説明

グランザイムBインヒビターを用いる解離,動脈瘤,およびアテローム性動脈硬化症の治療

脈管障害の医学的な治療または予防の方法であって、必要とする被験者に治療上効果的な量のグランザイム B インヒビターを投与することを含む方法が提供される。他の側面において、脈管障害の治療のための又は治療のための医薬の調製のためのグランザイム B インヒビターの使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管病の分野に関する。より具体的には、グランザイム Bを阻害することによる血管の病気の治療に関する。
【0002】
[背景]
グランザイムは、高度に保存されているセリン プロテアーゼのグループであり、ヒトにおいて五つのメンバー(A, B, H, K および M)、マウスにおいて十のメンバー(A-G, K, M-N)が存在し〔Sattar R. et al. Biochem Biophys Res Commun 308, 726-35 (2003). Granzyme B (GrB) or cytotoxic T-lymphocyte (CTL)-associated gene transcript-1 - Brunet JF. et al. Nature 322, 268-71 (1986)〕、抗ウイルス性および抗腫瘍性の機能に関与すると報告されており、自己免疫, 移植拒絶, 移植片-対-宿主疾患, および胸腺細胞の発生と関連する〔Barry M. & Bleackley RC. Nat Rev Immunol 2, 401-9 (2002)〕。
【0003】
GrBは、CTL-媒介性標的細胞アポトーシス(CTL-mediated target cell apoptosis)に影響することが報告されている。GrB-欠損マウスは、わずかに減少したCTL-媒介性標的細胞アポトーシス, 抗-ウイルス応答 および腫瘍細胞クリアランスの例外をのぞいて正常な表現型を有し〔Revell PA. et al. J Immunol 174, 2124-31 (2005); および Heusel JW. et al. Cell 76, 977-87 (1994)〕、免疫が媒介する細胞除去の重複性(redundancy)を示唆している。GrB-欠損(deficient)レシピエントマウスは同種移植脈管障害(allograft vasculopathy)の減少を示し〔Choy JC. et al. Am J Transplant 5, 494-9 (2005)〕、その欠損によってマウスでアレルゲン誘発性の喘息への感受性の増加が導かれる〔Devadas, S. et al. Immunity 25, 237-47 (2006)〕。Choy JC等は、進展(advanced)したアテローム性動脈硬化症および移植脈管病(transplant vascular disease)をともなう患者が疾患の重症度にともないGrBが増加し、進展したプラークにおいて時折SMCを示すが、細胞外のGrB染色は進展した疾患で存在せず、他方でGrBは健常な動脈中に観察されなかったことを報告した〔Mod Pathol 16, 460-70 (2003)〕。後の文献において、Choy等は、GrBとアポトーシスとの関連性を細胞外タンパク質のタンパク質分解が活性化T細胞をとおして媒介されることで関連付け、細胞傷害性T細胞が大動脈の動脈瘤における中膜(medial)のSMCsに局在化することを報告している〔Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol.; 24; 2245-2250, (2004)〕。Skjelland等は、GrBの血漿レベルが脂質が豊富に存在する頚動脈プラークをともなう患者で増加することを教示する〔Atherosclerosis, 195:e142-e146 (2007)〕。Kim 等は、マクロファージがアテローム性動脈硬化症および関節リウマチの傷害領域においてグランザイム Bを発現することを示している〔Immunology Letters, 111, 57-65, (2007)〕。また、GrBが、ビトロネクチン, フィブロネクチン, および ラミニンの切断と関連することが報告されている〔Buzza MS. et al. JBC vol. 280(25):23549-23558 (2005)〕。さらにまた、GrBは、急性冠動脈症候群と関連する〔Tsuru R. et al. Heart 94:305-310 (2008) e-published June 25, 2007〕。また、GrBは、関節リウマチとの関連性が報告されている〔Goldbach-Mansky et al. Ann Rheum Dis. 64:715-721 (2005); Kraan et al. Ann Rheum Dis 63:483-488 (2004); Villanueva et al. Arthritis Res Ther 7:R30-R37 (2005); および Thewissen et al. Clinical Immunology 123:209-218 (2007)〕炎症性の肺疾患において〔Tremblay et al. J Immunology 165:3966-3969 (2000)〕慢性閉塞性肺疾患において〔Hodge et al. J. of COPD 3:179-187 (2006)〕, およびシェーグレン症候群において〔Rosen et al. Crit Rev Oral Biol Med 15(3):156-164 (2004); および Huang et al. Clin Exp Immun 142:148-154 (2005)〕。GrB インヒビターも知られている(例えば、WO 03/065987)。
【0004】
[概要]
本発明の一側面において、必要とする被験者における脈管障害(vasculopathy)を治療する又は予防する方法が提供され、この方法は前記被験者にグランザイム B (GrB) インヒビターを投与することを含んでいる。前記方法は、さらに> 40 pg/mlのGrB 血漿レベルを有している被験者を選択することを含んでもよい。また、被験者は、> 41 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 42 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 43 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 44 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 45 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 46 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 47 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 48 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 49 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 50 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 55 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 60 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 65 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。また、被験者は、> 70 pg/mlのGrB 血漿レベルの基礎において選択されてもよい。
【0005】
前記方法は、さらに少なくとも3 cmの直径の大動脈瘤を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも3.1 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.2 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.3 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.4 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.5 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.6 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.7 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.8 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.9 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも4.0 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。
【0006】
前記方法は、さらに少なくとも0.5 cmの直径の脳動脈瘤を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも0.6 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも0.7 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも0.8 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも0.9 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。
【0007】
前記方法は、さらに少なくとも4 cmの直径のアテローム性プラーク(atherosclerotic plaque)を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも4.5 cmの直径のアテローム性プラークに基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.0 cmの直径のアテローム性プラークに基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.5 cmの直径のアテローム性プラークに基づいて選択されてもよい。
【0008】
前記方法は、さらに少なくとも3 cmの直径の大動脈解離(aortic dissection)を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも3.5 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも4.0 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも4.5 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.0 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.5 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。
【0009】
本発明のさらなる側面において、必要とする被験者における脈管障害を予防または治療するための医薬の製造におけるGrB インヒビターの使用が提供される。
本発明のさらなる側面において、必要とする被験者における脈管障害を予防または治療するためのGrB インヒビターの使用が提供される。
本発明のさらなる側面において、必要とする被験者における脈管障害を予防または治療するためのGrB インヒビターを含んでいる薬学的組成物の使用が提供される。
【0010】
前記使用は、さらに少なくとも3 cmの直径の大動脈瘤を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも3.1 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.2 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.3 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.4 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.5 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.6 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.7 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.8 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも3.9 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも4.0 cmの直径の大動脈瘤に基づいて選択されてもよい。
【0011】
前記使用は、さらに少なくとも0.5 cmの直径の脳動脈瘤を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも0.6 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも0.7 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも0.8 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも0.9 cmの直径の脳動脈瘤に基づいて選択されてもよい。
【0012】
前記使用は、さらに少なくとも4 cmの直径のアテローム性プラーク(atherosclerotic plaque)を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも4.5 cmの直径のアテローム性プラークに基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.0 cmの直径のアテローム性プラークに基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.5 cmの直径のアテローム性プラークに基づいて選択されてもよい。
【0013】
前記使用は、さらに少なくとも3 cmの直径の大動脈解離を有している被検者を選択することを含んでもよい。また、被検者は、少なくとも3.5 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも4.0 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも4.5 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.0 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。また、被検者は、少なくとも5.5 cmの直径の大動脈解離に基づいて選択されてもよい。
【0014】
脈管障害は、一または二以上のアテローム性動脈硬化症; 動脈瘤; および解離(dissection)から選択されてもよい。脈管障害は、大動脈瘤であってもよい。脈管障害は、脳動脈瘤(cerebral aneurysm)であってもよい。脈管障害は、大動脈解離(aortic dissection)であってもよい。脈管障害は、脳動脈解離(cerebral dissection)であってもよい。脈管障害は、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)であってもよい。
