説明

グリル

【課題】 グリル皿を支持する支持機構ごとグリルケースに着脱することが容易であり、しかも、低コストで提供可能なグリルを提案する。
【解決手段】 一対の支持脚10を有するグリル皿支持体7と、グリル皿支持体7の支持脚10を前後スライド自在に支持する一対のスライド支持体8と、調理空間3の両側に固定されてスライド支持体8を前後スライド自在に支持する一対のガイド体9とを具備したグリルとする。スライド支持体8は、その主体を成すレール部14内を仕切り部11によって内側スペースS1と外側スペースS2に二分し、内側スペースS1にグリル皿支持体7の支持脚10を嵌入させ、外側スペースS2にガイド体9を嵌入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル皿を引出し自在に備えたグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
調理用コンロ等に組み込まれるグリルとして、グリルケース内に調理空間を形成し、該調理空間内からグリル皿を前方に引出し自在に設けたものが提供されている。このグリルにおいては、従来、グリル皿を支持する支持機構とグリルケースとの間にボールベアリングを介在させることによって、グリル皿を調理空間内から引出し自在に設けることが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記のようにボールベアリングを介在させてグリル皿を引出し自在に設けた構造の場合、分解時にボールベアリングがばらばらになるおそれがあるため、グリルケースから支持機構ごと取り外すことが困難であった。そのため、メンテナンス面で不便であるという問題があった。また、ボールベアリングを用いることでコスト高を招くという問題があった。
【特許文献1】特開2004−263899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、グリル皿を支持する支持機構ごとグリルケースに着脱することが容易であり、しかも、低コストで提供可能なグリルを提案することを、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明のグリルは、左右一対の支持脚10を後方に延出したグリル皿支持体7と、グリル皿支持体7の左右の支持脚10をそれぞれ所定範囲内で前後スライド自在に支持する左右一対のスライド支持体8と、グリルケース1内の調理空間3の左右両側に固定されるとともに左右のスライド支持体8をそれぞれ所定範囲内で前後スライド自在に支持する左右一対のガイド体9とを具備し、グリル皿支持体7およびスライド支持体8を介して、グリルケース1内の調理空間3からグリル皿2をガイド体9に沿って前方に引出し自在に設けたグリルである。前記スライド支持体8は、外側方が開口した断面コ字状のレール部14と、レール部14内を内側スペースS1および外側スペースS2に二分する仕切り部11とを有し、レール部14の内側スペースS1にグリル皿支持体7の支持脚10を前後スライド自在に嵌入させ、外側スペースS2にガイド体9を前後スライド自在に嵌入させたものであることを特徴とする。
【0006】
上記構成を具備する本発明のグリルにおいては、従来のボールベアリングのような部材を用いることなく、スライド支持体8のレール部14内にグリル皿支持体7の支持脚10とガイド体9を嵌入させることによって、グリルケース1の調理空間3内からグリル皿2を前方に引出し自在に設けることができる。したがって、従来のようにボールベアリングがばらばらになるといった心配がなく、グリルケース1からグリル皿支持体7やスライド支持体8ごと取り外すことや、更に装着することも容易である。また、ボールベアリング等を用いることのないシンプルな構成でグリル皿2の引出しを実現するので、低コストで提供可能なグリルとなる。
【0007】
加えて、グリル皿支持体7の支持脚10を前後スライド自在に嵌入させる内側スペースS1と、ガイド体9を前後スライド自在に嵌入させる外側スペースS2とを、スライド支持体8の内側と外側に並設してあることで、グリル皿支持体7側とガイド体9側との位置関係にずれや歪みが生じ難くなっている。そのため、グリル皿2等のグリルケース1に対する相対的な位置関係が、高精度に保持される。
