説明

グラフィックス受容性物品及びグラフィックス構造体

【課題】本発明は、インクジェット印刷に使用した際に、ブロッキング、印刷基材(支持体)裏面へのインク移り、及び微小球が樹脂層から脱落(粉落ち)することのないグラフィックス受容性物品及びグラフィックス構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】支持体層、前記支持体層の第一の面に積層され、体積平均粒径が18μm〜40μmの微小球と樹脂とを含み、前記微小球と前記樹脂との質量比が45〜180:100である背面樹脂層、及び前記支持体層の第二の面に積層されるレセプター層を含むグラフィックス受容性物品、及び前記グラフィックス受容性物品のレセプター層に、さらに印刷層、及び粘着剤層をこの順で含むグラフィックス構造体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックス受容性物品に関する。詳しくは、支持体層、前記支持体層の第一の面に積層された背面樹脂層、及び前記支持体層の第二の面に積層されたレセプター層を含むグラフィックス受容性物品に関する。さらに本発明は、前記グラフィックス受容性物品に、さらに印刷層及び白色粘着剤層を含むグラフィックス構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターにより、フィルム等の平滑な基材に、高速で高画質な画像を印刷する技術が普及している。このような印刷において、インクジェットにより高画質な画像を基材に印刷した後すぐに、基材を巻き取ったり、基材を重ねるというのが通常の工程である。しかし、印刷後すぐに印刷面と基材の裏面が接触することにより、印刷面にブロッキングが生じたり、基材の裏面にインクが移ることが問題となる。
【0003】
例えば特許文献1には、離型性担体に積層されたアクリル系樹脂フィルムからなる印刷基材(A)と、前記アクリル系樹脂フィルムに印刷を施して形成される印刷面に積層するための白色顔料が分散された粘着基材(B)が積層されてなる粘着フィルムが開示されている。本発明は、耐擦傷性、耐候性等の耐久性が良好で、焼却廃棄が容易な印刷物積層体を提供する。
【0004】
例えば特許文献2には、透明基材上に少なくとも透明インクジェット受像層を設け反対面に背面層を設けた透明インクジェット記録シートにおいて、基材が透明樹脂フィルムであり、背面層がバインダーと球状粒子からなることを特徴とする透明インクジェット記録シートが開示されている。前記球状粒子の平均粒径Dが、1〜15μmの範囲であり、かつ、球状粒子の粒径のばらつきが、D±0.3Dμmの範囲内の単分散粒子である。さらに、背面層の厚さTと球状粒子の平均粒径Dの関係が、D−T=0.9〜14μmであり、かつ、記録シートの全光線透過率が85%以上であることを必須用件とする。
【0005】
例えば特許文献3には、支持体の表面と裏面にそれぞれインク受理層と裏塗層を設けてなるインクジェット記録シートにおいて、該支持体が、JIS−B0601による中心線平均粗さ0.4μm以下の表面を有するポリオレフィン樹脂被覆紙又はポリエステルフィルムであり、該裏塗層中に平均粒子径5〜15μmの球状微粒子ポリマーを乾燥重量で5〜100mg/m含有してなり、且つ該裏塗層の厚さが、該球状微粒子ポリマーの平均粒子径よりも小さいことを特徴とするインクジェット記録シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−366040号公報
【特許文献2】特開2007−313837号公報
【特許文献3】特開平7−179025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インクジェット印刷に使用した際に、ブロッキング、印刷基材(支持体)裏面へのインク移り、及び微小球が樹脂層から脱落(粉落ち)することのないグラフィックス受容性物品及びグラフィックス構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、支持体層、前記支持体層の第一の面に積層され、体積平均粒径が18μm〜40μmの微小球と樹脂とを含み、前記微小球と前記樹脂との質量比が45〜180:100である背面樹脂層、及び前記支持体層の第二の面に積層されるレセプター層を含むグラフィックス受容性物品を提供するものである。
【0009】
さらに本発明は、前記グラフィックス受容性物品のレセプター層に、さらに印刷層、及び粘着剤層をこの順で含むグラフィックス構造体を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のグラフィックス受容性物及びグラフィックス構造体は、微小球を含有する樹脂層によりブロッキングや印刷基材(支持体)裏面へのインク移りを防ぐことができ、かつ樹脂層中の微小球が樹脂層から脱落(粉落ち)することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のグラフィック受容性物品の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のグラフィックス構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のグラフィックス受容性物品は、支持体層、前記支持体層の第一の面に積層される背面樹脂層、及び前記支持体層の第二の面に積層されるレセプター層を含む。
