グランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法
【課題】グランドアンカー工法におけるアンカー材の先端部を地盤に対して確実に定着し得る有効適切な施工方法を提供する。
【解決手段】先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプ3を地盤1中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に上下2段のパッカー8A、8Bを装着してそれらの管に固化材5の圧入空間を形成し、該圧入空間内に固化材5を加圧注入して、固化材を流出口から周囲の地盤1中に圧入して地盤に対する締め固め工程を実施した後、ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させる。ケーシングパイプは引き抜いても、そのまま残置しても良い。
【解決手段】先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプ3を地盤1中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に上下2段のパッカー8A、8Bを装着してそれらの管に固化材5の圧入空間を形成し、該圧入空間内に固化材5を加圧注入して、固化材を流出口から周囲の地盤1中に圧入して地盤に対する締め固め工程を実施した後、ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させる。ケーシングパイプは引き抜いても、そのまま残置しても良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に係わり、特に構造物を地盤に対してアンカーするためのアンカー材の先端部を地盤に対して強固に定着するための施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、グランドアンカー工法は、主として大規模地震時に想定される地盤の液状化に原因して地盤上に構築した建物等の構造物が浮き上がったり転倒することを防止するためのものであって、図12(a)に示すように地盤1上に構築されている構造物2が地震時に大きな水平力P1を受けた場合に想定される浮き上がりやその結果としての転倒を防止するべく、(b)に示すように構造物2を地盤1に対してアンカーしてその引き抜き耐力P2により浮き上がりや転倒を防止することを基本とするものである。
【0003】
このようなグランドアンカー工法では、構造物2を地盤1に対してアンカーするためのアンカー材としてPC鋼材(PC鋼棒ないしPC鋼線)が一般に用いられるが、それによる充分な引き抜き耐力を確保するためにはアンカー材を地盤1に対して確実強固に定着する必要があることは当然であり、そのための施工方法として図13に示すものが広く採用されている。
これは、(a)に示すように直径100mmφ程度のケーシングパイプ3を泥水循環により内部からの排土を行いつつ地中に設置した後、(b)に示すようにケーシングパイプ3内にPC鋼棒等のアンカー材4を挿入し、(c)に示すようにケーシングパイプ3内にセメントモルタル等の固化材5を注入充填して少なくともアンカー材4の先端部(下端部)を固化材5中に埋没せしめ、固化材5が完全に固化する以前に(d)に示すようにケーシングパイプ3を引く抜く、という手順によるものである。
【0004】
これによれば、固化材5が固化することでアンカー材4の先端部がその固化材5を介して地盤1に対して定着され、アンカー材4に作用する引き抜き力はアンカー材4から固化材5を介してその周囲の地盤1に伝達されて引き抜き耐力が発揮されることになる。
しかし、その場合、アンカー材4の引き抜き耐力は地盤1に対する固化材5の付着力に大きく依存するから、特に地盤強度が充分ではない軟弱地盤に適用するような場合には定着長を充分に確保する必要があり、必然的にアンカー材4やケーシングパイプ3を充分な深度に達するように設置しなければならず、またアンカー材4の所要数が多数となり、そのために工費や工期が嵩むものとなる。
また、ケーシングパイプ3を地盤1中に設置する際には泥水循環により原地盤を多少なりとも乱してしまうことは不可避であるから、それに起因して地盤強度自体が低下して所望の定着力を確保できないことも想定される。
【0005】
なお、地盤状況によってはケーシングパイプ3を引き抜くことなくそのまま残置して図13(c)の状態で完成とする場合もあり、その場合にはアンカー材4に作用する引き抜き力は、アンカー材4から固化材5、ケーシングパイプ3を介して地盤1に伝達されることになり、したがって引き抜き耐力は地盤1に対するケーシングパイプ3の付着力に依存することになるが、いずれにしても地盤1が軟弱である場合の事情は上記と同様である。
【0006】
そのため、特許文献1には地盤に対するアンカー材の定着力を充分に確保し得るものとして、削孔ロッドにより所定深度まで削孔を行ったうえでその周囲地盤中に高圧ジェットを噴射させて拡径を行い、アンカー材としての引張鋼材の先端部を拡径部内に加圧注入したグラウトに対して定着させる、という拡径グランドアンカーの施工方法が提案されている。
【特許文献1】特開平6−248645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に示される工法では、定着部を拡径することによる定着力増強効果は期待できるが、反面、高圧ジェット水の噴射による原地盤の乱れが顕著に生じて拡径部の周囲地盤の強度が大きく低下してしまうことが不可避であるから、結果的に充分な引き抜き耐力増強にはつながらないことも想定され、構造的な信頼性と安全性を充分に確保できない懸念も残る。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、グランドアンカー工法において施工されるアンカー材の地盤に対する定着力を充分に確保することのできる有効適切な施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして該構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記2段のパッカーをいずれも撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させてケーシングパイプを引き抜くことにより、前記アンカー材の先端部を、地盤中に圧入して固化させた固化材塊を介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、同じく構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記上段のパッカーを撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させることにより、前記アンカー材の先端部を、ケーシングパイプの先端部の内外に圧入されて固化した固化材塊およびケーシングパイプを介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に、該ケーシングを固化材塊に対して係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に設ける係合手段を、該ケーシングパイプを地盤中にねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明において、ケーシングパイプの少なくとも先端部の内周面に、圧入空間に圧入されて固化する固化材を一体に係合するための係合手段としての突起を予め設けておくことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