グラフィック要素を含む文書同士を比較するシステム及び方法
本システム及び方法では、グラフィック要素を含む2個の文書の比較に際し、それらの文書内のグラフィック要素の属性を調べて相類似するグラフィック要素を識別し、比較結果に基づきマージ済文書を自動生成する。マージ済文書では、複製フェーズにおける改変で第1文書に組み込まれたものが好適に温存される。比較結果を閲覧する手段及び自動生成されたマージ処置をオーバライドする手段も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「グラフィック文書同士を比較するシステム及び方法」と題する2004年4月26日付米国特許出願第60/564946号に基づく優先権主張を伴う出願である。なお、当該出願の内容はこの参照を以て本願中に繰り入れることとする。
【0002】
本発明は、グラフィック要素を含む文書同士を比較することにより、それら文書間の類似、相違又はその双方を識別する技術に関する。本発明の好適な実施形態によれば、文書内グラフィック要素同士を好適にマージすることができる。
【背景技術】
【0003】
文書の作成及び複製(例えば印刷)は大抵は文書改変を伴うものである。例えば、コンテンツ生成フェーズにおける文書の推敲はその文書への改変を伴うものであるし、コンテンツ生成フェーズ終了後に誤りが認められた場合はその文書に修正が施されるであろうし、そして文書複製フェーズにおいても諸複製条件を満たすべく文書に改変が施されることがある。こうして文書はほぼ必ず多版化するので、作業者にしてみれば、多版文書における版間相違を識別、特定できるツールがあると好都合である。また、必要に応じ、文書内の一部コンテンツを別版同一文書内の他のコンテンツとマージできるようにすることも、望まれている。
【0004】
こうした処理を行える技術は従来から周知である。例えば、MicrosoftWord2003は、主としてテキストコンテンツからなる文書間の差異を識別、特定するソフトウェア機能を有している。この機能を利用すれば、例えば、幾ばくかのテキストコンテンツを共有する文書同士を比較し、どこが共有部分(両文書に共通する部分)でどこが専有部分(一方の文書にユニークな部分)かを識別、特定することができる。更に、この比較によって得られた情報を利用し一方の文書を他方の文書とマージすることができる。なお、「Microsoft」は登録商標、「Word」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0005】
しかしながら、グラフィックアート分野における文書は、テキスト(文字)、写真画像及びアートワークの組合せであることが多い。
【0006】
非テキスト要素同士の比較及びマージに関しては、MicrosoftWord2003により行えることは限られている。例えば、MicrosoftWord2003にはアートワークを描画できるドロー機能が組み込まれている。MicrosoftWord2003では、テキスト、挿入画像及び当該ドロー機能により作成したアートワークからなる文書を作成でき、またそうして作成した文書同士を比較することもできる。しかしながら、この比較では、元々の挿入画像ファイルの画像を修正しそのファイル名を変えた画像ファイルを挿入してある場合、画像の修正内容を認識することができない。同様に、この比較では、描画したアートワークに対するある種の改変、例えば矩形アートワークの寸法変更を認識することもできない。なお、アートワークの改変が全て認識されない訳ではなく、例えば描画した矩形アートワークの塗り潰し色の変更は、比較によって描画フレーム全体の変化として認識される。
【0007】
これに類する機能のある文書作成ソフトウェアとしては、例えばAdobeFrameMaker7.0がある。内部にアートワークオブジェクトが配置されたフレームがAdobeFrameMaker7.0文書のテキストフロー内にアンカリングされている場合、AdobeFrameMaker7.0のユーザ向け文書によれば、文書間でそうしたアートワークオブジェクト同士を比較することができる。オブジェクト自体やオブジェクト位置(例えば前後順序)に相違があれば、そのアンカーフレーム全体が“変更あり”とマークされる。しかしながら、実験結果によれば、オブジェクトに施した変更のうちサイズ変更等の変更は、この比較によっては認識されない。同様に、カプセル化PostScriptファイル(.eps形式のファイル)として挿入されたアートワークに対する変更も、この比較によっては認識されない。なお、「Adobe」「FrameMaker」「PostScript」は登録商標である(以下商標表記を省略)。
【0008】
また、コンテンツ混在型文書を文書交換フォーマットによって表現することもできる。文書交換フォーマットの中には、TIFFやCT/LW等のようにコンテンツをラスタ画素群に正規化して得られるラスタフォーマットがある。大抵の表示装置及び印刷装置がラスタ指向であるため、ラスタフォーマットを用いることで複製用フォーマットへの変換処理を比較的簡便に行うことができ、都合がよい。反面、不都合なことに、ラスタ画素群を複製するレンダリングプロセスにて、コンテンツ構造に関する情報が失われてしまう。
【0009】
ラスタフォーマット文書同士を比較できるソフトウェアツールとしては、ラスタ画素同士を比較しその差異を判別するものがある。この比較により判明した差異を可視表示する際には、通常、差異のある画素をコントラスト色で個別にハイライトし、或いは差異のある画素を取り巻く領域をハイライトする。しかしながら、ラスタフォーマットによる2個の文書同士をマージするには、各文書内の画素をマニュアル指定しなければならない。差異が膨大な場合現実にはマニュアル指定は不可能であり、またその自動化も難しい。自動化が難しいのは、文書内画素の選択に必要なコンテキスト情報がほとんどないため画素選択が難しいからである。なお、ラスタ画像間比較ツールの例としては、2個のジョブ間を比較する「差分エキスポート」(export difference)機能を有するArtworkSystemsArtPro6.5がある。計算により差異を探す際、ArtProはジョブを画素単位でスキャンするのであって、ベクトル情報の探索は行わない。なお、「ArtworkSystems」「ArtPro」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0010】
文書交換フォーマットとしては、上述のラスタフォーマットの他に、コンテンツをベクトル要素群として記述するベクトルフォーマット、例えばAdobePostScriptやAdobePDF(Portable Document Format)等のフォーマットがある。このフォーマットでは、文書がページ記述言語文から構成され、テキスト、画像、シンボルクリッピングパス(囲み線)等、各グラフィック要素がベクトルベースで定義される。ページ記述言語では、各要素をその特性及びページ内配置を示す属性によって記述し、また各要素のページ内表示順序も記述する。文脈から読み取れるように、ベクトルフォーマットの利点及び欠点はラスタフォーマットのそれと相補的である。なお、「PDF」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0011】
AdobeAcrobatには文書比較機能が備わっており、その文書比較機能には解析詳細度レベルが三段階ある。AdobeIllustrator文書を修正して印刷することによりPDFファイルを作成し、そのPDFファイルを用いAdobeAcrobatの文書比較機能について実験したところでは、画素同士の比較が行われているようである。例えば、Acrobatを用い最高解析詳細度で比較を行うと、インポート画像内の孤立した変更画素が検出され、各変更画素がパス(線分)で囲まれて視覚的にハイライトされる。同様に、三角形等のパス型グラフィック要素を含むPDFファイルをEnfocusPitstop等のPDFエディタアプリケーションで改変し、そのパス型グラフィック要素のサイズを大きくした場合も、Acrobatでその改変を検出することができる。検出された改変は、そのパス型グラフィック要素の境界線のうち小部分における変化として視覚的にハイライトされる。そのパス型グラフィック要素全体が改変ありとしてハイライトされる訳ではない。なお、「Acrobat」は登録商標、「Illustrator」「Enfocus」「Pitstop」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0012】
EnfocusPitstopでは、文書内グラフィック要素に施された編集の痕跡がセッションログに記録されているため、ユーザは、PDF文書内グラフィック要素編集時にセッションログから改変について知ることができる。
【0013】
CreoSep2Compなるソフトウェアでは、単一文書内の複数ページに亘るグラフィック要素の属性を調べることができる。各ページは互いに別々の印刷色に対応しており、文書交換フォーマットにより生成した際にコンポジットカラー文書即ち多色合成文書から生成されている。Sep2Compによれば、グラフィック要素の属性を調べて各原色グラフィック要素属性間の類似度を判別し、その結果に基づきコンポジットグラフィック要素即ち多色合成グラフィック要素の存在を推定することができ、更に互いに別々のページ上にある似通った要素同士を合成することができる。即ち、似通った色別グラフィック要素同士を、その印刷色を合成しまた色調を組み合わせることにより、単一ページ上に単一のグラフィック要素として合成することができる。但し、Sep2Compの動作モードは自動モードだけである。また、場合によっては不適正な判断が下されること、即ち、色別グラフィック要素間の類非判断に誤りが生じることもある。これは類非判断アルゴリズム及び類非判断則が理想的でないことによるものであり、またこうした誤りを補償する方法は提供されていない。なお、「Creo」は登録商標、「Sep2Comp」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5465353号明細書
【特許文献2】米国特許第5982931号明細書
【特許文献3】米国特許第6324555号明細書
【特許文献4】米国特許第5890177号明細書
【特許文献5】米国特許第5606651号明細書
【非特許文献1】W. Miller & E. W. Meyers, "A File Comparison Program", Software - Practice and Experience 15 (11), November 1985, pp. 1025-1040
【非特許文献2】"The String-to-String Correction Problem with Block Moves", ACM Transactions on Computer Systems 2 (4), November 1984, pp. 309-321
【非特許文献3】"A Technique for Isolating Differences Between Files", Communications of the ACM 21 (4), April 1978, pp. 264-268
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、種々の要素からなる文書同士を比較できるシステム及び方法に対する要求の中には、未だ充足されていないものがある。例えば包装材印刷の分野においては、次に述べる二つの事情から、そうした要求を満足させることが切に求められている。第1に、包装用文書には、種々の地域や種々の市場の要求に対処できるように種々の変形版が組み込まれていることが多い。元々のネイティブ文書フォーマット中の複数個のレイヤにそれぞれ別々の変形版を組み込んでおけば、その文書交換フォーマットによる文書を複製するのに先立ち所望の地域又は市場向けの変形版を選択することができ、ひいては所望の変形版を複製することができる。このように個々のオリジナル文書から多数の変形版文書を複製できるのであるが、それらの変形版文書は大量のグラフィック要素を共有しているので、好適な文書比較を行えるようにすることが特に必要とされる。
【0016】
第2に、印刷物複製フェーズにおいては、包装コンバータが多大な時間と量力を費やし、印刷できるようその文書を調製する(複製時処理)。例えば、グラフィック要素とグラフィック要素の境界線にグラフィック要素を付加し印刷時の見栄えを向上させる囲い込み(トラップ)処理、レンダリングされる画素の性質をグラフィック要素ベースで規定し印刷時の見栄えを向上させる中間調スクリーン割当、グラフィック要素編集によるコンテンツ修正例えば綴り間違いの修正等が、包装コンバータにより実行される。なお、印刷物複製フェーズで実行されうる処理はこれら以外にもある。
【0017】
地域が違うだけの複数通りの文書や、直前に変更が施されたため複数種類の版が生じた文書がある場合、それをそのまま複製すると複製時処理が重複実施される。これは多大な無駄である。包装コンバータでは、共有部分の多い複数個の文書に遭遇した場合に生じるこの無駄を、うまく吸収することができない。更に、版面作成処理は時間のかかる処理であるので、版面作成前に文書間の相違を可視化できるようなツールがあると、包装コンバータには都合がよい。その際、画素レベルではなくグラフィック要素レベルの違いを可視化できれば、なおのこと好都合である。しかも、多くの場合、地域の違い又はコンテンツ変更による影響を受けるのは、特定色(通常は黒及びスポット色)用の特定の版面だけである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、文書同士を比較するシステム及び方法に関する。本発明は、例えばAdobePDF仕様に合致するベクトルフォーマット文書同士を比較する形態で、好適に実施できる。また、本発明は文書コンパレータ及び文書マージャを備えるシステムとして実施でき、それら文書コンパレータ及び文書マージャはAdobeAcrobatプラグインソフトウェアモジュールとして実現できる。文書コンパレータは、第1,第2文書内グラフィック要素から選定条件に従い選定されたグラフィック要素、例えばコンテンツ生成フェーズにて生成されたグラフィック要素を調べ、その結果を例えば所定の規則(類非判断則)に照らして比較することによって、編集スクリプトを生成する。即ち、第1文書を第2文書に似せるために第1文書から削除する必要があるグラフィック要素や、同じく第1文書に追加する必要があるグラフィック要素を、識別できるようなスクリプトを生成する。使用する類非判断則は、例えば、その属性値に僅かな違いしかない複数個のグラフィック要素を、互いに同等乃至等価なものと識別できる規則である。
【0019】
文書マージャは、編集スクリプトを第1文書に適用して第2文書に似たマージ済文書を生成する。即ち、第1文書に編集スクリプトを適用すると、第1文書が専有するグラフィック要素が第1文書から削除され(マージ済文書へは「不採用」となり)、第2文書が専有するグラフィック要素が第1文書に追加されて(マージ済文書に「採用」となって)、マージ済文書が生成される。文書コンパレータによって相応の選定条件及び類非判断則を適用しておくことにより、第1文書内グラフィック要素のうち何れかの第2文書内グラフィック要素と十分類似するものを保存できる(マージ済文書に「相続」される)。第1文書内グラフィック要素のうち比較対象外とされたものも相続させることができる。グラフィック要素に対する複製フェーズでの処置には多大な時間と労力が必要であるため、こうして一部のグラフィック要素を相続できることは特に有益なことである。
【0020】
必須ではないが有益な構成要素としてはまず比較結果ビジュアライザがある。比較結果ビジュアライザは、編集スクリプトの要所要所と第1及び第2文書とを使用して、その構成レイヤ各々で幾ばくかのグラフィック要素を表示するレイヤ化ビューを作成する。レイヤを例えば3個有するレイヤ化ビューを作成しそれによって一群のグラフィック要素を表示させる場合、例えば第1,第2文書が共有するグラフィック要素を第1レイヤに、第1文書専有グラフィック要素を第2レイヤに、第2文書専有グラフィック要素を第3レイヤに含める。こうしたレイヤ化ビューにおいては、識別されたグラフィック要素の視覚的外観を制御によって変化させることにより、グラフィック要素間の類似点及び相違点を好適且つ至便に視覚化できる。比較結果ビジュアライザは、更に、何個かのグラフィック要素の指定を受けそれらグラフィック要素に対応する編集スクリプト内処置をオーバライドさせる制御も、実行する。従って、自動生成された編集スクリプトに対してユーザ意志による改変を施すことができ、改変を施した編集スクリプトを再適用することによってより望ましいマージ済文書を得ることができる。
【0021】
必須ではないが有益な構成要素としては次に追加文書処理部材(追加文書プロセッサ)がある。追加文書プロセッサはマージ済文書内グラフィック要素を調べて追加処理を実行する。例えば、追加文書プロセッサとして囲い込み処理エンジンを設け、このエンジンによりマージ済文書を処理することによって、第1文書から相続した囲い込み型グラフィック要素を調整することや新たな囲い込み型グラフィック要素を採用することができる。これらは共に、第2文書からのグラフィック要素の採用に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態及びその特徴的構成について、詳細な図示に基づきより詳細に説明する。
【0023】
なお、図示した実施形態により本発明の要旨が限定解釈されるべきではない。
【0024】
また、以下の説明においては、本発明について首尾一貫した理解を促すため具体的な細部に立ち入っているが、本発明を実施するに当たりそうした細部は必須なものではない。また、本発明の要旨が不必要にぼかされることを防ぐため、周知の部材乃至要素については詳細な図示や説明を省いてある。従って、本願明細書及び図面の記載事項をもとに限定解釈を行うべきではなく、当該記載はむしろ例示として理解すべきである。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係るコンピュータシステム100を模式的に示す。このコンピュータシステム100は、本発明の一実施形態に係るソフトウェアを実行する処理ユニット112を備えている。処理ユニット112によりアクセスされるデータ格納部110はデータを一時記憶及び恒久記憶する手段であり、処理ユニット112からアクセスできる限り、このコンピュータシステム100の一部として構成することも、また他のコンピュータシステム内に設けることもできる。処理ユニット112は、そのユーザインタフェースを構成する入力デバイス及び出力デバイスを、何種類か備えている。図示例では、GUI表示に適するグラフィックモニタ114が出力デバイスとして、マウス116及びキーボード118が入力デバイスとして、それぞれ設けられている。
【0026】
次に、本発明の実施形態の動作について、
・複製フェーズにおける第1文書内グラフィック要素への改変成果を温存しつつ、第1文書と第2文書を自動比較してマージ済文書を作成する方法;
・グラフィック要素間類似性を自動判断する方法及び上掲のマージ方法を好適に実施できる編集スクリプト;
・上掲の各方法の具体例;並びに
・上掲のマージ方法向けの編集スクリプトをユーザが改変できるよう、各文書専有グラフィック要素及び共有グラフィック要素を対比的に視覚化する方法;
を示すことによって説明する。
【0027】
自動マージ
図2に、本発明の一実施形態に係るコンピュータシステム200の機能的構成要素をブロック図により示す。図中の第1文書201はページ記述言語を用いて記述されたページ記述データから構成されており、そのページ記述データによって何枚かの印刷対象ページのレイアウトが定義されている。ページ記述データによって定義できるグラフィック要素としては、テキスト、画像、アートワーク(例えばパス、シェーディング(陰影)、ブレンド等)等があり、各グラフィック要素には、例えばクリッピングパス、ストローク(枠取り)、フィル(塗り潰し)、フォントタイプ等、その視覚的外観に関連する属性が伴っている。第2文書202の構成も同様である。説明の都合上、やや恣意的ではあるが、第1及び第2文書201及び202の大略履歴を一例として次の如く設定する。
【0028】
まず、この例における文書201及び202には共通の出自があるものとする。即ち、コンテンツ生成フェーズでアーチストが特定の視覚的効果を狙って作成した文書、即ち第1コンテンツ生成フェーズで生成された第1文書201が共通の出自であるとする。コンテンツ生成フェーズで定義されるグラフィック要素はコンテンツ性グラフィック要素と呼ぶことができる。また、第1文書201は、第1コンテンツ生成フェーズに続く第1複製フェーズにて、例えば印刷時品質の向上や一部複製プロセスの上首尾実施を目的として、修正されているものとする。第1複製フェーズで第1文書201に施される修正は、例えば、文書内グラフィック要素属性の修正例えば中間調スクリーンの割当や修正、囲い込み型グラフィック要素の文書内追加等、ある種の労働集約的処置を含むものとする。第1複製フェーズで追加されるグラフィック要素(上の例では囲い込み型グラフィック要素)は複製時修正グラフィック要素、第1複製フェーズで修正されたグラフィック要素属性は複製時修正グラフィック要素属性と呼ぶことができる。そして、第1文書201は複製可否の観点からすると印刷可能であるが、そのコンテンツは最早、印刷にそぐわないものになってしまっているとする。
【0029】
次に、第2文書202は、第2コンテンツ生成フェーズにて第1文書201に改訂、例えば芸術的意図の翻意や変更を反映したコンテンツの追加や修正を施すことによって、生成されたものであるとする。改訂の有無や内容はともあれ、続く第2複製フェーズでは、第1複製フェーズにて第1文書201に施された処置をできるだけ多く温存しつつ第2文書202を印刷することを狙って、第2文書202が処理されているとする。その複製フェーズで第1文書201に施された修正のうち、第2文書202の作成時におけるコンテンツ改訂に関係のないものは、温存することが可能である。
【0030】