【0013】
本発明の支持体層は、レセプター層の基材となり、レセプター層の表面を保護するものである。このような支持体層として、上記役割を満たす強度(剛性)を有するフィルム、あるいは樹脂を前記レセプター層表面に塗布して乾燥した樹脂層を使用することができる。
【0014】
前記フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、またはフッ素系ポリマーからなるフィルムを使用することができる。なかでも剛性の面からPETやPPを好ましいものとして挙げることができる。また前記樹脂としては、例えばポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、またはフッ素系ポリマー等の樹脂を使用することができる。
【0015】
また、ここで用いるフィルムあるいは樹脂は、透明であっても不透明であってもよく、さらに着色の有無も問わない。
【0016】
前記支持体層の厚さは、適宜選択することができ限定されない。例えば、約5μm〜約300μmとすることができる。
【0017】
本発明の背面樹脂層は、微小球と樹脂とを含む。かかる背面樹脂層において、微小球が背面樹脂層を構成する樹脂中にほぼ包括されている(例えば、図1または図2に示す態様)ことが、微小球の脱落(粉落ち)を防ぐため好ましい。
【0018】
前記微小球は、有機材料または無機材料からなる球状の微粒子であり、非粘着性であることが好ましい。具体的には例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリカ、またはガラスからなる球状微粒子を用いることができる。形状は、ブロッキングやインク移り防止の観点から真球状であることが好ましい。また、耐溶剤性の面から、前記微小球は、架橋粒子であることが好ましい。また、中空の粒子も使用することができる。
【0019】
前記微小球の体積平均粒径(D)は、約18μm〜約40μmである。あるいは、約18μm〜約30μmとすることができる。尚、本明細書において、体積平均粒径はコールター(株)社製レーザー回折・散乱粒径測定装置LS−230を用いて測定している。
【0020】
前記背面樹脂層の樹脂は、非粘着性の樹脂であれば良く特に限定されない。前記微小球との濡れ性が良好で膜強度及び耐溶剤性に優れた樹脂を用いるのが好ましい。また、耐溶剤性の面から架橋型の樹脂を利用するのが好ましい。具体的には例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、またはアルキド・メラミン樹脂などを挙げることができる。前記樹脂の粘度は、約100〜約5000センチポイズとすることができる。
【0021】
前記微小球と前記樹脂との質量比は約45〜約180:約100とすることが好ましい。微小球の添加量がこれより少ないと、本発明のグラフィックス受容性物品またはグラフィックス構造体を巻き取る際に、微小球による突起が印刷面に食い込みやすくインプレッション発生や印刷層脱落の恐れがある。一方、微小球の添加量が上記より多いと印刷層(印刷面)との接触割合が大きくなり印刷層脱落やグロス低下の恐れがある。
【0022】
また、前記背面樹脂層のレセプター層への塗布重量は、約10g/m〜約30g/mとすることができる。
【0023】
前記背面樹脂層は、前記樹脂に前記微小球を添加、混合した後、支持体層の第一の面に例えばナイフコーティングなどの従来公知の方法により塗布、乾燥して得ることができる。このとき、微小球が、凝集したり重なり合ったりせず単層で離散的に塗布されていることが、本発明の効果を達成するために好ましい。
【0024】
前記背面樹脂層において、厚さは特に限定されない。例えば、前記支持体層の第一の面から前記背面樹脂層の凸部頂点までを厚さ(T)とした場合、Tは約10μm〜約50μmとすることができる。また、微粒子による厚さを除いた樹脂部分のみの厚さ(H)は、約5〜約40μmとすることができる。
【0025】
さらに、前記背面樹脂層において、前記微小球の約40%〜約90%を樹脂に埋没させることができる。すなわち、微小球の体積平均粒径(D)の約40%〜約90%を、厚さHの樹脂部分に埋没させることができる。
【0026】
本発明のレセプター層は、各種印刷のレセプター層として従来から使用されている公知の樹脂からなる層である。このような樹脂は熱可塑性樹脂であればよく、その表面に施す印刷方法や使用するインクに応じて適宜選択可能である。例えばアクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、またはポリスチレン系樹脂を挙げることができる。前記レセプター層は、これらの樹脂を所望の厚さで、基材や剥離剤等に塗布・乾燥して形成することができる。