【0008】
また、本発明のグリルにおいて、前記仕切り部11は、スライド支持体8のレール部14の上壁15および下壁16にその上下両端部を固定させて備えたピン部材17であることが好適である。このようにすることで、ピン部材17がコンパクトな補強材として機能し、スライド支持体8全体の上下方向の撓みを防止することができる。加えて、グリル皿支持体7の支持脚10やガイド体9が、スライド支持体8内にてピン部材17の外周面に摺接することで、スライド動作の円滑性を確保することができる。
【0009】
また、本発明のグリルにおいて、ガイド体9内には、凸状の係止部31を有する弾性部材28を、該係止部31が下方に突出するとともに外力によって弾性的に没入するように装着し、スライド支持体8のレール部14の外側スペースS2の下壁16には、弾性部材28の下方に突出した係止部31が貫入することでスライド支持体8の前方へのスライド量を所定範囲内に規制する被係止溝21を開口させていることが好適である。このようにすることで、工具等を用いて係止部31を弾性的に押し込んでガイド体9内に没入させておけば、そのままスライド支持体8を前方にスライドさせるだけで該スライド支持体8をガイド体9から取り外すことができ、メンテナンス時の取り外しが容易となる。また、メンテナンス時以外にはスライド支持体8が不用意に外れることがなく、安全性は確保される。
【0010】
このとき、スライド支持体8の外側スペースS2の下壁16後端部に、後斜め下方向に傾斜した傾斜壁23を設け、スライド支持体8の外側スペースS2内にガイド体9を嵌入させるときに、ガイド体9内に装着した弾性部材28の係止部31がスライド支持体8の傾斜壁23に摺接しながらガイド体9内に一旦没入し、ガイド体9を外側スペースS2内に更に嵌入させると弾性部材28の係止部31が被係止溝21に貫入するように設けることが、更に好適である。このようにすることで、メンテナンスを完了した後等に、スライド支持体8をガイド体9に連結させるに際しては、弾性部材28を操作する必要なくスライド支持体8を押し込んでガイド体9を嵌入させるだけで、簡単に連結作業を行うことができる。
【0011】
また、本発明のグリルにおいては、グリル皿支持体7とスライド支持体8とを異種金属で形成し、スライド支持体8とガイド体9とを異種金属で形成することも好適である。このようにすることで、グリル皿支持体7とスライド支持体8の摺動面と、スライド支持体8とガイド体9の摺動面のいずれにおいても、いわゆるカジリが生じることを防止し、滑らかな引出し操作を実現することができる。
【0012】
そして、グリル皿支持体7をスライド支持体8よりも低硬度の金属で形成した場合には、スライド支持体8のレール部14の内側スペースS1の上壁15内面には、耐磨耗性金属から成る平板状のスペーサ35を装着し、グリル皿支持体7をスライド支持体8に対して所定範囲内で最も前方にスライドさせたときに、グリル皿支持体7の支持脚10の後端よりも前方にスペーサ35の後端が位置するように設けることが好適である。このようにすることで、グリル皿2等の荷重が前側にかかる支持脚10の上面は、スペーサ35に対して常に面接触しながら摺動することとなり、低硬度側である支持脚10の一部分だけが早く磨耗してしまうことが防止される。なお、低硬度側である支持脚10の下面はレール部14の前端部に摺接するが、ここでの摺接はグリル皿支持体7の前後スライドの範囲内において広く行われるため、支持脚10の一部分だけが早く磨耗することはない。
【0013】
また、グリル皿支持体7をスライド支持体8よりも高硬度の金属で形成した場合には、スライド支持体8の内側スペースS1の下壁16内面には、その前端部分を覆うように、耐磨耗性金属から成る平板状のスペーサ35を装着することが好適である。このようにすることで、グリル皿2等の荷重が前側にかかる支持脚10の下面は、常にスペーサ35に対して面接触しながら摺動することとなり、低硬度側であるレール部14の一部分だけを早く磨耗させることが防止される。なお、低硬度側であるレール部14の上部には支持脚10の後端部が摺接するが、ここでの摺接はグリル皿支持体7の前後スライドの範囲内において広く行われるため、レール部14の一部分だけが早く磨耗することはない。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグリルは、グリル皿を支持する支持機構ごとグリルケースに着脱することが容易であり、しかも、低コストで提供可能なものになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図11、図12には、本発明の実施形態における一例のグリルの全体を示している。本文中においては、グリル皿2を引き出す方向を前方として説明する。
