説明

グリッド装置及びX線検出装置

【課題】グリッド装置及びX線検出装置を提供する。
【解決手段】X線検出装置のグリッド装置に関するものであって、被写体から散乱されるX線を吸収するX線吸収物質と、吸収物質の間に形成されてX線を透過させる透過物質と、を含み、吸収物質と透過物質は、X線ディテクターピクセルのラインパターンと所定の角を成すラインパターンを形成することを特徴とするグリッド装置によってノイズ除去アルゴリズムをより簡単に具現することが可能であって、グリッドによるノイズ除去のための時間及び努力を減らしうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出装置に係り、特に、X線検出装置のグリッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル産業発展につれて、医学映像装備が、デジタル方式に転換されている。その一環として、デジタル方式でX線映像を獲得するX線映像装置(digital radiography、DR)の開発が活発になっている。また、診断能力向上のためにより高品質のX−線映像検出が要求されている。
【0003】
図1は、一般的なデジタルX線検出システムの例示図である。
【0004】
X線照射部10は、制御信号によって円錐形のビームタイプのX線を被写体に照射する。
【0005】
X線検出システムのX線ディテクター16は、被写体を通過したX線を受光し、X線検出器は、受光されたX線を通じて撮影映像をディスプレイに出力する。
【0006】
この際、X線ディテクター16は、マトリックス状に配列された光検出器を備え、その前面に被写体から散乱されたX線を吸収するためのX線グリッド14を備える。X線グリッド14は、被写体を通過しながら散乱されたX線が予定された位置の光検出器に隣接した他の検出器で検出されるために、ノイズとして作用することを防止する。これにより、ノイズによってX線映像の対照度が低下する問題点を解決することができる。
【0007】
一般的に、X線グリッド14は、X線を吸収する物質と、X線を透過させる物質とを多様な層に積層した後、積層された断面を切って製作される。
【0008】
ところで、工程可能なグリッドのラインストリップ数が限定され、グリッドラインストリップの周波数とX線検出器のピクセル周波数とが一致しないために、グリッドラインがデジタルX線検出器のピクセルに重畳されて、グリッドラインがX線映像に表われる現象が発生する。また、グリッドライン周波数とマトリックス状に備えられる光検出器ピクセルの周波数との差のために、グリッドラインに対する僞信号(aliasing)効果によるモアレパターン(Moire pattern)現象が発生する。特に、直接方式のX線検出器の場合、映像分解能に優れるために、このようなグリッドラインが表われる現象やモアレ現象がさらに浮上される。
【0009】
これを補完するために提案された方式が、X線照射時にグリッドを瞬間的に振動させてグリッドラインを濁ごすようにするムービンググリッド(moving grid)方式である。
【0010】
ところで、デジタルX線検出器を利用するX線撮影では、グリッドを振動させるモータによる電磁波を遮蔽することは難しい。また、モータなどの追加構成が必要であるために、製作コストが高くなるだけではなく、システム構成が複雑になって、維持、補修に多くの努力及び高いコストが要求されるために、固定グリッド方式で映像を補間することができる技術が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような背景から導出されたものであって、固定グリッド方式で映像品質をより向上させることを目的とする。
【0012】
また、グリッドによるノイズ映像を除去するアルゴリズムをより簡単に具現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記技術的課題は、被写体から散乱されるX線を吸収するX線吸収物質と、吸収物質の間に形成されてX線を透過させる透過物質と、を含み、吸収物質と透過物質は、X線ディテクターピクセルのラインパターンと所定の角を成すラインパターンを形成することを特徴とするグリッド装置によって達成される。
【0014】
また、マトリックス状に配列された光検出器を含むX線ディテクターと、被写体から散乱されるX線を吸収するX線吸収物質及び吸収物質の間に形成されて、X線を透過させる透過物質を含むが、吸収物質と透過物質は、光検出器のラインパターンと所定の角を成すラインパターンを形成するグリッドと、を含み、グリッドは、X線検出センサーに着脱可能であることを特徴とするX線検出装置によっても達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノイズ除去アルゴリズムをより簡単に具現することが可能であって、グリッドによるノイズ除去のための時間及び努力を減らしうる。
【0016】
また、撮影映像の品質の劣化が少ないX線映像を形成しうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一般的なデジタルX線検出システムの例示図である。
【図2】一実施形態によるグリッド装置の例示図である。
【図3A】一実施形態によるグリッド装置による効果を説明するための例示図である。
【図3B】一実施形態によるグリッド装置による効果を説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述した、そして、追加的な本発明の態様は、添付した図面を参照して説明される望ましい実施形態を通じてさらに明確になる。以下、本発明を、このような実施形態を通じて当業者が容易に理解して再現できるように詳しく説明する。
