説明

グリル扉

【課題】使用者が扉枠の上端部に触れても、使用者が感じる熱さを十分に低減できるグリル扉を提供する。
【解決手段】グリル扉2は、グリル庫の前面開口部10の周縁に当接して開閉自在に閉塞する扉本体21と、扉本体21の窓開口22に設けられる光透過部材23と、を備える。扉本体21の内部に通気空間3を形成し、通気空間3は扉本体21に形成された冷却用空気吸入孔24を介してグリル庫外と連通すると共に、扉本体21の上端面に形成された冷却用空気排出孔25を介してグリル庫外と連通する。扉本体21の上端面の上側に、空隙Sを介して断熱部材4を設け、断熱部材4に上下に貫通する冷却用空気通過孔41を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫の前面開口部を開閉するグリル扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロ等のグリル庫の前面開口部は、グリル扉により開閉される。グリル扉は、金属製の扉枠に形成された窓開口にガラス板が嵌め込まれて構成される。ここでグリル扉として、グリル庫内に出し入れ自在に収納されるグリル受皿の前端部にグリル扉の下端部が固定され、グリル扉を手前に引き出すことでグリル受皿をグリル庫から引き出すものを対象とする。
【0003】
このようなグリル庫においては、グリル庫内から焼き魚等の調理物を取り出す際に、グリル扉およびグリル受皿を手前に引き出すが、この時、扉枠の上端部が露出して使用者の手が触れ易いものである。扉枠は、グリル庫内の熱源からの輻射熱や伝導熱によって熱くなるので、誤って使用者が扉枠の上端部に手を触れると熱く、使用者に不快感を与えてしまう惧れがあった。
【0004】
また、この種のグリル扉において、扉枠の上端部にシリコンゴム製の断熱材を設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−93242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるものにあっては、使用者が扉枠の上端部に触れたときの熱さを緩和することができるが、シリコンゴム製の断熱材は軟質であり、グリル庫への調理物の出し入れの際に使用者の手が触れると外れ易いため、使い勝手が悪い。
【0007】
そこで、硬質の合成樹脂により形成した上縁部材により扉枠の上端部を覆い、この上縁部材をねじ部材等により扉枠に確実に固定して不用意な外れを防止することが考えられるが、上縁部材の材質を硬質の合成樹脂にしても、誤って使用者が扉枠の上端部に手を触れると使用者が感じる熱さは十分に低減されないものであった。
【0008】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、使用者が扉枠の上端部に触れても、使用者が感じる熱さを十分に低減できるグリル扉を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、グリル庫の前面開口部10を開閉するグリル扉2であって、前記グリル扉2は、前記グリル庫の前記前面開口部10の周縁に当接して該前面開口部10を閉塞する扉本体21と、正面視において前記扉本体21の内部に形成され前記グリル庫内を外部から視認可能とする窓開口22に設けられる光透過部材23と、を備え、前記扉本体21の前記窓開口22の下側に形成される中空空間からなる冷却用空気吸入部31と、前記扉本体21の前記窓開口22の側方に形成される中空空間からなる側部通気路32と、前記扉本体21の前記窓開口22の上側に形成される中空空間からなる冷却用空気排出部33とで通気空間3を構成し、前記冷却用空気吸入部31は前記扉本体21に形成された冷却用空気吸入孔24を介して前記グリル庫外と連通すると共に、前記冷却用空気排出部33は前記扉本体21の上端面に形成された冷却用空気排出孔25を介して前記グリル庫外と連通し、前記扉本体21の上端面の上側に空隙Sを介して断熱部材4を設け、前記断熱部材4に上下に貫通する冷却用空気通過孔41を設けて成ることを特徴とする。
【0010】
断熱部材4は、扉本体21の上端面の上側に空隙Sを介して設けられているため、扉本体21から熱が伝導し難くて温度が上昇し難く、また、冷却用空気が冷却用空気排出孔25より排出され冷却用空気通過孔41を通過する際、空隙Sからグリル庫外の冷却用空気を更に吸入して冷却用空気通過孔41を通過するため、冷却用空気による冷却効果が増大する。
【0011】
また請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記グリル庫が燃焼用空気を要する熱源を備えると共に、前記扉本体21に、前記通気空間3と前記グリル庫内とを連通させる燃焼用空気供給孔27を設けて成ることを特徴とするものである。