、アンカー材の先端部の外周面に、圧入空間に圧入された固化材に対して一体に係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、アンカー材の先端部の外周面に設ける係合手段を、圧入空間に圧入されている固化材に対してねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、ケーシングパイプの先端部に予め設けた流出口には、該流出口から流出させた固化材がケーシングパイプ内に逆流することを防止するための逆止弁を予め設けておくことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、ケーシングパイプ内に挿入するアンカー材の先端部には、圧入空間に圧入した固化材がケーシングパイプを通して上部に逆流することを防止するための封止手段を予め設けておくことを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、アンカー材の先端部に設ける封止手段としてアンカー材の本体部と先端部とを連結するジョイント部材を兼用し、該ジョイント部材をアンカー材の外周側にフランジ状に張り出す状態で設けておくことを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、圧入空間内に加圧注入して流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固めるための固化材として、圧入時には流動性を有し圧入後には自ずと固化するセメントモルタルもしくは可塑状ゲル剤を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、アンカー材の先端部を固化材塊を介して地盤に対して確実強固に定着できることはもとより、アンカー材の設置に先立って固化材の圧入により地盤を締め固めることによって定着部の周囲の地盤の密度と強度を自ずと高めることができ、したがってアンカー材の引き抜き耐力を充分に高めることができ、その結果、地盤に対する定着長の削減やアンカー材の所要本数の削減を図ることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、上記に加えてケーシングパイプを残置することにより、施工性をより改善できるばかりでなく、地盤に対するケーシングパイプの付着力を引き抜き耐力の一部として引き抜き耐力をより向上させることができる。
その場合、請求項3記載の発明のようにケーシングパイプの先端部外周面に地盤に対する係合手段を設けておくことによりケーシングパイプ自体の引き抜き耐力を充分に高めることができ、さらにその場合において請求項4記載の発明のように係合手段として螺旋翼を採用することにより、ケーシングパイプを設置する際にはそれを有効に活用してケーシングパイプを地盤中にねじ込んでいくことができるので施工性に優れる。
さらに、請求項5記載の発明のようにケーシングパイプの先端部内周面に突起等の係合手段を設けておくことにより、ケーシングパイプとその内部に圧入されて固化する固化材塊とを確実に一体化させることができる。
【0022】
いずれにしても、請求項6記載の発明によれば、アンカー材の先端部に固化材塊に対する係合手段を設けておくことにより、アンカー材と固化材塊とを確実に一体化させることができ、その場合、請求項7記載の発明のように係合手段として螺旋翼を採用することにより、半固化状態となった固化材に対してアンカー材を支障なくねじ込むことができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、ケーシングパイプの先端部に設ける固化材の流出口に逆止弁を設けておくことにより、圧入した固化材がケーシングパイプ内に逆流してしまうことを有効に防止でき、それにより固化材の圧入後に速やかにパッカーを撤去してアンカー材の挿入作業に速やかに移行することができる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、アンカー材の先端部に封止手段を設けておくことにより、アンカー材の挿入時やケーシングパイプの抜き取り時等に固化材がケーシングパイプを通して逆流することを有効に防止することができ、その場合において請求項10記載の発明のようにフランジ状のジョイント部材を封止手段として活用することにより自ずと充分な封止効果が得られて合理的である。
【0025】
請求項11記載の発明によれば、固化材として圧入時には充分な流動性と適度の粘性を有し、圧入後には自ずと固化するセメントモルタルあるいは可塑状ゲル剤を用いることにより、地盤に対して支障なく圧入できかつ最終的には自ずと充分な強度が発現し、しかも一般的な資材であるので安価に入手できるし施工性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態は、基本的には図13に示した従来のグランドアンカー工法におけるアンカー材4の施工方法と同様に、アンカー材4としてのPC鋼材(PC鋼棒ないしPC鋼線)の先端部を固化材5を介して地盤1に対して定着するものであるが、その際には固化材5の圧入により定着部の周囲の地盤1に対する締め固め工程を実施することを主眼とするものである。
【0027】
図1〜図7は本発明の第1実施形態を示すものである。
本第1実施形態においては、図1(一部破断図)に示すようなケーシングパイプ3を用いてまずこのケーシングパイプ3を地盤1中に設置する。このケーシングパイプ3は、その先端部(下端部)から固化材5を周囲の地盤1中に圧入することで地盤1を締め固めるための多数の流出口6が予め形成されていることを除いては、基本的に図13に示した従来のケーシングパイプ3と同様に構成されて同様に機能するものであり、従来と同様に泥水循環により地盤1中に設置されるものである。
【0028】
そのケーシングパイプ3を地盤1中に設置した後、図2に示すようにケーシングパイプ3内の先端部に固化材5の圧入空間7を形成するための上下2段のパッカー8(8A、8B)を装着する。それらパッカー8は、いずれも膨張収縮可能な柔軟な袋体9を主体とする周知のもので、袋体9を小さく折り畳んだ状態でそれらを流出口6の形成位置の上下に位置させて配置した後、注入管10を通して袋体9に水等の流体を加圧注入することで袋体9を展開膨張させてケーシングパイプ3の内面に押圧保持せしめることにより、それらパッカー8A、8Bの間に固化材5を加圧注入するための圧入空間7を形成する。
なお、上段側に装着するパッカー8Aは袋体9が環状とされていて、その中心部に下段側のパッカー8Bの注入管10と、圧入空間7に対して固化材5を加圧注入するための圧入管11を挿通させるようになっており、それら上下のパッカー8A、8Bと圧入管11とをケーシングパイプ3内に装着するためには、それらの全体を予め一体に組み付けておいてその全体を一括してケーシングパイプ3内に挿入すれば良い。
【0029】
次に、図3に示すように上記の圧入管11を通して圧入空間7内に固化材5を加圧注入する。固化材5としては、圧入時には充分な流動性と適度の粘性を有するとともに最終的には自ずと固化して充分な強度を発現する周知のグラウト材を用いれば良く、たとえばセメントモルタルや地盤改良材としての各種の可塑状ゲル剤(たとえば特開2003−105745号公報に開示されている可塑性グラウト等)が好適に採用可能である。
その固化材5を、地上部に設置した適宜の加圧注入手段(図示せず)から適宜の注入圧により圧入空間7に加圧注入すると、図3に示すように固化材5は各流出口6から流出して地盤1中に圧入されていくので、図4に示すように各流出口6から圧入された固化材5どうしが一体に連続するものとなるまで所望量の固化材5を圧入すれば、その体積相当分の土砂が自ずと外方に押圧されていき、そのような固化材5の圧入により周囲の地盤1に対する締め固め効果が得られて地盤1の密度および強度を自ずと高めることができる。