【0027】
前記レセプター層の厚さは特に限定されないが、例えば、約1μm〜約80μmとすることができる。この厚さは、グラフィックス受容性物品の使用態様や、レセプター層に施す印刷の種類等に合わせて適宜調整することができる。
【0028】
本発明のグラフィックス受容性物品は、従来公知の方法を適宜選択することにより製造することができる。以下に製造法の一例を示す。まず支持体となるフィルムに、微小球を混合した樹脂を塗布・乾燥して背面樹脂層を設ける。続いて、前記支持体の背面樹脂層とは反対側の面に、樹脂を塗布・乾燥してレセプター層を設けてグラフィックス受容性物品を得る。
【0029】
本発明のグラフィックス構造体は、前記グラフィックス受容性物品のレセプター層に、さらに印刷層、及び白色粘着剤層をこの順で含む。
【0030】
本発明の印刷層は、水性溶媒系インク、有機溶媒系インク、あるいはUVインクを用いた各種インクジェット印刷によって前記レセプター層に施されるものである。
【0031】
本発明の粘着剤層は、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、またはシリコーン系など、従来公知の粘着性ポリマーからなる粘着剤を含む。さらに、所望により白色顔料を含んでもよい。このような粘着性ポリマーや白色顔料は従来公知のものを適宜選択して用いることができ限定されない。本発明のグラフィックス構造体を種々の条件で使用する場合に、グラフィックスの色濃度に差が生じないようにするためには、適度の隠蔽性を有する粘着剤を用いることが好ましい。
【0032】
隠蔽性を持たせるためには、例えば、
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約5〜約150質量部の白色顔料、及び
芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系白色粘着剤を使用することができる。
【0033】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリルまたはメタクリル」を、
「カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー」とは「カルボキシル基含有ポリマー」を、及び
「芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー」とは「アミノ基含有ポリマー」をそれぞれ意味することがある。
【0034】
前記白色粘着剤は、(i)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー、及び(ii)前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約5質量部〜約150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーからなる着色剤を含んでいても良い。
【0035】
前記着色剤を含むことにより、すなわち、あらかじめ白色顔料をポリマーに分散させることにより、より多くの白色顔料を粘着剤中に安定に分散させることができる。
【0036】
さらに、前記白色粘着剤は、架橋剤を含んでも良い。
【0037】
前記白色粘着剤は、カルボキシル基を含有するモノマーを構成成分として重合したポリマーであるカルボキシル基含有ポリマーと、アミノ基を含有するモノマーを構成成分として重合したポリマーであるアミノ基含有ポリマーとを混合することにより、粘着剤中の白色顔料の分散性を向上し、粘着剤中に白色顔料を安定に保持することができる。そのため、より多くの顔料を含む白色粘着剤を提供することができる。そして当該白色粘着剤を本発明のグラフィックス構造体の粘着剤層として使用することにより、内照や外照等、種々の環境下で使用した際にもグラフィックスの色濃度差が少ない画像を提供することが可能となる。
【0038】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にカルボキシル基を含有するモノエチレン性不飽和モノマー(カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマー)を含有するものである。前記モノエチレン性不飽和モノマーは、ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖、環状又は分岐状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、環状エーテル基である)で表される。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、またはドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。必要に応じ、1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
