説明

グラップル装置

【課題】木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削が行えるグラップル装置において、旋回ベアリングの損傷を防止して耐久性を向上させる。
【解決手段】木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削を行うグラップル装置において、油圧ショベルのアームの先端に揺動可能に支持される取付ブラケットと、取付ブラケットに対して旋回ベアリングを介して回転自在に接続されるフレーム35と、フレーム35に連結され、アームの揺動操作により地均し及び掘削作業を行う第1トング40と、第1トング40に対向して配置され、フレーム35に対して揺動可能に軸支された第2トングとを設ける。第1トング40の基端側をフレーム35に第1連結ピンによって支持すると共に、この第1連結ピンから離れた位置で固定ストッパ60によってフレーム35に固定し、第1トング40に所定の負荷が加わると、固定ストッパ60が外れるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のアームに接続され、木材のグラップル(掴み作業)並びに地面の地均し及び掘削を行うグラップル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のグラップル装置として、例えば、特許文献1のようにアームの先端部に回動可能に連結したバケットと、このバケットを閉じる方向に回動可能にバケットの開口基端部に設けたグラップル部とからなるグラップル装置は知られている。このグラップル部は、バケットの開口部の外側面間隔よりわずかに広い間隔に離間した2本のグラップル部材と、この両グラップル部材の先端を連結する連結板とからなり、このグラップル部をバケット側へ回動したときに、グラップル部材及び連結板がバケットの先端部の外側に位置し、かつ連結板の一側縁がバケットより突出するようにしている。
【0003】
このグラップル装置を用いることにより、アーム先端のアタッチメントを交換することなく、地面の掘削などのバケット作業だけでなく、木材のグラップル作業が行えるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−181817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のようなグラップル装置は、バケット及びグラップル部材を支持するフレームがアーム先端に接続される取付ブラケットに旋回ベアリングによって回転可能に支持されている。旋回ベアリングは、取付ブラケットに外側旋回輪固定ボルトにより固定される外輪と、フレームに内側旋回輪固定ボルトにより固定される内輪と、これら外輪と内輪との間に配置される複数の鋼球とを備え、この構成により、取付ブラケットに対してフレームを回転させ、掴んだ長尺の木材等を旋回させて積み上げ作業等を行うことができるようになっている。この木材等の旋回作業は、グラップル作業において必須の作業であることから旋回ベアリングは、必ず設ける必要がある。
【0006】
しかし、バケット作業を行う際には、バケットの根元にある旋回ベアリング及びその周辺(特に内側旋回輪固定ボルト及びその周辺)に大きな荷重が加わり、旋回ベアリングがガタついたり、損傷して旋回できなくなったりするという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削が行えるグラップル装置において、旋回ベアリングの損傷を防止して耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、地均し又は掘削作業を行ったときに固定ストッパが外れるようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、木材のグラップル(掴み作業)並びに地面の地均し及び掘削を行うグラップル装置を前提として、
上記グラップル装置は、
作業機械のアームの先端に揺動可能に支持される取付ブラケットと、
上記取付ブラケットに対して旋回ベアリングを介して回転自在に接続されるフレームと、
上記フレームに連結され、上記アームの揺動操作により地均し及び掘削作業を行う第1トングと、
上記第1トングに対向して配置され、上記フレームに対して揺動可能に軸支された第2トングとを備え、
