説明

グラフ作成装置及びその方法

【課題】エンジン制御量の時間変化と排ガス量との相関がわかりやすく示されたグラフを作成すること。
【解決手段】エンジンの過渡試験において得られたエンジン制御量の時系列データおよび排ガスの時系列データが記憶されている記憶部21と、エンジン制御量の時系列データ及び排ガスの時系列データを元に、X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形を描くグラフ作成部22とを具備するグラフ作成装置10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数のパラメータの時系列データに基づいてグラフを作成するグラフ作成装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの過渡試験を行う場合、一般的には、燃料噴射量、エンジン回転数、トルク等の各制御量の時系列データ、並びに、排ガス量の時系列データを取得し、これらの時系列データを時間軸が一致するように並べて表示することで、各制御量の挙動に対する排ガス量の応答を解析している。
【特許文献1】特開2004−185357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エンジンの過渡試験では、排ガス量は、各時刻における制御量の値だけではなく、各制御量の時間的変化によっても応答が変わってくる。従って、例えば、エンジン制御量がどの程度の値を示しているときであって、かつ、どのような時間変化を見せたときに、排ガス量が大きくなるのかを評価することが重要となる。
【0004】
しかしながら、従来のように、各制御量の時系列データと排ガス量の時系列データとを並べて表示するだけでは、各制御量の時間変化に対する排ガス量の応答がわかり難く、排ガス量の評価に相当な時間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、エンジン制御量の時間変化と排ガス量との相関がわかりやすく示されたグラフを作成することのできるグラフ作成装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、エンジンの過渡試験において得られたエンジン制御量の時系列データおよび排ガスの時系列データが記憶されている記憶手段と、前記エンジン制御量の時系列データ及び排ガスの時系列データを元に、X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形を描くグラフ作成手段とを具備するグラフ作成装置を提供する。
【0007】
このように、X軸にエンジン制御量、Y軸にエンジン制御量の時間変化が表わされたXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形を描くことでグラフを作成するので、エンジン制御量、エンジン制御量の時間変化、および排ガス量の3つの相関を一つのグラフで表わすことが可能となる。これにより、例えば、エンジン制御量、エンジン制御量の時間変化がどのような挙動を示したときに、排ガス量が大きくなるのか、或いは、小さくなるのかを容易に評価することができる。
前記エンジン制御量とは、例えば、燃料噴射量、エンジン回転数、トルク、メインバルブの開閉タイミング、空気過剰率、EGR率などをいう。ここで、「制御量」は狭義では、燃料噴射量、メインバルブの開閉タイミングなどであり、これらの値を変化させることにより、エンジン回転数、トルク、空気過剰率、EGR率などが変化して、応答の排ガスが変化する。本発明でいう「制御量」は、上述のような狭義の制御量ではなく、エンジン回転数、トルク、空気過剰率、EGR率などの状態量も含めた広い概念のものとして定義する。
また、排ガス量は、例えば、NOx、すす等の排出量である。
また、本発明において、X軸およびY軸に表わされるエンジン制御量の種別は、必ずしも同じでなくてもよい。換言すれば、X軸およびY軸に表わされるエンジン制御量の種別は異なっていてもよい。例えば、X軸に燃料噴射量、Y軸にエンジン回転数の時間変化を採用することとしてもよい。
【0008】
上記グラフ作成装置において、前記グラフ作成手段は、前記XY座標系に、排ガス量に比例した大きさの円を描くことによりグラフを作成することとしてもよい。
【0009】
上記グラフ作成装置において、前記グラフ作成手段は、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、該レベル毎に前記グラフを作成することとしてもよい。
【0010】
このように、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、レベル毎にグラフを作成するので、データ量が多い場合でも、見やすいグラフを提供することができる。
【0011】
上記グラフ作成装置において、前記グラフ作成手段は、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、該レベル毎に、予め設定された個数の排ガス量のデータを無作為に抽出し、抽出した排ガス量のデータを用いて前記グラフを作成することとしてもよい。
【0012】
このように、全ての排ガス量のデータを利用してグラフを作成するのではなく、排ガス量のとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、更に、各レベルに属する複数のデータの中から予め設定されている個数のデータを抽出し、抽出したデータを利用してグラフを作成するので、グラフ作成に使用するデータ量を低減させることができる。これにより、見やすいグラフを作成することが可能となる。特に、各レベルから同数のデータを抽出してグラフを作成するので、バランスのとれたグラフを作成することができる。
【0013】
上記グラフ作成装置において、前記グラフ作成手段は、前記レベル毎に、前記XY座標系における前記排ガス量の表示形態を異ならせることとしてもよい。