【0015】
GrB インヒビターは、経口投与のために製剤化されてもよい。GrB インヒビターは、注射による投与のために製剤化されてもよい。GrB インヒビターは、局所投与のために製剤化されてもよい。GrB インヒビターは、装置に関する局所投与のために製剤化されてもよい。装置に関する局所投与は、コーティングであってもよい。前記装置は、ステント; クリップ; カテーテル; およびコイルから選択されてもよい。被験者は、ヒトであってもよい。投与することは、被験者の血管または内膜の組織に対してであってもよい。
【0016】
本発明のさらなる側面において、脈管障害を有していると疑われる又は脈管障害を有している被験者における脈管障害を診断するための方法であって:
前記被験者からの血漿または血清のサンプルにおけるGrBの濃度を決定すること;および
前記濃度を対照サンプルにおける対応する濃度と比較すること、
を含み、
GrBの濃度の上昇は慢性の炎症性疾患の指標(indicative)である方法が提供される。
【0017】
前記方法は、さらに一または二以上のフィブロネクチン; およびフィブリリン;の濃度を慢性の炎症性疾患の指標として対照サンプルを参照して決定することを含んでもよい。GrB, フィブロネクチン および/またはフィブリリンの濃度は、免疫診断アッセイ(immunodiagnostic assay)で決定されてもよい。免疫診断アッセイは、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA), 酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT; enzyme-linked immunosorbent spot), ドットブロット, ウエスタンブロット,または他のプロテオームのアッセイなどであってもよい。被験者は、脈管障害の指標として>40pg/mlのGrB 血漿濃度および/または>400 ug/mlのフィブロネクチン血漿濃度を有してもよい。フィブロネクチンまたはフィブリリンは、フィブロネクチンのデグラデーション産物またはフィブリリンのデグラデーション産物であってもよい。前記方法は、さらに一または二以上の画像診断; 臨床診断および代替的な実験室での診断を含んでもよい。
約 40 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 41 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 42 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 43 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 44 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 45 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 50 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 55 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 60 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 65 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 70 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 75 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 80 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 90 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。約 100 pg/mlよりも高いGrB 濃度は、脈管障害の指標と考えられえる。
本発明の更なる側面において、脈管障害の診断のためのキット, 市販パッケージ(commercial packages)および使用が提供される。また、キットおよび市販パッケージは、一または二以上の試薬, 抗体, 正常コントロール, 正常レベルのリストおよび一または二以上の脈管障害の診断と関連するもの、および/または、それらの使用のための指示書も含んでもよい。また、前記方法は、既知の診断方法と共に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】C57/Bl/6, GrB KO, ApoE KOまたはApoE/GrB DKO マウスの血漿における計算されたLDL-Cの平均を示している棒グラフである。白色のバーは、通常の固形飼料食餌を与えられたマウスを表す; 黒色のバーは、ウエスタン食餌(Western diet)を与えられたマウスを表す。各群に関してN=3。計算されたLDL-C(mg/ml)は、Y-軸である。
【図2】C57/Bl/6, GrB KO, ApoE KOまたはApoE/GrB DKO マウスの血漿における総コレステロールの平均を示している棒グラフである。白色のバーは、通常の固形飼料食餌を与えられたマウスを表す; 黒色のバーは、ウエスタン食餌を与えられたマウスを表す。各群に関してN=3。総コレステロール(mg/ml)は、Y-軸である。
【図3】ウエスタン食餌におけるC57/Bl/6 (ソリッドバー), GrB KO (白色のバー), ApoE KO (ハッチバー)またはApoE/GrB DKO (チェックバー) マウスの血漿脂質のプロフィールを示している棒グラフである。TG 平均 ― 平均トリグリセリド; TC 平均 ― 総コレステロールの平均; HDL ― 高密度リポタンパク質; LDL ― 低密度リポタンパク質。各群に関してN=3。
【図4】ウエスタン食餌を与えられたApoE KO (白色のバー) および ApoE/GrB DKO (黒色のバー) マウスにおける大動脈起始部(aortic root)の領域のパーセンテージを示す。DKO マウスに関してN=2, ApoE KO マウスに関してN=4。各セクションに関して値が計算された (プラーク領域の和) / (トータルの大動脈起始部の領域) * 100%。各動物に関して, 大動脈起始部の3-7セクションを、% 傷害領域(% lesion area)に関して分析し、平均化した。
【図5】30 週ウエスタン食餌を与えられたマウスからの代表的な動脈切片。(A)C57 WT, (B) GrB-/-, (C) ApoE-/-, (D) ApoE/GrB-DKO。
【図6】グランザイム Bは、エラスチンをインビトロでデグラデーションする。グランザイム Bを、3H-エラスチンと7日室温でインキュベーションした。エラスターゼを、3H-エラスチンと2 時間インキュベーションした。可溶性のエラスチン切断断片を含んでいる上清を、収集し、計数した。データは、対照(エラスチンのみ)に対する放射能の増加倍数(fold increase)として表した。(n = 2)。
【図7】グランザイム Bがフィブリリン-1を切断することを示している三つの代表的なグループのウエスタンブロットを示す。
【図8】図8A; アンギオテンシン II (AngII)を注入したC57 マウスからの大動脈を示す。図8B; AngIIを注入したapoE-KO マウスからの大動脈を示す。図8C; AngIIを注入したGrB/apoE-DKO マウスからの大動脈を示す。図8D; AngIIを注入したC57 マウスからの大動脈の横断面のH&E 染色を示す(10x 拡大率)。スケールバー= 500μm。図8E; AngIIを注入したapoE-KO マウスからの大動脈の横断面のH&E 染色を示す(4x 拡大率)。スケールバー= 500μm。図8F; AngIIを注入したGrB/apoE-DKO マウスからの大動脈の横断面のH&E 染色を示す(10x 拡大率)。スケールバー= 500μm。
【図9】C57 マウスと比較したApoE-KO マウスで観察されたフィブリリン-1 染色の減少を示す。
【図10】AngIIの輸液につづく三つの異なるゲノタイプのマウスにおける突然死/大動脈解離のパーセンテージを示し、比較しているチャート。
【図11】塩類溶液またはアンギオテンシン IIを与えられたapoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスのKaplan-Meier 生存曲線を示す。略語: angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【図12】塩類溶液対照, 腹部大動脈瘤および大動脈解離に対し生存しているマウスにおける28日目での組織における大動脈の全体の病状を示す。血液を、CO2での安楽死につづく心臓穿刺で採取した。単一の矢印で大動脈瘤を示し、解離の長さを2つの矢印で示す。略語: apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【図13】A. 正常な健常血管, B. 小さい中膜の血栓(small medial thrombus)をともなう小さい動脈瘤を示している血管, および C. 前記中膜に大量の血液をともなう大きい解離性動脈瘤を示している血管に関する代表的な腹部大動脈のH&E 染色を示す。スケールバー= 1000 μm。
【図14】塩類溶液またはアンギオテンシン IIを与えられたapoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスの全体的な病理学的な転記(gross pathological outcome)を示す棒グラフ。略語: AAA, 腹部大動脈瘤; angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【図15】A. apoE-KO, angII; B. apoE-KO, 塩類溶液; C. GrB/apoE-DKO, 塩類溶液; D. GrB/apoE-DKO, angII マウスに関する腹部大動脈のMovat's pentachrome染色を示す。スケールバー= 1000 μm。略語: AAA, 腹部大動脈瘤; angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【図16】塩類溶液またはアンギオテンシン IIを与えられたapoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスからの胸部および腹部の大動脈の管腔領域(lumen area)を示す。バーは平均値を表し、エラーバーは平均値の標準誤差 (SEM)を表す。略語: Abd, 腹大動脈; angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス; Tx, 胸大動脈。
【図17】塩類溶液またはアンギオテンシン IIを与えられたapoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスにおける胸部および腹部の大動脈の中膜厚(medial thickness)を示す。略語: Abd, 腹大動脈; angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス; Tx, 胸大動脈。
【図18】H&E, Movat's およびOROで染色されたapoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスにおける大動脈起始部を示す。スケールバー= 1mm。略語: angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス; H&E, ヘマトキシリン および エオシン; ORO, オイルレッドO。
【図19】塩類溶液またはアンギオテンシン IIを与えられ、28日を生存しているapoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスに関する大動脈起始部の管腔およびプラークの測定を示す(apoE-KO 塩類溶液, n=7; GrB/apoE-DKO 塩類溶液, n=7; apoE-KO angII, n=9; GrB/apoE-DKO, n=11)。バーはプラークでカバーされた大動脈起始部の管腔のパーセンテージを表し、エラーバーは平均値の標準誤差(SEM)を表す。略語: angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【図20】apoE-KO および GrB/apoE-DKO マウスの腹大動脈におけるフィブリリン-1 染色を示す。スケールバー= 100μm。略語: angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【図21】A. 二次抗体のみで染色されたヒトの腹部大動脈瘤組織および B. GrBに関して染色されたヒト腹部大動脈瘤組織を示し、矢印は動脈瘤組織における強いGrB 染色の領域を示す。
【0019】
[詳細な説明]
被験者からのサンプルおよび正常被験者からの正常なサンプルは、血漿サンプル, 気管支肺胞洗浄物(bronchiole lavages)または他の身体の流体(bodily fluids)であってもよい。「被験者(subject)」および「正常被験者(normal subject)」は、少なくとも一部において、正常被験者が本願の明細書等に記載される脈管障害を有していないこと又は少なくとも有していないと考えられることが知られ、脈管障害を有していないこと又は発症するリスクがないことにおいて異なる。但し、被験者からのサンプルおよび正常被験者からの正常なサンプルは同じ組織タイプまたは身体の流体のタイプから採取され、被験者からのサンプルは本願の明細書等に記載される脈管障害の治療または予防に関する被験者を同定する目的に関して正常被験者からの正常なサンプルと比較されてもよい。
【0020】
一般に、被験者がより高いレベルのグランザイム Bを有すると、前記被験者が脈管障害から病気の影響を受ける可能性がより高くなる。また、一般に、被験者がより高いレベルのグランザイム Bを有すると、前記被験者が本願の明細書等に記載される脈管障害のリスク(risk)がある又はそれを有する可能性がより高くなる。また、一般に、被験者におけるグランザイム Bのレベルが高いと、前記被験者がまだ本願の明細書等に記載される脈管障害を有していない場合、前記被験者が本願の明細書等に記載される脈管障害が進行するリスク(at risk for developing the vasculopathy)がある可能性がより高くなる。被験者におけるグランザイム Bのレベルが高いと、脈管障害および/または脈管障害の症状(symptoms)がより急速に重篤に呈される可能性が高くなる。
【0021】
本願の明細書等に記載される脈管障害を発症するリスクがある被験者を同定するための代替的な方法は、前記被験者からのサンプルにおけるグランザイム Bのレベルを同定することを含んでもよく、前記被験者は前記被験者からのサンプルにおけるグランザイム Bのレベルが約 40 pg/mlよりも高い場合に本願の明細書等に記載される脈管障害が進行するリスクがある。被験者が約 40pg/mlまたはそれ以上のグランザイム B レベルを有する場合、この事項は本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合(rate of onset)を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 60 pg/mlまたはそれ以上のレベルは、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 80 pg/mlまたはそれ以上のレベルは、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 100 pg/mlまたはそれ以上のレベルは、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 120 pg/mlまたはそれ以上のレベルは、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 140 pg/mlまたはそれ以上のレベルは、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 40 pg/ml〜140 pg/mlの間および全ての中間の個々の値のグランザイム B レベルを有している被験者は、特にこの範囲(例えば: 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57,