上記第1トングは、基端側が上記フレームに軸部材によって支持されると共に、該軸部材から離れた位置で固定ストッパによって該フレームに固定されており、
上記第1トングに所定の負荷が加わると、上記固定ストッパが外れるように構成されている。
【0010】
すなわち、アームを揺動操作することで第1トングによって地均し又は掘削作業を行うと、旋回ベアリングに大きな荷重が加わるが、上記の構成によると、所定の負荷が第1トングに加わると、固定ストッパが外れ、第1トングが軸部材を中心に回動して逃れるようにしているので、旋回ベアリングに加わる荷重が制限される。このため、旋回ベアリングが損傷しないので、グラップル装置の旋回性能が低下することはない。また、固定ストッパを取り替え又は修理すれば再使用が可能なので、作業の中断が最小限となる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記固定ストッパは、
上記フレーム側板に取り付けられたフレーム側突起部と、
上記第1トング側板に形成され、上記フレーム側突起部が挿入される突起挿入部とを備え、
上記フレーム側突起部又は上記突起挿入部には、脆弱部が形成されている。
【0012】
上記の構成によると、簡単な構造で固定ストッパを構成でき、第1トングに所定の荷重が加わると脆弱部が率先して損傷して固定ストッパが外れるので、簡単な構成で旋回ベアリングの損傷が防止される。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、
上記フレーム側突起部は、上記フレーム側板に固定された鋼板よりなり、
上記突起挿入部は、上記第1トング側板に切り欠かれた切欠よりなり、
上記脆弱部は、上記鋼板に貫通形成された貫通孔である。
【0014】
上記の構成によると、第1トングをフレームに取り付ける際には、第1トング側板をフレーム側板に沿わせながら、切欠よりなる突起挿入部の開口部分からフレーム側突起部を挿入すればよい。そして、鋼板に貫通孔を形成することで、その周縁が他の部分よりも弱くなり、脆弱部が容易に形成されると共に、掘削時等のオーバーロード時には、この脆弱部から確実に破断して旋回ベアリングの損傷が防止される。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、
上記突起挿入部の周辺には、上記フレーム側突起部に当接するガタ防止部材が着脱可能に構成されている。
【0016】
上記の構成によると、突起挿入部を切欠で構成して第1トングの脱着を容易にするために切欠周縁とフレーム側突起部との間で隙間を設けても、ガタ防止部材がフレーム突起部に当接して地均し時及び掘削時に第1トングがガタつかない。
【0017】
第5の発明では、第2の発明において、
上記フレーム側突起部は、上記フレーム側板に取り付けられた棒状部材よりなり、
上記突起挿入部は、上記第1トング側板に貫通された挿通孔よりなり、
上記脆弱部は、上記棒状部材に貫通形成された貫通孔又は該棒状部材の外周に凹陥された凹部である。
【0018】
上記の構成によると、第1トングをフレームに取り付ける際には、挿通孔よりなる突起挿入部に棒状部材よりなるフレーム側突起部を挿入すればよい。そして、ピン、ボルトなどの棒状部材に貫通孔や凹部を形成することで、その周縁が他の部分よりも弱くなり、脆弱部が容易に形成されると共に、この脆弱部から確実に破断して旋回ベアリングの損傷が防止される。また、棒状部材を交換すれば再びグラップル装置を使用できるようになるので、作業できない時間が短くて済む。
【0019】
第6の発明では、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、
上記第1トングは、上記第2トングと同様の形状のものに交換され、上記軸部材を中心に回動されることにより、該第1トングと該第2トングとで挟み込み作業を行うことができ、
上記挟み込み作業においては、上記固定ストッパは、取り外され又は上記第1トングと接触しないように構成されている。
【0020】
上記の構成によると、地均し及び掘削作業を行うバケット形状の第1トングを第2トングと同様の形状のものに交換し、上記軸部材を中心に回動させることにより、第1トングと第2トングとで挟み込み作業を行うことができる。この場合には、固定ストッパと第1トングとの係合を解いてフレームに対して自由に第1トングが開閉できるようにすればよい。
