グリシニンに富みかつβ−コングリシニンに富む植物タンパク質画分
本発明は、機能食品成分として使用するのに適した植物タンパク質画分、機能食品成分として使用するのに適した新規な植物タンパク質、および新規な植物タンパク質画分を含有する食品を調製する方法に関する。一実施形態では、タンパク質画分は40重量%〜80重量%のβ−コングリシニンを含む。別の実施形態では、タンパク質画分は50重量%〜95重量%のグリシニンを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能食品成分として使用するのに適した植物タンパク質画分、機能食品成分として使用するのに適した新規な植物タンパク質画分、および新規な植物タンパク質画分を含有する食品を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物タンパク質材料は機能食品成分として使用され、食品中の望ましい特性を増強する上で多数の用途を有する。ダイズタンパク質材料は、特に機能食品成分として広範な用途を持つ。ダイズタンパク質材料は、フランクフルトソーセージ、ソーセージ、ボローニャソーセージ、挽肉および細切れ肉、およびミートパティーをはじめとする肉の中で乳化剤として使用されて、肉を結合し、肉に良好なテクスチャおよびしっかりした噛み心地を与える。機能食品成分としてのダイズタンパク質材料の別の一般的な用途は、クリームスープ、グレービー、およびヨーグルト中におけるもので、ダイズタンパク質材料は増粘剤として作用し、食品にクリーム状の粘度を提供する。ダイズタンパク質材料はまた、ディップ、乳製品(例えば豆乳)、ツナ、パン、ケーキ、マカロニ、糖菓、ホイップトッピング、焼き菓子、飲料(例えば果汁)などの多数のその他の食品中、および多くのその他の用途で機能食品成分としても使用される。
【0003】
ダイズタンパク質材料は、一般にダイズフレーク、ダイズタンパク質濃縮物、またはダイズタンパク質単離物の形態である。ダイズフレークは、一般にダイズを脱皮、脱脂、および粉砕して製造され、典型的に無水ベースで65重量%未満のダイズタンパク質(より一般には無水ベースで45重量%〜65重量%のダイズタンパク質)を含有する。ダイズフレークはまた、可溶性炭水化物、ダイズ繊維などの不溶性炭水化物、およびダイズに固有の脂肪も含有する。ダイズフレークは、例えばヘキサンでの抽出によって脱脂してもよい。ダイズ粉、ダイズグリッツ、およびダイズミールは、ハンマーミルまたは空気ジェットミルなどの粉砕および製粉装置内で、フレークを所望の粒度に粉砕して脱脂ダイズフレークから製造される。粉砕された材料は、典型的に乾式加熱で熱処理し、または湿式加熱で蒸して粉砕フレークを「トースト」して、クニッツトリプシン阻害物質などのダイズ中に存在する抗栄養素を不活性化する。顕著な量の水の存在下で粉砕脱脂フレークを加熱処理することは、材料中のダイズタンパク質の変性を防止し、ダイズ材料への水の添加および除去に伴うコストを回避するために避けられる。得られた粉砕熱処理材料は、材料の平均粒度次第で、ダイズ粉、ダイズグリッツ、またはダイズミールである。ダイズ粉は、一般に150μm未満の粒度を有する。ダイズグリッツは一般に150〜1000μmの粒度を有する。ダイズミールは、一般に1000μmを超える粒度を有する。
【0004】
ダイズタンパク質濃縮物は、典型的に65重量%〜85重量%のダイズタンパク質を含有し、主要な非タンパク質構成要素は繊維である。ダイズタンパク質濃縮物は、フレークをアルコール水溶液または酸性水溶液のいずれかで洗浄し、タンパク質および繊維から可溶性炭水化物を除去して、脱脂ダイズフレークから形成してもよい。工業規模では、生じる廃液流の取り扱いおよび廃棄に相当な経費がかかる。
【0005】
より高度に精製されたダイズタンパク質材料であるダイズタンパク質単離物は、少なくとも90%のダイズタンパク質と、微量のまたは皆無の可溶性炭水化物または繊維を含有するように処理される。ダイズタンパク質単離物は、典型的にアルカリ性水性抽出剤で、脱脂ダイズフレークまたはダイズ粉からダイズタンパク質および水溶性炭水化物を抽出して形成される。水性抽出物は、可溶性タンパク質および可溶性炭水化物と共に、主に繊維である抽出物中で不溶性の材料から分離される。次に抽出物を酸で処理して抽出物のpHをタンパク質の等電点に調節し、抽出物からタンパク質を沈殿させる。可溶性炭水化物を保持する抽出物から沈殿タンパク質を分離し、中性pHに調節した後に乾燥させ、またはpH調節なしに乾燥させる。
【0006】
ダイズタンパク質は、挽肉および乳化肉製品のテクスチャに貢献するゲル化特性を提供する。ゲル構造は、調理肉エマルジョンに寸法安定性を提供し、それは調理肉エマルジョンにしっかりしたテクスチャを与え、調理肉エマルジョンに噛み応えを与え、ならびに水分および脂肪を保持するためのマトリックスを提供する。ダイズタンパク質は表面活性であり、油水界面に集合して脂肪および油滴の合体を阻害するので、ダイズタンパク質はまた、様々な食物用途において乳化剤としても機能する。ダイズタンパク質の乳化特性は、ダイズタンパク質含有材料を使用してスープおよびグレービーなどの食品を増粘するのを可能にする。ダイズタンパク質は、さらにおそらくはその乳化特性の機能として脂肪を吸収し、調理食物中の脂肪結合を促進することで調理方法中の脂肪の「脂肪分離」を低下させる。ダイズタンパク質はまた、水を吸収してそれを完成食品中に保持するように機能する。ダイズタンパク質材料の水分保持を利用して肉製品中の水分の調理損失を低下させ、肉の調理重量に収率増大を提供してもよい。完成食品中の保持水はまた、製品により柔らかい食感を提供するのに有用である。
【0007】
自然発生的ダイズタンパク質は、一般に親水性シェルに囲まれた疎水性コアを有する球形タンパク質である。例えばグリシニンおよびβ−コングリシニンなどの貯蔵タンパク質、およびボーマン−バーク阻害物質およびクニッツ阻害物質などのトリプシン阻害物質のような多数のダイズタンパク質画分が同定されている。また、ダイズタンパク質画分は、それらのスベドベリ係数(S)でのそれらの超遠心分離速度を特徴とする。2S、7S(すなわちβ−コングリシニン)、11S(すなわちグリシニン)、および15Sダイズタンパク質が同定されている。
【0008】
タンパク質画分(例えばβ−コングリシニンに富むまたはグリシニンに富む画分)が、pH4.0から5.0でダイズタンパク質材料溶液から沈殿されている。沈殿範囲全体で水溶性のままであるタンパク質は、一般にホエータンパク質と称される。
【0009】
タンパク質画分を分画するための様々な方法について、当該技術分野で述べられている。ハワード(Howard)らに付与された米国特許第4,368,151号明細書は、水溶性塩および亜硫酸イオンの存在下、pH5.8〜6.3で11Sタンパク質を沈殿させることで、水溶性7S(β−コングリシニン)および11S(グリシニン)タンパク質の水性混合物が分画され単離される方法について述べている。次に濃縮7SホエーのpHをpH5.3〜5.8に調節して、ホエーから実質的に全ての残留水溶性11Sタンパク質を沈殿させてもよく、次に濃縮7S画分をホエーから回収してもよい。分画は、それぞれ5%未満の7Sまたは11Sタンパク質不純物を含有する、11Sに富む単離物または7Sに富む単離物のいずれかを生成できると述べられている。
【0010】
ナガノ(Nagano)ら(J.Agric.Food Chem.、1992年、40巻、p.941〜944頁)は、pH7.5の水を使用してダイズタンパク質が抽出される方法について述べ、亜硫酸水素ナトリウムが還元剤として使用され、pH6.4、5.0、および4.8で3つのタンパク質画分が沈殿する。
【0011】
ウ(Wu)ら(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁)は、ナガノ(Nagano)ら(J.Agric.Food Chem.、1992年、40巻、941−944頁)が述べるのと類似した、グリシニンおよびβ−コングリシニンを分離するための実験室法のスケールアップについて述べている。ウ(Wu)らが述べる方法では、15kgの脱脂ダイズフレークを使用し、pH6.4、5.0、および4.8での沈殿ステップを実施して、グリシニンに富む画分、中間体画分、およびβ−コングリシニンに富む画分を生成する。
【0012】
ウ(Wu)ら(J.Agric.Food Chem.、2000年、48巻、2702〜2708頁)は、中間体混合物の沈殿なしにグリシニンに富む画分がpH6.0で沈殿し、β−コングリシニンに富む画分がpH4.5で沈殿する、スケールアップされた方法の修正について述べている。ウ(Wu)らは、この方法によるグリシニンに富む画分の収率が9.7%(無水ベース、db)で、β−コングリシニンに富む画分の収率が19.6%(db)であると報告した。β−コングリシニンに富む画分のタンパク質含量は、62.6%純度で91.6%(db)であると報告された。
【0013】
上の方法またはその他の方法に従って得られたβ−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分は、様々な機能性を示すことが多く、それらを様々な食品への組み込みに適切にすることが多い。
【0014】
例えばビアン(Bian)ら(JAOCS、2003年、80巻、6号、545〜549頁)は、ウ(Wu)ら(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁)およびウ(Wu)ら(J.Agric.Food Chem.、2000年、48巻、2702〜2708頁)の方法によって分画されるダイズタンパク質の機能特性について調査した。ウ(Wu)ら(JAOCS、1999、76巻、3号、285〜293頁)の方法によって生成される3つの画分(β−コングリシニンに富む、グリシニンに富む、および中間体画分)の機能特性は、ビアン(Bian)らによって選択されたpH範囲、イオン強度、およびタンパク質濃度下で研究された。例えばpH2〜3ではグリシニンに富む画分がβ−コングリシニンに富む画分より溶解性が高いと報告され、一方pH5〜6では、β−コングリシニンに富む画分がグリシニンに富む画分よりも溶解性が高いと報告された。ウ(Wuら)の方法(J.Agric.Food Chem.、2000年、48巻、2702〜2708頁)のグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分は、特定のpHで、ウ(Wuら)の方法(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁)によって生成する画分よりも高い溶解性を有すると報告される。
【0015】
ブリンジ(Bringe)らは、米国特許第6,171,640号明細書で、市販のダイズタンパク質成分と比べて改善された物理的(例えば安定性およびゲル化)および生理学的(例えばコレステロールおよびトリグリセリド低下)特性を有する高β−コングリシニン組成物について述べている。ブリンジ(Bringe)らは、40%を超えるβ−コングリシニンおよび10%未満のグリシニンを含有するダイズタンパク質組成物について報告した。
【0016】
上述の方法の1つ以上(例えばウ(Wu)ら(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁))において、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分の沈殿間に沈殿する画分(すなわち中間体画分)は、典型的に80%未満のタンパク質を含有し、その内70%未満がグリシニンまたはβ−コングリシニンである。このような中間体画分は、典型的に機能性不良を示し、それらを食品への組み込みに不適切にする。それらの望ましくない機能性特性に加えて、中間体画分のタンパク質含量は、典型的に有用なタンパク質画分の収率に悪影響を及ぼす。
【0017】
上述の各方法には、例えば望ましくない収率、望ましくない純度、または望ましくない中間体画分生成などの1つ以上の欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがってタンパク質画分、特に改善された機能性および/または特定の食物用途に適した機能性を示すタンパク質画分を生成する、簡単で効果的な方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって簡単に述べると、本発明は、それぞれ第1の沈殿および第2の沈殿中で調製される、グリシニンに富むタンパク質画分およびβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を調製する方法に関するものである。第1の沈殿中では、液体媒体中のダイズタンパク質分散体のpHを5.3未満に調節して、分散体からグリシニンに富む画分を沈殿させ、β−コングリシニンを含む上清液体媒体を形成する。分散体は0.04〜0.07のイオン強度を有し、グリシニンに富む画分は、グリシニンに富む画分の全タンパク質含量を基準にして、少なくとも50重量%グリシニンのタンパク質含量を有する。方法は、上清液体媒体からグリシニンに富む画分を分離するステップをさらに含む。第2の沈殿中では、β−コングリシニンに富む画分が上清液体媒体から沈殿する。β−コングリシニンに富む画分は、β−コングリシニンに富む画分の全タンパク質含量を基準にして、少なくとも40重量%のβ−コングリシニンおよび10重量%〜25重量%のグリシニンを含む。
【0020】
本発明はまた、液体媒体中で二価の金属イオン源をダイズタンパク質を含む分散体に投入する、グリシニンに富むタンパク質画分およびβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を調製する方法に関するものである。この方法に従って、グリシニンに富む画分が分散体から沈殿され、β−コングリシニンを含む上清液体媒体が形成されて、グリシニンに富む画分が上清液体媒体から分離する。β−コングリシニンに富む画分は、上清液体媒体から沈殿する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、画分の全タンパク質含量を基準にして40重量%〜80重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含む、植物タンパク質画分に関するものである。タンパク質画分は、少なくとも80%の窒素溶解指数をさらに特徴とする。
【0022】
さらに別の実施形態では、本発明は画分の全タンパク質含量を基準にして、50重量%〜95重量%のグリシニンを含む植物タンパク質画分に関するものである。タンパク質画分は、80%未満の窒素溶解指数をさらに特徴とする。
【0023】
本発明はまた、水、食用油、および少なくとも10重量%の植物タンパク質を含む粘性塊を含む肉代用品に関するものであり、植物タンパク質は、肉代用品の全タンパク質含量を基準にして、少なくとも40重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含む、植物タンパク質画分を含む。肉代用品は、タンパク質1gあたり少なくとも800gの油の乳化能力をさらに特徴とする。
【0024】
本発明のその他の目的および特徴は、ある程度明らかであり、ある程度下で指摘される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
ダイズタンパク質材料を含有する溶液または分散体から、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を得るための方法が発見された。このような方法に従って、溶液または分散体からグリシニンに富む画分を沈殿させ、画分を分離し、上清からβ−コングリシニンに富む画分を沈殿させてもよい。得られるグリシニンに富む画分は、典型的に少なくとも80%のタンパク質を含有し、その内50%〜95%がグリシニンである。本発明の方法によって得られるβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に少なくとも80重量%のタンパク質を含有し、その内40%〜80%がβ−コングリシニンである。特定の実施形態では、二価の金属イオン源を分散体に投入し、片方または双方の画分の沈殿を促進する。
【0026】
本発明のタンパク質画分は、それらを様々な食品中で機能食品成分として使用するのに適したものにする機能性を示す。様々なグリシニンおよび/またはβ−コングリシニン含量を有する画分は、例えば溶解性およびゲル強度をはじめとする異なる機能性を示すことが観察されている。したがって特定のグリシニンおよび/またはβ−コングリシニン含量を有する画分は、特定の用途に好ましいかもしれない。例えばより高いグリシニン含量(例えば画分の全タンパク質含量を基準にして10%を超えるグリシニン)を有するβ−コングリシニンに富む画分は、典型的により低い量のグリシニンを含有する画分よりも高いゲル強度を示し、これは肉製品では重要な検討材料である。したがってこのようなβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に肉製品への組み込みに好ましい。画分の様々な機能性および画分の好ましい用途を下でより詳細に考察する。
【0027】
有利なことに特定の実施形態では、本発明の方法が行われて、上述のように、それぞれが比較的高いタンパク質含量を含有し、特定のタンパク質(例えばグリシニンまたはβ−コングリシニン)が濃縮されて、食品への組み込みに適する画分を提供する2つの連続的沈殿が含まれる。したがって本発明の方法を行って、望ましくない中間体画分の形成を回避しながら、食物用途への組み込みに適する2つの画分を生成できる。
【0028】
本発明の方法に従って、一般に水性媒体(例えば水)中に懸濁するかまたは別の様式で分散する植物タンパク質材料を含むダイズタンパク質含有分散体(すなわち供給流)からタンパク質画分が沈殿する。植物タンパク質材料は、典型的にダイズフレーク、ダイズグリッツ、ダイズミール、ダイズ粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、またはそれらの組み合わせの形態である。好ましくはダイズタンパク質材料は、脱脂ダイズフレークの形態である。分散体は、典型的に5重量%〜15重量%のダイズタンパク質材料、より典型的には7重量%〜10重量%のダイズタンパク質材料を含有する。
【0029】
図1は、脱脂ダイズフレークの水性分散体から、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分が得られる本発明の方法の一実施形態を示す。
【0030】
グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分の分離に先だって、ダイズタンパク質とその他の可溶性構成要素(例えば炭水化物)との粗製混合物を出発原料分散体から直接に、または水性分散体のpHを調節することで、調製(例えば抽出)してもよい。タンパク質材料を含む分散体のpHは、典型的にpH7〜10、より典型的にはpH8〜9に調節される。分散体のpHは、分散体とアルカリ性混合物とを接触させて調節される。典型的にアルカリ性混合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、および水酸化カリウムよりなる群から選択される化合物を含む。
【0031】
可溶性タンパク質およびその他の構成要素の抽出は、典型的に15℃〜60℃(60°F〜140°F)、より典型的には20℃〜40℃(70°F〜100°F)の温度で実施される。この抽出を典型的に少なくとも5分、より典型的に10〜30分続行する。
【0032】
可溶性タンパク質およびその他の構成要素の抽出は、グリシニン、β−コングリシニン、およびその他の可溶性構成要素(例えば可溶性炭水化物)を含む抽出物、およびそれからタンパク質が除去された使用済み材料(例えばダイズ繊維)を含む不溶性画分をもたらす。
【0033】
不溶性画分は、典型的に例えばペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラベル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機を使用して、遠心処理によって抽出物から分離される。不溶性画分はまた、濾過によって抽出物から分離してもよい。
【0034】
分離抽出物は、典型的に少なくとも4重量%のタンパク質、より典型的には6重量%〜8重量%のタンパク質を含む。分離抽出物は、一般に全タンパク質含量を基準にして少なくとも40%のグリシニン、および少なくとも20%のβ−コングリシニンを含む。
【0035】
タンパク質のジスルフィド結合の還元によって、グリシニンおよびβ−コングリシニン分離を容易にするために、還元剤を分離抽出物(すなわち抽出物)に添加できる。ジスルフィド結合の還元は、グリシニンとβ−コングリシニンタンパク質のもつれをほどくことによって、この分離を容易にするものと現在考えられている。グリシニンは典型的により大きな比率のジスルフィド結合を含有するので、グリシニンに富む画分の沈殿のための抽出物pHの調節に先だって、還元剤が好ましくは添加される。適切な還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム、ジチオスレイトール、およびメルカプトエタノールが挙げられる。重亜硫酸ナトリウムが当該食物等級規定を満たすことから、好ましくは還元剤は重亜硫酸ナトリウムを含む。
【0036】
典型的に1Lの抽出物あたり少なくとも0.1gの還元剤、より典型的には1Lの抽出物あたり0.1〜1.0gの還元剤、なおもより典型的には1Lの抽出物あたり0.2〜0.6gの還元剤が投入される。このような量の還元剤の投入は、典型的に本発明によって生成する食品への組み込みのための植物タンパク質画分中に、適切な還元剤含量(例えば100ppm未満)をもたらす。好ましくは植物画分中の還元剤濃度が100p.m.未満、より好ましくは20ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満であるような量で、あらゆる還元剤が添加される。
【0037】
本方法に従って、それに対する還元剤の投入に関係なく、抽出物のpHは調節されてグリシニンに富む画分が沈殿する。抽出物のpHは、典型的に塩酸、リン酸、および硫酸よりなる群から選択される化合物を含む酸性混合物を投入して調節される。好ましくは抽出物のpHは、塩酸を含む酸性混合物の投入によって調節される。
【0038】
抽出物のpHが低下するにつれて、グリシニン沈殿に好都合になり、それによってグリシニンに富む画分の純度、ひいてはβ−コングリシニンに富む画分の沈殿が増大することが観察されている。典型的にグリシニンに富む画分の沈殿のために、抽出物のpHは、7.5から6.5未満のpH、7.5から6.0未満のpH、7.5から5.5に調節される。例えば抽出物のpHは、pH7.5からpH5.3未満、実施形態によってはpH5.2未満に調節されてもよい。
【0039】
本発明の方法に従って、抽出物への二価の金属イオンの添加が、タンパク質画分の分離を増強することが発見された。図2は、脱脂ダイズフレークから得られた抽出物への二価の金属イオン源の添加を組み込んだ、本発明の方法の実施形態を示す。この好ましい効果は、ある程度、抽出物のイオン強度に対するこのようなイオン添加の効果のためであると現在考えられている。好ましくは抽出物のイオン強度は、0.02〜0.1、より好ましくは0.04〜0.07である。より低いイオン強度(すなわち0.02未満)ではいずれのタンパク質画分も沈殿せず、一方より高いイオン強度(すなわち0.1を超える)では、グリシニンおよびβ−コングリシニン画分の双方が沈殿する傾向があり、いずれの場合も特定のタンパク質に富む画分を提供できないことが観察されているので、抽出物のこのようなイオン強度を提供することは好ましい。
【0040】
特定の実施形態では、グリシニンに富む画分の沈殿に先だつ抽出物への二価の金属イオンの添加は、より均一の粒度を有するグリシニンに富む画分を提供し、さらに有利なことには、二価の金属イオン不在下で生成される沈殿物と比べて沈殿タンパク質の平均粒度を増大させる。典型的に二価の金属イオンの添加は、粒径で1μm〜52μmの粒度分布を有するグリシニンに富む画分をもたらす。より典型的には、粒度分布は2μm〜16μmである。二価の金属イオン存在下で沈殿するグリシニンに富む画分の沈殿タンパク質の平均粒度は、粒径で典型的に少なくとも5μmであり、より典型的には少なくとも6μmである。粒度分布のより大きな均一性、および全体的粒度の増大を達成することは、グリシニンに富む画分の分離を助ける。
【0041】
適切な二価の金属イオン源としては、例えばカルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩が挙げられる。好ましい実施形態では、二価の金属イオン源はCaCl2、別の実施形態ではMgCl2を含む。
【0042】
典型的に二価の金属イオン源は、少なくとも0.01モル濃度の濃度で抽出物中に存在する。さらに、または代案としては、二価の金属イオン源は、少なくとも0.5重量%の濃度で抽出物中に存在する。なおさらに、または代案としては、1Lの抽出物あたり少なくとも0.001gの二価の金属イオン源がそこに投入される。
【0043】
二価の金属イオンを抽出物に投入する場合、抽出物からのグリシニンに富む画分の沈殿のために、抽出物のpHは典型的に、pH6.5からpH5.3未満に調節され、より典型的にはpH6.5からpH5.0に調節される。
【0044】
この様式で抽出物のpHを調節することで、不溶性のグリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンを含む可溶性画分が生じる。グリシニンに富む画分の沈殿は、典型的に15℃〜35℃(60°F〜95°F)、より典型的には20℃〜32℃(70°F〜90°F)の温度で実施される。可溶性タンパク質の沈殿中に、典型的に抽出物は撹拌される。典型的に抽出物はかき混ぜによって撹拌される。撹拌の手段および強度は重要でないが、典型的に均一のpHおよび水性相から固相へのタンパク質の移動を促進するのに十分な程度に、抽出物が撹拌されるように選択される。
【0045】
グリシニンに富む画分の沈殿によって生じる上清は、典型的に少なくとも3.5重量%のタンパク質、より典型的には少なくとも5重量%のタンパク質、さらにより典型的には5重量%〜7重量%のタンパク質を含む。
【0046】
上清のpHは、典型的に塩酸、リン酸、および硫酸よりなる群から選択される化合物を含む酸性混合物を上清に投入することで調節され、β−コングリシニンに富む画分が沈殿する。好ましくは上清のpHは、塩酸の添加によって調節される。
【0047】
典型的に上清のpHは、グリシニン沈殿pHから4.5〜5.3に、より典型的には4.6〜5.0に調節され、β−コングリシニンに富む画分を含むタンパク質カードが沈殿する。β−コングリシニンに富む画分の沈殿はまた、グリシニンおよびβ−コングリシニン沈殿の全pH範囲にわたり可溶性であるホエータンパク質を含む上清混合物を形成する。特定の実施形態では、これらの可溶性タンパク質およびその他の構成要素を回収することが所望されるかもしれない。
【0048】
沈殿したグリシニンおよびβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に例えばペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラベル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster、PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機を使用して、遠心分離によってそれぞれの可溶性画分から分離される。沈殿した画分は、濾過によって分離してもよい。
【0049】
有利なことに、本発明の方法は連続的に実行してもよい。すなわちひとたびグリシニンに富む画分がダイズタンパク質材料含有する溶液または分散体から沈殿して、画分および上清が生成すると、上清からのβ−コングリシニンに富む画分の沈殿および回収を上述の考察に従って継続しながら、グリシニンに富む画分を回収してさらに処理(例えば遠心処理およびタンパク質含量測定)を施してもよい。
【0050】
本発明のグリシニンに富む画分は、一般に少なくとも80重量%のダイズタンパク質、より一般には少なくとも90重量%のダイズタンパク質を含む。ダイズタンパク質材料のタンパク質含量は、例えばその内容全体を参照によって本願明細書に援用したものとする、A.O.C.S.(米国油化学会)公定法Bc 4−91(1997)、Aa 5−91(1997)、またはBa 4d−90(1997)によって確認してもよい。
【0051】
本発明の方法は、高純度(すなわち高グリシニン含量)を有するグリシニンに富む画分を提供する。グリシニンに富む画分は、画分の全タンパク質含量を基準にして、典型的に少なくとも40%のグリシニン、より典型的には少なくとも50%のグリシニン、さらにより典型的には少なくとも60%のグリシニン、なおもより典型的には少なくとも70%のグリシニンを含む。一般に本発明のグリシニンに富む画分は、全タンパク質含量を基準にして50%〜95%のグリシニンを含む。
【0052】
特定の実施形態では、本発明のグリシニンに富む画分は、40重量%〜80重量%のグリシニンを含む。
【0053】
本発明のグリシニンに富む画分中のグリシニンとβ−コングリシニンとの重量比は、典型的に少なくとも10:1であり、より典型的には少なくとも15:1である。
【0054】
一般に本発明のβ−コングリシニンに富む画分は、少なくとも80重量%のダイズタンパク質、より一般には少なくとも90重量%のダイズタンパク質を含む。典型的にβ−コングリシニンに富む画分中に存在するダイズタンパク質の少なくとも80重量%は800,000ダルトン未満の分子量を有し、より典型的にはβ−コングリシニンに富む画分中のダイズタンパク質の少なくとも60%は1350〜800,000ダルトン、さらにより典型的には1350〜380,000ダルトンの分子量を有する。
【0055】
本発明の方法は、高純度(すなわち高β−コングリシニン含量)を有するβ−コングリシニンに富む画分を提供する。β−コングリシニンに富む画分は、画分の全タンパク質含量を基準にして、典型的に少なくとも40%のβ−コングリシニン、より典型的には少なくとも50%のβ−コングリシニン、さらにより典型的に少なくとも70%のβ−コングリシニンを含む。β−コングリシニンに富む画分は、画分の全タンパク質含量を基準にして、好ましくは40%〜75%のβ−コングリシニン、より好ましくは40%〜80%のβ−コングリシニンを含む。このような画分は画分の全タンパク質含量を基準にして、典型的に少なくとも10%のグリシニン、より典型的には少なくとも12%のグリシニン、さらにより典型的には少なくとも15%のグリシニン、なおもより典型的には少なくとも20%のグリシニンをさらに含む。特定の実施形態では、このような画分は画分の全タンパク質含量を基準にして、10%〜30%のグリシニン、10%〜15%のグリシニン、または15%〜20%のグリシニンを含む。
【0056】
本発明のβ−コングリシニンに富む画分中のβ−コングリシニンとグリシニンとの重量比は、典型的に少なくとも2.5:1、より典型的には3:1〜5:1、さらにより典型的には4:1〜5:1である。
【0057】
β−コングリシニンに富む画分は典型的に少なくとも40重量%のβ−コングリシニン、より典型的には少なくとも50重量%のβ−コングリシニンを含む。一般に本発明のβ−コングリシニンに富む画分は、50重量%〜75重量%のβ−コングリシニンを含む。