本発明を実施する際には例えばこれらの文書をPDF文書として作成する。PDF文書は、例えばAdobePDFWriterを使用する文書作成アプリケーション上で印刷動作を実行させることにより、複製することができる。そのような実施形態においては、システム200を構成する処理部全体又はその一部をカプセル化し、AdobeAcrobatソフトウェアで利用可能なソフトウェアプラグインにすることができる。便宜上、以下の説明はPDF文書及びAdobeAcrobat式プラグインアーキテクチャに基づいて行うこととするが、他種ソフトウェアアーキテクチャモデル及び他種文書フォーマットを用いて本発明を実施することもできる。それを解釈することによってグラフィック要素の表示順序を示すリストが得られる文書フォーマットであれば、その文書フォーマットを本発明で利用することができる。
【0031】
「表示順序」とは、画像プロセッサによってレンダリングしたときその文書を構成するグラフィック要素が表示される順序をいう。グラフィック要素同士に重なり合いがある場合、表示順序を決めること(表示順序を特定すること)が重要になる。画像プロセッサは、例えばノックアウト法やオーバプリント法を用い、表示順序が後になっているグラフィック要素を表示させる。ノックアウト(覆い隠し)法を使用した場合、表示順序が後のグラフィック要素のうち表示順序が先のグラフィック要素と重なり合っている部分が、当該表示順序が先のグラフィック要素によって隠蔽される。オーバプリント(重ね塗り)法を使用した場合、グラフィック要素同士が重なり合う部分ではそれらグラフィック要素の色が重なり合う。重なり合いの結果は、少なくとも部分的にはそれらグラフィック要素の順序関係により異なるものとなりうる。また、図2で参照している各文書は、処理ユニット112にて利用することができる限り、データストリームその他の形式で存在していてもよいし、データ格納部110内にファイルとして存在していてもよい。
【0032】
図3に、本実施形態のシステム200により実行されるグラフィック文書処理方法300の基本的な流れをフローチャートにより示す。本方法はステップ302におけるユーザとのやりとりにて始まる。このやりとりは、文書コンパレータ210により提供されるGUIを介し、入力デバイス116,118及びモニタ114を用いて行われる。
【0033】
この方法を開始する際には、互いに同等のグラフィック要素の定義が2個の文書201,202間で一致することとなるよう、リファイニング(微調整)として知られる複製準備フェーズを先立って実行するとよい。例えば、コンテンツ生成フェーズにて文書201又は202がネイティブ文書生成フォーマットやPostScriptフォーマット等のページ定義フォーマットにより作成されている場合、文書複製設備にて、その文書201,202を当該ページ定義フォーマットからPDFフォーマットに変換するとよい。加えて、ページ記述データのシンタックス、セマンティクス又はその双方に改変を施すこともできる。施せるシンタックス変更としては、例えば、望ましい特徴を備えた別バージョンのページ記述言語を利用して文書201,202を記述する処理がある。施せるセマンティクス変更即ちグラフィック要素及びその属性に対する変更としては、例えば、種々の文書複製方針(常時オーバプリントする、指定解像度で画像をリサンプリングする、塗り潰されたパス型グラフィック要素を分離して枠取りに変換する、パス型グラフィック要素を塗り潰す等)の採用がある。
【0034】
ステップ304では、第1文書201及び第2文書202を記述するページ記述データを文書コンパレータ210が解釈し、それによって表示リスト、即ち各文書201,202におけるグラフィック要素の表示順序を示すリストを生成する。ページ記述データを解釈して表示リストを作成する手法としては、本件技術分野にて周知の手法を応用できる。以下、特に注記しない限り、「第1文書201」「第2文書202」との表現は、元々の第1文書201、第2文書202から生成した表示リストのことを指すものとする。
【0035】
ステップ306では、第1文書201及び第2文書202内グラフィック要素のうち比較対象として選定したグラフィック要素(後述)を文書コンパレータ210が調べ、それによって、マージ済文書203を生成可能な編集スクリプト250を生成する。マージ済文書203とは、外観上は第2文書202と類似しているが第1文書201内グラフィック要素のうち幾つかを相続している文書のことである。なお、使用によって編集スクリプト250に類する結果が得られるものであれば、本発明の実施に当たり他種形式の編集データを生成してもよい。
【0036】
続くステップ308では、文書マージャ220が第1文書201に編集スクリプト250を適用する。その結果得られるものの一つがマージ済文書203である。マージ済文書203は、第1文書201内グラフィック要素のうち、一群の比較対象外グラフィック要素と、第2文書202内グラフィック要素に対する類似性が認められたグラフィック要素とを、相続する。更に、第1文書201専有グラフィック要素は不採用となり、第2文書202専有グラフィック要素は採用される。第2文書202からの採用の際、第2文書202における相対的な表示順序は保たれる。文書マージャ220は、相続したグラフィック要素に対し、各種複製時修正グラフィック要素属性を再び調べる必要があることを示す属性を、セットすることができる。
【0037】
文書マージャ220は、更に、第1文書201内複製時修正グラフィック要素を調べ、それらを不採用とすべきか否かを判別する。これを管理するための規則は編集スクリプト250その他の情報に基づき定めればよい。例えば、第1文書201内囲い込み型グラフィック要素は、その参照先コンテンツ性グラフィック要素のうち何れかが不採用ならそのグラフィック要素との間の境界線も無くなるので不採用とし、逆に、その参照先グラフィック要素が共に相続されるなら相続させる。囲い込み型グラフィック要素以外の種類の複製時修正グラフィック要素に対処する場合や、また別のやり方で対処したい場合は、それ相応の規則を追加し又はそれ相応に規則を修正すればよい。
【0038】
ステップ308では、最後に文書マージャ220がマージレポート204を作成する。作成されるマージレポート204は、上述のマージプロセスの影響を受けたグラフィック要素についての情報、例えばマージの影響を受けたグラフィック要素の概要又は詳細についての情報を含んでおり、グラフィック要素が影響を受けたために複製プロセスに及ぶ影響を、マージレポート204内情報に基づき識別することができる。例えば、マージレポート204に基づき、マージの影響を受けない印刷色がどれかを識別することができるので、作成済の印刷用の版面のうち影響を受けない何色分かを再使用することができる。なお、マージレポート204は、データ格納部110内にセーブすることや、GUIを用いモニタ114上に表示させることができる。
【0039】
続くステップ309では、文書同士の視覚的比較を実行するか否かを決定する。この決定は、ユーザの希望に基づいて、例えばGUIを介し文書マージャ220が発する質問に対するユーザからの返答結果に即して、行うとよい。その結果、「Yes」となった場合はステップ310に移行して後述の視覚的比較を開始し、「No」となった場合はステップ318に進む。
【0040】
ステップ318では、追加文書プロセッサ240による追加処理を実行するか否かについて判断する。この判断は、ユーザの希望に基づいて、例えばGUIを介して文書マージャ220が発する質問に対するユーザからの返答結果に即して、行うとよい。ここで「No」と判断した場合はステップ322を実行する。ステップ322では、文書マージャ220が、他の文書複製アプリケーションでも好適に使用できるよう、マージ済文書203をページ記述データへとフォーマット変換する。なお、文書マージャ220により、マージ済文書203をデータ格納部110内にセーブすることもできるし、他のアプリケーションで利用できるよう処理ユニット112内に保持させることもできるし、或いはその双方とすることもできる。
【0041】
ステップ318にて「Yes」と判断した場合はステップ320を実行する。ステップ320では、追加文書プロセッサ240が複製フェーズ関連処理例えば囲い込み処理を実行する。例えば、一実施形態に係る追加文書プロセッサ240は二段階の追加囲い込み処理を実行する。まず、第1段階では相続した囲い込み型グラフィック要素を再び調べる。これは、相続した囲い込み型グラフィック要素のクリッピングパスが、何れかのグラフィック要素の採用又は不採用によって影響を受けている可能性を、知るためである。例えば、採用されたグラフィック要素が囲い込み型グラフィック要素と隣り合うような位置又は重なり合うような位置にある場合、相続した囲い込み型グラフィック要素に関連付けて格納されている囲い込み規則が発動し、採用されたグラフィック要素のパスに沿ってその囲い込み型グラフィック要素がクリップされることがある。囲い込み規則なるものは大体にして極めて複雑であるので、1個でもグラフィック要素を採用(追加)すると既存の囲い込み型グラフィック要素のうち1個又は複数個が影響を受けうるものであり、しかもその影響は様々に異なる。そこで、第2段階では、例えば採用されたコンテンツ性グラフィック要素のうち、他のマージ済文書203内コンテンツ性グラフィック要素と隣接又は重複することとなるものに、囲い込み規則を適用する。追加文書プロセッサ240は、こうしてマージ済文書203を処理することにより処理済マージ済文書205を生成する。
【0042】
追加文書プロセッサ240は、次に、マージレポート204を更新し又は新たなマージレポート204を作成する。更新又は追加されたこのマージレポート204は、囲い込み処理と、グラフィック要素に対する囲い込み処理の影響とについて、情報をもたらすものである。次のステップ322では、追加文書プロセッサ240が処理済マージ済文書205をページ記述データフォーマットへと変換し、データ格納部110内にセーブする。
【0043】
自動編集スクリプト生成
図4に、文書コンパレータ210が編集スクリプト250の生成に使用する方法400をフローチャートにより示す。本方法は、2個の順序付リストを生成することを目的としてステップ402にて開始される。生成したいのは、比較対象として選定した第1文書201内グラフィック要素とそれに割り当てた識別子とを表示順序に従い対応付ける第1リストと、比較対象として選定した第2文書202内グラフィック要素とそれに割り当てた識別子とを表示順序に従い対応付ける第2リストである。識別子は、両文書201,202を通じユニークになるよう各グラフィック要素に割り当てる。更に、本発明においては、後に詳細に説明するように、あるグラフィック要素の属性が他のグラフィック要素の対応する属性と所定の精度範囲内で一致している場合に、両グラフィック要素が相互に類似するものと判別してそれらに同一の識別子を割り当てる。
【0044】
続くステップ404では第1文書201を現段階での処理対象文書として選択する。その次のステップ406においては、その処理対象文書にて最初に表示されるグラフィック要素を現段階での処理対象グラフィック要素として認定する。
【0045】
ステップ408ではグラフィック要素選定条件を適用する。適用される選定条件は、例えば、複製フェーズで第1文書201に施された処置を温存させることを狙い、コンテンツ性グラフィック要素だけを識別して比較対象とする条件である。この図に例示する方法であれば、囲い込み型グラフィック要素その他の複製時修正グラフィック要素を生成する際に予め、そのグラフィック要素が複製時修正グラフィック要素であることを示す属性を付与しておき、選定条件としては複製時修正グラフィック要素属性の有無を調べる条件を使用すればよい。また、他種グラフィック要素を選定できるように、この種のグラフィック要素属性又は他種のグラフィック要素属性の組合せに基づき選定条件を定めることもできる。例えば、コンテンツ性か複製時修正かの別を問わず、複製フェーズでの処理が済んでいる文書内グラフィック要素は皆選定し、それらの間の相違を判別するように、選定条件を定めてもよい。
【0046】
現在の処理対象グラフィック要素がコンテンツ性グラフィック要素ではないことが判明した場合、ステップ408からテップ424に進み、そうでなければステップ410に進む。
【0047】
また、図示されている実施形態では、グラフィック要素間比較を好適且つ至便に行うべくグラフィック要素属性からハッシュ値を算出する(他の比較手法によって本発明を実施することもできる)。即ち、ステップ410では、現在の処理対象グラフィック要素の指定属性をハッシュ化アルゴリズムに従い処理する。ハッシュ化アルゴリズムは、指定グラフィック要素属性に相応する可変長データから固定長データ即ちハッシュ値を導出するアルゴリズムである。使用するハッシュ化アルゴリズム及びその対象となる属性は、相互類似するグラフィック要素に互いに同一のハッシュ値が充てられるよう定めておく。
【0048】
次のステップ412ではハッシュ化済グラフィック要素の集合を調べる。現在の処理対象グラフィック要素のハッシュ値によって特定されるハッシュリストが存在していない場合は、新たなハッシュリストを生成してそのグラフィック要素に関連付け、ステップ418に進んでそのグラフィック要素に次のユニークな識別子を関連付ける。また、第1文書201内グラフィック要素については、第1文書201が専有しているものとひとまず仮定できるので、第1文書201内グラフィック要素処理時は常にステップ418に進むよう、本方法を構成するのが適切である。
【0049】
逆に、存在している場合はステップ414に進み、現在の処理対象グラフィック要素のハッシュ値によって特定される既存のハッシュリストに、そのグラフィック要素を関連付ける。次いで、そのハッシュリストに関連付けられている個々のグラフィック要素と現在の処理対象グラフィック要素との間で詳細な属性比較を実行し、それらのうちの何れかが十分相互類似しており等価であると見なしてよいか否かを判別する。
【0050】
「十分類似」の意味合いは類非判断則により定義しておく。表1〜表5に、本発明の好適な実施形態における類非判断則の例を示す。これらの類非判断則は、似通っているグラフィック要素間の相違のうち視覚的に認知できないものを無視するためのものである。グラフィック要素属性その他の条件に基づく類非判断則にはこれとは異なるタイプのものもあり得、そうしたものを用いて本発明を実施することもできる。例えば、比較対象として選定されている文書内グラフィック要素と十分類似するグラフィック要素を、同じ文書から選定できないようにする規則を、定めてもよい。同一文書内グラフィック要素同士が十分相互類似していたら、その類非判断則に従い期待はずれの結果としてユーザに通知し、ユーザの注意を喚起することができる。また、本発明の実施に際し、グラフィック要素同士の等価性を評価するための規則(類非判断則等)をユーザが微調整できるようにしてもよいし、また当該規則を複数組準備しておきユーザが何れかの組を選択できるようにしてもよい。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
上述した単一ハッシュキー法は、その値が離散値をとる属性に適している。その値が連続値を採る属性やその値が非常に大きくなる属性については、その値域を離散化して複数個のビンに区分すれば、離散ハッシュ化アルゴリズムを好適に適用することができる。対応する類非判断則で決まる公差や量子化の度合いによるが、単一ハッシュキー法を用いた場合、十分相互類似しており同等のものであると認められるべき2個のグラフィック要素に対して、互いに異なるハッシュ値が充てられることがある。こうした属性を有するグラフィック要素が互いに十分類似するものとして認識されるようにするには、適用される量子化及び公差に応じ、グラフィック要素1個に対して複数通りのハッシュ値を生成するとよい。この場合、1個のグラフィック要素に対して複数個のハッシュリストが関連付けられることとなる。十分類似するグラフィック要素を探索する際には、グラフィック要素毎に複数通り生成されているハッシュ値に対応して複数個あるハッシュリストを調べる。
【0057】
複数個のハッシュ値を生成するやり方を簡単な例によって説明すると次のようになる。まず、テキスト(文字列)型グラフィック要素のハッシュ値をポイントサイズ属性のみに基づき決めるものとする。更に、ポイントサイズの値域0〜100をハッシュ化に先立ち量子化し、0.1ポイント刻みで多数のビンに区分するものとする。加えて、そのアプリケーションでは、ポイントサイズ差が0.06ポイント以内のテキスト型グラフィック要素同士を「十分類似」と見なしてよいものとする。こうした類非判断則によれば、ポイントサイズ=10.05ポイントのテキスト型グラフィック要素と、そのポイントサイズが9.99≦ポイントサイズ≦10.11の範囲内にある別のテキスト型グラフィック要素とが、類似するものと認定される。また、そのテキスト型グラフィック要素のポイントサイズ10.05は、10.00≦ポイントサイズ<10.10を占めるビン(第1のビン)の範囲内であるので、このグラフィック要素に対してはまず第1のビンを用い第1のハッシュ値を生成する。更に、ポイントサイズ9.99を有する類似グラフィック要素が属する9.90≦ポイントサイズ≦10.00のビン(第2のビン)を用いて第2のハッシュ値を生成し、同様にポイントサイズ10.11を有する類似グラフィック要素が属する10.10≦ポイントサイズ<10.20のビン(第3のビン)を用いて第3のハッシュ値を生成する。このように類似範囲と重なる(マッチングする)ビンの個数は一般に複数個であるので、量子化後にハッシュ化する属性を複数個にすると、マッチングビン個数の組合せの個数に応じてハッシュ値生成個数も増加する。
【0058】
続くステップ416では、十分類似しているか否かを比較結果に基づき判別する。既に処理済のグラフィック要素の中に現在の処理対象グラフィック要素と十分類似するものが見つからなかった場合はステップ418に進み、現在の処理対象グラフィック要素に対し次のユニークな識別子を関連付ける。見つかった場合は、ステップ420で、十分類似するとされた別のグラフィック要素に割り当ててあるユニークな識別子を、現在の処理対象グラフィック要素にも関連付ける。
【0059】
ステップ418又は420を実行したらステップ422に進む。ステップ422では、現在の処理対象グラフィック要素の識別子を現在の処理対象文書に対応するリストに追加する。なお、ここでグラフィック要素のリストではなくグラフィック要素の識別子のリストを使用しているのは、後に行う比較の際に処理ユニット112で費消するリソースが少ない後者の方が、望ましいからである。
【0060】
次のステップ424では、現在の処理対象文書を調べることにより、現在の処理対象グラフィック要素の後に別のグラフィック要素が存在しているか否かを判断する。存在している場合、ステップ426ではそのグラフィック要素を新たな処理対象グラフィック要素と認定してステップ408に進み、存在していない場合は現在の処理対象グラフィック要素が現在の処理対象文書における最後のグラフィック要素であるのでステップ428に進んで現在の処理対象文書が第1文書201であるか否かを判別する。第1文書201である場合、ステップ430にて第2文書202を新たな処理対象文書と認定してステップ406に進み、第1文書201でない場合は目的が達成されたためステップ432に進む。
【0061】
ステップ432では、文書コンパレータ210が2個のリストを調べ、それによって、第1リストを第2リストに変更可能な編集スクリプト250、より具体的にはグラフィック要素に対する一群の処置(第1文書201からの不採用や第2文書202からの採用等のアクション)を含む編集スクリプト250を生成する。文書コンパレータ210は、最後に、グラフィック要素のうち追加処理が必要なものに、そのことを示す属性をセットする。
【0062】
編集スクリプト250の生成は、本件技術分野において周知の方法を利用して好適に行うことができる。その例としては、
・第1,第2リスト内の要素群を共有要素が見つかるまで順に調べていく;
・共有要素が見つかったら、第1リスト内要素のうち、新たに見つかった共有要素とその前の共有要素(最初はリストの冒頭)との間にある全要素を削除する;
・その後、第2リスト専有要素のうち、新たに見つかった共有要素とその前の共有要素(最初はリストの冒頭)との間にある全要素を、第2リストにおける相対的順番を保ちつつ、第1リストに追加する;第1リストにおける追加先は、新たに見つかった共有要素とその前の共有要素(最初はリストの冒頭)の間とする;
・以上の処理を両リストの末尾まで繰り返す;両リストの末尾は共有要素として扱う;
という手順により第1リストから編集スクリプト250を生成する方法を掲げうる。
【0063】
本発明の実施に適する方法としては、例えば、非特許文献1に記載されており「最大共有サブストリング」(Largest Common Substring)アルゴリズムと呼ばれているアルゴリズムがある。その他、本発明の関連部分の実施に際し利用可能と見られるものは、非特許文献2や非特許文献3にも記載されている。
【0064】
詳細例
この項においては、以上の説明で示した方法について、単純な例を示して詳細に説明する。図5に、1回目のコンテンツ生成フェーズ直後における第1文書201のレンダリング結果例500を示す。この段階における第1文書201は、表示順にいうと、
・画像501
・枠取りが無く濃色で塗り潰されていてクリッピングパスCP1を有する矩形パス510
・枠取りが無く淡色で塗り潰されている三角形パス520
・枠取りが無く濃色で塗り潰されている正方形パス540
・枠取りが無く淡色で塗り潰されている矩形パス550
・濃色で中間的な幅の枠取りがあり、塗り潰されていない矩形パス560であり、最初は矩形パス550の一部として扱われるがリファイニングプロセスにて矩形パス550から分離されるもの
・枠取りが無く濃色で塗り潰されている文字列570
といったグラフィック要素から構成されている。各グラフィック要素には、デフォルトで中間調スクリーンS1が割り当てられている。
【0065】
図6に、囲い込み処理及び中間調スクリーン調整を含む1回目の複製フェーズ終了直後における図5に例示した第1文書201のレンダリング結果例600を示す。また、図7は図6に対応するデータ構造700を示す図であり、第1文書201の諸元及び関連データが例示されている。