【0012】
これにより、通気空間3を流れる冷却用空気の一部が燃焼用空気として燃焼用空気供給孔27からグリル庫内に吸入され、冷却用空気吸入孔24から吸入される冷却用空気の量が増加して、冷却効果が更に増大する。
【発明の効果】
【0013】
グリル扉の上端部に使用者が誤って手を触れても、グリル扉の上端部に空隙を介して断熱部材が設けられているため、使用者は断熱部材に触れることとなって、使用者が感じる熱さは十分に低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のグリル扉を備えたグリル付きガスコンロの全体斜視図である。
【図2】同上のグリル付きガスコンロの正面図である。
【図3】本発明の一実施形態のグリル扉の背方の斜め上方より見た斜視図である。
【図4】同上のグリル扉を示し、(a)は前方の斜め上方より見た斜視図であり、(b)は(a)において断熱部材を取り外した状態の斜視図である。
【図5】同上のグリル扉を示し、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は下面図である。
【図6】図5(a)のB−B断面図である。
【図7】図5(a)のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。グリルは、以下に示す実施形態では図1、図2に示すグリル付きガスコンロ1が備えるグリルであるが、コンロ部を備えない単独のグリルでもよく、少なくともグリルを備えた加熱調理器であれば特に限定されない。
【0016】
グリル付きガスコンロ1は、前後左右の側面を有し上方に開口する本体11と、本体11の上方への開口を閉塞する天板12とでケーシングが構成される。天板12は本実施形態ではガラス製であるが特に限定されないものであり、天板12にはコンロバーナ13を有するコンロ部が複数設けられている。
【0017】
ガスコンロ内には、熱源としてグリルバーナを有するグリル庫が設けてある。グリル庫は、前方に向けて開口する筐体からなり、本実施形態では、前記前方に向けた開口は本体11の前面の略中央部に形成された略同形状の開口と接続され、グリル付きガスコンロ1の前方に連通する前面開口部10となる。前面開口部10は、グリル扉2により開閉自在に閉塞されるもので、グリル扉2については後述する。図示しないが、グリル庫内の下部にグリル受皿を設けると共に、グリル受皿上に、調理物を載置するための焼き網を設置して、焼き網に載置された調理物をグリルバーナにて加熱するように構成されている。グリル庫の後方側には、グリルバーナの燃焼排ガスをグリル庫外に排気させる排気通路が上側に延びるように後方側に連設され、その排気通路にてグリルバーナの燃焼排ガスを天板12の後部に形成された排気出口14に導くように構成されている。グリルバーナは、グリル庫の上部に配設され焼き網に載置される調理物の上面を加熱する上バーナと、グリル庫の下部に配設され調理物の下面を加熱する左右一対の下バーナとの上下バーナからなるものや、上下一方のバーナからなるものでもよく、特に限定されない。なお、熱源としては、グリルバーナの他に、通電により輻射熱を放射するヒータのように、燃焼によらないものでもよい。
【0018】
本体11の前面のグリル扉2の両側には、コンロバーナ13およびグリルバーナの操作部15が設けられる。
【0019】
以下、グリル扉2について図3乃至図7に基づいて説明する。グリル扉2は、窓開口22を有する扉本体21と、窓開口22に配置される光透過部材23とで主体が構成される。
【0020】
扉本体21は、正面視において内部に窓開口22を有するもので、扉本体21はグリル庫の前面開口部10の周縁に当接して前面開口部10を開閉自在に閉塞する。窓開口22は、グリル庫内を外部から視認可能とする開口で、光透過部材23が設けられる。
【0021】
扉本体21の内部には中空空間が形成され、この中空空間が通気空間3となる。通気空間3は、窓開口22の下側に形成される冷却用空気吸入部31と、窓開口22の側方に形成されて冷却用空気吸入部31と連通する側部通気路32と、窓開口22の上側に形成されて側部通気路32と連通する冷却用空気排出部33と、で構成される。本実施形態では、以下に説明するように正面視において扉本体21の窓開口22を除く部分の内部が一繋がりの中空空間となっているが、光透過部材23が設けられた窓開口22を含む扉本体21全体の内部が一つの中空空間となっていてもよい。
【0022】
本実施形態では、扉本体21は扉枠6と前パネル7とで主体が構成される。