【0058】
典型的に可溶性炭水化物の大部分は、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分の沈殿中に生じる上清中に残留する。したがって本発明のグリシニンまたはβ−コングリシニン濃縮画分は、典型的に1重量%未満の炭水化物、より典型的には0.5重量%未満の炭水化物を含有する。
【0059】
タンパク質含量に加えて、画分の収率および純度は、例えば分画の有効性および画分の有望な機能性の指標として、重要な検討材料であることができる。一般に、そのタンパク質に富む画分中の特定のタンパク質の収率が増大するにつれて、画分の純度が低下することが観察されている。したがって本方法は、好ましくはそれらを様々な食物用途における使用に適切にする機能性を提供するのに、純度が十分な画分を生成しながら、タンパク質収率が商業的に実現可能な方法を提供するように実行される。
【0060】
本方法は典型的に少なくとも70%、より典型的には少なくとも80%、さらにより典型的には、少なくとも90%のグリシニン収率を達成する。
【0061】
β−コングリシニンの収率は、タンパク質材料の分散体中のβ−コングリシニン含量、およびβ−コングリシニンに富む画分中に存在するβ−コングリシニンを基準にして、典型的に少なくとも10%である。より典型的には、本方法は、10%〜80%、さらにより典型的には40%〜80%の収率を達成する。より高い収率で生じた画分の純度、したがって機能性は、悪化することが観察されている。
【0062】
典型的に上述の方法によって生成されたグリシニンに富む画分またはβ−コングリシニンに富むタンパク質カードは、それに対する水性アルカリ性組成物の添加によって中和される。このようなアルカリ性組成物は、典型的に水酸カルシウム、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムよりなる群から選択される化合物を含む。濃縮カードの中和は、その中に存在するタンパク質を可溶化する。
【0063】
次に本発明の画分を典型的にさらに処理して、食品への画分の組み込みを助ける。このようなさらなる処理としては、例えば画分中に存在する微生物を破壊する熱処理(例えば低温殺菌および/または滅菌)や、乾燥(例えば噴霧乾燥)が挙げられる。典型的に低温殺菌は、画分を少なくとも95℃(少なくとも203°F)の温度、より典型的には少なくとも130℃(265°F)、より典型的には、130℃〜150℃(265°F〜305°F)の温度に加熱することを含む。
【0064】
画分はまた、噴霧乾燥させて、典型的に5重量%未満、より典型的に10重量%未満の水分含量を有する易流動性粉末を生成してもよい。画分は典型的に少なくとも95℃(200°F)の温度で噴霧乾燥させる。
【0065】
噴霧乾燥されたグリシニンに富む画分は、典型的に0.20〜0.35g/cm3のかさ密度を有する易流動性粉末の形態である。これらの乾燥させたタンパク質画分は、典型的に、前記粉末の10重量%〜15重量%が、U.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持されるような粒度分布を有する。これらの画分はまた、一般に前記粉末の15重量%〜25重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持され、または前記粉末の25重量%〜45重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持され、または前記粉末の45重量%〜60重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持されるような粒度分布も有してもよい。
【0066】
噴霧乾燥させたβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に0.20〜0.30g/cm3のかさ密度を有する易流動性粉末の形態である。これらの乾燥画分は、典型的に前記粉末の5重量%〜20重量%がU.S.ふるいサイズで200メッシュスクリーン上に保持され、35重量%〜60重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持されるような粒度分布を有する。
【0067】
熱処理および噴霧乾燥画分は、典型的に少なくとも85重量%のタンパク質、より典型的には少なくとも92重量%のタンパク質を含有する。したがって本発明の方法に従って得られるタンパク質画分は、典型的にグリシニンに富むまたはβ−コングリシニンに富むダイズタンパク質単離物である。
【0068】
本発明のダイズタンパク質画分は、それらの様々なタンパク質含量のために様々な機能性を示す。これらの画分は、例えばホットドッグやソーセージなどの肉製品、豆乳や果汁などの飲料、ヨーグルト、およびフードバーをはじめとする多様な食物および飲料用途中で、機能食品成分として使用するのに適する。一般にβ−コングリシニンに富むタンパク質画分は、肉用途および特定の飲料用途(例えば豆乳)で使用するのに好ましい。
【0069】
本発明のタンパク質画分は、少なくともある程度は、画分の部分的変性タンパク質の凝集のために水性溶液中でゲルを形成できる。本発明の画分のゲル化特性は、その中でそれらが使用される肉製品のテクスチャおよび構造に貢献するので、水性環境における実質的なゲル形成が本発明の画分の望ましい品質である。画分のこの品質はまた、肉製品中に水分および脂肪を保持するためのマトリックスも提供して、未精製ダイズタンパク質材料を含有する調理肉製品が、調理中にその肉汁を保持できるようにする。
【0070】
本発明のタンパク質画分はまた、顕著なゲル強度を有するゲルを形成できる。ゲル強度は、ゲルを形成させるのに十分な時間、ダイズ材料サンプルと水を混合して調製されるゲルの強度の尺度である。1:5のダイズ材料:水の重量比率(ダイズ材料中の水分含量を水重量に含む)を有するゲルを調製して、蓋で密封される307×113mmの3個のアルミニウム缶に満たすのに使用する。
【0071】
ゲル強度は、一般に室温(すなわち15℃〜25℃)のゲルについて判定してもよく、また冷蔵ゲル(すなわち冷ゲル強度)、低温殺菌ゲル(すなわち低温殺菌ゲル強度)、およびレトルト処理ゲル(すなわちレトルト処理ゲル強度)について測定してもよい。これらの様々な測定は、様々な用途におけるダイズタンパク質材料の適合性に関係する。
【0072】
ゲル強度を判定するために、ゲルを含有する缶を開けて、ゲルを缶から分離する。ゲルが破壊されるまでプローブをゲル内に打ち込んでゲルの破壊点を測定する機器(好ましくは36mmディスクプローブ付きインストロンユニバーサル試験機(Instron Universal Testing Instrument)モデルNo.1122)でゲルの強度を測定し、記録されたゲルの破壊点からゲル強度を計算する。ゲル強度は、塩含有または非含有ゲルについて測定してもよく、塩を含有するゲルは典型的に2重量%の塩を含有する。塩は一般に、塩を含有する食物用途におけるダイズタンパク質材料の適合性が興味の対象である場合のゲル強度測定で使用される。
【0073】
(1)ゲル強度は、以下の式に従って計算される。
(2)ゲル強度(g)=(F/100)(G)(454)、
(3)式中、Fはチャート単位でのゲル破断点であり、100はチャート単位の可能な数であり、Gは機器の最大測定限界負荷ダイヤル読み取り×10(ポンド数)であり、454はポンドあたりのグラム数である。
【0074】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、典型的に少なくとも8,000g、より典型的には少なくとも10,000g、さらにより典型的には少なくとも12,000gのゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に12,000g〜16,000g、より典型的には14,000g〜16,000gのゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富む画分と水からなるゲルは、一般に600g未満、より一般には500g未満のゲル強度を有する。特定の実施形態ではこのようなゲルは400g〜600gのゲル強度を有する。
【0075】
塩を含有する食品への組み込み適合性の指標として、ゲル強度はまた、タンパク質画分、水、および塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても測定される。
【0076】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、典型的に少なくとも8,000g、より典型的には少なくとも10,000gのゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に10,000g〜14,000g、より典型的に12,000g〜13,000gのゲル強度を有する。
【0077】
重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に1500g未満のゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に1000g〜1500gのゲル強度を有する。
【0078】
冷ゲル強度は、ゲルが冷却温度に平衡化するのに十分な時間(通常16〜24時間)にわたる、−5℃〜5℃での調製直後冷却に続くダイズ材料のゲル強度の尺度である。したがって冷ゲル強度は、冷蔵される製品で使用するためのダイズタンパク質材料の適合性の指標を提供するかもしれない。
【0079】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなる冷蔵ゲルは、一般に少なくとも5000gの冷ゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に5000g〜7000g、より典型的には6000g〜7000gの冷ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に50g〜150gの冷ゲル強度を有する。
【0080】
冷ゲル強度はまた、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても判定される。重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも5000gの冷ゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に5000g〜8000g、より典型的には6000g〜8000g、さらにより典型的には7000g〜8000gの冷ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に200g〜300gの冷ゲル強度を有する。
【0081】
低温殺菌ゲル強度では、ゲルを含有する缶をおよそ30分間沸騰水と接触させ、およそ30℃の水で冷却し、次にゲルが冷却温度に平衡化するのに十分な時間(通常16〜24時間)にわたり−5℃〜5℃に冷蔵する。低温殺菌ゲル強度は一般に、ダイズタンパク質材料に対する熱処理の効果を示唆するかもしれない。
【0082】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に少なくとも10,000g、より一般には少なくとも14,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。このようなゲルは、典型的に14,000g〜16,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:6のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に少なくとも13,500の低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に200g〜1000gの低温殺菌ゲル強度を有する。
【0083】
低温殺菌ゲル強度はまた、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても判定される。重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも8800g、より一般には少なくとも10,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。典型的にこのようなゲルは10,000g〜13,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:6のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも600gの低温殺菌ゲル強度を有する。
【0084】
重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に250g〜1500gの低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:6のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に100g〜400gの低温殺菌ゲル強度を有する。
【0085】
レトルト処理ゲル強度については、ゲルを含有する缶をレトルトチャンバーに入れ、3分排気タイマーを使用してゲルを110℃(230°F)でおよそ68分間処理する。処理直後、およそ30℃の水で缶を冷却し、ゲルが冷却温度に平衡化するのに十分な時間(通常16〜24時間)にわたり−5℃〜5℃に冷蔵する。レトルト処理ゲル強度を判定するために使用されるより高い温度は、一般に製品を高温で処理して製品を殺菌および滅菌することが必要である、室温で保管される製品(すなわち練乳製品)で使用するためのダイズタンパク質材料の適合性を示唆するかもしれない。
【0086】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に少なくとも1000g、より一般には1800g〜10,000gのレトルト処理ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは一般に200g〜300gのレトルト処理ゲル強度を有する。
【0087】
レトルト処理ゲル強度はまた、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても判定される。重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも3000g、より一般には3000g〜5000g、さらにより一般には4000g〜5000gのレトルト処理ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、および2重量%の塩化ナトリウムは、一般に600g〜2500gのレトルト処理ゲル強度を有する。
【0088】
いくつかの食物用途では、エマルジョンを形成するダイズタンパク質材料の能力、およびこのようなエマルジョンの様々な特徴は重要な機能特性である。油と水は混和性でなく、それらの間の境界面を安定化する材料の不在下では、境界面の総表面積は最小化する。これは典型的に油相と水相の分離をもたらす。タンパク質は表面で変性して液滴(油または水)にコーティングを提供することで、これらの境界面を安定化できる。タンパク質は油および水の双方と相互作用して、実質的にそれらを互いに遮蔽できる。高分子量のタンパク質は、このような液滴表面でより大きく変性でき、小型タンパク質よりもさらに大きな安定性を提供することで、液滴合体を防止すると考えられる。
【0089】
本発明のタンパク質画分を使用して調製されるエマルジョンのテクスチャ、強度、および安定性はまた、水および油構成要素を含有する用途(例えばホットドッグなどの様々な肉用途)で使用するためのタンパク質の適合性の指標としても判定される。
【0090】
1000mL容量のビーカーに、20°±3C°に平衡化したダイズ油(840g 0.1g)を入れて、評価するダイズタンパク質材料のエマルジョンを調製する。次にビーカー表面をゴムべらで完全にこすり落としてビーカー内に残留する油を最小化し、オハイオ州トロイのホバート社(Hobart Corporation(Troy,OH))によって製造されるホバート(Hobart)食品カッターモデル#84145の細断ボールにダイズ油を投入する。食物カッターボールおよび蓋の温度は一般に20°±3℃であり、これは浄化後エマルジョン調製前に、ボールおよび蓋を冷水道水(例えば15℃〜25℃の温度)ですすぐことで達成してもよい。ダイズ材料サンプル(200.0g 0.lg)をカッターボールに投入し、油の表面全体の上に材料を迅速に広げる。ダイズ材料サンプルを油に投入した後、食物カッターの蓋を閉じて食物カッターを始動し、計時を開始する。ダイズ材料サンプルを油に添加して食物カッターを始動するのにかかる時間は、典型的に15秒未満である。20±3℃の水(1,150 10mL)は、2Lメスシリンダー内で測定される。食物カッターの始動後10秒以内に水を食物カッターに投入する。1分間の細断時間が過ぎた後、食物カッターおよびタイマーを停止する。食物カッターの蓋を取って、ゴムべらで完全にかきおとす。蓋を閉めてタイマーを開始し、細断を4分間継続する。所望ならば、合計細断時間5分で、ボールが1回転する間に塩(44.0g 0.1g)を添加する。塩含有食物用途(例えば肉用途)におけるダイズタンパク質材料の適合性を判定する目的で、塩をエマルジョン特性に加えてもよい。合計細断時間5.5分で食物カッターおよびタイマーを停止して、蓋の内側を完全にこすり落とす。細断を再びさらに1.5分続ける。合計細断時間7分後、食物カッターを停止して、ボール内のエマルジョン環からエマルジョンサンプルが得られる(すなわちサンプルはボールの側面またはカッターの蓋から採取されない)。エマルジョン調製の合計経過時間は、典型的に10分間を超えない。
【0091】
空洞部分がないように留意して詰め、およそ175mL(6.0オンス)容量の容器をエマルジョンで充填する。容器は高さ3.8cmおよび直径8cmを有する。カップの上部をステンレス鋼べらでこすり、表面を滑らかで平らにしてカップを室温に5分間静置する。英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して、カップ内のエマルジョンサンプルをエマルジョンテクスチャについて分析する。ゲル試験機速度コントロールを「速い」設定にして、21.5mmプローブをゲル試験機に装着する。エマルジョン含有カップをゲル試験機の天秤にのせて、プローブがあらゆる表面の凹凸を避けて、カップのほぼ中心でエマルジョン表面を貫通するように配置させる。次に天秤を風袋測定し、カップ充填の5分後に、ゲル試験機の「下げる」ボタンを押して分析を開始する。プローブがエマルジョンを貫通する際の天秤の表示を観察する。エマルジョンテクスチャ、または硬度は、プローブが自動的に準備完了位置に戻る前に天秤上で観察される最大力(g)である。
【0092】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5の肉用途に適切なタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、典型的に少なくとも90g、より典型的には少なくとも110gのエマルジョンテクスチャを示す。
【0093】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、水からなるエマルジョンは、一般に少なくとも150gのエマルジョンテクスチャ有する。このようなβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に165g〜280gのエマルジョンテクスチャを有する。
【0094】
エマルジョンテクスチャを測定するために、3〜4個の容器(例えば177mL(6オンス)容量のアルミニウム缶、またはソロ(Solo)によって製造される205mL(7オンス)プラスチックカップ)を上述のように調製する。容器を反転し、非吸収性材料からできてプラスチックフィルムで覆われる平らなトレーにのせる。
【0095】
アルミニウム缶内のサンプルを沸騰水中におよそ30分間保持し、氷水浴中でおよそ15分間冷却し、5°±2℃で20時間〜32時間冷蔵する。これらのサンプルから得られた測定は、サンプルの「熱」エマルジョン強度を表す。
【0096】
プラスチック容器を5°±2℃で16時間〜32時間冷蔵する。これらのサンプルから得られた測定は、サンプルの「冷」エマルジョン強度を表す。
【0097】
英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して、エマルジョン強度について、カップ内のエマルジョンサンプルを分析する。ゲル試験機速度コントロールを「遅い」設定にして、10.9mmプローブをゲル試験機に装着する。エマルジョン表面を乱さないようにして、容器を冷蔵庫から取り出す。エマルジョン表面が不規則、凹凸、または破損している場合、容器を破棄して、別の容器を分析のために取り出す。エマルジョン含有カップをゲル試験機の天秤にのせて、カップのほぼ中心でエマルジョン表面を貫通するように配置させる。天秤を風袋測定し、ゲル試験機の「下げる」ボタンを押して分析を開始する。プローブがエマルジョンを貫通する際の天秤の表示を観察する。読み取りは最大に増大し、その後、読み取りは一定を保ち、または急速に低下する。最大読み取りをエマルジョン強度としてグラムで記録する。第2の容器内のサンプルを述べられるようにして分析する。2つの読み取りの差が10g未満であれば、2つの値の平均を報告する。2つの読み取りの差が10g以上であれば、残りの容器内のサンプルを分析して読み取りの平均を報告する。
【0098】
エマルジョンテクスチャおよび強度は、どちらも一般にエマルジョンの硬度、または固さに関連する。このような特性は、一般にしっかりした製品が所望される製品(例えば肉用途)に組み込むためのタンパク質画分の適合性を示唆する。
【0099】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5の肉用途で使用するのに適切なタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、一般に少なくとも90g、より典型的には少なくとも110gのエマルジョン強度を示す。
【0100】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、典型的に120〜185g、より典型的には160〜180gの冷エマルジョン強度を示す。
【0101】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、典型的に180〜340g、より典型的には180〜315gの熱エマルジョン強度を示す。
【0102】
エマルジョン安定性を判定するため、エマルジョンテクスチャを測定するために、上述のように3個の容器(すなわち熱または冷サンプルのいずれかを含有する)を調製する。計量紙の清潔なシートを使用して、天秤の風袋をゼロにする。2つのエマルジョン充填カップを冷蔵庫から取り出す。エマルジョンを各カップから注意深く取り出して、長手方向に切断する。各半分を計量紙シートにのせる。サンプル重量が85g未満であればサンプルを破棄して、別のサンプルを得る。サンプル重量が85g〜90gであれば、重量を記録する。サンプル重量が90gを超える場合は、半割りエマルジョンの最上部曲面からエマルジョンを除去して85〜90gのサンプル重量を提供する。サンプルの初期重量を記録する。冷蔵容器からの4個の半割エマルジョンサンプルを評価する。スプレータイプの料理用油を軽く噴霧して、市販のフライパン(例えば直径12インチおよび深さ2インチを有する)の調理面を準備して、およそ15分70℃で予熱する。半割エマルジョンを30秒間隔で1つずつ予熱フライパンに入れる。サンプルをおよそ170℃で10分間炒める。フライパンから取り出す際に各サンプルを秤量して、その最終重量を記録する。次のエマルジョンを評価する前に、フライパンを清潔にする。
【0103】
調理中のサンプルの%重量損失として、エマルジョン安定性を計算する。
(1)エマルジョン安定性=(初期重量−最終重量)/初期重量)×100%
【0104】
調理時の水分損失指標としてのエマルジョン安定性(値が増大すると安定性が低下する)は、調理中の水分保持が製品の食感に影響する肉用途(例えばホットドッグ)で使用するためのダイズタンパク質材料の適合性の重要な指標かもしれない。
【0105】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる冷サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも2%、より典型的には約2〜5%のエマルジョン安定性を示す。
【0106】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる熱サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも4%、より典型的には約4〜7%のエマルジョン安定性を示す。
【0107】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のグリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる冷サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも3%、より典型的には約3〜4%のエマルジョン安定性を示す。
【0108】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のグリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる熱サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも3%、より典型的には約3〜5%のエマルジョン安定性を示す。
【0109】
エマルジョン能力は、エマルジョンとして存在する水および油構成要素を含有する食品に組み込むタンパク質画分の重要な特徴かもしれない。タンパク質画分は、エマルジョンの油および水の境界面を提供する。タンパク質画分が適切なエマルジョン能力を有さなければ、エマルジョン構成要素は分離するかもしれず、例えば油が凝集塊中に保持されない肉用途の場合は、製品は十分な固さまたは構造を示さない。水中のダイズタンパク質材料の2重量%固形分分散体を調製して、ダイズタンパク質材料のエマルジョン能力を判定してもよい。次に10mL/分の速度でダイズ油を分散体(25g)に添加して、水中油エマルジョンを形成する。最終的には、ダイズ油の添加は油中水エマルジョンを生成する(すなわちエマルジョン転移点に達する)。エマルジョン転移点までに添加された油の容積を記録して、1gのタンパク質で乳化できる油の最大量としてエマルジョン能力を計算する。
【0110】
肉用途で使用するのに適した2重量%のタンパク質画分からなる水性分散体は、pH7で、典型的に1gのタンパク質あたり少なくとも400gの油、より典型的には1gのタンパク質あたり少なくとも600gの油のエマルジョン能力を有する。
【0111】
2重量%のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、pH7で、一般に1gのタンパク質あたり少なくとも500gの油のエマルジョン能力を有する。このような分散体は、典型的に1gのタンパク質あたり500〜900gの油、より典型的には1gのタンパク質あたり600〜900gの油、さらにより典型的には1gのタンパク質あたり700〜900gの油、なおもより典型的には1gのタンパク質あたり800〜900gの油のエマルジョン能力を有する。
【0112】
2重量%のグリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、pH7で、一般に1gのタンパク質あたり少なくとも400gの油、より一般には1gのタンパク質あたり400〜600gの油のエマルジョン能力を有する。
【0113】
本発明の画分のタンパク質に特徴的な1つの重要な機能性は、画分の窒素溶解指数で表されることが多い、水性溶液中でのそれらの溶解性である。高度に水溶性のダイズタンパク質を含有する画分は80%を超える窒素溶解指数を有し、一方多量の不水溶性ダイズタンパク質を含有する画分は25%未満の窒素溶解指数を有する。
【0114】
窒素溶解指数(NSI)はここでの用法では、以下のように定義される。
(1)NSI=(タンパク質含有サンプルの%水溶性窒素/タンパク質含有サンプル中の%総窒素)×100
(2)窒素溶解指数は、タンパク質含有材料中の全タンパク質に対する水溶性タンパク質の%の尺度を提供する。本発明の画分の窒素溶解指数は、標準分析法、具体的にはその内容全体を参照によって本願明細書に援用したA.O.C.S.方法Ba 11−65に従って測定される。方法Ba 11−65に従って、少なくとも95%のサンプルがU.S.等級100メッシュスクリーンを通過するように十分細かく粉砕された(平均粒度150μm未満)ダイズ材料サンプル(5g)を30℃で2時間120rpmで撹拌して、蒸留水(200mL)に懸濁する。次に追加的な蒸留水でサンプルを250mLに希釈する。ダイズ材料が全脂肪材料である場合は、サンプルは、少なくとも80%の材料がU.S.等級80メッシュスクリーン(およそ175μm)を通過し、90%がU.S.等級60メッシュスクリーン(およそ205μm)を通過するように十分細かく粉砕さえすればよい。粉砕中には典型的にドライアイスをダイズ材料サンプルに添加して、サンプル変性を防止する。サンプル抽出物(40mL)をデカントして1500rpmで10分間遠心分離し、上清のアリコートをケルダールタンパク質(PRKR)について分析し、その内容全体を参照によって本願明細書に援用したA.O.C.S公定法Bc 4−91(1997)、Ba 4d−90、またはAa 5−91に従ってダイズ材料サンプル中の水溶性窒素の%を判定する。PRKR方法によって、ダイズ材料サンプルの別個の部分を全タンパク質について分析し、サンプル中の総窒素を判定する。得られる%水溶性窒素および%総窒素の値を上の式で利用して、窒素溶解指数を計算する。ダイズタンパク質材料の意図される用途次第で、様々なpH値におけるダイズタンパク質材料の溶解性もまた、関心の対象になるかもしれない。サンプル抽出物(40mL)をデカントして1000rpmで10分間遠心分離する以外は、上述のようにして%可溶性タンパク質を判定する。ダイズタンパク質材料の溶解性は、例えば2〜10にわたる広いpH範囲で判定してもよい。
【0115】
40%〜75%または40%〜80%のβ−コングリシニン(すなわちβ−コングリシニンに富む画分)を含有する本発明のタンパク質画分は、pH7で、一般に少なくとも70%、より一般には少なくとも80%の窒素溶解指数を有する。典型的にこのような画分は、90%〜95%の窒素溶解指数を有する。
【0116】
50%〜95%のグリシニン(すなわちグリシニンに富む画分)を含有する本発明のタンパク質画分は、pH7で、一般に80%未満、より一般には60%〜80%の窒素溶解指数を有する。このような画分はpH3〜6で、一般に40%未満の窒素溶解指数を有する。
【0117】
タンパク質画分の溶解性は、画分が特定の食品への組み込みに好ましいかどうかに影響する。例えば高度に可溶性の画分は、消費者にとって一般に望まれない沈殿の形成を避けるために飲料用途で使用するのに好ましい。したがって飲料用途の場合、好ましくはダイズタンパク質画分は、少なくとも65%、より好ましくは75%〜90%の窒素溶解指数を有する。