【0066】
図7中の列704に示されているグラフィック要素識別子は、図4に示した方法に従い生成されたものであり、図6中で各グラフィック要素に付した参照符号に対応している。説明の便宜上、その末尾2桁が相対的表示順序を表し上位桁が初出図面番号を表すよう、各識別子を定めてある。後掲の図面でも、この決まりに則っている。
【0067】
複製フェーズでは、淡色のコンテンツ性グラフィック要素と濃色のコンテンツ性グラフィック要素の境界線の印刷品質を向上させるため、囲い込み型グラフィック要素611、612、621、655及び665A〜665Dが追加されている。専ら図示の都合上、囲い込み型グラフィック要素はより濃色のコンテンツ性グラフィック要素より奥でより淡色のコンテンツ性グラフィック要素より手前に表示させてある。更に、囲い込み型グラフィック要素のクリッピングパスは淡色グラフィック要素に接しており、また濃色グラフィック要素内に入り込んでいる。囲い込み型グラフィック要素は、中間色で塗り潰された枠取り無しのパス型グラフィック要素として生成される。
【0068】
図7には、更に、コンテンツ性グラフィック要素及び複製時修正グラフィック要素の指定属性が示されている。注目すべきことに、
・図4に示した方法によるグラフィック要素間比較により得られたハッシュ値が列706に、
・クリッピングパスや枠線幅等、この例に適する属性値が列708に、
それぞれ示されている。
【0069】
図7中、列710に示されている複製時修正グラフィック要素の指定属性は、
・複製時修正グラフィック要素の識別結果
・囲い込み型グラフィック要素とコンテンツ性グラフィック要素の関係
・中間調スクリーンに施した調整の内容(要素520がスクリーンS2に関連付けられたこと)
を反映している。
【0070】
図8に、1回目の複製フェーズと並行して実施される2回目のコンテンツ生成フェーズの終了直後における第2文書202のレンダリング結果例800を示す。また、図9は図8に示した第2文書202のこの段階でのデータ構造900を示す図である。図9中、コンテンツ改訂部分はハイライトしてある。特に、
・画像501は削除されたため図9には示されていない;
・矩形パス802及び830が追加されている;
・矩形パス510は新たなクリッピングパスCP1Aを有するものに修正されている;注記すべきことに、図4に示した方法による修正後のグラフィック要素は、修正前の矩形パス510と同じハッシュ値を有するものの、詳細な検討により類似度不十分と判断され別の識別子810が割り当てられている;
・三角形パス520には中間調スクリーンS1が関連付けられている;これは1回目のコンテンツ生成フェーズでの定義と整合している;
・矩形パス560は修正されており、その枠線幅が拡がったため新たな識別子860が割り当てられている;
となっている。
【0071】
図10に、編集スクリプト250の適用によるデータ構造の変化1000の例を示す。適用した編集スクリプト250は複数個の入力文書、即ち図6及び図7に示した第1文書201並びに図8及び図9に示した第2文書202に基づき、図4に示した方法を用いて生成したものである。編集スクリプト250を適用すると、列1002に示すステップ番号の順で一連の編集ステップが実行される。編集ステップは、それぞれ共有要素の相続で終わる複数組の大ステップにまとまっている。ステップ番号中の数字は、大ステップ番号を表している。また、列1004に示すステップ内処置(アクション)には、
・第1文書201専有コンテンツ性グラフィック要素の「不採用」或いは「削除」(Delete);
・第2文書202専有コンテンツ性グラフィック要素の「採用」或いは「追加」(Add);
・両文書201,202内にあり互いに十分類似すると識別されたグラフィック要素の「相続」或いは「放置」(No action);この処置は、例えば、後述の通り編集スクリプト250を用いて他種文書を生成する目的で、編集スクリプト250に組み込むこともできる;十分類似するグラフィック要素間の比較痕跡を保持できるなら、他の手法を用いてもかまわない;
・比較時に調べないままマージ済文書203内に相続させるグラフィック要素に対する「無処置」(N/A);この処置は編集スクリプト250内に明示的に組み込まれるものではない;
・不採用となった1個又は複数個のグラフィック要素に従属する複製時修正グラフィック要素に対する「暗黙的不採用」或いは「当然削除」(Derived delete);この処置は編集スクリプト250内に明示的に組み込まれるものではなく、関連するグラフィック要素が明示的に不採用となることによって発生する;
の各種がある。
【0072】
更に、列1006に示すステップパラメタには、処置対象出自文書(列1010)や、追加場所相対指定(列1012;該当する場合だけ)がある。追加処理属性(列1014)は文書マージャ220によりセットされる属性であり、この例では、囲い込み処理が必要な新規オブジェクトや調整が必要な相続した囲い込み型グラフィック要素を識別するための属性が含まれている。追加処理成果(列1020)は追加処理が実行されたら何が起こるかを示している。これについては後に図13を参照してより詳細に説明する。
【0073】
図11に、マージ済文書203のレンダリング結果例1100を示す。図12は図11に対応するデータ構造1200を示す図であり、例示したマージ済文書203の諸元及び関連データを表している。注意すべきこととしては、
・図7に示した第1文書201内グラフィック要素501、510、611、612、655及び560が不採用とされ図11及び図12中に現れていないこと;
・図8に示した第2文書202内グラフィック要素802、810、830及び860が採用されていること;第2文書202におけるそれらの相対的表示順序が保たれていること;
・他の第1文書201内グラフィック要素が全て、あらゆる複製時修正グラフィック要素属性と共に保存されていること;例えば、三角形パス520のスクリーンがS2のまま、矩形パス621のクリッピングパスがCP2のままであること;また、不採用になったグラフィック要素があるため関連要素との関連付けが更新されていること;
がある。
【0074】
図13に、処理済マージ済文書205のレンダリング結果例1300を示す。図14は図13に対応するデータ構造1400を示す図であり、例示した処理済マージ済文書205の諸元及び関連データを表している。要注目事項としては、
・グラフィック要素802、810、830及び860の採用に伴い生成された新たなコンテンツ性グラフィック要素境界線に対応して、囲い込み型グラフィック要素1303、1311、1312、1322及び1355が追加され、影響を受ける関連グラフィック要素との関連付けが更新されていること;
・採用された矩形グラフィック要素830と正方形グラフィック要素540の間に境界線が生成されたため、囲い込み型グラフィック要素1321のクリッピングパスが調整を受けてCP2Aになっていること;
・パス型グラフィック要素550とテキスト型グラフィック要素570の間の境界線に変更がないため、囲い込み型グラフィック要素665A〜665Dが影響を受けていないこと;
がある。
【0075】
視覚的比較
図3に示す方法は、更に第1文書201と第2文書202の視覚的比較を可能にするステップを含んでおり、それらのステップは文書コンパレータ210が編集スクリプト250を生成した後に開始される。例えば、比較結果ビジュアライザ(コンポーネントビジュアライザ又は文書ビジュアライザとも称しうる)230が、第1文書201、第2文書202及び編集スクリプト250に基づく三種類の暫定文書の生成を、ステップ310にて開始する。作成される暫定文書は次の各文書、即ち
・第1文書201だけに含まれるグラフィック要素からなる第1文書専有要素文書231;この文書231は、例えば編集スクリプト250中で「不採用」処置に対応付けられているグラフィック要素を選択するという方法で生成する;
・第2文書202だけに含まれるグラフィック要素からなる第2文書専有要素文書232;この文書232は、例えば編集スクリプト250中で「採用」処置に対応付けられているグラフィック要素を選択するという方法で生成する;
・第1文書201及び第2文書202に含まれ互いに十分類似すると認められたグラフィック要素からなる共有要素文書233;この文書233は、例えば比較時に調べられたグラフィック要素のうち編集スクリプト250中で「相続」処置に対応付けられているグラフィック要素を選択するという方法で生成する;
であり、これらは後に使用するため例えばデータ格納部110内にセーブされる。また本発明を実施する際には、例えば、コンテンツ性グラフィック要素だけを視覚的に比較できるようにするため、複製時修正グラフィック要素を除外して暫定文書を生成する。
【0076】
次のステップ312では、比較結果ビジュアライザ230により提供されるGUI上に暫定文書をマルチレイヤレンダリングする。レンダリング結果においては、各レイヤ内で定義されたオーバプリント特性及びノックアウト特性が表出する。また、複数個のレイヤを可視状態にすると別々の可視レイヤの画素同士が合成される。合成されると、上位レイヤ内グラフィック要素構成画素が下位レイヤ内グラフィック要素構成画素をノックアウトするため、別レイヤ内オブジェクト間境界線がより露わになる。そのため、比較結果ビジュアライザ230によるGUIは、
・各レイヤの可視性(可視にするか不可視にするか)を制御する;
・各回レンダリングにおけるレイヤ順を制御する;
・各レイヤの色や色調を調整することにより、類似した色又は色調を有するグラフィック要素同士をレイヤ間で区別できるようにする;
・グラフィック要素属性値指定によって指定された何個かのグラフィック要素(例えばパス型グラフィック要素)をGUI上でハイライトさせる;
・GUI上の露出領域内構成画素をポイントすることによって指定された何個かのグラフィック要素をGUI上でハイライトさせる;
といったビュー制御を実行する。
【0077】
「指定又はハイライトされたオブジェクトのラスタ合成による表示方法」(Method For Displaying Selected Or Highlighted Objects Using Raster Compositing)と題する米国特許出願第10/677332号には、GUI上でのグラフィック要素の合成及び指定方法が記載されている。この方法については、この参照を以て本願に繰り入れることとする。
【0078】
図15に、比較結果ビジュアライザ230によるGUI表示の例を示す。このビューにおいては、先の説明で詳細に示した例が全レイヤを可視状態にしてGUI表示部上にレンダリングされている。このビューにおけるレイヤ順は、一番上が共有要素文書233のレイヤ、その次が第2文書専有要素文書232のレイヤ、更にその次が第1文書専有要素文書231のレイヤとなっている。また、第2文書専有要素文書232の色調が抑制されており、その濃色画素は今や中間色によるハッチング塗り潰し及び中間色の枠取りとなって現れている。このビューによれば、グラフィック要素510とグラフィック要素810のサイズ差を知ることができ、グラフィック要素540とグラフィック要素830の境界線も明らかな反面、グラフィック要素560はグラフィック要素860によってノックアウトされている。
【0079】
図16に、比較結果ビジュアライザ230によるGUI表示の例を示す。このビューにおいても、先の説明で詳細に示した例が全レイヤを可視状態にしてGUI表示部上にレンダリングされているが、そのレイヤ順は、一番上が第1文書専有要素文書231のレイヤ、その次が共有要素文書233のレイヤ、更にその次が第2文書専有要素文書232のレイヤとなっている。このビューによれば、グラフィック要素510の全体を看取でき、またグラフィック要素560とグラフィック要素860の枠線幅差を知ることができるものの、グラフィック要素510によってグラフィック要素810が隠されてしまっている。
【0080】
図17に、比較結果ビジュアライザ230によるGUI表示の例を示す。このビューにおいても、先の説明で詳細に示した例が全レイヤを可視状態にしてGUI表示部上にレンダリングされているが、そのレイヤ順は、一番上が第2文書専有要素文書232のレイヤ、その次が共有要素文書233のレイヤ、更にその次が第1文書専有要素文書231のレイヤとなっている。このレイヤ順では他のレイヤ順によるビューに比べ僅かな情報しか得られないが、それはひとえにこの例の性質によるものである。また、この図からは、アーチストの意図する視覚的効果を歪めるレイヤノックアウト効果も看取できる。なお、本発明を実施する際に、比較結果ビジュアライザ230によりレンダリングされるレイヤの一つとして、マージ済文書203がレンダリングされるレイヤを設けるとよい。そうした場合、アーチストの意図する視覚的効果を暫定文書と共に閲覧することができる。
【0081】
比較結果ビジュアライザ230は、先に述べたGUIによるビュー制御機能だけでなく、自動生成された編集スクリプト250中の処置をユーザがオーバライドできるようにする制御機能をも提供する。GUIによるレイヤビューを行った後は、このオーバライド制御機能に係るステップ314を実行する。比較結果ビジュアライザ230により提供されるオーバライド制御機能は、
・比較対象として選定されているグラフィック要素の特性、例えばマージ済文書203におけるそのグラフィック要素の存否を閲覧可能とする;
・比較対象として選定されているグラフィック要素をマージ済文書203から「削除」し編集スクリプト250にてオーバライドを発効させる;その手段としては、
・・共有要素文書233からグラフィック要素を「削除」する;これにより、第1文書201からそのグラフィック要素を「相続」する処置が、同じ識別子を有する第2文書202内グラフィック要素を「採用」する処置に置き換わる;
・・第1文書専有要素文書231からグラフィック要素を「削除」する;これにより、第1文書201からのそのグラフィック要素を「不採用」とする処置が、第1文書201からそのグラフィック要素を「相続」する処置に置き換わる;
・・第2文書専有要素文書232からグラフィック要素を「削除」する;これにより、第文書202からそのグラフィック要素を「採用」する処置が抹消される;
といった手段を使用する;
・「不採用」のグラフィック要素を対応するレイヤ内で可視又は不可視にする;
といったものである。
【0082】
ステップ314では、引き続き、比較結果ビジュアライザ230が編集スクリプト250を更新する。即ち、GUIセッションを通じて指示された様々なオーバライドを編集スクリプト250中の該当する処置に施す。ステップ314は、複製時修正グラフィック要素に対する編集スクリプト250中の処置のうちオーバライドの影響を受けたものを、比較結果ビジュアライザ230が調整したら終わりとなる。例えば、関連するコンテンツ性グラフィック要素に対する「不採用」処置がオーバライドされたら「暗黙的不採用」処置を抹消する、といった調整で終わりとなる。ステップ314終了後はステップ316に進み、編集スクリプト250を再適用すべきか否かが判断される。編集スクリプト250がオーバライドされている場合、ユーザの希望例えば比較結果ビジュアライザ230のGUIを用いたやりとりの結果を踏まえ、「Yes」と判断されるであろう。その場合はステップ317に進み、ステップ308と同様の動作を実行した上で更にステップ318に進む。逆に、ステップ316での判断の結果が「No」なら直ちにステップ318に進む。
【0083】
本発明の他の実施形態としては、比較結果ビジュアライザ230がマルチレイヤではなく単一レイヤで文書のビューを提供する、という実施形態があり得る。この手法の前提となるのは、文書内グラフィック要素を皆1個のビューレイヤに関連付けることである。文書を表示させる際には、レイヤ可視性制御機能によって、レイヤ内グラフィック要素を構成する画素の表示可否を決定する。また、文書内では、全レイヤを通じ一貫した表示順序となるように、全グラフィック要素の表示順序を定めておく。こうしたレイヤ化文書は、文書マージャ220、比較結果ビジュアライザ230その他の手段により生成できる。
【0084】
グラフィック要素は、両文書共有で第1,第2何れの文書からも採取できるグラフィック要素、第1文書専有グラフィック要素、並びに第2文書専有グラフィック要素という諸範疇に分類されている。レイヤ化文書は、各グラフィック要素をその範疇に応じて選別し、所属する範疇に対応するレイヤに関連付けることによっても、生成できる。第1文書から採取したグラフィック要素間の表示順序や、第2文書から採取したグラフィック要素間の表示順序は、保つようにする。また、一方の文書から採取されるグラフィック要素中に他文書から採取されるグラフィック要素の何れかと十分類似するものがある場合は、それら相類似するグラフィック要素を基準にしてグラフィック要素同士の相対的表示順序を決める。例えば、第1文書に係るリストではグラフィック要素表示順序がA,B1,C、第2文書に係るリストではD,B2,Cとなっており、且つグラフィック要素B1とグラフィック要素B2が十分相互類似している場合、レイヤ化文書に係るリストでは、グラフィック要素の表示順序が例えばA,D,B1,C,Eという順や、D,A,B1,E,Cという順になる。こうした順序であれば、各文書における表示順序の関係がレイヤ化文書においても保存されることとなる。なお、これら2例以外にも、表示順序保存条件を満足する順序はあり、そうした順序も採用可能である。
【0085】
また、色及び色調をレイヤベースで調整する機能無しで本発明を実施することもできる。その場合も、レイヤ可視性制御及びグラフィック要素指定によってその色や塗り潰し色を変化させることにより、グラフィック要素境界線を際立たせることができる。
【0086】
本発明は、例えば、コンピュータに組み込まれたプロセッサによりソフトウェア命令群を実行させ、それによって本発明の方法を実行させる、という形態で実施することができる。例えば文書コンパレータ210、文書マージャ220、比較結果ビジュアライザ230及び追加文書プロセッサ240は何れもソフトウェアによって実現することができ、そうしたソフトウェアを1個又は複数個のコンピュータシステム100上で実行することで、当該コンピュータシステム100の動作により上述の方法を実現することができる。そうしたソフトウェアに係るプログラムは、一組のコンピュータ可読信号(コンピュータに組み込まれたプロセッサにより実行することで本発明の方法を実施できる命令群を形成するコンピュータ可読信号)を格納又は送信可能なものであれば、どのような媒体によって提供してもよい。従って、当該プログラム製品は様々な形態を採ることができる。例えば物理的実体のある媒体とする場合、採りうる形態としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ等の磁気式データ格納媒体や、CD−ROM、DVD等の光学式データ格納媒体や、ROM、フラッシュRAM等の電子式データ格納媒体がある。また例えば伝送路形式の媒体とする場合、採りうる形態としては、ディジタル通信リンクやアナログ通信リンクがある。ソフトウェアを記述する命令は、適宜、圧縮、暗号化又はその双方を施した上で、媒体上にのせることができる。
【0087】
また、以上の記述においては、専ら文書作成環境における文書比較について詳細に説明したが、本発明の方法はそれ以外の分野にも適用できるので、そのことを了解されたい。本発明の根幹をなす方法の応用形態としては、例えば当該方法の一部を実施する形態や、別のアーキテクチャ、選定条件乃至規則を用いて実施する形態等がある。
【0088】
本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば、本願による開示から当然のこととして理解できるであろうが、本発明を実施する際には、本発明の要旨乃至技術的範囲を逸脱すること無しに、種々の変形や種々の改良を施すことができる。従って、本発明の技術的範囲は本願に添付する特許請求の範囲の記載に基づき、特にその実質に従い、認定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンピュータシステム環境を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシステムの機能的構成要素を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る文書処理方法を示すフローチャートである。
【図4】文書と文書とをマージできる編集スクリプトを文書間グラフィック要素比較により作成する方法を示すフローチャートである。
【図5】コンテンツ生成時点での第1文書レンダリング結果を示す図である。
【図6】1回目の複製時点での第1文書レンダリング結果を示す図である。
【図7】図6に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図8】第1文書のコンテンツ改訂によって生成した第2文書のレンダリング結果を示す図である。
【図9】図8に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図10】第1文書に第2文書をマージ可能な編集スクリプトのデータ構造を示す図である。
【図11】第1文書に編集スクリプトを適用して生成したマージ済文書のレンダリング結果を示す図である。
【図12】図11に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図13】マージ済文書に追加処理を施して生成した文書のレンダリング結果を示す図である。
【図14】図13に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図15】GUIのうちグラフィック要素をレイヤ化ビュー表示している部分、特に両文書が共有するグラフィック要素を目立つように表示している状態を示す図である。
【図16】GUIのうちグラフィック要素をレイヤ化ビュー表示している部分、特に第1文書専有グラフィック要素を目立つように表示している状態を示す図である。