【0030】
以上の締め固め工程が完了した後、引き続いて固化材5が充分に固化してしまう前にアンカー材4の施工を行う。
すなわち、まず上下のパッカー8の袋体9内から注入管10を通して流体を排出して袋体9を収縮させ、図5に示すように双方のパッカー8および圧入管11を撤去する。なお、この際に固化材5が未だ完全な流動性を有していると、地盤1に圧入された固化材5がそのままケーシングパイプ3内に逆流してしまったり、ケーシングパイプ3内を上昇してしまうこともあるので、パッカー8の撤去はそのような逆流が生じない程度の固化が進行したタイミングで行うと良い。
【0031】
そして、図6に示すように、ケーシングパイプ3内にアンカー材4を挿入し、その先端部をケーシングパイプ3内の先端部に既に注入されている固化材5中に埋没させた後、図7に示すようにケーシングパイプ3を引き抜く。これにより、所定時間経過後にはアンカー材4の先端部の周囲において固化材5が完全に固化して固化材塊12が形成され、アンカー材4はその固化材塊12を介して地盤1に対して確実強固に定着されて優れた引き抜き耐力が確保される。
【0032】
なお、アンカー材4としては適宜のものが採用可能であるが、本実施形態では先端部に螺旋翼13を形成したPC鋼棒を用いており、その螺旋翼13を利用して固化がある程度進行した固化材5に対しても容易にねじ込むことができものとなっており、かつ固化材5が固化材塊12として完全に固化した後にはその固化材塊12とアンカー材4とが螺旋翼13によって確実に係合一体化して定着強度の増強にも寄与するものとなっている。
また、本実施形態におけるアンカー材4は、螺旋翼13を形成している先端部を単なるPC鋼棒からなる本体部に対してジョイント部材14を介して連結したものとなっているが、そのジョイント部材14は固化材5がケーシングパイプ3を通して上方に逆流してしまうことを防止するための封止手段を兼用するものとしている。すなわち、そのジョイント部材14としてはアンカー材4の外側にフランジ状に張り出す形状とされていて、その外径はケーシングパイプ3の内径よりもやや小さい程度とされ、図6に示したようにケーシングパイプ3内にアンカー材4が挿入された時点、および図7に示したようにケーシングパイプ3を抜き取る際には、完全には固化していない固化材5がそのジョイント部材14により封止されてケーシングパイプ3を通して上方に逆流してしまうことを有効を防止できるものとされている。
【0033】
以上で説明した本第1実施形態の施工方法によれば、固化材5をケーシングパイプ3の先端部からその周囲の地盤1に圧入して所望体積の固化材塊12を形成し、その固化材塊12にアンカー材4の先端部を一体に定着するようにしたので、図13に示した従来一般の施工方法により単にケーシングパイプ3内に注入充填した固化材5に対してアンカー材4を定着する場合に比較して遙かに引き抜き耐力を高めることができ、その結果、地盤1に対する定着長の削減やアンカー材4の所要本数の削減を図ることができる。
しかも、ケーシングパイプ3の先端部からの地盤1への固化材5の圧入によりアンカー材4の施工に先立って原地盤に対して締め固めを行うので、その締め固め効果により原地盤の密度および強度の増強効果が得られ、それによっても引き抜き耐力の向上を図ることができ、特に軟弱地盤に適用する場合に好適である。
勿論、本実施形態の施工方法は地盤1をいわば静的に締め固めるものであって、特許文献1に示される従来工法のように地盤中に高圧ジェット水を噴射して破壊的な拡径を行うものではないから原地盤を乱すことは少ないし、仮にケーシングパイプ3の設置の際に泥水循環により原地盤が乱されたような場合であってもその後の固化材5の圧入による締め固め工程によりそれを補償して地盤1の密度および強度を回復させることができ、構造的な安全性や信頼性を充分に高めることができる。
【0034】
次に、図8〜図11を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
上記第1実施形態では最終的にはケーシングパイプ3を引き抜くものとしたが、本第2実施形態ではケーシングパイプ3を引き抜くことなくそのまま残置してケーシングパイプ3にも引き抜き耐力の一部を負担させるものとしている。そのため、本第2実施形態では、図8に示すようにケーシングパイプ3の外周面に螺旋翼15を予め形成しておき、その螺旋翼15を利用してケーシングパイプ3を地盤1中にねじ込むとともに、最終的にはその螺旋翼15を固化材塊12に対する係合手段として利用してケーシングパイプ3と固化材塊12とを螺旋翼15を介して強固に係合一体化させるものとしている。なお、図8は一部破断図であるので螺旋翼15の図示も一部省略しているが、螺旋翼15はケーシングパイプ3の外周面に連続的に形成されているものである。
【0035】
本第2実施形態では、上記の第1実施形態と同様に、図9に示すように圧入空間7の上下にパッカー8(8A、8B)を装着して圧入管11から地盤1中に固化材5を圧入して地盤1に対する締め固めを行った後、図10に示すようにパッカー8および圧入管11を撤去し、図11に示すようにケーシングパイプ3内にアンカー材4を挿入し、ケーシングパイプ3の内外において固化材5が固化して固化材塊12が形成されれば施工完了となる。なお、図示しているように下段のパッカー8Bの袋体9は残置して埋め殺すことで差し支えないが、上段のパッカー8Aや圧入管11とともに撤去することでも勿論良い。
【0036】
本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られることに加え、ケーシングパイプ3を残置することでその抜き取り作業が不要であるので施工性に優れ、しかもケーシングパイプ3と固化材塊12とが螺旋翼15を介して確実に係合一体化するので引き抜き耐力をより一層増強することが可能である。
【0037】
なお、本第2実施形態においては、ケーシングパイプ3内において固化した固化材5とケーシングパイプ3とはそれらの付着力により自ずと充分に一体化するが、必要に応じてケーシングパイプ3の内周面にも突起等の適宜の係合手段を設けておくか、あるいはケーシングパイプ3として内面突起付きの鋼管(たとえば内面に縞鋼板状の凹凸加工を施したもの)を用いることにより、ケーシングパイプ3とその内部の固化材5との一体化強度をより高めることができる。
【0038】
以上で本発明の第1実施形態および第2実施形態を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でたとえば以下に列挙するような様々な変形や応用が可能である。
【0039】
上記各実施形態ではいずれもケーシングパイプ3の周面に単なる開口(孔)を形成することでそれを流出口6としたが、そこに適宜の逆止弁を設けることも考えられる。
すなわち、上記各実施形態では周囲の地盤1に固化材5を圧入して締め固めを行った後には、その固化材5がケーシングパイプ3内に逆流してしまうことを防止するために固化がある程度進行するまでは圧力を維持する必要があり、したがってパッカー8の撤去はそれまで待機する必要があるが、流出口6に逆流を防止するための逆止弁を設けておけば自ずと圧力が維持されるからパッカー8の撤去を早期に行うことが可能となり、それに伴い、第1実施形態の場合には固化材5が固化し過ぎない早期の段階でケーシングパイプ3を抜き取ることが可能となる。
その逆止弁としては、流出口6の外側に弁体を外方に向かって開くように取り付け、その弁体が固化材5の圧入時には自ずと外方に自由に開かれ、逆流が生じる事態となった際には流出口6が弁体により自ずと塞がれる構成のものが考えられるが、あるいは地上部から開閉操作するシャッタの如き構成の逆止弁を設けておくことも考えられる。
