説明

グラファイトの製造方法

【課題】熱分解過程における高分子フィルム同士の融着を防ぐことができ、熱分解過程において生じる歪をより小さくすることで、より優れたブロック状の高配向性グラファイトを製造することができるグラファイトの製造方法を提供する。
【解決手段】高分子フィルムを複数枚積層して印加圧力を制御しながら焼成することでグラファイト化させる方法であって、あらかじめ高分子フィルムに表面粗化処理を施してグラファイトを製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、グラファイトの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、熱分解過程における高分子フィルム同士の融着を防ぐことができ、熱分解過程において生じる歪をより小さくすることで、より優れたブロック状の高配向性グラファイトを製造することができるグラファイトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
グラファイトは抜群の耐熱性、耐薬品性、高電気伝導性等を有するため、従来より工業材料として重要な地位を占め、ガスケット、電極、発熱体、構造材として広く使用されている。なかでもブロック状の高配向性グラファイトは、X線や中性子線に対する優れた分光、回折特性を有するため、X線や中性子線のモノクロメーター、あるいはフィルターとして広く用いられている。このブロック状の高配向性のグラファイトとしては、天然のグラファイトの産量が非常に限られており、しかもほとんどが粉状として得られることから、人工のグラファイトが主として用いられている。
【0003】
このブロック状の高配向性グラファイトの製造方法としては、炭化水素ガスを気相中で高温熱分解して堆積させた後、圧力を印加しつつ、3400℃で長時間再焼鈍する方法が知られている。このようにして製造されるグラファイトは高配向熱分解グラファイト(HOPG)と呼ばれ、天然の単結晶グラファイトと同等の優れた特性を有している。しかしながらこの製造方法は工程が極めて複雑であり、かつ歩留まりも低く、その結果、得られる高配向熱分解グラファイトは極めて高価となってしまうという欠点があった。
【0004】
一方で、この出願の発明者らは、高分子材料を高温焼成することにより、グラファイトを比較的容易に、かつ低コストで製造することができる方法を提案(特許第1535250号、特許第1566175号号)している。この方法においては、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンベンゾイミタゾール、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン等の高分子材料に対して適切な熱処理を施すことにより、高分子材料を良質なグラファイトに転化させるようにしている。
【0005】
そしてこの出願の発明者らは、上記の発明を基に更なる改良を重ね、高分子フィルムを積層して高温焼成することにより、ブロック状のグラファイトを製造する方法(特許第1991823号)や、高分子フィルムの熱分解温度域では実質的に圧力を印加せず、熱分解温度以上から2000℃の温度域で0.2〜5MPaの圧力を、2600℃以上の温度域では5MPa以上の圧力を印加することで、高配向性を示すブロック状のグラファイトを製造する方法(特許第2975098)を提案してもいる。
【0006】
この後者の方法において、熱分解温度域(一般に300〜1000℃)で圧力を印加しないのは、この領域で高分子フィルムは熱分解を起こして急激に収縮するため、圧力を印加すると高分子フィルム同士が融着し、高分子フィルム間で発生する分解ガスのスムーズな放出が妨げられたり、さらには高分子フィルムの炭化物が破壊してしまうからである。分解温度以上から2000℃の温度域では、炭化物はいわゆるハードカーボンの状態となって伸び縮みしないため、0.2〜5MPaの圧力を印加することで炭化物を壊さないように焼成するとともに分解温度領域で生じた内部歪を取り除くようにしている。また、2000℃〜2600℃の温度域では炭化物は逆に元の寸法の90%程度にまで伸びるため、内部歪を生じさせないために圧力を印加しないようにしている。さらに、2600℃以上の温度域では炭化物の寸法はほとんど変化せず、炭化物のグラファイト化を進めつつ高分子フィルムの炭化物同士を接着させるために5MPa以上の圧力を印加するようにしている。このように、熱分解・炭化、グラファイト化、接着の各工程において印加圧力をそれぞれ制御することにより、この従来の方法においては、ロッキング特性が0.7°程度のブロック状の高配向性グラファイトを製造することができるようになっている。
【0007】
しかしながら、このような改良された方法においても、キャスティングの際に高分子フィルムが帯電するために高分子フィルム同士が密着し、続く熱分解過程において高分子フィルム同士が融着してしまい、分解ガスの放出が妨げられて、炭化物が破壊してしまうという問題がしばしば生じていた。
【0008】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、熱分解過程における高分子フィルム同士の融着を防ぐことができ、熱分解過程において生じる歪をより小さくすることで、より優れたブロック状の高配向性グラファイトを製造することができる方法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発明を提供する。
【0010】
すなわち、まず第1には、この出願の発明は、高分子フィルムを複数枚積層して印加圧力を制御しながら焼成することでグラファイト化させる方法であって、あらかじめ高分子フィルムに表面粗化処理を施すことを特徴とするグラファイトの製造方法を提供する。
