカーボン繊維が電解液に浸る程度(即ち、検出極2に電解液が含浸された初期の状態と同等)が理想的である。この状態を維持すれば、検出極2上に注入した試料液は良好に拡散して、速やかに測定を行うことができる。本発明に従う測定セル1は、水平に対して斜めに配置されるため、検出極室11において増加した残液Lは下方に流れて溜まっていく。そして、この残液Lが溜まる部分に排出口15を設けることによって、自然に液は排出され、常に検出極室11における液量は、検出極2を構成するカーボン繊維が液に浸る程度に維持される。特に、傾けた測定セル1の排出口15の近傍の残液Lが溜まる部分より上部は、検出極2が理想的に電解液に浸った状態となり、安定した測定が可能となる。
【0042】
連続測定により、検出極2が配置された検出極室11の内部の電解液は徐々に希釈されていき、電解効率が低下していく。その場合は、通常、電解液を検出極2上に数回滴下すれば元の状態に回復させることができる。このように、本実施例によれば、典型的には、対極3、より詳細には、対極室12に収容された対極用の電解液が寿命に達するまでは、測定セル1の保守は、検出極室11に収容する検出極用の電解液の定期的な注入のみでよい。
【0043】
次に、図4をも参照して、上述のような測定セル1を用いる本実施例のクーロメトリ測定装置について説明する。本実施例では、クーロメトリ式測定装置100は、電解液が含浸された導電性多孔質体としてのカーボンフェルトから成る検出極2及び対極3と、検出極2と対極3との間に配置された隔膜4と、検出極2、対極3及び隔膜4を収容する容器10と、を備えた測定セル1と、この測定セル1を支持する支持部102を備えた本体101と、を有する。そして、対極3、隔膜4及び検出極2は、測定セル1の容器10内において下からこの順番で積層された状態で配置され、容器10には該容器10の検出極2が配置された領域、即ち、検出極室11からの液の排出を可能とする排出口15が設けられており、本体101に支持された測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向は排出口15が下側となるように水平に対して傾斜している。
【0044】
本実施例では、測定セル1は、本体101に対して着脱可能とされている。即ち、本実施例では、測定セル1は、本体101に対して容易に着脱可能なカートリッジとして構成され、本体101に設けられた支持部102は、該カートリッジの装着部として構成されている。
【0045】
このように、測定セル1を本体101に対して着脱可能とすることにより、例えば、対極室12に収容された対極用の電解液の寿命に達した時点で、測定セル1を本体101に対して着脱して交換することができる。これにより、例えば、電極の洗浄などの操作を省くことができ、クーロメトリ式測定装置100のメンテナンス性を向上することができる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、測定セル1が本体101に対して容易に着脱可能な構成とされていない場合であっても、本発明を等しく適用することができる。
【0046】
図5をも参照して、本実施例では、クーロメトリ測定装置100の使用状態において、本体101に設けられた支持部102の測定セル1を支持する支持面102aは水平に対して傾斜している。一方、支持部102の支持面102aによって支持される測定セル1の底面16は、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向と平行(即ち、対極3、隔膜4及び検出極2の各々の主平面に平行)に形成される。従って、測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向は、水平に対して傾斜する。
【0047】
別法として、図6に示すように、本体101に設けられた支持部102の測定セル1を支持する支持面102aを水平としてもよい。この場合、支持部102の支持面102aによって支持される測定セル1の底面16は、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向に対して傾斜(即ち、対極3、隔膜4及び検出極2の各々の主平面に対して傾斜)して形成される。従って、測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向は、水平に対して傾斜する。
【0048】
更に、別法として、本体101に設けられた支持部102の支持面102aを水平に対して傾斜させると共に、測定セル1の底面16に対して対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向を傾斜させることができる。これは、図5に示す態様と図6に示す態様との間の態様に相当する。これにより、測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、上記支持部102側の傾斜及び測定セル1側の傾斜が協働して、測定セル1に対して所望の傾斜をもたらすことができる。
【0049】
本実施例では、本体101の支持部102に支持された状態で、測定セル1に設けられた排出路7の排出口15とは反対側の端部は、本体101よりも張り出して下方を向くようになっている。従って、この排出路7の端部の下に適当な廃液容器Wを配置することで、排出口15、排出路7を介して測定セル1から排出された液(廃液)を収容することができる。尚、本実施例では、排出路7は硬質の管状部材で形成したが、排出路7自体又は排出路7に接続する部材として、可撓性を有する管状部材を用いることによって、例えば本体101から離れた位置に配置された廃液容器Wに液を排出するなど、配置の自由度を増すことができる。
【0050】
本体101の支持部102には、測定セル1が配置される領域に露出して電気接点103a、103bが設けられている。これに対応して、測定セル1には、その側面に露出して電極端子8a、8bが設けられている。測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、測定セル1の電極端子8a、8bと、本体101の電気接点103a、103bとは接触して電気的に導通し、測定が可能な状態となる。
【0051】
測定セル1の電極端子8a、8bはそれぞれ、測定セル1の内部でリード線5、6に電気的に接続されている。又、本体101の電気接点103a、103bはそれぞれ、本体101に設けられたクーロンメータ104に電気的に接続されている。クーロンメータ104は、上記電気接点103a、103b、電極端子8a、8b及びリード線5、6などを介して検出極2と対極3との間に所定の電圧を印加する電圧出力部、測定セル1における電解反応に伴って流れる電流を計測する電流計測部、計測された電流量を積算して電気量を測定する積算部などを有する。
【0052】
又、本体101には、上記クーロンメータ104などクーロメトリ式測定装置100の動作を制御する制御部(記憶素子、演算素子、制御素子を備えるマイクロコンピュータなどを備える制御回路)105、測定の開始/終了、測定の各種設定などの制御部105に対する指示を入力するための入力キーなどを備える操作部106、測定結果、各種設定状態などを表示するためのLCD(液晶ディスプレイ)などで構成される表示部107などが設けられている。
【0053】
尚、測定セル1を本体101の支持部102に、より確実に保持する保持手段として、測定セル1を支持部にスナップフィット係合(弾発係合)させたり、圧入嵌合させたりする保持機構を設けてもよい。
【0054】
次に、本実施例の効果を示す実験例について説明する。
【0055】
(実験例1)
図7は、本実施例に従って測定セル1からの液の排出を行う場合と、これを行わない場合とでの、測定値の再現性を調べた結果を示す。尚、測定セル1からの液の排出を行わない場合については、本実施例に従って排出口15及び排出路7を設けた測定セル1の排出口15を塞ぐことによって実験を行った。実験条件は次の通りである。
【0056】
即ち、クーロメトリ式測定装置において、電解液として検出極用及び対極用のいずれもKBr溶液を使用する遊離残留塩素測定用の測定セル1を用いて測定を行った。試料液としては水道水を用いた。又、試料液の滴下量は50μlとし、残液を十分に排出させるように30秒間隔で試料液を測定セル1に滴下して測定を行った。又、測定セル1が水平に対してなす角度(図1中の角度θ)は15度とした。
【0057】
図7から分かるように、測定セル1からの液の排出有りの場合では、10回連続で測定を行っても、指示値が安定した。一方、液の排出無しにすると、測定回毎に指示値が低下した。その後、溜まった液を排出し、液の排出有りに戻すと、指示値が回復した。
【0058】
(実験例2)
図8は、本実施例に従って測定セル1からの液の排出を行った場合における連続的に測定を行い得る能力を調べた結果を示す。ここでは、連続して50回まで測定セル1からの液の排出有りで測定した後、液の排出無しにした場合の結果を示す。尚、実験条件は、実験例1と同様である。
【0059】
図8から分かるように、測定セル1からの液の排出有りで測定を行った50回までは指示値の低下は見られなかった。一方、液の排出無しにすると、指示値が測定毎に低下した。
【0060】
従来の液の排出を行わない測定セルでは、一般に4〜5回の連続した測定で指示値が安定しなくなる。これに対して、上述から明らかなように、本実施例に従って排出口15、排出路7を設けて測定セル1からの液の排出を行うことによって、少なくとも50回の連続した測定において安定した測定値を得ることができる。本発明者らの検討によれば、更に多くの回数(例えば、100回程度)にわたって、十分に安定した測定値を得られる場合があることが分かった。
【0061】