【0039】
前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、または2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等を挙げることができる。
【0040】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを80〜99.5質量部と、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを0.5〜20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを90〜99質量部、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを1〜10質量部とすることもできる。
【0041】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約100,000〜約2,000,000、あるいは約300,000〜約1,000,000とすることができる。
【0042】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、前記白色粘着剤の主成分として用いることができ、その配合量は、前記白色粘着剤全体を100質量部とした場合に、約35質量部〜約80質量部とすることができる。
【0043】
芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にアミノ基含有不飽和モノマーを含有し、かつ芳香族ビニルモノマーをポリマーの構成成分として含まないものである。かかるモノエチレン性不飽和モノマーは、前記カルボキシル基含有(メタ)剤中アクリル系ポリマーの場合と同様であり、前記芳香族ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、または水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレート等を含む。前記芳香族アミンとしてはアニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン又はこれらの誘導体が挙げられる。また前記水酸基含有芳香族化合物は前記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。前記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得る方法として、モノエチレン性不飽和モノマーとアミノ基を含有する不飽和モノマーとを共重合することが挙げられる。
【0044】
前記アミノ基含有不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテル;またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0045】
前記アミノ基含有ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを約80〜約99.5質量部と、前記アミノ基含有不飽和モノマーを約0.5〜約20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを約90〜約99質量部、前記アミノ基含有不飽和モノマーを約1〜約10質量部とすることもできる。
【0046】
前記アミノ基含有ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約1,000〜約500,000、約5,000〜約200,000、または約10,000〜約100,000とすることができる。
【0047】
前記アミノ基含有ポリマーの配合量は、前記白色粘着剤全体を100質量部とした場合に、約1質量部〜約20質量部とすることができる。また、前記白色粘着剤が着色剤を含有する場合は、当該着色剤の一成分として用いることができる。
【0048】
これらポリマーの共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、あるいは塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、0.05〜5質量部とすることができる。
【0049】
白色顔料
前記白色顔料として、従来公知の白色顔料、例えば、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または酸化チタン(二酸化チタン)を挙げることができる。また、添加剤としてタルク、カオリン、炭酸カルシウムを含んでもよい。これら白色顔料は単体で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。また、これらの白色顔料はいずれの形態でもよく、あるいは従来公知の方法によって各種の分散処理が施されたものであってもよい。