【0011】
また、この出願の発明は、上記の発明において、第2には、高分子フィルムが、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンベンゾイミタゾール、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンからなるグループの少なくとも1種であることを特徴とするグラファイトの製造方法を、第3には、表面粗化処理は、高分子フィルムの片面について、厚さに対して2%以上20%以下の範囲の深さで行なうことを特徴とするグラファイトの製造方法を、第4には、印加圧力は、2000℃以下の温度域で0.2〜5MPaの範囲で、2000℃を超えて2600℃未満の温度域では実質的に印加せず、2600℃以上の温度域では5MPa以上の範囲で制御することを特徴とするグラファイトの製造方法を、第5には、高分子フィルムが、厚さ5μm以上400μm以下であることを特徴とするグラファイトの製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記の通りの特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
まず、この出願の発明が提供するグラファイトの製造方法は、高分子フィルムを複数枚積層して印加圧力を制御しながら焼成することでグラファイト化させる方法であって、あらかじめ高分子フィルムに表面粗化処理を施すことを特徴としている。
【0014】
高分子フィルムとしては、高温での熱処理によってグラファイトに転化することができる各種の高分子のフィルムを用いることができる。より具体的には、この出願の発明においては、たとえば、各種のポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサゾール(PBBO)、各種のポリピロメリットイミド(PI)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリフェニレンベンゾイミタゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール(PBBI)、ポリチアゾール(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)等の高分子の少なくとも1種からなるフィルムを用いることを好適な例として示すことができる。
【0015】
ここで、各種のPODとは、ポリパラフェニレン−1,3,4−オキサジアゾールおよびそれらの異性体を意味している。また、各種のPIとは、代表的には、一般式
【0016】
【化1】



【0017】
で表されるポリイミドである。また、PAとは、代表的には、一般式
【0018】
【化2】



【0019】
で表されるポリアミドである。もちろん、この出願の発明において用いることのできる高分子フィルムは、これらに限定されることはない。
【0020】
この出発材料としての高分子フィルムは、厚さが5μm以上400μm以下であることが望ましい。高分子フィルムの厚さが5μm未満であると、表面粗化処理を施しにくく、高分子フィルム強度が低下するとともに、同じ厚さのグラファイトブロックを得るのにより多数枚の高分子フィルムを必要とするため工程が煩雑となり好ましくない。また、厚さが400μmを超過すると、焼成時に高分子フィルムが急激に収縮するとともに発生するガスのために高分子フィルムの内部構造が破壊されやすく、歪の少ないブロック状高配向性グラファイトを得ることが困難となるために好ましくない。
【0021】
そしてこの出願の発明においては、この出発材料としての高分子フィルムにあらかじめ表面粗化処理を施すようにしている。この表面粗化処理は、高分子フィルムの片面に、厚さに対して2%以上20%以下の範囲の深さの凹部を設けるように行なうことが好ましい。この高分子フィルムへの表面粗化処理の手法としては、特に制限されることはなく、たとえば、機械的なヘヤライン加工、機械式打痕によるエンボス加工、サンドブラスト加工、レーザーによるマイクロホール加工、真空中でのプラズマ処理等の各種の手法を利用することができる。
【0022】
高分子フィルムの表面をこのように粗化することによって、積層のためのキャスティング時に高分子フィルムが帯電するのを抑制でき、かつ高分子フィルム同士が密着するのを防ぐことができる。したがって、複数枚の高分子フィルムを積層して焼成する場合であっても、高分子フィルムが全面で融着することがなく、熱分解にともなう分解ガスを高分子フィルム間からスムーズに放出させることができる。また、分解ガスの放出が妨げられないため、高分子フィルムの炭化物が破壊してしまうという問題を解消することができる。ここで、表面粗化処理で設けられる凹部の深さが2%未満であると、上記の効果を十分に得ることができなくなるために好ましくない。また深さが20%を超過すると、高分子フィルムの強度が低下したり、焼成後においても高分子フィルムに設けられた凹部に空気層を残してしまうことがあるため好ましくない。
【0023】
このようなこの出願の発明のグラファイトの製造方法において、高分子フィルムの焼成時の印加圧力は、2000℃以下の温度域で0.2〜5MPaの範囲で、2000℃を超えて2600℃未満の温度域では実質的に印加せず、2600℃以上の温度域では5MPa以上の範囲で制御することができる。ここで、本質的に圧力を印加しないというのは、加圧のための治具重量等の微小な圧力のみが加わっているということを示し、このとき許容される圧力の大きさは、0.2MPa未満程度を目安とすることができ、より好ましくは0.1MPa未満である。
【0024】