以上説明したように、本実施例によれば、測定セル1自体を傾けると共に、試料液の注入により増加した液を排出する排出口15を容器10の端面に設けるといった簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【0062】
実施例2
本実施例では、測定セル1の他のいくつかの変形例について説明する。図9(a)〜(c)は、それぞれ本発明に従うクーロメトリ式測定セルの他の例の要部断面構成を模式的に示す。尚、図9(a)〜(c)に示す測定セル1において、実施例1にて説明したものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。又、測定セル1が水平に対してなす角度(図1中の角度θ)は15度とした。
【0063】
実施例1で説明したように、測定セル1を水平方向に対して傾斜させた状態にした結果として、測定セル1は、排出口15の近傍の残液Lが溜まる部分と、これより上の部分の理想的に電解液に浸った状態である部分との、2つの領域に大きく分かれるようになる。測定セル1に滴下された試料液は、そのまま測定セル1内を浸透しつつこの傾斜に沿って通過するようになり、その間に検出極2では試料液と電解液との反応が進み、そのまま排出口15へ向かうようになる。
【0064】
本発明者らは、このことを踏まえた上で更に検討を進めた結果、次に述べるような新たな知見を得た。即ち、排出口15より残液Lが排出されるようにしたとしても、検出極2の表面にまで残液Lが付着している状態である湿潤状態に近い程、滴下した試料液が検出極2に浸透できずにこの表面に残り、これにより未反応部分が発生して測定誤差となってしまう。これに対し、より湿潤状態を少なくし、残液Lが検出極2の表面から除かれ、その内部では検出極2が理想的に電極液に浸った状態である表面乾燥内部湿潤状態にすると、速やかに滴下した試料液は検出極2に浸透して行き、未反応部分が少なくなる。
【0065】
そこで、本実施例では、検出極2の表面乾燥内部湿潤状態の領域をより大きくすることを目的とした測定セル1の変形例について説明する。
【0066】
図9(a)に示す測定セル1では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側の面に隣接して設けられている。即ち、図9(a)に示す測定セル1では、検出極2の底部に隣接する容器10の端面に排出口15が設けられている。
【0067】
つまり、図9(a)に示す測定セル1では、実施例1の測定セル1のように排出口15が検出極2の上側にあるが、検出極2の表面乾燥内部湿潤状態の領域を最も大きくするために、上記のような位置に排出口15を設けた。図9(a)に示す測定セル1では、検出極2が上述したように表面乾燥内部湿潤状態であるため、検出極2上に滴下された試料液が残液Lに阻害されずに検出極2を浸透して行き、そのまま排出口15に到達する。そのため、未反応部分が残らずより正確に測定できる。残液Lの領域は、図示するように排出口15より下の検出極2の底部分であり、隔膜4に隣接した僅かな領域のみとなる。
【0068】
図9(b)に示す測定セル1では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面に隣接して設けられているが、実施例1とは異なり、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面より上に露出しないように設けられている。換言すれば、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側の面と、それとは反対側の面との間に設けられている。そして、図9(b)に示す測定セル1では、更に、検出極室11内において検出極2のない空間Vが設けられている。この空間Vは、検出極2を構成するカーボンフェルトの端面に段部や溝部(切り欠き部)を設けることにより形成することができる。又、この空間Vは、測定セル1の使用状態で、少なくとも排出口15の下端より上方にあることが望ましい。更に、この空間Vは、排出口15に隣接する検出極2の端面に段部や溝部(切り欠き部)を設けることで形成することが望ましい。図9(b)に示す例では、全体として円板状の検出極2の排出口15に隣接する部分に段部9を設けることによって、検出極室11内において検出極2がない空間Vが排出口15に隣接して形成されている。
【0069】
上記空間Vを設けることによって、検出極2に滴下した試料液が、検出極2を浸透しつつ通過して、更にこの空間Vを通過して排出口15から排出される。残液Lの領域は、排出口15より下の検出極2の部分であり、空間Vの一部も含まれる。
【0070】
ところで、一定間隔で次々と試料液を連続的に滴下する場合、検出極2へは、次々と滴下された試料液が浸透して行く。この時、測定セル1自体が水平に対して傾斜しているため、前に滴下された試料液はその後に滴下された試料液に押されるような状態で検出極2を通過して行くようになる。ここで、排出口15に近い箇所では、検出極2自体の存在によりこれが抵抗となってしまって試料液の通過が妨げられてしまう虞がある。そのため、上述したように空間Vを設けることによって、この部分では試料液の通過を妨げる要因となる検出極2そのものがなくなるため、試料液は何の抵抗も受けずにスムーズに空間Vを通過して流出口15へ達することができるようになる。
【0071】
尚、この空間Vは排出口15に隣接する検出極2の箇所に形成するのが望ましく、更に検出極2自体の性能を損なわない程度の大きさを限度とする必要がある。
【0072】
図9(c)に示す測定セル1では、検出極2の厚さを、実施例1の測定セル1よりも厚くする。即ち、検出極2の厚さを、実施例1の測定セル1では3mmであったのに対して、図9(c)に示す測定セル1では6mmとする。又、図9(c)に示す測定セル1では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側の面と、それとは反対側の面との間に設けられている。
【0073】
つまり、検出極2の厚さを厚くすることにより、検出極2上に滴下された試料液は、検出極2を構成するカーボンフェルトの中をそのまま浸透していって排出口15に到達するようになる。又、検出極2の厚さを厚くすることにより、検出極2が薄い場合よりも表面乾燥内部湿潤状態の領域を増やすことができるようになり、安定した測定を行うことができるようになる。
【0074】
尚、図9(c)に示すように、検出極2の厚さを厚くすると共に、図9(b)に示す例において説明したのと同様にして、検出極2の一部に溝部(凹部)を設けて、検出極室11内において検出極2がない空間Vを設けてもよい。これにより、更に安定した測定を行うことができる。
【0075】
実施例3
次に、本発明に係るクーロメトリ式測定装置の他の実施例について説明する。本実施例では、複数の検体の自動測定を可能とする。尚、本実施例のクーロメトリ式測定装置において、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0076】
即ち、実施例1にて説明したような本発明に従うクーロメトリ式測定装置を、液のサンプリング、注入を自動化した分注器(ピペッター)と組み合わせることにより、間欠連続測定が可能である。連続測定により、検出極の電解液は徐々に希釈されていき、電解効率が低下していく。その場合は、通常、自動分注器で電解液を検出極2上に数回滴下すれば元の状態に回復させることができる。このように、本実施例によれば、クーロメトリ式測定装置の測定部の保守は電解液の定期的な注入のみでよく、典型的には対極3、より詳細には、対極室12に収容された対極用の電極液が寿命に達するまで、間欠連続測定が可能である。
【0077】
そこで、本実施例に従うクーロメトリ式測定方法では、電解のために定期的に所定量の試料液を検出極2上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を検出極2上に供給して、間欠連続測定を行う。
【0078】
以下、図10(a)、(b)を参照して、本実施例のクーロメトリ測定装置100について更に説明する。図10(a)、(b)は、本実施例のクーロメトリ式測定装置100の外観図である。本実施例のクーロメトリ式測定装置100は、定期的に所定量の試料液を検出極2上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を検出極2上に供給する液供給手段111を有する。本実施例では、この液供給手段111は、液を収容可能な複数の液体容器Cを担持するテーブル108と、このテーブル108に担持された液体容器Cからノズル109aを介して液をサンプリングすると共に、該サンプリングした液を上記ノズル109aを介して測定セル1の検出極2上に供給する分注器109と、液体容器Cから液をサンプリングするサンプリング位置と該サンプリングした液を測定セル1の検出極2上に供給する供給位置との間で上記ノズル109aを移動させる移動手段110と、を有する。
【0079】
本実施例では、テーブル108は、駆動手段(図示せず)によって駆動されることで回転可能なターンテーブルとして構成されており、複数の液体容器Cをその回転方向に沿って配列して載置できるようになっている。そして、テーブル108が回転することによって、ノズル109aを介して分注器109によって液をサンプリングするサンプリング位置へと液体容器Cが順次に配置される。
【0080】
又、分注器(ピペッター)109は、図示しないシリンジと、シリンジに嵌合したピストンと、を備えている。ピストンは、ピストンに連結された図示しない駆動手段によりシリンジ内を往復動可能とされている。これにより、所定量の液を液体容器Cからサンプリングし、且つ、所定量の液を測定セル1に供給できるようになっている。
【0081】