【0021】
第7の発明では、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、
上記取付ブラケットの上記作業機械側には、立木を伐採した後に残った伐根に当接して該伐根を引き抜く伐根引抜き部材が突設されている。
【0022】
上記の構成によると、取付ブラケットに設けた伐根引抜き部材を利用して取付ブラケットを揺動させることで伐根が容易に引き抜かれる。このとき、伐根引抜き部材は旋回ベアリングよりもアームよりの取付ブラケットに設けられているので、旋回ベアリング自体には負荷をかけない。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削が行えるグラップル装置において、第1トングの基端側をフレームに軸部材によって支持し、この軸部材から離れた位置で固定ストッパによってフレームに固定し、第1トングに所定の負荷が加わると、固定ストッパが外れるようにしたことにより、旋回ベアリングに加わる負荷を制限し、その損傷を防止して耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態におけるグラップル装置の固定ストッパ及びその周辺を拡大して示し、(a)が正面図で(b)が側面図である。
【図2】グラップル装置の正面図である。
【図3】グラップル装置の左側面図である。
【図4】グラップル装置の右側面図である。
【図5】グラップル装置の平面図である。
【図6】旋回ベアリング及びその周辺を拡大して示す断面図である。
【図7】グラップル装置を用いて掘削作業を行う様子を示す側面図である。
【図8】グラップル装置を用いて地均し作業を行う様子を示す側面図である。
【図9】伐根引抜き部材を伐根に近づける様子を示す側面図である。
【図10】伐根引抜き部材を伐根に引っ掛けて引き起こす様子を示す側面図である。
【図11】グラップル装置を用いて引き抜いた伐根を掴みあげる様子を示す側面図である。
【図12】幅が異なる第1トングを取り付けた様子を示す図4相当図である。
【図13】第2トングと同形状の第1トングを取り付けた様子を示す図2相当図である。
【図14】その他の実施形態にかかる図1相当図であり、(a)が正面図で(b)がXIVb−XIVb線断面図である。
【図15】その他の実施形態にかかる図1相当図であり、(a)が正面図で(b)がXVb−XVb線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図2〜図5は、本発明の実施形態のグラップル装置20を示し、このグラップル装置20は、作業機械としての油圧ショベル1等のアーム8の先端に取り付けられ、木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削を行う。図7に示すように、油圧ショベル1は、例えば、クローラ2を有する下部走行体3と、この下部走行体3に対してショベル本体旋回ベアリング4を介して旋回自在に支持される上部旋回フレーム5とを備えている。上部旋回フレーム5の前側には、ブーム6がブームシリンダ7によって揺動可能に連結されている。アーム8は、ブーム6の先端にアームシリンダ9によって揺動自在に連結されている。グラップル装置20は、このアーム8の先端の第1支持ピン10と、バケットシリンダ11の先端及びアーム8の先端に連結されたリンク部材13の一端に設けた第2支持ピン12とに連結されている。なお、作業機械の構成は、このような油圧ショベル1に限定されず、クローラ2ではなく、ホイールを有するものであったり、下部走行体3を有さず地面等に固定するものであったりしてもよい。
【0027】
そして、図2〜図5に示すように、グラップル装置20は、第1支持ピン10が挿入される第1ボス部21及び第2支持ピン12が挿入される第2ボス部22が設けられた取付ブラケット23を備えている。この取付ブラケット23は、第1ボス部21及び第2ボス部22が設けられた一対の連結部24と、この連結部24に溶接等により接続された箱状のベース部25とを備えている。第1ボス部21及び第2ボス部22とリンク部材13との位置関係により、バケットシリンダ11を伸縮操作することで、取付ブラケット23が図2のAの方向に揺動するようになっている。詳しくは図示しないが、このベース部25には、油圧ショベル1からの高圧油を利用する油圧機器が内蔵されている。そして、図6に拡大して示すように、ベース部25には、旋回ベアリング26の外輪27が外側旋回輪固定ボルト28により固定されている。