58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79, 80, 81, 82, 83, 84, 85, 86, 87, 88, 89, 90, 91, 92, 93, 94, 95, 96, 97, 98, 99, 100, 101, 102, 103, 104, 105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 112, 113, 114, 115, 116, 117, 118, 119, 120, 121, 122, 123, 124, 125, 126, 127, 128, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 136, 137, 138, 139, および 140)で開示され、これが本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 50 pg/ml 〜140 pg/mlの間のグランザイム B レベルを有している被験者は、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 70 pg/ml 〜140 pg/mlの間のグランザイム B レベルを有している被験者は、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 90 pg/ml 〜140 pg/mlの間のグランザイム B レベルを有している被験者は、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。約 110 pg/ml 〜140 pg/mlの間のグランザイム B レベルを有している被験者は、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。
【0022】
本願の明細書等に記載される脈管障害のリスクがある又はそれを有している被験者を同定するための方法は、以下の事項を加えて補充されてもよい:
本願の明細書等に記載される被験者からの第一のサンプルにおけるグランザイム Bのレベルを比較すること、
前記被験者からの第二のサンプルにおけるフィブロネクチン, エラスチンおよび/または フィブリリンのレベルを同定すること、
本願の明細書等に記載される脈管障害のリスクがない又は有していない正常被験者からの第二の正常なサンプルにおけるフィブロネクチン, エラスチンおよび/または フィブリリンのレベルを同定すること、および
前記被験者からの第二のサンプルにおけるフィブロネクチン, エラスチンおよび/または フィブリリンのレベルを正常被験者からの第二の正常なサンプルにおけるフィブロネクチン, エラスチンおよび/または フィブリリンのレベルと比較すること。前記被験者からの第二のサンプルにおけるフィブロネクチン, エラスチンおよび/または フィブリリンのレベルが正常被験者からの第二の正常なサンプルにおけるフィブロネクチン, エラスチンおよび/または フィブリリンのレベルより低い場合、前記被験者は本願の明細書等に記載される脈管障害のリスクにある又はその脈管障害を有している可能性がより高い。被験者が上記のとおり上昇した又は高いレベルのグランザイム Bを有する場合にグランザイム Bは細胞外基質タンパク質を切断し、被験者における細胞外基質タンパク質のレベルがグランザイム Bの作用で減少する。グランザイム Bの活性が高レベルである期間がより長いと、細胞外基質タンパク質の組織レベルはより低くなる。
【0023】
本願の明細書等に記載される脈管障害のリスクがある又はそれを有している被験者を同定するための代替の方法は、以下を含む:
前記被験者からの第一のサンプルにおけるグランザイム Bのレベルを同定すること;および
前記被検者からの第二のサンプルにおけるフィブロネクチンのレベルを同定すること(ここで、前記被検者は、以下の場合に本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させるリスクがある又は有する)、
a) 前記被験者からの第一のサンプルにおけるグランザイム Bのレベルが、
約 40 pg/mlよりも高い,
約 60 pg/mlよりも高い,
約 80 pg/mlよりも高い,
約 100 pg/mlよりも高い,
約 120 pg/mlよりも高い,
約 140 pg/mlよりも高い,
約 160 pg/mlよりも高い;および
b) 前記第二のサンプルにおけるフィブロネクチンのレベルが約 400 μg/mlより低い, および/または約 350 μg/mlより低い, および/または約 300 μg/mlより低いことは、本願の明細書等に記載される脈管障害を有している被験者または本願の明細書等に記載される脈管障害を進行させる又はその発病の割合を増加させるリスクがある被験者の指標でありえる。
【0024】
本発明の別の側面において、脈管障害を治療するため治療上効果的な量のグランザイム B インヒビターを投与することを含んでいる医学的な治療の方法が提供される。
【0025】
本願の明細書等に使用される「脈管障害(vasculopathies)」または「脈管障害(vasculopathy)」の用語は、体のほとんどどこにでも生じえる全てのサイズの動脈または静脈の閉塞性または動脈瘤性のプロセスから生じる任意の脈管病を意味する。例えば、脈管障害には、アテローム性動脈硬化症; 動脈瘤; および解離が含まれるが、これらに限定されない。従って、脈管障害のリスクがある又は有している被験者は、被験者がアテローム性動脈硬化症; 動脈瘤; または解離のリスクがある又は有していることにより特徴付けられてもよい。
【0026】
本願の明細書等に使用される「アテローム性動脈硬化症(Atherosclerosis)」〔または「動脈硬化症(Arteriosclerosis)」〕の用語は、プラークが動脈の内側に生じる疾患である。アテローム性動脈硬化症は、通常は層が破壊された(disrupted)動脈枝(arterial tree)の部位での動脈壁の肥厚化により特徴付けられる。この炎症性の脈管障害は、内膜における脂質および修飾脂質の過剰な蓄積, 中膜のダメージ, および管壁(vessel wall)の肥厚化(thickening)および構造上の再組織化により特徴付けられる。物理的力, または上昇したレベルの循環低密度リポタンパク質(LDL)または喫煙により生じたフリーラジカルへの暴露, 高血圧症,または真性糖尿病によって、内皮の機能不全が生じる可能性がある。これらの因子は、正常な抗血栓特性および浸透性に関する障壁作用に干渉する可能性がある炎症促進性(pro-inflammatory cytokines)のサイトカインおよび血管作動物質(vasoactive substances)の放出を増加させ, 細胞表面接着分子の発現を増加させることにより内皮機能を変更(alter)させる。アテローム性動脈硬化症は、内膜に進入し、修飾型となるアテローム生成的なリポタンパク質からなる脂肪線条(fatty streak)として開始される。細胞表面接着分子の増加によって、白血球, 単球 および T-細胞のリクルート(recruitment)および血管内異物侵入(intravasation)が生じる。進行している傷害内に発現された炎症促進性のサイトカインによって、接着白血球への走化性刺激が提供され、それらの内膜への遊走が増加する。同様にプラークにおいて産生される単球コロニー刺激因子(M-CSF)は、マクロファージ スカベンジャー レセプターの発現を増大(augments)させ、修飾脂質(modified lipids)が取り込まれる。マクロファージは、この修飾脂質を非制御な様式でファゴサイトーシスし、脂肪線条を作る泡沫細胞(foam cells)の形成を生じる。白血球(同様に、常在性の血管壁細胞)は、平滑筋細胞 (SMC)の遊走および増殖を促進するサイトカインおよび成長因子を分泌する。また、脈管性のSMC (VSMC)は炎症性の刺激に応答してエラスチン および コラーゲンを分解する因子を放出でき、これにより前記細胞が弾性板(elastic lamina)および コラーゲン性のマトリックスをとおして遊走することが許容される。VSMCは、増殖し、中膜から遊走して内膜(intima)においてプラークを進行させ、過剰な細胞外基質 (ECM) 分泌により脂肪線条の進行に影響し、中膜間傷害(intermediate lesion)となる。このECMが、リポタンパク質の保持(retention)および凝集を増加させる。従って、GrB インヒビターの投与は、この段階で潜在的にECMを増加させ、そしてリポタンパク質の保持および凝集を増加させるだろう。しかしながら、本所見は、中間から後期段階のプラーク発生におけるGrB インヒビターの投与が利益を有するだろうことを示唆する。
【0027】
プラークは継続して成長するので、付加的なリンパ球のリクルートがつづき、VSMCが内皮層下で線維性被膜(fibrotic cap)を形成する。線維性被膜は、VSMCからのコラーゲン合成の阻害および泡沫細胞によるコラゲナーゼの発現の組み合わせにより最終的に薄く弱くなる。最終的に、傷害が発生する可能性があり、これは破裂に脆弱であり、壊死性の泡沫細胞の形態で血栓形成性の物質を暴露している。また、プラークは、破裂することなく成長する可能性があり、最終的に血流を妨げる可能性がある。プラーク形成から血流の遮断または管の閉塞する可能性がある血栓を形成させることによって、遠位の組織の虚血が導かれる可能性がある。
【0028】
「解離」(動脈性の解離)は、管の内膜(intima)の壁および管の中膜の内層における断裂(tear)であり、血液を管壁の層の間に流し、管の中膜を離して分割することを許容する。解離は、医学的な緊急事態であり、至適な治療を施したとしても急速に死亡に至る。例えば、解離が大動脈および断裂におけるものである場合、大動脈は完全に開き(全ての三つの層をとおして)大量で急速な失血が生じる。断裂は、中膜をとおして偽管腔の形成を生じ、内膜のフラップにより真の管腔から分離される。中膜のネクローシスまたは大動脈中膜の変性(例えば、動脈瘤に認められるもの)は、解離に必須であると考えられる。大動脈解離に影響する機械的力には、固定された部位での管の屈曲力(flexion forces), 圧脈拍(pressure pulse)の放射状の衝突, および血液のずり応力(shear stress)が含まれる。高血圧が、大動脈壁における機械的緊張(mechanical strain)および大動脈壁に沿って長軸方向のストレスが発揮されるずり力(shearing forces)に付加される。これらの因子の組み合わせによって、内膜断裂(intimal tear)が生じ、解離は大動脈の中膜に拡大する。
【0029】
本願の明細書等に使用される「動脈瘤(aneurysmor aneurism)」は、血管の局在型の血液で満たされた限局的な拡張であってもよく、これは管壁の弱体化から生じる可能性があり、外科的に修復しない場合には管壁の破裂, 過剰な出血, および死に至る可能性がある。大脳の動脈瘤は、一般にウィリス輪として知られるものにおいて脳の基部の動脈において及び大動脈において生じる。また、動脈瘤は、一般に腹部または胸部の大動脈において生じる。
【0030】
プラークのサイズおよびアテローム性動脈硬化症, 動脈瘤, 解離の重症度は、一または二以上の次の因子により決定されえる:
(a) 血液検査を使用してアテローム性動脈硬化症のリスクを増加させる可能性があるコレステロールおよび血糖のレベルの増加を検出しえる。
(b) ドップラー超音波を使用して腕または脚に沿って様々なポイントでの血圧を測定でき、これにより任意の閉塞の程度, 同様に動脈をつうじる血流の速度の検査が補助されえる。
(c) エコー反射性血管プラークを評価するための超音波〔Skjelland, et al. Atherosclerosis, 195:e142-e146 (2007)を参照されたい〕。
(d) 足首-上腕の指標は、脚および足の動脈におけるアテローム性動脈硬化症の診断を補助しえる。さらにまた、被験者の足首での血圧を被験者の腕のものと比較して足首-上腕の指標を作り、異常な差がアテローム性動脈硬化症により生じる可能性がある末梢血管疾患を指摘する可能性がある。
(e) 心電図(ECG)は、心臓を行き交う電気的なシグナルを記録でき、以前の心臓発作または進行中の心臓発作の証拠を明らかにしえる。さらに、ECGは、運動の間に行いえる。
(f) 血管造影(色素とともに)によって、心臓, 脳, 腕または脚をとおした血流の可視化が許容され、X線画像において狭いスポットおよび閉塞(blockages)を示すことができる。
(g) 他のイメージング検査では対照の存在または非存在の条件で動脈をイメージするため超音波, コンピュータ断層撮影法(CT) スキャンニングまたは磁気共鳴血管造影図(MRA)を使用でき、これにより大きい動脈の硬化および狭小化、同様に、動脈瘤および動脈壁におけるカルシウム沈着を示すことができる。
【0031】
グランザイム Bのインヒビターは、グランザイム Bによる細胞外タンパク質の切断を阻害またはスローダウンする物質である。例えば、フィブロネクチン, エラスチンおよび/またはフィブリリンの切断からグランザイム Bを阻止する化合物または組成物は、グランザイム B インヒビターである。多くのケースにおいて、インヒビターは、アンタゴニストと称される。逆に、グランザイム Bの細胞外タンパク質を切断する能力を改善する物質は、アゴニストと称される。例えば、グランザイム Bがフィブロネクチン, エラスチン および/または フィブリリンを切断する速度を増加する化合物または組成物は、グランザイム B アゴニストである。
【0032】
グランザイム B インヒビターは、プライム(primed)されたグランザイム Bを形成するためにグランザイム B を試験化合物と接触させることにより同定されえる。試験化合物は、グランザイム Bのインヒビターであると又はでないと同定することが望まれる物質, 化合物または組成物である。プライムされたグランザイム Bはグランザイム B 酵素であり、それに結合する試験化合物を有する又は有さない可能性があり、試験化合物と接触または混合される。換言すれば、プライムされたグランザイム Bは、フィブロネクチンフィブロネクチン, エラスチン および/または フィブリリンなどの細胞外タンパク質またはグランザイム B 至適切断配列(Z-配列 (AAD-AMC, IEPD, IETD)を含んでいる蛍光標識基質を添加することにより、試験化合物がグランザイム Bのインヒビターまたはアンタゴニストであると又はでないと同定されえるような条件下のグランザイム B 酵素である。既定量(predetermined amount)の細胞外タンパク質(例えば、フィブロネクチン, エラスチン および/または フィブリリン)と接触させることにより一旦プライムされたグランザイム Bが形成されると、特定の試験化合物がグランザイム B インヒビターまたはアンタゴニストであるかどうかを、既定時間にわたり蓄積した切断された細胞外タンパク質の量を測定すること、切断された細胞外タンパク質の量を切断された細胞外タンパク質の標準の量と比較することにより同定できる。標準の量の切断された細胞外タンパク質は、同じ規定量の細胞外タンパク質をグランザイム B(即ち、未プライムのグランザイム B)に添加すること、上述の既定時間にわたり蓄積した切断された細胞外タンパク質の量を測定することにより達成しえる。既定時間は、未プライムのグランザイム Bによる全ての規定量の細胞外タンパク質の切断を生じない任意の時間であってもよい。切断された細胞外タンパク質の量が切断された細胞外タンパク質の標準の量未満である場合、試験化合物はグランザイム Bのインヒビターまたはアンタゴニストである。切断された細胞外タンパク質の量が切断された細胞外タンパク質の標準の量と同じである場合、試験化合物はグランザイム Bのインヒビターまたはアンタゴニストではない。代わりに、切断された細胞外タンパク質の量が切断された細胞外タンパク質の標準の量より多い場合、試験化合物はグランザイム Bのアゴニストである。類似のアッセイを使用して、特定のインヒビター, アンタゴニストまたはアゴニストの存在下または非存在でグランザイム Bにより切断される弾性線維(elastic fiber)の割合を同定しえる。