【0016】
本例のグリルは、調理用コンロ50の下部に組み込まれたものであり、グリルケース1内に形成した調理空間3内にグリル皿2を収納自在としている。調理空間3は、グリルケース1の前面開口と連通し、この前面開口を通じてグリル皿2が前方に引出し自在となっている(図12参照)。グリル皿2の前方にはグリル扉4を設けており、グリル皿2を調理空間3内に収納した際には、グリル扉4がグリルケース1の前面開口を密閉する(図11参照)。調理空間3の後部は、調理用コンロ50の天板51に設けた排気口52と連通させている。なお、図12においては、図11には記載してある天板51や、調理用コンロ50の使用に際して各種設定を行う操作パネル5等の記載を省略している。
【0017】
グリルケース1内には、調理空間3内を加熱するための各種バーナ(図示せず)を設置している。したがって、グリル皿2の上方に配置した焼き網45に魚等の食材を配置したうえで、該グリル皿2を調理空間3内に収納し、バーナにより加熱を行えば、グリル扉4により前面開口が密閉された調理空間3内において焼き網45上の食材が加熱調理される。
【0018】
以上、本発明のグリルの基本的な構成について述べた。以下においては、本発明の特徴的な構成として、グリル皿2を調理空間3内に引出し自在に収納するための構成について詳述する。
【0019】
グリル皿2を支持するための構造は、図1〜図3に示すようなものであって、グリル皿2を支持するための枠状を成すグリル皿支持体7と、グリル皿支持体7を所定範囲内で前後スライド自在に支持する左右一対のスライド支持体8と、左右のスライド支持体8をそれぞれ前後スライド自在に支持する左右一対のガイド体9とで、主体を成している。
【0020】
グリル皿支持体7は、左右方向に伸びる支持棒6の左右両端のそれぞれから支持脚10を後方に延設して成る、平面視コ字状の部材である。支持棒6には平板状の扉枠12を固定し、この扉枠12に対してグリル扉4を装着する構造である。また、この扉枠12には、平面視矩形状を成すグリル皿載置枠13の前端部を、引掛け係止させて備える。グリル皿載置枠13は、グリル皿2を着脱自在に載置するためのものであって、扉枠12に係止することで、グリル皿支持体7と一体に前後スライドするように設けている。
【0021】
なお、図1〜図3には、グリル皿支持体7に対して扉枠12を固定することなく、グリル皿載置枠13を設置した状態を示している。図6〜図8には、グリル皿支持体7に対して扉枠12を固定し、グリル皿載置枠13は取り外した状態を示している。
【0022】
スライド支持体8は、グリル皿支持体7と一体に組み合わせることにより、前後方向に伸縮自在な支持機構34を形成するものである(図6、図7参照)。左右のスライド支持体8は共に、外側方を開口させることで断面コ字状に形成したレール部14と、レール部14の内部スペースを内側スペースS1および外側スペースS2に二分割するように該レール部14内に固着される仕切り部11とから成る(図4参照)。本例における前記仕切り部11は、断面コ字状であるレール部14の上壁15および下壁16に、その上下両端部をかしめ固定させて備えた円柱状のピン部材17である。ピン部材17は前後方向に所定隙間を隔てて複数本固定しており、これら複数本のピン部材17を介して、レール部14内に内側スペースS1と外側スペースS2を左右方向に並設する構造である。
【0023】
レール部14内の内側スペースS1は、グリル皿支持体7の支持脚10をその前端開口から前後スライド自在に嵌入させるためのスペースである。内側スペースS1の内側壁には、前後方向を長尺方向とする長孔状のスリット18が設けてある。支持脚10にはスライドピン19を内側方に突設しており、このスライドピン19をこのスリット18に嵌入させることで、グリル皿支持体7は左右のスライド支持体8に対して前後スライド自在となっている。グリル皿支持体7の前後スライド範囲は、スリット18内をスライドピン19が前後スライド移動する範囲である。左右のスライド支持体8は、連結板20を介して互いの後端部を連結固定させて用いる。