【0118】
本発明のタンパク質画分は、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有する水性媒体中で、それらの溶解性を保持する。顕著な量の塩を含有する食品(例えば乳化肉またはスープ)中で機能食品成分として使用してもよいことから、これは本発明のタンパク質画分の重要な特徴である。このような溶解性は典型的に、以下の方法を使用して判定してもよい塩耐性指数で表される。塩化ナトリウム(0.75g)を秤量して、400mLビーカーに入れる。30°±1℃の水(150mL)をビーカーに添加して、塩を水中で完全に溶解する。塩溶液を混合チャンバーに入れ、ダイズ材料(5g)サンプルを混合チャンバー内の塩溶液に添加する。サンプルおよび塩溶液を毎分回転数7000±200(rpm)で5分間混合する。得られるスラリーを400mLのビーカーに移し、水(50mL)を使用して混合チャンバーをすすぐ。50mLのすすぎ水をスラリーに添加し、スラリーを含有するビーカーを30℃の水浴に入れて120rpmで60分間撹拌する。次に脱イオン水を使用して、ビーカー内容物を250mL容積の測定フラスコに定量的に移す。スラリーを脱イオン水で250mLに希釈してフラスコを数回反転し、フラスコ内容物を完全に混合する。スラリーのサンプル(45mL)を50mL遠心管に移して、スラリーを500×重力定数で10分間遠心分離する。遠心管から濾紙を通して上清を100mLビーカー内に濾過する。次にその内容全体を参照によって本願明細書に援用した、A.O.C.S公定法Bc 4−91(1997)、Ba 4d−90、またはAa 5−91に従って、濾液および元の乾燥ダイズ材料サンプルについてタンパク質含量分析を実施する。
【0119】
以下の式に従って塩耐性指数(STI)を計算する。
(1)STI(%)=(100)*(50)*(Pf/Pd)
(2)Pfは濾液中の%可溶性タンパク質を表し、一方Pdは乾燥ダイズ材料サンプル中の%全タンパク質を表す。
【0120】
本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分は、一般に少なくとも70%、より一般には少なくとも75%の塩耐性指数(すなわち塩存在下で測定される窒素溶解指数)を有する。典型的にこのような画分は、75%〜85%の塩耐性指数を有する。本発明のグリシニンに富むタンパク質画分は、一般に65%未満、より一般には62%未満の塩耐性指数を有する。乳化肉用途で使用されるタンパク質画分は、pH7で、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは70%の塩耐性指数を有する。
【0121】
白色指数は、ダイズタンパク質含有材料および組成物の外観の1つの尺度である。一般に白色指数は、白色指数(WI)の定型表現、WI=L−3bを使用して白色指数を計算してもよい組成物について、L、a、およびb色値を提供する比色計を使用して判定される。L構成要素は、一般にサンプルの「明度」を示唆し、0に近いL値は黒色サンプルを示唆する一方、100に近いL値は白色サンプルを示唆する。b値はサンプル中に存在する黄色および青色を示唆し、正のb値は黄色の存在を示唆する一方、負のb値は青色の存在を示唆する。その他の色測定で使用してもよいa値は赤および緑色を示唆し、正の値は赤色の存在を示唆する一方、負の値は緑色の存在を示唆する。bおよびa値では、対応する色の強度が増大するにつれて、測定の絶対値が直接増大する。一般に比色計は、比色計と共に提供される白色標準タイルを使用して標準化される。次にサンプルをガラスセルに入れ、それを比色計に挿入する。サンプルセルを不透明カバーで覆い、サンプルを通過して検出器に到達し、サンプル測定中に定数の役割をする周辺光の可能性を最小化する。同一材料の複数サンプルが一般に測定されるので、読み取りをした後、サンプルセルを空にして典型的に再充填し、材料の白色指数を測定の平均として表す。適切な比色計としては、一般に例えば光学的センサーD25付きモデル#DP−9000をはじめとするバージニア州レストンのハンターラブ(Hunter Lab(Reston,VA))によって製造されるものが挙げられる。
【0122】
4%〜6%(一般に5重量%)の本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を含有する水性分散体は、pH7で、典型的に少なくとも20、より典型的には20〜45、さらにより典型的には25〜45の白色指数を有する。5重量%の水分含量を有するこのようなタンパク質画分の粉末は、一般に50〜60の白色指数を有する。
【0123】
4%〜6%(一般に5重量%)の本発明のグリシニンに富むタンパク質画分を含有する水性分散体は、pH7で、一般に少なくとも40、より一般には40〜50の白色指数を有する。5重量%の水分含量を有するこのようなタンパク質画分の粉末は、一般に50〜60の白色指数を有する。
【0124】
上述のようにβ−コングリシニンに富む画分は、それらの好ましい溶解性に基づいて、例えば豆乳製品をはじめとする飲料用途で使用するのに一般に好まれる。一般にβ−コングリシニンに富むタンパク質画分のグリシニン含量が増大すると、画分の分散体の白色指数が増大する。ミルク用途ではより高い白色度(例えば30〜40)が一般に好ましいので、高グリシニン含量(例えば15%〜20%)を有するβ−コングリシニンに富むタンパク質画分が乳製品で使用するのに一般に好ましい。しかしその他の飲料用途(例えば果汁)では、このような画分は一般に望ましくない。したがって非豆乳飲料用途では、より低いグリシニン含量(例えば10%〜15%)を有するβ−コングリシニンに富むタンパク質画分が一般に好ましい。
【0125】
肉用途の場合、製品の視覚特性に対する画分の影響を最小化するために、より低い白色度(例えば15〜20)が好ましい。したがってより低いグリシニン含量(例えば15%未満)を有するβ−コングリシニンに富むタンパク質画分が、一般に肉製品への組み込みのために好ましい。
【0126】
水性媒体中のタンパク質画分の粘度は、画分のタンパク質含量、相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量、サンプルのpH、温度、およびサンプル中の塩(典型的に2重量%の塩化ナトリウム)の存在次第で、一般に変動する。
【0127】
水性媒体中の画分のより高い粘度特性は、ゲル形成を促進し、それと関連している。したがって肉用途では、水性媒体中でより高い粘度を示す画分が一般に望ましい。画分のこのような高粘度は、少なくともある程度、画分の部分変性ダイズタンパク質の凝集、およびその水和能力によると考えられる。水性媒体中の画分のより高い粘度はまた、画分をグレービー、ヨーグルト、およびスープ、特にクリームスープ中で増粘剤として利用し、ベーキング用途で使用できるようにする。画分を飲料中に組み込む場合は、水性媒体中でより低い粘度を示すタンパク質画分が一般に好ましい。このようなタンパク質画分の粘度が高すぎると沈殿が形成するため、消費者の観点からこのような飲料の望ましさに悪影響を及ぼす。
【0128】
粘度とは、大型アニュラスを使用して、回転スピンドル粘度計で測定されるスラリーまたは溶液のみかけの粘度を指す。特に好ましい回転スピンドル粘度計は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計である。ダイズ材料のみかけの粘度は、ダイズ材料サンプルと水を秤量してダイズ材料と水の既知の比率(好ましくは重量で1部のダイズ材料に対して7部の水)を得て、ダイズ材料と水をブレンダーまたはミキサー内で合わせて混合し、温度20℃およびpH7でダイズ材料と水の均質スラリーを形成して、大型アニュラスを使用して、およそ毎分回転数30〜60(rpm)および30〜70%のトルクで作動する回転スピンドル粘度計で、スラリーのみかけの粘度を測定して、測定される。本発明の画分タンパク質分散体の所望の粘度は、意図される用途に左右される。
【0129】
典型的にpH5.6で20℃の水性媒体中において、β−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、20〜225センチポアズ、さらにより典型的には40〜120センチポアズの粘度を有する。
【0130】
塩の存在は、本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分のサンプルの粘度に影響するかもしれない。画分が組み込まれる多くの用途は顕著な量の塩を含有するので、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有する本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を含有する分散体の粘度は、有用な測定値である。典型的にβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH5.6で20℃の水性媒体中において200センチポアズ未満の粘度を有する。一般にこのようなサンプルの粘度は20〜200センチポアズ、より一般には20〜125センチポアズである。
【0131】
典型的に、β−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中で30センチポアズ未満の粘度を有する。同様に、β−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、pH6.9〜7.1で20℃の水性媒体中で2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、25センチポアズ未満の粘度を有する。
【0132】
典型的にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、pH5.6で20℃の水性媒体中で225センチポアズ未満の粘度を有する。特定の実施形態では、このようなサンプルの粘度は、50〜120センチポアズであり、その他の実施形態では粘度は120〜225センチポアズである。
【0133】
塩の存在は、本発明のグリシニンに富むタンパク質画分のサンプルの粘度に影響するかもしれない。典型的にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH5.6で20℃の水性媒体中で、50センチポアズ未満、より典型的には25センチポアズ未満、さらにより典型的には20センチポアズ未満の粘度を有する。
【0134】
典型的にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中で25センチポアズ未満の粘度を有する。同様にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、pH6.9〜7.1で20℃の水性媒体中で25センチポアズ未満の粘度を有する。
【0135】
図3および4に示すように、2重量%の塩化ナトリウムありまたはなしのpH7.0〜7.2または5.6で20℃の水性媒体中における、β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、画分の相対β−コングリシニン/グリシニン含量次第で変動する。
【0136】
図5に示すように、塩化ナトリウムの不在下で、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、一般に増大するpHと共に増大する。これも図5に示すように、塩化ナトリウムの不在下で、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、一般に増大するpHと共に減少する。
【0137】
図6に示すように、特定の実施形態では、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、特定のpH(図6に示すようにおよそpH5.5)まで増大するpHと共に増大し、次に増大するpHと共に減少する。これも図6に示すように、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、一般に増大するpHと共に減少する。
【0138】
分散体通過する特定の波長の光の百分率(すなわち透過パーセント)によって示唆される本発明のタンパク質画分の水性分散体の半透明性は、意図される用途次第で重要な機能的特徴かもしれない。
【0139】
ダイズタンパク質材料(20g)のサンプルを例えばソロ(Solo)によって製造される7オンスプラスチックカップなどのおよそ205mL容量の逆円錐台容器に入れる。小型ブレンダージャー内に水(180mL)を投入して、例えばオステライザー(Osterizer)ブレンダーなどのブレンダーのブレンダージャー内の水にサンプルを緩慢に添加して、サンプル損失を避ける。ブレードアセンブリーをブレンダージャーに装着して、混合物を最低設定で30秒間混合する。未分散サンプルが存在する場合、小型へらを使用してスラリー中に分散する。ブレンダージャーの蓋を元に戻して、スラリーを最低速度でさらに5秒間混合する。サンプルをブレンダージャーから取り出して上述の逆円錐台容器内に入れ、それを覆って60分間静置する。次にスラリーを撹拌して、スラリーのサンプル(45mL)を50mLナルゲン(Nalgene)遠心管に移し、管の蓋を留める。遠心管を97℃に予熱した水浴に入れて、45分間放置する。3個までのサンプルを一度に分析してもよく、その場合、5分間隔でサンプルを水浴に投入する。サンプルが加熱される間、フィッシャーブランド(Fisherbrand)からの半透明な顕微鏡スライド(カラーフロスト(Colorfrost))をサンプル情報で標識し、未標識面の底にゴムガスケットをのせる。使い捨てピペット使用して熱いサンプルをガスケットに入れ、面を緩慢に下げて空気が入らないようにする。次に少なくとも1時間サンプルを冷却させる。乾燥生成物または過剰な水分をスライドアセンブリーから取り出す。バックマン(Backman)分光光度計(DU640)使用してサンプルを分析する。サンプルを典型的に400nmおよび800nmの波長で分析する。分光光度計を使用してサンプルの吸光度を同一様式で測定し、結果を記録してもよい。所望の透過率または吸光度(すなわちタンパク質画分分散体を通過するまたはそれに吸収される光の相対量)は、一般に意図される用途に左右される。
【0140】
典型的に10重量%のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、800ナノメートル(nm)で少なくとも60%の透過パーセントを示す。より典型的には、このような分散体は800nmで少なくとも70%、より典型的には70%〜95%、さらにより典型的には80%〜95%の透過パーセントを示す。
【0141】
β−コングリシニンに富む画分のグリシニン含量が増大するにつれて、透過パーセントが減少する(すなわちこのような画分の水性分散体の不透明度が増大する)かもしれないことが観察されている。例えば肉用途および果汁などの飲料用途をはじめとする特定の用途では、製品に不透明度を与えるかもしれない画分は、このような製品の視覚特性に対するその悪影響に基づいて望ましくない。したがって特定の場合、これらのタイプの製品では、比較的低いグリシニン含量(例えば10%〜15%)を有するβ−コングリシニンに富む画分が好ましい。しかし例えば乳製品をはじめとするその他の用途では、不透明な外観が好ましいかもしれない。したがってより高いグリシニン含量(例えば15%〜20%)を有するβ−コングリシニンに富む画分が、これらのタイプの製品では好ましい。
【0142】
典型的に10重量%のグリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、800ナノメートル(nm)で10%未満の透過パーセントを示す。
【0143】
タンパク質画分を含有する食品(例えば肉製品、ヨーグルト)について、下で特定の実施例において述べる。機能性に加えて、本発明のタンパク質画分を組み込むことは、一般に低コストタンパク質源を提供する。例えば特定の肉用途では、卵アルブミンなどの比較的高価な成分を省略して、より高い含量のタンパク質成分(例えばβ−コングリシニンに富む画分)を含めることができる。
【0144】
あくまで例示を目的とし、本発明の範囲またはそれが実施されてもよい様式の限定を意図しない、以下の実施例によって本発明を例示する。
【実施例】
【0145】
実施例1
本実施例は、様々な量の塩化カルシウムを使用して、ダイズタンパク質抽出物溶液からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分の調製することを実証する。4つの別個の沈殿中でダイズタンパク質を含有する抽出物溶液に、様々な量の塩化カルシウムを添加する。
【0146】
4つの別個の各沈殿について、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と、水酸化カルシウムとをpH9.7および温度32℃(90°F)で15分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物溶液を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0147】
重亜硫酸ナトリウム(0.5g、0.2g/l)を抽出物溶液に添加する。各ランにおいて、塩酸(1.0M)を溶液に添加してpHを7.5に調節し、塩化カルシウムを以下のようにpH7.5の抽出物溶液に添加する。
沈殿1−1Lの抽出物溶液あたり1.0gのCaCl2
沈殿2−1Lの抽出物溶液あたり2.0gのCaCl2
沈殿3−1Lの抽出物溶液あたり4.0gのCaCl2
沈殿4−1Lの抽出物溶液あたり6.0gのCaCl2
【0148】
図7は抽出物溶液のpHに対するCaCl2の添加の効果を示す。図7に示すように、CaCl2の添加が増大するにつれて抽出物pHは低下する。
【0149】
pHの7.5への調節およびカルシウムの添加は、グリシニンに富む沈殿を生じ、それをペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中における3660rpmでの遠心処理によって上清から分離して、グリシニンに富む画分を生成する。
【0150】
次に塩酸(1.0M)の添加によって上清のpHを4.8に調節し、β−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニン画分はまた、上述のように遠心分離によって分離され回収されて、秤量される。
【0151】
図8は、回収されたβ−コングリシニンに富む画分の量に対する、抽出物へのCaCl2の添加の効果を示す。図8に示すように、回収されるβ−コングリシニンに富む画分量は、CaCl2の添加の増大に従って減少する。
【0152】
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0153】
図9および10は、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分それぞれの相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。図に示すように、抽出物に投入されるCaCl2量が増大するにつれて、グリシニンおよびβ−コングリシニン純度は増大する。
【0154】
実施例2
本実施例は、実施例1で上述したように塩化カルシウムを投入したダイズタンパク質抽出物溶液から、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を調製する際のpHの影響を実証する。
【0155】
実施例1で上述したように調製された抽出溶液のpHを調節して、それからのグリシニンに富む画分の沈殿を増強する。
【0156】
重亜硫酸ナトリウム(抽出物溶液1Lあたり0.5g)を添加して、5つの別個のランで塩酸(1.0M)を添加しpHを調節し、その間にpHはそれぞれ7.5、7.0、6.5、6.0、および5.5に調節される。
【0157】
pHを所望のレベルに調節した後に、各抽出溶液に塩化カルシウム(抽出物溶液1Lあたり1.0g)を添加する。実施例1で上述したように、遠心分離によってグリシニンに富む沈殿が上清から分離する。次に塩酸(1.0M)の添加によって上清のpHを4.8に調節し、β−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニン画分はまた、実施例1で上述したように遠心分離によって分離され回収される。
【0158】
各画分を秤量し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0159】
表1は、様々なpHレベルでのグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分、上清の外観、および抽出物重量を示す。
【0160】
表1
【0161】
図11および12は、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分それぞれの相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。図11に示すように、グリシニンに富む画分の純度は、CaCl2添加pHの低下と共に低下する。図12に示すように、β−コングリシニンに富む画分の純度は、CaCl2添加pH6.5で最も高い。
【0162】
実施例3
本実施例は、実施例1で上述したように調製されるダイズタンパク質抽出物溶液からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を調製する際の還元剤としての重亜硫酸ナトリウム添加の効果を実証する。
【0163】
グリシニンに富む画分の沈殿前に抽出溶液に添加される重亜硫酸ナトリウム量のみが異なる5回の沈殿ランを実施する。各ランで抽出物に添加される重亜硫酸ナトリウム量は、1Lの抽出物あたり0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、および0.5gである。各ランにおいて、重亜硫酸ナトリウムの各量をpH9.7で抽出物に添加する。
【0164】
塩化カルシウム(1Lの抽出物あたり1g)を抽出溶液に添加して、グリシニンに富む画分を沈殿させる。次に抽出物溶液のpHをグリシニン沈殿のために塩酸(1.0M)の添加によって6.2に調節し、実施例1で上述したようにグリシニンに富む沈殿を遠心分離によって上清から分離する。次に塩酸(1.0M)の添加によって上清のpHを4.8に調節してβ−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニン画分はまた、実施例1で上述したように遠心分離によって分離され回収される。
【0165】
各画分を秤量し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0166】
表2は、様々なpHレベルでのグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分、上清の外観、および抽出物重量を示す。
【0167】
表2
【0168】
図13は、様々なランの過程における、β−コングリシニンに富む画分の相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。
【0169】
実施例4
本実施例は、4回の沈殿ランにおいて、様々な量の塩化カルシウムを使用してグリシニンに富む画分の沈殿を増強し、ダイズタンパク質抽出物溶液からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を調製することを実証する。
【0170】
ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と水酸化カルシウムとをpH8.5および温度32℃(90°F)で15分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物溶液を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0171】
重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を抽出物溶液に添加する。塩酸(1.0M)を溶液に添加してpHを7.5に調節する。
【0172】
4回の各ランにおいて、塩化カルシウムを以下のようにpH7.5の抽出物溶液に添加する。
i.ラン1−1Lの抽出物溶液あたり0.5gのCaCl2
ii.ラン2−1Lの抽出物溶液あたり1.0gのCaCl2
iii.ラン3−1Lの抽出物溶液あたり1.5gのCaCl2
iv.ラン4−1Lの抽出物溶液あたり2.0gのCaCl2
【0173】
塩化カルシウムの添加後、抽出物溶液はpH6.5を有し、沈殿したグリシニンを含有する。沈殿したグリシニンに富む画分を実施例1で上述したように分離して遠心分離する。
【0174】
次に塩酸(1.0M)の添加によって上清をpH4.7に調節し、β−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。次にβ−コングリシニン画分を遠心分離によって分離し回収する。
【0175】
各画分を秤量し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0176】
表3は、様々な塩化カルシウム添加レベルでのグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分、上清の外観、および抽出物重量を示す。
【0177】
表3
【0178】
図14および15は、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分それぞれの相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。
【0179】
図16は2つの画分中の塩化カルシウム添加量とタンパク質沈殿の間の関係を示す。
【0180】
実施例5
ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と水酸化カルシウムとをpH9.7および温度32℃(90°F)で30分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0181】
重亜硫酸ナトリウム(抽出物1Lあたり0.2g)を抽出物溶液に添加する。塩酸(1.0M)を溶液に添加してpHを6.25に調節する。
【0182】
塩化カルシウム(抽出物1Lあたり0.2g)をpH6.25で分散体に添加して、グリシニンに富む画分を沈殿させる。沈殿したグリシニンを実施例1で上述したように遠心処理によって分離する。
【0183】
次に塩酸(1.0M)の添加によって上清をpH4.7に調節し、抽出物からβ−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニンに富む画分を実施例1で上述したように遠心処理によって分離する。β−コングリシニンに富む画分を95℃で2分間低温殺菌して噴霧乾燥する。
【0184】
比較のために、上述のように調製されたダイズタンパク質抽出物からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を重亜硫酸ナトリウムまたは塩化カルシウムの添加なしで、pH5.2および4.7でそれぞれ分画する。
【0185】
重量比1:5の本実施例に従って調製された各熱処理(すなわち低温殺菌)画分と水からなるゲルを調製して、上述のプロトコルに従って、英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して分析し、それらの低温殺菌ゲル強度を判定する。
【0186】
重量比1:5の本実施例に従って調製された各画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルもまた調製して、上述のプロトコルに従って、英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して分析し、それらの低温殺菌ゲル強度を判定する。
【0187】
図17は、本実施例に従ってCaCl2を使用して分画される、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を含有するゲル(ゲル中に存在する塩化ナトリウムありまたはなし)、およびCaCl2添加なしで分画されるグリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分を含有するゲル(ゲル中に存在する塩化ナトリウムありまたはなし)について、低温殺菌ゲル強度を示す。
【0188】
実施例6
以下の実施例は、本方法に従って調製されたβ−コングリシニンに富むダイズタンパク質単離物をヨーロッパ乳化肉モデルに組み入れて肉製品を調製すること、および製品の機能特性について述べる。様々なβ−コングリシニン含量(60%、70%、および80%)のβ−コングリシニンに富む単離物と、ミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))から入手できるスープロ(Supro)EX33ダイズタンパク質単離物とを含有する製品を調製する。
【0189】
製品は表4に列挙する成分を含有する。
【0190】
表4
【0191】
肉製品を調製するステップは以下のようである。
(1)1/4インチプレートを通してランダム化してテンパーした豚肩肉および背脂を粉砕する。
(2)機械的骨抜きチキンおよび皮膚エマルジョンをテンパーする(必要ならば肉を使用時まで4℃で保存できる)。
(3)赤味ポーク、機械的骨抜きチキンタンパク質、塩、プラハ粉、リン酸塩、およびスパイス、続いて50/50の氷/水混合物を1725rpm軸速度のモデルNo.84142ホバート(Hobart)食物カッターのカッターボールに入れて、成分を高速で4分間細断し、脂肪および皮膚エマルジョン、続いてエリソルビン酸塩を添加して成分を高速でさらに3分間細断する。
(4)デンプンをカッターボールに添加して、成分を温度が12℃に達するまで細断する。
(5)カッターボールのフードをこすり落として、成分を温度が14℃に達するまで細断する。
(6)混合物を取り出してセルロースケーシングに詰める。
(7)表5のスケジュールに従ってソーセージを調理する。
【0192】
表5
【0193】
(8)調理ソーセージをすすいで4℃で保存する。
【0194】
ニューヨーク州スカーズデールのテクスチャ・テクノロジーズ社(Texture Technologies Corp.(Scarsdale,New York))から入手できるTA−1−D1テクスチャ分析器を使用して、2サイクルTPA法を使用して製品ホットドッグを分析し、それらの硬度および噛み応えを判定する。
【0195】
ホットドッグをいかなる加熱もなしで(冷たい)(すなわち分析前に室温保存)、および沸騰水浴中で内部温度およそ72℃(162°F)まで7〜10分加熱した後(熱い)に分析する。
【0196】
図18および19は、冷および熱サンプルの硬度および噛み応え結果を示す。
【0197】
実施例7
様々な肉製品(例えばホットドッグ)を調製して、本発明の方法に従って調製されるβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、およびそれぞれミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))から入手できるスープロ(Supro)EX33ダイズタンパク質単離物を含有する調合物の機能性を比較する。配合を表6に示す。β−コングリシニンに富む画分はタンパク質を基準にして、55%のβ−コングリシニンおよび33%のグリシニンを含有する。