従来では、高分子フィルムに表面粗化処理をしていなかったため、高分子フィルムが大きく縮む熱分解温度領域(一般に300〜1000℃程度)で圧力を印加するとフィルム同士が融着し、内部から発生する分解ガスのスムーズな放出を妨げ、またその発生ガスによって炭化物が破壊されてしまうため、熱分解温度領域で圧力を印加することは得られるグラファイトの品質を低下させるものとなっていた。しかしながら、上記の通り高分子フィルムに表面粗化処理を施すようにしたこの出願の発明においては、フィルム同士が密着しにくくなるため、熱分解温度域であっても5MPa程度を最大として、0.2MPa以上の圧力を印加することができる。そのため、熱分解温度域での焼成で得られるハードカーボン状の炭化物は従来に比べてはるかに内部歪の残留およびしわが少なくなり、引き続き加圧焼成を施すことで、最終的には結晶配向性が向上されたブロック状のグラファイトを得ることができるのである。このようにして得られたブロック状の高配向性グラファイトは、たとえばロッキング特性が0.7未満、さらには0.52程度のものとして実現され、X線モノクロメーター、中性子線モノクロメーター、中性子線フィルター等の放射線光学素子として極めて有用なものとなる。
【0025】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0026】
【実施例】
(実施例1)
COパルスレーザーを用いて、厚さ50μmのポリパラフェニレン−1,3,4−オキサジアゾールフィルムに対し、レーザー径約70μm、1平方センチメートルあたり約50パルスで処理を行い、フィルム表面をRa約5.5μmに粗面化した。
【0027】
ついで、この粗面化したフィルム(5cm×5cm)を300枚積層して試料とし、等方性グラファイト製の治具にセットして、アルゴンガス雰囲気中、昇温速度10℃/min.で3000℃の温度まで昇温し、次いで3000℃の温度を保ちながら試料を完全にグラファイト化した。この間、試料には、温度が1200℃になるまでは0.5MPaの圧力を、温度が1200℃〜1400℃の間は2MPaの圧力を印加し、その後1400℃〜3000℃の温度範囲では圧力を取り除いて治具の重量に相当する圧力のみが印加されるようにした。また、温度が3000℃に達した後は、グラファイト化が終了するまで、再び20MPaの圧力を印加した。
【0028】
得られたブロック状のグラファイトを観察したところ、しわがほとんどなく、均一な表面を有していた。
【0029】
このグラファイトをX線回折装置(理学電機(株)製)を用いて測定し、ロッキング特性を、グラファイト(002)回折線のピーク位置における半値幅をもって評価した。その結果、このグラファイトのロッキング特性は0.55°であり、たとえばX線や中性子線のモノクロメーターとして極めて有用であることが確認された。
(比較例1)
実施例1において、COパルスレーザーによるフィルムの粗面化処理を行わずに、あとは同様にして、グラファイト化のための熱処理を施した。すると、1200℃までの昇温過程において、積層させたフィルム同士が融着するとともに、フィルム内部から発生するガスにより破壊してしまい、ブロック状のグラファイトを得ることはできなかった。
(比較例2)
実施例1において、COパルスレーザーによるフィルムの粗面化処理を行わずに、あとは同様にして、グラファイト化のための熱処理を施した。なお、比較例1におけるフィルムの破壊を防ぐために、1200℃までの昇温過程では特に圧力を加えることなく治具の重量に相当する圧力のみが印加されるようにし、1200℃以上では実施例1と同様の圧力を印加するようにした。
【0030】
これにより得られたブロック状のグラファイトのロッキング特性を調べたところ、その値は0.80°であった。このことから、実施例1のこの出願の発明のグラファイトの製造方法は、ロッキング特性の向上に非常に有効であることが示された。
(実施例2)
ロール状に巻かれた厚さ25μmのポリイミドフィルム(Dupont(株)製、カプトン100Hフィルム)を引き出しながら機械的打痕によりエンボス加工して表面粗化処理を行い、適当な大きさに切断した。エンボス加工では、先端部が直径約1mmの球状のハンマーを用い、1平方センチメートルあたり約100点に打ち下ろした。エンボス加工を施されたフィルムの表面は、Ra約1.2μmであった。表面粗化処理前後のフィルムの表面をレーザー顕微鏡観察した結果をそれぞれ図1、2に示した。
【0031】
次に、表面粗化処理したフィルム(5cm×5cm)を300枚積層して試料とし、等方性グラファイト製の治具にセットして、アルゴンガス中、昇温速度10℃/minで3000℃の温度まで昇温し、次いで3000℃の温度を保ちながら試料を完全にグラファイト化させた。
【0032】
この間、試料には、温度が1400℃になるまでは0.5MPaの圧力を、温度が1400℃〜1600℃の間は2MPaの圧力を印加し、その後1600℃〜2700℃の温度範囲では圧力を取り除いて治具の重量に相当する圧力のみが印加されるようにした。次いで、2700℃〜3000℃の温度範囲では再び20MPaの圧力を印加し、グラファイト化が終了するまで保持した。
【0033】
得られたブロック状のグラファイトを観察したところ、しわがほとんどなく、均一な表面を有していた。また、このグラファイトのロッキング特性を、X線回折装置(理学電機(株)製)を用いて、グラファイト(002)回折線のピーク位置における半値幅をもって評価した。その結果、このグラファイトのロッキング特性は0.46°であり、たとえばX線や中性子線のモノクロメーターとして極めて有用であることが確認された。
(比較例3)
