説明

グリップ

【目的】 手触り感が良好で、かつ晴天および雨天時のいずれにおいても良好な滑りにくさを有し、しかもミスショット時に感じる衝撃力が小さいグリップを提供する。
【構成】 EPDMをベースゴムとし、このEPDMを含むゴム成分100重量部に対して粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレンを5〜100重量部配合したゴム組成物でグリップを作製する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ゴルフクラブ用のグリップをはじめ、テニスラケット用のグリップや、自転車、耕運機などのハンドルに取り付けるグリップ、ハンマーなどの工具に取り付けるグリップに関する。
【0002】
【従来の技術】一般にグリップの重要な要求性能としては、滑りにくさと手触り感の良さが挙げられる。手触り感の良さの代表的なものとしては皮革製のグリップがあり、滑りにくいグリップとしてはEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)や天然ゴムあるいは天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとのブレンド物をベースゴム(基材ゴム)に用いたグリップがある(たとえば、特開平1−306446号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、皮革製のグリップは雨天時に使用すると以後は硬化が激しく元の手触り感の良さを失ってしまう。また、天然ゴムや天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとのブレンド物をベースゴムに用いたグリップは経時に伴って劣化し、滑りにくさや手触り感の良さを失うという欠点があり、EPDMのみをベースゴムに用いたグリップは劣化しにくいという長所を有するものの、手触り感が悪く、特に雨天時など水に濡れたときに滑りやすく、かつミスショット時の衝撃が大きいという欠点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、EPDMをベースゴムとし、このEPDMを含むゴム成分100重量部に対して粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレンを5〜100重量部配合したゴム組成物でグリップを作製するときは、手触り感の良さを有し、かつ晴天、雨天にかかわらず良好な滑りにくさを有し、しかもミスショット時の衝撃が小さいグリップが得られることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0005】つぎに、本発明の各構成成分について詳しく説明する。
【0006】本発明においては、EPDMをベースゴムとするが、本発明において、このEPDMをベースゴムとするとは、EPDMだけで全ゴム成分を構成する場合とEPDMと他のゴムを併用して全ゴム成分を構成する場合を意味する。この他のゴムとしては、たとえば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチエンプロピレンゴム、アクリロニトリルゴムなどが挙げられる。ただし、これらのゴムは全ゴム成分中において45重量%以下であることが好ましい。
【0007】本発明において、EPDMをベースゴムとして用いるのは、EPDMが耐オゾンクラック性などの耐老化性が良好で、かつ適度なしなやかさを有し、しかもポリイソブレチレンとの相溶性が良いためである。
【0008】上記EPDMとしては、天然ゴムと共加硫しやすい比較的加硫速度の速いもの(つまり、比較的ヨウ素価の高いもの)が好ましく、具体的には、たとえば住友化学工業社製のエスプレン505や日本合成ゴム社製のEP33などを用いることが好ましい。
【0009】本発明においては、このEPDMを含むゴム成分100重量部に対して粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレンを5〜100重量部配合するが、このポリイソブチレンは流動性を有する半固形状ないしは液状であり、しかも粘着性を有していて、グリップの手触り感を向上させ、雨天時の滑りにくさを付与し、かつ振動吸収特性が優れているので、ミスショット時の衝撃を小さくさせる。
【0010】上記ポリイソブチレンが粘度平均分子量6000〜50000であることを必要とするのは、粘度平均分子量が6000より小さい場合は粘着性が高すぎて手触り感が悪く、粘度平均分子量が50000より大きくなると粘着性が低くなりすぎて、かえって手触り感を悪くするからである。このポリイソブチレンとしては特に粘度平均分子量8000〜12000のものが好ましい。
【0011】このような粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレンの好適な具体例としては、たとえばビスタネックスLM−MS〔粘度平均分子量8700〜10000、エクソン化学社製〕、ビスタネックスLM−MH〔粘度平均分子量10000〜11700、エクソン化学社製〕などが挙げられる。
【0012】本発明において、このポリイソブチレンの配合量をゴム成分100重量部に対して5〜100重量部にするのは、ポリイソブチレンの配合量が上記範囲より少ない場合は効果が充分に発揮されず、またポリイソブチレンの配合量が上記範囲より多くなると手触り感がかえって悪くなるからである。このポリイソブチレンの配合量は特にゴム成分100重量部に対して10〜70重量部が好ましい。
【0013】上記ゴム成分および粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレン以外の配合成分としては、たとえば充填剤、加硫剤、加硫促進剤などが挙げられる。
【0014】充填剤としては、たとえばクレー、カオリン、カオリンクレー、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化ケイ素、ホワイトカーボンなどが挙げられ、これらは1種または2種以上でゴム成分100重量部に対して10〜100重量部、特に10〜50重量部配合するのが好ましい。
【0015】加硫剤としては、たとえば有機過酸化物、硫黄、有機硫黄化合物などのゴムの加硫に際して通常に使用できるものであれば種類を問わず使用することができる。この加硫剤の配合量としてはゴム成分100重量部に対して0.1〜15重量部、特に0.2〜5重量部が好ましい。
【0016】加硫促進剤としては、たとえばアルデヒドアンモニア類、スルフェンアミド類、ベンゾチアゾール類、チウラム類、ジチオカルバメート類、グアニジン類、チオウレア類などのゴムの加硫に際して促進剤として通常に使用できるものであれば種類を問わず使用することができる。この加硫促進剤の配合量としてはゴム成分100重量部に対し0.2〜10重量部、特に0.2〜8重量部が好ましい。
【0017】また、必要に応じ、加硫促進助剤として酸化亜鉛とステアリン酸を用いることが好ましい。この酸化亜鉛の配合量としてはゴム成分100重量に対して2〜10重量部が好ましく、ステアリン酸の配合量としてはゴム成分100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましい。
【0018】また、必要に応じ、さらに粘着性をコントロールするため、先のポリイソブチレンに加えて、軟化剤や可塑剤を配合することもできる。これらはゴム組成物の調製に際して通常に使用されるものであれば種類を問わず使用することができるが、その具体例を挙げると、たとえば液状のイソプレンゴム、液状のブタジエンゴム、パラフィン系、アロマ系、ナフテン系のオイル、ジオクチルテレフタレートなどの有機酸誘導体、リン酸トリクレジルなどのリン酸誘導体などが挙げられる。これらの軟化剤や可塑剤の配合量としてはゴム成分100重量部に対して70重量部以下の範囲、特に5〜25重量部が好ましい。
【0019】また、必要に応じてカーボンブラック、老化防止剤なども適宜配合することができる。
【0020】ゴム組成物の調製のための混練は、ロール、バンバリミキサー、ニーダーなどの適宜の混練手段によって行うことができる。その際、加硫剤と加硫促進剤以外の配合材料をあらかじめ混練し、加硫剤と加硫促進剤をロール上で上記の混練物に添加して混練する方式を採ってもよい。
【0021】加硫は上記ゴム組成物を金型に充填し、加圧下、たとえば、155〜180℃で2〜15分間加熱することによって行われる。
【0022】また、得られたグリップは滑りにくさや手触り感の良さを向上させるために表面をサンドペーパーなどでバフがけ(研摩)を行ってもよい。
【0023】
【実施例】つぎに、実施例をあげて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0024】実施例1〜6および比較例1〜3表1〜表2に示す組成のグリップ用ゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を金型に充填し、60kg/cm2 の加圧下、170℃で5分間加熱して加硫した後、表面の不要な成形部分を切削し、さらにその表面を100番のサンドペーパーでバフがけしてゴルフクラブ用のグリップを得た。
【0025】なお、表1には実施例1〜6のグリップ用ゴム組成物の組成を示し、表2には比較例1〜3のグリップ用ゴム組成物の組成を示す。また、表1〜表2中の各材料の配合量は重量部によるものであり、表1〜表2中で材料に関して※印を付した部分の補足説明は、表2の後に(注)として示す。
【0026】
【表1】