【0033】
グランザイム Bインヒビターには、GrB タンパク質の阻害を直接的にまたは間接的に内在性(endogenous)のインヒビター(例えば、PI9)をアップレギュレートすること及び/又はGrB 遺伝子の転写またはGrB 転写物の翻訳を停止することなどにより阻害する任意の分子が含まれる。DNA/RNAを使用して、直接的にタンパク質(アプタマー)またはGrBの転写/翻訳を阻害できる。グランザイム Bインヒビターには、ペプチド, 抗体〔例えば, ポリクローナル; モノクローナル, (F(ab')2 および Fab断片)〕, 小分子, scFc, ペプチドミメティックス, siRNA, アンチセンス分子 (例えば、RNA および 他の核酸分子)などが含まれるが、これらに限定されない。さらに, GrB インヒビターは、GrB単独に特異的でなくてもよく、グランザイム(ファミリーとして)の広域性インヒビターまたはセリンプロテアーゼのインヒビターであってもよい。
【0034】
多くのグランザイム B インヒビターは、当業者に知られており、文献〔WO 03/065987で公開された国際特許出願およびUS 2003/0148511で公開された米国特許出願; Willoughby CA. et al. Bioorg Med Chem Lett. 12:2197-2200 (2002); Hill GE. et al. J Thorac Cardiovasc Surg 110:1658-1662 (1995); Sun J. et al. J Biol Chem 271:27802-27809 (1996); Sun J. et al. J Biol Chem 272:15434-15441 (1997); Bird et al. Mol. Cell. Biol. 18, 6387-6398 (1998); Kam et al. Biochim Biophys Acta 1477(1-2):307:23 (2000); および Bio-x-IEPDP-(OPh)2 as described in Mahrus S. および Craik CS. Chemistry & Biology 12:567-577 (2005)〕などに記載されている。グランザイム Bに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、Biognostik (Euromedex, Mundolshei, France)により設計され、製造されており、文献〔Hernandez-Pigeon, et al., J. Biol Chem. vol. 281, 13525-13532 (2006) および Bruno, et al., Blood, vol. 96, 1914-1920 (2000)〕に記載されている。グランザイム B インヒビターのさらなる例は、Z-AAD-CMK (IUPAC名: 5-クロロ-4-オキソ-2-[2-[2-(フェニルメトキシカルボニルアミノ)プロパノイルアミノ]プロパノイルアミノ]ペンタン酸) MF: C19H24ClN3O7 CID: 16760474; Ac-IEPD-CHO; グランザイム B インヒビターIVまたはカスパーゼ-8 インヒビターIII (IUPAC: (4S)-4-[[(2S)-2-アセトアミド-4-メチルペンタノイル]アミノ]-5-[
2-[[(2S)-4-ヒドロキシ-1,4-ジオキソブタン-2-イル]カルバモイル]ピロリジン-1-イル]-5-オキソペンタン酸) MF: C22H34N4O9 CID: 16760476; および Ac-IETD-CHO; カスパーゼ-8 インヒビターIまたはグランザイム B インヒビターII (IUPAC: (4S)-4-[[(2S,3S)-2-アセトアミド-3-メチルペンタノイル]アミノ]-5-[[(2S,3S)-3-ヒドロキシ-1-[[(2S)-4-ヒドロキシ-1,4-ジオキソブタン-2-イル]アミノ]-1-オキソブタン-2-イル]アミノ]-5-オキソペンタン酸) MF: C21H34N4O10 CID: 16760475である。グランザイム B インヒビターを同定する方法は、本出願の他の部分に記載される。
【0035】
グランザイム B インヒビターは、種々の異なる適切な投与経路(例えば, 吸入, 局所的, 非経口的, 腸内など)のために製剤化されてもよい。さらにまた、グランザイム B インヒビターは、プラーク, 解離,または動脈瘤の部位に局所的に適用されてもよい。代わりに、グランザイム B インヒビターは、装置(例えば, ステント, クリップ, カテーテル, コイルなどへのコーティングとして)の表面への適用のために製剤化されてもよい。
本発明の別の側面において、一または二以上のアテローム性動脈硬化症; 動脈瘤; および解離の治療のためのグランザイム B インヒビターの使用が提供される。解離は大動脈解離であってもよい。動脈瘤は大動脈瘤であってもよい。
本発明の又は本発明に使用するための、多くの分子, 化合物および組成物は、一般に水溶性であり、塩として形成されえる。かかる場合において、本発明の薬学的組成物は、かかる化合物の塩(好ましくは、生理的に許容される塩)を含んでもよく、これは当該技術分野において既知である。薬学的製剤は、典型的には選択された治療のため適切な注射, 吸入, 局所的 投与, 洗浄液,または他の方式による、調製物の投与の方式に許容される一または二以上の担体を含む。適切な担体は、かかる投与の方式における使用に関して当該技術分野において既知のものである。
【0036】
適切な薬学的組成物は、熟練した従事者により決定された、当該技術分野において既知の手段、それらの投与の方式および用量により製剤化されえる。非経口的な投与に関して、化合物は、滅菌水または塩類溶液または非水溶性の化合物(例えば、ビタミンKに使用されるもの)の投与に使用される薬学的に許容されるビヒクルに溶解されてもよい。腸内投与に関して、化合物は、錠剤, カプセル剤中に投与されてもよい又は液体形態に溶解されてもよい。錠剤またはカプセル剤は、腸溶性コート(enteric coated)されてもよい又は徐放性に製剤化されてもよい。多くの適切な製剤が知られており、化合物を局所的(topically)または局部的(locally)に投与するため使用できる、これには放出される化合物を封入(encapsulating)している重合体またはタンパク質のマイクロ粒子, 軟膏, ペースト剤, ゲル, ヒドロゲル,または溶液が含まれる。徐放性のパッチまたは移植片が、長期間の放出を提供するため使用されてもよい。当業者に知られている多くの技術は、文献〔Remington: the Science & Practice of Pharmacy by Alfonso Gennaro, 20th ed., Lippencott Williams & Wilkins, (2000)〕に記載される。非経口投与のための製剤は、例えば、賦形剤, ポリアルキレン グリコール、例えば、ポリエチレングリコール, 野菜起源のオイル,または水素化されたナフタレンを含んでもよい。生体適合性で生分解性のラクチドポリマー, ラクチド/グリコリド共重合体,またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を使用して、化合物の放出を制御しえる。調節性化合物のための他の潜在的に有用な非経口的な送達システムには、エチレン酢酸ビニール共重合体粒子, 浸透圧ポンプ(osmotic pumps), 移植可能な輸液システム, およびリポソームが含まれる。吸入のための製剤は、賦形剤、例えば、ラクトースを含んでいてもよく,またはポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル, グリココール酸およびデオキシコール酸などを含んでいる水溶液であってもよく,または点鼻薬の形態での又はゲルとしての投与のための油性の溶液であってもよい。アンチセンス核酸分子の
製剤も、当業者に知られている。Isis pharmaceuticalsは、幾つかのアンチセンス製剤(Vitravene TMを含む)を開発した会社である。かかる製剤は、グランザイム Bのインヒビターであるアンチセンス核酸分子と共に使用されてもよい。
【0037】
本発明と一致する又は本発明に使用するための化合物または薬学的組成物は、インプラント, 移植片(graft), 補綴物, ステント, などの医学的な装置または器具の手段により投与されてもよい。また、かかる化合物または組成物を含み放出することが意図されるインプラントが工夫される。例は、ある期間で化合物を放出するため適合された重合性の物質から構成されるインプラントであろう。
【0038】
本願の明細書等に記載される薬学的組成物の「効果的な量(effective amount)」は、治療上効果的な量または予防上効果的な量を含む。「治療上効果的な量(therapeutically effective amount)」は、本願の明細書等に記載される細胞外基質タンパク質の切断の減少, グランザイム B 活性レベルの減少, 炎症状態の改善, 肺における空気の流れの改善, 血流の改善, および/または脈管障害(vasculopathy)の開始の重症度の遅延または減少などの所望の治療上の結果を達成するため必要な用量および時間で効果的な量を意味する。治療上効果的な量の化合物は、被験者における病的状態, 年齢, 性, および被験者の重量, および化合物の所望の応答を誘発する能力などの因子に応じて変動しえる。投与計画は、最適な治療上の応答を提供するため調整されえる。また、治療上効果的な量は、任意の化合物の毒性または有害な効果を治療的に有益な効果が上回るものであってもよい。「予防上効果的な量(prophylactically effective amount)」は、本願の明細書等に記載される細胞外基質タンパク質切断の減少, グランザイム B 活性レベルの減少, 血流の改善, プラーク形成の減少, プラーク安定性の改善, 管の弾性の改善, 管の壁厚の維持, および管壁のエラスチンおよびフィブリリン-1含有量の維持などの所望の予防上の結果を達成するため必要な用量および時間での効果的な量を意味する。典型的に、予防投与量が疾患の前ないし早期の段階の被験者に使用され、予防上効果的な量が治療上効果的な量未満であってもよい。
【0039】
用量の値は軽減されるコンディションの重症度とともに変動しえることが注意される。任意の特定の被験者に関して、特異的な投与計画は、個々の必要性および組成物を投与する又は組成物の投与を監督する者の専門的な判断に応じてオーバータイムで調整されえる。本願の明細書等に記載される用量の範囲は、例示のみであり、医療の従事者により選択されえる用量の範囲を限定しない。組成物における活性化合物の量は、病的状態, 年齢, 性, および被験者の重量などの因子に応じて変動しえる。投与計画は、最適な治療上の応答を提供するため調整されえる。例えば、単一の大量瞬時投与が投与されてもよく、幾つかの分離した用量がオーバータイムで投与されてもよく又は用量は治療上の状況の緊急性の指標と釣り合うように減少または増加されてもよい。投与の容易さ用量の均一性のため単位剤形(dosage unit form)に非経口的な組成物を製剤化することは有利であろう。
【0040】
通常、本発明の化合物は、実質的に毒性を生じることなく使用されるべきである。本発明の化合物の毒性は、細胞培養または実験動物で試験すること、治療係数〔即ち、LD50 (50%の集団に致死的な用量) および LD100 (100%の集団に致死的な用量)の間の比〕を決定することなどの標準の技術を用いて決定することができる。しかしながら、幾つかの状況において(例えば、重篤な疾患状態において)、実質的に過剰な組成物を投与する必要があるだろう。
本願の明細書等に使用される「被験者(subject)」または「正常被験者(normal subject)」は、ヒト, 非ヒト霊長類,または哺乳類,またはラット, マウス, 雌ウシ, ウマ, ブタ, ヒツジ, ヤギ, イヌ, ネコ, などであってもよい。被験者は、本願の明細書等に記載される脈管障害を有していると疑われる又は有しているリスクがあるものであろう。本願の明細書等に記載される脈管障害に関する幾つかの診断上の方法および本願の明細書等に記載される脈管障害の診断の臨床の描写(delineation)は、当業者に知られている。
さらにまた、被験者は、GrBレベルを試験して脈管障害からの転帰が不良であるリスクがあることを決定されてもよい。不良な転帰は、管壁の解離または破裂またはプラーク破裂(plaque rupture)または一または二以上のプラークの安定性の減少である可能性がある。被験者のリスクを評価するため、血液サンプル (7.5 ml)を、脈管障害を有している又は脈管障害を有していると疑われる正常被験者からパープルトップEDTA ヴァキュテーナーチュウブ(BD TM)を用いて採集してもよい。採集後、チュウブは、徹底的に混合するため5回反転させてもよい。次にチュウブは、11 min 、 276 x gで遠心分離 (Beckman Coulter TM)させてもよい。遠心分離後、チュウブは3つの別の層に分けられる:つまり、大抵は赤血球の底部層, 白血球の薄膜層(バフィーコート)および血漿の最上部層である。無菌のピペットを用いて、赤血球から約 1mm下がった最上部層の血漿を慎重にバフィーコートを吸引しないように除去し、血漿を標識オレンジトップクリオチュウブ(labeled orange top cryotube)に配置してもよい。サンプルを、血漿分析を行うまで直ちに-80゜Cで貯蔵してもよい。
【0041】
血漿分析に関して、ヒトグランザイム B ELISAキットは、Bender Medsystems TM (カタログ番号: BMS2027)から利用可能である。キットは、ヒト グランザイム Bの定量的な検出のための酵素結合免疫吸着検査を含む。試薬は、キットのプロトコールにしたがって調製しえる: a)洗浄緩衝剤; b)希釈緩衝剤; c) ビオチン抱合体; d) グランザイムの標準; e) ストレプトアビジン-HRP; およびf) 呈色試薬: 青色色素, 緑色色素, 赤色色素。アッセイは、キットのプロトコールにしたがって行える。結果の計算も、キットのプロトコールにしたがって行える。
【0042】
抗体産生
一つの方法は、GrBまたはエラスチン特異的なペプチドまたはタンパク質の存在を検出することである。GrBまたはエラスチン特異的なペプチドまたはタンパク質は、そのデグラデーション産物を含んでもよい。これらのペプチドまたはタンパク質は、タンパク質性物質(proteinaceous material)を生物学的サンプルから単離すること、単離されたペプチドまたはタンパク質の配列を決定すること、GrBまたはエラスチンタンパク質の既知の配列を比較することにより検出されえる。好ましくは、かかる検出は、当該技術分野において既知のGrBまたはエラスチン ペプチドまたはタンパク質に特異的な抗体などの中間的な因子を利用する。
GrBまたはエラスチンペプチドまたはタンパク質に対する抗体は、種々の知られている方法によって調製されえる。かかる抗体は、ポリクローナル, モノクローナルであってもよく、または抗体の断片であってもよい。
抗体の産生に関して、ヤギ, ウサギ, ラット, マウス, ヒトなどを含む様々な宿主は、免疫原性の特性を有するGrBまたはエラスチン ペプチドまたはタンパク質フラグメントでの注射で免疫しえる。宿主の種に依存して、様々なアジュバントが、免疫学的な応答を増加するため使用されてもよい。かかるアジュバントは、フロイント, ミネラルゲル、例えば、水酸化物アルミニウム, および界面活性剤(surface active X substances)、例えば、リゾレシチン, プルロニックポリオール, ポリアニオン, ペプチド, 油エマルジョン剤, キーホールリンペットヘモシニアン, およびジニトロフェノールが含まれるが、これらに限定されない。ヒトに使用されるアジュバントの間で、BCG (桿菌 Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumが特に好ましい。