【0198】
表6
【0199】
製品をあらゆる加熱に先だって(すなわち室温に保存後)(冷たい)、およびサンプルの内部温度がおよそ72℃(162°F)(熱い)になるまで(典型的に1〜10分間)沸騰水浴中に入れた後に試験して、硬度(すなわちゲル強度)および噛み応えを判定する。結果を下で、それぞれ表7(冷サンプル)および8(熱サンプル)に示す。実施例5で上述のインストロン(Instron)テクスチャ分析器を使用して、硬度および噛み応え測定を実施する。
【0200】
表7
【0201】
表8
【0202】
調理前後に生成物の重量を比較して、製品の調理収率を判定する。結果を表9に示す。
【0203】
表9
【0204】
実施例8
様々な肉を含まないソーセージ製品(すなわち植物性ホットドッグ)を調製して、調合物中で卵アルブミン代替え物としての、本方法に従って調製されたβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の適合性を判定する。表10に示すように、3成分を除く全ての含量が一定のままである5回の試行を実施する。卵アルブミンおよびスープロ(Supro)EX33含有、卵アルブミンなしでスープロ(Supro)EX33含有、および卵アルブミンなしでβ−コングリシニンに富むタンパク質画分含有の試行を実施した。β−コングリシニンに富む画分はタンパク質を基準にして、55%のβ−コングリシニンおよび33%のグリシニンを含有する。
【0205】
表10
【0206】
試行の製品を評価して、硬度(すなわちゲル強度)および噛み応えを判定する。
【0207】
実施例5で上述のインストロン(Instron)テクスチャ分析器を使用して、硬度および噛み応え測定を実施する。
【0208】
およびサンプルの内部温度がおよそ92℃(198°F)(熱い)になるまで(典型的に1〜10分間)沸騰水浴中に入れた後に、サンプルを分析して硬度(すなわちゲル強度)および噛み応えを判定する。結果を表11に示す。
【0209】
表11
【0210】
サンプルをまた、サンプルの過熱なしで硬度および噛み応えについて分析する(すなわちサンプルを室温に保存して、次に分析する)。結果を表12に示す。
【0211】
表12
【0212】
サンプルを含有するレトルト処理ゲルの硬度および噛み応えを下で表13に報告する。レトルト処理ゲルでは、サンプルを含有する缶をレトルトチャンバーに入れて、3分間排気タイマーを使用してゲルを110℃(230°F)でおよそ68分間処理する。ゲルの硬度および噛み応えを上述のように判定する。
【0213】
表13
【0214】
実施例9
様々な肉を含まないソーセージ製品(すなわち植物性ホットドッグ)を実施例8で上述のように調製して、調合物中の卵アルブミン代替え物としてのβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の適合性を判定する。様々な調合物が、卵アルブミン、本方法に従って調製されるβ−コングリシニンに富む画分、およびミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))から入手できるスープロ(SUPRO)EX33ダイズタンパク質単離物のいずれかを含有する。β−コングリシニンに富む画分は、無水ベースで96.6%のタンパク質、およびタンパク質を基準にして73.8%のβ−コングリシニンおよび16.7%のグリシニンを含有する。配合を下で表14に示す。
【0215】
表14
【0216】
実施例5で上述のインストロン(Instron)テクスチャ分析器を使用して卵アルブミンを含有するサンプルを分析し、その硬度および噛み応えを判定する。本実施例で上述のβ−コングリシニンに富む画分を含有する上の調合物の3個のサンプルを分析して、それらの硬度および噛み応えを判定する。スープロ(SUPRO)EX33を含有する上の調合物の4個のサンプルを分析して、硬度および噛み応えを判定する。結果を下で、β−コングリシニンに富む画分およびスープロ(SUPRO)EX33を含有する調合物の結果の平均を含む表15に示す。各測定を冷サンプル(すなわち室温に保存したサンプル)、および熱サンプル(すなわちサンプル内部温度がおよそ72℃(162°F)になるまで沸騰水浴に(典型的に1〜10分間)入れた後)で実施する。
【0217】
表15
【0218】
実施例10
β−コングリシニンに富む画分、95重量%タンパク質を含有するダイズタンパク質単離物、およびミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))によって製造されるXT12ダイズタンパク質単離物の様々なタンパク質源を使用してヨーグルトを調製する。
【0219】
ヨーグルトを分析してそれらの粘度、色、および官能特性を比較する。
【0220】
ヨーグルトを調製するステップは以下のようである。
(1)タンパク質成分を38℃(100°F)の水中で分散し、74〜77℃(165〜170°F)に加熱して、6分間緩慢に混合する。
(2)その他の成分(油以外)をドライブレンディングしてスラリーに添加し、混合を5分間継続する。
(3)植物油をスラリーに添加し、混合を3分間継続する。
(4)第2段階で500psi、第1段階で2500psiでスラリーを均質化する。
(5)88℃(190°F)で3〜4分間、加熱混合する。
(6)43℃(110°F)で調理し、以下のように(Ch.ハンセン(Hansen)YC−085培養物と共にインキュベートする。
1.YC−085(11.0g)をバターフィールド(Butterfield)滅菌リン酸緩衝液(110g)で1:10に希釈し、この希釈液をスラリーの2.5%(重量)でスラリーに添加する。
(7)43℃(110°F)でpH<4.6(4〜5時間)まで培養する。
(8)プロペラタイプのミキサーで撹拌して滑らかな外観を達成し、およそ475mL(16オンス)でパッケージして冷蔵する。
【0221】
XT12ダイズタンパク質単離物を含有するヨーグルトの配合を表16に示す。
【0222】
表16
【0223】
本実施例で上述したβ−コングリシニンに富む画分、またはダイズタンパク質単離物を含有するヨーグルトの配合を表17に示す。
【0224】
表17
【0225】
異なる配合のヨーグルトサンプルの粘度および白色指数(WI)の結果を表18に示す。示されるように、β−コングリシニンに富む画分を含有するヨーグルトは最大の白色指数を示す。
【0226】
表18
【0227】
12人の訓練された記述的パネリストを使用して、官能試験を実施する。ヨーグルトサンプルを19の香味および8つのテクスチャ属性について評価する。ヨーグルト容器を合わせて、およそ60mL(2オンス)の製品を2オンスのソロ(Solo)カップにすくい取り、蓋をする。各パネリストは、0=なし、および15=非常に強い、の15段階強度スケールで、独立に各サンプルの香味属性の強度を評価する。サンプルをランダム化して、単体の二連で提示する。分散分析(ANOVA)を実施して、製品および複製の効果を試験する。ANOVA結果が有意である場合、チューキー法を使用して平均値の多重比較を実施する。全ての差は、特に断りのない限り<0.05レベルで有意である。
【0228】
β−コングリシニンに富む画分を含有するヨーグルトは、XT12ダイズタンパク質単離物を含有するヨーグルトよりも、全体的香味インパクト、乳製品および甘さ香味が有意により高く、ダイズ/豆芳香が有意により低い。
【0229】
官能試験結果を表19〜20に要約する。(同一文字がそれに続く同一列の平均値は、a=0.05レベルで有意差がない)
【0230】
表19
【0231】
表20
【0232】
実施例11
本実施例は、CaCl2の添加ありまたはなしで実施される沈殿中のグリシニンに富む画分の粒度を実証する。
【0233】
各沈殿で、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と水酸化カルシウムとをpH8.5および温度32℃(90°F)で15分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物溶液を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0234】
ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で、3660rpmでの遠心処理によって使用済みフレークを除去した後、得られる抽出物に重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を添加する。
【0235】
抽出物を2つの等しい部分に分ける。第1のグリシニンに富む画分の沈殿のために、塩酸(1.0M)の添加によって第1の部分のpHを6.2に調節する。塩化カルシウム(固形分1Lあたり0.12g)を第2の部分に添加して、塩化カルシウムが溶解するまで混合物を10分間撹拌する。塩酸(1.0M)の添加によって第2の抽出物部分のpHをpH6.2に調節し、第2のグリシニンに富む画分を沈殿させる。
【0236】
英国のモルヴァン・インストゥルメンツ(Malvern Instruments(United Kingdom))から入手できるマスターライザー2000モルヴァン(Masterizer 2000 Malvern)粒度分析器を使用して、第1のおよび第2の画分の沈殿するタンパク質の粒度分布を分析する。結果を下で表21に示す。
【0237】
表21
【0238】
表21に示すように、CaCl2の使用はより大きな平均粒度およびより均一な粒度を提供する。
【0239】
実施例12
以下の実施例は、本発明の方法に従って、β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富むタンパク質画分を調製するための予備生産操作について詳述する。
【0240】
その80重量%が200メッシュスクリーンを通過できる、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークの水性混合物を調製する。ダイズフレークは、50重量%のタンパク質を含有する。フレークは全タンパク質を基準にして、10〜15%のβ−コングリシニンおよび40〜55%のグリシニンを含有する(すなわち総重量を基準にして、5〜7.5のβ−コングリシニンおよび20〜27.5のグリシニン)。
【0241】
全水:水酸化カルシウム比率10:1の水酸化カルシウム(すなわち石灰)を使用して、向流抽出によって、濾過され収集されたフレークからタンパク質を抽出する。およそ3.5kgのフレーク/分(8ポンドフレーク/分)が抽出機を通過し、それをpH8.5および32℃(90°F)に維持する。378L(100ガロン)タンクに含有される抽出物に、重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を添加する。CaCl2をタンクに添加して、1gの抽出固形分あたり0.012gのCa+2の総抽出物カルシウム濃度を達成する。
【0242】
タンク内にグリシニンに富む沈殿および上清を生じる沈殿タンクへの塩酸(1.0M)の添加によって、CaCl2処理抽出物からpH6.0でタンパク質が沈殿する。
【0243】
得られる混合物をおよそ46℃(115°F)の温度に加熱して、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で、3660rpmでの遠心処理によって清澄にし、グリシニンに富む画分を分離する。平板モジュール熱交換機を使用して、グリシニンに富む画分の分離後に残る上清をおよそ20℃(68°F)に冷却し、次にペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるSAMRボールタイプ遠心分離機に投入する。グリシニンに富む画分分離中の、シャープレス(Sharples)遠心分離機からのあらゆる溢流は、SAMR遠心分離機に投入する。
【0244】
SAMRからの上清を1900L(500ガロン)タンクに収集する。ひとたびおよそ1800kg(4000ポンド)の上清がタンク内に収集されたら、塩酸(1.0M)の添加によってβ−コングリシニンに富む画分をpH4.7で沈殿させる。必要ならば、平板モジュール熱交換機を使用してSAMRからの上清を32℃(90°F)に冷却する。
【0245】
SAMR中で得られた固形画分と上で得られたグリシニンに富む画分とを合わせ、この混合物を洗浄し、NaOHの添加によって中和し、150℃(300〜305°F)の温度に9〜15秒間加熱して噴霧乾燥する。
【0246】
SAMRからβ−コングリシニンに富む画分を回収し、さらなる処理のために34kg/分(75ポンド/分)の速度でSAMRに供給して、得られたケークを上のように中和し加熱して噴霧乾燥させる。
【0247】
pH6.0での沈殿から得られた混合物をおよそ57℃(135°F)の温度に加熱して、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で3660rpmでの遠心処理によって清澄にし、グリシニンに富む画分を分離して、グリシニンに富む画分の分離後に残る上清を冷却せずに、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるSAMRボールタイプ遠心分離機に投入すること以外は、追加的予備生産操作を上述のように実施する。
【0248】
第1の予備生産操作(遠心処理前の46℃(115°F)熱処理、および遠心処理後の上清冷却)、および追加的予備生産操作(グリシニンに富む沈殿および上清混合物の57℃(135°F)加熱、遠心処理後の上清冷却なし)で得られたβ−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分のタンパク質含量は、下で表22に示す。
【0249】
表22
【0250】
表22に示すように、第1の操作では、およそ55〜80%の全体的タンパク質収率が達成される。同様に追加的操作では、およそ54〜75%の全体的タンパク質収率が達成される。それらの全タンパク質含量を基準にした、追加的操作で得られた画分のタンパク質含量を下で表23に示す。
【0251】
表23
【0252】
実施例13
以下の実施例は、本発明の方法に従って、β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富むタンパク質画分を調製するための予備生産操作について詳述する。
【0253】
その80重量%が200メッシュスクリーンを通過できる、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークの水性混合物を調製する。ダイズフレークは、50重量%のタンパク質を含有する。フレークは全タンパク質を基準にして、10〜15%のβ−コングリシニンおよび40〜55%のグリシニンを含有する(すなわち総重量を基準にして、5〜7.5のβ−コングリシニンおよび20〜27.5のグリシニン)。
【0254】
全水:水酸化カルシウム比率10:1の水酸化カルシウム(すなわち石灰)を使用して、向流抽出によって、濾過され収集されたフレークからタンパク質を抽出する。およそ3.5kgのフレーク/分(8ポンドフレーク/分)が抽出機を通過し、それをpH8.5および32℃(90°F)に維持する。378L(100ガロン)タンクに含有される抽出物に、重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を添加する。CaCl2をタンクに添加して、1gの抽出固形分あたり0.012gのCa+2の総抽出物カルシウム濃度を達成する。
【0255】
タンク内にグリシニンに富む沈殿および上清を生じる沈殿タンクへの塩酸(1.0M)の添加によって、CaCl2処理抽出物からpH6.0でタンパク質が沈殿する。
【0256】
得られる混合物をおよそ63℃(145°F)の温度に加熱して、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で、3660rpmでの遠心処理によって清澄にし、グリシニンに富む画分を分離する。平板モジュール熱交換機を使用して、グリシニンに富む画分の分離後に残る上清をおよそ32℃(90°F)に冷却し、次にペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるSAMRボールタイプ遠心分離機に投入する。
【0257】
SAMRからの上清を1900L(500ガロン)タンクに収集する。ひとたびおよそ1800kg(4000ポンド)の上清がタンク内に収集されたら、塩酸(1.0M)の添加によってβ−コングリシニンに富む画分をpH4.7で沈殿させる。
【0258】
SAMR中で得られた固形画分と上で得られたグリシニンに富む画分とを合わせ、この混合物を洗浄し、NaOHの添加によって中和し、150℃(300〜305°F)の温度に9〜15秒間加熱して噴霧乾燥する。
【0259】
SAMRからβ−コングリシニンに富む画分を回収し、さらなる処理のために34kg/分(75ポンド/分)の速度でSAMRに供給して、得られたケークを上のように中和し加熱して噴霧乾燥させる。
【0260】
β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分の全タンパク質含量を下で表24に要約する。
【0261】
表24
【0262】
表24に示すように、およそ50%の全体的タンパク質収率が達成される。
【0263】
β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分のタンパク質含量を下で表25に要約する。
【0264】
表25
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】本発明の方法の一実施形態の工程図である。
【図2】本発明の方法の一実施形態の工程図である。
【図3】本発明のタンパク質画分の粘度に対するβ−コングリシニン/グリシニン含量、pH、および塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図4】本発明のタンパク質画分の粘度に対するβ−コングリシニン/グリシニン含量、pH、および塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図5】本発明のタンパク質画分の粘度に対するpHおよび塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図6】本発明のタンパク質画分の粘度に対するpHおよび塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図7】実施例1で述べられる方法のpHに対するCaCl2添加の効果を示す。
【図8】実施例1で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分の量に対するCaCl2添加の効果を示す。
【図9】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例1で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図10】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例1で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図11】様々なCaCl2添加pHにおける、実施例2で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図12】様々なCaCl2添加pHにおける、実施例2で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図13】様々な相対量のNaHSO3添加における、実施例3で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図14】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例4で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図15】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例4で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図16】CaCl2添加の相対量と、実施例4で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分およびβ−コングリシニン画分の量との間の関係を示す。
【図17】実施例5で述べられる方法に従って調製されるグリシニンに富むおよびβ−コングリシニン画分を含有するゲルについて、低温殺菌ゲル強度を示す。
【図18】実施例6に従って調製される、本発明のタンパク質画分を含有する製品の硬度結果を示す。
【図19】実施例6に従って生成される本発明のタンパク質画分を含有する製品の噛み応え結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能食品成分として使用するのに適した植物タンパク質画分、機能食品成分として使用するのに適した新規な植物タンパク質画分、および新規な植物タンパク質画分を含有する食品を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物タンパク質材料は機能食品成分として使用され、食品中の望ましい特性を増強する上で多数の用途を有する。ダイズタンパク質材料は、特に機能食品成分として広範な用途を持つ。ダイズタンパク質材料は、フランクフルトソーセージ、ソーセージ、ボローニャソーセージ、挽肉および細切れ肉、およびミートパティーをはじめとする肉の中で乳化剤として使用されて、肉を結合し、肉に良好なテクスチャおよびしっかりした噛み心地を与える。機能食品成分としてのダイズタンパク質材料の別の一般的な用途は、クリームスープ、グレービー、およびヨーグルト中におけるもので、ダイズタンパク質材料は増粘剤として作用し、食品にクリーム状の粘度を提供する。ダイズタンパク質材料はまた、ディップ、乳製品(例えば豆乳)、ツナ、パン、ケーキ、マカロニ、糖菓、ホイップトッピング、焼き菓子、飲料(例えば果汁)などの多数のその他の食品中、および多くのその他の用途で機能食品成分としても使用される。
【0003】
ダイズタンパク質材料は、一般にダイズフレーク、ダイズタンパク質濃縮物、またはダイズタンパク質単離物の形態である。ダイズフレークは、一般にダイズを脱皮、脱脂、および粉砕して製造され、典型的に無水ベースで65重量%未満のダイズタンパク質(より一般には無水ベースで45重量%〜65重量%のダイズタンパク質)を含有する。ダイズフレークはまた、可溶性炭水化物、ダイズ繊維などの不溶性炭水化物、およびダイズに固有の脂肪も含有する。ダイズフレークは、例えばヘキサンでの抽出によって脱脂してもよい。ダイズ粉、ダイズグリッツ、およびダイズミールは、ハンマーミルまたは空気ジェットミルなどの粉砕および製粉装置内で、フレークを所望の粒度に粉砕して脱脂ダイズフレークから製造される。粉砕された材料は、典型的に乾式加熱で熱処理し、または湿式加熱で蒸して粉砕フレークを「トースト」して、クニッツトリプシン阻害物質などのダイズ中に存在する抗栄養素を不活性化する。顕著な量の水の存在下で粉砕脱脂フレークを加熱処理することは、材料中のダイズタンパク質の変性を防止し、ダイズ材料への水の添加および除去に伴うコストを回避するために避けられる。得られた粉砕熱処理材料は、材料の平均粒度次第で、ダイズ粉、ダイズグリッツ、またはダイズミールである。ダイズ粉は、一般に150μm未満の粒度を有する。ダイズグリッツは一般に150〜1000μmの粒度を有する。ダイズミールは、一般に1000μmを超える粒度を有する。
【0004】
ダイズタンパク質濃縮物は、典型的に65重量%〜85重量%のダイズタンパク質を含有し、主要な非タンパク質構成要素は繊維である。ダイズタンパク質濃縮物は、フレークをアルコール水溶液または酸性水溶液のいずれかで洗浄し、タンパク質および繊維から可溶性炭水化物を除去して、脱脂ダイズフレークから形成してもよい。工業規模では、生じる廃液流の取り扱いおよび廃棄に相当な経費がかかる。
【0005】
より高度に精製されたダイズタンパク質材料であるダイズタンパク質単離物は、少なくとも90%のダイズタンパク質と、微量のまたは皆無の可溶性炭水化物または繊維を含有するように処理される。ダイズタンパク質単離物は、典型的にアルカリ性水性抽出剤で、脱脂ダイズフレークまたはダイズ粉からダイズタンパク質および水溶性炭水化物を抽出して形成される。水性抽出物は、可溶性タンパク質および可溶性炭水化物と共に、主に繊維である抽出物中で不溶性の材料から分離される。次に抽出物を酸で処理して抽出物のpHをタンパク質の等電点に調節し、抽出物からタンパク質を沈殿させる。可溶性炭水化物を保持する抽出物から沈殿タンパク質を分離し、中性pHに調節した後に乾燥させ、またはpH調節なしに乾燥させる。
【0006】
ダイズタンパク質は、挽肉および乳化肉製品のテクスチャに貢献するゲル化特性を提供する。ゲル構造は、調理肉エマルジョンに寸法安定性を提供し、それは調理肉エマルジョンにしっかりしたテクスチャを与え、調理肉エマルジョンに噛み応えを与え、ならびに水分および脂肪を保持するためのマトリックスを提供する。ダイズタンパク質は表面活性であり、油水界面に集合して脂肪および油滴の合体を阻害するので、ダイズタンパク質はまた、様々な食物用途において乳化剤としても機能する。ダイズタンパク質の乳化特性は、ダイズタンパク質含有材料を使用してスープおよびグレービーなどの食品を増粘するのを可能にする。ダイズタンパク質は、さらにおそらくはその乳化特性の機能として脂肪を吸収し、調理食物中の脂肪結合を促進することで調理方法中の脂肪の「脂肪分離」を低下させる。ダイズタンパク質はまた、水を吸収してそれを完成食品中に保持するように機能する。ダイズタンパク質材料の水分保持を利用して肉製品中の水分の調理損失を低下させ、肉の調理重量に収率増大を提供してもよい。完成食品中の保持水はまた、製品により柔らかい食感を提供するのに有用である。
【0007】
自然発生的ダイズタンパク質は、一般に親水性シェルに囲まれた疎水性コアを有する球形タンパク質である。例えばグリシニンおよびβ−コングリシニンなどの貯蔵タンパク質、およびボーマン−バーク阻害物質およびクニッツ阻害物質などのトリプシン阻害物質のような多数のダイズタンパク質画分が同定されている。また、ダイズタンパク質画分は、それらのスベドベリ係数(S)でのそれらの超遠心分離速度を特徴とする。2S、7S(すなわちβ−コングリシニン)、11S(すなわちグリシニン)、および15Sダイズタンパク質が同定されている。
【0008】
タンパク質画分(例えばβ−コングリシニンに富むまたはグリシニンに富む画分)が、pH4.0から5.0でダイズタンパク質材料溶液から沈殿されている。沈殿範囲全体で水溶性のままであるタンパク質は、一般にホエータンパク質と称される。
【0009】
タンパク質画分を分画するための様々な方法について、当該技術分野で述べられている。ハワード(Howard)らに付与された米国特許第4,368,151号明細書は、水溶性塩および亜硫酸イオンの存在下、pH5.8〜6.3で11Sタンパク質を沈殿させることで、水溶性7S(β−コングリシニン)および11S(グリシニン)タンパク質の水性混合物が分画され単離される方法について述べている。次に濃縮7SホエーのpHをpH5.3〜5.8に調節して、ホエーから実質的に全ての残留水溶性11Sタンパク質を沈殿させてもよく、次に濃縮7S画分をホエーから回収してもよい。分画は、それぞれ5%未満の7Sまたは11Sタンパク質不純物を含有する、11Sに富む単離物または7Sに富む単離物のいずれかを生成できると述べられている。
【0010】
ナガノ(Nagano)ら(J.Agric.Food Chem.、1992年、40巻、p.941〜944頁)は、pH7.5の水を使用してダイズタンパク質が抽出される方法について述べ、亜硫酸水素ナトリウムが還元剤として使用され、pH6.4、5.0、および4.8で3つのタンパク質画分が沈殿する。
【0011】
ウ(Wu)ら(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁)は、ナガノ(Nagano)ら(J.Agric.Food Chem.、1992年、40巻、941−944頁)が述べるのと類似した、グリシニンおよびβ−コングリシニンを分離するための実験室法のスケールアップについて述べている。ウ(Wu)らが述べる方法では、15kgの脱脂ダイズフレークを使用し、pH6.4、5.0、および4.8での沈殿ステップを実施して、グリシニンに富む画分、中間体画分、およびβ−コングリシニンに富む画分を生成する。
【0012】
ウ(Wu)ら(J.Agric.Food Chem.、2000年、48巻、2702〜2708頁)は、中間体混合物の沈殿なしにグリシニンに富む画分がpH6.0で沈殿し、β−コングリシニンに富む画分がpH4.5で沈殿する、スケールアップされた方法の修正について述べている。ウ(Wu)らは、この方法によるグリシニンに富む画分の収率が9.7%(無水ベース、db)で、β−コングリシニンに富む画分の収率が19.6%(db)であると報告した。β−コングリシニンに富む画分のタンパク質含量は、62.6%純度で91.6%(db)であると報告された。
【0013】
上の方法またはその他の方法に従って得られたβ−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分は、様々な機能性を示すことが多く、それらを様々な食品への組み込みに適切にすることが多い。
【0014】
例えばビアン(Bian)ら(JAOCS、2003年、80巻、6号、545〜549頁)は、ウ(Wu)ら(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁)およびウ(Wu)ら(J.Agric.Food Chem.、2000年、48巻、2702〜2708頁)の方法によって分画されるダイズタンパク質の機能特性について調査した。ウ(Wu)ら(JAOCS、1999、76巻、3号、285〜293頁)の方法によって生成される3つの画分(β−コングリシニンに富む、グリシニンに富む、および中間体画分)の機能特性は、ビアン(Bian)らによって選択されたpH範囲、イオン強度、およびタンパク質濃度下で研究された。例えばpH2〜3ではグリシニンに富む画分がβ−コングリシニンに富む画分より溶解性が高いと報告され、一方pH5〜6では、β−コングリシニンに富む画分がグリシニンに富む画分よりも溶解性が高いと報告された。ウ(Wuら)の方法(J.Agric.Food Chem.、2000年、48巻、2702〜2708頁)のグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分は、特定のpHで、ウ(Wuら)の方法(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁)によって生成する画分よりも高い溶解性を有すると報告される。
【0015】
ブリンジ(Bringe)らは、米国特許第6,171,640号明細書で、市販のダイズタンパク質成分と比べて改善された物理的(例えば安定性およびゲル化)および生理学的(例えばコレステロールおよびトリグリセリド低下)特性を有する高β−コングリシニン組成物について述べている。ブリンジ(Bringe)らは、40%を超えるβ−コングリシニンおよび10%未満のグリシニンを含有するダイズタンパク質組成物について報告した。