【0028】
一方、旋回ベアリング26の内輪29が内側旋回輪固定ボルト30によってフレーム35に固定されている。内輪29の歯車29aにベース部25内の旋回モータ31(図2に破線でのみ示す)のピニオンを噛み合わせることで、旋回モータ31により、フレーム35が取付ブラケット23に対して図2のBの方向に回転自在に構成されている。
【0029】
フレーム35は、箱形製缶構造を有し、アーム8の揺動操作により地均し及び掘削作業を行う第1トング40と、この第1トング40に対向して配置され、フレーム35に対して図2のCの方向に揺動可能に軸支された第2トング50とを備えている。
【0030】
具体的には、第1トング40は、基端側が軸部材としての一対の第1連結ピン41によってフレーム35の一対の第1ピン支持部36に支持されている。第1トング40は、その先端に掘削用の複数の爪部42を有し、掘削した土等を内部に収容可能なバケット形状をしている。第1トング40の一対の第1連結ピン41の間には、第1シリンダ連結部43が設けられ、フレーム35に内蔵されたグラップルシリンダ37のロッド37a側が連結されている。そして、第1トング40の側板44とフレーム35とが固定ストッパ60によって固定されている。この固定ストッパ60として、図1に拡大して示すように、フレーム側突起部61が第1連結ピン41から離れた位置、すなわち、第1トング40と第2トング50との中間のフレーム35の側板38から突出して設けられている。フレーム側突起部61は、例えば、フレーム35に溶接された鋼板よりなり、具体的には、側板38に溶接される取付部61aと取付部61aから水平に第1連結ピン41の軸方向に延びる係合部61bとを備え、係合部61bには、脆弱部としての貫通孔61cが形成されている。なお、フレーム側突起部61を溶接以外の方法、例えばボルト、ピン等により側板38に固定して交換を容易にしてもよい。
【0031】
一方、固定ストッパ60は、第1トング40の側板44に形成され、フレーム側突起部61が挿入される突起挿入部62を備えている。突起挿入部62は、第1トング40の側板44に切り欠かれた切欠よりなり、第1トング40が固定された状態で第2トング50側(図2の右側)が開口し、その高さh1は、係合部61bの高さh2よりも高く、隙間h3が形成されるようになっている(h3=h1−h2)。そして、この隙間h3を埋めるために、突起挿入部62の周辺、例えば、固定時の側板44における突起挿入部62の下面62aの裏側には、フレーム側突起部61に当接するガタ防止部材63が着脱可能に構成されている。つまり、第1トング40をフレーム35に取り付ける際には、切欠よりなる突起挿入部62の開口部分からフレーム側突起部61を挿入し、その後、隙間h3を埋めるためにガタ防止部材63を現場溶接したりボルト締結したりすればよい。このように構成することにより、突起挿入部62を切欠で構成して第1トング40の脱着を容易にするために突起挿入部62とフレーム側突起部61との間で隙間h3を設けても、ガタ防止部材63がフレーム35突起部に当接して掘削時及び地均し時に第1トング40がガタつかないようになっている。
【0032】
そして、第2トング50は、基端側50aがフレーム35に一対の第2連結ピン51によってフレーム35の一対の第2ピン支持部39に支持されている。第2トング50は、先端が尖った一対の側板52とこれら一対の側板52を連結する先端部53とを備え、基端側50aには、グラップルシリンダ37のチューブ37b側の端部に回転可能に連結された第2シリンダ連結部54が設けられている。このことで、グラップルシリンダ37を伸縮すれば、第1トング40が固定されていることから、この第1トング40側を反力受けとして第2トング50が図2の矢印Cのように揺動し、第1トング40の先端と、第2トング50の先端部53とで木材等の挟み込み作業を行えるようになっている。なお、この挟み込み作業においてオーバーロードがかかるような場合には、ベース部25内又は油圧ショベル1側のリリーフ弁(図示せず)によりリリーフされるので、固定ストッパ60が外れるほどの荷重は加わらないようになっている。
【0033】