【0043】
抗体を誘導するために使用されるGrBまたはエラスチン ペプチド, 断片,またはオリゴペプチドが少なくとも 五 アミノ酸, および より好ましくは 少なくとも 10 アミノ酸からなるアミノ酸配列を有することが好適である。また、それらは天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが好ましい、また、それらはGrBまたはエラスチンペプチドまたはタンパク質の全体のアミノ酸配列を含有してもよい。GrBまたはエラスチンのアミノ酸の短いストレッチ(stretches)は、キーホールリンペットヘモシニアンおよびキメラ分子に対し産生された抗体などの別のタンパク質のものと融合されてもよい。
GrBまたはエラスチンのアミノ酸配列に対応するペプチドは、以下の例に開示された組換え技術を含む当該技術分野において既知の方法を用いて合成されてもよい。かかるペプチドは、他の分子との抱合(conjugation)を促進(例えば、免疫原性を増強する)するためN末端システインを取込んでもよく、かかる抱合はm-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシ-スクシンイミド エステル (MBS)などの因子で媒介される。前記ペプチドと特異的に反応する抗体は、前記ペプチドを抱合したCellulofine (Seikagaku Corporation)を用いることなどのアフィニティークロマトグラフィーで抗血清から精製されえる。生じる抗体は、免疫ブロットで試験されてもよい。
【0044】
GrBまたはエラスチンのペプチドまたはタンパク質または抗イディオタイプモノクローナル抗体に対するモノクローナル抗体は、培養における連続的な細胞株により抗体分子の産生のため提供される任意の技術を用いて調製されえる。これらにはハイブリドーマ技術, ヒト B-細胞 ハイブリドーマ 技術, およびEBV-ハイブリドーマ技術 〔Kohler, G. et al. (1975) Nature 256:495-497; Kozbor, D. et al. (1985) J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote, R. J. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. 80:2026-2030; Cole, S. P. et al. (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120〕が含まれるが、これらに限定されない。
本発明のハイブリドーマを取得するための方法は、インビボで以前に免疫した動物(例えば、マウスまたはラット)の脾臓細胞から又は抗原でインビトロで以前に免疫した動物の脾臓細胞から開始し、免疫した細胞をミエローマ細胞とハイブリドーマ形成条件で融合し;特異的にGrBまたはエラスチンのペプチドまたはタンパク質を認識する能力のあるモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを選択することが関与する。
【0045】
選択したハイブリドーマは適切な培養培地で培養され;分泌されたモノクローナル抗体が回収され;または代わりに腹水が動物中で産生された場合、選択されたハイブリドーマはマウスの腹膜に移植され;腹水から形成されたモノクローナル抗体が回収される。本発明のモノクローナル抗体は、固定化された細胞を中空繊維またはマイクロカプセルなどを用いて培養すること又は均質な懸濁液中の細胞をエアリフトリアクターまたは撹拌バイオリアクターなどを用いて培養することなどの従来のインビトロ技術で調製されえる。
加えて、「キメラ抗体」を産生するため開発された技術、適切な抗原特異性および生物活性を有する分子を得るためのマウス抗体遺伝子のヒト抗体遺伝子へのスプライシングを使用できる〔Morrison, S. L. et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855; Neuberger, M. S. et al. (1984) Nature 312:604-608; Takeda, S. et al. (1985) Nature 314:452-454〕。代わりに、単鎖抗体の産生のための記載された技術は、当該技術分野において既知の方法を用いて適合されてGrBまたはエラスチン特異的な単鎖抗体が産生されえる。関連する特異性をともなうが、別のイディオタイプ組成の抗体は、免疫グロブリン ライブラリーのランダムな組み合わせからの鎖の混合により産生されえる〔Burton D. R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88:11120-3〕。かかる単鎖抗体は、本発明の使用のための抗イディオタイプ抗体の産生のため使用されえる。
【0046】
また、抗体は、リンパ球集団中でインビボ産生を誘導することにより又は組換え型の免疫グロブリンライブラリーまたは高度に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングことにより産生しえる〔Orlandi, R. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. 86: 3833-3837; Winter, G. et al. (1991) Nature 349:293-299〕。
GrBまたはエラスチンのペプチドまたはタンパク質に又は抗-GrBまたはエラスチン抗体に特異的な結合部位を含む抗体断片も産生されえる。例えば、かかる断片には、抗体分子のペプシン消化により産生できるF(ab')2断片およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生することができるFab断片が含まれるが、これらに限定されない。代わりに、Fab 発現 ライブラリーを構築して、所望の特異性を有するモノクローナル Fab 断片の迅速で容易な同定が許容される〔Huse, W. D. et al. (1989) Science 254:1275-1281〕。抗-GrBまたはエラスチン抗体に特異的である場合、かかる断片は抗イディオタイプ抗体又はその断片の産生に使用しえる。
本発明のモノクローナル抗体は、「キメラ(chimeric)」であってもよく、その例はヒト定常ドメインと連結した動物の抗原結合性の可変ドメインである〔Cabilly et al., U.S. Pat. No. 4,816,567; Morrison, S. L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984); Boulianne, G. L. et al., Nature 312:643-646 (1984); Neuberger, M. S. et al., Nature 314:268-270 (1985)〕。「キメラ」抗体の用語は、別のタンパク質(例えば、免疫グロブリン定常ドメイン)の少なくとも一部と連結された少なくとも抗体分子の抗原結合部分を含んでいるポリペプチドを記載する。しかしながら、本発明の抗体は、標識成分(labeling moieties)を含んでいる種々の成分と抱合してもよい。
【0047】
様々な免疫アッセイをスクリーニングに使用して、所望の特異性を有している抗体を同定しえる。樹立された特異性を有しているポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかを用いた競合的な結合または免疫放射線 アッセイのための多数のプロトコールは、当該技術分野において周知である。かかる免疫アッセイは、典型的にGrBまたはエラスチン抗原及びその特異的な抗体の間の複合体形成の測定が関与する。少なくとも二つの非干渉エピトープ(non-interfering epitopes)に反応性のモノクローナル抗体を利用するモノクローナルに基づく免疫アッセイ(Monoclonal-based immunoassays utilizing monoclonal antibodies)が、好適であるが競合的な結合アッセイを行ってもよい〔Maddox, D. E. et al. (1983; J. Exp. Med. 158:1211-1216〕。
【0048】
抗体アッセイ法
本発明の抗体およびタンパク質/ペプチドの最も重要な有用性の一つは、診断上の目的のためであり、特にサンプルにおけるGrBまたはエラスチン抗体または抗原 (GrBまたはエラスチンのタンパク質またはペプチド)の存在量を検出するためのアッセイにおける診断上の目的である。特に ELISAS (酵素結合免疫吸着アッセイ)およびウエスタンブロットのようなアッセイを使用してサンプルにおけるGrBまたはエラスチンのタンパク質またはペプチドを検出できる。多数の免疫アッセイは、当該技術分野において既知である〔Methods in Cell Biology, Vol. 37: Antibodies in Cell Biology, Asai, ed., Academic Press, Inc., New York (1993); および Basic and Clinical Immunology, 7th ed., Stites & Terr, eds., (1991)〕。
【0049】
GrBまたはエラスチンタンパク質を検出するための好適な方法は、典型的に抗体が適切な緩衝剤から呈色反応産物を産生することができる酵素(例えば、ペルオキシダーゼまたはホスファターゼ)と結合するELISAである。従って、それは未知量の非標識の抗原を決定するため既知量のタグ化抗原分子を利用する。好ましくは、本発明によるGrBまたはエラスチンタンパク質,または適切な機能的なその断片は、従来のタグ(例えば、His6)と連結して使用される。
【0050】
従って、本発明によるELISA 型式において、GrBまたはエラスチンに特異的なポリペプチドまたはタンパク質は、好ましくは生物学的サンプルにおいて検出および/または定量される。サンプルは、任意の生物学的な組織または流体(例えば、血液)のサンプルであってもよい。サンプルは、必要に応じて適切な緩衝液で希釈で前処理するか又は所望であれば濃縮される。任意の数の標準の水性の緩衝液を使用してもよく、例えば、生理的な pHのTrisなどを使用してもよい。サンプルは、抗原として過剰な本発明のタンパク質とインキュベーションされる。リンスして非結合性の抗原を除去した後、結合抗原の量は、サンプルにおける抗体の定常性ドメインに結合する酵素抱合型抗体の溶液を添加することで定量される。過剰な抱合型の抗体をリンスして除去し、結合酵素の活性により基質が反応に加わり、産物の形成を測定することにより決定される。ELISA処置に使用された反応の産物は色がついているので、形成した産物の量は発生した色の強度を分光光度計を用いて容易に決定することができる。結合酵素の活性は、サンプルにおける抗原結合性抗体の量に比例する;従って、かかる抗体の当初の濃度は、既知の濃度の特異的な抗原を利用する対照アッセイの系列から見積もることができる。同様に、GrBまたはエラスチンに対する抗体は、生物学的サンプルにおいて結合抗原(GrBまたはエラスチン タンパク質またはペプチド)を用いて検出できる。
【0051】
GrBまたはエラスチンタンパク質を検出するための代替法として、ウエスタンブロットを利用して上記のGrBまたはエラスチン特異的な抗体の利点を活用できる。タンパク質を含んでいる生物学的なサンプルを変性条件下のポリアクリルアミドゲルの分画でアッセイできる。代わりに、トリストリシンポリアクリルアミドゲル電気泳動を1から100 kDaの範囲の小さいペプチドの分離を改善するため使用できる〔Schagger H. and von Jagow G. ((1987) Analytical Biochemistry 166: 368-379 および Klafki H.-W. et al. (1996) Analytical Biochemistry 237, 24-29.〕。ゲルにおいて分離されたタンパク質は、当該技術分野において既知の種々の方法を用いて膜に転写できる。膜をGrBまたはエラスチン特異的な抗体を用いてウエスタンブロットでプローブ(probed)して、生物学的サンプル調製物における所望のタンパク質を同定できる。多数のウエスタンブロッティング法が、当該技術分野において既知である〔ECL ウエスタンブロッティング プロトコール - Amersham; Hsu SM. Methods Enzymol (1990) 184:357-63; Leong MM. and Fox GR. Methods Enzymol (1990) 184:442-51〕。
【0052】
ウエスタンブロッティング
GrBまたはエラスチンタンパク質またはペプチドを検出するための代替法として、ウエスタンブロットを利用して上記のGrBまたはエラスチン特異的な抗体の利点を活用できる。タンパク質を含んでいる生物学的なサンプルを変性条件下のポリアクリルアミドゲルの分画でアッセイできる。代わりに、トリストリシンポリアクリルアミドゲル電気泳動を1から100 kDaの範囲の小さいペプチドの分離を改善するため使用できる〔Schagger H. and von Jagow G. ((1987) Analytical Biochemistry 166: 368-379 および Klafki H.-W. et al. (1996) Analytical Biochemistry 237, 24-29.〕。ゲルにおいて分離されたタンパク質は、当該技術分野において既知の種々の方法を用いて膜に転写できる。膜をGrBまたはエラスチン特異的な抗体を用いてウエスタンブロットでプローブ(probed)して、生物学的サンプル調製物における所望のタンパク質またはペプチドまたはそのデグラデーション産物を同定できる。多数のウエスタンブロッティング法が、当該技術分野において既知である〔ECL ウエスタンブロッティング プロトコール - Amersham; Hsu SM. Methods Enzymol (1990) 184:357-63; Leong MM. and Fox GR. Methods Enzymol (1990) 184:442-51〕。
【0053】
代わりに、GrAまたはGrB 酵素結合免疫吸着スポット (ELISPOT - Czerkinsky C. et al. (1983) J Immunol Methods 65 (1-2): 109-21), ドットブロットまたは他のプロテオームのアプローチが当該技術分野において知られている。
本発明の様々な代替的な態様および例が、本願の明細書等に記載される。これらの態様および例が説明されるが、本発明の範囲を限定すると解釈されない。
【0054】
[例]
方法および材料
動物
全ての動物実験のプロトコールは、ブリティッシュコロンビア大学 (UBC;University of British Columbia)の動物管理委員会により承認された。C57Bl/6 マウス, C57Bl/6-ApoE-/- および C57Bl/6-GrB-/- マウスを、Jackson Laboratories (Bar Harbor, ME)から取得した (PIEDRAHITA et al. 1992. Proc Natl. Acad Sci 89: 4471-4475; HEUSEL et al 1994 Cell 76:977-987)。C57Bl/6-ApoE-/- x GrB-/- ダブルノックアウト (ApoE/GrB-DKO) マウスを、C57Bl/6-ApoE-/- および C57Bl/6-GrB-/- マウス系統を交配することにより作出した。マウスのゲノタイピングを、ジャクソン研究所からのこれらの系統をゲノタイピングするために設計されたプライマー および PCR反応を用いて行なった(GrB プライマー: 5'-TGAAG ATCCT CCTGC TACTG C-3' および 5'-TCCTG AGAAA GACCT CTGCC-3'; ApoE プライマー: 5'-GCCTA GCCGA GGGAG AGCCG-3' および 5'-TGTGA CTTGG GAGCT CTGCA GC-3')。仔を3週齡で引き離し、12時間の日中および夜間のサイクルで食餌および水を自由に与えて維持した。6 - 8 週齡で、マウス〔例えば、1-7 (7A)〕を、規則的な 固形飼料またはウエスタン 高脂肪食 (Harlan Teklad)の何れかで30 週維持し、屠殺して血液 および 組織を採取した。3 月齡で、マウス(例えば、8-14)を、ランダムに皮下の1004 モデル ALZET (登録商標) ミニ浸透圧ポンプから28日間のangII 輸液,または塩類溶液輸液の何れかを受け取るように設定した。