【0019】
図2は、一実施形態によるグリッド装置の例示図である。
【0020】
一実施形態によるグリッド装置は、被写体から散乱されるX線を吸収するX線吸収物質及び吸収物質のラインパターンの間にX線を透過させる透過物質を含み、吸収物質と透過物質は、X線ディテクターのピクセル形態と所定の角を成すように傾いた形態のラインパターンを形成する。
【0021】
吸収物質204は、被写体から散乱されるX線を吸収してX線検出器まで到逹することを遮断するためのものであって、基板などにライン状に形成される。一実施形態において、吸収物質204は、鉛(lead)、ビスマス(bismuth)、金(gold)、バリウム(barium)、タングステン(tungsten)、プラチナ(platinum)、水銀(mercury)、インジウム(indium)、タリウム(thallium)、パラジウム(palladium)、錫(tin)、亜鉛(zinc)のうちの一つあるいは、これらの合金として具現可能である。しかし、これに限定されるものではない。
【0022】
透過物質202は、吸収物質204のラインパターンの間に挿入されてX線を透過させる。一実施形態において、透過物質202は、プラスチック(plastic)、ポリマー(polymer)、セラミック(ceramic)、グラファイト(graphite)及び炭素纎維(carbon fiber)のうちの一つとして具現可能である。
【0023】
図2に示されたように、吸収物質204と透過物質202とが交互にラインを形成する。
【0024】
以下で、獲得映像(acquisition image)は、元映像(Original image)及びノイズ映像(noise image)を含む。獲得映像は、X線検出装置によって得られた映像を意味する。元映像は、獲得映像のうちノイズ映像が除去された映像を意味する。すなわち、元映像は、X線検出装置を通じて最終的に得ようとする映像を意味する。ノイズ映像は、X線がグリッドを通過しながら生成されたノイズが含まれた映像を意味する。 X線がグリッドを通過しながら生成されたノイズは グリッドに形成されたグリッドラインパターンによって生成されるノイズ及びX線が物体を透過しながら散乱されて生成されるノイズなどを含みうる。
【0025】
この際、吸収物質204と透過物質202のラインパターンは、X線ディテクター210の光検出器のマトリックス状のラインパターンと Φ ほど角を成す。
【0026】
一実施形態において、 Φ は、X線ディテクター210で光検出器のピクセル間の間隔とグリッドの吸収物質204と透過物質202のラインパターンの間隔とによって変更されうる。この際、光検出器のマトリックス状のラインパターンを基準に Φ ほど角を成すグリッド200のラインパターンの方向は、どっちでも関係ない。 Φ 値が10゜ないし40゜である場合、周波数ドメインでノイズ映像に該当する周波数が元映像に該当する周波数と遠く離れるか、最外郭に存在する。
【0027】
グリッド200のラインの密度は、以下の数式1を用いて求めうる。
【0028】
【数1】

【0029】
ここで、f1は、グリッドのラインの密度であり、fsは、ディテクターの標本周波数(sampling frequency)であり、 Φ は、グリッドに形成されたラインパターンの角度を意味する。
【0030】
例えば、 Φ が26.6゜であり、標本周波数が7.194である、グリッド200のラインの密度f1は、4.022(102lines/inch)である。すなわち、グリッド200は、fが26.6゜であり、ラインの密度f1が、102lines/inchであるものである。
【0031】
本発明は、固定グリッドによる映像周波数のデータを除去しながら、実際映像周波数によるデータまで除去されることを阻むための方法を提案したものである。
【0032】
本発明の一実施形態によって、ディテクターのマトリックス状のラインパターンとグリッドのラインパターンとが一定の角度を成すようになれば、ノイズ映像に該当する周波数は、周波数ドメインで元映像に該当する周波数と一定距離以上離れるようになる。最適の場合には、最外郭に位置するために、ノイズ映像に該当する周波数を除去しても、元映像の劣化を最小化した状況でノイズを除去させうる。
【0033】
一態様によるX線検出装置は、前述したX線グリッド装置を含む。また、X線検出装置は、X線ディテクター210と1次元ローパスフィルター(LPF)とをさらに含む。
【0034】
X線ディテクター210は、被写体を通過したX線を受光し、該受光されたX線に基づいて映像を獲得し、該獲得映像をディスプレイに出力する。グリッド200とX線ディテクター210は、互いに着脱可能である。1次元ローパスフィルターは、バターワースフィルター(butterworth filter)あるいは平均フィルターであり得る。
【0035】
1次元ローパスフィルターは、X線ディテクター210から出力されるX線映像を先にx軸方向にフィルタリングし、この後にy軸方向にもフィルタリングを行ってグリッド映像を除去することができる。
【0036】
図3A及び図3Bは、一実施形態によるグリッド装置による効果を説明するための例示図である。
【0037】
図3Aは、一般的なグリッド映像が添加された場合に、X線撮影映像をフーリエ変換した結果を示したものであり、図3Bは、一実施形態によるグリッド装置によるグリッド映像が添加された場合、X線撮影映像をフーリエ変換した結果を示したものである。
【0038】