又、移動手段110は、ノズル109aを有する分注器109を、図10(a)に示す所定のサンプリング位置と、図10(b)に示す所定の供給位置との間で移動させるべく回動可能なロボットアーム装置として構成されており、分注器108を支持するアーム部110aと、このアーム部110aを支持すると共に駆動手段(図示せず)によって駆動されてアーム部110aを回動させる回動軸110bと、回動軸110bを回動可能に支持する支柱110と、を有する。尚、回動軸110bは、ノズル109aを液体容器C内や検出極2上の所定位置に配置できるように、アーム部110aを上下動させることも可能とされている。
【0082】
このような構成のクーロメトリ式測定装置100において、間欠連続測定を行う際には、試料液を収容した複数の液体容器Cを、測定したい順番でテーブル108上にその回転方向に沿って配列する。この時、テーブル108上の複数の液体容器Cの配列において一定間隔毎に、試料液Sを収容した液体容器Cの代わりに検出極用の電解液Eを収容した液体容器Cを配置する。そして、所定の時間間隔で複数の液体容器Cから試料液をサンプリングしてその試料液を測定セル1に供給すると共に、所定回数の試料液のサンプリング及び測定セル1への供給を行う毎に、所定量の電解液をサンプリングしてその電解液を測定セル1に供給する。これにより、測定セル1に定期的に電解液を補給(再生)することができる。
【0083】
即ち、本実施例のクーロメトリ式測定装置100では、分注器109は、テーブル108上に配列された複数の液体容器Cの隣接する液体容器Cから順次に液をサンプリングして測定セル1の検出極2上に供給するようになっている。そして、間欠連続測定を行う際には、好ましくは、テーブル108上には、試料液を収容した複数の液体容器Cが配列されると共に、該試料液を収容した複数の液体容器Cの一定間隔毎に電解液を収容した液体容器Cが配置される。
【0084】
尚、図10においては、テーブル108上には、その回転方向に沿って1周のみ液体容器Cが配列された様子を示しているが、一般的なターンテーブルにおいて行われているのと同様に、テーブル108の回転半径方向において複数周にわたり液体容器Cを配列することができる。この場合、分注器109のノズル109aを介した液のサンプリング位置をテーブル108の回転半径方向において複数設定して、例えばテーブル108の回転半径方向の外側の液体容器Cの列から順次にサンプリングを行うことによって、より多くの検体に対する間欠連続測定を行うことができる。又、液体容器Cは、テーブル108の回転方向に沿って配列することに限定されるものではない。例えば、テーブル108がスライド移動することで分注器109によるサンプリング位置に順次に複数の液体容器Cを配置したり、或いはテーブル108は静止させたまま分注器109によるサンプリング位置を複数の液体容器C上に順次にスライド移動させたりしてもよい。
【0085】
以上説明したように、本発明に従うクーロメトリ式測定方法は自動測定への適用性も優れており、本発明に従う自動化されたクーロメトリ式測定装置100は、簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの要部断面構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの外観図である。
【図3】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの外観図である。
【図4】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例の外観図である。
【図5】測定セルを傾斜させる方法の一例を説明するための測定セルの概略断面図である。
【図6】測定セルを傾斜させる方法の他の例を説明するための測定セルの概略断面図である。
【図7】本発明の効果を説明するためのグラフ図である。
【図8】本発明の効果を説明するためのグラフ図である。
【図9】本発明に従う測定セルの他のいくつかの実施例の要部断面構成を示す模式図である。
【図10】本発明に従う自動化されたクーロメトリ式測定装置の概略外観斜視図である。
【図11】従来のクーロメトリ式測定装置の測定セルの使用態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
1 測定セル
2 検出極
3 対極
4 隔膜
7 排出路
15 排出口
100 クーロメトリ式測定装置
102 支持部
108 テーブル
109 分注器
110 ロボットアーム装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、食品に含まれるビタミンC(還元型アスコルビン酸)、水中の遊離残留塩素などの定量を、迅速且つ簡便に行う方法として、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法(電量分析法)が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
即ち、この方法では、電解液を含浸した導電性多孔質体から成る検出極及び対極を隔膜を介して配置した測定セルに試料液を供給して電解(電気分解)を行い、その時の電気的な変化量(検出極における電圧、電流又は電気量)を測定することにより、試料液中の測定対象成分を定量する。即ち、電解を行った時の電気的な変化量が、試料液中の測定対象成分の量に関係することから、その電気的な変化量を測定することにより、試料液中の測定対象成分を定量することができる。
【0004】
より具体的には、この方法では、検出極及び対極を構成する導電性多孔質物質としてカーボンフェルトを使用し、これらの電極を隔膜としてのイオン交換膜を介して積層状態で配置したクーロメトリ式測定セルが用いられる。即ち、測定セルは、電解液が含浸されたカーボンフェルトから成る検出極を備えた検出極室と、電解液が含浸されたカーボンフェルトから成る対極を備えた対極室とを、イオン交換膜を介して隣接させた状態で有する。そして、典型的には、電極間に一定の電圧を印加した状態で、測定対象成分を含む一定量の試料液をその測定セルの検出極上に直接供給して電解を行い、その電解に伴って流れる電気量を測定する(定電位法,定電圧法)。つまり、測定対象成分の濃度に比例した電解時間と電流の積算値を測定し、その積算値から試料液中の測定対象成分を定量することができる。別法として、電極間に一定の電流を流した状態で電解を行う定電流法を用いることもできる。
【0005】
このように、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法において用いられる測定セルでは、隔膜を介して検出極と対極とが対向して配置されている。検出極及び作用極は、典型的には、無数のカーボン繊維(炭素繊維)からなるカーボンフェルトで形成され、その表面積は非常に大きい。測定を行うには、検出極側に5μl〜100μl程度の一定量の試料液を滴下するのみでよく、一般に20〜30秒で測定は終了する。又、1つの試料液についての測定を終了した後、続けて試料液を滴下して測定することが可能であるため、多検体の測定に適している。
【0006】
例えば、遊離残留塩素を測定する場合、臭化カリウムを含む電解液を用い、試料液を検出極上に滴下すると、次の反応式(1)で示される反応が起きる。
2KBr+Cl2→Br2+2KCl ・・・(1)
【0007】
上記反応式(1)の反応は速やかに進む。そして、下記式のように、上記反応式(1)に従って生じたBr2は検出極において電解によりBr-となり、対極ではその逆の反応が生ずる。
検出極:Br2+2e-→2Br-
対極: Br-→Br2+2e-
【特許文献1】特許第2633280号公報
【特許文献2】特許第2752201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置では次のような問題があった。
【0009】
即ち、試料液を検出極上に供給して静止状態で電解を行うようになっている測定セルを用いて、多検体の測定を繰り返すと、測定値が低下していく傾向がある。
【0010】
この現象の原因は、例えば上述の遊離残留塩素の測定の場合を例として説明すれば、次のように考えられる。
【0011】
即ち、多検体の測定を繰り返すことによって測定セルの検出極が配置された領域の液量が増加し、上記反応式(1)で生成したBr2が検出極を構成する繊維の表面に到達しきれずに残存していき、測定値が低下していくものと考えられる。
【0012】
又、測定セルの一定容積の領域に、定量したサンプルを滴下して測定を行うため、測定を重ねる毎にその領域に液が溜まってしまい、上記反応式(1)に従って生成したBr2の、検出極を構成する繊維の表面への速やかな拡散が阻害され、連続して測定を行うに従って測定値が低下していくものと考えられる。
【0013】
そのため、従来、ある程度測定を重ねた後に、溜まった液を抜き取ったり、新たな電解液を供給して余剰分を抜き取ることで電解液を更新したりする、特別の操作を行う必要があった。そのため、従来は、連続して測定できる検体の数が限られていた。
【0014】
ここで、特許文献1には、測定セルの検出極室及び対極室に連結された電解液流入管及び電解液流出管を設け、上記電解液流入管及び電解液流出管を使用して検出極室及び対極室内の電解液を更新することが記載されている。しかしながら、斯かる構成では、電解液を電解液流入管及び電解液流出管を通して流動させるための機構が必要であり、構成が複雑である。
【0015】
又、特許文献2には、測定セルの検出極室の上に透過膜を介して更に試料室を設けると共に、この試料室に試料の流入出用のキャピラリ及びポンプを接続して、試料を試料室に連続供給することが記載されている。しかしながら、斯かる構成も上記特許文献1の場合と同様に複雑であり、又検出極室内の液の更新を容易に行うことのできる構成ではない。