【0055】
アンギオテンシン-II-誘発性のAAAのApoE-KO モデル
動脈瘤を誘発させるため、我々は、特徴がよく知られているangII 浸透圧ミニポンプ法を使用した〔Daugherty A. et al. J Clin Invest 105, 1605-12 (2000)〕。ALZET TM 浸透圧ポンプ (DURECT Corporation, Cupertino, CA)は、微小で移植可能なポンプであり、一般にマウス および ラットでの研究に使用される。これらの輸液ポンプによって、連続的に薬物および他の検査因子が一日から四週制御された速度で外部と連結することなく、頻繁な操作を必要とすることなく送達される。ALZET TM ポンプは、浸透圧置換(osmotic displacement)により機能する。ポンプのコア内の空の貯蔵部は、送達される薬液で満たされる。貯蔵部の周囲のチャンバーに高濃度の塩が存在することにより、水が外側表面をとおしてポンプに進入する。この水の進入によって、塩チャンバー中の容量が増加し、可動性の貯蔵部の圧縮および動物への薬液の送達が生じる。
【0056】
用量を計算する直前にマウスの体重を計量し、マウスの平均体重/群を使用した。というのも、規則的に食餌を与えられたマウスは0.5g重量/週で増加したので、薬物の用量は実験の計画された中間重量(projected mid weight)に基づいて計算された(そのため、マウスはわずかに最初の二 週に過剰摂取され、最終的な 二 週に過少摂取された)。用量を、1.44mg/kg/日(1000ng/min/kgと均等)の値を達成するためポンプ充填容量(pump fill volume), 平均ポンピング速度(mean pumping rate), およびマウスの中間重量(midpoint weight of the mice)に基づいて計算した。正確な充填を保証するために、ポンプを充填の前後で秤量し、1μLと均等な1mgの値を充填する容量を見積もる際に使用した。AngIIを、Sigmaから5mg のアリクウォットで取得し、使用するまで-20°Cで保存した。新鮮なangIIを、各実験に関して塩類溶液中で希釈した。全てのポンプおよび溶液は、無菌条件下で作業された。ポンプにangIIまたはビヒクル対照を充填後、それらを十分な塩類溶液を含有している無菌の組織培養チュウブ中に保存してポンプを完全にカバーした。全ての検査チュウブを、移植の前に37 ゜Cで24 時間恒温器に配置した。通常、ポンプは、適切な流速および用量でangIIの放出を開始する前に48時間インキュベートされるだろう。しかしながら、この24 時間のインキュベーションによって、ポンプの準備は部分的にととのう。それらは移植後に追加の24時間の間に総用量でangIIの放出を開始すべきではない。この処置によってマウスが、angII 輸液の潜在的なストレスをうける前に移植手術から回復することが許容される。
【0057】
1日目に、マウスを、GEM マイクロ処理室(GEM micro-procedure room)に移動した。動物は酸素に2.5%のイソフルランを伴うガス状の麻酔で流速1.5L 毎分で麻酔され、これは較正したテーブルトップの麻酔器を用いてBainesシステムを介して送達され、げっ歯類の鼻部錐状体から投与された。麻酔の深さは、爪先刺激応答(toe pinch response)および呼吸でモニターされた。眼を眼球の潤滑剤を用いて保護した。マウスの背中を剃り、脚をテープでとめた。マウスの背中を、70% エタノール、次にヨウ素で消毒した。マウスを、手術台に移動した(解剖顕微鏡を利用できる)。
無菌条件下、肩甲骨下で側部の切開を行い、皮膚を皮下層から剥離し、ミニポンプを適合させるために十分大きな空孔を作った。ミニポンプを、頭部に向けたフローレギュレータとともに挿入した。切開部を、2-4の溶解する非連続的な縫合で閉鎖した。イソフルランを止めて、マウスが純酸素を呼吸することを許容させ、ブプレノルフィンの一用量を疼痛から解放させるために投与した。1 時間後、マウスが麻酔から回復した際に、彼等を動物維持室にもどした。マウスを、実験の残りの間に一日モニターした。
【0058】
28日目、生存しているマウスから組織を採取した。血液を、CO2での安楽死につづく心臓穿刺で収集した。マウスを氷上に配置し、胸部を開胸し、右心房を切開し、針を左心室に配置した。塩類溶液(そして、次に4% パラ-ホルムアルデヒド)を、加圧したチュービング系を用いて、血液が右心房における切開部からの排出が観察されなくなるまで100mmHgの定圧で灌流した。心臓(大動脈から腸骨の分岐)および腎臓を、マウスから摘出し、写真をとった。この時点で大動脈の全体の描写がなされた。死亡が確認されたマウスのケースでは、組織の灌流は選択されなかった。これらのケースでは、大動脈 および 心臓を灌流なしで採取した。自己融解が原因で、幾つかの組織は、解剖することが困難であり、失われた。組織を、新鮮な4% パラ-ホルムアルデヒドに一晩保存し、切片を切り、包埋する前に再び写真をとった。
【0059】
組織および血液の採集
動物に2.5% アベルチン TM (Sigma TM)の過剰用量を投与し、四 mLの4% ホルマリン (Sigma TM)で流速 2 mL/minで灌流固定した。心臓を素早く除去し、大動脈起始部の切片を至適切除温度(OCT)-包埋した。背中から採取した皮膚サンプルを、OCT-包埋(Tissue-Tek TM)するか又はパラフィン中に包埋される前の24hに10% ホルマリン中で浸漬-固定するか何れかで処理した。心臓穿刺により抽出された血液を、EDTA マイクロキュベットチュウブ (Sarstedt TM)中に採取し, 10,000 x gで 7 分間 4゜Cで処理し, 分離した血清を-80゜Cで分析に必要とされるまで保存した。
【0060】
組織の固定, 摘出およびプロセシング
大動脈起始部
心臓の上半分(心房 および 大動脈弓を含む)を、10μmの起始部をカバーする連続的な凍結切片のため至適切断温度包埋媒体(OCT) (Cryomatrix, Shandan)中で凍結した。各々の心臓から10-20の切片を得た。切片を、オイルレッドO (ORO), ヘマトキシリン および エオシン (H&E) および Movat's Pentachrome (Movat's)染色で染色して、大動脈起始部におけるアテローム硬化型傷害の存在を検査した(プロトコールに関して以下の記載を参照されたい)。スライドを、次に光学顕微鏡下で観察した。ImageProPlus TM (MediaCybernetics, Silver Spring, MD)を使用して、各サンプルのアテローム硬化型傷害、同様に、管腔領域および弁領域(valve area)をトレースおよび定量した。
【0061】
傷害の横断面領域、同様に傷害と弁の横断面領域の比, および傷害と管腔領域の比として表した。
【0062】
腹部および胸部の大動脈の切片
切片を、横隔膜のすぐ上の下行大動脈, および腎動脈のすぐ上の胸部大動脈から単離した。これらの切片を、包埋し、OCT中で凍結し、連続的に10μmの標本へと凍結切片を作成した。
【0063】
組織染色
ヘマトキシリン & エオシン
組織切片を、二回, 5 minで水をかえて洗浄し、OCTを除去した。次にスライドをヘマトキシリンに 5 min浸漬し、除去し、dH2Oで1 min洗浄し、1% 酸アルコールで急速に(5-10 sec)分別し、dH2Oで1 min洗浄し、次に塩化リチウムに30 sec浸漬した。次に組織を、dH2O で 1 min 洗浄し、エオシンで染色する前に30 sec、 70% イソプロピルアルコールに浸漬した。スライドを、1% エオシン(80% アルコール中)で 30 sec浸漬し、排水し、一晩空気乾燥し、自動のカバーグラスのためにキシレンに浸漬した。全てのスライドを、光学顕微鏡下で検査し、顕微鏡写真をSpot TM デジタルカメラで得た。ホワイトバランスし、露光を自動的に計算した。
【0064】
Movat's Pentachrome
組織切片を、二回, 5 minで水をかえて洗浄し、OCTを除去した。スライドを、水性ピクリン酸で 10 minを室温で飽和することで酸化させ、流水で脱色するまで洗浄し、dH2Oでリンスし、即座に3% 酢酸に浸漬した。スライドを、即座にアルシアンブルー (1g アルシアンブルー, 3mL 氷酢酸 / 100mL dH2O)に30 min浸漬し、3% 酢酸でリンスし、温かい流水で10 minで洗浄した。dH2Oでリンス後、スライドをVerhoeff's 染色に45 min浸漬し、温かい水道水で 5 minリンスし、浸漬した。組織切片を、dH2Oで洗浄し、Biebrich Scarlet-Acid Fuchsin (0.8g Biebrich Scarlet, 0.6g 酸性フクシン, 1.6g リンタングステン酸/140mL dH2O)に10 min浸漬し、dH2Oでリンスし、5% リンタングステン酸で2 minで発色させた。最終的に、スライドを、dH2Oでリンスし、100% エタノールを3回交換して脱水し、アルコールサフラン (6g サフラン / 100mL エタノール)で 10 minで 60゜Cで染色した〔Movat H. Z. AMA Arch Pathol 60, 289-95 (1955)の修飾法〕。組織切片をセットして一晩風乾し、キシレンに浸漬し、自動の機械を用いてカバーグラスをつけた。
【0065】
AT1およびフィブリリン-1染色
組織切片を、二回, 5 minで水をかえて洗浄し、OCTを除去した。ホルマリン固定で修飾された抗原エピトープをアンマスキングするため、熱に基づく抗原修復(Heat-based antigen retrieval)をスライドを15 minでクエン酸緩衝液 (pH 6.0)で煮沸し、30 min冷却して行った。次にスライドを、リン酸緩衝食塩水 (PBS)で二回を各回5 分間で洗浄した。次にスライドを、3% 過酸化水素でクエンチし、PBSを3回交換して洗浄した。スライドを、10%の標準のヤギ血清をPBS中に含むもので 30 min で室温でブロックした。ブロッキング血清を除去し、10%の標準ヤギ血清(normal goat serum)にウサギ抗-フィブリリン-1 (Dako; Carpinteria, CA, USA),またはウサギ抗-AT1 (Santa Cruz TM; Santa Cruz, CA, USA)の何れかをともなうもので加湿したチャンバーで一晩 4゜Cで処理した。一次抗体を除去し、スライドを二回PBSで 5 min洗浄(各洗浄を室温で行う)し、ビオチン ヤギ抗-ウサギを 5% 標準ヤギ血清中に1:350 希釈したもので 30 分間でチャンバー中でインキュベーションした。次に、二次抗体を、除去し、スライドをPBS (pH 7.4)で三回洗浄した(各洗浄を5 min)。調製されたABC 試薬 (VECTASTAIN TM ABC (西洋わさびペルオキシダーゼ) キット, Burlingame, CA)を各切片に添加し、30 min、室温でインキュベーションした。次に、スライドを、PBSに0.1% tween (PBST)をともなう溶液で二回交換して各回 5 minで洗浄し、次にPBSで5 minで一回洗浄した。染色を可視化するために、Nova-red溶液を5-6 minインキュベーションし、次にインキュベーションスライドをすぐに水で洗浄した。次に、スライドを、ヘマトキシリンで1 min対比染色し、水で洗浄した。組織切片をセットして一晩風乾し、キシレンに浸漬し、自動化の機械を用いてカバーグラスをつけた。
【0066】
ApopTagペルオキシダーゼインサイチューアポトーシス検出染色
製造者(Chemicon Internatural, Inc.)の指示にしたがって、OCT-包埋した切片でApopTag TM 染色を利用してDNA 断片化を評価した。スライドを、上記の免疫組織化学に関する記載と同じ様式で、水で洗浄してOCTを除去した。次に、スライドを、PBSで二回洗浄(各洗浄を5 min)し、20μg/mL プロテイナーゼ K で 20 min 、室温でインキュベーションして組織を透過させ、DNA-関連タンパク質を消化した。スライドを、PBSで三回洗浄(各洗浄を5 min)し、組織中の残存ペルオキシダーゼ活性を3% H2O2を添加し、15 min、室温でクエンチさせた。PBSで三回洗浄後、組織切片を、平衡緩衝液中で少なくとも 10 secインキュベーションし、ジゴキシゲニン UTPの存在下でTdT 酵素で 1h 、37゜Cでインキュベーションした。次に、TdT 酵素を、停止緩衝液で 10 minインキュベーションして不活化した。洗浄後、スライドを三回PBSで洗浄し、HRPに抱合させた抗-ジゴキシゲニン抗体を添加(30 min、室温)し、TdTによるビオチン化UTPで標識されたDNA鎖切断を検出した。次にスライドを、三回PBSで洗浄し、スライドをDABで5-10 minインキュベーションすることで染色を可視化した。ヘマトキシリンを核の対比染色として使用し、染色した切片にカバーグラスを付け、鏡検した。顕微鏡写真を、上記の免疫組織化学に関する記載のとおり得た。
【0067】
免疫蛍光
免疫蛍光を、OCT-包埋した凍結切片で行なった。以下に要約、切片をアセトンで10 min固定した。バックグランド染色を、切片をDako プロテインブロック(Dako Cytomation TM)での 20 分間のインキュベーションでブロックし、そして 10% ロバ血清で 1 時間インキュベーションした。切片を、ヤギ抗-グランザイム B (Santa Cruz TM, 1:50) および ラット 抗-マウス マクロファージ/単球 (Chemicon TM, 1:50) で 4゜Cで一晩インキュベーションし、ロバ 抗-ヤギ IgG (Alexa 蛍光 TM 594, 1:500) およびロバ 抗-ラット IgG (Alexa 蛍光 TM 488,1:500) で 30 min を室温で暗所でインキュベーションした。スライドを、VECTASHIELD TM Hard-set マウンティングメディアに4'-6-ジアミジノ-2-フェニルインドールまたはDAPI (Vector Laboratories TM, Burlingame, CA)を含むものでマウントした。共焦点顕微鏡観察を、ライカ AOBS TM SP2 共焦点顕微鏡を用いて行なった。
【0068】
組織学的な評価および定量化
記載のとおり単離された大動脈起始部の連続的な 10 μmの切片を、ヘマトキシリン & エオシン (H&E), Movat's pentachrome, elastic van Gieson,またはオイルレッドO(ORO)で染色した。ImageProPlus TM (MediaCybernetics TM, Silver Spring, MD)を使用して、28 日目の終点まで生存した各マウスからの十から二十の切片における傷害領域/管腔横断面を定量し、次に傷害領域/マウスの平均を提供するために平均化した。大動脈の管腔領域および中膜の厚さを計算するため、Movat's pentachrome染色切片から内部および外部の弾性板をImageProPlus TMでトレースした。最大の管腔領域を、内部の弾性板の周囲長(perimeter)を用いて計算した。中膜の厚さを、内部の弾性領域(elastic area)から計算された最大領域から外部の弾性板から計算された最大領域を減じること、次に内部の弾性板周囲値(internal elastic lamina perimeter value)により除することで計算した。
【0069】