【0040】
上記各実施形態では、ケーシングパイプ3内に圧入空間7を形成するためのパッカー8として袋体9を膨張収縮させる構成のものを用いたが、それに限るものではなく、ケーシングパイプ3内に容易に装着できかつ容易に撤去できるものであれば適宜の構成のものを任意に採用可能である。なお、第2実施形態において下段側のパッカー8Bを撤去せずに埋め殺してしまう場合には、格別のパッカーを用いることに代えて、たとえばモルタルをケーシング底部に直接的に充填して硬化させてしまうことでも良い。
【0041】
上記各実施形態においてはアンカー材4の先端部に固化材塊12に対する係合手段としての螺旋翼13を設けたが、アンカー材4と固化材塊12とが自ずと充分に係合一体化する場合には係合手段は必ずしも設けることはないし、係合手段を設ける場合にもその形態は上記実施形態のような螺旋翼13に限らず任意であり、ケーシングパイプ3内へのアンカー材4の挿入の傷害とならないものであればたとえば単なる突起状のものでも良い。さらに螺旋翼を設ける場合にも、上記各実施形態のように一例の連続した螺旋翼13とすることに限らず要所に断続的に設けるものであっても良い。
【0042】
上記の第2実施形態においてはケーシングパイプ3の外周面に係合手段としての螺旋翼15を設けたが、ケーシングパイプ3と地盤1との間で充分な付着力が確保できる場合には係合手段は必須ではないし、係合手段を設ける場合にもケーシングパイプ3の地盤1への設置の傷害とならないものである限りにおいてその形態は螺旋翼15に限らず任意である。また、上記第1実施形態においてもケーシングパイプ3に第2実施形態と同様に係合手段としての螺旋翼15を設けておいて、ケーシングパイプ3を設置する際に地盤1中にねじ込んでいき、ケーシングパイプ3を引き抜く際には逆方向に回転させて抜き取ることも考えられる。
【0043】
上記各実施形態ではアンカー材4としてPC鋼棒を用いたが、アンカー材4は充分な引き抜き耐力を有するものであれば良く、PC鋼棒に代えてPC鋼線を用いることはもとより、たとえばPC鋼線の先端に螺旋翼13付きのPC鋼棒を上記のようなジョイント部材14により連結して用いることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態を示すもので、ケーシングパイプの先端部を示す図(一部破断図)である。
【図2】同、ケーシングパイプ内にパッカーを装着した状態を示す図(一部破断図)である。
【図3】同、固化材の圧入による締め固め工程を開始した状態を示す図(一部破断図)である。
【図4】同、固化材の圧入による締め固め工程を示す図(一部破断図)である。
【図5】同、締め固め工程完了後にパッカーを撤去した状態を示す図(一部破断図)である。
【図6】同、アンカー材の挿入工程を示す図(一部破断図)である。
【図7】同、ケーシングパイプの抜き取り工程を示す図(一部破断図)である。
【図8】本発明の第2実施形態を示すもので、ケーシングパイプの先端部を示す図(一部破断図)である。
【図9】同、固化材の圧入による締め固め工程を示す図(一部破断図)である。
【図10】同、締め固め工程が完了した状態を示す図(一部破断図)である。
【図11】同、アンカー材の挿入工程を示す図(一部破断図)である。
【図12】グランドアンカー工法の概要を示す図である。
【図13】従来のアンカー材の施工方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 地盤
2 構造物
3 ケーシングパイプ
4 アンカー材
5 固化材
6 流出口
7 圧入空間
8(8A、8B) パッカー
9 袋体
10 注入管
11 圧入管
12 固化材塊
13 螺旋翼(係合手段)
14 ジョイント部材(封止手段)
15 螺旋翼(係合手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に係わり、特に構造物を地盤に対してアンカーするためのアンカー材の先端部を地盤に対して強固に定着するための施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、グランドアンカー工法は、主として大規模地震時に想定される地盤の液状化に原因して地盤上に構築した建物等の構造物が浮き上がったり転倒することを防止するためのものであって、図12(a)に示すように地盤1上に構築されている構造物2が地震時に大きな水平力P1を受けた場合に想定される浮き上がりやその結果としての転倒を防止するべく、(b)に示すように構造物2を地盤1に対してアンカーしてその引き抜き耐力P2により浮き上がりや転倒を防止することを基本とするものである。
【0003】
このようなグランドアンカー工法では、構造物2を地盤1に対してアンカーするためのアンカー材としてPC鋼材(PC鋼棒ないしPC鋼線)が一般に用いられるが、それによる充分な引き抜き耐力を確保するためにはアンカー材を地盤1に対して確実強固に定着する必要があることは当然であり、そのための施工方法として図13に示すものが広く採用されている。
これは、(a)に示すように直径100mmφ程度のケーシングパイプ3を泥水循環により内部からの排土を行いつつ地中に設置した後、(b)に示すようにケーシングパイプ3内にPC鋼棒等のアンカー材4を挿入し、(c)に示すようにケーシングパイプ3内にセメントモルタル等の固化材5を注入充填して少なくともアンカー材4の先端部(下端部)を固化材5中に埋没せしめ、固化材5が完全に固化する以前に(d)に示すようにケーシングパイプ3を引く抜く、という手順によるものである。
【0004】
これによれば、固化材5が固化することでアンカー材4の先端部がその固化材5を介して地盤1に対して定着され、アンカー材4に作用する引き抜き力はアンカー材4から固化材5を介してその周囲の地盤1に伝達されて引き抜き耐力が発揮されることになる。
しかし、その場合、アンカー材4の引き抜き耐力は地盤1に対する固化材5の付着力に大きく依存するから、特に地盤強度が充分ではない軟弱地盤に適用するような場合には定着長を充分に確保する必要があり、必然的にアンカー材4やケーシングパイプ3を充分な深度に達するように設置しなければならず、またアンカー材4の所要数が多数となり、そのために工費や工期が嵩むものとなる。
また、ケーシングパイプ3を地盤1中に設置する際には泥水循環により原地盤を多少なりとも乱してしまうことは不可避であるから、それに起因して地盤強度自体が低下して所望の定着力を確保できないことも想定される。
【0005】
なお、地盤状況によってはケーシングパイプ3を引き抜くことなくそのまま残置して図13(c)の状態で完成とする場合もあり、その場合にはアンカー材4に作用する引き抜き力は、アンカー材4から固化材5、ケーシングパイプ3を介して地盤1に伝達されることになり、したがって引き抜き耐力は地盤1に対するケーシングパイプ3の付着力に依存することになるが、いずれにしても地盤1が軟弱である場合の事情は上記と同様である。
【0006】
そのため、特許文献1には地盤に対するアンカー材の定着力を充分に確保し得るものとして、削孔ロッドにより所定深度まで削孔を行ったうえでその周囲地盤中に高圧ジェットを噴射させて拡径を行い、アンカー材としての引張鋼材の先端部を拡径部内に加圧注入したグラウトに対して定着させる、という拡径グランドアンカーの施工方法が提案されている。