【0027】
【表2】


【0028】(注)
※1:エスプレン505A(商品名、住友化学工業社製のエチレンプロピレンジエンゴム)
※2:RSS♯3(天然ゴム3号)
※3:SBR1502(日本合成ゴム社製、スチレンブタジエンゴム)
※4:商品名、ポリイソブチレン、粘度平均分子量8700〜10000※5:商品名、ポリイソブチレン、粘度平均分子量10000〜11700※6:ホワイトカーボン※7:カオリンクレー※8:パラフィン系オイル※9:ノクラックNS−6(商品名、大内新興化学工業社製のアルキルフェノール系老化防止剤)
※10:CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
※11:TT(テトラメチルチウラム・ジスルフィド)
【0029】上記のようにして作製した実施例1〜6および比較例1〜3のグリップをそれぞれウッド1番のゴルフクラブの手元側の端部に装着し、手触り感、晴天時および雨天時の滑りにくさ、ならびにミスショット時に感じる衝撃力をプロゴルファーを含む100人に評価させた。
【0030】評価は、手触り感、晴天時および雨天時の滑りにくさについては「良い」、「普通」、「悪い」の3段階で行い、またミスショット時に感じる衝撃力については「小」、「中」、「大」の3段階で行い、実施例1〜6のグリップの評価結果を表3に、比較例1〜3のグリップの評価結果を表4にそれぞれの評価者の人数で示す。なお、表3および表4においては、ミスショット時に感じる衝撃力を簡略化して「衝撃力」と表示した。
【0031】
【表3】


【0032】
【表4】




【0033】表3〜表4中の数値は評価をした人数を示しているが、表3〜表4に示すように、本発明の実施例1〜6のグリップは、手触り感、晴天時および雨天時の滑りにくさのいずれにおいても、良いと評価した者が多く、またミスショット時に感じる衝撃力が「小」または「中」と評価した者が多かったが、比較例1〜3のグリップは、手触り感において悪いと評価した者が多く、特に比較例1のグリップでは雨天時の滑りにくさが悪いと評価した者が圧倒的に多く、またミスショット時に感じる衝撃力が「大」と評価した者が多かった。
【0034】すなわち、本発明の実施例1〜6のグリップは、EPDMをベースゴムとし、このEPDMを含むゴム成分に特定のポリイソブチレンを特定割合で配合したゴム組成物で作製しているので、手触り感が良好で、晴天時および雨天時とも良好な滑りにくさを有し、またミスショット時に感じる衝撃力が小さいが、ポリイソブチレンを配合していない比較例1〜2のグリップやポリイソブチレンの配合量を多くしすぎた比較例3のグリップは手触り感が悪く、特に軟化剤を配合してない比較例1のグリップは雨天時に滑りやすく、また比較例1〜3のグリップはいずれもミスショット時に感じる衝撃力が大きく、グリップとしての機能に欠けていた。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、EPDMをベースゴムとし、このEPDMを含むゴム成分に粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレンを特定割合で配合することによって、手触り感が良好で、かつ晴天時および雨天時のいずれにおいても良好な滑りにくさを有し、しかもミスショット時に感じる衝撃力が従来品に比べて小さいグリップを提供することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 EPDMをベースゴムとし、このEPDMを含むゴム成分100重量部に対して粘度平均分子量6000〜50000のポリイソブチレンを5〜100重量部配合したゴム組成物で作製されていることを特徴とするグリップ。