ヒト組織の採集。ヒトのAAAを、スウェーデンのカロリンスカ病院の倫理プロトコールにしたがい取得した。GrBに関するElastic Van Giesonおよび免疫組織化学を、ホルマリン-固定し, パラフィン-包埋した切片で行なった〔Choy JC. et al. Mod Pathol 16:460-470 (2003)〕。要約すると、切片を、脱パラフィンし、キシレンおよびエタノールの濃度を減少させて脱水した。抗原修復を、スライドをクエン酸緩衝液(pH 6.0)で 15 分間煮沸し, ベンチトップで冷却して行なった。免疫組織化学に関して、切片を10% ヤギ 血清中で 30 分間インキュベーションすることでバックグランド染色をブロックした。切片を、1:100 希釈のウサギ抗-GrB中で一晩インキュベーションし、ヤギ IgG 二次Abで 1 時間インキュベーションした。染色を、比色(colorimetric)および蛍光の特性の両方を有しているVector Red TM(Vector Laboratories TM, Burlingame, CA)で可視化し、核をヘマトキシリンで対比染色した。
【0070】
統計
ANOVA 検査を行って、複数のグループ間の統計学的な差を決定した。二つのグループ間の統計学的な差を、スチューデントのt検定を用いて決定した。双方の検定に関して、0.05またはそれ以下のp 値(アルファ誤差)は有意と考えられた。
【0071】
例1
ApoE/グランザイム B ダブルノックアウトマウス
(1) C57Bl/6 野生型, (2) C57/ApoE -/- (ApoE-KO), (3) C57/GrB -/- (GrB-KO), および (4) C57 GrB/ApoE-DKOからなる四群のマウスは、標準の固形飼料(chow)または高脂肪の「ウエスタン」食餌(21% 脂肪, 0.2% コレステロール)を 30 週摂食させられた。如何なる顕著な差も、これらのマウスにおいて最初の3月の間に観察されなかった。マウスを屠殺し、組織を30 週齢で採取した(ウエスタン食餌におけるApoE KO マウスは、人道的な理由からこの齢の付近で屠殺した)。文献で報告されたとおり、ApoE-KO マウスは、重篤な皮膚の黄色腫症, 脱毛症(hair loss), 毛髪の変色および多数のアテローム硬化型の傷害が進行した。驚くことに、GrB/ApoE-DKO マウスは、アテローム硬化型の傷害の頻度およびサイズの両方において有意な減少を示した(図 4)。ApoE/GrB DKO マウスにおけるアテローム硬化型の傷害は、ウエスタン食餌を摂食させられたApoE KO マウスにおける大動脈起始部領域の40%以上から15%未満のサイズに減少した。
興味深いことに、アテローム硬化型の傷害におけるこの差は、血液中でのコレステロールまたはリポタンパク質のレベルの変化が原因ではない。というのも、ApoE KO および ApoE/GrB DKO マウス (図 1 & 2)の間に差がないからである(総コレステロール および LDLC 血漿濃度の双方が同じである)。HDL, LDL および トリグリセリドにおける有意な差は、ウエスタン食餌を摂食させられたApoE KO (ハッチバー) および ApoE/GrB DKO (チェックバー) マウスの間で観察されなかった(図 3)。グランザイム B 活性のみの除去(白色のバー)は、C57/BL6と比べて血液脂質プロフィールにおいて有意な効果を有していない(黒色のバー)。
ApoE KO マウスは、早老の徴候を示し、約 30 週齢(6-7 月)で屠殺する必要がある。しかしながら、ApoE/GrB DKO マウスは、健常のままであり、加齢または疾病の視認しえる徴候をともなうことなく、12 月齡をこえて活発であった。これは驚くべきことであった。というのも、長寿におけるGrBの役割を支持または指摘する事項は、以前に文献中で確認されていないからである。
【0072】
例2
大動脈の切片におけるエラスチン および グランザイム Bの分布
大動脈起始部の傷害におけるグランザイム B および マクロファージの共局在化が行なわれ、共焦点顕微鏡で観察された。ApoE-KO (ApoE -/-)の傷害は、グランザイム B および マクロファージ 染色の両方を示し、プラークの特定の領域の両方(線維性キャップおよび肩領域)での共局在化をともなっていた。グランザイム B 染色は、内部の弾性板に局在していた。
大動脈壁に接着するため、平滑筋細胞はエラスチンを必要とする。C57 wt, GrB -/-, ApoE -/- および DKO マウスの大動脈を、elastic van Giesonで染色した(図 5A ないし 5D)。ApoE マウスの大動脈壁は非常に薄く、エラスチン染色はC57 wtと比べて著明に減少した。 DKO マウスにおいて、大動脈壁は有意に厚く、エラスチン染色は対応してより強い。また、GrBは、ApoE -/-においてアテローム硬化型のプラークの内部の弾性板およびマクロファージの流入と共局在する。驚くことに, この共局在は、共焦点顕微鏡での染色により示されたとおりDKO マウスにおいて観察されない。
内部の弾性板でのグランザイム Bの局在化の増加によって、それがエラスチン線維に蓄積し、時間を超過してエラスチンのデグラデーションに寄与する可能性が示される。これは次々に、血管の弾性の減少, 炎症を増強する断片の産生, 石灰化の増加および全体の硬直化(硬化)を誘導するだろう。また、内部の弾性板におけるエラスチンの減少によって、内膜への平滑筋細胞の遊走(内膜の過形成)およびアテローム硬化型のプラークの形成が促進される。断片化およびデグラデーションしたエラスチン(グランザイム Bによる)によって、傷害の免疫細胞のリクルートが誘導されえる。
【0073】
例3
グランザイム Bは細胞外基質タンパク質 エラスチンに結合する
インビトロでのグランザイム B エラスチン結合実験を、次の様式で行なった。50, 100 および 300 ngでのグランザイム Bを、15 μgのヒトの不溶性の皮膚 (Sk) および 大動脈 (Ao)のエラスチン (Elastin Products Company TM, Owensville, MO) を PBSに含むもので 三 分間、室温でインキュベーションした。サンプルを、1000 x gで室温で三分間遠心分離し、不溶性のエラスチンをペレットに集めた。上清(非結合性の グランザイム Bを含有する)を、SDS 添加液で変性させ、10% SDS-PAGEゲルで泳動した。グランザイム Bを、ウエスタンブロットで検出した。各ゲルは、三レーンを含んでいた:つまり、一のレーンは、エラスチンの非存在下でグランザイム Bを含有しているサンプルに関する;二のレーンは、グランザイム B および ヒトの不溶性の皮膚エラスチンを含有しているサンプルに関する; および三のレーンは、グランザイム B および大動脈のエラスチンを含有しているサンプルに関する。エラスチンが非存在でグランザイム Bを含有しているサンプルに関連しているレーンは、重いバンドを上清および微かなバンド(faint band)をペレットに示した。グランザイム B および 皮膚 エラスチン, および グランザイム B および 大動脈のエラスチンを含有しているサンプルに関連しているレーンは、双方とも、ペレットにおいて重いバンド(このバンドは、エラスチンが非存在のグランザイム Bを含んでいるサンプルに関連しているペレットにおいて認められる微かなバンドよりも非常に重い)を示した。さらにまた、グランザイム B および 皮膚 エラスチンを含んでいるサンプルに関する上清中のバンドは、エラスチンの非存在下のグランザイム Bに関連するサンプル中で示された上清のバンドよりも劇的に明瞭性が低かった。如何なるバンドも、グランザイム B および 大動脈エラスチンを含んでいる上清のサンプルに現れなかった。従って、上清に存在するグランザイム Bは低く、それゆえグランザイム Bがペレット中でエラスチンと相互作用したことを指摘している。この現象は、用量依存的であり、使用されたエラスチンのタイプ(即ち、皮膚のエラスチンまたは大動脈のエラスチン)に制限され
るものではなかった。
【0074】
例4
グランザイム Bは細胞外基質タンパク質を切断する
ヒトの冠動脈の平滑筋細胞 (SMC) マトリックスをグランザイム Bで処理することによって、いくつかの細胞外タンパク質の切断が誘導される。SMC培養からの細胞外タンパク質は、ビオチン化され、グランザイム Bとインキュベーションされた。上清を、処理後の2, 4 および 24 時間で採取し、全体の不溶性の細胞外タンパク質調製物を24 時間で採取した。細胞外タンパク質を、ビオチンに関してウエスタンブロットで可視化した。ベータ-アクチンに関するウエスタンブロットによって、細胞外タンパク質調製物が細胞間タンパク質(intercellular proteins)を欠いていることが確認された。また、フィブロネクチン, リン酸化 FAK (p-FAK), および FAKに関するウエスタンブロットを、グランザイム Bで処理したSMCのライセートで行なった。採取された不溶性タンパク質において、約 50-70 kDa および 約 236 kDaの間の四つのタンパク質のバンドは、グランザイム Bでの処理後24 時間で見えなくなり、約 25-39 kDaの断片の切断はこの同じ時点でマトリックスにおいて明瞭であった。さらに、六つのタンパク質および/または約 29-148 kDaの分子量の範囲の切断断片は、グランザイム B処理後の二時間で上清に溶出した。使用されたSMC 細胞外タンパク質の調製物が細胞内タンパク質(intracellular proteins)を欠いていたことを保証するために、ベータ-アクチンに関するウエスタンブロッティングを集めた上清および細胞外タンパク質で行なった。ベータ-アクチンは、SMCのライセート(陽性の対照)中で明らかであったが、マトリックス および 上清の調製物には非存在であった。
【0075】
グランザイム Bで切断される細胞外タンパク質を同定するため、無処置およびグランザイム B-処理したSMCsからのライセートでフィブロネクチン, コラーゲン, および ビトロネクチンに関してウエスタンブロットを行なった。グランザイム B で 24 時間処理された全ての SMCsにおいて、SMCsから採取されたライセート中のフィブロネクチンの総量は減少していた。グランザイム B-処理されたSMCsの24時間の上清において、フィブロネクチン切断産物が検出された。コラーゲン IVまたはビトロネクチンの切断は観察されなかった。従って、グランザイム BはSMC 細胞外マトリックスにおけるフィブロネクチンの切断を誘導するが、コラーゲン IVまたはビトロネクチンには影響しない。
【0076】
例5
グランザイム Bはインビトロでエラスチンに結合し、デグラデーションする
トリチウム化したエラスチンを、文献〔Banda, M.J. and Werb, Z. (1981) Biochem J 193: 589-605 および Gordon, S., Werb, Z. and Cohn, Z.A. (1976) in In Vitro Methods in Cell Mediated and Tumor Immunity, eds. Bloom, B.R. and David, J.R. (Academic Press, New York), pages 349-350〕の記載を修飾して調製した。1 mg の皮膚または大動脈のエラスチンを、1 mlのdH20中に希釈し、pHを9.2にした。1 mCi NaB3H4 (PerkinElmer TM, Waltham MA) および 2 mgの非放射性のNaB3H4 (Sigma TM, St. Louis, MO)を添加した。2 時間のインキュベーション後、pHを3.0に調整し、エラスチンを付加的に 30 分間インキュベーションした。エラスチンを3 分間、5000 x gで遠心分離し、ペレットを繰り返し洗浄して過剰なNaB3H4を除去した。切断アッセイに関して、0.15 mgの3H--エラスチンをグランザイム B(0.75 μgをトータルで5回添加した)で室温で7日間インキュベーションした。インキュベーションの7日目、陽性の対照として、25 μgのエラスターゼ (Elastin Products Company TM, Owensville, MO)をエラスチンと2 時間インキュベーションした。インキュベーション後、反応物を、5000xgで3分間遠心分離した。上清における可溶性で切断されたエラスチン断片の放射線を、Ready Safeシンチレーション 流体 (Beckman-Coulter TM, Fullerton, CA)中で計数した。切断された可溶性のエラスチン断片の放射線は、それぞれ皮膚および大動脈のエラスチンに対するバックグランドよりも4.8 倍および 2.7 倍高かった(図 6)。エラスターゼによるエラスチンのタンパク質分解によって、バックグランドに対し皮膚エラスチンに関して14.9 倍および大動脈エラスチンに関して 7.7 倍の放射線の増加が生じた。これらのデータは、グランザイム Bがエラスチンに親和性を有し、エラスチン溶解活性を有することを示す。
【0077】
例6
ヒト冠動脈の平滑筋細胞をコンフルエントまで培養し、48 時間血清を飢餓し、その時点で細胞をNH4OHで溶解し、インタクトな細胞外基質 (ECM)がプレートに残るようにした。グランザイム B (80nm)を、ECM上で24 時間室温でインキュベーションした。上清(切断されたECMを含んでいる)と、なおもプレートに付着しているECMを、採取し、ウエスタンブロットによるフィブリリン切断に関して評価した。結果を図7に示す。図 7における矢印は、フィブリリン-1 切断断片を示す。6つの独立した実験を行なった、3つの代表的なグループを図 7に示す。
【0078】
例7
大動脈解離を、塩類溶液に溶解させたアンギオテンシン-II,またはプラセボをALZET TM 浸透圧ポンプ(モデル 1004)をとおして2000 ng/kg/minで 28 日間輸液することで誘発させた。ポンプを、麻酔下のマウスの首の背後部の小さな切開部分をとおして上部背側領域における皮下の空隙に移植し、切開部分を溶解性の縫合糸で閉鎖した。マウスを、二酸化炭素吸入で安楽死させ、移植後28日で心臓穿刺した。次に胸腔および腹腔を開き、循環系にPBSを左心室に留置したカニューレを介して灌流し、液体を切断した右心房から排出した。PBS灌流につづき、新鮮な10% ホルマリンを同じ様式で灌流した。次に心臓, 腎臓および腸骨の二分枝(iliac bifurcation)までの全体の大動脈を、動物から慎重に摘出し、全体的に写真をとった。腹大動脈からの切片を、OCTにマウントし、-80で凍結し、切片を切り、標準 H&Eで染色した。結果を、図 8A ないし 8F および 9に図示する。
ApoE/GrD-DKO マウスは、大動脈解離および突然死から保護された。アンギオテンシン-II (angII) 輸液によって、apoE-KO マウスにおいて大動脈解離が誘発された。大動脈解離は、大動脈壁の中間および大動脈壁の外側の間の血液の蓄積と規定された。何らかの先行する苦痛の徴候を伴うことなく死亡が確認されたマウスは、突然死と規定された。angIIの恒常的な輸液後、八個体のうち七個体 (87.5%)のapoE-KO マウスは大動脈解離を発症するか又は突然死した。八個体のうち四個体(50%)は胸大動脈の破裂により28日の時点前に突然死を経験し、一個体は下肢麻痺のため安楽死させ、二個体は28日まで生存したが、大動脈解離を発生し、一個体は大動脈解離の視認しうる徴候を示さなかった。対照的に、六個体のうちゼロ個体の野生型および七個体のうち一個体(14%)のGrB/apoE-DKOは、突然死し、大動脈解離を発生した個体はなかった。突然死または大動脈解離は、塩類溶液の対照群におけるマウスにおいて観察されなかった(全ての群に関して、n = 6)。これらの結果を図 10にチャートのグラフで示した。
【0079】
例8
浸透圧性の Mini ポンプの移植およびアンギオテンシン II 輸液後の生存
我々はALZET (登録商標) 1004 ミニポンプを我々の三月齢マウスへの移植実験に良好に至適化した。外科的な合併症からの死亡率は0%であった。一個体のマウスは、歯の不正咬に起因する重量減少が観察されたので早期に安楽死させられ、この動物は我々の全てのデータ分析から除外された。表 1は、移植時のマウスの齢, 開始および重量の変化, および28日まで生存した数を詳細に記載している。マウスは、同腹仔を利用することからangII 輸液 GrB/apoE-DKO 群で若干歳をとっていた。ALZET (登録商標) 1004 ミニポンプは、100μLの塩類溶液またはアンギオテンシン IIの何れかを含有していた。ポンプは、28 日間の実験の残りのあいだ動物中に残された。