【0016】
上述の方法の1つ以上(例えばウ(Wu)ら(JAOCS、1999年、76巻、3号、285〜293頁))において、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分の沈殿間に沈殿する画分(すなわち中間体画分)は、典型的に80%未満のタンパク質を含有し、その内70%未満がグリシニンまたはβ−コングリシニンである。このような中間体画分は、典型的に機能性不良を示し、それらを食品への組み込みに不適切にする。それらの望ましくない機能性特性に加えて、中間体画分のタンパク質含量は、典型的に有用なタンパク質画分の収率に悪影響を及ぼす。
【0017】
上述の各方法には、例えば望ましくない収率、望ましくない純度、または望ましくない中間体画分生成などの1つ以上の欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがってタンパク質画分、特に改善された機能性および/または特定の食物用途に適した機能性を示すタンパク質画分を生成する、簡単で効果的な方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって簡単に述べると、本発明は、それぞれ第1の沈殿および第2の沈殿中で調製される、グリシニンに富むタンパク質画分およびβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を調製する方法に関するものである。第1の沈殿中では、液体媒体中のダイズタンパク質分散体のpHを5.3未満に調節して、分散体からグリシニンに富む画分を沈殿させ、β−コングリシニンを含む上清液体媒体を形成する。分散体は0.04〜0.07のイオン強度を有し、グリシニンに富む画分は、グリシニンに富む画分の全タンパク質含量を基準にして、少なくとも50重量%グリシニンのタンパク質含量を有する。方法は、上清液体媒体からグリシニンに富む画分を分離するステップをさらに含む。第2の沈殿中では、β−コングリシニンに富む画分が上清液体媒体から沈殿する。β−コングリシニンに富む画分は、β−コングリシニンに富む画分の全タンパク質含量を基準にして、少なくとも40重量%のβ−コングリシニンおよび10重量%〜25重量%のグリシニンを含む。
【0020】
本発明はまた、液体媒体中で二価の金属イオン源をダイズタンパク質を含む分散体に投入する、グリシニンに富むタンパク質画分およびβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を調製する方法に関するものである。この方法に従って、グリシニンに富む画分が分散体から沈殿され、β−コングリシニンを含む上清液体媒体が形成されて、グリシニンに富む画分が上清液体媒体から分離する。β−コングリシニンに富む画分は、上清液体媒体から沈殿する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、画分の全タンパク質含量を基準にして40重量%〜80重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含む、植物タンパク質画分に関するものである。タンパク質画分は、少なくとも80%の窒素溶解指数をさらに特徴とする。
【0022】
さらに別の実施形態では、本発明は画分の全タンパク質含量を基準にして、50重量%〜95重量%のグリシニンを含む植物タンパク質画分に関するものである。タンパク質画分は、80%未満の窒素溶解指数をさらに特徴とする。
【0023】
本発明はまた、水、食用油、および少なくとも10重量%の植物タンパク質を含む粘性塊を含む肉代用品に関するものであり、植物タンパク質は、肉代用品の全タンパク質含量を基準にして、少なくとも40重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含む、植物タンパク質画分を含む。肉代用品は、タンパク質1gあたり少なくとも800gの油の乳化能力をさらに特徴とする。
【0024】
本発明のその他の目的および特徴は、ある程度明らかであり、ある程度下で指摘される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
ダイズタンパク質材料を含有する溶液または分散体から、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を得るための方法が発見された。このような方法に従って、溶液または分散体からグリシニンに富む画分を沈殿させ、画分を分離し、上清からβ−コングリシニンに富む画分を沈殿させてもよい。得られるグリシニンに富む画分は、典型的に少なくとも80%のタンパク質を含有し、その内50%〜95%がグリシニンである。本発明の方法によって得られるβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に少なくとも80重量%のタンパク質を含有し、その内40%〜80%がβ−コングリシニンである。特定の実施形態では、二価の金属イオン源を分散体に投入し、片方または双方の画分の沈殿を促進する。
【0026】
本発明のタンパク質画分は、それらを様々な食品中で機能食品成分として使用するのに適したものにする機能性を示す。様々なグリシニンおよび/またはβ−コングリシニン含量を有する画分は、例えば溶解性およびゲル強度をはじめとする異なる機能性を示すことが観察されている。したがって特定のグリシニンおよび/またはβ−コングリシニン含量を有する画分は、特定の用途に好ましいかもしれない。例えばより高いグリシニン含量(例えば画分の全タンパク質含量を基準にして10%を超えるグリシニン)を有するβ−コングリシニンに富む画分は、典型的により低い量のグリシニンを含有する画分よりも高いゲル強度を示し、これは肉製品では重要な検討材料である。したがってこのようなβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に肉製品への組み込みに好ましい。画分の様々な機能性および画分の好ましい用途を下でより詳細に考察する。
【0027】
有利なことに特定の実施形態では、本発明の方法が行われて、上述のように、それぞれが比較的高いタンパク質含量を含有し、特定のタンパク質(例えばグリシニンまたはβ−コングリシニン)が濃縮されて、食品への組み込みに適する画分を提供する2つの連続的沈殿が含まれる。したがって本発明の方法を行って、望ましくない中間体画分の形成を回避しながら、食物用途への組み込みに適する2つの画分を生成できる。
【0028】
本発明の方法に従って、一般に水性媒体(例えば水)中に懸濁するかまたは別の様式で分散する植物タンパク質材料を含むダイズタンパク質含有分散体(すなわち供給流)からタンパク質画分が沈殿する。植物タンパク質材料は、典型的にダイズフレーク、ダイズグリッツ、ダイズミール、ダイズ粉、ダイズタンパク質濃縮物、ダイズタンパク質単離物、またはそれらの組み合わせの形態である。好ましくはダイズタンパク質材料は、脱脂ダイズフレークの形態である。分散体は、典型的に5重量%〜15重量%のダイズタンパク質材料、より典型的には7重量%〜10重量%のダイズタンパク質材料を含有する。
【0029】
図1は、脱脂ダイズフレークの水性分散体から、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分が得られる本発明の方法の一実施形態を示す。
【0030】
グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分の分離に先だって、ダイズタンパク質とその他の可溶性構成要素(例えば炭水化物)との粗製混合物を出発原料分散体から直接に、または水性分散体のpHを調節することで、調製(例えば抽出)してもよい。タンパク質材料を含む分散体のpHは、典型的にpH7〜10、より典型的にはpH8〜9に調節される。分散体のpHは、分散体とアルカリ性混合物とを接触させて調節される。典型的にアルカリ性混合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、および水酸化カリウムよりなる群から選択される化合物を含む。
【0031】
可溶性タンパク質およびその他の構成要素の抽出は、典型的に15℃〜60℃(60°F〜140°F)、より典型的には20℃〜40℃(70°F〜100°F)の温度で実施される。この抽出を典型的に少なくとも5分、より典型的に10〜30分続行する。
【0032】
可溶性タンパク質およびその他の構成要素の抽出は、グリシニン、β−コングリシニン、およびその他の可溶性構成要素(例えば可溶性炭水化物)を含む抽出物、およびそれからタンパク質が除去された使用済み材料(例えばダイズ繊維)を含む不溶性画分をもたらす。
【0033】
不溶性画分は、典型的に例えばペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラベル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機を使用して、遠心処理によって抽出物から分離される。不溶性画分はまた、濾過によって抽出物から分離してもよい。
【0034】
分離抽出物は、典型的に少なくとも4重量%のタンパク質、より典型的には6重量%〜8重量%のタンパク質を含む。分離抽出物は、一般に全タンパク質含量を基準にして少なくとも40%のグリシニン、および少なくとも20%のβ−コングリシニンを含む。
【0035】
タンパク質のジスルフィド結合の還元によって、グリシニンおよびβ−コングリシニン分離を容易にするために、還元剤を分離抽出物(すなわち抽出物)に添加できる。ジスルフィド結合の還元は、グリシニンとβ−コングリシニンタンパク質のもつれをほどくことによって、この分離を容易にするものと現在考えられている。グリシニンは典型的により大きな比率のジスルフィド結合を含有するので、グリシニンに富む画分の沈殿のための抽出物pHの調節に先だって、還元剤が好ましくは添加される。適切な還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム、ジチオスレイトール、およびメルカプトエタノールが挙げられる。重亜硫酸ナトリウムが当該食物等級規定を満たすことから、好ましくは還元剤は重亜硫酸ナトリウムを含む。
【0036】
典型的に1Lの抽出物あたり少なくとも0.1gの還元剤、より典型的には1Lの抽出物あたり0.1〜1.0gの還元剤、なおもより典型的には1Lの抽出物あたり0.2〜0.6gの還元剤が投入される。このような量の還元剤の投入は、典型的に本発明によって生成する食品への組み込みのための植物タンパク質画分中に、適切な還元剤含量(例えば100ppm未満)をもたらす。好ましくは植物画分中の還元剤濃度が100p.m.未満、より好ましくは20ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満であるような量で、あらゆる還元剤が添加される。
【0037】
本方法に従って、それに対する還元剤の投入に関係なく、抽出物のpHは調節されてグリシニンに富む画分が沈殿する。抽出物のpHは、典型的に塩酸、リン酸、および硫酸よりなる群から選択される化合物を含む酸性混合物を投入して調節される。好ましくは抽出物のpHは、塩酸を含む酸性混合物の投入によって調節される。
【0038】
抽出物のpHが低下するにつれて、グリシニン沈殿に好都合になり、それによってグリシニンに富む画分の純度、ひいてはβ−コングリシニンに富む画分の沈殿が増大することが観察されている。典型的にグリシニンに富む画分の沈殿のために、抽出物のpHは、7.5から6.5未満のpH、7.5から6.0未満のpH、7.5から5.5に調節される。例えば抽出物のpHは、pH7.5からpH5.3未満、実施形態によってはpH5.2未満に調節されてもよい。
【0039】
本発明の方法に従って、抽出物への二価の金属イオンの添加が、タンパク質画分の分離を増強することが発見された。図2は、脱脂ダイズフレークから得られた抽出物への二価の金属イオン源の添加を組み込んだ、本発明の方法の実施形態を示す。この好ましい効果は、ある程度、抽出物のイオン強度に対するこのようなイオン添加の効果のためであると現在考えられている。好ましくは抽出物のイオン強度は、0.02〜0.1、より好ましくは0.04〜0.07である。より低いイオン強度(すなわち0.02未満)ではいずれのタンパク質画分も沈殿せず、一方より高いイオン強度(すなわち0.1を超える)では、グリシニンおよびβ−コングリシニン画分の双方が沈殿する傾向があり、いずれの場合も特定のタンパク質に富む画分を提供できないことが観察されているので、抽出物のこのようなイオン強度を提供することは好ましい。
【0040】
特定の実施形態では、グリシニンに富む画分の沈殿に先だつ抽出物への二価の金属イオンの添加は、より均一の粒度を有するグリシニンに富む画分を提供し、さらに有利なことには、二価の金属イオン不在下で生成される沈殿物と比べて沈殿タンパク質の平均粒度を増大させる。典型的に二価の金属イオンの添加は、粒径で1μm〜52μmの粒度分布を有するグリシニンに富む画分をもたらす。より典型的には、粒度分布は2μm〜16μmである。二価の金属イオン存在下で沈殿するグリシニンに富む画分の沈殿タンパク質の平均粒度は、粒径で典型的に少なくとも5μmであり、より典型的には少なくとも6μmである。粒度分布のより大きな均一性、および全体的粒度の増大を達成することは、グリシニンに富む画分の分離を助ける。
【0041】
適切な二価の金属イオン源としては、例えばカルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩が挙げられる。好ましい実施形態では、二価の金属イオン源はCaCl2、別の実施形態ではMgCl2を含む。
【0042】
典型的に二価の金属イオン源は、少なくとも0.01モル濃度の濃度で抽出物中に存在する。さらに、または代案としては、二価の金属イオン源は、少なくとも0.5重量%の濃度で抽出物中に存在する。なおさらに、または代案としては、1Lの抽出物あたり少なくとも0.001gの二価の金属イオン源がそこに投入される。
【0043】
二価の金属イオンを抽出物に投入する場合、抽出物からのグリシニンに富む画分の沈殿のために、抽出物のpHは典型的に、pH6.5からpH5.3未満に調節され、より典型的にはpH6.5からpH5.0に調節される。
【0044】
この様式で抽出物のpHを調節することで、不溶性のグリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンを含む可溶性画分が生じる。グリシニンに富む画分の沈殿は、典型的に15℃〜35℃(60°F〜95°F)、より典型的には20℃〜32℃(70°F〜90°F)の温度で実施される。可溶性タンパク質の沈殿中に、典型的に抽出物は撹拌される。典型的に抽出物はかき混ぜによって撹拌される。撹拌の手段および強度は重要でないが、典型的に均一のpHおよび水性相から固相へのタンパク質の移動を促進するのに十分な程度に、抽出物が撹拌されるように選択される。
【0045】
グリシニンに富む画分の沈殿によって生じる上清は、典型的に少なくとも3.5重量%のタンパク質、より典型的には少なくとも5重量%のタンパク質、さらにより典型的には5重量%〜7重量%のタンパク質を含む。
【0046】
上清のpHは、典型的に塩酸、リン酸、および硫酸よりなる群から選択される化合物を含む酸性混合物を上清に投入することで調節され、β−コングリシニンに富む画分が沈殿する。好ましくは上清のpHは、塩酸の添加によって調節される。
【0047】
典型的に上清のpHは、グリシニン沈殿pHから4.5〜5.3に、より典型的には4.6〜5.0に調節され、β−コングリシニンに富む画分を含むタンパク質カードが沈殿する。β−コングリシニンに富む画分の沈殿はまた、グリシニンおよびβ−コングリシニン沈殿の全pH範囲にわたり可溶性であるホエータンパク質を含む上清混合物を形成する。特定の実施形態では、これらの可溶性タンパク質およびその他の構成要素を回収することが所望されるかもしれない。
【0048】
沈殿したグリシニンおよびβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に例えばペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラベル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster、PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機を使用して、遠心分離によってそれぞれの可溶性画分から分離される。沈殿した画分は、濾過によって分離してもよい。
【0049】
有利なことに、本発明の方法は連続的に実行してもよい。すなわちひとたびグリシニンに富む画分がダイズタンパク質材料含有する溶液または分散体から沈殿して、画分および上清が生成すると、上清からのβ−コングリシニンに富む画分の沈殿および回収を上述の考察に従って継続しながら、グリシニンに富む画分を回収してさらに処理(例えば遠心処理およびタンパク質含量測定)を施してもよい。
【0050】
本発明のグリシニンに富む画分は、一般に少なくとも80重量%のダイズタンパク質、より一般には少なくとも90重量%のダイズタンパク質を含む。ダイズタンパク質材料のタンパク質含量は、例えばその内容全体を参照によって本願明細書に援用したものとする、A.O.C.S.(米国油化学会)公定法Bc 4−91(1997)、Aa 5−91(1997)、またはBa 4d−90(1997)によって確認してもよい。
【0051】
本発明の方法は、高純度(すなわち高グリシニン含量)を有するグリシニンに富む画分を提供する。グリシニンに富む画分は、画分の全タンパク質含量を基準にして、典型的に少なくとも40%のグリシニン、より典型的には少なくとも50%のグリシニン、さらにより典型的には少なくとも60%のグリシニン、なおもより典型的には少なくとも70%のグリシニンを含む。一般に本発明のグリシニンに富む画分は、全タンパク質含量を基準にして50%〜95%のグリシニンを含む。
【0052】
特定の実施形態では、本発明のグリシニンに富む画分は、40重量%〜80重量%のグリシニンを含む。
【0053】
本発明のグリシニンに富む画分中のグリシニンとβ−コングリシニンとの重量比は、典型的に少なくとも10:1であり、より典型的には少なくとも15:1である。
【0054】
一般に本発明のβ−コングリシニンに富む画分は、少なくとも80重量%のダイズタンパク質、より一般には少なくとも90重量%のダイズタンパク質を含む。典型的にβ−コングリシニンに富む画分中に存在するダイズタンパク質の少なくとも80重量%は800,000ダルトン未満の分子量を有し、より典型的にはβ−コングリシニンに富む画分中のダイズタンパク質の少なくとも60%は1350〜800,000ダルトン、さらにより典型的には1350〜380,000ダルトンの分子量を有する。
【0055】
本発明の方法は、高純度(すなわち高β−コングリシニン含量)を有するβ−コングリシニンに富む画分を提供する。β−コングリシニンに富む画分は、画分の全タンパク質含量を基準にして、典型的に少なくとも40%のβ−コングリシニン、より典型的には少なくとも50%のβ−コングリシニン、さらにより典型的に少なくとも70%のβ−コングリシニンを含む。β−コングリシニンに富む画分は、画分の全タンパク質含量を基準にして、好ましくは40%〜75%のβ−コングリシニン、より好ましくは40%〜80%のβ−コングリシニンを含む。このような画分は画分の全タンパク質含量を基準にして、典型的に少なくとも10%のグリシニン、より典型的には少なくとも12%のグリシニン、さらにより典型的には少なくとも15%のグリシニン、なおもより典型的には少なくとも20%のグリシニンをさらに含む。特定の実施形態では、このような画分は画分の全タンパク質含量を基準にして、10%〜30%のグリシニン、10%〜15%のグリシニン、または15%〜20%のグリシニンを含む。
【0056】
本発明のβ−コングリシニンに富む画分中のβ−コングリシニンとグリシニンとの重量比は、典型的に少なくとも2.5:1、より典型的には3:1〜5:1、さらにより典型的には4:1〜5:1である。
【0057】
β−コングリシニンに富む画分は典型的に少なくとも40重量%のβ−コングリシニン、より典型的には少なくとも50重量%のβ−コングリシニンを含む。一般に本発明のβ−コングリシニンに富む画分は、50重量%〜75重量%のβ−コングリシニンを含む。
【0058】
典型的に可溶性炭水化物の大部分は、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分の沈殿中に生じる上清中に残留する。したがって本発明のグリシニンまたはβ−コングリシニン濃縮画分は、典型的に1重量%未満の炭水化物、より典型的には0.5重量%未満の炭水化物を含有する。
【0059】
タンパク質含量に加えて、画分の収率および純度は、例えば分画の有効性および画分の有望な機能性の指標として、重要な検討材料であることができる。一般に、そのタンパク質に富む画分中の特定のタンパク質の収率が増大するにつれて、画分の純度が低下することが観察されている。したがって本方法は、好ましくはそれらを様々な食物用途における使用に適切にする機能性を提供するのに、純度が十分な画分を生成しながら、タンパク質収率が商業的に実現可能な方法を提供するように実行される。
【0060】
本方法は典型的に少なくとも70%、より典型的には少なくとも80%、さらにより典型的には、少なくとも90%のグリシニン収率を達成する。
【0061】
β−コングリシニンの収率は、タンパク質材料の分散体中のβ−コングリシニン含量、およびβ−コングリシニンに富む画分中に存在するβ−コングリシニンを基準にして、典型的に少なくとも10%である。より典型的には、本方法は、10%〜80%、さらにより典型的には40%〜80%の収率を達成する。より高い収率で生じた画分の純度、したがって機能性は、悪化することが観察されている。
【0062】
典型的に上述の方法によって生成されたグリシニンに富む画分またはβ−コングリシニンに富むタンパク質カードは、それに対する水性アルカリ性組成物の添加によって中和される。このようなアルカリ性組成物は、典型的に水酸カルシウム、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウムよりなる群から選択される化合物を含む。濃縮カードの中和は、その中に存在するタンパク質を可溶化する。
【0063】
次に本発明の画分を典型的にさらに処理して、食品への画分の組み込みを助ける。このようなさらなる処理としては、例えば画分中に存在する微生物を破壊する熱処理(例えば低温殺菌および/または滅菌)や、乾燥(例えば噴霧乾燥)が挙げられる。典型的に低温殺菌は、画分を少なくとも95℃(少なくとも203°F)の温度、より典型的には少なくとも130℃(265°F)、より典型的には、130℃〜150℃(265°F〜305°F)の温度に加熱することを含む。
【0064】
画分はまた、噴霧乾燥させて、典型的に5重量%未満、より典型的に10重量%未満の水分含量を有する易流動性粉末を生成してもよい。画分は典型的に少なくとも95℃(200°F)の温度で噴霧乾燥させる。
【0065】
噴霧乾燥されたグリシニンに富む画分は、典型的に0.20〜0.35g/cm3のかさ密度を有する易流動性粉末の形態である。これらの乾燥させたタンパク質画分は、典型的に、前記粉末の10重量%〜15重量%が、U.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持されるような粒度分布を有する。これらの画分はまた、一般に前記粉末の15重量%〜25重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持され、または前記粉末の25重量%〜45重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持され、または前記粉末の45重量%〜60重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持されるような粒度分布も有してもよい。
【0066】
噴霧乾燥させたβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に0.20〜0.30g/cm3のかさ密度を有する易流動性粉末の形態である。これらの乾燥画分は、典型的に前記粉末の5重量%〜20重量%がU.S.ふるいサイズで200メッシュスクリーン上に保持され、35重量%〜60重量%がU.S.ふるいサイズで325メッシュスクリーン上に保持されるような粒度分布を有する。
【0067】
熱処理および噴霧乾燥画分は、典型的に少なくとも85重量%のタンパク質、より典型的には少なくとも92重量%のタンパク質を含有する。したがって本発明の方法に従って得られるタンパク質画分は、典型的にグリシニンに富むまたはβ−コングリシニンに富むダイズタンパク質単離物である。
【0068】
本発明のダイズタンパク質画分は、それらの様々なタンパク質含量のために様々な機能性を示す。これらの画分は、例えばホットドッグやソーセージなどの肉製品、豆乳や果汁などの飲料、ヨーグルト、およびフードバーをはじめとする多様な食物および飲料用途中で、機能食品成分として使用するのに適する。一般にβ−コングリシニンに富むタンパク質画分は、肉用途および特定の飲料用途(例えば豆乳)で使用するのに好ましい。
【0069】
本発明のタンパク質画分は、少なくともある程度は、画分の部分的変性タンパク質の凝集のために水性溶液中でゲルを形成できる。本発明の画分のゲル化特性は、その中でそれらが使用される肉製品のテクスチャおよび構造に貢献するので、水性環境における実質的なゲル形成が本発明の画分の望ましい品質である。画分のこの品質はまた、肉製品中に水分および脂肪を保持するためのマトリックスも提供して、未精製ダイズタンパク質材料を含有する調理肉製品が、調理中にその肉汁を保持できるようにする。
【0070】
本発明のタンパク質画分はまた、顕著なゲル強度を有するゲルを形成できる。ゲル強度は、ゲルを形成させるのに十分な時間、ダイズ材料サンプルと水を混合して調製されるゲルの強度の尺度である。1:5のダイズ材料:水の重量比率(ダイズ材料中の水分含量を水重量に含む)を有するゲルを調製して、蓋で密封される307×113mmの3個のアルミニウム缶に満たすのに使用する。
【0071】
ゲル強度は、一般に室温(すなわち15℃〜25℃)のゲルについて判定してもよく、また冷蔵ゲル(すなわち冷ゲル強度)、低温殺菌ゲル(すなわち低温殺菌ゲル強度)、およびレトルト処理ゲル(すなわちレトルト処理ゲル強度)について測定してもよい。これらの様々な測定は、様々な用途におけるダイズタンパク質材料の適合性に関係する。
【0072】
ゲル強度を判定するために、ゲルを含有する缶を開けて、ゲルを缶から分離する。ゲルが破壊されるまでプローブをゲル内に打ち込んでゲルの破壊点を測定する機器(好ましくは36mmディスクプローブ付きインストロンユニバーサル試験機(Instron Universal Testing Instrument)モデルNo.1122)でゲルの強度を測定し、記録されたゲルの破壊点からゲル強度を計算する。ゲル強度は、塩含有または非含有ゲルについて測定してもよく、塩を含有するゲルは典型的に2重量%の塩を含有する。塩は一般に、塩を含有する食物用途におけるダイズタンパク質材料の適合性が興味の対象である場合のゲル強度測定で使用される。
【0073】
(1)ゲル強度は、以下の式に従って計算される。
(2)ゲル強度(g)=(F/100)(G)(454)、
(3)式中、Fはチャート単位でのゲル破断点であり、100はチャート単位の可能な数であり、Gは機器の最大測定限界負荷ダイヤル読み取り×10(ポンド数)であり、454はポンドあたりのグラム数である。
【0074】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、典型的に少なくとも8,000g、より典型的には少なくとも10,000g、さらにより典型的には少なくとも12,000gのゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に12,000g〜16,000g、より典型的には14,000g〜16,000gのゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富む画分と水からなるゲルは、一般に600g未満、より一般には500g未満のゲル強度を有する。特定の実施形態ではこのようなゲルは400g〜600gのゲル強度を有する。
【0075】
塩を含有する食品への組み込み適合性の指標として、ゲル強度はまた、タンパク質画分、水、および塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても測定される。
【0076】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、典型的に少なくとも8,000g、より典型的には少なくとも10,000gのゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に10,000g〜14,000g、より典型的に12,000g〜13,000gのゲル強度を有する。
【0077】
重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に1500g未満のゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に1000g〜1500gのゲル強度を有する。
【0078】
冷ゲル強度は、ゲルが冷却温度に平衡化するのに十分な時間(通常16〜24時間)にわたる、−5℃〜5℃での調製直後冷却に続くダイズ材料のゲル強度の尺度である。したがって冷ゲル強度は、冷蔵される製品で使用するためのダイズタンパク質材料の適合性の指標を提供するかもしれない。
【0079】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなる冷蔵ゲルは、一般に少なくとも5000gの冷ゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に5000g〜7000g、より典型的には6000g〜7000gの冷ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に50g〜150gの冷ゲル強度を有する。
【0080】
冷ゲル強度はまた、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても判定される。重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも5000gの冷ゲル強度を有する。このようなゲルは典型的に5000g〜8000g、より典型的には6000g〜8000g、さらにより典型的には7000g〜8000gの冷ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に200g〜300gの冷ゲル強度を有する。
【0081】
低温殺菌ゲル強度では、ゲルを含有する缶をおよそ30分間沸騰水と接触させ、およそ30℃の水で冷却し、次にゲルが冷却温度に平衡化するのに十分な時間(通常16〜24時間)にわたり−5℃〜5℃に冷蔵する。低温殺菌ゲル強度は一般に、ダイズタンパク質材料に対する熱処理の効果を示唆するかもしれない。