【0050】
前記白色顔料は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約5質量部〜約150質量部、または約25質量部〜約150質量部とすることができる。
【0051】
着色剤
前記着色剤は、白色顔料と芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含有する。ここで、前記白色顔料、及び前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーはそれぞれ上述のとおりである。
【0052】
本明細書において、着色剤中の、芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを「着色剤のポリマー」と記載することがある。また、本発明の白色粘着剤の主成分として用い、着色剤に由来しないポリマーを、「粘着剤のポリマー」と記載することがある。
【0053】
前記着色剤のポリマーは、長期安定性維持の観点から、前記粘着剤のポリマーと相溶することが好ましい。
【0054】
前記着色剤は、前記白色顔料と前記着色剤のポリマーとを、従来公知の方法で混合することにより得られる。例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等を用いて混合することにより得られる。このとき、必要に応じて、水系あるいは有機系の溶媒を加えることもできる。
【0055】
前記着色剤は、調製直後はもちろん、調製後長時間(例えば、約1ヶ月程度)経過後も、調製直後と同様、顔料粒子が凝集せず、かつ良好に分散した状態を維持することができる。このことは、例えば、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等の比較的混合力の強い機器を用いて調製した場合のみならず、ペイントシェイカー等の比較的混合力の弱い機器のみを用いて調製した場合も同様である。さらに、この比較的混合力の弱い機器を用いる場合、比較的短時間(例えば、約10分程度)の混合により、調製直後及び長時間経過後に、顔料粒子が凝集せず、かつ良好に分散した着色剤を得ることができる。
【0056】
架橋剤
前記白色粘着剤は、架橋剤を含んでも良い。かかる架橋剤として、例えば、ビスアミド系架橋剤(例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン))、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCryl CX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、日本ポリウレタン製コロネートL、コロネートHK、バイエル社製デスモジュールH、デスモジュールW、デスモジュールI)等を用いることができる。
【0057】
前記架橋剤の添加量は、カルボキシル基を含有するポリマー中のカルボキシル基、あるいはアミノ基を含有するポリマー中のアミノ基に対して0.01から0.5当量とすることができる。
【0058】
前記白色粘着剤は、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記白色顔料、及び前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを、従来公知の方法によって混合することにより得られる。
【0059】
例えば、各成分をほぼ同時に混合容器に入れ、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等を用いて混合することにより得られる。この際、必要に応じて、前記架橋剤、または公知の水系あるいは有機系の溶媒を使用することができる。あるいは、前記白色顔料を水系あるいは有機系の溶媒に混合してから、他の成分と混合することもできる。
【0060】
また、前記白色粘着剤が着色剤を含有する場合、前記カルボキシル基含有アクリル系ポリマー及び前記着色剤とを従来公知の方法で混合することにより得られる。
【0061】
また、本発明のグラフィックス構造体は、前記白色粘着剤層の前記印刷層とは反対側にライナー(剥離層)を設けることができる。このようなライナーは、粘着テープなどの分野で一般的に使用されているものでよく、特定の部材に限定されるものではない。好適なライナーとしては、例えば、紙、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、または酢酸セルロース等のプラスチック材料、あるいはこのようなプラスチック材料で被覆又はそれを積層された紙やその他の材料などを挙げることができる。これらのライナーは、そのまま使用してもよいが、シリコーン処理あるいはその他の方法で処理して剥離特性を向上させた後に使用することができる。
【0062】
本発明のグラフィックス構造体は、さらに必要に応じてプライマー層など他の機能を有する層を有していても良い。
【0063】