【0016】
従って、本発明は、簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができるクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は本発明に係るクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極が容器内で隔膜を介して配置された測定セルの前記検出極上に所定量の試料液を供給して電解を行うことにより試料液中の測定対象の定量を行うクーロメトリ式測定方法において、前記対極、前記隔膜及び前記検出極を前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、前記容器に設けられた該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が下側となるように、前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向を水平に対して傾斜させた状態で、前記所定量の試料液を前記検出極上に供給して前記電解を行うことを特徴とするクーロメトリ式測定方法である。本発明の一実施態様によると、前記電解のために定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給して、間欠連続測定を行う。
【0018】
第2の本発明によれば、電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極と、前記検出極と前記対極との間に配置された隔膜と、前記検出極、前記対極及び前記隔膜を収容する容器と、を備えた測定セルと、前記測定セルを支持する支持部を備えた本体と、を有するクーロメトリ式測定装置において、前記対極、前記隔膜及び前記検出極は前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層された状態で配置され、前記容器には該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が設けられており、前記本体に支持された前記測定セルの前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向は前記排出口が下側となるように水平に対して傾斜していることを特徴とするクーロメトリ式測定装置が提供される。
【0019】
上記第2の本発明において、一実施態様によると、クーロメトリ式測定装置は更に、定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給する液供給手段を有する。前記液供給手段は、液を収容可能な複数の液体容器を担持するテーブルと、前記テーブルに担持された前記液体容器からノズルを介して液をサンプリングすると共に、該サンプリングした液を前記ノズルを介して前記測定セルの前記検出極上に供給する分注器と、前記液体容器から液をサンプリングするサンプリング位置と該サンプリングした液を前記測定セルの前記検出極上に供給する供給位置との間で前記ノズルを移動させる移動手段と、を有していてよい。好ましい一実施態様によれば、前記分注器は、前記テーブル上に配列された複数の前記液体容器の隣接する液体容器から順次に液をサンプリングして前記測定セルの前記検出極上に供給するようになっており、前記テーブル上には試料液を収容した複数の前記液体容器が配列されると共に、該試料液を収容した複数の前記液体容器の一定間隔毎に電解液を収容した前記液体容器が配置される。又、好ましい一実施態様によれば、前記テーブルは回転可能であり、複数の前記液体容器は、前記テーブルの回転方向に沿って配列される。
【0020】
又、上記第2の本発明の一実施態様によると、前記排出口を介して排出された液を導く排出路を有する。又、上記第2の本発明の他の実施態様によると、前記排出路内には、前記排出口を介して排出された液が浸透する芯部材が配設されている。更に、上記第2の本発明の好ましい一実施態様によると、前記測定セルは、前記本体に対して着脱可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るクーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0023】
実施例1
図1は、本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの要部断面構成を示す模式図である。図2及び図3は、本実施例に従う測定セルのより具体的な構成を示す外観図である。図4は、図2及び図3に示す測定セル1を使用する本実施例のクーロメトリ式測定装置100の外観図である。尚、本実施例では、クーロメトリ式測定方法及びクーロメトリ式測定装置は、水中の遊離残留塩素の測定に適用されるものとする。
【0024】
図1を参照して、測定セル1は、電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極(作用極)2及び対極3と、検出極2と対極3との間に配置された隔膜4と、検出極2、対極3及び隔膜4を収容する容器10と、を備えている。又、検出極2に接続された検出極リード線5及び対極3に接続された対極リード線6が容器10内から引き出されている。
【0025】
容器10は、隔膜4を挟んで両側にそれぞれ設けられた検出極室11及び対極室12を有している。そして、検出極室11には検出極用の電解液が含浸された検出極2が充填され、対極室12には対極用の電解液が含浸された対極3が充填されている。対極3、隔膜4及び検出極2は、容器10内において、それぞれの主平面が略平行となるように下からこの順番で積層された状態で配置されている。そして、容器10には、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面の少なくとも一部を容器10の外部に露出させるように、液供給開口部13が設けられている。又、液供給開口部13を画成する縁部14が、環状突出部として検出極2の液が供給される面よりも上方に突出するように設けられている。
【0026】
尚、対極3、隔膜4及び検出極2の主平面は、これらの積層方向に略直交する方向に沿う平面であり、本実施例では、それぞれの両側面と平行な平面である。
【0027】
検出極2及び対極3を構成する導電性多孔質体としては、導電性繊維の集合体が好適に用いられる。又、この導電性繊維の集合体としては、好ましくは、カーボン繊維の集合体であるカーボンフェルト、カーボンクロスなどが用いられる。本実施例では、検出極2及び対極3は、カーボンフェルトで形成した。検出極2及び対極3の形状、大きさは、特に制限されるものではないが、通常、厚さ2mm〜10mm、直径15mm〜50mmの円板状のものを用いることで好結果が得られる。本実施例では、検出極2としては厚さ3mm、直径25mmの円板状のものを用い、対極3としては厚さ5mm、直径24mmの円板状のものを用いた。
【0028】
検出極2及び対極3に含浸される電解液は、測定対象によって選択され、又適宜調整されるものであって、特に制限されるものではないが、一般に、各種のpH緩衝液や、該pH緩衝液に電解補助物質(電子移動媒体)としてKI、KBrなどのハロゲン化物、金属錯体、ハロゲンイオン、錯配位子、酵素などを溶解又は分散させたものが使用される。本実施例では、測定対象は水中の遊離残留塩素である。従って、本実施例では、検出極用の電解液としては、臭化カリウム(KBr)を含む酸性溶液を用いた。又、本実施例では、対極用の電解液としては、臭化カリウム(KBr)を含む酸性溶液を用いた。
【0029】
隔膜4としては、イオン交換膜が好適に用いられる。本実施例では、陽イオン交換膜を用いた。隔膜4は、対極室12を液密的に封止するように容器10に取り付けられている。
【0030】
リード線5、6としては、白金などの貴金属材料から成る導電を好適に用いることができる。リード線5、6の容器10からの引き出し部は液密的に封止されている。
【0031】
斯かる構成の測定セル1を用いて、試料中の測定対象成分、即ち、本実施例では水中の遊離残留塩素を定量する際には、ピペットやシリンジにより計り取った所定量の試料液(水)を、液供給開口部13から直接検出極2上に供給(滴下)する。この時、検出極2と対極3との間に所定の電圧を印加しておくことによって、定電位法による電解が行われる。そして、この時流れる電気量から、試料液(水)中の遊離残留塩素が定量される。前述のように、本実施例では、試料液は検出極2に含浸された電解液と反応し、この反応物が隔膜4を越えて対極3に達することによって測定が可能となる。
【0032】
ここで、前述のように、従来の導電性多孔質体から成る電極を使用したクーロメトリ式測定セルを用いて多検体の測定を繰り返すと、徐々に測定セル1の検出極2が配置された領域、即ち、検出極室11に液が溜まってくる。図11は、従来の測定セルにおいて検出極2上に残液Lが溜まった状態を模式的に示す。尚、図11中、図1に示す測定セル1と同様の機能、構成を有する要素には同じ参照番号を付している。
【0033】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上述のようにして溜まった液を除去すれば、連続して行うことのできる測定の回数を増加させることが可能であることを見出した。
【0034】