【0024】
レール部14内の外側スペースS2は、調理空間3の左右両側に固定したガイド体9をその後端開口から前後スライド自在に嵌入させるためのスペースである。外側スペースS2の下壁16には、その前側半部を切り欠くことによって、被係止溝21を開口させてある。更に、外側スペースS2の下壁16の被係止溝21よりも後方の後側半部によって規制壁22を形成し、この規制壁22の後端からは、後斜め下方向に向けて傾斜壁23を延設している。これら外側スペースS2の下壁16に設けた被係止溝21、規制壁22、傾斜壁23等は、スライド支持体8をガイド体9に対して着脱自在に装着するための構成であるが、詳しい機能については後述する。
【0025】
ガイド体9は、調理空間3の左右の下角部に固定される左右一対の部材であり(図1〜図3参照)、この左右のガイド体9によって、左右のスライド支持体8をそれぞれ所定範囲内で前後スライド自在に支持するようになっている。ガイド体9は、外側方を開口させた中空角柱状の主ガイド部24と、主ガイド部24の下壁の先端縁から下方に延設される垂下片25と、垂下片25の下端縁から内側方に延設される固定片26とから成る。ガイド体9を調理空間3に固定するに際しては、調理空間3の下角部の下壁に固定片26を当て、下角部の側壁に垂下片25および主ガイド部24の開口側を当てた状態で、固定片26を調理空間3の下壁に固定する。更に、複数のネジ具27を用いて、主ガイド部24の開口側を調理空間3の側壁に固定させる。
【0026】
ガイド体9の主体を成す中空の主ガイド部24には、その前端部分の内側スペースに、弾性部材28を挿入固定している。弾性部材28は、図5にも示すような側面視く字状の板バネ部材であり、主ガイド部24の下壁に載置される下バネ片29と、下バネ片29の後端から前斜め上方に延設される上バネ片30と、下バネ片29の前端から下方に延設される凸状の係止部31とから成る。下バネ片29は、その前後方向中央部が高くなるように僅かに屈折させてある。主ガイド部24の下壁には貫通孔32を形成しており、弾性部材28を固定した状態において、この貫通孔32を通じて弾性部材28の係止部31が主ガイド部24から下方に突出する。下バネ片29は十分な可撓性を有し、主ガイド部24の下壁から突出した係止部31に対して下方から一定以上の外力を加えると、下バネ片29が撓んで係止部31を貫通孔32内に弾性的に没入させるように設けている。
【0027】
上記構成から成る本例のグリルにおいて、グリル皿支持体7とスライド支持体8を組み合わせて成る伸縮自在な支持機構34をガイド体9に組み込むには、まず、図1や図2に示すように、左右一対のスライド支持体8の後端を、左右一対のガイド体9の前端とそれぞれ対向する位置にセットする。そして、スライド支持体8をそれぞれガイド体9側に(図中矢印A方向に)押し込み、スライド支持体8のレール部14に設けた外側スペースS2の後端開口に、ガイド体9の主ガイド部24の前端部分を挿入してゆく。すると、主ガイド部24から下方に突出した係止部31に対して、レール部14の外側スペースS2の下壁16に設けた傾斜壁23が押し当たるが、レール部14をそのまま後方にスライドさせていくことで、係止部31は傾斜壁23に押し上げられて貫通孔32内に没入し、傾斜壁23および規制壁22を乗り越えたうえで、弾性的な復元力によって前方の被係止溝21内に貫入する。
【0028】
この状態において、グリル皿支持体7とスライド支持体8を組み合わせた支持機構34が更にガイド体9と組み合わされる。スライド支持体8は、係止部31が被係止溝21に貫入する前後方向の所定範囲内において、ガイド体9に対して前後スライド自在となる。
【0029】
したがって、グリル皿支持体7は、ガイド体9に対してスライド支持体8がスライド自在となる前後距離と、このスライド支持体8に対してグリル皿支持体7がスライド自在となる前後距離とを合わせた分の距離だけ、ガイド体9つまり調理空間3から前方にスライド自在となる。グリル皿支持体7を最大限前方にスライドさせたとき、グリル皿支持体7に載置したグリル皿2はその全体が外部に露出する。グリル皿支持体7を最大限後方にスライドさせたときには、グリル皿支持体7に載置したグリル皿2はその全体が調理空間3内に収容され、且つ、グリル扉4が調理空間3の前端開口を密閉する。