【図17】GUIのうちグラフィック要素をレイヤ化ビュー表示している部分、特に第2文書専有グラフィック要素を目立つように表示している状態を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本願は、「グラフィック文書同士を比較するシステム及び方法」と題する2004年4月26日付米国特許出願第60/564946号に基づく優先権主張を伴う出願である。なお、当該出願の内容はこの参照を以て本願中に繰り入れることとする。
【0002】
本発明は、グラフィック要素を含む文書同士を比較することにより、それら文書間の類似、相違又はその双方を識別する技術に関する。本発明の好適な実施形態によれば、文書内グラフィック要素同士を好適にマージすることができる。
【背景技術】
【0003】
文書の作成及び複製(例えば印刷)は大抵は文書改変を伴うものである。例えば、コンテンツ生成フェーズにおける文書の推敲はその文書への改変を伴うものであるし、コンテンツ生成フェーズ終了後に誤りが認められた場合はその文書に修正が施されるであろうし、そして文書複製フェーズにおいても諸複製条件を満たすべく文書に改変が施されることがある。こうして文書はほぼ必ず多版化するので、作業者にしてみれば、多版文書における版間相違を識別、特定できるツールがあると好都合である。また、必要に応じ、文書内の一部コンテンツを別版同一文書内の他のコンテンツとマージできるようにすることも、望まれている。
【0004】
こうした処理を行える技術は従来から周知である。例えば、MicrosoftWord2003は、主としてテキストコンテンツからなる文書間の差異を識別、特定するソフトウェア機能を有している。この機能を利用すれば、例えば、幾ばくかのテキストコンテンツを共有する文書同士を比較し、どこが共有部分(両文書に共通する部分)でどこが専有部分(一方の文書にユニークな部分)かを識別、特定することができる。更に、この比較によって得られた情報を利用し一方の文書を他方の文書とマージすることができる。なお、「Microsoft」は登録商標、「Word」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0005】
しかしながら、グラフィックアート分野における文書は、テキスト(文字)、写真画像及びアートワークの組合せであることが多い。
【0006】
非テキスト要素同士の比較及びマージに関しては、MicrosoftWord2003により行えることは限られている。例えば、MicrosoftWord2003にはアートワークを描画できるドロー機能が組み込まれている。MicrosoftWord2003では、テキスト、挿入画像及び当該ドロー機能により作成したアートワークからなる文書を作成でき、またそうして作成した文書同士を比較することもできる。しかしながら、この比較では、元々の挿入画像ファイルの画像を修正しそのファイル名を変えた画像ファイルを挿入してある場合、画像の修正内容を認識することができない。同様に、この比較では、描画したアートワークに対するある種の改変、例えば矩形アートワークの寸法変更を認識することもできない。なお、アートワークの改変が全て認識されない訳ではなく、例えば描画した矩形アートワークの塗り潰し色の変更は、比較によって描画フレーム全体の変化として認識される。
【0007】
これに類する機能のある文書作成ソフトウェアとしては、例えばAdobeFrameMaker7.0がある。内部にアートワークオブジェクトが配置されたフレームがAdobeFrameMaker7.0文書のテキストフロー内にアンカリングされている場合、AdobeFrameMaker7.0のユーザ向け文書によれば、文書間でそうしたアートワークオブジェクト同士を比較することができる。オブジェクト自体やオブジェクト位置(例えば前後順序)に相違があれば、そのアンカーフレーム全体が“変更あり”とマークされる。しかしながら、実験結果によれば、オブジェクトに施した変更のうちサイズ変更等の変更は、この比較によっては認識されない。同様に、カプセル化PostScriptファイル(.eps形式のファイル)として挿入されたアートワークに対する変更も、この比較によっては認識されない。なお、「Adobe」「FrameMaker」「PostScript」は登録商標である(以下商標表記を省略)。
【0008】
また、コンテンツ混在型文書を文書交換フォーマットによって表現することもできる。文書交換フォーマットの中には、TIFFやCT/LW等のようにコンテンツをラスタ画素群に正規化して得られるラスタフォーマットがある。大抵の表示装置及び印刷装置がラスタ指向であるため、ラスタフォーマットを用いることで複製用フォーマットへの変換処理を比較的簡便に行うことができ、都合がよい。反面、不都合なことに、ラスタ画素群を複製するレンダリングプロセスにて、コンテンツ構造に関する情報が失われてしまう。
【0009】
ラスタフォーマット文書同士を比較できるソフトウェアツールとしては、ラスタ画素同士を比較しその差異を判別するものがある。この比較により判明した差異を可視表示する際には、通常、差異のある画素をコントラスト色で個別にハイライトし、或いは差異のある画素を取り巻く領域をハイライトする。しかしながら、ラスタフォーマットによる2個の文書同士をマージするには、各文書内の画素をマニュアル指定しなければならない。差異が膨大な場合現実にはマニュアル指定は不可能であり、またその自動化も難しい。自動化が難しいのは、文書内画素の選択に必要なコンテキスト情報がほとんどないため画素選択が難しいからである。なお、ラスタ画像間比較ツールの例としては、2個のジョブ間を比較する「差分エキスポート」(export difference)機能を有するArtworkSystemsArtPro6.5がある。計算により差異を探す際、ArtProはジョブを画素単位でスキャンするのであって、ベクトル情報の探索は行わない。なお、「ArtworkSystems」「ArtPro」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0010】
文書交換フォーマットとしては、上述のラスタフォーマットの他に、コンテンツをベクトル要素群として記述するベクトルフォーマット、例えばAdobePostScriptやAdobePDF(Portable Document Format)等のフォーマットがある。このフォーマットでは、文書がページ記述言語文から構成され、テキスト、画像、シンボルクリッピングパス(囲み線)等、各グラフィック要素がベクトルベースで定義される。ページ記述言語では、各要素をその特性及びページ内配置を示す属性によって記述し、また各要素のページ内表示順序も記述する。文脈から読み取れるように、ベクトルフォーマットの利点及び欠点はラスタフォーマットのそれと相補的である。なお、「PDF」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0011】
AdobeAcrobatには文書比較機能が備わっており、その文書比較機能には解析詳細度レベルが三段階ある。AdobeIllustrator文書を修正して印刷することによりPDFファイルを作成し、そのPDFファイルを用いAdobeAcrobatの文書比較機能について実験したところでは、画素同士の比較が行われているようである。例えば、Acrobatを用い最高解析詳細度で比較を行うと、インポート画像内の孤立した変更画素が検出され、各変更画素がパス(線分)で囲まれて視覚的にハイライトされる。同様に、三角形等のパス型グラフィック要素を含むPDFファイルをEnfocusPitstop等のPDFエディタアプリケーションで改変し、そのパス型グラフィック要素のサイズを大きくした場合も、Acrobatでその改変を検出することができる。検出された改変は、そのパス型グラフィック要素の境界線のうち小部分における変化として視覚的にハイライトされる。そのパス型グラフィック要素全体が改変ありとしてハイライトされる訳ではない。なお、「Acrobat」は登録商標、「Illustrator」「Enfocus」「Pitstop」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0012】
EnfocusPitstopでは、文書内グラフィック要素に施された編集の痕跡がセッションログに記録されているため、ユーザは、PDF文書内グラフィック要素編集時にセッションログから改変について知ることができる。
【0013】
CreoSep2Compなるソフトウェアでは、単一文書内の複数ページに亘るグラフィック要素の属性を調べることができる。各ページは互いに別々の印刷色に対応しており、文書交換フォーマットにより生成した際にコンポジットカラー文書即ち多色合成文書から生成されている。Sep2Compによれば、グラフィック要素の属性を調べて各原色グラフィック要素属性間の類似度を判別し、その結果に基づきコンポジットグラフィック要素即ち多色合成グラフィック要素の存在を推定することができ、更に互いに別々のページ上にある似通った要素同士を合成することができる。即ち、似通った色別グラフィック要素同士を、その印刷色を合成しまた色調を組み合わせることにより、単一ページ上に単一のグラフィック要素として合成することができる。但し、Sep2Compの動作モードは自動モードだけである。また、場合によっては不適正な判断が下されること、即ち、色別グラフィック要素間の類非判断に誤りが生じることもある。これは類非判断アルゴリズム及び類非判断則が理想的でないことによるものであり、またこうした誤りを補償する方法は提供されていない。なお、「Creo」は登録商標、「Sep2Comp」は商標である(以下商標表記を省略)。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5465353号明細書
【特許文献2】米国特許第5982931号明細書
【特許文献3】米国特許第6324555号明細書
【特許文献4】米国特許第5890177号明細書
【特許文献5】米国特許第5606651号明細書
【非特許文献1】W. Miller & E. W. Meyers, "A File Comparison Program", Software - Practice and Experience 15 (11), November 1985, pp. 1025-1040
【非特許文献2】"The String-to-String Correction Problem with Block Moves", ACM Transactions on Computer Systems 2 (4), November 1984, pp. 309-321
【非特許文献3】"A Technique for Isolating Differences Between Files", Communications of the ACM 21 (4), April 1978, pp. 264-268
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このように、種々の要素からなる文書同士を比較できるシステム及び方法に対する要求の中には、未だ充足されていないものがある。例えば包装材印刷の分野においては、次に述べる二つの事情から、そうした要求を満足させることが切に求められている。第1に、包装用文書には、種々の地域や種々の市場の要求に対処できるように種々の変形版が組み込まれていることが多い。元々のネイティブ文書フォーマット中の複数個のレイヤにそれぞれ別々の変形版を組み込んでおけば、その文書交換フォーマットによる文書を複製するのに先立ち所望の地域又は市場向けの変形版を選択することができ、ひいては所望の変形版を複製することができる。このように個々のオリジナル文書から多数の変形版文書を複製できるのであるが、それらの変形版文書は大量のグラフィック要素を共有しているので、好適な文書比較を行えるようにすることが特に必要とされる。
【0016】
第2に、印刷物複製フェーズにおいては、包装コンバータが多大な時間と量力を費やし、印刷できるようその文書を調製する(複製時処理)。例えば、グラフィック要素とグラフィック要素の境界線にグラフィック要素を付加し印刷時の見栄えを向上させる囲い込み(トラップ)処理、レンダリングされる画素の性質をグラフィック要素ベースで規定し印刷時の見栄えを向上させる中間調スクリーン割当、グラフィック要素編集によるコンテンツ修正例えば綴り間違いの修正等が、包装コンバータにより実行される。なお、印刷物複製フェーズで実行されうる処理はこれら以外にもある。
【0017】
地域が違うだけの複数通りの文書や、直前に変更が施されたため複数種類の版が生じた文書がある場合、それをそのまま複製すると複製時処理が重複実施される。これは多大な無駄である。包装コンバータでは、共有部分の多い複数個の文書に遭遇した場合に生じるこの無駄を、うまく吸収することができない。更に、版面作成処理は時間のかかる処理であるので、版面作成前に文書間の相違を可視化できるようなツールがあると、包装コンバータには都合がよい。その際、画素レベルではなくグラフィック要素レベルの違いを可視化できれば、なおのこと好都合である。しかも、多くの場合、地域の違い又はコンテンツ変更による影響を受けるのは、特定色(通常は黒及びスポット色)用の特定の版面だけである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、文書同士を比較するシステム及び方法に関する。本発明は、例えばAdobePDF仕様に合致するベクトルフォーマット文書同士を比較する形態で、好適に実施できる。また、本発明は文書コンパレータ及び文書マージャを備えるシステムとして実施でき、それら文書コンパレータ及び文書マージャはAdobeAcrobatプラグインソフトウェアモジュールとして実現できる。文書コンパレータは、第1,第2文書内グラフィック要素から選定条件に従い選定されたグラフィック要素、例えばコンテンツ生成フェーズにて生成されたグラフィック要素を調べ、その結果を例えば所定の規則(類非判断則)に照らして比較することによって、編集スクリプトを生成する。即ち、第1文書を第2文書に似せるために第1文書から削除する必要があるグラフィック要素や、同じく第1文書に追加する必要があるグラフィック要素を、識別できるようなスクリプトを生成する。使用する類非判断則は、例えば、その属性値に僅かな違いしかない複数個のグラフィック要素を、互いに同等乃至等価なものと識別できる規則である。
【0019】
文書マージャは、編集スクリプトを第1文書に適用して第2文書に似たマージ済文書を生成する。即ち、第1文書に編集スクリプトを適用すると、第1文書が専有するグラフィック要素が第1文書から削除され(マージ済文書へは「不採用」となり)、第2文書が専有するグラフィック要素が第1文書に追加されて(マージ済文書に「採用」となって)、マージ済文書が生成される。文書コンパレータによって相応の選定条件及び類非判断則を適用しておくことにより、第1文書内グラフィック要素のうち何れかの第2文書内グラフィック要素と十分類似するものを保存できる(マージ済文書に「相続」される)。第1文書内グラフィック要素のうち比較対象外とされたものも相続させることができる。グラフィック要素に対する複製フェーズでの処置には多大な時間と労力が必要であるため、こうして一部のグラフィック要素を相続できることは特に有益なことである。
【0020】
必須ではないが有益な構成要素としてはまず比較結果ビジュアライザがある。比較結果ビジュアライザは、編集スクリプトの要所要所と第1及び第2文書とを使用して、その構成レイヤ各々で幾ばくかのグラフィック要素を表示するレイヤ化ビューを作成する。レイヤを例えば3個有するレイヤ化ビューを作成しそれによって一群のグラフィック要素を表示させる場合、例えば第1,第2文書が共有するグラフィック要素を第1レイヤに、第1文書専有グラフィック要素を第2レイヤに、第2文書専有グラフィック要素を第3レイヤに含める。こうしたレイヤ化ビューにおいては、識別されたグラフィック要素の視覚的外観を制御によって変化させることにより、グラフィック要素間の類似点及び相違点を好適且つ至便に視覚化できる。比較結果ビジュアライザは、更に、何個かのグラフィック要素の指定を受けそれらグラフィック要素に対応する編集スクリプト内処置をオーバライドさせる制御も、実行する。従って、自動生成された編集スクリプトに対してユーザ意志による改変を施すことができ、改変を施した編集スクリプトを再適用することによってより望ましいマージ済文書を得ることができる。
【0021】
必須ではないが有益な構成要素としては次に追加文書処理部材(追加文書プロセッサ)がある。追加文書プロセッサはマージ済文書内グラフィック要素を調べて追加処理を実行する。例えば、追加文書プロセッサとして囲い込み処理エンジンを設け、このエンジンによりマージ済文書を処理することによって、第1文書から相続した囲い込み型グラフィック要素を調整することや新たな囲い込み型グラフィック要素を採用することができる。これらは共に、第2文書からのグラフィック要素の採用に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態及びその特徴的構成について、詳細な図示に基づきより詳細に説明する。
【0023】
なお、図示した実施形態により本発明の要旨が限定解釈されるべきではない。
【0024】
また、以下の説明においては、本発明について首尾一貫した理解を促すため具体的な細部に立ち入っているが、本発明を実施するに当たりそうした細部は必須なものではない。また、本発明の要旨が不必要にぼかされることを防ぐため、周知の部材乃至要素については詳細な図示や説明を省いてある。従って、本願明細書及び図面の記載事項をもとに限定解釈を行うべきではなく、当該記載はむしろ例示として理解すべきである。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係るコンピュータシステム100を模式的に示す。このコンピュータシステム100は、本発明の一実施形態に係るソフトウェアを実行する処理ユニット112を備えている。処理ユニット112によりアクセスされるデータ格納部110はデータを一時記憶及び恒久記憶する手段であり、処理ユニット112からアクセスできる限り、このコンピュータシステム100の一部として構成することも、また他のコンピュータシステム内に設けることもできる。処理ユニット112は、そのユーザインタフェースを構成する入力デバイス及び出力デバイスを、何種類か備えている。図示例では、GUI表示に適するグラフィックモニタ114が出力デバイスとして、マウス116及びキーボード118が入力デバイスとして、それぞれ設けられている。
【0026】
次に、本発明の実施形態の動作について、
・複製フェーズにおける第1文書内グラフィック要素への改変成果を温存しつつ、第1文書と第2文書を自動比較してマージ済文書を作成する方法;
・グラフィック要素間類似性を自動判断する方法及び上掲のマージ方法を好適に実施できる編集スクリプト;
・上掲の各方法の具体例;並びに
・上掲のマージ方法向けの編集スクリプトをユーザが改変できるよう、各文書専有グラフィック要素及び共有グラフィック要素を対比的に視覚化する方法;
を示すことによって説明する。
【0027】
自動マージ
図2に、本発明の一実施形態に係るコンピュータシステム200の機能的構成要素をブロック図により示す。図中の第1文書201はページ記述言語を用いて記述されたページ記述データから構成されており、そのページ記述データによって何枚かの印刷対象ページのレイアウトが定義されている。ページ記述データによって定義できるグラフィック要素としては、テキスト、画像、アートワーク(例えばパス、シェーディング(陰影)、ブレンド等)等があり、各グラフィック要素には、例えばクリッピングパス、ストローク(枠取り)、フィル(塗り潰し)、フォントタイプ等、その視覚的外観に関連する属性が伴っている。第2文書202の構成も同様である。説明の都合上、やや恣意的ではあるが、第1及び第2文書201及び202の大略履歴を一例として次の如く設定する。
【0028】
まず、この例における文書201及び202には共通の出自があるものとする。即ち、コンテンツ生成フェーズでアーチストが特定の視覚的効果を狙って作成した文書、即ち第1コンテンツ生成フェーズで生成された第1文書201が共通の出自であるとする。コンテンツ生成フェーズで定義されるグラフィック要素はコンテンツ性グラフィック要素と呼ぶことができる。また、第1文書201は、第1コンテンツ生成フェーズに続く第1複製フェーズにて、例えば印刷時品質の向上や一部複製プロセスの上首尾実施を目的として、修正されているものとする。第1複製フェーズで第1文書201に施される修正は、例えば、文書内グラフィック要素属性の修正例えば中間調スクリーンの割当や修正、囲い込み型グラフィック要素の文書内追加等、ある種の労働集約的処置を含むものとする。第1複製フェーズで追加されるグラフィック要素(上の例では囲い込み型グラフィック要素)は複製時修正グラフィック要素、第1複製フェーズで修正されたグラフィック要素属性は複製時修正グラフィック要素属性と呼ぶことができる。そして、第1文書201は複製可否の観点からすると印刷可能であるが、そのコンテンツは最早、印刷にそぐわないものになってしまっているとする。
【0029】
次に、第2文書202は、第2コンテンツ生成フェーズにて第1文書201に改訂、例えば芸術的意図の翻意や変更を反映したコンテンツの追加や修正を施すことによって、生成されたものであるとする。改訂の有無や内容はともあれ、続く第2複製フェーズでは、第1複製フェーズにて第1文書201に施された処置をできるだけ多く温存しつつ第2文書202を印刷することを狙って、第2文書202が処理されているとする。その複製フェーズで第1文書201に施された修正のうち、第2文書202の作成時におけるコンテンツ改訂に関係のないものは、温存することが可能である。
【0030】