【特許文献1】特開平6−248645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に示される工法では、定着部を拡径することによる定着力増強効果は期待できるが、反面、高圧ジェット水の噴射による原地盤の乱れが顕著に生じて拡径部の周囲地盤の強度が大きく低下してしまうことが不可避であるから、結果的に充分な引き抜き耐力増強にはつながらないことも想定され、構造的な信頼性と安全性を充分に確保できない懸念も残る。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、グランドアンカー工法において施工されるアンカー材の地盤に対する定着力を充分に確保することのできる有効適切な施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして該構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記2段のパッカーをいずれも撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させてケーシングパイプを引き抜くことにより、前記アンカー材の先端部を、地盤中に圧入して固化させた固化材塊を介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、同じく構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記上段のパッカーを撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させることにより、前記アンカー材の先端部を、ケーシングパイプの先端部の内外に圧入されて固化した固化材塊およびケーシングパイプを介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に、該ケーシングを固化材塊に対して係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に設ける係合手段を、該ケーシングパイプを地盤中にねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明において、ケーシングパイプの少なくとも先端部の内周面に、圧入空間に圧入されて固化する固化材を一体に係合するための係合手段としての突起を予め設けておくことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、アンカー材の先端部の外周面に、圧入空間に圧入された固化材に対して一体に係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、アンカー材の先端部の外周面に設ける係合手段を、圧入空間に圧入されている固化材に対してねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、ケーシングパイプの先端部に予め設けた流出口には、該流出口から流出させた固化材がケーシングパイプ内に逆流することを防止するための逆止弁を予め設けておくことを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、ケーシングパイプ内に挿入するアンカー材の先端部には、圧入空間に圧入した固化材がケーシングパイプを通して上部に逆流することを防止するための封止手段を予め設けておくことを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、アンカー材の先端部に設ける封止手段としてアンカー材の本体部と先端部とを連結するジョイント部材を兼用し、該ジョイント部材をアンカー材の外周側にフランジ状に張り出す状態で設けておくことを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、圧入空間内に加圧注入して流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固めるための固化材として、圧入時には流動性を有し圧入後には自ずと固化するセメントモルタルもしくは可塑状ゲル剤を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、アンカー材の先端部を固化材塊を介して地盤に対して確実強固に定着できることはもとより、アンカー材の設置に先立って固化材の圧入により地盤を締め固めることによって定着部の周囲の地盤の密度と強度を自ずと高めることができ、したがってアンカー材の引き抜き耐力を充分に高めることができ、その結果、地盤に対する定着長の削減やアンカー材の所要本数の削減を図ることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、上記に加えてケーシングパイプを残置することにより、施工性をより改善できるばかりでなく、地盤に対するケーシングパイプの付着力を引き抜き耐力の一部として引き抜き耐力をより向上させることができる。
その場合、請求項3記載の発明のようにケーシングパイプの先端部外周面に地盤に対する係合手段を設けておくことによりケーシングパイプ自体の引き抜き耐力を充分に高めることができ、さらにその場合において請求項4記載の発明のように係合手段として螺旋翼を採用することにより、ケーシングパイプを設置する際にはそれを有効に活用してケーシングパイプを地盤中にねじ込んでいくことができるので施工性に優れる。
さらに、請求項5記載の発明のようにケーシングパイプの先端部内周面に突起等の係合手段を設けておくことにより、ケーシングパイプとその内部に圧入されて固化する固化材塊とを確実に一体化させることができる。
【0022】
いずれにしても、請求項6記載の発明によれば、アンカー材の先端部に固化材塊に対する係合手段を設けておくことにより、アンカー材と固化材塊とを確実に一体化させることができ、その場合、請求項7記載の発明のように係合手段として螺旋翼を採用することにより、半固化状態となった固化材に対してアンカー材を支障なくねじ込むことができる。
【0023】
請求項8記載の発明によれば、ケーシングパイプの先端部に設ける固化材の流出口に逆止弁を設けておくことにより、圧入した固化材がケーシングパイプ内に逆流してしまうことを有効に防止でき、それにより固化材の圧入後に速やかにパッカーを撤去してアンカー材の挿入作業に速やかに移行することができる。
【0024】
請求項9記載の発明によれば、アンカー材の先端部に封止手段を設けておくことにより、アンカー材の挿入時やケーシングパイプの抜き取り時等に固化材がケーシングパイプを通して逆流することを有効に防止することができ、その場合において請求項10記載の発明のようにフランジ状のジョイント部材を封止手段として活用することにより自ずと充分な封止効果が得られて合理的である。
【0025】
請求項11記載の発明によれば、固化材として圧入時には充分な流動性と適度の粘性を有し、圧入後には自ずと固化するセメントモルタルあるいは可塑状ゲル剤を用いることにより、地盤に対して支障なく圧入できかつ最終的には自ずと充分な強度が発現し、しかも一般的な資材であるので安価に入手できるし施工性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態は、基本的には図13に示した従来のグランドアンカー工法におけるアンカー材4の施工方法と同様に、アンカー材4としてのPC鋼材(PC鋼棒ないしPC鋼線)の先端部を固化材5を介して地盤1に対して定着するものであるが、その際には固化材5の圧入により定着部の周囲の地盤1に対する締め固め工程を実施することを主眼とするものである。
【0027】
図1〜図7は本発明の第1実施形態を示すものである。
本第1実施形態においては、図1(一部破断図)に示すようなケーシングパイプ3を用いてまずこのケーシングパイプ3を地盤1中に設置する。このケーシングパイプ3は、その先端部(下端部)から固化材5を周囲の地盤1中に圧入することで地盤1を締め固めるための多数の流出口6が予め形成されていることを除いては、基本的に図13に示した従来のケーシングパイプ3と同様に構成されて同様に機能するものであり、従来と同様に泥水循環により地盤1中に設置されるものである。