そこで、上述のように、電解液が含浸された導電性多孔質体としてのカーボンフェルトから成る検出極2及び対極3が、容器10内で隔膜4を介して配置された測定セル1の検出極2上に、所定量の試料液を供給して電解を行うことにより、試料液中の測定対象の定量を行う、本実施例に係るクーロメトリ式測定方法では、特に、次のようにして電解を行うようにする。つまり、対極3、隔膜4及び検出極2を測定セル1の容器10内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、容器10に設けられた該容器10の検出極2が配置された領域、即ち、検出極室11からの液の排出を可能とする排出口15が下側となるように、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向を水平(図中Hで表された水平面)に対して傾斜させた状態で、所定量の試料液を検出極2上に供給して電解を行う。
【0035】
即ち、本実施例では、測定セル1を傾斜させ、且つ、測定セル1の検出極室11に排出口15を設ける。これにより、検出極室11に注入した試料液相当の液が排出される。その結果、検出極室11の内部の液量は常に一定に保たれ、連続的な測定を行うことによる測定値の低下を大幅に抑制することができる。従って、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【0036】
図2及び図3をも参照して更に説明すると、測定セル1は、使用状態で水平に対して傾けて配置される。そして、その傾斜の下流側に位置する容器10の端面、本実施例では検出極室11内の検出極2の表面よりも上方に張り出した縁部14に、排出口(穴)15が開けられている。これにより、この排出口15から液が自然に排出されるようになっている。
【0037】
本実施例では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面に隣接して設けられている。又、本実施例では、排出口15は、測定セル1の検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面より上に露出して設けられている。
【0038】
又、本実施例では、測定セル1は、排出口15を介して排出された液を導く排出路(排出管)7を有する。この排出路7は、その内部の液流通部が排出口15と連通するように、液密的に縁部14に連結されている。排出路7としては、単に内部に液流通部を有する中空部材を用いてもよいが、排出口15を介して排出される液の導出を促進するために、排出口15を介して排出された液が浸透する芯部材を内部に有していてもよい。このような浸部材としては、親水性の繊維、例えば、ポリエチレンなどで形成されたフェルトを好適に用いることができる。
【0039】
尚、排出口15は、液供給開口部13の縁部14に形成されることに限定されるものではなく、傾斜した測定セル1の下方に位置する容器10の一部をなす端面に形成すればよく、種々の変形例については実施例2において更に説明する。
【0040】
又、測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向(即ち、対極、隔膜4及び検出極2の各々主平面方向)が水平に対してなす角度(図1中の角度θ)は、5度〜60度であることが好ましい。この角度が5度未満であると、過剰になった液を測定セル1から自然に排出する能力が限られ、例えば複数回の測定における測定と測定との間隔を長く取る必要が生じるなどして好ましくない。一方、この角度が60度を越えると、サンプル滴下操作が困難となると共に、滴下した試料液が検出極2へ浸透することなく排出されてしまい好ましくない。
【0041】
検出極室11における液量は、検出極2を構成するカーボン繊維が電解液に浸る程度(即ち、検出極2に電解液が含浸された初期の状態と同等)が理想的である。この状態を維持すれば、検出極2上に注入した試料液は良好に拡散して、速やかに測定を行うことができる。本発明に従う測定セル1は、水平に対して斜めに配置されるため、検出極室11において増加した残液Lは下方に流れて溜まっていく。そして、この残液Lが溜まる部分に排出口15を設けることによって、自然に液は排出され、常に検出極室11における液量は、検出極2を構成するカーボン繊維が液に浸る程度に維持される。特に、傾けた測定セル1の排出口15の近傍の残液Lが溜まる部分より上部は、検出極2が理想的に電解液に浸った状態となり、安定した測定が可能となる。
【0042】
連続測定により、検出極2が配置された検出極室11の内部の電解液は徐々に希釈されていき、電解効率が低下していく。その場合は、通常、電解液を検出極2上に数回滴下すれば元の状態に回復させることができる。このように、本実施例によれば、典型的には、対極3、より詳細には、対極室12に収容された対極用の電解液が寿命に達するまでは、測定セル1の保守は、検出極室11に収容する検出極用の電解液の定期的な注入のみでよい。
【0043】
次に、図4をも参照して、上述のような測定セル1を用いる本実施例のクーロメトリ測定装置について説明する。本実施例では、クーロメトリ式測定装置100は、電解液が含浸された導電性多孔質体としてのカーボンフェルトから成る検出極2及び対極3と、検出極2と対極3との間に配置された隔膜4と、検出極2、対極3及び隔膜4を収容する容器10と、を備えた測定セル1と、この測定セル1を支持する支持部102を備えた本体101と、を有する。そして、対極3、隔膜4及び検出極2は、測定セル1の容器10内において下からこの順番で積層された状態で配置され、容器10には該容器10の検出極2が配置された領域、即ち、検出極室11からの液の排出を可能とする排出口15が設けられており、本体101に支持された測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向は排出口15が下側となるように水平に対して傾斜している。
【0044】
本実施例では、測定セル1は、本体101に対して着脱可能とされている。即ち、本実施例では、測定セル1は、本体101に対して容易に着脱可能なカートリッジとして構成され、本体101に設けられた支持部102は、該カートリッジの装着部として構成されている。
【0045】
このように、測定セル1を本体101に対して着脱可能とすることにより、例えば、対極室12に収容された対極用の電解液の寿命に達した時点で、測定セル1を本体101に対して着脱して交換することができる。これにより、例えば、電極の洗浄などの操作を省くことができ、クーロメトリ式測定装置100のメンテナンス性を向上することができる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、測定セル1が本体101に対して容易に着脱可能な構成とされていない場合であっても、本発明を等しく適用することができる。
【0046】
図5をも参照して、本実施例では、クーロメトリ測定装置100の使用状態において、本体101に設けられた支持部102の測定セル1を支持する支持面102aは水平に対して傾斜している。一方、支持部102の支持面102aによって支持される測定セル1の底面16は、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向と平行(即ち、対極3、隔膜4及び検出極2の各々の主平面に平行)に形成される。従って、測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向は、水平に対して傾斜する。
【0047】
別法として、図6に示すように、本体101に設けられた支持部102の測定セル1を支持する支持面102aを水平としてもよい。この場合、支持部102の支持面102aによって支持される測定セル1の底面16は、対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向に対して傾斜(即ち、対極3、隔膜4及び検出極2の各々の主平面に対して傾斜)して形成される。従って、測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、測定セル1の対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向は、水平に対して傾斜する。
【0048】
更に、別法として、本体101に設けられた支持部102の支持面102aを水平に対して傾斜させると共に、測定セル1の底面16に対して対極3、隔膜4及び検出極2の積層方向に略直交する方向を傾斜させることができる。これは、図5に示す態様と図6に示す態様との間の態様に相当する。これにより、測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、上記支持部102側の傾斜及び測定セル1側の傾斜が協働して、測定セル1に対して所望の傾斜をもたらすことができる。
【0049】
本実施例では、本体101の支持部102に支持された状態で、測定セル1に設けられた排出路7の排出口15とは反対側の端部は、本体101よりも張り出して下方を向くようになっている。従って、この排出路7の端部の下に適当な廃液容器Wを配置することで、排出口15、排出路7を介して測定セル1から排出された液(廃液)を収容することができる。尚、本実施例では、排出路7は硬質の管状部材で形成したが、排出路7自体又は排出路7に接続する部材として、可撓性を有する管状部材を用いることによって、例えば本体101から離れた位置に配置された廃液容器Wに液を排出するなど、配置の自由度を増すことができる。
【0050】
本体101の支持部102には、測定セル1が配置される領域に露出して電気接点103a、103bが設けられている。これに対応して、測定セル1には、その側面に露出して電極端子8a、8bが設けられている。測定セル1が本体101の支持部102によって支持された状態で、測定セル1の電極端子8a、8bと、本体101の電気接点103a、103bとは接触して電気的に導通し、測定が可能な状態となる。
【0051】