本発明を実施する際には例えばこれらの文書をPDF文書として作成する。PDF文書は、例えばAdobePDFWriterを使用する文書作成アプリケーション上で印刷動作を実行させることにより、複製することができる。そのような実施形態においては、システム200を構成する処理部全体又はその一部をカプセル化し、AdobeAcrobatソフトウェアで利用可能なソフトウェアプラグインにすることができる。便宜上、以下の説明はPDF文書及びAdobeAcrobat式プラグインアーキテクチャに基づいて行うこととするが、他種ソフトウェアアーキテクチャモデル及び他種文書フォーマットを用いて本発明を実施することもできる。それを解釈することによってグラフィック要素の表示順序を示すリストが得られる文書フォーマットであれば、その文書フォーマットを本発明で利用することができる。
【0031】
「表示順序」とは、画像プロセッサによってレンダリングしたときその文書を構成するグラフィック要素が表示される順序をいう。グラフィック要素同士に重なり合いがある場合、表示順序を決めること(表示順序を特定すること)が重要になる。画像プロセッサは、例えばノックアウト法やオーバプリント法を用い、表示順序が後になっているグラフィック要素を表示させる。ノックアウト(覆い隠し)法を使用した場合、表示順序が後のグラフィック要素のうち表示順序が先のグラフィック要素と重なり合っている部分が、当該表示順序が先のグラフィック要素によって隠蔽される。オーバプリント(重ね塗り)法を使用した場合、グラフィック要素同士が重なり合う部分ではそれらグラフィック要素の色が重なり合う。重なり合いの結果は、少なくとも部分的にはそれらグラフィック要素の順序関係により異なるものとなりうる。また、図2で参照している各文書は、処理ユニット112にて利用することができる限り、データストリームその他の形式で存在していてもよいし、データ格納部110内にファイルとして存在していてもよい。
【0032】
図3に、本実施形態のシステム200により実行されるグラフィック文書処理方法300の基本的な流れをフローチャートにより示す。本方法はステップ302におけるユーザとのやりとりにて始まる。このやりとりは、文書コンパレータ210により提供されるGUIを介し、入力デバイス116,118及びモニタ114を用いて行われる。
【0033】
この方法を開始する際には、互いに同等のグラフィック要素の定義が2個の文書201,202間で一致することとなるよう、リファイニング(微調整)として知られる複製準備フェーズを先立って実行するとよい。例えば、コンテンツ生成フェーズにて文書201又は202がネイティブ文書生成フォーマットやPostScriptフォーマット等のページ定義フォーマットにより作成されている場合、文書複製設備にて、その文書201,202を当該ページ定義フォーマットからPDFフォーマットに変換するとよい。加えて、ページ記述データのシンタックス、セマンティクス又はその双方に改変を施すこともできる。施せるシンタックス変更としては、例えば、望ましい特徴を備えた別バージョンのページ記述言語を利用して文書201,202を記述する処理がある。施せるセマンティクス変更即ちグラフィック要素及びその属性に対する変更としては、例えば、種々の文書複製方針(常時オーバプリントする、指定解像度で画像をリサンプリングする、塗り潰されたパス型グラフィック要素を分離して枠取りに変換する、パス型グラフィック要素を塗り潰す等)の採用がある。
【0034】
ステップ304では、第1文書201及び第2文書202を記述するページ記述データを文書コンパレータ210が解釈し、それによって表示リスト、即ち各文書201,202におけるグラフィック要素の表示順序を示すリストを生成する。ページ記述データを解釈して表示リストを作成する手法としては、本件技術分野にて周知の手法を応用できる。以下、特に注記しない限り、「第1文書201」「第2文書202」との表現は、元々の第1文書201、第2文書202から生成した表示リストのことを指すものとする。
【0035】
ステップ306では、第1文書201及び第2文書202内グラフィック要素のうち比較対象として選定したグラフィック要素(後述)を文書コンパレータ210が調べ、それによって、マージ済文書203を生成可能な編集スクリプト250を生成する。マージ済文書203とは、外観上は第2文書202と類似しているが第1文書201内グラフィック要素のうち幾つかを相続している文書のことである。なお、使用によって編集スクリプト250に類する結果が得られるものであれば、本発明の実施に当たり他種形式の編集データを生成してもよい。
【0036】
続くステップ308では、文書マージャ220が第1文書201に編集スクリプト250を適用する。その結果得られるものの一つがマージ済文書203である。マージ済文書203は、第1文書201内グラフィック要素のうち、一群の比較対象外グラフィック要素と、第2文書202内グラフィック要素に対する類似性が認められたグラフィック要素とを、相続する。更に、第1文書201専有グラフィック要素は不採用となり、第2文書202専有グラフィック要素は採用される。第2文書202からの採用の際、第2文書202における相対的な表示順序は保たれる。文書マージャ220は、相続したグラフィック要素に対し、各種複製時修正グラフィック要素属性を再び調べる必要があることを示す属性を、セットすることができる。
【0037】
文書マージャ220は、更に、第1文書201内複製時修正グラフィック要素を調べ、それらを不採用とすべきか否かを判別する。これを管理するための規則は編集スクリプト250その他の情報に基づき定めればよい。例えば、第1文書201内囲い込み型グラフィック要素は、その参照先コンテンツ性グラフィック要素のうち何れかが不採用ならそのグラフィック要素との間の境界線も無くなるので不採用とし、逆に、その参照先グラフィック要素が共に相続されるなら相続させる。囲い込み型グラフィック要素以外の種類の複製時修正グラフィック要素に対処する場合や、また別のやり方で対処したい場合は、それ相応の規則を追加し又はそれ相応に規則を修正すればよい。
【0038】
ステップ308では、最後に文書マージャ220がマージレポート204を作成する。作成されるマージレポート204は、上述のマージプロセスの影響を受けたグラフィック要素についての情報、例えばマージの影響を受けたグラフィック要素の概要又は詳細についての情報を含んでおり、グラフィック要素が影響を受けたために複製プロセスに及ぶ影響を、マージレポート204内情報に基づき識別することができる。例えば、マージレポート204に基づき、マージの影響を受けない印刷色がどれかを識別することができるので、作成済の印刷用の版面のうち影響を受けない何色分かを再使用することができる。なお、マージレポート204は、データ格納部110内にセーブすることや、GUIを用いモニタ114上に表示させることができる。
【0039】
続くステップ309では、文書同士の視覚的比較を実行するか否かを決定する。この決定は、ユーザの希望に基づいて、例えばGUIを介し文書マージャ220が発する質問に対するユーザからの返答結果に即して、行うとよい。その結果、「Yes」となった場合はステップ310に移行して後述の視覚的比較を開始し、「No」となった場合はステップ318に進む。
【0040】
ステップ318では、追加文書プロセッサ240による追加処理を実行するか否かについて判断する。この判断は、ユーザの希望に基づいて、例えばGUIを介して文書マージャ220が発する質問に対するユーザからの返答結果に即して、行うとよい。ここで「No」と判断した場合はステップ322を実行する。ステップ322では、文書マージャ220が、他の文書複製アプリケーションでも好適に使用できるよう、マージ済文書203をページ記述データへとフォーマット変換する。なお、文書マージャ220により、マージ済文書203をデータ格納部110内にセーブすることもできるし、他のアプリケーションで利用できるよう処理ユニット112内に保持させることもできるし、或いはその双方とすることもできる。
【0041】
ステップ318にて「Yes」と判断した場合はステップ320を実行する。ステップ320では、追加文書プロセッサ240が複製フェーズ関連処理例えば囲い込み処理を実行する。例えば、一実施形態に係る追加文書プロセッサ240は二段階の追加囲い込み処理を実行する。まず、第1段階では相続した囲い込み型グラフィック要素を再び調べる。これは、相続した囲い込み型グラフィック要素のクリッピングパスが、何れかのグラフィック要素の採用又は不採用によって影響を受けている可能性を、知るためである。例えば、採用されたグラフィック要素が囲い込み型グラフィック要素と隣り合うような位置又は重なり合うような位置にある場合、相続した囲い込み型グラフィック要素に関連付けて格納されている囲い込み規則が発動し、採用されたグラフィック要素のパスに沿ってその囲い込み型グラフィック要素がクリップされることがある。囲い込み規則なるものは大体にして極めて複雑であるので、1個でもグラフィック要素を採用(追加)すると既存の囲い込み型グラフィック要素のうち1個又は複数個が影響を受けうるものであり、しかもその影響は様々に異なる。そこで、第2段階では、例えば採用されたコンテンツ性グラフィック要素のうち、他のマージ済文書203内コンテンツ性グラフィック要素と隣接又は重複することとなるものに、囲い込み規則を適用する。追加文書プロセッサ240は、こうしてマージ済文書203を処理することにより処理済マージ済文書205を生成する。
【0042】
追加文書プロセッサ240は、次に、マージレポート204を更新し又は新たなマージレポート204を作成する。更新又は追加されたこのマージレポート204は、囲い込み処理と、グラフィック要素に対する囲い込み処理の影響とについて、情報をもたらすものである。次のステップ322では、追加文書プロセッサ240が処理済マージ済文書205をページ記述データフォーマットへと変換し、データ格納部110内にセーブする。
【0043】
自動編集スクリプト生成
図4に、文書コンパレータ210が編集スクリプト250の生成に使用する方法400をフローチャートにより示す。本方法は、2個の順序付リストを生成することを目的としてステップ402にて開始される。生成したいのは、比較対象として選定した第1文書201内グラフィック要素とそれに割り当てた識別子とを表示順序に従い対応付ける第1リストと、比較対象として選定した第2文書202内グラフィック要素とそれに割り当てた識別子とを表示順序に従い対応付ける第2リストである。識別子は、両文書201,202を通じユニークになるよう各グラフィック要素に割り当てる。更に、本発明においては、後に詳細に説明するように、あるグラフィック要素の属性が他のグラフィック要素の対応する属性と所定の精度範囲内で一致している場合に、両グラフィック要素が相互に類似するものと判別してそれらに同一の識別子を割り当てる。
【0044】
続くステップ404では第1文書201を現段階での処理対象文書として選択する。その次のステップ406においては、その処理対象文書にて最初に表示されるグラフィック要素を現段階での処理対象グラフィック要素として認定する。
【0045】
ステップ408ではグラフィック要素選定条件を適用する。適用される選定条件は、例えば、複製フェーズで第1文書201に施された処置を温存させることを狙い、コンテンツ性グラフィック要素だけを識別して比較対象とする条件である。この図に例示する方法であれば、囲い込み型グラフィック要素その他の複製時修正グラフィック要素を生成する際に予め、そのグラフィック要素が複製時修正グラフィック要素であることを示す属性を付与しておき、選定条件としては複製時修正グラフィック要素属性の有無を調べる条件を使用すればよい。また、他種グラフィック要素を選定できるように、この種のグラフィック要素属性又は他種のグラフィック要素属性の組合せに基づき選定条件を定めることもできる。例えば、コンテンツ性か複製時修正かの別を問わず、複製フェーズでの処理が済んでいる文書内グラフィック要素は皆選定し、それらの間の相違を判別するように、選定条件を定めてもよい。
【0046】
現在の処理対象グラフィック要素がコンテンツ性グラフィック要素ではないことが判明した場合、ステップ408からテップ424に進み、そうでなければステップ410に進む。
【0047】
また、図示されている実施形態では、グラフィック要素間比較を好適且つ至便に行うべくグラフィック要素属性からハッシュ値を算出する(他の比較手法によって本発明を実施することもできる)。即ち、ステップ410では、現在の処理対象グラフィック要素の指定属性をハッシュ化アルゴリズムに従い処理する。ハッシュ化アルゴリズムは、指定グラフィック要素属性に相応する可変長データから固定長データ即ちハッシュ値を導出するアルゴリズムである。使用するハッシュ化アルゴリズム及びその対象となる属性は、相互類似するグラフィック要素に互いに同一のハッシュ値が充てられるよう定めておく。
【0048】
次のステップ412ではハッシュ化済グラフィック要素の集合を調べる。現在の処理対象グラフィック要素のハッシュ値によって特定されるハッシュリストが存在していない場合は、新たなハッシュリストを生成してそのグラフィック要素に関連付け、ステップ418に進んでそのグラフィック要素に次のユニークな識別子を関連付ける。また、第1文書201内グラフィック要素については、第1文書201が専有しているものとひとまず仮定できるので、第1文書201内グラフィック要素処理時は常にステップ418に進むよう、本方法を構成するのが適切である。
【0049】
逆に、存在している場合はステップ414に進み、現在の処理対象グラフィック要素のハッシュ値によって特定される既存のハッシュリストに、そのグラフィック要素を関連付ける。次いで、そのハッシュリストに関連付けられている個々のグラフィック要素と現在の処理対象グラフィック要素との間で詳細な属性比較を実行し、それらのうちの何れかが十分相互類似しており等価であると見なしてよいか否かを判別する。
【0050】
「十分類似」の意味合いは類非判断則により定義しておく。表1〜表5に、本発明の好適な実施形態における類非判断則の例を示す。これらの類非判断則は、似通っているグラフィック要素間の相違のうち視覚的に認知できないものを無視するためのものである。グラフィック要素属性その他の条件に基づく類非判断則にはこれとは異なるタイプのものもあり得、そうしたものを用いて本発明を実施することもできる。例えば、比較対象として選定されている文書内グラフィック要素と十分類似するグラフィック要素を、同じ文書から選定できないようにする規則を、定めてもよい。同一文書内グラフィック要素同士が十分相互類似していたら、その類非判断則に従い期待はずれの結果としてユーザに通知し、ユーザの注意を喚起することができる。また、本発明の実施に際し、グラフィック要素同士の等価性を評価するための規則(類非判断則等)をユーザが微調整できるようにしてもよいし、また当該規則を複数組準備しておきユーザが何れかの組を選択できるようにしてもよい。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
上述した単一ハッシュキー法は、その値が離散値をとる属性に適している。その値が連続値を採る属性やその値が非常に大きくなる属性については、その値域を離散化して複数個のビンに区分すれば、離散ハッシュ化アルゴリズムを好適に適用することができる。対応する類非判断則で決まる公差や量子化の度合いによるが、単一ハッシュキー法を用いた場合、十分相互類似しており同等のものであると認められるべき2個のグラフィック要素に対して、互いに異なるハッシュ値が充てられることがある。こうした属性を有するグラフィック要素が互いに十分類似するものとして認識されるようにするには、適用される量子化及び公差に応じ、グラフィック要素1個に対して複数通りのハッシュ値を生成するとよい。この場合、1個のグラフィック要素に対して複数個のハッシュリストが関連付けられることとなる。十分類似するグラフィック要素を探索する際には、グラフィック要素毎に複数通り生成されているハッシュ値に対応して複数個あるハッシュリストを調べる。
【0057】
複数個のハッシュ値を生成するやり方を簡単な例によって説明すると次のようになる。まず、テキスト(文字列)型グラフィック要素のハッシュ値をポイントサイズ属性のみに基づき決めるものとする。更に、ポイントサイズの値域0〜100をハッシュ化に先立ち量子化し、0.1ポイント刻みで多数のビンに区分するものとする。加えて、そのアプリケーションでは、ポイントサイズ差が0.06ポイント以内のテキスト型グラフィック要素同士を「十分類似」と見なしてよいものとする。こうした類非判断則によれば、ポイントサイズ=10.05ポイントのテキスト型グラフィック要素と、そのポイントサイズが9.99≦ポイントサイズ≦10.11の範囲内にある別のテキスト型グラフィック要素とが、類似するものと認定される。また、そのテキスト型グラフィック要素のポイントサイズ10.05は、10.00≦ポイントサイズ<10.10を占めるビン(第1のビン)の範囲内であるので、このグラフィック要素に対してはまず第1のビンを用い第1のハッシュ値を生成する。更に、ポイントサイズ9.99を有する類似グラフィック要素が属する9.90≦ポイントサイズ≦10.00のビン(第2のビン)を用いて第2のハッシュ値を生成し、同様にポイントサイズ10.11を有する類似グラフィック要素が属する10.10≦ポイントサイズ<10.20のビン(第3のビン)を用いて第3のハッシュ値を生成する。このように類似範囲と重なる(マッチングする)ビンの個数は一般に複数個であるので、量子化後にハッシュ化する属性を複数個にすると、マッチングビン個数の組合せの個数に応じてハッシュ値生成個数も増加する。
【0058】
続くステップ416では、十分類似しているか否かを比較結果に基づき判別する。既に処理済のグラフィック要素の中に現在の処理対象グラフィック要素と十分類似するものが見つからなかった場合はステップ418に進み、現在の処理対象グラフィック要素に対し次のユニークな識別子を関連付ける。見つかった場合は、ステップ420で、十分類似するとされた別のグラフィック要素に割り当ててあるユニークな識別子を、現在の処理対象グラフィック要素にも関連付ける。
【0059】
ステップ418又は420を実行したらステップ422に進む。ステップ422では、現在の処理対象グラフィック要素の識別子を現在の処理対象文書に対応するリストに追加する。なお、ここでグラフィック要素のリストではなくグラフィック要素の識別子のリストを使用しているのは、後に行う比較の際に処理ユニット112で費消するリソースが少ない後者の方が、望ましいからである。
【0060】
次のステップ424では、現在の処理対象文書を調べることにより、現在の処理対象グラフィック要素の後に別のグラフィック要素が存在しているか否かを判断する。存在している場合、ステップ426ではそのグラフィック要素を新たな処理対象グラフィック要素と認定してステップ408に進み、存在していない場合は現在の処理対象グラフィック要素が現在の処理対象文書における最後のグラフィック要素であるのでステップ428に進んで現在の処理対象文書が第1文書201であるか否かを判別する。第1文書201である場合、ステップ430にて第2文書202を新たな処理対象文書と認定してステップ406に進み、第1文書201でない場合は目的が達成されたためステップ432に進む。
【0061】
ステップ432では、文書コンパレータ210が2個のリストを調べ、それによって、第1リストを第2リストに変更可能な編集スクリプト250、より具体的にはグラフィック要素に対する一群の処置(第1文書201からの不採用や第2文書202からの採用等のアクション)を含む編集スクリプト250を生成する。文書コンパレータ210は、最後に、グラフィック要素のうち追加処理が必要なものに、そのことを示す属性をセットする。
【0062】
編集スクリプト250の生成は、本件技術分野において周知の方法を利用して好適に行うことができる。その例としては、
・第1,第2リスト内の要素群を共有要素が見つかるまで順に調べていく;
・共有要素が見つかったら、第1リスト内要素のうち、新たに見つかった共有要素とその前の共有要素(最初はリストの冒頭)との間にある全要素を削除する;
・その後、第2リスト専有要素のうち、新たに見つかった共有要素とその前の共有要素(最初はリストの冒頭)との間にある全要素を、第2リストにおける相対的順番を保ちつつ、第1リストに追加する;第1リストにおける追加先は、新たに見つかった共有要素とその前の共有要素(最初はリストの冒頭)の間とする;
・以上の処理を両リストの末尾まで繰り返す;両リストの末尾は共有要素として扱う;
という手順により第1リストから編集スクリプト250を生成する方法を掲げうる。
【0063】
本発明の実施に適する方法としては、例えば、非特許文献1に記載されており「最大共有サブストリング」(Largest Common Substring)アルゴリズムと呼ばれているアルゴリズムがある。その他、本発明の関連部分の実施に際し利用可能と見られるものは、非特許文献2や非特許文献3にも記載されている。
【0064】
詳細例
この項においては、以上の説明で示した方法について、単純な例を示して詳細に説明する。図5に、1回目のコンテンツ生成フェーズ直後における第1文書201のレンダリング結果例500を示す。この段階における第1文書201は、表示順にいうと、
・画像501
・枠取りが無く濃色で塗り潰されていてクリッピングパスCP1を有する矩形パス510
・枠取りが無く淡色で塗り潰されている三角形パス520
・枠取りが無く濃色で塗り潰されている正方形パス540
・枠取りが無く淡色で塗り潰されている矩形パス550
・濃色で中間的な幅の枠取りがあり、塗り潰されていない矩形パス560であり、最初は矩形パス550の一部として扱われるがリファイニングプロセスにて矩形パス550から分離されるもの
・枠取りが無く濃色で塗り潰されている文字列570
といったグラフィック要素から構成されている。各グラフィック要素には、デフォルトで中間調スクリーンS1が割り当てられている。
【0065】
図6に、囲い込み処理及び中間調スクリーン調整を含む1回目の複製フェーズ終了直後における図5に例示した第1文書201のレンダリング結果例600を示す。また、図7は図6に対応するデータ構造700を示す図であり、第1文書201の諸元及び関連データが例示されている。
【0066】
図7中の列704に示されているグラフィック要素識別子は、図4に示した方法に従い生成されたものであり、図6中で各グラフィック要素に付した参照符号に対応している。説明の便宜上、その末尾2桁が相対的表示順序を表し上位桁が初出図面番号を表すよう、各識別子を定めてある。後掲の図面でも、この決まりに則っている。