図3Aを参照すると、周波数ドメインで元映像に該当する周波数 (c)(中心部分に位置する)とノイズ映像に該当する周波数(a)とが中心部分にともに集中していることが分かる。したがって、獲得映像でノイズ映像を除去するに当って、映像を周波数ドメインに変換し、最大値を探してノッチフィルター(Notch filter)、ガウスフィルター(Gaussian filter)、空間周波数領域のフィルターを用いてフィルタリングする課程のような複雑な演算過程を必要とする。
【0039】
一方、図3Bを参照すると、一実施形態によるグリッド装置を利用した場合、ノイズ映像に該当する周波数(a)が外郭に存在することが分かる。したがって、一実施形態によるグリッド装置を利用する場合には、X線ディテクターでの検出映像をフーリエ変換し、バンドパスフィルター(BPF:Band Pass Filter)を用いて簡単で迅速にノイズ映像に該当する周波数を除去することが可能である。一実施形態において、X線ディテクターでの検出映像で1次元ローパスフィルター(LPF)を用いてフィルタリングすることによって、ノイズ映像に該当する周波数を除去することができる。この際、1次元ローパスフィルターは、バターワースフィルターあるいは平均フィルターであり得る。
【0040】
この際、空間領域で1次元ローパスフィルターを用いて先にx軸方向にフィルタリングし、この後にy軸方向にもフィルタリングを行うことが望ましい。
【0041】
すなわち、本発明によれば、グリッド歪曲の中心周波数を探すために特別な周波数推定アルゴリズムを適用する必要がなく、多量の計算量が必要な2次元フィルタリングのためのフーリエ変換及び逆変換過程が必要ない。前述したように、本発明によれば、元映像に劣化を最小化した状態で1次元ローパスフィルターを用いてノイズ映像を単純なアルゴリズムによって早い時間内に除去することができる。
【0042】
以上、本発明について望ましい実施形態を中心に説明した。当業者ならば、本発明が、本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形された形態として具現可能であるということを理解できるであろう。したがって、開示された実施形態は限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるあらゆる差点は、本発明に含まれたものと解析されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、グリッド装置及びX線検出装置関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10:照射部
14、200:グリッド
16、210:X線ディテクター
210:透過物質
220:吸収物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から散乱されるX線を吸収するX線吸収物質と、
前記吸収物質の間に形成されてX線を透過させる透過物質と、を含み、
前記吸収物質と透過物質は、X線ディテクターピクセルのラインパターンと所定の角を成すラインパターンを形成することを特徴とするグリッド装置。
【請求項2】
前記吸収物質と透過物質は、前記X線ディテクターピクセルのラインパターンと10゜ないし40゜の角を成すように傾いた形態のラインパターンを成すように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のグリッド装置。
【請求項3】
前記グリッド装置のラインパターンの密度は、標準周波数及び前記角に基づいて計算された個数ほど形成されることを特徴とする請求項1に記載のグリッド装置。
【請求項4】
マトリックス状に配列された光検出器を含むX線ディテクターと、
被写体から散乱されるX線を吸収するX線吸収物質及び前記吸収物質の間に形成されて、X線を透過させる透過物質を含むが、前記吸収物質と透過物質は、前記光検出器のラインパターンと所定の角を成すラインパターンを形成するグリッドと、を含み、前記グリッドは、前記X線検出センサーに着脱可能であることを特徴とするX線検出装置。
【請求項5】
前記吸収物質と透過物質は、前記光検出器のラインパターンと10゜ないし40゜の角を成すように傾いた形態のラインパターンを成すように形成されたことを特徴とする請求項4に記載のX線検出装置。
【請求項6】
前記グリッドのラインパターンの密度は、標準周波数及び前記角に基づいて計算された個数ほど形成されることを特徴とする請求項4に記載のX線検出装置。
【請求項7】
前記X線ディテクターで検出される映像でグリッドによる歪曲映像の除去は、1次元ローパスフィルター(LPF)をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載のX線検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2011−232323(P2011−232323A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231913(P2010−231913)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(510273950)ディーアールテック コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】DRTECH CORPORATION
【住所又は居所原語表記】333−1,Sangdaewon−dong,Jungwon−gu,Seongnam−si,Gyeonggi−do,462−120 Republic of Korea
【Fターム(参考)】