【0082】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に少なくとも10,000g、より一般には少なくとも14,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。このようなゲルは、典型的に14,000g〜16,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:6のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に少なくとも13,500の低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に200g〜1000gの低温殺菌ゲル強度を有する。
【0083】
低温殺菌ゲル強度はまた、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても判定される。重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも8800g、より一般には少なくとも10,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。典型的にこのようなゲルは10,000g〜13,000gの低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:6のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも600gの低温殺菌ゲル強度を有する。
【0084】
重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に250g〜1500gの低温殺菌ゲル強度を有する。重量比1:6のグリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に100g〜400gの低温殺菌ゲル強度を有する。
【0085】
レトルト処理ゲル強度については、ゲルを含有する缶をレトルトチャンバーに入れ、3分排気タイマーを使用してゲルを110℃(230°F)でおよそ68分間処理する。処理直後、およそ30℃の水で缶を冷却し、ゲルが冷却温度に平衡化するのに十分な時間(通常16〜24時間)にわたり−5℃〜5℃に冷蔵する。レトルト処理ゲル強度を判定するために使用されるより高い温度は、一般に製品を高温で処理して製品を殺菌および滅菌することが必要である、室温で保管される製品(すなわち練乳製品)で使用するためのダイズタンパク質材料の適合性を示唆するかもしれない。
【0086】
重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、一般に少なくとも1000g、より一般には1800g〜10,000gのレトルト処理ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは一般に200g〜300gのレトルト処理ゲル強度を有する。
【0087】
レトルト処理ゲル強度はまた、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有するゲルについても判定される。重量比1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルは、一般に少なくとも3000g、より一般には3000g〜5000g、さらにより一般には4000g〜5000gのレトルト処理ゲル強度を有する。重量比1:5のグリシニンに富むタンパク質画分と水からなるゲルは、および2重量%の塩化ナトリウムは、一般に600g〜2500gのレトルト処理ゲル強度を有する。
【0088】
いくつかの食物用途では、エマルジョンを形成するダイズタンパク質材料の能力、およびこのようなエマルジョンの様々な特徴は重要な機能特性である。油と水は混和性でなく、それらの間の境界面を安定化する材料の不在下では、境界面の総表面積は最小化する。これは典型的に油相と水相の分離をもたらす。タンパク質は表面で変性して液滴(油または水)にコーティングを提供することで、これらの境界面を安定化できる。タンパク質は油および水の双方と相互作用して、実質的にそれらを互いに遮蔽できる。高分子量のタンパク質は、このような液滴表面でより大きく変性でき、小型タンパク質よりもさらに大きな安定性を提供することで、液滴合体を防止すると考えられる。
【0089】
本発明のタンパク質画分を使用して調製されるエマルジョンのテクスチャ、強度、および安定性はまた、水および油構成要素を含有する用途(例えばホットドッグなどの様々な肉用途)で使用するためのタンパク質の適合性の指標としても判定される。
【0090】
1000mL容量のビーカーに、20°±3C°に平衡化したダイズ油(840g 0.1g)を入れて、評価するダイズタンパク質材料のエマルジョンを調製する。次にビーカー表面をゴムべらで完全にこすり落としてビーカー内に残留する油を最小化し、オハイオ州トロイのホバート社(Hobart Corporation(Troy,OH))によって製造されるホバート(Hobart)食品カッターモデル#84145の細断ボールにダイズ油を投入する。食物カッターボールおよび蓋の温度は一般に20°±3℃であり、これは浄化後エマルジョン調製前に、ボールおよび蓋を冷水道水(例えば15℃〜25℃の温度)ですすぐことで達成してもよい。ダイズ材料サンプル(200.0g 0.lg)をカッターボールに投入し、油の表面全体の上に材料を迅速に広げる。ダイズ材料サンプルを油に投入した後、食物カッターの蓋を閉じて食物カッターを始動し、計時を開始する。ダイズ材料サンプルを油に添加して食物カッターを始動するのにかかる時間は、典型的に15秒未満である。20±3℃の水(1,150 10mL)は、2Lメスシリンダー内で測定される。食物カッターの始動後10秒以内に水を食物カッターに投入する。1分間の細断時間が過ぎた後、食物カッターおよびタイマーを停止する。食物カッターの蓋を取って、ゴムべらで完全にかきおとす。蓋を閉めてタイマーを開始し、細断を4分間継続する。所望ならば、合計細断時間5分で、ボールが1回転する間に塩(44.0g 0.1g)を添加する。塩含有食物用途(例えば肉用途)におけるダイズタンパク質材料の適合性を判定する目的で、塩をエマルジョン特性に加えてもよい。合計細断時間5.5分で食物カッターおよびタイマーを停止して、蓋の内側を完全にこすり落とす。細断を再びさらに1.5分続ける。合計細断時間7分後、食物カッターを停止して、ボール内のエマルジョン環からエマルジョンサンプルが得られる(すなわちサンプルはボールの側面またはカッターの蓋から採取されない)。エマルジョン調製の合計経過時間は、典型的に10分間を超えない。
【0091】
空洞部分がないように留意して詰め、およそ175mL(6.0オンス)容量の容器をエマルジョンで充填する。容器は高さ3.8cmおよび直径8cmを有する。カップの上部をステンレス鋼べらでこすり、表面を滑らかで平らにしてカップを室温に5分間静置する。英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して、カップ内のエマルジョンサンプルをエマルジョンテクスチャについて分析する。ゲル試験機速度コントロールを「速い」設定にして、21.5mmプローブをゲル試験機に装着する。エマルジョン含有カップをゲル試験機の天秤にのせて、プローブがあらゆる表面の凹凸を避けて、カップのほぼ中心でエマルジョン表面を貫通するように配置させる。次に天秤を風袋測定し、カップ充填の5分後に、ゲル試験機の「下げる」ボタンを押して分析を開始する。プローブがエマルジョンを貫通する際の天秤の表示を観察する。エマルジョンテクスチャ、または硬度は、プローブが自動的に準備完了位置に戻る前に天秤上で観察される最大力(g)である。
【0092】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5の肉用途に適切なタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、典型的に少なくとも90g、より典型的には少なくとも110gのエマルジョンテクスチャを示す。
【0093】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、水からなるエマルジョンは、一般に少なくとも150gのエマルジョンテクスチャ有する。このようなβ−コングリシニンに富む画分は、典型的に165g〜280gのエマルジョンテクスチャを有する。
【0094】
エマルジョンテクスチャを測定するために、3〜4個の容器(例えば177mL(6オンス)容量のアルミニウム缶、またはソロ(Solo)によって製造される205mL(7オンス)プラスチックカップ)を上述のように調製する。容器を反転し、非吸収性材料からできてプラスチックフィルムで覆われる平らなトレーにのせる。
【0095】
アルミニウム缶内のサンプルを沸騰水中におよそ30分間保持し、氷水浴中でおよそ15分間冷却し、5°±2℃で20時間〜32時間冷蔵する。これらのサンプルから得られた測定は、サンプルの「熱」エマルジョン強度を表す。
【0096】
プラスチック容器を5°±2℃で16時間〜32時間冷蔵する。これらのサンプルから得られた測定は、サンプルの「冷」エマルジョン強度を表す。
【0097】
英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して、エマルジョン強度について、カップ内のエマルジョンサンプルを分析する。ゲル試験機速度コントロールを「遅い」設定にして、10.9mmプローブをゲル試験機に装着する。エマルジョン表面を乱さないようにして、容器を冷蔵庫から取り出す。エマルジョン表面が不規則、凹凸、または破損している場合、容器を破棄して、別の容器を分析のために取り出す。エマルジョン含有カップをゲル試験機の天秤にのせて、カップのほぼ中心でエマルジョン表面を貫通するように配置させる。天秤を風袋測定し、ゲル試験機の「下げる」ボタンを押して分析を開始する。プローブがエマルジョンを貫通する際の天秤の表示を観察する。読み取りは最大に増大し、その後、読み取りは一定を保ち、または急速に低下する。最大読み取りをエマルジョン強度としてグラムで記録する。第2の容器内のサンプルを述べられるようにして分析する。2つの読み取りの差が10g未満であれば、2つの値の平均を報告する。2つの読み取りの差が10g以上であれば、残りの容器内のサンプルを分析して読み取りの平均を報告する。
【0098】
エマルジョンテクスチャおよび強度は、どちらも一般にエマルジョンの硬度、または固さに関連する。このような特性は、一般にしっかりした製品が所望される製品(例えば肉用途)に組み込むためのタンパク質画分の適合性を示唆する。
【0099】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5の肉用途で使用するのに適切なタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、一般に少なくとも90g、より典型的には少なくとも110gのエマルジョン強度を示す。
【0100】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、典型的に120〜185g、より典型的には160〜180gの冷エマルジョン強度を示す。
【0101】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなるエマルジョンは、典型的に180〜340g、より典型的には180〜315gの熱エマルジョン強度を示す。
【0102】
エマルジョン安定性を判定するため、エマルジョンテクスチャを測定するために、上述のように3個の容器(すなわち熱または冷サンプルのいずれかを含有する)を調製する。計量紙の清潔なシートを使用して、天秤の風袋をゼロにする。2つのエマルジョン充填カップを冷蔵庫から取り出す。エマルジョンを各カップから注意深く取り出して、長手方向に切断する。各半分を計量紙シートにのせる。サンプル重量が85g未満であればサンプルを破棄して、別のサンプルを得る。サンプル重量が85g〜90gであれば、重量を記録する。サンプル重量が90gを超える場合は、半割りエマルジョンの最上部曲面からエマルジョンを除去して85〜90gのサンプル重量を提供する。サンプルの初期重量を記録する。冷蔵容器からの4個の半割エマルジョンサンプルを評価する。スプレータイプの料理用油を軽く噴霧して、市販のフライパン(例えば直径12インチおよび深さ2インチを有する)の調理面を準備して、およそ15分70℃で予熱する。半割エマルジョンを30秒間隔で1つずつ予熱フライパンに入れる。サンプルをおよそ170℃で10分間炒める。フライパンから取り出す際に各サンプルを秤量して、その最終重量を記録する。次のエマルジョンを評価する前に、フライパンを清潔にする。
【0103】
調理中のサンプルの%重量損失として、エマルジョン安定性を計算する。
(1)エマルジョン安定性=(初期重量−最終重量)/初期重量)×100%
【0104】
調理時の水分損失指標としてのエマルジョン安定性(値が増大すると安定性が低下する)は、調理中の水分保持が製品の食感に影響する肉用途(例えばホットドッグ)で使用するためのダイズタンパク質材料の適合性の重要な指標かもしれない。
【0105】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる冷サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも2%、より典型的には約2〜5%のエマルジョン安定性を示す。
【0106】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる熱サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも4%、より典型的には約4〜7%のエマルジョン安定性を示す。
【0107】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のグリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる冷サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも3%、より典型的には約3〜4%のエマルジョン安定性を示す。
【0108】
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6で、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5のグリシニンに富むタンパク質画分、油、および水からなる熱サンプルエマルジョンは、典型的に少なくとも3%、より典型的には約3〜5%のエマルジョン安定性を示す。
【0109】
エマルジョン能力は、エマルジョンとして存在する水および油構成要素を含有する食品に組み込むタンパク質画分の重要な特徴かもしれない。タンパク質画分は、エマルジョンの油および水の境界面を提供する。タンパク質画分が適切なエマルジョン能力を有さなければ、エマルジョン構成要素は分離するかもしれず、例えば油が凝集塊中に保持されない肉用途の場合は、製品は十分な固さまたは構造を示さない。水中のダイズタンパク質材料の2重量%固形分分散体を調製して、ダイズタンパク質材料のエマルジョン能力を判定してもよい。次に10mL/分の速度でダイズ油を分散体(25g)に添加して、水中油エマルジョンを形成する。最終的には、ダイズ油の添加は油中水エマルジョンを生成する(すなわちエマルジョン転移点に達する)。エマルジョン転移点までに添加された油の容積を記録して、1gのタンパク質で乳化できる油の最大量としてエマルジョン能力を計算する。
【0110】
肉用途で使用するのに適した2重量%のタンパク質画分からなる水性分散体は、pH7で、典型的に1gのタンパク質あたり少なくとも400gの油、より典型的には1gのタンパク質あたり少なくとも600gの油のエマルジョン能力を有する。
【0111】
2重量%のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、pH7で、一般に1gのタンパク質あたり少なくとも500gの油のエマルジョン能力を有する。このような分散体は、典型的に1gのタンパク質あたり500〜900gの油、より典型的には1gのタンパク質あたり600〜900gの油、さらにより典型的には1gのタンパク質あたり700〜900gの油、なおもより典型的には1gのタンパク質あたり800〜900gの油のエマルジョン能力を有する。
【0112】
2重量%のグリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、pH7で、一般に1gのタンパク質あたり少なくとも400gの油、より一般には1gのタンパク質あたり400〜600gの油のエマルジョン能力を有する。
【0113】
本発明の画分のタンパク質に特徴的な1つの重要な機能性は、画分の窒素溶解指数で表されることが多い、水性溶液中でのそれらの溶解性である。高度に水溶性のダイズタンパク質を含有する画分は80%を超える窒素溶解指数を有し、一方多量の不水溶性ダイズタンパク質を含有する画分は25%未満の窒素溶解指数を有する。
【0114】
窒素溶解指数(NSI)はここでの用法では、以下のように定義される。
(1)NSI=(タンパク質含有サンプルの%水溶性窒素/タンパク質含有サンプル中の%総窒素)×100
(2)窒素溶解指数は、タンパク質含有材料中の全タンパク質に対する水溶性タンパク質の%の尺度を提供する。本発明の画分の窒素溶解指数は、標準分析法、具体的にはその内容全体を参照によって本願明細書に援用したA.O.C.S.方法Ba 11−65に従って測定される。方法Ba 11−65に従って、少なくとも95%のサンプルがU.S.等級100メッシュスクリーンを通過するように十分細かく粉砕された(平均粒度150μm未満)ダイズ材料サンプル(5g)を30℃で2時間120rpmで撹拌して、蒸留水(200mL)に懸濁する。次に追加的な蒸留水でサンプルを250mLに希釈する。ダイズ材料が全脂肪材料である場合は、サンプルは、少なくとも80%の材料がU.S.等級80メッシュスクリーン(およそ175μm)を通過し、90%がU.S.等級60メッシュスクリーン(およそ205μm)を通過するように十分細かく粉砕さえすればよい。粉砕中には典型的にドライアイスをダイズ材料サンプルに添加して、サンプル変性を防止する。サンプル抽出物(40mL)をデカントして1500rpmで10分間遠心分離し、上清のアリコートをケルダールタンパク質(PRKR)について分析し、その内容全体を参照によって本願明細書に援用したA.O.C.S公定法Bc 4−91(1997)、Ba 4d−90、またはAa 5−91に従ってダイズ材料サンプル中の水溶性窒素の%を判定する。PRKR方法によって、ダイズ材料サンプルの別個の部分を全タンパク質について分析し、サンプル中の総窒素を判定する。得られる%水溶性窒素および%総窒素の値を上の式で利用して、窒素溶解指数を計算する。ダイズタンパク質材料の意図される用途次第で、様々なpH値におけるダイズタンパク質材料の溶解性もまた、関心の対象になるかもしれない。サンプル抽出物(40mL)をデカントして1000rpmで10分間遠心分離する以外は、上述のようにして%可溶性タンパク質を判定する。ダイズタンパク質材料の溶解性は、例えば2〜10にわたる広いpH範囲で判定してもよい。
【0115】
40%〜75%または40%〜80%のβ−コングリシニン(すなわちβ−コングリシニンに富む画分)を含有する本発明のタンパク質画分は、pH7で、一般に少なくとも70%、より一般には少なくとも80%の窒素溶解指数を有する。典型的にこのような画分は、90%〜95%の窒素溶解指数を有する。
【0116】
50%〜95%のグリシニン(すなわちグリシニンに富む画分)を含有する本発明のタンパク質画分は、pH7で、一般に80%未満、より一般には60%〜80%の窒素溶解指数を有する。このような画分はpH3〜6で、一般に40%未満の窒素溶解指数を有する。
【0117】
タンパク質画分の溶解性は、画分が特定の食品への組み込みに好ましいかどうかに影響する。例えば高度に可溶性の画分は、消費者にとって一般に望まれない沈殿の形成を避けるために飲料用途で使用するのに好ましい。したがって飲料用途の場合、好ましくはダイズタンパク質画分は、少なくとも65%、より好ましくは75%〜90%の窒素溶解指数を有する。
【0118】
本発明のタンパク質画分は、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有する水性媒体中で、それらの溶解性を保持する。顕著な量の塩を含有する食品(例えば乳化肉またはスープ)中で機能食品成分として使用してもよいことから、これは本発明のタンパク質画分の重要な特徴である。このような溶解性は典型的に、以下の方法を使用して判定してもよい塩耐性指数で表される。塩化ナトリウム(0.75g)を秤量して、400mLビーカーに入れる。30°±1℃の水(150mL)をビーカーに添加して、塩を水中で完全に溶解する。塩溶液を混合チャンバーに入れ、ダイズ材料(5g)サンプルを混合チャンバー内の塩溶液に添加する。サンプルおよび塩溶液を毎分回転数7000±200(rpm)で5分間混合する。得られるスラリーを400mLのビーカーに移し、水(50mL)を使用して混合チャンバーをすすぐ。50mLのすすぎ水をスラリーに添加し、スラリーを含有するビーカーを30℃の水浴に入れて120rpmで60分間撹拌する。次に脱イオン水を使用して、ビーカー内容物を250mL容積の測定フラスコに定量的に移す。スラリーを脱イオン水で250mLに希釈してフラスコを数回反転し、フラスコ内容物を完全に混合する。スラリーのサンプル(45mL)を50mL遠心管に移して、スラリーを500×重力定数で10分間遠心分離する。遠心管から濾紙を通して上清を100mLビーカー内に濾過する。次にその内容全体を参照によって本願明細書に援用した、A.O.C.S公定法Bc 4−91(1997)、Ba 4d−90、またはAa 5−91に従って、濾液および元の乾燥ダイズ材料サンプルについてタンパク質含量分析を実施する。
【0119】
以下の式に従って塩耐性指数(STI)を計算する。
(1)STI(%)=(100)*(50)*(Pf/Pd)
(2)Pfは濾液中の%可溶性タンパク質を表し、一方Pdは乾燥ダイズ材料サンプル中の%全タンパク質を表す。
【0120】
本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分は、一般に少なくとも70%、より一般には少なくとも75%の塩耐性指数(すなわち塩存在下で測定される窒素溶解指数)を有する。典型的にこのような画分は、75%〜85%の塩耐性指数を有する。本発明のグリシニンに富むタンパク質画分は、一般に65%未満、より一般には62%未満の塩耐性指数を有する。乳化肉用途で使用されるタンパク質画分は、pH7で、好ましくは少なくとも45%、より好ましくは70%の塩耐性指数を有する。
【0121】
白色指数は、ダイズタンパク質含有材料および組成物の外観の1つの尺度である。一般に白色指数は、白色指数(WI)の定型表現、WI=L−3bを使用して白色指数を計算してもよい組成物について、L、a、およびb色値を提供する比色計を使用して判定される。L構成要素は、一般にサンプルの「明度」を示唆し、0に近いL値は黒色サンプルを示唆する一方、100に近いL値は白色サンプルを示唆する。b値はサンプル中に存在する黄色および青色を示唆し、正のb値は黄色の存在を示唆する一方、負のb値は青色の存在を示唆する。その他の色測定で使用してもよいa値は赤および緑色を示唆し、正の値は赤色の存在を示唆する一方、負の値は緑色の存在を示唆する。bおよびa値では、対応する色の強度が増大するにつれて、測定の絶対値が直接増大する。一般に比色計は、比色計と共に提供される白色標準タイルを使用して標準化される。次にサンプルをガラスセルに入れ、それを比色計に挿入する。サンプルセルを不透明カバーで覆い、サンプルを通過して検出器に到達し、サンプル測定中に定数の役割をする周辺光の可能性を最小化する。同一材料の複数サンプルが一般に測定されるので、読み取りをした後、サンプルセルを空にして典型的に再充填し、材料の白色指数を測定の平均として表す。適切な比色計としては、一般に例えば光学的センサーD25付きモデル#DP−9000をはじめとするバージニア州レストンのハンターラブ(Hunter Lab(Reston,VA))によって製造されるものが挙げられる。
【0122】
4%〜6%(一般に5重量%)の本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を含有する水性分散体は、pH7で、典型的に少なくとも20、より典型的には20〜45、さらにより典型的には25〜45の白色指数を有する。5重量%の水分含量を有するこのようなタンパク質画分の粉末は、一般に50〜60の白色指数を有する。
【0123】
4%〜6%(一般に5重量%)の本発明のグリシニンに富むタンパク質画分を含有する水性分散体は、pH7で、一般に少なくとも40、より一般には40〜50の白色指数を有する。5重量%の水分含量を有するこのようなタンパク質画分の粉末は、一般に50〜60の白色指数を有する。
【0124】
上述のようにβ−コングリシニンに富む画分は、それらの好ましい溶解性に基づいて、例えば豆乳製品をはじめとする飲料用途で使用するのに一般に好まれる。一般にβ−コングリシニンに富むタンパク質画分のグリシニン含量が増大すると、画分の分散体の白色指数が増大する。ミルク用途ではより高い白色度(例えば30〜40)が一般に好ましいので、高グリシニン含量(例えば15%〜20%)を有するβ−コングリシニンに富むタンパク質画分が乳製品で使用するのに一般に好ましい。しかしその他の飲料用途(例えば果汁)では、このような画分は一般に望ましくない。したがって非豆乳飲料用途では、より低いグリシニン含量(例えば10%〜15%)を有するβ−コングリシニンに富むタンパク質画分が一般に好ましい。
【0125】
肉用途の場合、製品の視覚特性に対する画分の影響を最小化するために、より低い白色度(例えば15〜20)が好ましい。したがってより低いグリシニン含量(例えば15%未満)を有するβ−コングリシニンに富むタンパク質画分が、一般に肉製品への組み込みのために好ましい。
【0126】
水性媒体中のタンパク質画分の粘度は、画分のタンパク質含量、相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量、サンプルのpH、温度、およびサンプル中の塩(典型的に2重量%の塩化ナトリウム)の存在次第で、一般に変動する。
【0127】
水性媒体中の画分のより高い粘度特性は、ゲル形成を促進し、それと関連している。したがって肉用途では、水性媒体中でより高い粘度を示す画分が一般に望ましい。画分のこのような高粘度は、少なくともある程度、画分の部分変性ダイズタンパク質の凝集、およびその水和能力によると考えられる。水性媒体中の画分のより高い粘度はまた、画分をグレービー、ヨーグルト、およびスープ、特にクリームスープ中で増粘剤として利用し、ベーキング用途で使用できるようにする。画分を飲料中に組み込む場合は、水性媒体中でより低い粘度を示すタンパク質画分が一般に好ましい。このようなタンパク質画分の粘度が高すぎると沈殿が形成するため、消費者の観点からこのような飲料の望ましさに悪影響を及ぼす。
【0128】
粘度とは、大型アニュラスを使用して、回転スピンドル粘度計で測定されるスラリーまたは溶液のみかけの粘度を指す。特に好ましい回転スピンドル粘度計は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計である。ダイズ材料のみかけの粘度は、ダイズ材料サンプルと水を秤量してダイズ材料と水の既知の比率(好ましくは重量で1部のダイズ材料に対して7部の水)を得て、ダイズ材料と水をブレンダーまたはミキサー内で合わせて混合し、温度20℃およびpH7でダイズ材料と水の均質スラリーを形成して、大型アニュラスを使用して、およそ毎分回転数30〜60(rpm)および30〜70%のトルクで作動する回転スピンドル粘度計で、スラリーのみかけの粘度を測定して、測定される。本発明の画分タンパク質分散体の所望の粘度は、意図される用途に左右される。
【0129】
典型的にpH5.6で20℃の水性媒体中において、β−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、20〜225センチポアズ、さらにより典型的には40〜120センチポアズの粘度を有する。
【0130】
塩の存在は、本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分のサンプルの粘度に影響するかもしれない。画分が組み込まれる多くの用途は顕著な量の塩を含有するので、塩(例えば塩化ナトリウム)を含有する本発明のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分を含有する分散体の粘度は、有用な測定値である。典型的にβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH5.6で20℃の水性媒体中において200センチポアズ未満の粘度を有する。一般にこのようなサンプルの粘度は20〜200センチポアズ、より一般には20〜125センチポアズである。
【0131】
典型的に、β−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中で30センチポアズ未満の粘度を有する。同様に、β−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、pH6.9〜7.1で20℃の水性媒体中で2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、25センチポアズ未満の粘度を有する。
【0132】
典型的にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、pH5.6で20℃の水性媒体中で225センチポアズ未満の粘度を有する。特定の実施形態では、このようなサンプルの粘度は、50〜120センチポアズであり、その他の実施形態では粘度は120〜225センチポアズである。
【0133】
塩の存在は、本発明のグリシニンに富むタンパク質画分のサンプルの粘度に影響するかもしれない。典型的にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH5.6で20℃の水性媒体中で、50センチポアズ未満、より典型的には25センチポアズ未満、さらにより典型的には20センチポアズ未満の粘度を有する。
【0134】
典型的にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中で25センチポアズ未満の粘度を有する。同様にグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体は、2重量%の塩化ナトリウムの存在にかかわらず、pH6.9〜7.1で20℃の水性媒体中で25センチポアズ未満の粘度を有する。
【0135】
図3および4に示すように、2重量%の塩化ナトリウムありまたはなしのpH7.0〜7.2または5.6で20℃の水性媒体中における、β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、画分の相対β−コングリシニン/グリシニン含量次第で変動する。
【0136】