【0067】
複製フェーズでは、淡色のコンテンツ性グラフィック要素と濃色のコンテンツ性グラフィック要素の境界線の印刷品質を向上させるため、囲い込み型グラフィック要素611、612、621、655及び665A〜665Dが追加されている。専ら図示の都合上、囲い込み型グラフィック要素はより濃色のコンテンツ性グラフィック要素より奥でより淡色のコンテンツ性グラフィック要素より手前に表示させてある。更に、囲い込み型グラフィック要素のクリッピングパスは淡色グラフィック要素に接しており、また濃色グラフィック要素内に入り込んでいる。囲い込み型グラフィック要素は、中間色で塗り潰された枠取り無しのパス型グラフィック要素として生成される。
【0068】
図7には、更に、コンテンツ性グラフィック要素及び複製時修正グラフィック要素の指定属性が示されている。注目すべきことに、
・図4に示した方法によるグラフィック要素間比較により得られたハッシュ値が列706に、
・クリッピングパスや枠線幅等、この例に適する属性値が列708に、
それぞれ示されている。
【0069】
図7中、列710に示されている複製時修正グラフィック要素の指定属性は、
・複製時修正グラフィック要素の識別結果
・囲い込み型グラフィック要素とコンテンツ性グラフィック要素の関係
・中間調スクリーンに施した調整の内容(要素520がスクリーンS2に関連付けられたこと)
を反映している。
【0070】
図8に、1回目の複製フェーズと並行して実施される2回目のコンテンツ生成フェーズの終了直後における第2文書202のレンダリング結果例800を示す。また、図9は図8に示した第2文書202のこの段階でのデータ構造900を示す図である。図9中、コンテンツ改訂部分はハイライトしてある。特に、
・画像501は削除されたため図9には示されていない;
・矩形パス802及び830が追加されている;
・矩形パス510は新たなクリッピングパスCP1Aを有するものに修正されている;注記すべきことに、図4に示した方法による修正後のグラフィック要素は、修正前の矩形パス510と同じハッシュ値を有するものの、詳細な検討により類似度不十分と判断され別の識別子810が割り当てられている;
・三角形パス520には中間調スクリーンS1が関連付けられている;これは1回目のコンテンツ生成フェーズでの定義と整合している;
・矩形パス560は修正されており、その枠線幅が拡がったため新たな識別子860が割り当てられている;
となっている。
【0071】
図10に、編集スクリプト250の適用によるデータ構造の変化1000の例を示す。適用した編集スクリプト250は複数個の入力文書、即ち図6及び図7に示した第1文書201並びに図8及び図9に示した第2文書202に基づき、図4に示した方法を用いて生成したものである。編集スクリプト250を適用すると、列1002に示すステップ番号の順で一連の編集ステップが実行される。編集ステップは、それぞれ共有要素の相続で終わる複数組の大ステップにまとまっている。ステップ番号中の数字は、大ステップ番号を表している。また、列1004に示すステップ内処置(アクション)には、
・第1文書201専有コンテンツ性グラフィック要素の「不採用」或いは「削除」(Delete);
・第2文書202専有コンテンツ性グラフィック要素の「採用」或いは「追加」(Add);
・両文書201,202内にあり互いに十分類似すると識別されたグラフィック要素の「相続」或いは「放置」(No action);この処置は、例えば、後述の通り編集スクリプト250を用いて他種文書を生成する目的で、編集スクリプト250に組み込むこともできる;十分類似するグラフィック要素間の比較痕跡を保持できるなら、他の手法を用いてもかまわない;
・比較時に調べないままマージ済文書203内に相続させるグラフィック要素に対する「無処置」(N/A);この処置は編集スクリプト250内に明示的に組み込まれるものではない;
・不採用となった1個又は複数個のグラフィック要素に従属する複製時修正グラフィック要素に対する「暗黙的不採用」或いは「当然削除」(Derived delete);この処置は編集スクリプト250内に明示的に組み込まれるものではなく、関連するグラフィック要素が明示的に不採用となることによって発生する;
の各種がある。
【0072】
更に、列1006に示すステップパラメタには、処置対象出自文書(列1010)や、追加場所相対指定(列1012;該当する場合だけ)がある。追加処理属性(列1014)は文書マージャ220によりセットされる属性であり、この例では、囲い込み処理が必要な新規オブジェクトや調整が必要な相続した囲い込み型グラフィック要素を識別するための属性が含まれている。追加処理成果(列1020)は追加処理が実行されたら何が起こるかを示している。これについては後に図13を参照してより詳細に説明する。
【0073】
図11に、マージ済文書203のレンダリング結果例1100を示す。図12は図11に対応するデータ構造1200を示す図であり、例示したマージ済文書203の諸元及び関連データを表している。注意すべきこととしては、
・図7に示した第1文書201内グラフィック要素501、510、611、612、655及び560が不採用とされ図11及び図12中に現れていないこと;
・図8に示した第2文書202内グラフィック要素802、810、830及び860が採用されていること;第2文書202におけるそれらの相対的表示順序が保たれていること;
・他の第1文書201内グラフィック要素が全て、あらゆる複製時修正グラフィック要素属性と共に保存されていること;例えば、三角形パス520のスクリーンがS2のまま、矩形パス621のクリッピングパスがCP2のままであること;また、不採用になったグラフィック要素があるため関連要素との関連付けが更新されていること;
がある。
【0074】
図13に、処理済マージ済文書205のレンダリング結果例1300を示す。図14は図13に対応するデータ構造1400を示す図であり、例示した処理済マージ済文書205の諸元及び関連データを表している。要注目事項としては、
・グラフィック要素802、810、830及び860の採用に伴い生成された新たなコンテンツ性グラフィック要素境界線に対応して、囲い込み型グラフィック要素1303、1311、1312、1322及び1355が追加され、影響を受ける関連グラフィック要素との関連付けが更新されていること;
・採用された矩形グラフィック要素830と正方形グラフィック要素540の間に境界線が生成されたため、囲い込み型グラフィック要素1321のクリッピングパスが調整を受けてCP2Aになっていること;
・パス型グラフィック要素550とテキスト型グラフィック要素570の間の境界線に変更がないため、囲い込み型グラフィック要素665A〜665Dが影響を受けていないこと;
がある。
【0075】
視覚的比較
図3に示す方法は、更に第1文書201と第2文書202の視覚的比較を可能にするステップを含んでおり、それらのステップは文書コンパレータ210が編集スクリプト250を生成した後に開始される。例えば、比較結果ビジュアライザ(コンポーネントビジュアライザ又は文書ビジュアライザとも称しうる)230が、第1文書201、第2文書202及び編集スクリプト250に基づく三種類の暫定文書の生成を、ステップ310にて開始する。作成される暫定文書は次の各文書、即ち
・第1文書201だけに含まれるグラフィック要素からなる第1文書専有要素文書231;この文書231は、例えば編集スクリプト250中で「不採用」処置に対応付けられているグラフィック要素を選択するという方法で生成する;
・第2文書202だけに含まれるグラフィック要素からなる第2文書専有要素文書232;この文書232は、例えば編集スクリプト250中で「採用」処置に対応付けられているグラフィック要素を選択するという方法で生成する;
・第1文書201及び第2文書202に含まれ互いに十分類似すると認められたグラフィック要素からなる共有要素文書233;この文書233は、例えば比較時に調べられたグラフィック要素のうち編集スクリプト250中で「相続」処置に対応付けられているグラフィック要素を選択するという方法で生成する;
であり、これらは後に使用するため例えばデータ格納部110内にセーブされる。また本発明を実施する際には、例えば、コンテンツ性グラフィック要素だけを視覚的に比較できるようにするため、複製時修正グラフィック要素を除外して暫定文書を生成する。
【0076】
次のステップ312では、比較結果ビジュアライザ230により提供されるGUI上に暫定文書をマルチレイヤレンダリングする。レンダリング結果においては、各レイヤ内で定義されたオーバプリント特性及びノックアウト特性が表出する。また、複数個のレイヤを可視状態にすると別々の可視レイヤの画素同士が合成される。合成されると、上位レイヤ内グラフィック要素構成画素が下位レイヤ内グラフィック要素構成画素をノックアウトするため、別レイヤ内オブジェクト間境界線がより露わになる。そのため、比較結果ビジュアライザ230によるGUIは、
・各レイヤの可視性(可視にするか不可視にするか)を制御する;
・各回レンダリングにおけるレイヤ順を制御する;
・各レイヤの色や色調を調整することにより、類似した色又は色調を有するグラフィック要素同士をレイヤ間で区別できるようにする;
・グラフィック要素属性値指定によって指定された何個かのグラフィック要素(例えばパス型グラフィック要素)をGUI上でハイライトさせる;
・GUI上の露出領域内構成画素をポイントすることによって指定された何個かのグラフィック要素をGUI上でハイライトさせる;
といったビュー制御を実行する。
【0077】
「指定又はハイライトされたオブジェクトのラスタ合成による表示方法」(Method For Displaying Selected Or Highlighted Objects Using Raster Compositing)と題する米国特許出願第10/677332号には、GUI上でのグラフィック要素の合成及び指定方法が記載されている。この方法については、この参照を以て本願に繰り入れることとする。
【0078】
図15に、比較結果ビジュアライザ230によるGUI表示の例を示す。このビューにおいては、先の説明で詳細に示した例が全レイヤを可視状態にしてGUI表示部上にレンダリングされている。このビューにおけるレイヤ順は、一番上が共有要素文書233のレイヤ、その次が第2文書専有要素文書232のレイヤ、更にその次が第1文書専有要素文書231のレイヤとなっている。また、第2文書専有要素文書232の色調が抑制されており、その濃色画素は今や中間色によるハッチング塗り潰し及び中間色の枠取りとなって現れている。このビューによれば、グラフィック要素510とグラフィック要素810のサイズ差を知ることができ、グラフィック要素540とグラフィック要素830の境界線も明らかな反面、グラフィック要素560はグラフィック要素860によってノックアウトされている。
【0079】
図16に、比較結果ビジュアライザ230によるGUI表示の例を示す。このビューにおいても、先の説明で詳細に示した例が全レイヤを可視状態にしてGUI表示部上にレンダリングされているが、そのレイヤ順は、一番上が第1文書専有要素文書231のレイヤ、その次が共有要素文書233のレイヤ、更にその次が第2文書専有要素文書232のレイヤとなっている。このビューによれば、グラフィック要素510の全体を看取でき、またグラフィック要素560とグラフィック要素860の枠線幅差を知ることができるものの、グラフィック要素510によってグラフィック要素810が隠されてしまっている。
【0080】
図17に、比較結果ビジュアライザ230によるGUI表示の例を示す。このビューにおいても、先の説明で詳細に示した例が全レイヤを可視状態にしてGUI表示部上にレンダリングされているが、そのレイヤ順は、一番上が第2文書専有要素文書232のレイヤ、その次が共有要素文書233のレイヤ、更にその次が第1文書専有要素文書231のレイヤとなっている。このレイヤ順では他のレイヤ順によるビューに比べ僅かな情報しか得られないが、それはひとえにこの例の性質によるものである。また、この図からは、アーチストの意図する視覚的効果を歪めるレイヤノックアウト効果も看取できる。なお、本発明を実施する際に、比較結果ビジュアライザ230によりレンダリングされるレイヤの一つとして、マージ済文書203がレンダリングされるレイヤを設けるとよい。そうした場合、アーチストの意図する視覚的効果を暫定文書と共に閲覧することができる。
【0081】
比較結果ビジュアライザ230は、先に述べたGUIによるビュー制御機能だけでなく、自動生成された編集スクリプト250中の処置をユーザがオーバライドできるようにする制御機能をも提供する。GUIによるレイヤビューを行った後は、このオーバライド制御機能に係るステップ314を実行する。比較結果ビジュアライザ230により提供されるオーバライド制御機能は、
・比較対象として選定されているグラフィック要素の特性、例えばマージ済文書203におけるそのグラフィック要素の存否を閲覧可能とする;
・比較対象として選定されているグラフィック要素をマージ済文書203から「削除」し編集スクリプト250にてオーバライドを発効させる;その手段としては、
・・共有要素文書233からグラフィック要素を「削除」する;これにより、第1文書201からそのグラフィック要素を「相続」する処置が、同じ識別子を有する第2文書202内グラフィック要素を「採用」する処置に置き換わる;
・・第1文書専有要素文書231からグラフィック要素を「削除」する;これにより、第1文書201からのそのグラフィック要素を「不採用」とする処置が、第1文書201からそのグラフィック要素を「相続」する処置に置き換わる;
・・第2文書専有要素文書232からグラフィック要素を「削除」する;これにより、第文書202からそのグラフィック要素を「採用」する処置が抹消される;
といった手段を使用する;
・「不採用」のグラフィック要素を対応するレイヤ内で可視又は不可視にする;
といったものである。
【0082】
ステップ314では、引き続き、比較結果ビジュアライザ230が編集スクリプト250を更新する。即ち、GUIセッションを通じて指示された様々なオーバライドを編集スクリプト250中の該当する処置に施す。ステップ314は、複製時修正グラフィック要素に対する編集スクリプト250中の処置のうちオーバライドの影響を受けたものを、比較結果ビジュアライザ230が調整したら終わりとなる。例えば、関連するコンテンツ性グラフィック要素に対する「不採用」処置がオーバライドされたら「暗黙的不採用」処置を抹消する、といった調整で終わりとなる。ステップ314終了後はステップ316に進み、編集スクリプト250を再適用すべきか否かが判断される。編集スクリプト250がオーバライドされている場合、ユーザの希望例えば比較結果ビジュアライザ230のGUIを用いたやりとりの結果を踏まえ、「Yes」と判断されるであろう。その場合はステップ317に進み、ステップ308と同様の動作を実行した上で更にステップ318に進む。逆に、ステップ316での判断の結果が「No」なら直ちにステップ318に進む。
【0083】
本発明の他の実施形態としては、比較結果ビジュアライザ230がマルチレイヤではなく単一レイヤで文書のビューを提供する、という実施形態があり得る。この手法の前提となるのは、文書内グラフィック要素を皆1個のビューレイヤに関連付けることである。文書を表示させる際には、レイヤ可視性制御機能によって、レイヤ内グラフィック要素を構成する画素の表示可否を決定する。また、文書内では、全レイヤを通じ一貫した表示順序となるように、全グラフィック要素の表示順序を定めておく。こうしたレイヤ化文書は、文書マージャ220、比較結果ビジュアライザ230その他の手段により生成できる。
【0084】
グラフィック要素は、両文書共有で第1,第2何れの文書からも採取できるグラフィック要素、第1文書専有グラフィック要素、並びに第2文書専有グラフィック要素という諸範疇に分類されている。レイヤ化文書は、各グラフィック要素をその範疇に応じて選別し、所属する範疇に対応するレイヤに関連付けることによっても、生成できる。第1文書から採取したグラフィック要素間の表示順序や、第2文書から採取したグラフィック要素間の表示順序は、保つようにする。また、一方の文書から採取されるグラフィック要素中に他文書から採取されるグラフィック要素の何れかと十分類似するものがある場合は、それら相類似するグラフィック要素を基準にしてグラフィック要素同士の相対的表示順序を決める。例えば、第1文書に係るリストではグラフィック要素表示順序がA,B1,C、第2文書に係るリストではD,B2,Cとなっており、且つグラフィック要素B1とグラフィック要素B2が十分相互類似している場合、レイヤ化文書に係るリストでは、グラフィック要素の表示順序が例えばA,D,B1,C,Eという順や、D,A,B1,E,Cという順になる。こうした順序であれば、各文書における表示順序の関係がレイヤ化文書においても保存されることとなる。なお、これら2例以外にも、表示順序保存条件を満足する順序はあり、そうした順序も採用可能である。
【0085】
また、色及び色調をレイヤベースで調整する機能無しで本発明を実施することもできる。その場合も、レイヤ可視性制御及びグラフィック要素指定によってその色や塗り潰し色を変化させることにより、グラフィック要素境界線を際立たせることができる。
【0086】
本発明は、例えば、コンピュータに組み込まれたプロセッサによりソフトウェア命令群を実行させ、それによって本発明の方法を実行させる、という形態で実施することができる。例えば文書コンパレータ210、文書マージャ220、比較結果ビジュアライザ230及び追加文書プロセッサ240は何れもソフトウェアによって実現することができ、そうしたソフトウェアを1個又は複数個のコンピュータシステム100上で実行することで、当該コンピュータシステム100の動作により上述の方法を実現することができる。そうしたソフトウェアに係るプログラムは、一組のコンピュータ可読信号(コンピュータに組み込まれたプロセッサにより実行することで本発明の方法を実施できる命令群を形成するコンピュータ可読信号)を格納又は送信可能なものであれば、どのような媒体によって提供してもよい。従って、当該プログラム製品は様々な形態を採ることができる。例えば物理的実体のある媒体とする場合、採りうる形態としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ等の磁気式データ格納媒体や、CD−ROM、DVD等の光学式データ格納媒体や、ROM、フラッシュRAM等の電子式データ格納媒体がある。また例えば伝送路形式の媒体とする場合、採りうる形態としては、ディジタル通信リンクやアナログ通信リンクがある。ソフトウェアを記述する命令は、適宜、圧縮、暗号化又はその双方を施した上で、媒体上にのせることができる。
【0087】
また、以上の記述においては、専ら文書作成環境における文書比較について詳細に説明したが、本発明の方法はそれ以外の分野にも適用できるので、そのことを了解されたい。本発明の根幹をなす方法の応用形態としては、例えば当該方法の一部を実施する形態や、別のアーキテクチャ、選定条件乃至規則を用いて実施する形態等がある。
【0088】
本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば、本願による開示から当然のこととして理解できるであろうが、本発明を実施する際には、本発明の要旨乃至技術的範囲を逸脱すること無しに、種々の変形や種々の改良を施すことができる。従って、本発明の技術的範囲は本願に添付する特許請求の範囲の記載に基づき、特にその実質に従い、認定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンピュータシステム環境を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシステムの機能的構成要素を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る文書処理方法を示すフローチャートである。
【図4】文書と文書とをマージできる編集スクリプトを文書間グラフィック要素比較により作成する方法を示すフローチャートである。
【図5】コンテンツ生成時点での第1文書レンダリング結果を示す図である。
【図6】1回目の複製時点での第1文書レンダリング結果を示す図である。
【図7】図6に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図8】第1文書のコンテンツ改訂によって生成した第2文書のレンダリング結果を示す図である。
【図9】図8に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図10】第1文書に第2文書をマージ可能な編集スクリプトのデータ構造を示す図である。
【図11】第1文書に編集スクリプトを適用して生成したマージ済文書のレンダリング結果を示す図である。
【図12】図11に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図13】マージ済文書に追加処理を施して生成した文書のレンダリング結果を示す図である。
【図14】図13に示した文書のデータ構造を示す図である。
【図15】GUIのうちグラフィック要素をレイヤ化ビュー表示している部分、特に両文書が共有するグラフィック要素を目立つように表示している状態を示す図である。
【図16】GUIのうちグラフィック要素をレイヤ化ビュー表示している部分、特に第1文書専有グラフィック要素を目立つように表示している状態を示す図である。
【図17】GUIのうちグラフィック要素をレイヤ化ビュー表示している部分、特に第2文書専有グラフィック要素を目立つように表示している状態を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数個のグラフィック要素を含む第1及び第2文書を互いに比較する方法であって、合計で複数個の識別子を各第1及び第2文書内グラフィック要素にユニークに関連付けるステップと、その際互いに十分類似する第1及び第2文書内グラフィック要素に同一の識別子を関連付けるステップと、を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