測定セル1の電極端子8a、8bはそれぞれ、測定セル1の内部でリード線5、6に電気的に接続されている。又、本体101の電気接点103a、103bはそれぞれ、本体101に設けられたクーロンメータ104に電気的に接続されている。クーロンメータ104は、上記電気接点103a、103b、電極端子8a、8b及びリード線5、6などを介して検出極2と対極3との間に所定の電圧を印加する電圧出力部、測定セル1における電解反応に伴って流れる電流を計測する電流計測部、計測された電流量を積算して電気量を測定する積算部などを有する。
【0052】
又、本体101には、上記クーロンメータ104などクーロメトリ式測定装置100の動作を制御する制御部(記憶素子、演算素子、制御素子を備えるマイクロコンピュータなどを備える制御回路)105、測定の開始/終了、測定の各種設定などの制御部105に対する指示を入力するための入力キーなどを備える操作部106、測定結果、各種設定状態などを表示するためのLCD(液晶ディスプレイ)などで構成される表示部107などが設けられている。
【0053】
尚、測定セル1を本体101の支持部102に、より確実に保持する保持手段として、測定セル1を支持部にスナップフィット係合(弾発係合)させたり、圧入嵌合させたりする保持機構を設けてもよい。
【0054】
次に、本実施例の効果を示す実験例について説明する。
【0055】
(実験例1)
図7は、本実施例に従って測定セル1からの液の排出を行う場合と、これを行わない場合とでの、測定値の再現性を調べた結果を示す。尚、測定セル1からの液の排出を行わない場合については、本実施例に従って排出口15及び排出路7を設けた測定セル1の排出口15を塞ぐことによって実験を行った。実験条件は次の通りである。
【0056】
即ち、クーロメトリ式測定装置において、電解液として検出極用及び対極用のいずれもKBr溶液を使用する遊離残留塩素測定用の測定セル1を用いて測定を行った。試料液としては水道水を用いた。又、試料液の滴下量は50μlとし、残液を十分に排出させるように30秒間隔で試料液を測定セル1に滴下して測定を行った。又、測定セル1が水平に対してなす角度(図1中の角度θ)は15度とした。
【0057】
図7から分かるように、測定セル1からの液の排出有りの場合では、10回連続で測定を行っても、指示値が安定した。一方、液の排出無しにすると、測定回毎に指示値が低下した。その後、溜まった液を排出し、液の排出有りに戻すと、指示値が回復した。
【0058】
(実験例2)
図8は、本実施例に従って測定セル1からの液の排出を行った場合における連続的に測定を行い得る能力を調べた結果を示す。ここでは、連続して50回まで測定セル1からの液の排出有りで測定した後、液の排出無しにした場合の結果を示す。尚、実験条件は、実験例1と同様である。
【0059】
図8から分かるように、測定セル1からの液の排出有りで測定を行った50回までは指示値の低下は見られなかった。一方、液の排出無しにすると、指示値が測定毎に低下した。
【0060】
従来の液の排出を行わない測定セルでは、一般に4〜5回の連続した測定で指示値が安定しなくなる。これに対して、上述から明らかなように、本実施例に従って排出口15、排出路7を設けて測定セル1からの液の排出を行うことによって、少なくとも50回の連続した測定において安定した測定値を得ることができる。本発明者らの検討によれば、更に多くの回数(例えば、100回程度)にわたって、十分に安定した測定値を得られる場合があることが分かった。
【0061】
以上説明したように、本実施例によれば、測定セル1自体を傾けると共に、試料液の注入により増加した液を排出する排出口15を容器10の端面に設けるといった簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【0062】
実施例2
本実施例では、測定セル1の他のいくつかの変形例について説明する。図9(a)〜(c)は、それぞれ本発明に従うクーロメトリ式測定セルの他の例の要部断面構成を模式的に示す。尚、図9(a)〜(c)に示す測定セル1において、実施例1にて説明したものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。又、測定セル1が水平に対してなす角度(図1中の角度θ)は15度とした。
【0063】
実施例1で説明したように、測定セル1を水平方向に対して傾斜させた状態にした結果として、測定セル1は、排出口15の近傍の残液Lが溜まる部分と、これより上の部分の理想的に電解液に浸った状態である部分との、2つの領域に大きく分かれるようになる。測定セル1に滴下された試料液は、そのまま測定セル1内を浸透しつつこの傾斜に沿って通過するようになり、その間に検出極2では試料液と電解液との反応が進み、そのまま排出口15へ向かうようになる。
【0064】
本発明者らは、このことを踏まえた上で更に検討を進めた結果、次に述べるような新たな知見を得た。即ち、排出口15より残液Lが排出されるようにしたとしても、検出極2の表面にまで残液Lが付着している状態である湿潤状態に近い程、滴下した試料液が検出極2に浸透できずにこの表面に残り、これにより未反応部分が発生して測定誤差となってしまう。これに対し、より湿潤状態を少なくし、残液Lが検出極2の表面から除かれ、その内部では検出極2が理想的に電極液に浸った状態である表面乾燥内部湿潤状態にすると、速やかに滴下した試料液は検出極2に浸透して行き、未反応部分が少なくなる。
【0065】
そこで、本実施例では、検出極2の表面乾燥内部湿潤状態の領域をより大きくすることを目的とした測定セル1の変形例について説明する。
【0066】
図9(a)に示す測定セル1では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側の面に隣接して設けられている。即ち、図9(a)に示す測定セル1では、検出極2の底部に隣接する容器10の端面に排出口15が設けられている。
【0067】
つまり、図9(a)に示す測定セル1では、実施例1の測定セル1のように排出口15が検出極2の上側にあるが、検出極2の表面乾燥内部湿潤状態の領域を最も大きくするために、上記のような位置に排出口15を設けた。図9(a)に示す測定セル1では、検出極2が上述したように表面乾燥内部湿潤状態であるため、検出極2上に滴下された試料液が残液Lに阻害されずに検出極2を浸透して行き、そのまま排出口15に到達する。そのため、未反応部分が残らずより正確に測定できる。残液Lの領域は、図示するように排出口15より下の検出極2の底部分であり、隔膜4に隣接した僅かな領域のみとなる。
【0068】
図9(b)に示す測定セル1では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面に隣接して設けられているが、実施例1とは異なり、検出極2の隔膜4に隣接する側とは反対側の面より上に露出しないように設けられている。換言すれば、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側の面と、それとは反対側の面との間に設けられている。そして、図9(b)に示す測定セル1では、更に、検出極室11内において検出極2のない空間Vが設けられている。この空間Vは、検出極2を構成するカーボンフェルトの端面に段部や溝部(切り欠き部)を設けることにより形成することができる。又、この空間Vは、測定セル1の使用状態で、少なくとも排出口15の下端より上方にあることが望ましい。更に、この空間Vは、排出口15に隣接する検出極2の端面に段部や溝部(切り欠き部)を設けることで形成することが望ましい。図9(b)に示す例では、全体として円板状の検出極2の排出口15に隣接する部分に段部9を設けることによって、検出極室11内において検出極2がない空間Vが排出口15に隣接して形成されている。
【0069】
上記空間Vを設けることによって、検出極2に滴下した試料液が、検出極2を浸透しつつ通過して、更にこの空間Vを通過して排出口15から排出される。残液Lの領域は、排出口15より下の検出極2の部分であり、空間Vの一部も含まれる。
【0070】
ところで、一定間隔で次々と試料液を連続的に滴下する場合、検出極2へは、次々と滴下された試料液が浸透して行く。この時、測定セル1自体が水平に対して傾斜しているため、前に滴下された試料液はその後に滴下された試料液に押されるような状態で検出極2を通過して行くようになる。ここで、排出口15に近い箇所では、検出極2自体の存在によりこれが抵抗となってしまって試料液の通過が妨げられてしまう虞がある。そのため、上述したように空間Vを設けることによって、この部分では試料液の通過を妨げる要因となる検出極2そのものがなくなるため、試料液は何の抵抗も受けずにスムーズに空間Vを通過して流出口15へ達することができるようになる。
【0071】
尚、この空間Vは排出口15に隣接する検出極2の箇所に形成するのが望ましく、更に検出極2自体の性能を損なわない程度の大きさを限度とする必要がある。
【0072】
図9(c)に示す測定セル1では、検出極2の厚さを、実施例1の測定セル1よりも厚くする。即ち、検出極2の厚さを、実施例1の測定セル1では3mmであったのに対して、図9(c)に示す測定セル1では6mmとする。又、図9(c)に示す測定セル1では、排出口15は、検出極2の隔膜4に隣接する側の面と、それとは反対側の面との間に設けられている。
【0073】
つまり、検出極2の厚さを厚くすることにより、検出極2上に滴下された試料液は、検出極2を構成するカーボンフェルトの中をそのまま浸透していって排出口15に到達するようになる。又、検出極2の厚さを厚くすることにより、検出極2が薄い場合よりも表面乾燥内部湿潤状態の領域を増やすことができるようになり、安定した測定を行うことができるようになる。
【0074】