また、図2に示すように、取付ブラケット23の油圧ショベル1側には、立木を伐採した後に残った伐根Rに当接して伐根Rを引き抜く伐根引抜き部材70が突設されている。伐根引抜き部材70は、図5に示すように、第1支持ピン10と平行に延びる板状の当接部70aを備え、この当接部70aは、図4に示すように、油圧ショベル1側からみると、中央が最も低くなるように湾曲し、先端がギザギザの鋸歯状に形成されている。この伐根引抜き部材70は、この当接部70aに溶接された取付部70bも備え、この取付部70bが一対の連結部24及びベース部25に溶接された水平板71に取付ボルト72によって着脱自在に設けられている。伐根引抜き部材70は、伐根引抜き作業を行わないときには取り外して軽量化を図ったり、新品のものや当接部70aの形状が異なるものと交換したりできるようになっている。この取付ブラケット23に設けた伐根引抜き部材70を利用し、取付ブラケット23を揺動させることで伐根Rが容易に引き抜かれる。このとき、伐根引抜き部材70は、旋回ベアリング26よりもアーム8側の取付ブラケット23に設けられているので、旋回ベアリング26自体には負荷をかけない。
【0034】
−グラップル装置の使用方法−
次に、本実施形態にかかるグラップル装置20の使用方法について説明する。
【0035】
本実施形態のグラップル装置20を備えた油圧ショベル1は、例えば山林などで用いられ、アーム8等を揺動、旋回等させると共に、グラップルシリンダ37を伸縮させて第2トング50を開閉し、伐採した木材の集材、木口揃え、積込、荷降しなどの作業を行う。
【0036】
また、山林においては、伐採した木材を集材する際に油圧ショベル1の走行を容易にするために、走行路を形成して走行させるようにするが、その際に立木を伐採した後に地面Gに残った伐根Rが邪魔になることがあるので、これを引き抜く作業、すなわち伐根引抜き作業を行って走行路を整地すると共に、引き抜いた伐根Rを路肩などに埋め戻して補強用に使用する。
【0037】
このように、グラップル装置20は、図7に示すように、掘削作業を行ったり、図8に示すように、地均し作業を行ったり、図9及び図10に示すように伐根引抜き作業を行ったり、図11に示すように挟み込み作業を行ったりできるようになっている。
【0038】
特に図7の掘削作業において、例えば伐根Rごと掘削作業を無理に行おうとした場合には、第1トング40に大きな荷重(オーバーロード)が加わり、その結果、旋回ベアリング26の特に内側旋回輪固定ボルト30及びその周辺に負荷がかかる。しかし、本実施形態のグラップル装置20には固定ストッパ60が設けられているので、図1の白抜き矢印の方向に荷重が加わって貫通孔61cの周縁に剪断応力が働き、フレーム側突起部61が破断する。すると、第1トング40が第1連結ピン41を中心に回動して逃げるので、旋回ベアリング26にそれ以上の力が加わらず、旋回ベアリング26を痛めることはない。
【0039】
そして、グラップル装置20を再使用するときには、損傷したフレーム側突起部61をガスバーナ等で取り外し、新しいフレーム側突起部61を再び溶接するとよい。
【0040】
一方、このように旋回ベアリング26に負担のかかりやすい伐根引抜き作業を行う場合には、旋回ベアリング26に負担をかけない伐根引抜き部材70を使用すればよい。
【0041】
すなわち、図9のように、第2トング50を閉じた状態で、アームシリンダ9を縮小させてグラップル装置20を地面Gに対して水平とし、地面Gから飛び出した伐根Rに当接部70aを当接させる。
【0042】
そして、アーム8、ブーム6、クローラ2等を操作して伐根Rを引き抜く。この際に伐根引抜き部材70は、取付ブラケット23に設けられているので、旋回ベアリング26に過大な負荷はかからない。
【0043】
なお、図8に示す地均し作業においては、図1の白抜き矢印とは逆の方向に力が加わるが、この場合でもオーバーロードがあった場合には、貫通孔61cでフレーム側突起部61が剪断され、旋回ベアリング26に過大な負荷が加わることはない。
【0044】
一方で、図12に示すように、グラップル装置20は、第1トング40を幅の狭い第1トング140に交換可能となっている。この場合も、第1トング140に上記突起挿入部62を形成すればよい。
【0045】