各第1文書内グラフィック要素にユニークな識別子を関連付けるステップと、
各第2文書内グラフィック要素を複数個の第1文書内グラフィック要素と比較する比較ステップと、
どの第1文書内グラフィック要素とも十分類似していない第2文書内グラフィック要素にユニークな識別子を関連付けるステップと、
何れかの第1文書内グラフィック要素と十分類似している第2文書内グラフィック要素に、その第1文書内グラフィック要素に既に関連付けられている識別子と同一の識別子を関連付けるステップと、
を有する方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、比較ステップが、複数通りの類非判断則に基づき複数通りの要素間比較を実行する要素間比較ステップを含む方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、要素間比較ステップが、
グラフィック要素を代理するハッシュ値をそのグラフィック要素の属性値群に基づき生成するステップと、
それらグラフィック要素及びハッシュ値を互いに関連付けるステップと、
第1及び第2文書内グラフィック要素のうち同一ハッシュ値に関連付けられている要素間で要素間比較を実行するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法であって、上記複数通りの類非判断則が、対応する属性間に印刷時外観が似たものになる程度の値の違いしかない複数個のグラフィック要素について、互いに十分類似するとの判断を下す類非判断則を、含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、少なくとも1個の属性についての類非判断則が、その属性間にその属性に対応する精度値未満の相違しかない複数個のグラフィック要素について、互いに十分類似するとの判断を下す類非判断則である方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法であって、第1文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第1リスト及び第2文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第2リストへと、上記複数個の識別子を編成するステップを有する方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法であって、
第1リストを第2リストに変えられる編集データを第1及び第2リストから導出する編集データ導出ステップと、
第1及び第2文書、第2及び第2リスト並びに編集データに基づき1個以上の成果文書を生成する成果文書生成ステップと、
を有する方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、成果文書生成ステップが、
第1及び第2リストのうち少なくとも一方に編集データを適用して成果リストを生成するステップと、
成果リストに関連付けられているグラフィック要素のうち少なくとも一部に基づき1個以上の成果文書を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法であって、複数個の第1及び第2文書内グラフィック要素が、第1及び第2文書に係る情報及びグラフィック要素属性に基づく選定条件に従い比較対象として選択され、この選定条件によって第1及び第2文書内グラフィック要素のうち0個以上が比較対象外とされる方法。
【請求項11】
請求項8記載の方法であって、編集データが、第1文書が専有するグラフィック要素の削除乃至不採用、第2文書が専有するグラフィック要素の追加乃至採用、並びに第2文書内グラフィック要素と十分類似する第1文書内グラフィック要素の放置乃至相続を含め、複数の種類がある複数通りの処置を含む方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、編集データ導出ステップが、
第1及び第2リスト内識別子をそれらのリストに共通の共有識別子が見つかるまで順番に調べていくサブステップと、
共有識別子が見つかったらその共有識別子についての相続処置を編集データに組み込むサブステップと、
以前にそれらのリストから共有識別子を見つけたことがあるならその共有識別子と今回見つけた共有識別子の間、見つけたことがないなら第1リストの冒頭と今回見つけた共有識別子の間にある全ての第1リスト内識別子について、不採用処置を編集データに組み込むサブステップと、
以前にそれらのリストから共有識別子を見つけたことがあるならその共有識別子と今回見つけた共有識別子の間、見つけたことがないなら第2リストの冒頭と今回見つけた共有識別子の間にある全ての第2リスト内識別子について、採用処置を編集データに組み込むサブステップと、
第1及び第2リストの終わりにあるものを共有識別子と見なし、上記各サブステップを第1及び第2リストの終わりに達するまで繰り返すサブステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、編集データ導出ステップにて最大共有サブストリングアルゴリズムを使用する方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法であって、成果文書生成ステップが、マージ済文書を生成するマージ文書生成ステップを含む方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、マージ文書生成ステップが、
第1文書が専有するグラフィック要素それぞれを不採用とするステップと、
比較対象外とされた0個以上のグラフィック要素を第1文書から相続するステップと、
第2文書内グラフィック要素と十分類似しているグラフィック要素それぞれを第1文書から相続するステップと、
第2文書が専有するグラフィック要素それぞれを第2文書から採用するステップと、
を含み、更に、第2文書からグラフィック要素を採用する際に、第2文書から採用するグラフィック要素及び第2文書内グラフィック要素と十分類似するとされた第1文書内グラフィック要素を含め、複数個のグラフィック要素間の相対的な順序を保つ方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、選定条件として、コンテンツ性グラフィック要素に該当するグラフィック要素を識別し第1文書内複製時修正グラフィック要素をマージ済文書に相続させる条件を、使用する方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法であって、マージ文書生成ステップが、マージ済文書生成の影響を受けるグラフィック要素についての情報を生成するマージ影響情報生成ステップを含む方法。
【請求項18】
請求項1記載の方法であって、第1及び第2文書がAdobe(登録商標)PDF仕様に適合している方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法であって、マージ影響情報生成ステップが、マージ済文書生成の影響を受けるグラフィック要素組成色に基づき、影響を受ける印刷版面色についての情報を提供するステップを、含む方法。
【請求項20】
請求項15記載の方法であって、マージ文書生成ステップが、マージ済文書生成に不採用となるグラフィック要素に従属するグラフィック要素をマージ済文書に不採用とするステップを含む方法。
【請求項21】
請求項1記載の方法であって、
相続した囲い込み型の複製時修正グラフィック要素の属性を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう調整するステップと、
新たな囲い込み型の複製時修正グラフィック要素を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう生成するステップと、
を有する方法。
【請求項22】
請求項8記載の方法であって、成果文書生成ステップが、第1及び第2文書のうち一方に属し他方に属するグラフィック要素と十分類似するグラフィック要素が含まれる第1第2文書共有要素レイヤ、第1文書内にはあるが第2文書内にはないグラフィック要素からなる第1文書専有要素レイヤ、並びに第2文書内にはあるが第1文書内にはないグラフィック要素からなる第2文書専有要素レイヤを含め、複数個のレイヤを有するレイヤ化文書を生成するレイヤ化文書生成ステップを含む方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法であって、レイヤ化文書生成ステップが、
第1及び第2文書からレイヤ化文書に複数個のグラフィック要素を採用するレイヤ化文書内採用ステップと、
第1及び第2文書、第1及び第2リスト、選定条件並びに編集データに基づき各レイヤ化文書内グラフィック要素をレイヤのうち1個に関連付けるステップと、
を含む方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、レイヤ化文書内採用ステップが、
グラフィック要素間相対的順序を保ちつつ複数個の第1文書内グラフィック要素を採用するステップと、
グラフィック要素間相対的順序を保ちつつ複数個の第2文書内グラフィック要素を採用するステップと、
第1及び第2文書のうち一方から採用されたグラフィック要素と他方から採用された共有グラフィック要素との相対的順序を保つステップと、
を含む方法。
【請求項25】
請求項22記載の方法であって、複数個のレイヤビューからなる成果文書ビューを提供するステップを有し、各レイヤビューを構成する複数個の画素を、その文書レイヤに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることにより形成し、且つ各レイヤビューの可視性を個別制御可能な方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法であって、
何れかのレイヤビューに関連付けられているグラフィック要素の指定を受けるステップと、
編集データに対するユーザの改訂意図が反映されるよう、編集データ内でそのグラフィック要素に関連付けられている処置を変化させるステップと、
を有する方法。
【請求項27】
請求項8記載の方法であって、成果文書生成ステップが、
第1文書内グラフィック要素のうち第2文書内グラフィック要素と十分類似しているグラフィック要素が含まれる共有要素文書を生成する共有要素文書生成ステップと、
第1文書が専有するグラフィック要素からなる第1文書専有要素文書を生成する第1文書専有要素文書生成ステップと、
第2文書が専有するグラフィック要素からなる第2文書専有要素文書を生成する第2文書専有要素文書生成ステップと、
を含む方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、共有要素文書生成ステップが、第1及び第2リストのうち一方に対し編集データで相続処置を適用して第1及び第2文書が共有するグラフィック要素を選り出すステップを含む方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、第1文書専有要素文書生成ステップが、不採用処置の編集データを第1リストに適用して第1文書が専有するグラフィック要素を選り出すステップを含む方法。
【請求項30】
請求項28記載の方法であって、第2文書専有要素文書生成ステップが、採用処置の編集データを第2リストに適用して第2文書が専有するグラフィック要素を選り出すステップを含む方法。
【請求項31】
請求項8記載の方法であって、少なくとも1個の成果文書のビューを複数個のレイヤビューにより提供するステップを有し、各レイヤビューを構成する複数個の画素を、そのレイヤに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることにより形成し、且つ各レイヤビューの可視性を他のレイヤビューの可視性から独立に制御可能な方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法であって、各レイヤビューに、共有要素文書、第1文書専有要素文書及び第2文書専有要素文書のうち1個により定義された複数個のグラフィック要素が関連付けられる方法。
【請求項33】
請求項22記載の方法であって、
何れかのレイヤに関連付けられているグラフィック要素の指定を受けるステップと、
編集データに対するユーザの改訂意図が反映されるよう、編集データ内でそのグラフィック要素に関連付けられている処置を変化させるステップと、
を有する方法。
【請求項34】
複数個の第1文書内グラフィック要素及び複数個の第2文書内グラフィック要素に対し合計複数個の識別子をユニークに割り当てる識別子割当手段と、グラフィック要素同士を比較してそれらが十分類似しているか否かを判別する比較手段と、を備え、
比較手段によって十分相互類似していると判別された第1及び第2文書内グラフィック要素双方に対し識別子割当手段が同一の識別子を関連付ける文書比較システム。
【請求項35】
請求項34記載の文書比較システムであって、識別子割当手段が、
各第1文書内グラフィック要素にユニークな識別子を関連付ける手段と、
第2文書内グラフィック要素のうち第1文書内グラフィック要素の何れとも十分類似していないグラフィック要素にユニークな識別子を関連付ける手段と、
第2文書内グラフィック要素のうち何れかの第1文書内グラフィック要素と十分類似しているグラフィック要素に、その第1文書内グラフィック要素に既に関連付けられている識別子と同一の識別子を関連付ける手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項36】
請求項35記載の文書比較システムであって、
第1文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第1リスト及び第2文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第2リストへと、上記複数個の識別子を編成する手段と、
第1リストを第2リストに変えられる編集データを第1及び第2リストから導出する手段と、
第1及び第2文書、第1及び第2リスト並びに編集データに基づき1個以上の成果文書を生成する成果文書生成手段と、
を備える文書比較システム。
【請求項37】
請求項36記載の文書比較システムであって、成果文書生成手段が、
第1及び第2リストのうち少なくとも一方に対し編集データを適用することにより成果リストを生成する手段と、
成果リストに関連付けられているグラフィック要素のうち少なくとも一部に基づき1個以上の成果文書を生成する手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項38】
請求項37記載の文書比較システムであって、第1及び第2文書内グラフィック要素が、第1及び第2文書に係る情報及びグラフィック要素属性に基づき定めた選定条件に基づき比較対象として選択され、この選定条件に基づき第1及び第2文書内グラフィック要素のうち0個以上が比較対象外とされる文書比較システム。
【請求項39】
請求項38記載の文書比較システムであって、編集データが、第1文書が専有するグラフィック要素の削除乃至不採用、第2文書が専有するグラフィック要素の追加乃至採用、並びに第2文書内グラフィック要素と十分類似する第1文書内グラフィック要素の放置乃至相続を含め、複数の種類がある複数通りの処置を含む文書比較システム。
【請求項40】
請求項39記載の文書比較システムであって、成果文書生成手段が、印刷時外観が第2文書と似ているマージ済文書を生成するマージ文書生成手段を有する文書比較システム。
【請求項41】
請求項40記載の文書比較システムであって、マージ文書生成手段が、
第1文書が専有する各グラフィック要素を不採用とする手段と、
比較対象外とされた0個以上のグラフィック要素を第1文書から相続する手段と、
第2文書内グラフィック要素と十分類似するグラフィック要素それぞれを第1文書から相続する手段と、
第2文書が専有するグラフィック要素それぞれを第2文書から採用する手段と、
を有し、更に、第2文書からグラフィック要素を採用する際、第2文書から採用するグラフィック要素及び第2文書内グラフィック要素と十分類似する第1文書内グラフィック要素を含め、複数個のグラフィック要素間の相対的な順序を保つ文書比較システム。
【請求項42】
請求項41記載の文書比較システムであって、選定条件として、コンテンツ性グラフィック要素に該当するグラフィック要素を識別して第1文書内複製時修正グラフィック要素をマージ済文書に相続させる条件を、使用する文書比較システム。
【請求項43】
請求項41記載の文書比較システムであって、マージ文書生成手段が、更に、マージ済文書生成の影響を受けるグラフィック要素についての情報を生成する手段を有する文書比較システム。
【請求項44】
請求項42記載の文書比較システムであって、
相続した囲い込み型の複製時修正グラフィック要素の属性を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう調整する手段と、
新たな囲い込み型の複製時修正グラフィック要素を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう生成する手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項45】
請求項36記載の文書比較システムであって、成果文書生成手段が、少なくとも第1第2文書共有要素レイヤ、第1文書専有要素レイヤ及び第2文書専有要素レイヤを含め複数個のレイヤを有するレイヤ化文書を生成する手段を、有する文書比較システム。
【請求項46】
請求項45記載の文書比較システムであって、更に、レイヤ化文書を構成するレイヤを視覚的に比較可能とする視覚化手段を備える文書比較システム。
【請求項47】
請求項46記載の文書比較システムであって、視覚化手段が、レイヤ化文書のビューを複数個のレイヤビューにより提供する手段を有し、各レイヤビューを構成する複数個の画素が、レイヤ化された各文書レイヤに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることによって形成され、且つ各レイヤビューの可視性を他のレイヤビューの可視性から独立に制御可能な文書比較システム。
【請求項48】
請求項47記載の文書比較システムであって、視覚化手段が、
何れかのレイヤビューに係るグラフィック要素の指定を受ける手段と、
編集データに対するユーザの改訂意図が反映されるよう、編集データ内でそのグラフィック要素に関連付けられている処置を変化させる手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項49】
文書コンパレータ及び文書マージャを備え、
文書コンパレータが、
ある第1文書内グラフィック要素がある第2文書内グラフィック要素と性質的に十分類似している場合にそれらのグラフィック要素に同一の識別子が関連付けられることとなるよう、複数個の第1文書内グラフィック要素及び複数個の第2文書内グラフィック要素に対応する合計で複数個の識別子をユニークに決定し、
第1文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第1リスト及び第2文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第2リストへと、上記複数個の識別子を編成し、
第1リストを第2リストに変えることができる編集データを第1及び第2リストから導出し、
文書マージャが、第1及び第2文書、第1及び第2リスト並びに編集データに基づき1個以上の成果文書を生成する文書比較装置。
【請求項50】
請求項49記載の文書比較装置であって、成果文書のうち少なくとも1個が、印刷時外観が第2文書と似ているマージ済文書である文書比較装置。
【請求項51】
請求項49記載の文書比較装置であって、成果文書のうち少なくとも1個が、第2文書内グラフィック要素と十分類似している第1文書内グラフィック要素が含まれる第1第2文書共有要素レイヤ、第1文書が専有するグラフィック要素からなる第1文書専有要素レイヤ、並びに第2文書が専有するグラフィック要素からなる第2文書専有要素レイヤを含め、複数個のレイヤを有するレイヤ化文書である文書比較装置。
【請求項52】
請求項49記載の文書比較装置であって、第2文書内グラフィック要素と十分類似している第1文書内グラフィック要素が含まれる共有要素文書、第1文書が専有するグラフィック要素からなる第1文書専有要素文書、並びに第2文書が専有するグラフィック要素からなる第2文書専有要素文書を、成果文書として生成する文書比較装置。
【請求項53】
請求項49記載の文書比較装置であって、少なくとも1個の成果文書のビューを複数個のレイヤビューによって提供する比較結果ビジュアライザを備え、各レイヤビューを構成する複数個の画素が、そのレイヤビューに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることにより形成され、且つ各レイヤビューの可視性を個別制御可能な文書比較装置。
【請求項54】
データプロセッサにより実行させるとそのデータプロセッサによって請求項1記載の方法が実行されることになる命令群を構成する一組のコンピュータ可読信号を、格納又は伝送する媒体。
【請求項1】
それぞれ複数個のグラフィック要素を含む第1及び第2文書を互いに比較する方法であって、合計で複数個の識別子を各第1及び第2文書内グラフィック要素にユニークに関連付けるステップと、その際互いに十分類似する第1及び第2文書内グラフィック要素に同一の識別子を関連付けるステップと、を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
各第1文書内グラフィック要素にユニークな識別子を関連付けるステップと、
各第2文書内グラフィック要素を複数個の第1文書内グラフィック要素と比較する比較ステップと、