本発明のグラフィックス構造体は、従来公知の方法を適宜選択することにより製造することができる。以下に製造法の一例を示す。本発明のグラフィックス受容性物品のレセプター層に溶剤系インクジェットプリンターにより印刷を施して印刷層を形成する。例えば前記アクリル系白色粘着剤を有機系の溶媒に溶解した溶液を、ナイフコートあるいはバーコータ等によりライナー上に塗布・乾燥して粘着剤層を得る。得られた粘着剤層とライナーの積層物の粘着面を前記印刷層に貼り合わせて本発明のグラフィックス構造体が得られる。
【0064】
本発明のグラフィックス構造体は、さらに前記粘着剤層に、(i)第二の粘着剤層を積層したり、(ii)アルミニウム層などの金属層または芯材となるフィルム等の層及び第二の粘着剤層を積層することもできる。第二の粘着剤層は、前記粘着剤層と同様の構成とすることができ、透明、白色、乳白色その他の着色がされていても良い。このような態様のグラフィックス構造体は例えば次のようにして製造することができる。
【0065】
(i)の場合
剥離処理をしたライナー上に第二の粘着剤層を積層する。得られた積層体の粘着面を、本発明のグラフィックス受容性物品のレセプター層に形成した印刷層の印刷面に貼り付けてグラフィックス構造体を得る。
【0066】
(ii)の場合
まず、剥離処理をしたライナー上に第二の粘着剤層を設け、さらにアルミ箔などの金属層を積層した後、前記粘着剤層、剥離処理済みライナーを順に積層してマウント用フィルムを製造する。つづいて、本発明のグラフィックス受容性物品のレセプター層に形成した印刷層の印刷面に、前記マウント用フィルムの粘着剤層側のライナーを剥がして積層する。
【0067】
本発明のグラフィックス構造体は、屋内外の車両、建築物(壁、柱)、交通標識、包装材料、または看板等に貼付して使用できる。あるいは、内照看板表面に取り付けることにより、内照グラフィックスとして使用することができる。
【0068】
本明細書においては、以下の略称を使用することがある。
BA :ブチルアクリレ−ト
2EHA :2−エチルへキシルアクリレート
AA :アクリル酸
MMA :メチルメタクリレート
BMA :ブチルメタクリルレート
DMAEMA :ジメチルアミノエチルメタクリレート
VAc :酢酸ビニル
EtAc :酢酸エチル
MIBK :メチルイソブチルケトン
Mw :重量平均分子量
Dv :体積平均粒径(volume average diameter)
【実施例】
【0069】
以下、表1に記載の材料を使用した。
【0070】
実施例1
グラフィックス受容性物品の製造
100質量部のハードポリマー1と、50質量部のソフトポリマー1を混合した。さらに、ソフトポリマー1が100質量部に対して架橋剤2を3質量部(固形分比)添加してポリマー組成物を得た。ポリマー同士の相溶性は良好であった。厚さ50μmの剥離処理ポリエステルフィルム(支持体)の剥離処理面に前記組成物をナイフコートにより塗布し、95℃で3分間及び155℃で2分間乾燥及び架橋し、厚さ50μmの透明レセプター層を得た。
【0071】
次に、100質量部の背面処理用樹脂1と35質量部の背面処理用樹脂2(固形分比)とを混合し背面処理用樹脂溶液を準備した。前記背面処理用樹脂溶液が100質量部に対して微小球1を50質量部添加して混合し非粘着微小球含有溶液を得た。前記支持体の透明レセプター層の反対側の面に、得られた非粘着微小球含有溶液を、塗布重さが15g/mとなるようにナイフコートにより塗布し、95℃で3分間及び155℃で3分間乾燥及び架橋し背面樹脂層を得た。
【0072】
実施例2〜9
実施例1と同様に表2に従いサンプルを作製した。
【0073】
実施例10
ハードポリマー1が10質量部、酸化チタン1が50質量部に対してメチルイソブチルケトン(MIBK)を40質量部添加しペイントシェイカー(株式会社シンキー(Thinky)製ARE250)で10分間攪拌し顔料プレミックス溶液を得た。
【0074】
次に、粘着ポリマー1が100質量部に対して、酸化チタン1が50質量部、ハードポリマー1が10質量部になるように粘着剤成分と前記顔料プレミックスを混合し白色粘着剤組成物溶液を準備した。粘着ポリマー1が100質量部に対して架橋剤1を0.2質量部(固形分比)添加した。粘着剤と顔料の相溶性は良好で容易に分散可能であった。前記白色粘着剤組成物溶液を、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布、90℃で5分間加熱、乾燥及び架橋して白色粘着剤層を得た。
【0075】
実施例1で作製したグラフィックス受容性物品に溶剤系インクジェットプリンター(Roland製XC540)で印刷画像(印刷層)を形成した。この印刷層に上記で得られた白色粘着剤層をドライラミネートにより積層してサンプルを得た。
【0076】
比較例1〜14
実施例1と同様に表2に従いサンプル作製した。
【0077】
実施例11
マウント用フィルムの作製