さらに、図13に示すように、第1トング40を第2トング50と同様の形状(対称形状)の第1トング240に交換することができる。この場合には、第1トング240は、第1連結ピン41を中心回動されることにより、第1トング240と第2トング50とで挟み込み作業を行うことができる。この挟み込み作業においては、固定ストッパ60は、第1トング240と接触しない位置に設ければよい。
【0046】
したがって、本実施形態では、木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削が行えるグラップル装置20において、第1トング40の基端側をフレーム35に第1連結ピン41によって支持し、この第1連結ピン41から離れた位置で固定ストッパ60によってフレーム35に固定し、第1トング40に所定の負荷が加わると、固定ストッパ60が外れるようにしたことにより、旋回ベアリング26に加わる負荷を制限し、その損傷を防止して耐久性を向上させることができる。
【0047】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0048】
すなわち、上記実施形態では、フレーム側突起部61に脆弱部としての貫通孔61cを設けているが、突起挿入部62側に脆弱部を設けてもよい。例えば、突起挿入部62の上側に弱い部分を設けて破断又は取り外ししやすいように構成し、かつ第1トング40の固定が解除されて再使用するときに補修しやすいように構成すればよい。
【0049】
上記実施形態では、固定ストッパ60のフレーム側突起部61を鋼板で構成したが、例えば、図14に示すように、固定ストッパ160として、フレーム35側面に取り付けられた棒状部材としての固定ピン161を備えていてもよい。固定ピン161は、棒鋼よりなる固定ピン本体161aと、この固定ピン本体161aに溶接された鍔部材161bとを備えている。鍔部材161bを固定用ボルト161dで側板44に脱着可能に固定するとよい。そして、固定ピン本体161aには、脆弱部として外周に凹部としての凹溝161cが凹陥されている。この凹溝161cは、同様の位置に非連続の凹部を設けてもよく、また直径方向に貫通する貫通孔を設けてもよい。一方、突起挿入部162は、第1トング40の側板44に貫通された挿通孔で構成すればよい。また、側板38に固定ピン本体161aを挿入するための挿入孔38aを形成する。このように構成することで、第1トング40をフレーム35に取り付ける際には、第1連結ピン41で第1トング40を回動可能に支持した後、第1トング40を回動させて突起挿入部162と挿入孔38aとを位置決めし、突起挿入部162に固定ピン161を挿入すればよい。なお、突起挿入部162の裏面側にボス部162aを設けて補強することにより、ガタを防止したり、過負荷時に優先して凹溝161c周縁が破損させたりするようにしている。また、固定ピン本体161aの先端にテーパ161eを設けておけば、固定ピン161をハンマでたたくなどにより、挿入作業を容易に行うことができる。そして、この変形例においては、固定ピン161に凹溝161cが形成されているので、その周縁が他の部分よりも弱くなり、脆弱部が容易に形成されると共に、この脆弱部から確実に破断させることにより、旋回ベアリング26の損傷が防止される。また、固定ピン161を交換するだけで再びグラップル装置20を使用できるようになるので、作業できない時間が短くて済むというメリットがある。
【0050】
また、図15に示すように、固定ストッパ260として、フレーム35側面に取り付けられた棒状部材としての固定ボルト261を備えていてもよい。固定ボルト261は、所定の剪断力で剪断されるサイズの固定ボルト本体261aと、この固定ボルト本体261aの先端に締結されるダブルナット261bとを備えている。固定ボルト本体261aを上記サイズよりも大きくして、剪断力が加わる部分に貫通孔、凹部等の脆弱部を設けてもよい。一方、突起挿入部262は、第1トング40の側板44に貫通された挿通孔で構成すればよい。また、側板38に固定ボルト本体261aを挿入するための挿入孔38aを形成する。このように構成することで、第1トング40をフレーム35に取り付ける際には、第1連結ピン41で第1トング40を回動可能に支持した後、第1トング40を回動させて突起挿入部262と挿入孔38aとを位置決めし、挿入孔38a側から突起挿入部262へ固定ボルト本体261aを挿入し、その先端にダブルナット261bを締結すればよい。この場合も、所定の剪断力で固定ボルト本体261aが剪断されるので、旋回ベアリングの損傷が防止される。また、固定ボルト261を交換するだけで再びグラップル装置20を使用できるようになるので、作業できない時間が短くて済むというメリットがある。