【0023】
扉枠6は、図3に示すように、扉本体21の後側の壁部となる後壁部61と、後壁部61の左右の両端部の略上半部から前方にそれぞれ連設されて扉本体21の左右の各壁部の略上半部となる上側壁部62と、後壁部61の上端から前方に連設される天壁部63と、後壁部61の下端から前方に連設される底壁部64(図6参照)と、で構成される。この扉枠6の材質としては、例えば金属(例えば鉄やSUS等)のように、熱源からの輻射熱や伝導熱に耐えられ、強度が低下しないものが好適に用いられるが、金属に限定されない。
【0024】
後壁部61は、正面視における略上半部の内部の窓開口22となる部分の周囲が前方に絞り出されたような形状の筒状部61aを有し、その筒状部61aの前端に窓開口22が形成される。窓開口22は本実施形態では横長状に形成されているが、形状は特に限定されない。
【0025】
底壁部64には、図5(b)に示すように冷却用空気吸入孔24が形成されている。天壁部63には、図4(b)、図6に示すように冷却用空気排出孔25が形成されると共に、前端から前方に光透過部材23の上端を前方より押さえる上押さえ片63aが一体又は別体に突設されるもので、本実施形態では図4(b)に示すように別体の上押さえ片63aがねじ部材63b等の固着手段により固着されている。
【0026】
前パネル7は、扉本体21の前側の壁部の略下半部となる前壁部71と、前壁部71の左右の両端部から後方にそれぞれ連設されて扉本体21の左右の各壁部の略下半部となる下側壁部72と、前壁部71の下端から後方に連設される底壁部73と、で構成される。この前パネル7の材質としては、例えば合成樹脂(例えばポリエチレンテレフタラートやポリブチレンテレフタラート等)のように、耐熱性が高く、熱伝導率が低く、軽いものが好適に用いられるが、合成樹脂に限定されない。前壁部71の上端には、図6に示すように、光透過部材23の下端を前方より押さえる下押さえ片71aが設けられる。また前壁部71には、図7に示すように、下方に開口する凹所が形成されていて、この凹所の前壁がグリル扉2を手前に引き出すための把手70となる。底壁部73には、図5(c)、図7に示すように冷却用空気吸入孔24が形成される。
【0027】
光透過部材23は、図4に示すように、本実施形態では扉本体21の前側の壁部の略上半部となる、窓開口22よりも大きいガラス板であるが、特にガラスに限定されない。また本実施形態では、窓開口22に対応する部分を光透過部23aとし、それ以外の部分に遮光性塗料を塗布又は印刷して遮光部23bを形成している。
【0028】
上記扉枠6および前パネル7からなる扉本体21と光透過部材23とでグリル扉2を構成するには、まず、図7に示すように光透過部材23をその光透過部23aが扉枠6の窓開口22に位置するように扉枠6の筒状部61aの前面に当接させ、光透過部材23の上端を扉枠6の上押さえ片63aの後面で押さえる。そして、前パネル7の下押さえ片71aを光透過部材23の下端の前方に位置させて光透過部材23の下端を前方より押さえ、前パネル7の下側壁部72の上端を扉枠6の上側壁部62の下端の外面に被せ、前パネル7の底壁部73を扉枠6の底壁部64の下面に下方より被せて互いの冷却用空気吸入孔24を連通させた状態にして、図3に示すようにねじ部材26からなる固着具を後壁部61に形成される固着具挿通孔(特に図示せず)に挿通させ、図5(b)、図7に示すように前パネル7の前壁部71から後方に突設されたボス孔74に螺着して、前パネル7と扉枠6とを連結固定する。これにより、光透過部材23および前パネル7の前壁部71とで扉本体21の前側の壁部が構成され、扉枠6の上側壁部62と前パネル7の下側壁部72とで扉本体21の左右の壁部が構成され、扉枠6および前パネル7の両底壁部64、73で扉本体21の底部が構成される。そして、通気空間3として、窓開口22の下側に冷却用空気吸入部31が形成され、窓開口22の左右両側方に側部通気路32が形成され、窓開口22の上側に冷却用空気排出部33が形成される。なお、扉本体21の構成は上記本実施形態の構成に限定されないものである。
【0029】
冷却用空気吸入部31は、扉本体21(扉枠6および前パネル7)の下端部に形成された冷却用空気吸入孔24を介してグリル庫外と連通し、冷却用空気排出部33は、扉本体21の上端面に形成された冷却用空気排出孔25を介してグリル庫外と連通する。
【0030】
そして本発明においては、扉本体21の上端面の上側に、空隙Sを介して断熱部材4を設けるものである。断熱部材4の材質としては、例えばポリフェニレンサルファイド等のように、耐熱性を有し、熱伝導率が低く、軽い合成樹脂が好適に用いられるが、合成樹脂に限定されない。また断熱部材4には、上下に貫通する冷却用空気通過孔41が設けられる。