どの第1文書内グラフィック要素とも十分類似していない第2文書内グラフィック要素にユニークな識別子を関連付けるステップと、
何れかの第1文書内グラフィック要素と十分類似している第2文書内グラフィック要素に、その第1文書内グラフィック要素に既に関連付けられている識別子と同一の識別子を関連付けるステップと、
を有する方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、比較ステップが、複数通りの類非判断則に基づき複数通りの要素間比較を実行する要素間比較ステップを含む方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法であって、要素間比較ステップが、
グラフィック要素を代理するハッシュ値をそのグラフィック要素の属性値群に基づき生成するステップと、
それらグラフィック要素及びハッシュ値を互いに関連付けるステップと、
第1及び第2文書内グラフィック要素のうち同一ハッシュ値に関連付けられている要素間で要素間比較を実行するステップと、
を含む方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法であって、上記複数通りの類非判断則が、対応する属性間に印刷時外観が似たものになる程度の値の違いしかない複数個のグラフィック要素について、互いに十分類似するとの判断を下す類非判断則を、含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、少なくとも1個の属性についての類非判断則が、その属性間にその属性に対応する精度値未満の相違しかない複数個のグラフィック要素について、互いに十分類似するとの判断を下す類非判断則である方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法であって、第1文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第1リスト及び第2文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第2リストへと、上記複数個の識別子を編成するステップを有する方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法であって、
第1リストを第2リストに変えられる編集データを第1及び第2リストから導出する編集データ導出ステップと、
第1及び第2文書、第2及び第2リスト並びに編集データに基づき1個以上の成果文書を生成する成果文書生成ステップと、
を有する方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、成果文書生成ステップが、
第1及び第2リストのうち少なくとも一方に編集データを適用して成果リストを生成するステップと、
成果リストに関連付けられているグラフィック要素のうち少なくとも一部に基づき1個以上の成果文書を生成するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法であって、複数個の第1及び第2文書内グラフィック要素が、第1及び第2文書に係る情報及びグラフィック要素属性に基づく選定条件に従い比較対象として選択され、この選定条件によって第1及び第2文書内グラフィック要素のうち0個以上が比較対象外とされる方法。
【請求項11】
請求項8記載の方法であって、編集データが、第1文書が専有するグラフィック要素の削除乃至不採用、第2文書が専有するグラフィック要素の追加乃至採用、並びに第2文書内グラフィック要素と十分類似する第1文書内グラフィック要素の放置乃至相続を含め、複数の種類がある複数通りの処置を含む方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、編集データ導出ステップが、
第1及び第2リスト内識別子をそれらのリストに共通の共有識別子が見つかるまで順番に調べていくサブステップと、
共有識別子が見つかったらその共有識別子についての相続処置を編集データに組み込むサブステップと、
以前にそれらのリストから共有識別子を見つけたことがあるならその共有識別子と今回見つけた共有識別子の間、見つけたことがないなら第1リストの冒頭と今回見つけた共有識別子の間にある全ての第1リスト内識別子について、不採用処置を編集データに組み込むサブステップと、
以前にそれらのリストから共有識別子を見つけたことがあるならその共有識別子と今回見つけた共有識別子の間、見つけたことがないなら第2リストの冒頭と今回見つけた共有識別子の間にある全ての第2リスト内識別子について、採用処置を編集データに組み込むサブステップと、
第1及び第2リストの終わりにあるものを共有識別子と見なし、上記各サブステップを第1及び第2リストの終わりに達するまで繰り返すサブステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、編集データ導出ステップにて最大共有サブストリングアルゴリズムを使用する方法。
【請求項14】
請求項11記載の方法であって、成果文書生成ステップが、マージ済文書を生成するマージ文書生成ステップを含む方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、マージ文書生成ステップが、
第1文書が専有するグラフィック要素それぞれを不採用とするステップと、
比較対象外とされた0個以上のグラフィック要素を第1文書から相続するステップと、
第2文書内グラフィック要素と十分類似しているグラフィック要素それぞれを第1文書から相続するステップと、
第2文書が専有するグラフィック要素それぞれを第2文書から採用するステップと、
を含み、更に、第2文書からグラフィック要素を採用する際に、第2文書から採用するグラフィック要素及び第2文書内グラフィック要素と十分類似するとされた第1文書内グラフィック要素を含め、複数個のグラフィック要素間の相対的な順序を保つ方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、選定条件として、コンテンツ性グラフィック要素に該当するグラフィック要素を識別し第1文書内複製時修正グラフィック要素をマージ済文書に相続させる条件を、使用する方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法であって、マージ文書生成ステップが、マージ済文書生成の影響を受けるグラフィック要素についての情報を生成するマージ影響情報生成ステップを含む方法。
【請求項18】
請求項1記載の方法であって、第1及び第2文書がAdobe(登録商標)PDF仕様に適合している方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法であって、マージ影響情報生成ステップが、マージ済文書生成の影響を受けるグラフィック要素組成色に基づき、影響を受ける印刷版面色についての情報を提供するステップを、含む方法。
【請求項20】
請求項15記載の方法であって、マージ文書生成ステップが、マージ済文書生成に不採用となるグラフィック要素に従属するグラフィック要素をマージ済文書に不採用とするステップを含む方法。
【請求項21】
請求項1記載の方法であって、
相続した囲い込み型の複製時修正グラフィック要素の属性を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう調整するステップと、
新たな囲い込み型の複製時修正グラフィック要素を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう生成するステップと、
を有する方法。
【請求項22】
請求項8記載の方法であって、成果文書生成ステップが、第1及び第2文書のうち一方に属し他方に属するグラフィック要素と十分類似するグラフィック要素が含まれる第1第2文書共有要素レイヤ、第1文書内にはあるが第2文書内にはないグラフィック要素からなる第1文書専有要素レイヤ、並びに第2文書内にはあるが第1文書内にはないグラフィック要素からなる第2文書専有要素レイヤを含め、複数個のレイヤを有するレイヤ化文書を生成するレイヤ化文書生成ステップを含む方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法であって、レイヤ化文書生成ステップが、
第1及び第2文書からレイヤ化文書に複数個のグラフィック要素を採用するレイヤ化文書内採用ステップと、
第1及び第2文書、第1及び第2リスト、選定条件並びに編集データに基づき各レイヤ化文書内グラフィック要素をレイヤのうち1個に関連付けるステップと、
を含む方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、レイヤ化文書内採用ステップが、
グラフィック要素間相対的順序を保ちつつ複数個の第1文書内グラフィック要素を採用するステップと、
グラフィック要素間相対的順序を保ちつつ複数個の第2文書内グラフィック要素を採用するステップと、
第1及び第2文書のうち一方から採用されたグラフィック要素と他方から採用された共有グラフィック要素との相対的順序を保つステップと、
を含む方法。
【請求項25】
請求項22記載の方法であって、複数個のレイヤビューからなる成果文書ビューを提供するステップを有し、各レイヤビューを構成する複数個の画素を、その文書レイヤに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることにより形成し、且つ各レイヤビューの可視性を個別制御可能な方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法であって、
何れかのレイヤビューに関連付けられているグラフィック要素の指定を受けるステップと、
編集データに対するユーザの改訂意図が反映されるよう、編集データ内でそのグラフィック要素に関連付けられている処置を変化させるステップと、
を有する方法。
【請求項27】
請求項8記載の方法であって、成果文書生成ステップが、
第1文書内グラフィック要素のうち第2文書内グラフィック要素と十分類似しているグラフィック要素が含まれる共有要素文書を生成する共有要素文書生成ステップと、
第1文書が専有するグラフィック要素からなる第1文書専有要素文書を生成する第1文書専有要素文書生成ステップと、
第2文書が専有するグラフィック要素からなる第2文書専有要素文書を生成する第2文書専有要素文書生成ステップと、
を含む方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法であって、共有要素文書生成ステップが、第1及び第2リストのうち一方に対し編集データで相続処置を適用して第1及び第2文書が共有するグラフィック要素を選り出すステップを含む方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法であって、第1文書専有要素文書生成ステップが、不採用処置の編集データを第1リストに適用して第1文書が専有するグラフィック要素を選り出すステップを含む方法。
【請求項30】
請求項28記載の方法であって、第2文書専有要素文書生成ステップが、採用処置の編集データを第2リストに適用して第2文書が専有するグラフィック要素を選り出すステップを含む方法。
【請求項31】
請求項8記載の方法であって、少なくとも1個の成果文書のビューを複数個のレイヤビューにより提供するステップを有し、各レイヤビューを構成する複数個の画素を、そのレイヤに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることにより形成し、且つ各レイヤビューの可視性を他のレイヤビューの可視性から独立に制御可能な方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法であって、各レイヤビューに、共有要素文書、第1文書専有要素文書及び第2文書専有要素文書のうち1個により定義された複数個のグラフィック要素が関連付けられる方法。
【請求項33】
請求項22記載の方法であって、
何れかのレイヤに関連付けられているグラフィック要素の指定を受けるステップと、
編集データに対するユーザの改訂意図が反映されるよう、編集データ内でそのグラフィック要素に関連付けられている処置を変化させるステップと、
を有する方法。
【請求項34】
複数個の第1文書内グラフィック要素及び複数個の第2文書内グラフィック要素に対し合計複数個の識別子をユニークに割り当てる識別子割当手段と、グラフィック要素同士を比較してそれらが十分類似しているか否かを判別する比較手段と、を備え、
比較手段によって十分相互類似していると判別された第1及び第2文書内グラフィック要素双方に対し識別子割当手段が同一の識別子を関連付ける文書比較システム。
【請求項35】
請求項34記載の文書比較システムであって、識別子割当手段が、
各第1文書内グラフィック要素にユニークな識別子を関連付ける手段と、
第2文書内グラフィック要素のうち第1文書内グラフィック要素の何れとも十分類似していないグラフィック要素にユニークな識別子を関連付ける手段と、
第2文書内グラフィック要素のうち何れかの第1文書内グラフィック要素と十分類似しているグラフィック要素に、その第1文書内グラフィック要素に既に関連付けられている識別子と同一の識別子を関連付ける手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項36】
請求項35記載の文書比較システムであって、
第1文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第1リスト及び第2文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第2リストへと、上記複数個の識別子を編成する手段と、
第1リストを第2リストに変えられる編集データを第1及び第2リストから導出する手段と、
第1及び第2文書、第1及び第2リスト並びに編集データに基づき1個以上の成果文書を生成する成果文書生成手段と、
を備える文書比較システム。
【請求項37】
請求項36記載の文書比較システムであって、成果文書生成手段が、
第1及び第2リストのうち少なくとも一方に対し編集データを適用することにより成果リストを生成する手段と、
成果リストに関連付けられているグラフィック要素のうち少なくとも一部に基づき1個以上の成果文書を生成する手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項38】
請求項37記載の文書比較システムであって、第1及び第2文書内グラフィック要素が、第1及び第2文書に係る情報及びグラフィック要素属性に基づき定めた選定条件に基づき比較対象として選択され、この選定条件に基づき第1及び第2文書内グラフィック要素のうち0個以上が比較対象外とされる文書比較システム。
【請求項39】
請求項38記載の文書比較システムであって、編集データが、第1文書が専有するグラフィック要素の削除乃至不採用、第2文書が専有するグラフィック要素の追加乃至採用、並びに第2文書内グラフィック要素と十分類似する第1文書内グラフィック要素の放置乃至相続を含め、複数の種類がある複数通りの処置を含む文書比較システム。
【請求項40】
請求項39記載の文書比較システムであって、成果文書生成手段が、印刷時外観が第2文書と似ているマージ済文書を生成するマージ文書生成手段を有する文書比較システム。
【請求項41】
請求項40記載の文書比較システムであって、マージ文書生成手段が、
第1文書が専有する各グラフィック要素を不採用とする手段と、
比較対象外とされた0個以上のグラフィック要素を第1文書から相続する手段と、
第2文書内グラフィック要素と十分類似するグラフィック要素それぞれを第1文書から相続する手段と、
第2文書が専有するグラフィック要素それぞれを第2文書から採用する手段と、
を有し、更に、第2文書からグラフィック要素を採用する際、第2文書から採用するグラフィック要素及び第2文書内グラフィック要素と十分類似する第1文書内グラフィック要素を含め、複数個のグラフィック要素間の相対的な順序を保つ文書比較システム。
【請求項42】
請求項41記載の文書比較システムであって、選定条件として、コンテンツ性グラフィック要素に該当するグラフィック要素を識別して第1文書内複製時修正グラフィック要素をマージ済文書に相続させる条件を、使用する文書比較システム。
【請求項43】
請求項41記載の文書比較システムであって、マージ文書生成手段が、更に、マージ済文書生成の影響を受けるグラフィック要素についての情報を生成する手段を有する文書比較システム。
【請求項44】
請求項42記載の文書比較システムであって、
相続した囲い込み型の複製時修正グラフィック要素の属性を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう調整する手段と、
新たな囲い込み型の複製時修正グラフィック要素を第1文書に係る囲い込み規則に適合するよう生成する手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項45】
請求項36記載の文書比較システムであって、成果文書生成手段が、少なくとも第1第2文書共有要素レイヤ、第1文書専有要素レイヤ及び第2文書専有要素レイヤを含め複数個のレイヤを有するレイヤ化文書を生成する手段を、有する文書比較システム。
【請求項46】
請求項45記載の文書比較システムであって、更に、レイヤ化文書を構成するレイヤを視覚的に比較可能とする視覚化手段を備える文書比較システム。
【請求項47】
請求項46記載の文書比較システムであって、視覚化手段が、レイヤ化文書のビューを複数個のレイヤビューにより提供する手段を有し、各レイヤビューを構成する複数個の画素が、レイヤ化された各文書レイヤに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることによって形成され、且つ各レイヤビューの可視性を他のレイヤビューの可視性から独立に制御可能な文書比較システム。
【請求項48】
請求項47記載の文書比較システムであって、視覚化手段が、
何れかのレイヤビューに係るグラフィック要素の指定を受ける手段と、
編集データに対するユーザの改訂意図が反映されるよう、編集データ内でそのグラフィック要素に関連付けられている処置を変化させる手段と、
を有する文書比較システム。
【請求項49】
文書コンパレータ及び文書マージャを備え、
文書コンパレータが、
ある第1文書内グラフィック要素がある第2文書内グラフィック要素と性質的に十分類似している場合にそれらのグラフィック要素に同一の識別子が関連付けられることとなるよう、複数個の第1文書内グラフィック要素及び複数個の第2文書内グラフィック要素に対応する合計で複数個の識別子をユニークに決定し、
第1文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第1リスト及び第2文書内グラフィック要素の表示順序を示すエントリからなる第2リストへと、上記複数個の識別子を編成し、
第1リストを第2リストに変えることができる編集データを第1及び第2リストから導出し、
文書マージャが、第1及び第2文書、第1及び第2リスト並びに編集データに基づき1個以上の成果文書を生成する文書比較装置。
【請求項50】
請求項49記載の文書比較装置であって、成果文書のうち少なくとも1個が、印刷時外観が第2文書と似ているマージ済文書である文書比較装置。
【請求項51】
請求項49記載の文書比較装置であって、成果文書のうち少なくとも1個が、第2文書内グラフィック要素と十分類似している第1文書内グラフィック要素が含まれる第1第2文書共有要素レイヤ、第1文書が専有するグラフィック要素からなる第1文書専有要素レイヤ、並びに第2文書が専有するグラフィック要素からなる第2文書専有要素レイヤを含め、複数個のレイヤを有するレイヤ化文書である文書比較装置。
【請求項52】
請求項49記載の文書比較装置であって、第2文書内グラフィック要素と十分類似している第1文書内グラフィック要素が含まれる共有要素文書、第1文書が専有するグラフィック要素からなる第1文書専有要素文書、並びに第2文書が専有するグラフィック要素からなる第2文書専有要素文書を、成果文書として生成する文書比較装置。
【請求項53】
請求項49記載の文書比較装置であって、少なくとも1個の成果文書のビューを複数個のレイヤビューによって提供する比較結果ビジュアライザを備え、各レイヤビューを構成する複数個の画素が、そのレイヤビューに関連付けられている複数個のグラフィック要素をレンダリングすることにより形成され、且つ各レイヤビューの可視性を個別制御可能な文書比較装置。
【請求項54】
データプロセッサにより実行させるとそのデータプロセッサによって請求項1記載の方法が実行されることになる命令群を構成する一組のコンピュータ可読信号を、格納又は伝送する媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−535044(P2007−535044A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509838(P2007−509838)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000620
【国際公開番号】WO2005/103935
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(598088778)コダック グラフィック コミュニケーションズ カナダ カンパニー (34)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000620
【国際公開番号】WO2005/103935
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(598088778)コダック グラフィック コミュニケーションズ カナダ カンパニー (34)
【Fターム(参考)】
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