【0051】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 油圧ショベル(作業機械)
8 アーム
20 グラップル装置
23 取付ブラケット
26 旋回ベアリング
35 フレーム
38 側板
40 第1トング
41 第1連結ピン(軸部材)
44 側板
50 第2トング
60 固定ストッパ
61 フレーム側突起部
61c 貫通孔(脆弱部)
62 突起挿入部(切欠)
63 ガタ防止部材
70 伐根引抜き部材
140 第1トング
160 固定ストッパ
161 固定ピン(棒状部材)
161c 凹溝(脆弱部)
162 突起挿入部
260 固定ストッパ
261 固定ボルト(棒状部材)
262 突起挿入部
240 第1トング
h3 隙間
R 伐根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材のグラップル作業並びに地面の地均し及び掘削を行うグラップル装置において、
作業機械のアームの先端に揺動可能に支持される取付ブラケットと、
上記取付ブラケットに対して旋回ベアリングを介して回転自在に接続されるフレームと、
上記フレームに連結され、上記アームの揺動操作により地均し及び掘削作業を行う第1トングと、
上記第1トングに対向して配置され、上記フレームに対して揺動可能に軸支された第2トングとを備え、
上記第1トングは、基端側が上記フレームに軸部材によって支持されると共に、該軸部材から離れた位置で固定ストッパによって該フレームに固定されており、
上記第1トングに所定の負荷が加わると、上記固定ストッパが外れるように構成されている
ことを特徴とするグラップル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のグラップル装置において、
上記固定ストッパは、
上記フレーム側板に取り付けられたフレーム側突起部と、
上記第1トング側板に形成され、上記フレーム側突起部が挿入される突起挿入部とを備え、
上記フレーム側突起部又は上記突起挿入部には、脆弱部が形成されている
ことを特徴とするグラップル装置。
【請求項3】
請求項2に記載のグラップル装置において、
上記フレーム側突起部は、上記フレーム側板に固定された鋼板よりなり、
上記突起挿入部は、上記第1トング側板に切り欠かれた切欠よりなり、
上記脆弱部は、上記鋼板に貫通形成された貫通孔である
ことを特徴とするグラップル装置。
【請求項4】
請求項3に記載のグラップル装置において、
上記突起挿入部の周辺には、上記フレーム側突起部に当接するガタ防止部材が着脱可能に構成されている
ことを特徴とするグラップル装置。
【請求項5】
請求項2に記載のグラップル装置において、
上記フレーム側突起部は、上記フレーム側板に取り付けられた棒状部材よりなり、
上記突起挿入部は、上記第1トング側板に貫通された挿通孔よりなり、
上記脆弱部は、上記棒状部材に貫通形成された貫通孔又は該棒状部材の外周に凹陥された凹部である
ことを特徴とするグラップル装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のグラップル装置において、
上記第1トングは、上記第2トングと同様の形状のものに交換され、上記軸部材を中心に回動されることにより、該第1トングと該第2トングとで挟み込み作業を行うことができ、
上記挟み込み作業においては、上記固定ストッパは、取り外され又は上記第1トングと接触しないように構成されている
ことを特徴とするグラップル装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のグラップル装置において、
上記取付ブラケットの上記作業機械側には、立木を伐採した後に残った伐根に当接して該伐根を引き抜く伐根引抜き部材が突設されている
ことを特徴とするグラップル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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