【0028】
そのケーシングパイプ3を地盤1中に設置した後、図2に示すようにケーシングパイプ3内の先端部に固化材5の圧入空間7を形成するための上下2段のパッカー8(8A、8B)を装着する。それらパッカー8は、いずれも膨張収縮可能な柔軟な袋体9を主体とする周知のもので、袋体9を小さく折り畳んだ状態でそれらを流出口6の形成位置の上下に位置させて配置した後、注入管10を通して袋体9に水等の流体を加圧注入することで袋体9を展開膨張させてケーシングパイプ3の内面に押圧保持せしめることにより、それらパッカー8A、8Bの間に固化材5を加圧注入するための圧入空間7を形成する。
なお、上段側に装着するパッカー8Aは袋体9が環状とされていて、その中心部に下段側のパッカー8Bの注入管10と、圧入空間7に対して固化材5を加圧注入するための圧入管11を挿通させるようになっており、それら上下のパッカー8A、8Bと圧入管11とをケーシングパイプ3内に装着するためには、それらの全体を予め一体に組み付けておいてその全体を一括してケーシングパイプ3内に挿入すれば良い。
【0029】
次に、図3に示すように上記の圧入管11を通して圧入空間7内に固化材5を加圧注入する。固化材5としては、圧入時には充分な流動性と適度の粘性を有するとともに最終的には自ずと固化して充分な強度を発現する周知のグラウト材を用いれば良く、たとえばセメントモルタルや地盤改良材としての各種の可塑状ゲル剤(たとえば特開2003−105745号公報に開示されている可塑性グラウト等)が好適に採用可能である。
その固化材5を、地上部に設置した適宜の加圧注入手段(図示せず)から適宜の注入圧により圧入空間7に加圧注入すると、図3に示すように固化材5は各流出口6から流出して地盤1中に圧入されていくので、図4に示すように各流出口6から圧入された固化材5どうしが一体に連続するものとなるまで所望量の固化材5を圧入すれば、その体積相当分の土砂が自ずと外方に押圧されていき、そのような固化材5の圧入により周囲の地盤1に対する締め固め効果が得られて地盤1の密度および強度を自ずと高めることができる。
【0030】
以上の締め固め工程が完了した後、引き続いて固化材5が充分に固化してしまう前にアンカー材4の施工を行う。
すなわち、まず上下のパッカー8の袋体9内から注入管10を通して流体を排出して袋体9を収縮させ、図5に示すように双方のパッカー8および圧入管11を撤去する。なお、この際に固化材5が未だ完全な流動性を有していると、地盤1に圧入された固化材5がそのままケーシングパイプ3内に逆流してしまったり、ケーシングパイプ3内を上昇してしまうこともあるので、パッカー8の撤去はそのような逆流が生じない程度の固化が進行したタイミングで行うと良い。
【0031】
そして、図6に示すように、ケーシングパイプ3内にアンカー材4を挿入し、その先端部をケーシングパイプ3内の先端部に既に注入されている固化材5中に埋没させた後、図7に示すようにケーシングパイプ3を引き抜く。これにより、所定時間経過後にはアンカー材4の先端部の周囲において固化材5が完全に固化して固化材塊12が形成され、アンカー材4はその固化材塊12を介して地盤1に対して確実強固に定着されて優れた引き抜き耐力が確保される。
【0032】
なお、アンカー材4としては適宜のものが採用可能であるが、本実施形態では先端部に螺旋翼13を形成したPC鋼棒を用いており、その螺旋翼13を利用して固化がある程度進行した固化材5に対しても容易にねじ込むことができものとなっており、かつ固化材5が固化材塊12として完全に固化した後にはその固化材塊12とアンカー材4とが螺旋翼13によって確実に係合一体化して定着強度の増強にも寄与するものとなっている。
また、本実施形態におけるアンカー材4は、螺旋翼13を形成している先端部を単なるPC鋼棒からなる本体部に対してジョイント部材14を介して連結したものとなっているが、そのジョイント部材14は固化材5がケーシングパイプ3を通して上方に逆流してしまうことを防止するための封止手段を兼用するものとしている。すなわち、そのジョイント部材14としてはアンカー材4の外側にフランジ状に張り出す形状とされていて、その外径はケーシングパイプ3の内径よりもやや小さい程度とされ、図6に示したようにケーシングパイプ3内にアンカー材4が挿入された時点、および図7に示したようにケーシングパイプ3を抜き取る際には、完全には固化していない固化材5がそのジョイント部材14により封止されてケーシングパイプ3を通して上方に逆流してしまうことを有効を防止できるものとされている。
【0033】
以上で説明した本第1実施形態の施工方法によれば、固化材5をケーシングパイプ3の先端部からその周囲の地盤1に圧入して所望体積の固化材塊12を形成し、その固化材塊12にアンカー材4の先端部を一体に定着するようにしたので、図13に示した従来一般の施工方法により単にケーシングパイプ3内に注入充填した固化材5に対してアンカー材4を定着する場合に比較して遙かに引き抜き耐力を高めることができ、その結果、地盤1に対する定着長の削減やアンカー材4の所要本数の削減を図ることができる。
しかも、ケーシングパイプ3の先端部からの地盤1への固化材5の圧入によりアンカー材4の施工に先立って原地盤に対して締め固めを行うので、その締め固め効果により原地盤の密度および強度の増強効果が得られ、それによっても引き抜き耐力の向上を図ることができ、特に軟弱地盤に適用する場合に好適である。
勿論、本実施形態の施工方法は地盤1をいわば静的に締め固めるものであって、特許文献1に示される従来工法のように地盤中に高圧ジェット水を噴射して破壊的な拡径を行うものではないから原地盤を乱すことは少ないし、仮にケーシングパイプ3の設置の際に泥水循環により原地盤が乱されたような場合であってもその後の固化材5の圧入による締め固め工程によりそれを補償して地盤1の密度および強度を回復させることができ、構造的な安全性や信頼性を充分に高めることができる。
【0034】
次に、図8〜図11を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
上記第1実施形態では最終的にはケーシングパイプ3を引き抜くものとしたが、本第2実施形態ではケーシングパイプ3を引き抜くことなくそのまま残置してケーシングパイプ3にも引き抜き耐力の一部を負担させるものとしている。そのため、本第2実施形態では、図8に示すようにケーシングパイプ3の外周面に螺旋翼15を予め形成しておき、その螺旋翼15を利用してケーシングパイプ3を地盤1中にねじ込むとともに、最終的にはその螺旋翼15を固化材塊12に対する係合手段として利用してケーシングパイプ3と固化材塊12とを螺旋翼15を介して強固に係合一体化させるものとしている。なお、図8は一部破断図であるので螺旋翼15の図示も一部省略しているが、螺旋翼15はケーシングパイプ3の外周面に連続的に形成されているものである。
【0035】
本第2実施形態では、上記の第1実施形態と同様に、図9に示すように圧入空間7の上下にパッカー8(8A、8B)を装着して圧入管11から地盤1中に固化材5を圧入して地盤1に対する締め固めを行った後、図10に示すようにパッカー8および圧入管11を撤去し、図11に示すようにケーシングパイプ3内にアンカー材4を挿入し、ケーシングパイプ3の内外において固化材5が固化して固化材塊12が形成されれば施工完了となる。なお、図示しているように下段のパッカー8Bの袋体9は残置して埋め殺すことで差し支えないが、上段のパッカー8Aや圧入管11とともに撤去することでも勿論良い。
【0036】
本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られることに加え、ケーシングパイプ3を残置することでその抜き取り作業が不要であるので施工性に優れ、しかもケーシングパイプ3と固化材塊12とが螺旋翼15を介して確実に係合一体化するので引き抜き耐力をより一層増強することが可能である。