実施例2におけるエンボス加工によるフィルムの粗面化処理を行わずに、あとは同様にして、グラファイト化のための熱処理を施した。すると、1400℃までの昇温過程において、積層させたフィルム同士は融着するとともに、フィルム内部から発生するガスにより破壊してしまい、ブロック状のグラファイトを得ることはできなかった。
(比較例4)
実施例2におけるエンボス加工によるフィルムの粗面化処理を行わずに、グラファイト化のための熱処理を施した。なお、比較例3におけるフィルムの破壊を防ぐために、1400℃までの昇温過程では特に圧力を加えることなく治具の重量に相当する圧力のみが印加されるようにし、1400℃以上では実施例2と同様の圧力を印加するようにした。
【0034】
これにより得られたブロック状のグラファイトのロッキング特性を調べたところ、その値は0.69°であった。このことから、実施例2のこの出願の発明のグラファイトの製造方法は、ロッキング特性の向上に非常に有効であることが示された。
(実施例3)
厚さ50μmのPBT,PBBT,PBO,PBBO,PA,PBI,PPBI,PT,PPVのフィルムに対し、ヘヤライン加工により深さ約5μm、幅約20μmの溝を250μm間隔で設けて表面粗化処理をした。
【0035】
このフィルムを100枚積層して試料とし、等方性グラファイト製の治具にセットして、アルゴンガス中、昇温速度10℃/minで3000℃の温度まで昇温して試料を完全にグラファイト化させた。
【0036】
この間、試料には、温度が1200℃になるまでは0.2MPaの圧力を、温度が1200℃〜2000℃の間は2MPaの圧力を印加し、その後2000℃〜2800℃の温度範囲では圧力を取り除いて治具の重量に相当する圧力のみが印加されるようにした。次いで、2800℃〜3000℃の温度範囲では15MPaの圧力を印加するようにした。
【0037】
得られたブロック状のグラファイトを観察したところ、しわがほとんどなく、均一な表面を有していた。また、このグラファイトのロッキング特性を、X線回折装置(理学電機(株)製)を用いて、グラファイト(002)回折線のピーク位置における半値幅をもって評価した。その結果を各フィルムごとに表1に示した。
【0038】
【表1】



【0039】
(比較例5)
実施例3において、ヘヤライン加工によるフィルムの粗面化処理を行わずに、また1200℃までの昇温過程では特に圧力を加えることなく治具の重量に相当する圧力のみが印加されるようにし、あとは同様にしてグラファイトを作成した。その結果も合わせて表1に示した。
【0040】
表1より、この出願の発明の方法により得られたブロック状のグラファイトのロッキング特性は何れも0.7°未満であり、表面粗化処理なしのものに比べて向上され、優れた値となることが確認された。
【0041】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0042】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、熱分解過程における高分子フィルム同士の融着を防ぐことができ、熱分解過程において生じる歪をより小さくすることで、より優れたブロック状の高配向性グラファイトを製造することができるグラファイトの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面粗化処理前の高分子フィルムの表面をレーザー顕微鏡で観察した結果を例示した図である。
【図2】表面粗化処理後の高分子フィルムの表面をレーザー顕微鏡で観察した結果を例示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルムを複数枚積層して印加圧力を制御しながら焼成することでグラファイト化させる方法であって、あらかじめ高分子フィルムに表面粗化処理を施すことを特徴とするグラファイトの製造方法。
【請求項2】
高分子フィルムが、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリピロメリットイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンベンゾイミタゾール、ポリフェニレンベンゾビスイミタゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンからなるグループの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のグラファイトの製造方法。
【請求項3】
表面粗化処理は、高分子フィルムの片面について、厚さに対して2%以上20%以下の範囲の深さで行なうことを特徴とする請求項1または2記載のグラファイトの製造方法。
【請求項4】
印加圧力は、2000℃以下の温度域で0.2〜5MPaの範囲で、2000℃を超えて2600℃未満の温度域では実質的に印加せず、2600℃以上の温度域では5MPa以上の範囲で制御することを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のグラファイトの製造方法。
【請求項5】
高分子フィルムが、厚さ5μm以上400μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のグラファイトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−18281(P2004−18281A)
【公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−172570(P2002−172570)
【出願日】平成14年6月13日(2002.6.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】