【0030】
更に、上記構成から成る本例のグリルにおいては、メンテナンスに際して、グリル皿支持体7とスライド支持体8を組み合わせて成る伸縮自在な支持機構34をガイド体9から取り外すことも容易である。ガイド体9下部の固定片26には、弾性部材28の係止部31と対向する位置に操作窓33を開口させているので(図1参照)、取り外すに際してはこの操作窓33に下方からドライバ等の工具を挿入し、工具先端を係止部31の先端に押し当てて貫通孔32内に没入させる。この没入状態のまま、スライド支持体8を前方に(図中矢印Aの反対方向に)スライドさせると、グリル皿支持体7とスライド支持体8から成る支持機構34がガイド体9から取り外される。
【0031】
つまり、本発明のグリルによれば、従来のボールベアリングのような部材を用いることなく、スライド支持体8のレール部14内にグリル皿支持体7およびガイド体9を前後スライド自在に嵌入させることによって、グリル皿2をガイド体9に沿って引出し自在に設けることができる。したがって、グリル皿支持体7やスライド支持体8をグリルケース1から取り外すことや装着することが容易であり、また、低コストで提供可能となる。
【0032】
そして、グリル皿支持体7の支持脚10を前後スライド自在に嵌入させる内側スペースS1と、ガイド体9の主ガイド部24を前後スライド自在に嵌入させる外側スペースS2とを、一部材(スライド支持体8)の内部空間の内側および外側に並設してあるため、グリル皿支持体7側とガイド体9側との位置関係にずれや歪みが生じ難くなっている。そのため、グリル皿2や焼き網45のグリルケース1に対する相対的な位置関係が、高精度に保持される結果となる。
【0033】
また、スライド支持体8のレール部14内を仕切るための仕切り部11として、複数のピン部材17を上下にかしめ固定してあることで、このピン部材17がコンパクトな補強材として機能し、スライド支持体8全体の上下方向の撓みが防止されている。加えて、グリル皿支持体7の支持脚10やガイド体9の主ガイド部24が、レール部14内を仕切る円柱状のピン部材17の外周面に摺接することにより、支持機構34全体の滑らかなスライド動作が確保されている。
【0034】
また、上記したように、ガイド体9内には、係止部31が下方に突出するとともに外力によって弾性的に没入するように弾性部材28を装着しており、スライド支持体8のレール部14の外側スペースS2の下壁16に、弾性部材28の係止部31が貫入する被係止溝21を開口させることで、スライド支持体8の前方へのスライド量を所定範囲内に規制している。したがって、係止部31を弾性的に押し込んでガイド体9内に没入させれば、そのままスライド支持体8を前方に引き抜くことができ、メンテナンス時には取り外しが容易であるとともに、メンテナンス時以外にはスライド支持体8が不用意に外れることがなく、安全性は確保される。
【0035】
更に、上記したように、スライド支持体8の外側スペースS2の下壁16後端部には、後斜め下方向に傾斜した傾斜壁23を設けている。したがって、スライド支持体8の外側スペースS2内にガイド体9を嵌入させるときには、ガイド体9内に装着した弾性部材28の係止部31が傾斜壁23に摺接しながらガイド体9内に一旦没入する。そして、スライド支持体8を押し込んでガイド体9を外側スペースS2内に更に嵌入させると、弾性部材28の係止部31が規制壁22を乗り越えたうえで前方の被係止溝21に貫入するようになっている。つまり、メンテナンス完了後に、スライド支持体8をガイド体9に連結させるに際しては、弾性部材28を操作する必要なくスライド支持体8を押し込むだけで、簡単に連結作業を行うことができる。
【0036】
以下、本発明のグリルにおける更に特徴的な構成として、グリル皿2の円滑な引出し操作を実現するための構成について詳述する。
【0037】
本発明では、グリル皿2を調理空間3から前方に引出し自在に支持するために連結させるグリル皿支持体7、スライド支持体8、ガイド体9の3種の部材を形成する金属を、少なくとも摺接する部材同士は異種金属となるように設けている。つまり、グリル皿支持体7とこれに摺接するスライド支持体8とを異種金属で形成し、更に、スライド支持体8とこれに摺接するガイド体9についても、異種金属で形成している。
