説明

グラビア版に用いる銅の再利用方法

【課題】グラビア版の再版時に発生する銅及びクロムメッキ層から銅を効率よく分離し、再利用する方法を提供すること。
【解決手段】使用後のグラビア版の鉄芯から、銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層を剥がし、前記バラード層を濃度30〜40重量%の硫酸曹にてクロムメッキ層のみ溶解させ、前記バラード層のうち溶解しなかった銅メッキ層を、陰極側をナトリウムイオンを通すが銅イオンを通さないイオン交換膜で保護した塩水電極曹にて通電することで、陽極付近に銅イオンを濃縮し、水酸化ナトリウム水溶液を追加して水酸化銅を析出させ、これをとり、加熱して酸化銅として回収することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア版の再利用時に、剥離した銅メッキ層に用いた銅を再利用する方法であり、特には銅メッキ層およびクロムメッキ層を分離し、銅を効率よく回収し再利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラビア版は鉄芯と銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層とからなり、グラビア版の使用後は、バラード層を剥がし、鉄芯は再利用していた。銅メッキ層の銅の再利用はプリント積層版などでは知られているが、クロムメッキ層との分離の必要性から効率よく再生利用できないため、グラビア版では行われていなかった。
【特許文献1】特開平7−33435号公報
【特許文献2】特開2001−9283号公報
【特許文献3】特開2002−47584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、グラビア版の再版時に発生する銅及びクロムメッキ層から銅を効率よく分離し、再利用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこの課題を解決するものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、使用後のグラビア版の鉄芯から、銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層を剥がし、前記バラード層を濃度30〜40重量%の硫酸曹にてクロムメッキ層のみ溶解させ、前記バラード層のうち溶解しなかった銅メッキ層を、陰極側をナトリウムイオンを通すが銅イオンを通さないイオン交換膜で保護した塩水電極曹にて通電することで、陽極付近に銅イオンを濃縮し、水酸化ナトリウム水溶液を追加して水酸化銅を析出させ、これをとり、加熱して酸化銅として回収することを特徴とする、グラビア版に用いる銅の再利用方法である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明により、濃度30〜40重量%の硫酸曹を用いることでクロムメッキ層を容易に分離でき、銅イオンを通さないイオン交換膜を用いることで効率よく銅を回収することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、グラビア版からバラード層を剥離し、濃度30〜40重量%の硫酸曹につけることでクロムメッキ層を分離し、銅メッキ層のみを取り出す。
【0007】
次に、銅イオンを濃縮する。図1に塩水電極曹での銅イオンを濃縮する方法の概略を示す。容器1の中には塩水2が満たされ、容器外の電池3を通じて繋がっている陽極4と陰極5が塩水2中に配される。そして陰極5の周りにイオン交換膜6が配されている。このイオン交換膜6はナトリウムイオン7を通すが銅イオン8を通さないものを用いているので、ナトリウムイオン7は陰極側に集まるが、銅イオン8はその外側に濃縮される。
【0008】
濃縮後、図示しないが、水酸化ナトリウム水溶液を添加して水酸化銅(Cu(OH))を発生させ、沈殿させる。これを採取して加熱し、酸化銅(CuO)とする。
【0009】
このようにして得た酸化銅(CuO)を、図2に示す従来のグラビア版用バラード銅の作成装置における新規な酸化銅(CuO)の使用と同様に使用することで、グラビア版に再利用することが可能となる。ここでは硫酸水溶液9中に再生した酸化銅10を溶解させ、グラビア版11を陰極とすることで、グラビア版の表面で銅12を析出させ銅メッキとしている。
【0010】
本発明におけるクロムメッキ層を分離する硫酸曹としては、硫酸の濃度30〜40重量%のものを用いる。30重量%未満では分離が十分ではなく、40重量%を超えると銅メッキ層に影響が及ぶものとなってしまう。最適には35重量%である。
【0011】
本発明におけるイオン交換膜6としては、マイナス電荷を帯びた官能基(例えばスルフォン酸)が固定されていて、固定されている電荷と同じ電荷のイオンは膜内の透過を邪魔される。しかし、原子の大きさによっては、固定されている電荷と異なる電荷の原子でも膜の物理的な穴によって通ったり、通らなかったりする。本発明では、原子の大きさが銅イオンより小さいプラス電荷を帯びたナトリウムイオン7を通すが、原子の大きさがナトリウムイオンより大きいプラス電荷を帯びた銅イオン8を通さない陽イオン交換膜を用いる。具体的には、厚さ130μmの陽イオン交換膜が使用可能であり、AGCエンジニアリング(株)製:「セレミオンCMV」が好適に用いられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0012】
本発明における塩水電極曹の塩分濃度としては、1重量%〜26.4重量%(6.1mol/リットル)のものが好適である。1重量%未満では電流の流れが小さいという不都合があり、26.4重量%を超えると飽和溶解度を越えて塩分が沈殿するという不都合が発生する。ただし、上記は水温は25℃と仮定し、食塩の飽和溶解度を100gの水に35.2g(26.4重量%)まで(食塩の分子量58.5、6.1mol/リットル)溶けるとした場合であり、適宜変更可能である。
【0013】
本発明における塩水電極曹の電流密度としては、10〜100A/dmが好適であり、およそ0.1から8時間程濃縮させるのが効率が良い。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明により、グラビア版の再版時に発生する銅及びクロムメッキ層から銅を銅イオン及び酸化銅として再生利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】塩水電極曹銅での銅イオンを濃縮する方法の概略を示す説明図である。
【0016】
【図2】従来のグラビア版用バラード銅の作成装置の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1…容器
2…塩水
3…電池
4…陽極(白金製)
5…陰極(白金製)
6…イオン交換膜
7…ナトリウムイオンNa
8…銅イオンCu2+
9…硫酸水溶液
10…再生した酸化銅
11…グラビア版(陰極)
12…銅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用後のグラビア版の鉄芯から、銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層を剥がし、前記バラード層を濃度30〜40重量%の硫酸曹にてクロムメッキ層のみ溶解させ、前記バラード層のうち溶解しなかった銅メッキ層を、陰極側をナトリウムイオンを通すが銅イオンを通さないイオン交換膜で保護した塩水電極曹にて通電することで、陽極付近に銅イオンを濃縮し、水酸化ナトリウム水溶液を追加して水酸化銅を析出させ、これをとり、加熱して酸化銅として回収することを特徴とする、グラビア版に用いる銅の再利用方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−50748(P2009−50748A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216901(P2007−216901)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】