図5に示すように、塩化ナトリウムの不在下で、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、一般に増大するpHと共に増大する。これも図5に示すように、塩化ナトリウムの不在下で、pH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、一般に増大するpHと共に減少する。
【0137】
図6に示すように、特定の実施形態では、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、特定のpH(図6に示すようにおよそpH5.5)まで増大するpHと共に増大し、次に増大するpHと共に減少する。これも図6に示すように、2重量%の塩化ナトリウムを含有するpH7.0〜7.2で20℃の水性媒体中におけるグリシニンに富むタンパク質画分の7重量%分散体の粘度は、一般に増大するpHと共に減少する。
【0138】
分散体通過する特定の波長の光の百分率(すなわち透過パーセント)によって示唆される本発明のタンパク質画分の水性分散体の半透明性は、意図される用途次第で重要な機能的特徴かもしれない。
【0139】
ダイズタンパク質材料(20g)のサンプルを例えばソロ(Solo)によって製造される7オンスプラスチックカップなどのおよそ205mL容量の逆円錐台容器に入れる。小型ブレンダージャー内に水(180mL)を投入して、例えばオステライザー(Osterizer)ブレンダーなどのブレンダーのブレンダージャー内の水にサンプルを緩慢に添加して、サンプル損失を避ける。ブレードアセンブリーをブレンダージャーに装着して、混合物を最低設定で30秒間混合する。未分散サンプルが存在する場合、小型へらを使用してスラリー中に分散する。ブレンダージャーの蓋を元に戻して、スラリーを最低速度でさらに5秒間混合する。サンプルをブレンダージャーから取り出して上述の逆円錐台容器内に入れ、それを覆って60分間静置する。次にスラリーを撹拌して、スラリーのサンプル(45mL)を50mLナルゲン(Nalgene)遠心管に移し、管の蓋を留める。遠心管を97℃に予熱した水浴に入れて、45分間放置する。3個までのサンプルを一度に分析してもよく、その場合、5分間隔でサンプルを水浴に投入する。サンプルが加熱される間、フィッシャーブランド(Fisherbrand)からの半透明な顕微鏡スライド(カラーフロスト(Colorfrost))をサンプル情報で標識し、未標識面の底にゴムガスケットをのせる。使い捨てピペット使用して熱いサンプルをガスケットに入れ、面を緩慢に下げて空気が入らないようにする。次に少なくとも1時間サンプルを冷却させる。乾燥生成物または過剰な水分をスライドアセンブリーから取り出す。バックマン(Backman)分光光度計(DU640)使用してサンプルを分析する。サンプルを典型的に400nmおよび800nmの波長で分析する。分光光度計を使用してサンプルの吸光度を同一様式で測定し、結果を記録してもよい。所望の透過率または吸光度(すなわちタンパク質画分分散体を通過するまたはそれに吸収される光の相対量)は、一般に意図される用途に左右される。
【0140】
典型的に10重量%のβ−コングリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、800ナノメートル(nm)で少なくとも60%の透過パーセントを示す。より典型的には、このような分散体は800nmで少なくとも70%、より典型的には70%〜95%、さらにより典型的には80%〜95%の透過パーセントを示す。
【0141】
β−コングリシニンに富む画分のグリシニン含量が増大するにつれて、透過パーセントが減少する(すなわちこのような画分の水性分散体の不透明度が増大する)かもしれないことが観察されている。例えば肉用途および果汁などの飲料用途をはじめとする特定の用途では、製品に不透明度を与えるかもしれない画分は、このような製品の視覚特性に対するその悪影響に基づいて望ましくない。したがって特定の場合、これらのタイプの製品では、比較的低いグリシニン含量(例えば10%〜15%)を有するβ−コングリシニンに富む画分が好ましい。しかし例えば乳製品をはじめとするその他の用途では、不透明な外観が好ましいかもしれない。したがってより高いグリシニン含量(例えば15%〜20%)を有するβ−コングリシニンに富む画分が、これらのタイプの製品では好ましい。
【0142】
典型的に10重量%のグリシニンに富むタンパク質画分からなる水性分散体は、800ナノメートル(nm)で10%未満の透過パーセントを示す。
【0143】
タンパク質画分を含有する食品(例えば肉製品、ヨーグルト)について、下で特定の実施例において述べる。機能性に加えて、本発明のタンパク質画分を組み込むことは、一般に低コストタンパク質源を提供する。例えば特定の肉用途では、卵アルブミンなどの比較的高価な成分を省略して、より高い含量のタンパク質成分(例えばβ−コングリシニンに富む画分)を含めることができる。
【0144】
あくまで例示を目的とし、本発明の範囲またはそれが実施されてもよい様式の限定を意図しない、以下の実施例によって本発明を例示する。
【実施例】
【0145】
実施例1
本実施例は、様々な量の塩化カルシウムを使用して、ダイズタンパク質抽出物溶液からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分の調製することを実証する。4つの別個の沈殿中でダイズタンパク質を含有する抽出物溶液に、様々な量の塩化カルシウムを添加する。
【0146】
4つの別個の各沈殿について、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と、水酸化カルシウムとをpH9.7および温度32℃(90°F)で15分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物溶液を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0147】
重亜硫酸ナトリウム(0.5g、0.2g/l)を抽出物溶液に添加する。各ランにおいて、塩酸(1.0M)を溶液に添加してpHを7.5に調節し、塩化カルシウムを以下のようにpH7.5の抽出物溶液に添加する。
沈殿1−1Lの抽出物溶液あたり1.0gのCaCl2
沈殿2−1Lの抽出物溶液あたり2.0gのCaCl2
沈殿3−1Lの抽出物溶液あたり4.0gのCaCl2
沈殿4−1Lの抽出物溶液あたり6.0gのCaCl2
【0148】
図7は抽出物溶液のpHに対するCaCl2の添加の効果を示す。図7に示すように、CaCl2の添加が増大するにつれて抽出物pHは低下する。
【0149】
pHの7.5への調節およびカルシウムの添加は、グリシニンに富む沈殿を生じ、それをペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中における3660rpmでの遠心処理によって上清から分離して、グリシニンに富む画分を生成する。
【0150】
次に塩酸(1.0M)の添加によって上清のpHを4.8に調節し、β−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニン画分はまた、上述のように遠心分離によって分離され回収されて、秤量される。
【0151】
図8は、回収されたβ−コングリシニンに富む画分の量に対する、抽出物へのCaCl2の添加の効果を示す。図8に示すように、回収されるβ−コングリシニンに富む画分量は、CaCl2の添加の増大に従って減少する。
【0152】
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0153】
図9および10は、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分それぞれの相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。図に示すように、抽出物に投入されるCaCl2量が増大するにつれて、グリシニンおよびβ−コングリシニン純度は増大する。
【0154】
実施例2
本実施例は、実施例1で上述したように塩化カルシウムを投入したダイズタンパク質抽出物溶液から、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を調製する際のpHの影響を実証する。
【0155】
実施例1で上述したように調製された抽出溶液のpHを調節して、それからのグリシニンに富む画分の沈殿を増強する。
【0156】
重亜硫酸ナトリウム(抽出物溶液1Lあたり0.5g)を添加して、5つの別個のランで塩酸(1.0M)を添加しpHを調節し、その間にpHはそれぞれ7.5、7.0、6.5、6.0、および5.5に調節される。
【0157】
pHを所望のレベルに調節した後に、各抽出溶液に塩化カルシウム(抽出物溶液1Lあたり1.0g)を添加する。実施例1で上述したように、遠心分離によってグリシニンに富む沈殿が上清から分離する。次に塩酸(1.0M)の添加によって上清のpHを4.8に調節し、β−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニン画分はまた、実施例1で上述したように遠心分離によって分離され回収される。
【0158】
各画分を秤量し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0159】
表1は、様々なpHレベルでのグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分、上清の外観、および抽出物重量を示す。
【0160】
表1
【0161】
図11および12は、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分それぞれの相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。図11に示すように、グリシニンに富む画分の純度は、CaCl2添加pHの低下と共に低下する。図12に示すように、β−コングリシニンに富む画分の純度は、CaCl2添加pH6.5で最も高い。
【0162】
実施例3
本実施例は、実施例1で上述したように調製されるダイズタンパク質抽出物溶液からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を調製する際の還元剤としての重亜硫酸ナトリウム添加の効果を実証する。
【0163】
グリシニンに富む画分の沈殿前に抽出溶液に添加される重亜硫酸ナトリウム量のみが異なる5回の沈殿ランを実施する。各ランで抽出物に添加される重亜硫酸ナトリウム量は、1Lの抽出物あたり0.1g、0.2g、0.3g、0.4g、および0.5gである。各ランにおいて、重亜硫酸ナトリウムの各量をpH9.7で抽出物に添加する。
【0164】
塩化カルシウム(1Lの抽出物あたり1g)を抽出溶液に添加して、グリシニンに富む画分を沈殿させる。次に抽出物溶液のpHをグリシニン沈殿のために塩酸(1.0M)の添加によって6.2に調節し、実施例1で上述したようにグリシニンに富む沈殿を遠心分離によって上清から分離する。次に塩酸(1.0M)の添加によって上清のpHを4.8に調節してβ−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニン画分はまた、実施例1で上述したように遠心分離によって分離され回収される。
【0165】
各画分を秤量し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0166】
表2は、様々なpHレベルでのグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分、上清の外観、および抽出物重量を示す。
【0167】
表2
【0168】
図13は、様々なランの過程における、β−コングリシニンに富む画分の相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。
【0169】
実施例4
本実施例は、4回の沈殿ランにおいて、様々な量の塩化カルシウムを使用してグリシニンに富む画分の沈殿を増強し、ダイズタンパク質抽出物溶液からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を調製することを実証する。
【0170】
ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と水酸化カルシウムとをpH8.5および温度32℃(90°F)で15分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物溶液を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0171】
重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を抽出物溶液に添加する。塩酸(1.0M)を溶液に添加してpHを7.5に調節する。
【0172】
4回の各ランにおいて、塩化カルシウムを以下のようにpH7.5の抽出物溶液に添加する。
i.ラン1−1Lの抽出物溶液あたり0.5gのCaCl2
ii.ラン2−1Lの抽出物溶液あたり1.0gのCaCl2
iii.ラン3−1Lの抽出物溶液あたり1.5gのCaCl2
iv.ラン4−1Lの抽出物溶液あたり2.0gのCaCl2
【0173】
塩化カルシウムの添加後、抽出物溶液はpH6.5を有し、沈殿したグリシニンを含有する。沈殿したグリシニンに富む画分を実施例1で上述したように分離して遠心分離する。
【0174】
次に塩酸(1.0M)の添加によって上清をpH4.7に調節し、β−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。次にβ−コングリシニン画分を遠心分離によって分離し回収する。
【0175】
各画分を秤量し、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)によって分析して、画分のタンパク質含量を判定する。
【0176】
表3は、様々な塩化カルシウム添加レベルでのグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分、上清の外観、および抽出物重量を示す。
【0177】
表3
【0178】
図14および15は、グリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分それぞれの相対グリシニンおよびβ−コングリシニン含量を示す。
【0179】
図16は2つの画分中の塩化カルシウム添加量とタンパク質沈殿の間の関係を示す。
【0180】
実施例5
ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と水酸化カルシウムとをpH9.7および温度32℃(90°F)で30分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0181】
重亜硫酸ナトリウム(抽出物1Lあたり0.2g)を抽出物溶液に添加する。塩酸(1.0M)を溶液に添加してpHを6.25に調節する。
【0182】
塩化カルシウム(抽出物1Lあたり0.2g)をpH6.25で分散体に添加して、グリシニンに富む画分を沈殿させる。沈殿したグリシニンを実施例1で上述したように遠心処理によって分離する。
【0183】
次に塩酸(1.0M)の添加によって上清をpH4.7に調節し、抽出物からβ−コングリシニンに富む画分を沈殿させる。β−コングリシニンに富む画分を実施例1で上述したように遠心処理によって分離する。β−コングリシニンに富む画分を95℃で2分間低温殺菌して噴霧乾燥する。
【0184】
比較のために、上述のように調製されたダイズタンパク質抽出物からグリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を重亜硫酸ナトリウムまたは塩化カルシウムの添加なしで、pH5.2および4.7でそれぞれ分画する。
【0185】
重量比1:5の本実施例に従って調製された各熱処理(すなわち低温殺菌)画分と水からなるゲルを調製して、上述のプロトコルに従って、英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して分析し、それらの低温殺菌ゲル強度を判定する。
【0186】
重量比1:5の本実施例に従って調製された各画分と水、および2重量%の塩化ナトリウムからなるゲルもまた調製して、上述のプロトコルに従って、英国のステーブル・マイクロ・システムズ(Stable Micro Systems Ltd.(England))によって製造されるTA.TXT2テクスチャ分析器を使用して分析し、それらの低温殺菌ゲル強度を判定する。
【0187】
図17は、本実施例に従ってCaCl2を使用して分画される、グリシニンに富むおよびβ−コングリシニンに富む画分を含有するゲル(ゲル中に存在する塩化ナトリウムありまたはなし)、およびCaCl2添加なしで分画されるグリシニンに富む画分およびβ−コングリシニンに富む画分を含有するゲル(ゲル中に存在する塩化ナトリウムありまたはなし)について、低温殺菌ゲル強度を示す。
【0188】
実施例6
以下の実施例は、本方法に従って調製されたβ−コングリシニンに富むダイズタンパク質単離物をヨーロッパ乳化肉モデルに組み入れて肉製品を調製すること、および製品の機能特性について述べる。様々なβ−コングリシニン含量(60%、70%、および80%)のβ−コングリシニンに富む単離物と、ミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))から入手できるスープロ(Supro)EX33ダイズタンパク質単離物とを含有する製品を調製する。
【0189】
製品は表4に列挙する成分を含有する。
【0190】
表4
【0191】
肉製品を調製するステップは以下のようである。
(1)1/4インチプレートを通してランダム化してテンパーした豚肩肉および背脂を粉砕する。
(2)機械的骨抜きチキンおよび皮膚エマルジョンをテンパーする(必要ならば肉を使用時まで4℃で保存できる)。
(3)赤味ポーク、機械的骨抜きチキンタンパク質、塩、プラハ粉、リン酸塩、およびスパイス、続いて50/50の氷/水混合物を1725rpm軸速度のモデルNo.84142ホバート(Hobart)食物カッターのカッターボールに入れて、成分を高速で4分間細断し、脂肪および皮膚エマルジョン、続いてエリソルビン酸塩を添加して成分を高速でさらに3分間細断する。
(4)デンプンをカッターボールに添加して、成分を温度が12℃に達するまで細断する。
(5)カッターボールのフードをこすり落として、成分を温度が14℃に達するまで細断する。
(6)混合物を取り出してセルロースケーシングに詰める。
(7)表5のスケジュールに従ってソーセージを調理する。
【0192】
表5
【0193】
(8)調理ソーセージをすすいで4℃で保存する。
【0194】
ニューヨーク州スカーズデールのテクスチャ・テクノロジーズ社(Texture Technologies Corp.(Scarsdale,New York))から入手できるTA−1−D1テクスチャ分析器を使用して、2サイクルTPA法を使用して製品ホットドッグを分析し、それらの硬度および噛み応えを判定する。
【0195】
ホットドッグをいかなる加熱もなしで(冷たい)(すなわち分析前に室温保存)、および沸騰水浴中で内部温度およそ72℃(162°F)まで7〜10分加熱した後(熱い)に分析する。
【0196】
図18および19は、冷および熱サンプルの硬度および噛み応え結果を示す。
【0197】
実施例7
様々な肉製品(例えばホットドッグ)を調製して、本発明の方法に従って調製されるβ−コングリシニンに富むタンパク質画分、およびそれぞれミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))から入手できるスープロ(Supro)EX33ダイズタンパク質単離物を含有する調合物の機能性を比較する。配合を表6に示す。β−コングリシニンに富む画分はタンパク質を基準にして、55%のβ−コングリシニンおよび33%のグリシニンを含有する。
【0198】
表6
【0199】
製品をあらゆる加熱に先だって(すなわち室温に保存後)(冷たい)、およびサンプルの内部温度がおよそ72℃(162°F)(熱い)になるまで(典型的に1〜10分間)沸騰水浴中に入れた後に試験して、硬度(すなわちゲル強度)および噛み応えを判定する。結果を下で、それぞれ表7(冷サンプル)および8(熱サンプル)に示す。実施例5で上述のインストロン(Instron)テクスチャ分析器を使用して、硬度および噛み応え測定を実施する。
【0200】
表7
【0201】
表8
【0202】
調理前後に生成物の重量を比較して、製品の調理収率を判定する。結果を表9に示す。
【0203】
表9
【0204】
実施例8
様々な肉を含まないソーセージ製品(すなわち植物性ホットドッグ)を調製して、調合物中で卵アルブミン代替え物としての、本方法に従って調製されたβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の適合性を判定する。表10に示すように、3成分を除く全ての含量が一定のままである5回の試行を実施する。卵アルブミンおよびスープロ(Supro)EX33含有、卵アルブミンなしでスープロ(Supro)EX33含有、および卵アルブミンなしでβ−コングリシニンに富むタンパク質画分含有の試行を実施した。β−コングリシニンに富む画分はタンパク質を基準にして、55%のβ−コングリシニンおよび33%のグリシニンを含有する。
【0205】
表10
【0206】
試行の製品を評価して、硬度(すなわちゲル強度)および噛み応えを判定する。
【0207】
実施例5で上述のインストロン(Instron)テクスチャ分析器を使用して、硬度および噛み応え測定を実施する。
【0208】
およびサンプルの内部温度がおよそ92℃(198°F)(熱い)になるまで(典型的に1〜10分間)沸騰水浴中に入れた後に、サンプルを分析して硬度(すなわちゲル強度)および噛み応えを判定する。結果を表11に示す。
【0209】
表11
【0210】
サンプルをまた、サンプルの過熱なしで硬度および噛み応えについて分析する(すなわちサンプルを室温に保存して、次に分析する)。結果を表12に示す。
【0211】
表12
【0212】
サンプルを含有するレトルト処理ゲルの硬度および噛み応えを下で表13に報告する。レトルト処理ゲルでは、サンプルを含有する缶をレトルトチャンバーに入れて、3分間排気タイマーを使用してゲルを110℃(230°F)でおよそ68分間処理する。ゲルの硬度および噛み応えを上述のように判定する。
【0213】
表13
【0214】
実施例9
様々な肉を含まないソーセージ製品(すなわち植物性ホットドッグ)を実施例8で上述のように調製して、調合物中の卵アルブミン代替え物としてのβ−コングリシニンに富むタンパク質画分の適合性を判定する。様々な調合物が、卵アルブミン、本方法に従って調製されるβ−コングリシニンに富む画分、およびミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))から入手できるスープロ(SUPRO)EX33ダイズタンパク質単離物のいずれかを含有する。β−コングリシニンに富む画分は、無水ベースで96.6%のタンパク質、およびタンパク質を基準にして73.8%のβ−コングリシニンおよび16.7%のグリシニンを含有する。配合を下で表14に示す。
【0215】
表14
【0216】
実施例5で上述のインストロン(Instron)テクスチャ分析器を使用して卵アルブミンを含有するサンプルを分析し、その硬度および噛み応えを判定する。本実施例で上述のβ−コングリシニンに富む画分を含有する上の調合物の3個のサンプルを分析して、それらの硬度および噛み応えを判定する。スープロ(SUPRO)EX33を含有する上の調合物の4個のサンプルを分析して、硬度および噛み応えを判定する。結果を下で、β−コングリシニンに富む画分およびスープロ(SUPRO)EX33を含有する調合物の結果の平均を含む表15に示す。各測定を冷サンプル(すなわち室温に保存したサンプル)、および熱サンプル(すなわちサンプル内部温度がおよそ72℃(162°F)になるまで沸騰水浴に(典型的に1〜10分間)入れた後)で実施する。
【0217】
表15
【0218】
実施例10
β−コングリシニンに富む画分、95重量%タンパク質を含有するダイズタンパク質単離物、およびミズーリ州セントルイスのソラエ社(Solae Company(St.Louis,MO))によって製造されるXT12ダイズタンパク質単離物の様々なタンパク質源を使用してヨーグルトを調製する。
【0219】
ヨーグルトを分析してそれらの粘度、色、および官能特性を比較する。
【0220】
ヨーグルトを調製するステップは以下のようである。
(1)タンパク質成分を38℃(100°F)の水中で分散し、74〜77℃(165〜170°F)に加熱して、6分間緩慢に混合する。
(2)その他の成分(油以外)をドライブレンディングしてスラリーに添加し、混合を5分間継続する。
(3)植物油をスラリーに添加し、混合を3分間継続する。
(4)第2段階で500psi、第1段階で2500psiでスラリーを均質化する。
(5)88℃(190°F)で3〜4分間、加熱混合する。
(6)43℃(110°F)で調理し、以下のように(Ch.ハンセン(Hansen)YC−085培養物と共にインキュベートする。
1.YC−085(11.0g)をバターフィールド(Butterfield)滅菌リン酸緩衝液(110g)で1:10に希釈し、この希釈液をスラリーの2.5%(重量)でスラリーに添加する。
(7)43℃(110°F)でpH<4.6(4〜5時間)まで培養する。
(8)プロペラタイプのミキサーで撹拌して滑らかな外観を達成し、およそ475mL(16オンス)でパッケージして冷蔵する。
【0221】
XT12ダイズタンパク質単離物を含有するヨーグルトの配合を表16に示す。
【0222】
表16
【0223】
本実施例で上述したβ−コングリシニンに富む画分、またはダイズタンパク質単離物を含有するヨーグルトの配合を表17に示す。
【0224】
表17
【0225】
異なる配合のヨーグルトサンプルの粘度および白色指数(WI)の結果を表18に示す。示されるように、β−コングリシニンに富む画分を含有するヨーグルトは最大の白色指数を示す。
【0226】
表18
【0227】
12人の訓練された記述的パネリストを使用して、官能試験を実施する。ヨーグルトサンプルを19の香味および8つのテクスチャ属性について評価する。ヨーグルト容器を合わせて、およそ60mL(2オンス)の製品を2オンスのソロ(Solo)カップにすくい取り、蓋をする。各パネリストは、0=なし、および15=非常に強い、の15段階強度スケールで、独立に各サンプルの香味属性の強度を評価する。サンプルをランダム化して、単体の二連で提示する。分散分析(ANOVA)を実施して、製品および複製の効果を試験する。ANOVA結果が有意である場合、チューキー法を使用して平均値の多重比較を実施する。全ての差は、特に断りのない限り<0.05レベルで有意である。
【0228】
β−コングリシニンに富む画分を含有するヨーグルトは、XT12ダイズタンパク質単離物を含有するヨーグルトよりも、全体的香味インパクト、乳製品および甘さ香味が有意により高く、ダイズ/豆芳香が有意により低い。
【0229】
官能試験結果を表19〜20に要約する。(同一文字がそれに続く同一列の平均値は、a=0.05レベルで有意差がない)
【0230】
表19
【0231】
表20
【0232】
実施例11
本実施例は、CaCl2の添加ありまたはなしで実施される沈殿中のグリシニンに富む画分の粒度を実証する。
【0233】
各沈殿で、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークおよび水(水とフレークとの重量比10:1)の混合物と水酸化カルシウムとをpH8.5および温度32℃(90°F)で15分間接触させて、ダイズタンパク質抽出物溶液を調製する。ダイズフレークは50重量%のタンパク質を含有する。フレークは、全タンパク質を基準にして10〜15%のβ−コングリシニン、および40〜55%のグリシニンを含有する。
【0234】
ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で、3660rpmでの遠心処理によって使用済みフレークを除去した後、得られる抽出物に重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を添加する。
【0235】
抽出物を2つの等しい部分に分ける。第1のグリシニンに富む画分の沈殿のために、塩酸(1.0M)の添加によって第1の部分のpHを6.2に調節する。塩化カルシウム(固形分1Lあたり0.12g)を第2の部分に添加して、塩化カルシウムが溶解するまで混合物を10分間撹拌する。塩酸(1.0M)の添加によって第2の抽出物部分のpHをpH6.2に調節し、第2のグリシニンに富む画分を沈殿させる。
【0236】
英国のモルヴァン・インストゥルメンツ(Malvern Instruments(United Kingdom))から入手できるマスターライザー2000モルヴァン(Masterizer 2000 Malvern)粒度分析器を使用して、第1のおよび第2の画分の沈殿するタンパク質の粒度分布を分析する。結果を下で表21に示す。
【0237】
表21
【0238】
表21に示すように、CaCl2の使用はより大きな平均粒度およびより均一な粒度を提供する。
【0239】
実施例12
以下の実施例は、本発明の方法に従って、β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富むタンパク質画分を調製するための予備生産操作について詳述する。
【0240】
その80重量%が200メッシュスクリーンを通過できる、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークの水性混合物を調製する。ダイズフレークは、50重量%のタンパク質を含有する。フレークは全タンパク質を基準にして、10〜15%のβ−コングリシニンおよび40〜55%のグリシニンを含有する(すなわち総重量を基準にして、5〜7.5のβ−コングリシニンおよび20〜27.5のグリシニン)。
【0241】
全水:水酸化カルシウム比率10:1の水酸化カルシウム(すなわち石灰)を使用して、向流抽出によって、濾過され収集されたフレークからタンパク質を抽出する。およそ3.5kgのフレーク/分(8ポンドフレーク/分)が抽出機を通過し、それをpH8.5および32℃(90°F)に維持する。378L(100ガロン)タンクに含有される抽出物に、重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を添加する。CaCl2をタンクに添加して、1gの抽出固形分あたり0.012gのCa+2の総抽出物カルシウム濃度を達成する。
【0242】
タンク内にグリシニンに富む沈殿および上清を生じる沈殿タンクへの塩酸(1.0M)の添加によって、CaCl2処理抽出物からpH6.0でタンパク質が沈殿する。
【0243】
得られる混合物をおよそ46℃(115°F)の温度に加熱して、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で、3660rpmでの遠心処理によって清澄にし、グリシニンに富む画分を分離する。平板モジュール熱交換機を使用して、グリシニンに富む画分の分離後に残る上清をおよそ20℃(68°F)に冷却し、次にペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるSAMRボールタイプ遠心分離機に投入する。グリシニンに富む画分分離中の、シャープレス(Sharples)遠心分離機からのあらゆる溢流は、SAMR遠心分離機に投入する。