例えば、グラフ作成手段は、前記レベル毎に、前記XY座標系に描く円の色を異ならせる。
【0014】
このように、排ガス量の表示態様をレベル毎に異ならせるので、排ガス量が大体どの程度の値をとっているのかをわかりやすく表すことができる。
【0015】
本発明は、エンジンの過渡試験において得られたエンジン制御量の時系列データおよび排ガスの時系列データを元に、X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形を描いてグラフを作成するグラフ作成方法を提供する。
【0016】
本発明は、X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形が描かれたグラフを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エンジン制御量の時間変化と排ガス量との相関がわかりやすく示されたグラフを作成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るグラフ作成装置およびその方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るグラフ作成装置の概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係るグラフ作成装置10は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、CPU(中央演算処理装置)11、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置12、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置13、キーボードやマウスなどの入力装置14、及びモニタやプリンタなどの出力装置15、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置16などで構成されている。
補助記憶装置13には、各種プログラム(例えば、グラフ作成プログラム)が格納されており、CPU11が補助記憶装置13から主記憶装置12にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0019】
図2は、グラフ作成装置10が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、グラフ作成装置10は、記憶部(記憶手段)21と、グラフ作成部(グラフ作成手段)22とを主な構成として備えている。
記憶部21には、エンジンの過渡試験において得られた各エンジン制御量の時系列データおよび排ガス量の時系列データが記憶されている。例えば、図3に、エンジン制御量の時系列データおよび排ガス量の時系列データの一例を示す。図3に示した各グラフにおいて、横軸は時間、縦軸は各制御量である。図3では、制御量として、燃料噴射量、エンジン回転数、トルクを示している。
【0020】
グラフ作成部22は、エンジン制御量の時系列データ及び排ガスの時系列データを元に、X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する円を描くことでグラフを作成する。
【0021】
グラフ作成部22は、図4に示すように、第1処理部31と、第2処理部32と、描画部33とを備えている。
第1処理部31は、記憶部21に格納されているエンジン制御量の時系列データにおいて、任意に設定される基準時刻におけるエンジン制御量を取得するとともに、該基準時刻から所定期間後までのエンジン制御量の時間変化を算出する。
例えば、エンジン制御量の時間変化は、以下の(1)式で表される。
【0022】
β=(α2−α1)/Δt (1)
【0023】
(1)式において、Yはエンジン制御量の時間変化、α1は基準時刻t1におけるエンジン制御量、α2は基準時間から所定期間Δtが経過した時刻t2におけるエンジン回転数である。
【0024】
第2処理部32は、記憶部21に格納されている排ガスの時系列データから基準時間t1における排ガス量を取得する。
描画部33は、図5に示されるように、X軸をエンジン制御量とし、Y軸をエンジン制御量の時間変化としたXY座標系において、第1処理部31により得られた基準時刻t1におけるエンジン制御量α1およびエンジン制御量の時間変化βによって決定される位置に、第2処理部32によって取得された排ガス量の大きさに比例する大きさの円を描く。
【0025】
そして、グラフ作成部22の各部において、上記所定期間Δtおよび基準時間t1の値を逐次変更していき、その時々の円を図5に示したXY座標系に描画していくことで、エンジン制御量、エンジン制御量の時間変化、及び排ガス量の相関を示すグラフが作成される。
【0026】
図6は、エンジン制御量としてエンジン回転数を採用したときのグラフである。図6において、X軸はエンジン回転数、Y軸はエンジン回転数の時間変化であり、各エンジン回転数、エンジン回転数の時間変化で決定される位置に、そのときの排ガス量の大きさに応じた円が描かれている。
【0027】
また、同様に、他のエンジン制御量である、燃料噴射量、トルク等についてもグラフを作成することにより、各制御量と排ガス量との相関をグラフとして表わすことができる。
【0028】
以上、本実施形態に係るグラフ作成装置によれば、X軸にエンジン制御量、Y軸にエンジン制御量の時間変化が表わされたXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する円を描くことにより、バブルチャートを作成するので、制御量および制御量の時間変化と排ガス量との相関関係をわかりやすく表現することが可能となる。また、このようなグラフを解析することで、制御量がどのような値をとり、かつ、制御量の時間変化がどのような値をとるときに、排ガス量が大きくなるのか(或いは、排ガス量が小さくなるのか)を容易に評価することができる。