【0031】
断熱部材4には、図7に示すように雄ねじ部材43からなる固着具が固着される固着孔42が上下に貫通するように形成されている。また図4(b)に示すように、扉枠6の上端部(すなわち上押さえ片63a)には、雄ねじ部材43が螺着される雌ねじ部材63cからなる固着具が、その上端面が上押さえ片63aの上端面よりも上方に突出するように固定され、この雌ねじ部材63cの上端面に断熱部材4の固着孔42の周縁の下面を当接させ、雄ねじ部材43を上方より固着孔42に挿通させて雌ねじ部材63cに固着することで、断熱部材4を空隙Sを介して扉本体21の上端面に取り付けるものである。断熱部材4は、扉本体21の上端面に取り付けた状態で、前方に突出する押さえ部44により光透過部材23の上端部を押さえるものである。
【0032】
グリル使用時には、グリル庫の前面開口部10が扉本体21により閉塞され、熱源からの輻射熱や伝導熱によりグリル扉2が加熱されるが、この熱により通気空間3内の空気にドラフト力が発生する。これにより、冷却用空気吸入孔24より扉本体21内にグリル庫外の冷却用空気が吸入され、グリル扉2を冷却する。本実施形態では、側部通気路32が窓開口22の左右両側に形成されているため、グリル扉2がバランスよく冷却される。グリル扉2を冷却し温まった冷却用空気は、冷却用空気排出孔25より通気空間3外に排出されると共に、断熱部材4の冷却用空気通過孔41を通過して上方に排出される。
【0033】
断熱部材4は、冷却用空気が冷却用空気通過孔41を通過するため、冷却される。また断熱部材4は、空隙Sを介してグリル扉2の上方に設けられているため、扉本体21から熱が伝導し難くて温度が上昇し難く、グリル扉2の上端部(すなわち断熱部材4)に誤って使用者が触れても、使用者が感じる熱さは十分に低減されるものである。また、冷却用空気が冷却用空気排出孔25より排出され冷却用空気通過孔41を通過する際、空隙Sからグリル庫外の冷却用空気を更に引き込んで冷却用空気通過孔41を通過するため、冷却用空気による冷却効果が増大する。
【0034】
また、更に本実施形態では、扉本体21に、通気空間3とグリル庫内とを連通させる燃焼用空気供給孔27を設けるもので、図3に示すように、扉枠6の後壁部61の窓開口22の下側に燃焼用空気供給孔27を形成してあるが、別の箇所に形成してもよい。本実施形態のように、燃焼用空気を要する熱源(すなわちグリルバーナ)を用いる場合には、通気空間3を流れる冷却用空気の一部が燃焼用空気として燃焼用空気供給孔27からグリル庫内に引き込まれ、冷却用空気吸入孔24から吸入される冷却用空気の量が増加して、冷却効果が更に増大する。
【符号の説明】
【0035】
1 グリル付きガスコンロ
10 前面開口部
11 本体
12 天板
13 コンロバーナ
2 グリル扉
21 扉本体
22 窓開口
23 光透過部材
24 冷却用空気吸入孔
25 冷却用空気排出孔
3 通気空間
31 冷却用空気吸入部
32 側部通気路
33 冷却用空気排出部
4 断熱部材
41 冷却用空気通過孔
6 扉枠
7 前パネル
S 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫の前面開口部を開閉するグリル扉であって、前記グリル扉は、前記グリル庫の前記前面開口部の周縁に当接して該前面開口部を閉塞する扉本体と、正面視において前記扉本体の内部に形成され前記グリル庫内を外部から視認可能とする窓開口に設けられる光透過部材と、を備え、前記扉本体の前記窓開口の下側に形成される中空空間からなる冷却用空気吸入部と、前記扉本体の前記窓開口の側方に形成される中空空間からなる側部通気路と、前記扉本体の前記窓開口の上側に形成される中空空間からなる冷却用空気排出部とで通気空間を構成し、前記冷却用空気吸入部は前記扉本体に形成された冷却用空気吸入孔を介して前記グリル庫外と連通すると共に、前記冷却用空気排出部は前記扉本体の上端面に形成された冷却用空気排出孔を介して前記グリル庫外と連通し、前記扉本体の上端面の上側に空隙を介して断熱部材を設け、 前記断熱部材に上下に貫通する冷却用空気通過孔を設けて成ることを特徴とするグリル扉。
【請求項2】
前記グリル庫が燃焼用空気を要する熱源を備えると共に、前記扉本体に、前記通気空間と前記グリル庫内とを連通させる燃焼用空気供給孔を設けて成ることを特徴とする請求項1記載のグリル扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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