粘着ポリマー1が100質量部に対して、架橋剤1を0.2質量部(固形分比)添加した。前記粘着剤組成物溶液を、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが45μmになるように塗布、90℃で5分間加熱、乾燥及び架橋して粘着剤層を得た。前記粘着剤層のエアサイドに50μmのアルミ箔をラミネートしアルミ層を形成した。さらに、前記アルミ層上に実施例10と同様にして白色粘着剤層を形成した。白色粘着剤層の厚さは30μmであった。その後、白色粘着剤層にシリコーン剥離処理済み25μmポリエステルフィルムをラミネートし、マウント用フィルムを得た。
【0078】
グラフィックス構造体の作製
実施例10と同様に、実施例1で作製したグラフィックス受容性物品に溶剤系インクジェットプリンター(Roland製XC540)で印刷画像(印刷層)を形成した。上記で得られたマウント用フィルムからシリコーン剥離処理済みポリエステルフィルムを除去し、白色粘着剤層と前記印刷層をドライラミネートすることによりグラフィックス構造体サンプルを得た。
【0079】
実施例12
微小球6(スリーエム製グラスバブルS60HS)を使用した以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。
【0080】
インク転写試験
実施例1〜9、12、及び比較例1〜14で得られたサンプルのレセプター層に、溶剤系インクジェットプリンター(Roland製XC540)で印刷画像(印刷層)を形成した。インクはRoland製ECO−SOL MAXを使用した。作画条件は6色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ)、双方向作画、高画質モード(720dpi×1440dpi)、バリアブルドット、300%インク濃度にてベタ印刷を実施した。送り速度は約3m/時間、プラテン温度は約40℃であった。
【0081】
印刷層と背面樹脂層とが接するように、得られたサンプルを巻き取り、24時間放置した後印刷層と背面樹脂層を引き剥がした。背面樹脂層にインク転移が見られた場合はインク転移“あり”、インク転移がなかった場合はインク転移“なし”と判断した。結果を表3に示した。
【0082】
巻き取り後外観の観察
前記インク転写試験後のサンプルの印刷層表面を目視で観察した。表面インプレッション及びグロス斑が見られた場合は“Bad”、軽微な表面インプレッション及びグロス斑が見られた場合は”Poor“、表面インプレッション及びグロス斑が見られなかった場合は”Good“と判断した。結果を表3に示した。
【0083】
表面グロスの測定
前記インク転写試験後のサンプルの印刷層表面の60°グロス値を測定した。ポータブルグロスメーター(村上色彩技術研究所製GMX−202)にて60°表面光沢度を測定した。表面光沢保持率の計算式は以下のとおりである。
[表面光沢保持率(%)]={[照射後表面光沢度]/[照射前表面光沢度]}×100
測定はN=3で行い平均値を代表値とした。結果を表3に示した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【符号の説明】
【0087】
1 グラフィックス受容性物品
2 グラフィックス構造体
100,200 支持体層
102,202 レセプター層
104,204 背面樹脂層
106,206 微小球
208 印刷層
210 粘着剤層
212 ライナー
D 微小球の体積平均粒径
H 背面樹脂層の樹脂部分のみの厚さ
T 背面樹脂層の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層、
前記支持体層の第一の面に積層され、体積平均粒径が18μm〜40μmの微小球と樹脂とを含み、前記微小球と前記樹脂との質量比が45〜180:100である背面樹脂層、及び
前記支持体層の第二の面に積層されるレセプター層を含むグラフィックス受容性物品。
【請求項2】
前記背面層の塗布重量が、10〜30g/mである請求項1に記載のグラフィックス受容性物品。
【請求項3】
前記微小球の形状が、真球状である請求項1または2に記載のグラフィックス受容性物品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグラフィックス受容性物品のレセプター層に、さらに印刷層、及び粘着剤層をこの順で含むグラフィックス構造体。
【請求項5】
前記粘着剤層が、
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、5〜150質量部の白色顔料、及び
芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系白色粘着剤からなる請求項4に記載のグラフィックス構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−167639(P2010−167639A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11329(P2009−11329)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】