【0244】
SAMRからの上清を1900L(500ガロン)タンクに収集する。ひとたびおよそ1800kg(4000ポンド)の上清がタンク内に収集されたら、塩酸(1.0M)の添加によってβ−コングリシニンに富む画分をpH4.7で沈殿させる。必要ならば、平板モジュール熱交換機を使用してSAMRからの上清を32℃(90°F)に冷却する。
【0245】
SAMR中で得られた固形画分と上で得られたグリシニンに富む画分とを合わせ、この混合物を洗浄し、NaOHの添加によって中和し、150℃(300〜305°F)の温度に9〜15秒間加熱して噴霧乾燥する。
【0246】
SAMRからβ−コングリシニンに富む画分を回収し、さらなる処理のために34kg/分(75ポンド/分)の速度でSAMRに供給して、得られたケークを上のように中和し加熱して噴霧乾燥させる。
【0247】
pH6.0での沈殿から得られた混合物をおよそ57℃(135°F)の温度に加熱して、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で3660rpmでの遠心処理によって清澄にし、グリシニンに富む画分を分離して、グリシニンに富む画分の分離後に残る上清を冷却せずに、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるSAMRボールタイプ遠心分離機に投入すること以外は、追加的予備生産操作を上述のように実施する。
【0248】
第1の予備生産操作(遠心処理前の46℃(115°F)熱処理、および遠心処理後の上清冷却)、および追加的予備生産操作(グリシニンに富む沈殿および上清混合物の57℃(135°F)加熱、遠心処理後の上清冷却なし)で得られたβ−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分のタンパク質含量は、下で表22に示す。
【0249】
表22
【0250】
表22に示すように、第1の操作では、およそ55〜80%の全体的タンパク質収率が達成される。同様に追加的操作では、およそ54〜75%の全体的タンパク質収率が達成される。それらの全タンパク質含量を基準にした、追加的操作で得られた画分のタンパク質含量を下で表23に示す。
【0251】
表23
【0252】
実施例13
以下の実施例は、本発明の方法に従って、β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富むタンパク質画分を調製するための予備生産操作について詳述する。
【0253】
その80重量%が200メッシュスクリーンを通過できる、ミネソタ州ミネアポリスのカーギル(Cargill,Inc.(Minneapolis,MN))によって製造される脱脂汎用白色ダイズフレークの水性混合物を調製する。ダイズフレークは、50重量%のタンパク質を含有する。フレークは全タンパク質を基準にして、10〜15%のβ−コングリシニンおよび40〜55%のグリシニンを含有する(すなわち総重量を基準にして、5〜7.5のβ−コングリシニンおよび20〜27.5のグリシニン)。
【0254】
全水:水酸化カルシウム比率10:1の水酸化カルシウム(すなわち石灰)を使用して、向流抽出によって、濾過され収集されたフレークからタンパク質を抽出する。およそ3.5kgのフレーク/分(8ポンドフレーク/分)が抽出機を通過し、それをpH8.5および32℃(90°F)に維持する。378L(100ガロン)タンクに含有される抽出物に、重亜硫酸ナトリウム(0.2g/L)を添加する。CaCl2をタンクに添加して、1gの抽出固形分あたり0.012gのCa+2の総抽出物カルシウム濃度を達成する。
【0255】
タンク内にグリシニンに富む沈殿および上清を生じる沈殿タンクへの塩酸(1.0M)の添加によって、CaCl2処理抽出物からpH6.0でタンパク質が沈殿する。
【0256】
得られる混合物をおよそ63℃(145°F)の温度に加熱して、ペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるシャープレス(Sharples)3400傾斜遠心分離機中で、3660rpmでの遠心処理によって清澄にし、グリシニンに富む画分を分離する。平板モジュール熱交換機を使用して、グリシニンに富む画分の分離後に残る上清をおよそ32℃(90°F)に冷却し、次にペンシルベニア州ウォーミンスターのアルファ・ラバル・セパレーション(Alfa Laval Separation Inc.(Warminster,PA))によって製造されるSAMRボールタイプ遠心分離機に投入する。
【0257】
SAMRからの上清を1900L(500ガロン)タンクに収集する。ひとたびおよそ1800kg(4000ポンド)の上清がタンク内に収集されたら、塩酸(1.0M)の添加によってβ−コングリシニンに富む画分をpH4.7で沈殿させる。
【0258】
SAMR中で得られた固形画分と上で得られたグリシニンに富む画分とを合わせ、この混合物を洗浄し、NaOHの添加によって中和し、150℃(300〜305°F)の温度に9〜15秒間加熱して噴霧乾燥する。
【0259】
SAMRからβ−コングリシニンに富む画分を回収し、さらなる処理のために34kg/分(75ポンド/分)の速度でSAMRに供給して、得られたケークを上のように中和し加熱して噴霧乾燥させる。
【0260】
β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分の全タンパク質含量を下で表24に要約する。
【0261】
表24
【0262】
表24に示すように、およそ50%の全体的タンパク質収率が達成される。
【0263】
β−コングリシニンに富むおよびグリシニンに富む画分のタンパク質含量を下で表25に要約する。
【0264】
表25
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】本発明の方法の一実施形態の工程図である。
【図2】本発明の方法の一実施形態の工程図である。
【図3】本発明のタンパク質画分の粘度に対するβ−コングリシニン/グリシニン含量、pH、および塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図4】本発明のタンパク質画分の粘度に対するβ−コングリシニン/グリシニン含量、pH、および塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図5】本発明のタンパク質画分の粘度に対するpHおよび塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図6】本発明のタンパク質画分の粘度に対するpHおよび塩化ナトリウムの存在の効果を示す。
【図7】実施例1で述べられる方法のpHに対するCaCl2添加の効果を示す。
【図8】実施例1で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分の量に対するCaCl2添加の効果を示す。
【図9】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例1で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図10】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例1で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図11】様々なCaCl2添加pHにおける、実施例2で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図12】様々なCaCl2添加pHにおける、実施例2で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図13】様々な相対量のNaHSO3添加における、実施例3で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図14】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例4で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図15】様々な相対量のCaCl2添加における、実施例4で述べられる方法で回収されるβ−コングリシニンに富む画分のタンパク質プロフィールを示す。
【図16】CaCl2添加の相対量と、実施例4で述べられる方法で回収されるグリシニンに富む画分およびβ−コングリシニン画分の量との間の関係を示す。
【図17】実施例5で述べられる方法に従って調製されるグリシニンに富むおよびβ−コングリシニン画分を含有するゲルについて、低温殺菌ゲル強度を示す。
【図18】実施例6に従って調製される、本発明のタンパク質画分を含有する製品の硬度結果を示す。
【図19】実施例6に従って生成される本発明のタンパク質画分を含有する製品の噛み応え結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画分の全タンパク質含量を基準にして、40重量%〜80重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含み、さらに少なくとも80%の窒素溶解指数を特徴とする、植物タンパク質画分。
【請求項2】
75%〜85%の塩耐性指数を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項3】
前記画分が、前記タンパク質画分の全タンパク質含量を基準にして、12重量%を超えるグリシニンを含む、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項4】
前記画分の全タンパク質含量を基準にして、40重量%〜75重量%のβ−コングリシニン、および10重量%〜15重量%のグリシニンを含む、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項5】
前記植物タンパク質画分が、少なくとも80重量%のダイズタンパク質を含む、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項6】
7重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、pH5.6および20℃で20〜225センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項7】
7重量%の前記タンパク質画分および2重量%のNaClからなる水性分散体が、pH5.6および20℃で、20〜200センチポアズの粘度を示す、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項8】
5%の固形分を有する前記タンパク質画分の水性分散体が、25〜45の白色指数を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項9】
5%未満の水分含量を有する前記タンパク質画分の粉末が、50〜60の白色指数を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項10】
10重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、800nmで70%〜95%の透過パーセントを示す、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項11】
少なくとも10,000gのゲル強度を有する、タンパク質画分と水との重量比1:5の前記タンパク質画分および水からなるゲルをさらに特徴とする、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項12】
タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分および水からなるゲルが、12,000g〜16,000gのゲル強度を有する、請求項11に記載の植物タンパク質画分。
【請求項13】
水、タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分、および2重量%のNaClからなるゲルが、少なくとも8000gのゲル強度を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項14】
水に対する重量比が1:4〜1:6の前記タンパク質画分からなり、タンパク質画分と油との重量比が1:4〜1:5の前記タンパク質画分と油からなり、70〜185gのエマルジョン強度を示す、水中油エマルジョンをさらに特徴とする、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項15】
2重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、pH7でタンパク質1gあたり少なくとも500gの油のエマルジョン能力を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項16】
2重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、pH7でタンパク質1gあたり500〜900gの油のエマルジョン能力を有する、請求項15に記載の植物タンパク質画分。
【請求項17】
前記タンパク質画分中のβ−コングリシニンとグリシニンとの重量比が少なくとも2.5:1である、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項18】
少なくとも95℃(203°F)の温度に加熱されている、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項19】
前記画分の全タンパク質含量を基準にして50重量%〜95重量%のグリシニンを含み、80%未満の窒素溶解指数をさらに特徴とする植物タンパク質画分。
【請求項20】
65%未満の塩耐性指数を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項21】
7重量%の前記タンパク質画分および2重量%のNaClからなる水性分散体が、pH5.6および20℃で50センチポアズ未満の粘度を示す、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項22】
5%の固形分を有する前記タンパク質画分の水性分散体が、少なくとも40の白色指数を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項23】
5%未満の水分含量を有する前記タンパク質画分の粉末が、50〜60の白色指数を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項24】
10重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、800nmで10%未満の透過パーセントを示す、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項25】
タンパク質画分と水との重量比1:5の前記タンパク質画分および水からなるゲルが、600g未満のゲル強度を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項26】
水、タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分、および2重量%のNaClからなるゲルが、1500g未満のゲル強度を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項27】
前記タンパク質画分中のグリシニンとβ−コングリシニンとの重量比が少なくとも10:1である、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項28】
前記植物タンパク質画分が少なくとも80重量%のダイズタンパク質を含む、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項29】
前記植物タンパク質画分が少なくとも95℃(203°F)の温度に加熱される、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項30】
水、食用油、および少なくとも10重量%の植物タンパク質を含む粘性塊を含む肉代用品であって、前記植物タンパク質が、前記肉代用品の全タンパク質含量を基準にして少なくとも40重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含む植物タンパク質画分を含み、前記肉代用品が、タンパク質1gあたり少なくとも800gの油の乳化能力をさらに特徴とする、肉代用品。
【請求項31】
前記植物タンパク質画分が、前記肉代用品の全タンパク質含量を基準にして、40%〜80%のβ−コングリシニンおよび10%〜20%のグリシニンを含有する、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項32】
前記植物タンパク質画分中のβ−コングリシニンとグリシニンとの比率が少なくとも2.5である、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項33】
前記植物タンパク質が、
10重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、800nmで少なくとも70%の透過パーセントを示し、
タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分および水からなるゲルが、少なくとも8000gのゲル強度を有し、
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6の前記タンパク質画分および水からなり、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5の前記タンパク質画分および油からなる水中油エマルジョンが、120g〜400gのエマルジョン強度を示す
特性を有することをさらに特徴とする、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項34】
5重量%〜25重量%の前記植物タンパク質画分、10重量%〜30重量%の前記食用油、および40重量%〜75重量%の水を含む、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項35】
前記食用油が多価不飽和植物油を含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項36】
着香剤をさらに含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項37】
炭水化物をさらに含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項38】
0.2重量%〜2.5重量%の塩、10重量%〜30重量%の多価不飽和植物油、および検出可能な薫製風味を与えるのに十分な比率の燻煙液をさらに含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項39】
前記粘性塊が少なくとも5000gの硬度を示す、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項40】
前記粘性塊が少なくとも2000g/cmの噛み応えを示す、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項41】
ソーセージの形態の細長い略円柱状構造である、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項1】
画分の全タンパク質含量を基準にして、40重量%〜80重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含み、さらに少なくとも80%の窒素溶解指数を特徴とする、植物タンパク質画分。
【請求項2】
75%〜85%の塩耐性指数を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項3】
前記画分が、前記タンパク質画分の全タンパク質含量を基準にして、12重量%を超えるグリシニンを含む、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項4】
前記画分の全タンパク質含量を基準にして、40重量%〜75重量%のβ−コングリシニン、および10重量%〜15重量%のグリシニンを含む、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項5】
前記植物タンパク質画分が、少なくとも80重量%のダイズタンパク質を含む、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項6】
7重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、pH5.6および20℃で20〜225センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項7】
7重量%の前記タンパク質画分および2重量%のNaClからなる水性分散体が、pH5.6および20℃で、20〜200センチポアズの粘度を示す、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項8】
5%の固形分を有する前記タンパク質画分の水性分散体が、25〜45の白色指数を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項9】
5%未満の水分含量を有する前記タンパク質画分の粉末が、50〜60の白色指数を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項10】
10重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、800nmで70%〜95%の透過パーセントを示す、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項11】
少なくとも10,000gのゲル強度を有する、タンパク質画分と水との重量比1:5の前記タンパク質画分および水からなるゲルをさらに特徴とする、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項12】
タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分および水からなるゲルが、12,000g〜16,000gのゲル強度を有する、請求項11に記載の植物タンパク質画分。
【請求項13】
水、タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分、および2重量%のNaClからなるゲルが、少なくとも8000gのゲル強度を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項14】
水に対する重量比が1:4〜1:6の前記タンパク質画分からなり、タンパク質画分と油との重量比が1:4〜1:5の前記タンパク質画分と油からなり、70〜185gのエマルジョン強度を示す、水中油エマルジョンをさらに特徴とする、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項15】
2重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、pH7でタンパク質1gあたり少なくとも500gの油のエマルジョン能力を有する、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項16】
2重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、pH7でタンパク質1gあたり500〜900gの油のエマルジョン能力を有する、請求項15に記載の植物タンパク質画分。
【請求項17】
前記タンパク質画分中のβ−コングリシニンとグリシニンとの重量比が少なくとも2.5:1である、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項18】
少なくとも95℃(203°F)の温度に加熱されている、請求項1に記載の植物タンパク質画分。
【請求項19】
前記画分の全タンパク質含量を基準にして50重量%〜95重量%のグリシニンを含み、80%未満の窒素溶解指数をさらに特徴とする植物タンパク質画分。
【請求項20】
65%未満の塩耐性指数を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項21】
7重量%の前記タンパク質画分および2重量%のNaClからなる水性分散体が、pH5.6および20℃で50センチポアズ未満の粘度を示す、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項22】
5%の固形分を有する前記タンパク質画分の水性分散体が、少なくとも40の白色指数を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項23】
5%未満の水分含量を有する前記タンパク質画分の粉末が、50〜60の白色指数を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項24】
10重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、800nmで10%未満の透過パーセントを示す、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項25】
タンパク質画分と水との重量比1:5の前記タンパク質画分および水からなるゲルが、600g未満のゲル強度を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項26】
水、タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分、および2重量%のNaClからなるゲルが、1500g未満のゲル強度を有する、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項27】
前記タンパク質画分中のグリシニンとβ−コングリシニンとの重量比が少なくとも10:1である、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項28】
前記植物タンパク質画分が少なくとも80重量%のダイズタンパク質を含む、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項29】
前記植物タンパク質画分が少なくとも95℃(203°F)の温度に加熱される、請求項19に記載の植物タンパク質画分。
【請求項30】
水、食用油、および少なくとも10重量%の植物タンパク質を含む粘性塊を含む肉代用品であって、前記植物タンパク質が、前記肉代用品の全タンパク質含量を基準にして少なくとも40重量%のβ−コングリシニンおよび少なくとも10重量%のグリシニンを含む植物タンパク質画分を含み、前記肉代用品が、タンパク質1gあたり少なくとも800gの油の乳化能力をさらに特徴とする、肉代用品。
【請求項31】
前記植物タンパク質画分が、前記肉代用品の全タンパク質含量を基準にして、40%〜80%のβ−コングリシニンおよび10%〜20%のグリシニンを含有する、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項32】
前記植物タンパク質画分中のβ−コングリシニンとグリシニンとの比率が少なくとも2.5である、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項33】
前記植物タンパク質が、
10重量%の前記タンパク質画分からなる水性分散体が、800nmで少なくとも70%の透過パーセントを示し、
タンパク質画分と水との重量比1:5の前記画分および水からなるゲルが、少なくとも8000gのゲル強度を有し、
タンパク質画分と水との重量比1:4〜1:6の前記タンパク質画分および水からなり、タンパク質画分と油との重量比1:4〜1:5の前記タンパク質画分および油からなる水中油エマルジョンが、120g〜400gのエマルジョン強度を示す
特性を有することをさらに特徴とする、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項34】
5重量%〜25重量%の前記植物タンパク質画分、10重量%〜30重量%の前記食用油、および40重量%〜75重量%の水を含む、請求項30に記載の肉代用品。
【請求項35】
前記食用油が多価不飽和植物油を含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項36】
着香剤をさらに含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項37】
炭水化物をさらに含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項38】
0.2重量%〜2.5重量%の塩、10重量%〜30重量%の多価不飽和植物油、および検出可能な薫製風味を与えるのに十分な比率の燻煙液をさらに含む、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項39】
前記粘性塊が少なくとも5000gの硬度を示す、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項40】
前記粘性塊が少なくとも2000g/cmの噛み応えを示す、請求項34に記載の肉代用品。
【請求項41】
ソーセージの形態の細長い略円柱状構造である、請求項34に記載の肉代用品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−513490(P2008−513490A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532574(P2007−532574)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033437
【国際公開番号】WO2006/034172
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033437
【国際公開番号】WO2006/034172
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504140299)ソレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】
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