【0080】
【表1】

【0081】
表 1 A トータルで50の雄性マウスをこの研究に使用した。24個体のapoE-KO マウスは塩類溶液またはangIIの何れかを受け取り、26個体のGrB/apoE-DKO マウスは塩類溶液またはangIIの何れかを受け取った。開始時の齢および重量が、全てのマウスに関してリストされた。重量変化の値は、28-日の時点まで生存したマウスのみから計算された。略語: angII, アンギオテンシン II; apoE-KO, アポリポタンパク質 E-ノックアウト; GrB/apoE-DKO, グランザイム B/apoE-ダブルノックアウトマウス。
【0082】
図 11は、28 日の実験に対して生存者を詳細に記載しているKaplan-Meier 曲線を示す。塩類溶液を輸液された何れの群においても死亡は確認されず、28日までの慢性的なangII 輸液に対して、GrB/apoE-DKO マウスは生存率(83%)がapoE-KO マウス (56%)とくらべて有意に増加した。ラインは各日の生きているマウスのパーセンテージを表す。各対照群(apoE-KOに関してn = 8, GrB/apoE-DKOに関してn= 11)において死亡は確認されなかった。対照的に、angIIを輸液された86.67%のGrB/apoE-DKO (n = 15) および 56.25%のapoE-KO マウス (n = 16)は、28日間生存した。曲線は有意差が認められた〔Log-rank (Mantel-Cox) 検査 (p = 0.0037)により測定〕。
【0083】
例9
アンギオテンシン II関連の病状はGrB/apoE-DKO マウスにおいて減少した
図 12は、28日間で評価された全ての病状の特性を示す。大動脈解離は、大動脈壁の中間および大動脈壁の外側の間の血液の蓄積と規定された。また、腹部の動脈瘤は、小さい, 中膜の血栓の存在により規定された。何らかの先行する苦痛の徴候を伴うことなく死亡が確認されたマウスは、突然死と規定された。血液を、CO2での安楽死につづく心臓穿刺で収集した。マウスを氷上に配置し、胸部を開胸し、右心房を切開し、針を左心室に配置した。塩類溶液に続いて4% パラ-ホルムアルデヒドを、右心房における切開部から血液の排出が観察されなくなるまで100mmHgの定圧で灌流した。心臓(大動脈から腸骨の分岐)および腎臓を、マウスから摘出し、写真をとった。健常な大動脈を左のパネルに示しており、これは全ての塩類溶液を輸液された動物において観察されたものの代表である。腹部大動脈瘤をともなう大動脈を、中央のパネルに示しており(矢印)、これは30%のGrB/apoE-DKO マウスの代表である。大動脈解離をともなう大動脈を、最も右のパネルに示しており(切開部の長さを2矢印で指摘している)、これは生存しているapoE-KO マウスの大多数で観察されたものの代表である。図 13は、健常な大動脈, 小さいAAA, および大きな大動脈解離の代表的な H&Eのイメージを示す。
【0084】
病理学的な転帰における差を、図 14にグラフで示しており、何れの塩類溶液群においても病状は観察されなかった。apoE-KO angII 群中の生存しているマウスは大動脈解離を生じ、対照的に小さいAAAが30%のGrB/apoE-DKO生存群において観察された。図 14は、実験に使用された全てのマウスの転帰を示し、突然死は如何なる苦痛の徴候をともなうことなく呼吸しない(expired)マウスと規定される。剖検で、一個体を除いた全てのapoE-KO マウスおよび早期に死亡した一個体のGrB/apoE-DKOマウスにおいて大動脈の破裂が原因で死亡したことが明らかとなった。我々の病理学的な評価を、胸部から腹部の大動脈にわたる断面のH&E および Movat's 染色によって確認した(図 15)。図 15は、apoE-KOまたはGrB/apoE-DKO群の何れにおいても塩類溶液を輸液したマウスでは病変がないことを示している。28日間のangII 輸液後、殆どのapoE-KO 生存マウスは、解離性動脈瘤を呈した。しかしながら、GrB/apoE-DKO マウスは、病変,または小さい AAAsを呈さなかった。
【0085】
28-日の実験をこえて、GrB欠損によって、なおもGrBを有するapoE-KO マウス(53%)に対し、有意な生存の増加(83%)を生じた。AAAを発生したGrB/apoE-DKO マウスでは非常に小さかった(解離しなかった初期のAAA)。この事項は、大きく且つ解離を有するapoE-KO マウスにおいて観察されたAAAとは対照的であった。実験の間に早期に死亡したapoE-KO マウスが試験された場合、大きい血餅が胸腔に認められた。頻繁に、大動脈は心臓のレベルにまで解離し、死亡が大動脈の破裂により生じたことを示唆している。そして、GrBがAAAの発生および解離性の AAAの進行に重要で有害な影響を及ぼすこと、その欠損は保護的(protective)であることが示唆される。加えて、GrB/apoE-DKO マウスと比較してapoE-KO マウスの大動脈におけるフィブリリン-1 染色が欠損していること、またGrBがフィブリリン-1をインビトロで切断できると本願で教示されたとおり、GrBはフィブリリン-1を切断することにより動脈瘤および解離の形成および進行に寄与すると思われる。
【0086】
例10
トランスジェニックマウスにおけるAT1 レセプター
免疫組織化学によって、apoE-KO および GrB/apoE-DKOの管の双方において, および陽性の対照として使用された野生型マウス (C57)においてAT1 レセプターの存在が明らかとされた。この結果によって、AT1 レセプターがトランスジェニック系統の産生の間に偶然(inadvertently)に影響されなかったことが検証された。
【0087】
例11
胸部および腹部の大動脈の管腔領域
図 16は、領域中に表される胸部および腹部の大動脈の寸法(dimensions)を示す。一元配置ANOVA/ Dunn's 多重比較検定を行って全ての値を比較した。統計的に有意な差 (p<0.05)は、28日間で塩類溶液またはangIIを受け取ったapoE-KO マウスの腹部の管腔領域の間でのみ認められた。サンプルを、28 日間のangIIまたは塩類溶液を輸液後に採取した。ホルマリン 固定された組織を、OCTに包埋し、クリオスタットで切片を切り、Movat's pentachromeで染色した。内部の弾性板を、ImageProPlus TMを用いてトレースし、最大直径を計算した。AngIIによって、apoE-KO の腹部サンプルの間で統計的に有意な増加が生じた(一元配置ANOVA/ Dunn's 多重比較検定, p<0.05)。バーは平均値を表し、エラーバーは平均値の標準誤差 (SEM)を表す。
【0088】
例12
アンギオテンシン IIは中膜の肥厚化を生じる
胸部および腹部のサンプル両方の中膜の厚さを、測定した。有意ではないが〔apoE-KO の塩類溶液 対 angII の胸部サンプル (p<0.05)は除く〕、文献において予想されていたようにangII 輸液後に中膜厚が増加する傾向があった(図 17)。サンプルを、28 日間のangIIまたは塩類溶液を輸液後に採取した。ホルマリン 固定された組織を、OCTに包埋し、クリオスタットで切片を切り、Movat's pentachromeで染色した。内部および外部の弾性板を、ImageProPlus TMでトレースした。中央の厚さを、内部の弾性領域(elastic area)から計算された最大領域から外部の弾性板から計算された最大領域を減じること、次に内部の弾性板周囲の値により除することで計算した。バーは平均値を表し、エラーバーは平均値の標準誤差 (SEM)を表す。統計的な有意差は、apoE-KO マウスの胸部の値の間でのみ達成された(一元配置ANOVA/Dunn's 多重比較検定, p<0.05)。統計的に有意ではないが、angII 輸液に中膜厚が増加する傾向があった。
【0089】
例13
大動脈起始部のアテローム性動脈硬化症
4群間の大動脈起始部に存在するアテローム性動脈硬化症の量の間に有意な差は観察されなかった(p>0.05) (図 18)。図 18において、28日間生存したマウスから採取されたホルマリン固定された心臓を、OCTに包埋し、クリオスタットで切片を切った。スライドをH&E, Movat's, およびOROで染色した。大動脈起始部の管腔領域およびプラーク領域が得られた場合、何れのゲノタイプ何れの処理の間でもプラークによりカバーされた管腔のパーセントの計算値に有意差は観察されなかった。図 19は、管腔におけるプラークのパーセンテージを表す。管腔またはプラークの測定値に有意差は観察されなかった(p>0.05)。図 19において、大動脈起始部が、28日間生存している動物から採取された。何れのゲノタイプ何れの処理の間にも有意差は観察されなかった(一元配置ANOVA/Dunn's 多重比較検定, p>0.05)。各々の実験群は10-20 切片/マウスから構成され、各群は7-11 マウス/群を有している(apoE-KO 塩類溶液, n=7; GrB/apoE-DKO 塩類溶液, n=7; apoE-KO angII, n=9; GrB/apoE-DKO, n=11)。
【0090】
例14
GrB/apoE-DKO マウス および フィブリリン-1 発現
抗フィブリリン-1での染色によって、塩類溶液および angII処理群の両群でapoE-KOに対しGrB/apoE-DKO マウスおいて多量のフィブリリン-1が明らかとされた(図 20)。興味深いことに、AAAまたは解離の血栓の周囲の領域において、非常に少ないフィブリリン-1 染色が観察された(図 20, 下部 右パネル)。サンプルを、28 日間のangIIまたは塩類溶液を輸液後に採取した。ホルマリン固定された組織を、至適な切除温度(OCT)-包埋し、クリオスタットで切片を切り、抗-フィブリリン-1で染色した。フィブリリン-1 染色(赤色で示される)の減少が、GrB/apoE-DKOマウスに対し、塩類溶液 および angII- 輸液のapoE-KO マウスにおいて観察された。
【0091】
例15
ヒト動脈瘤におけるGrB 染色
図 21は、二次抗体のみで染色されたヒトの腹部大動脈瘤組織 A.およびGrBで染色されたヒトの腹部大動脈瘤組織 B.を示す。矢印は、健常な動脈では観察されない動脈瘤組織における強いGrB染色の領域を示す(データ示さず)。さらにまた、GrBの染色によって、細胞外の局在化を有することが示された(データ示さず)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする被験者における脈管障害を予防する又は治療する方法であって、前記被験者にグランザイム B (GrB) インヒビターを投与することを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記脈管障害は、一または二以上のアテローム性動脈硬化症; 動脈瘤; および解離から選択される方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記被験者は、> 40 pg/mlのGrB 血漿レベルを有する方法。
【請求項4】
請求項 1〜3の何れか一項に記載の方法であって、前記脈管障害は大動脈瘤である方法。
【請求項5】
請求項 1〜3の何れか一項に記載の方法であって、前記脈管障害は脳動脈瘤である方法。
【請求項6】
請求項 1〜3の何れか一項に記載の方法であって、前記脈管障害は大動脈解離である方法。
【請求項7】
請求項 1〜3の何れか一項に記載の方法であって、前記脈管障害は脳動脈解離である方法。
【請求項8】
請求項 1〜3の何れか一項に記載の方法であって、前記脈管障害はアテローム性動脈硬化症である方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法であって、前記大動脈瘤は少なくとも3 cmの直径を有する方法。
【請求項10】
請求項 1〜9の何れか一項に記載の方法であって、前記GrB インヒビターは経口投与のために製剤化される方法。
【請求項11】
請求項 1〜9の何れか一項に記載の方法であって、前記GrB インヒビターは注射による投与のために製剤化される方法。
【請求項12】
請求項 1〜9の何れか一項に記載の方法であって、前記GrB インヒビターは局所投与のために製剤化される方法。
【請求項13】
請求項 1〜9の何れか一項に記載の方法であって、前記GrB インヒビターは装置に関する局所投与のために製剤化される方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記装置は、ステント; クリップ; カテーテル; およびコイルから選択される方法。
【請求項15】
請求項 1〜14の何れか一項に記載の方法であって、前記被験者はヒトである方法。
【請求項16】
請求項 1〜15の何れか一項に記載の方法であって、投与することは被験者の血管または内膜の組織に対してである方法。
【請求項17】
必要とする被験者における脈管障害を予防または治療するための医薬の製造におけるGrB インヒビターの使用。
【請求項18】
必要とする被験者における脈管障害を予防または治療するためのGrB インヒビターの使用。
【請求項19】
必要とする被験者における脈管障害を予防または治療するためのGrB インヒビターを含んでいる薬学的組成物の使用。
【請求項20】
請求項17〜19の何れか一項に記載の使用であって、前記脈管障害は、一または二以上のアテローム性動脈硬化症; 動脈瘤; および解離から選択される使用。
【請求項21】
請求項17〜20の何れか一項に記載の使用であって、前記被験者は、> 40 pg/mlのGrB 血漿レベルを有する使用。
【請求項22】
請求項17〜21の何れか一項に記載の使用であって、前記脈管障害は大動脈瘤である使用。
【請求項23】
請求項17〜21の何れか一項に記載の使用であって、前記脈管障害は脳動脈瘤である使用。
【請求項24】
請求項17〜21の何れか一項に記載の使用であって、前記脈管障害は大動脈解離である使用。
【請求項25】
請求項17〜21の何れか一項に記載の使用であって、前記脈管障害は脳動脈解離である使用。
【請求項26】
請求項17〜21の何れか一項に記載の使用であって、前記脈管障害はアテローム性動脈硬化症である使用。
【請求項27】
請求項22に記載の使用であって、前記大動脈瘤は少なくとも3cmの直径を有する使用。
【請求項28】
請求項17〜27の何れか一項に記載の使用であって、前記GrB インヒビターは経口投与のために製剤化される使用。
【請求項29】
請求項17〜27の何れか一項に記載の使用であって、前記GrB インヒビターは注射による投与のために製剤化される使用。
【請求項30】
請求項17〜27の何れか一項に記載の使用であって、前記GrB インヒビターは局所投与のために製剤化される使用。
【請求項31】
請求項17〜27の何れか一項に記載の使用であって、前記GrB インヒビターは装置に関する局所投与のために製剤化される使用。
【請求項32】
請求項31に記載の使用であって、前記装置は、ステント; クリップ; カテーテル; およびコイルから選択される使用。
【請求項33】
請求項17〜32の何れか一項に記載の使用であって、前記被験者はヒトである使用。
【請求項34】
請求項17〜33の何れか一項に記載の使用であって、投与することは被験者の血管または内膜の組織に対してである使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−540571(P2010−540571A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527305(P2010−527305)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001753
【国際公開番号】WO2009/043170
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(508282568)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (4)
【Fターム(参考)】