【0037】
なお、本第2実施形態においては、ケーシングパイプ3内において固化した固化材5とケーシングパイプ3とはそれらの付着力により自ずと充分に一体化するが、必要に応じてケーシングパイプ3の内周面にも突起等の適宜の係合手段を設けておくか、あるいはケーシングパイプ3として内面突起付きの鋼管(たとえば内面に縞鋼板状の凹凸加工を施したもの)を用いることにより、ケーシングパイプ3とその内部の固化材5との一体化強度をより高めることができる。
【0038】
以上で本発明の第1実施形態および第2実施形態を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でたとえば以下に列挙するような様々な変形や応用が可能である。
【0039】
上記各実施形態ではいずれもケーシングパイプ3の周面に単なる開口(孔)を形成することでそれを流出口6としたが、そこに適宜の逆止弁を設けることも考えられる。
すなわち、上記各実施形態では周囲の地盤1に固化材5を圧入して締め固めを行った後には、その固化材5がケーシングパイプ3内に逆流してしまうことを防止するために固化がある程度進行するまでは圧力を維持する必要があり、したがってパッカー8の撤去はそれまで待機する必要があるが、流出口6に逆流を防止するための逆止弁を設けておけば自ずと圧力が維持されるからパッカー8の撤去を早期に行うことが可能となり、それに伴い、第1実施形態の場合には固化材5が固化し過ぎない早期の段階でケーシングパイプ3を抜き取ることが可能となる。
その逆止弁としては、流出口6の外側に弁体を外方に向かって開くように取り付け、その弁体が固化材5の圧入時には自ずと外方に自由に開かれ、逆流が生じる事態となった際には流出口6が弁体により自ずと塞がれる構成のものが考えられるが、あるいは地上部から開閉操作するシャッタの如き構成の逆止弁を設けておくことも考えられる。
【0040】
上記各実施形態では、ケーシングパイプ3内に圧入空間7を形成するためのパッカー8として袋体9を膨張収縮させる構成のものを用いたが、それに限るものではなく、ケーシングパイプ3内に容易に装着できかつ容易に撤去できるものであれば適宜の構成のものを任意に採用可能である。なお、第2実施形態において下段側のパッカー8Bを撤去せずに埋め殺してしまう場合には、格別のパッカーを用いることに代えて、たとえばモルタルをケーシング底部に直接的に充填して硬化させてしまうことでも良い。
【0041】
上記各実施形態においてはアンカー材4の先端部に固化材塊12に対する係合手段としての螺旋翼13を設けたが、アンカー材4と固化材塊12とが自ずと充分に係合一体化する場合には係合手段は必ずしも設けることはないし、係合手段を設ける場合にもその形態は上記実施形態のような螺旋翼13に限らず任意であり、ケーシングパイプ3内へのアンカー材4の挿入の傷害とならないものであればたとえば単なる突起状のものでも良い。さらに螺旋翼を設ける場合にも、上記各実施形態のように一例の連続した螺旋翼13とすることに限らず要所に断続的に設けるものであっても良い。
【0042】
上記の第2実施形態においてはケーシングパイプ3の外周面に係合手段としての螺旋翼15を設けたが、ケーシングパイプ3と地盤1との間で充分な付着力が確保できる場合には係合手段は必須ではないし、係合手段を設ける場合にもケーシングパイプ3の地盤1への設置の傷害とならないものである限りにおいてその形態は螺旋翼15に限らず任意である。また、上記第1実施形態においてもケーシングパイプ3に第2実施形態と同様に係合手段としての螺旋翼15を設けておいて、ケーシングパイプ3を設置する際に地盤1中にねじ込んでいき、ケーシングパイプ3を引き抜く際には逆方向に回転させて抜き取ることも考えられる。
【0043】
上記各実施形態ではアンカー材4としてPC鋼棒を用いたが、アンカー材4は充分な引き抜き耐力を有するものであれば良く、PC鋼棒に代えてPC鋼線を用いることはもとより、たとえばPC鋼線の先端に螺旋翼13付きのPC鋼棒を上記のようなジョイント部材14により連結して用いることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態を示すもので、ケーシングパイプの先端部を示す図(一部破断図)である。
【図2】同、ケーシングパイプ内にパッカーを装着した状態を示す図(一部破断図)である。
【図3】同、固化材の圧入による締め固め工程を開始した状態を示す図(一部破断図)である。
【図4】同、固化材の圧入による締め固め工程を示す図(一部破断図)である。
【図5】同、締め固め工程完了後にパッカーを撤去した状態を示す図(一部破断図)である。
【図6】同、アンカー材の挿入工程を示す図(一部破断図)である。
【図7】同、ケーシングパイプの抜き取り工程を示す図(一部破断図)である。
【図8】本発明の第2実施形態を示すもので、ケーシングパイプの先端部を示す図(一部破断図)である。
【図9】同、固化材の圧入による締め固め工程を示す図(一部破断図)である。
【図10】同、締め固め工程が完了した状態を示す図(一部破断図)である。
【図11】同、アンカー材の挿入工程を示す図(一部破断図)である。
【図12】グランドアンカー工法の概要を示す図である。
【図13】従来のアンカー材の施工方法の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 地盤
2 構造物
3 ケーシングパイプ
4 アンカー材
5 固化材
6 流出口
7 圧入空間
8(8A、8B) パッカー
9 袋体
10 注入管
11 圧入管
12 固化材塊
13 螺旋翼(係合手段)
14 ジョイント部材(封止手段)
15 螺旋翼(係合手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして該構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、
先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、
ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記2段のパッカーをいずれも撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させてケーシングパイプを引き抜くことにより、
前記アンカー材の先端部を、地盤中に圧入して固化させた固化材塊を介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項2】
構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、
先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、
ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記上段のパッカーを撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させることにより、
前記アンカー材の先端部を、ケーシングパイプの先端部の内外に圧入されて固化した固化材塊およびケーシングパイプを介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項3】
請求項2記載の施工方法において、
ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に、該ケーシングを固化材塊に対して係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項4】
請求項3記載の施工方法において、
ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に設ける係合手段を、該ケーシングパイプを地盤中にねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の施工方法において、
ケーシングパイプの少なくとも先端部の内周面に、圧入空間に圧入されて固化する固化材を一体に係合するための係合手段としての突起を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の施工方法において、
アンカー材の先端部の外周面に、圧入空間に圧入された固化材に対して一体に係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項7】
請求項6記載の施工方法において、
アンカー材の先端部の外周面に設ける係合手段を、圧入空間に圧入されている固化材に対してねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の施工方法において、
ケーシングパイプの先端部に予め設けた流出口には、該流出口から流出させた固化材がケーシングパイプ内に逆流することを防止するための逆止弁を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の施工方法において、
ケーシングパイプ内に挿入するアンカー材の先端部には、圧入空間に圧入した固化材がケーシングパイプを通して上部に逆流することを防止するための封止手段を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項10】
請求項9記載の施工方法において、
アンカー材の先端部に設ける封止手段としてアンカー材の本体部と先端部とを連結するジョイント部材を兼用し、該ジョイント部材をアンカー材の外周側にフランジ状に張り出す状態で設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の施工方法において、
圧入空間内に加圧注入して流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固めるための固化材として、圧入時には流動性を有し圧入後には自ずと固化するセメントモルタルもしくは可塑状ゲル剤を用いることを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項1】
構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして該構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、
先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、
ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記2段のパッカーをいずれも撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させてケーシングパイプを引き抜くことにより、
前記アンカー材の先端部を、地盤中に圧入して固化させた固化材塊を介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項2】
構造物をアンカー材により地盤に対してアンカーして構造物の浮き上がりや転倒を防止するためのグランドアンカー工法に適用されて、前記アンカー材の先端部を地盤に対して定着するためのアンカー材の施工方法であって、
先端部に固化材の流出口を予め設けたケーシングパイプを地盤中に設置し、該ケーシングパイプの先端部に固化材の圧入空間を形成するための上下2段のパッカーを装着して、該圧入空間内に固化材を加圧注入することにより、該固化材を前記流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固める締め固め工程を実施した後、
ケーシングパイプ内およびその周囲の地盤中に圧入した固化材が固化する以前に、前記上段のパッカーを撤去するとともに、ケーシングパイプ内にアンカー材を挿入してその先端部を固化材中に埋没させることにより、
前記アンカー材の先端部を、ケーシングパイプの先端部の内外に圧入されて固化した固化材塊およびケーシングパイプを介して、前記締め固め工程により締め固めた地盤に対して定着することを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項3】
請求項2記載の施工方法において、
ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に、該ケーシングを固化材塊に対して係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項4】
請求項3記載の施工方法において、
ケーシングパイプの少なくとも先端部の外周面に設ける係合手段を、該ケーシングパイプを地盤中にねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の施工方法において、
ケーシングパイプの少なくとも先端部の内周面に、圧入空間に圧入されて固化する固化材を一体に係合するための係合手段としての突起を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の施工方法において、
アンカー材の先端部の外周面に、圧入空間に圧入された固化材に対して一体に係合させるための係合手段を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項7】
請求項6記載の施工方法において、
アンカー材の先端部の外周面に設ける係合手段を、圧入空間に圧入されている固化材に対してねじ込むための螺旋翼として設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の施工方法において、
ケーシングパイプの先端部に予め設けた流出口には、該流出口から流出させた固化材がケーシングパイプ内に逆流することを防止するための逆止弁を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の施工方法において、
ケーシングパイプ内に挿入するアンカー材の先端部には、圧入空間に圧入した固化材がケーシングパイプを通して上部に逆流することを防止するための封止手段を予め設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項10】
請求項9記載の施工方法において、
アンカー材の先端部に設ける封止手段としてアンカー材の本体部と先端部とを連結するジョイント部材を兼用し、該ジョイント部材をアンカー材の外周側にフランジ状に張り出す状態で設けておくことを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の施工方法において、
圧入空間内に加圧注入して流出口から周囲の地盤中に圧入することにより地盤を締め固めるための固化材として、圧入時には流動性を有し圧入後には自ずと固化するセメントモルタルもしくは可塑状ゲル剤を用いることを特徴とするグランドアンカー工法におけるアンカー材の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−205079(P2007−205079A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26770(P2006−26770)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]