【0029】
〔変形例1〕
なお、上述した実施形態では、全てのデータを用いて1つのグラフを作成していたが、例えば、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、該レベル毎にグラフを作成することとしてもよい。
図7に、排ガス量が所定値よりも大きいグラフと、排ガス量が所定値以下のグラフとの2つのグラフを作成した場合のグラフ例を示す。
このように、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、レベル毎にグラフを作成するので、データ量が多い場合であっても、見やすいグラフを提供することができる。
【0030】
〔変形例2〕
また、上記の例に変えて、例えば、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、該レベル毎に、予め設定された個数の排ガス量のデータを無作為に抽出し、抽出した排ガス量のデータを用いて1つのグラフを作成することとしてもよい。
このとき、レベル毎にガス量の表示形態を異ならせてもよい。例えば、図8に、円の色を異ならせた場合のバブルチャートの一例を示す。
【0031】
このように、全ての排ガス量のデータを利用してグラフを作成するのではなく、排ガス量のとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、更に、各レベルに属する複数のデータの中から予め設定されている個数のデータを抽出し、抽出したデータを利用してグラフを作成するので、グラフ作成に使用するデータ量を低減させることができる。これにより、見やすいグラフを作成することが可能となる。特に、各レベルから同数のデータを抽出してグラフを作成するので、バランスのとれたグラフを作成することができる。
また、更に、排ガス量の表示態様(例えば、色を変える等)をレベル毎に異ならせるので、排ガス量が大体どの程度の値をとっているのかをわかりやすく表すことができる。
【0032】
〔変形例3〕
また、上記の例に変えて、例えば、X軸およびY軸に異なる種別の制御量を採用することとしてもよい。一例としては、X軸に燃料噴射量、Y軸にエンジン回転数の時間変化を採用することが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係るグラフ作成装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】グラフ作成装置が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図3】エンジン制御量の時系列データおよび排ガス量の時系列データの一例を示した図である。
【図4】グラフ作成部が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図5】描画部によるグラフ作成の工程を説明するための図である。
【図6】エンジン制御量としてエンジン回転数を採用したときのグラフの一例を示した図である。
【図7】変形例1におけるグラフの一例を示した図である。
【図8】変形例2におけるグラフの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
10 グラフ作成装置
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 出力装置
16 通信装置
21 記憶部
22 グラフ作成部
31 第1処理部
32 第2処理部
33 描画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの過渡試験において得られたエンジン制御量の時系列データおよび排ガスの時系列データが記憶されている記憶手段と、
前記エンジン制御量の時系列データ及び排ガスの時系列データを元に、X軸にエンジン制御量、Y軸にエンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形を描くグラフ作成手段と
を具備するグラフ作成装置。
【請求項2】
前記グラフ作成手段は、前記XY座標系に、排ガス量に比例した大きさの円を描くことによりグラフを作成する請求項1に記載のグラフ作成装置。
【請求項3】
前記グラフ作成手段は、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、該レベル毎に前記グラフを作成する請求項1または請求項2に記載のグラフ作成装置。
【請求項4】
前記グラフ作成手段は、排ガス量がとり得る値の範囲を複数のレベルに区分けし、該レベル毎に、予め設定された個数の排ガス量のデータを無作為に抽出し、抽出した排ガス量のデータを用いて前記グラフを作成する請求項1または請求項2に記載のグラフ作成装置。
【請求項5】
前記グラフ作成手段は、前記レベル毎に、前記XY座標系における前記排ガス量の表示形態を異ならせる請求項4に記載のグラフ作成装置。
【請求項6】
前記グラフ作成手段は、前記レベル毎に、前記XY座標系に描く円の色を異ならせる請求項2及び請求項5に記載のグラフ作成装置。
【請求項7】
エンジンの過渡試験において得られたエンジン制御量の時系列データおよび排ガスの時系列データを元に、X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形を描いてグラフを作成するグラフ作成方法。
【請求項8】
X軸にエンジン制御量、Y軸に該エンジン制御量の時間変化を示したXY座標系に、排ガス量に応じた面積を有する図形が描かれたグラフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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