尚、図9(c)に示すように、検出極2の厚さを厚くすると共に、図9(b)に示す例において説明したのと同様にして、検出極2の一部に溝部(凹部)を設けて、検出極室11内において検出極2がない空間Vを設けてもよい。これにより、更に安定した測定を行うことができる。
【0075】
実施例3
次に、本発明に係るクーロメトリ式測定装置の他の実施例について説明する。本実施例では、複数の検体の自動測定を可能とする。尚、本実施例のクーロメトリ式測定装置において、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0076】
即ち、実施例1にて説明したような本発明に従うクーロメトリ式測定装置を、液のサンプリング、注入を自動化した分注器(ピペッター)と組み合わせることにより、間欠連続測定が可能である。連続測定により、検出極の電解液は徐々に希釈されていき、電解効率が低下していく。その場合は、通常、自動分注器で電解液を検出極2上に数回滴下すれば元の状態に回復させることができる。このように、本実施例によれば、クーロメトリ式測定装置の測定部の保守は電解液の定期的な注入のみでよく、典型的には対極3、より詳細には、対極室12に収容された対極用の電極液が寿命に達するまで、間欠連続測定が可能である。
【0077】
そこで、本実施例に従うクーロメトリ式測定方法では、電解のために定期的に所定量の試料液を検出極2上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を検出極2上に供給して、間欠連続測定を行う。
【0078】
以下、図10(a)、(b)を参照して、本実施例のクーロメトリ測定装置100について更に説明する。図10(a)、(b)は、本実施例のクーロメトリ式測定装置100の外観図である。本実施例のクーロメトリ式測定装置100は、定期的に所定量の試料液を検出極2上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を検出極2上に供給する液供給手段111を有する。本実施例では、この液供給手段111は、液を収容可能な複数の液体容器Cを担持するテーブル108と、このテーブル108に担持された液体容器Cからノズル109aを介して液をサンプリングすると共に、該サンプリングした液を上記ノズル109aを介して測定セル1の検出極2上に供給する分注器109と、液体容器Cから液をサンプリングするサンプリング位置と該サンプリングした液を測定セル1の検出極2上に供給する供給位置との間で上記ノズル109aを移動させる移動手段110と、を有する。
【0079】
本実施例では、テーブル108は、駆動手段(図示せず)によって駆動されることで回転可能なターンテーブルとして構成されており、複数の液体容器Cをその回転方向に沿って配列して載置できるようになっている。そして、テーブル108が回転することによって、ノズル109aを介して分注器109によって液をサンプリングするサンプリング位置へと液体容器Cが順次に配置される。
【0080】
又、分注器(ピペッター)109は、図示しないシリンジと、シリンジに嵌合したピストンと、を備えている。ピストンは、ピストンに連結された図示しない駆動手段によりシリンジ内を往復動可能とされている。これにより、所定量の液を液体容器Cからサンプリングし、且つ、所定量の液を測定セル1に供給できるようになっている。
【0081】
又、移動手段110は、ノズル109aを有する分注器109を、図10(a)に示す所定のサンプリング位置と、図10(b)に示す所定の供給位置との間で移動させるべく回動可能なロボットアーム装置として構成されており、分注器108を支持するアーム部110aと、このアーム部110aを支持すると共に駆動手段(図示せず)によって駆動されてアーム部110aを回動させる回動軸110bと、回動軸110bを回動可能に支持する支柱110と、を有する。尚、回動軸110bは、ノズル109aを液体容器C内や検出極2上の所定位置に配置できるように、アーム部110aを上下動させることも可能とされている。
【0082】
このような構成のクーロメトリ式測定装置100において、間欠連続測定を行う際には、試料液を収容した複数の液体容器Cを、測定したい順番でテーブル108上にその回転方向に沿って配列する。この時、テーブル108上の複数の液体容器Cの配列において一定間隔毎に、試料液Sを収容した液体容器Cの代わりに検出極用の電解液Eを収容した液体容器Cを配置する。そして、所定の時間間隔で複数の液体容器Cから試料液をサンプリングしてその試料液を測定セル1に供給すると共に、所定回数の試料液のサンプリング及び測定セル1への供給を行う毎に、所定量の電解液をサンプリングしてその電解液を測定セル1に供給する。これにより、測定セル1に定期的に電解液を補給(再生)することができる。
【0083】
即ち、本実施例のクーロメトリ式測定装置100では、分注器109は、テーブル108上に配列された複数の液体容器Cの隣接する液体容器Cから順次に液をサンプリングして測定セル1の検出極2上に供給するようになっている。そして、間欠連続測定を行う際には、好ましくは、テーブル108上には、試料液を収容した複数の液体容器Cが配列されると共に、該試料液を収容した複数の液体容器Cの一定間隔毎に電解液を収容した液体容器Cが配置される。
【0084】
尚、図10においては、テーブル108上には、その回転方向に沿って1周のみ液体容器Cが配列された様子を示しているが、一般的なターンテーブルにおいて行われているのと同様に、テーブル108の回転半径方向において複数周にわたり液体容器Cを配列することができる。この場合、分注器109のノズル109aを介した液のサンプリング位置をテーブル108の回転半径方向において複数設定して、例えばテーブル108の回転半径方向の外側の液体容器Cの列から順次にサンプリングを行うことによって、より多くの検体に対する間欠連続測定を行うことができる。又、液体容器Cは、テーブル108の回転方向に沿って配列することに限定されるものではない。例えば、テーブル108がスライド移動することで分注器109によるサンプリング位置に順次に複数の液体容器Cを配置したり、或いはテーブル108は静止させたまま分注器109によるサンプリング位置を複数の液体容器C上に順次にスライド移動させたりしてもよい。
【0085】
以上説明したように、本発明に従うクーロメトリ式測定方法は自動測定への適用性も優れており、本発明に従う自動化されたクーロメトリ式測定装置100は、簡単な構成で、より多くの検体に対して連続的に、より安定した測定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの要部断面構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの外観図である。
【図3】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例において用いられる測定セルの外観図である。
【図4】本発明に係るクーロメトリ式測定装置の一実施例の外観図である。
【図5】測定セルを傾斜させる方法の一例を説明するための測定セルの概略断面図である。
【図6】測定セルを傾斜させる方法の他の例を説明するための測定セルの概略断面図である。
【図7】本発明の効果を説明するためのグラフ図である。
【図8】本発明の効果を説明するためのグラフ図である。
【図9】本発明に従う測定セルの他のいくつかの実施例の要部断面構成を示す模式図である。
【図10】本発明に従う自動化されたクーロメトリ式測定装置の概略外観斜視図である。
【図11】従来のクーロメトリ式測定装置の測定セルの使用態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
1 測定セル
2 検出極
3 対極
4 隔膜
7 排出路
15 排出口
100 クーロメトリ式測定装置
102 支持部
108 テーブル
109 分注器
110 ロボットアーム装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極が容器内で隔膜を介して配置された測定セルの前記検出極上に所定量の試料液を供給して電解を行うことにより試料液中の測定対象の定量を行うクーロメトリ式測定方法において、
前記対極、前記隔膜及び前記検出極を前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、前記容器に設けられた該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が下側となるように、前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向を水平に対して傾斜させた状態で、前記所定量の試料液を前記検出極上に供給して前記電解を行うことを特徴とするクーロメトリ式測定方法。
【請求項2】
前記電解のために定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給して、間欠連続測定を行うことを特徴とする請求項1に記載のクーロメトリ式測定方法。
【請求項3】
電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極と、前記検出極と前記対極との間に配置された隔膜と、前記検出極、前記対極及び前記隔膜を収容する容器と、を備えた測定セルと、
前記測定セルを支持する支持部を備えた本体と、
を有するクーロメトリ式測定装置において、
前記対極、前記隔膜及び前記検出極は前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層された状態で配置され、前記容器には該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が設けられており、前記本体に支持された前記測定セルの前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向は前記排出口が下側となるように水平に対して傾斜していることを特徴とするクーロメトリ式測定装置。
【請求項4】
前記排出口は、前記検出極から露出して設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項5】
前記排出口は、前記検出極の前記隔膜に隣接する側の面と、それとは反対側の面との間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項6】
前記排出口は、前記検出極の前記隔膜に隣接する側とは反対側の面に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項7】
前記排出口は、前記検出極の前記隔膜に隣接する側の面に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項8】
前記検出極が一部切り欠かれて、前記容器の前記検出極が配置された領域内において該検出電極がない空間が形成されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項9】
更に、定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給する液供給手段を有することを特徴とする請求項3〜8のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項10】
前記液供給手段は、液を収容可能な複数の液体容器を担持するテーブルと、前記テーブルに担持された前記液体容器からノズルを介して液をサンプリングすると共に、該サンプリングした液を前記ノズルを介して前記測定セルの前記検出極上に供給する分注器と、前記液体容器から液をサンプリングするサンプリング位置と該サンプリングした液を前記測定セルの前記検出極上に供給する供給位置との間で前記ノズルを移動させる移動手段と、を有することを特徴とする請求項9に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項11】
前記分注器は、前記テーブル上に配列された複数の前記液体容器の隣接する液体容器から順次に液をサンプリングして前記測定セルの前記検出極上に供給するようになっており、前記テーブル上には試料液を収容した複数の前記液体容器が配列されると共に、該試料液を収容した複数の前記液体容器の一定間隔毎に電解液を収容した前記液体容器が配置されることを特徴とする請求項10に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項12】
前記テーブルは回転可能であり、複数の前記液体容器は、前記テーブルの回転方向に沿って配列されることを特徴とする請求項11に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項13】
前記排出口を介して排出された液を導く排出路を有することを特徴とする請求項3〜12のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項14】
前記排出路内には、前記排出口を介して排出された液が浸透する芯部材が配設されていることを特徴とする請求項13に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項15】
前記測定セルは、前記本体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項3〜14のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項1】
電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極が容器内で隔膜を介して配置された測定セルの前記検出極上に所定量の試料液を供給して電解を行うことにより試料液中の測定対象の定量を行うクーロメトリ式測定方法において、
前記対極、前記隔膜及び前記検出極を前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層した状態で配置すると共に、前記容器に設けられた該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が下側となるように、前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向を水平に対して傾斜させた状態で、前記所定量の試料液を前記検出極上に供給して前記電解を行うことを特徴とするクーロメトリ式測定方法。
【請求項2】
前記電解のために定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給して、間欠連続測定を行うことを特徴とする請求項1に記載のクーロメトリ式測定方法。
【請求項3】
電解液が含浸された導電性多孔質体から成る検出極及び対極と、前記検出極と前記対極との間に配置された隔膜と、前記検出極、前記対極及び前記隔膜を収容する容器と、を備えた測定セルと、
前記測定セルを支持する支持部を備えた本体と、
を有するクーロメトリ式測定装置において、
前記対極、前記隔膜及び前記検出極は前記測定セルの前記容器内において下からこの順番で積層された状態で配置され、前記容器には該容器の前記検出極が配置された領域からの液の排出を可能とする排出口が設けられており、前記本体に支持された前記測定セルの前記対極、前記隔膜及び前記検出極の前記積層方向に略直交する方向は前記排出口が下側となるように水平に対して傾斜していることを特徴とするクーロメトリ式測定装置。
【請求項4】
前記排出口は、前記検出極から露出して設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項5】
前記排出口は、前記検出極の前記隔膜に隣接する側の面と、それとは反対側の面との間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項6】
前記排出口は、前記検出極の前記隔膜に隣接する側とは反対側の面に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項7】
前記排出口は、前記検出極の前記隔膜に隣接する側の面に隣接して設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項8】
前記検出極が一部切り欠かれて、前記容器の前記検出極が配置された領域内において該検出電極がない空間が形成されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項9】
更に、定期的に所定量の試料液を前記検出極上に供給すると共に、該試料液の供給を所定回数行う毎に所定量の電解液を前記検出極上に供給する液供給手段を有することを特徴とする請求項3〜8のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項10】
前記液供給手段は、液を収容可能な複数の液体容器を担持するテーブルと、前記テーブルに担持された前記液体容器からノズルを介して液をサンプリングすると共に、該サンプリングした液を前記ノズルを介して前記測定セルの前記検出極上に供給する分注器と、前記液体容器から液をサンプリングするサンプリング位置と該サンプリングした液を前記測定セルの前記検出極上に供給する供給位置との間で前記ノズルを移動させる移動手段と、を有することを特徴とする請求項9に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項11】
前記分注器は、前記テーブル上に配列された複数の前記液体容器の隣接する液体容器から順次に液をサンプリングして前記測定セルの前記検出極上に供給するようになっており、前記テーブル上には試料液を収容した複数の前記液体容器が配列されると共に、該試料液を収容した複数の前記液体容器の一定間隔毎に電解液を収容した前記液体容器が配置されることを特徴とする請求項10に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項12】
前記テーブルは回転可能であり、複数の前記液体容器は、前記テーブルの回転方向に沿って配列されることを特徴とする請求項11に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項13】
前記排出口を介して排出された液を導く排出路を有することを特徴とする請求項3〜12のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項14】
前記排出路内には、前記排出口を介して排出された液が浸透する芯部材が配設されていることを特徴とする請求項13に記載のクーロメトリ式測定装置。
【請求項15】
前記測定セルは、前記本体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項3〜14のいずれかの項に記載のクーロメトリ式測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−241372(P2008−241372A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80360(P2007−80360)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
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