【0038】
材質として具体的には、例えば、グリル皿支持体7とガイド体9については同種金属であるメッキ鋼で形成し、グリル皿支持体7とガイド体9の間に介在するスライド支持体8については、メッキ鋼に対して異種金属となるステンレスで形成する。このように、摺動する部材同士を異種金属で形成することにより、摺動面においていわゆるカジリが生じることを防止し、滑らかな引出し操作を実現することができる。
【0039】
ところで、このようにグリル皿支持体7とスライド支持体8を異種金属で形成した場合には、低硬度側の金属において(本例ではメッキ鋼から成るグリル皿支持体7の支持脚10において)摺接部分が一箇所に集中すると、その一部分だけが早く磨耗してしまうという問題がある。そこで、図8に示す例では、スライド支持体8のレール部14の前端部分において、内側スペースS1の上壁15内面に、耐磨耗性金属から成る平板状のスペーサ35を装着させている。
【0040】
このスペーサ35は前後方向に長尺であるとともに、その前端および後端から上方に向けて突片36,37を延設した形状である。レール部14の内側スペースS1の上壁15には挿通孔38を一つ設けており、この挿通孔38に対して後側の突片37を挿通して係止させるとともに、レール部14の上壁15の前端縁に前側の突片36を当てて係止させる。ここで、平板状のスペーサ35を挟むように内側スペースS1内に支持脚10を挿入することで、スペーサ35は内側スペースS1の上壁15と支持脚10の上面との間に挿入された状態となる。
【0041】
図9には、支持脚10を最も前方にスライドさせた場合を示している。図示のように、スペーサ35の前後方向の寸法は、グリル皿支持体7をスライド支持体8に対して所定範囲内で最も前方にスライドさせたときであっても、グリル皿支持体7の支持脚10の後端よりも前方にスペーサ35の後端が位置するように設けている。したがって、グリル皿2等の荷重が前側にかかる支持脚10の上面は、スペーサ35に対して常に面接触しながら摺動することとなり、低硬度側である支持脚10の一部分だけが早く磨耗してしまうことが防止される。
【0042】
これに対して、仮にスペーサ35を挿入していない場合には、グリル皿2等の荷重によって、支持脚10の後端の上角部39が前後スライドの際にレール部14に対して常に線接触しながら摺動することとなる。したがって、低硬度側である支持脚10の上角部39だけが早く磨耗してしまうことになる。
【0043】
なお、グリル皿支持体7が前後スライドする際に、支持脚10の下面側に対しては、レール部14の下壁16前端の上角部40が摺接することになる。しかし、低硬度側である支持脚10の下面は前後スライドの範囲内においてレール部14前端の上角部40に摺接するので、一部分だけが早く磨耗することはない。一方、レール部14においては、前後スライドの際に下壁16前端の上角部40が支持脚10に対して常に線接触するが、高硬度側であるためにこの上角部40だけが早く磨耗することはない。
【0044】
ところで、上記材質とは逆に、グリル皿支持体7をスライド支持体8よりも高硬度の金属で形成している場合には、図10に示すようにスペーサ35を配置することが好適である。この場合のスペーサ35の配置は図8、図9に示した配置とは上下逆であり、平板状のスペーサ35によって、スライド支持体8の内側スペースS1の下壁16内面の前端部分を覆うように設けている。
【0045】
ここで、内側スペースS1内に支持脚10を挿入すると、スペーサ35は内側スペースS1の下壁16と支持脚10の下面との間に挿入された状態となる。したがって、グリル皿2等の荷重が前側にかかる支持脚10の下面は、常にスペーサ35に対して摺動することとなり、低硬度側であるレール部14の一部分だけを早く磨耗させることが防止される。
【0046】
これに対して、仮にスペーサ35を挿入していない場合には、レール部14の下壁16前端の上角部40が、支持脚10の下面に対して常に線接触しながら摺動することとなる。したがって、低硬度側であるレール部14の下壁16前端の上角部40だけを早く磨耗させることになる。
【0047】
なお、グリル皿支持体7が前後スライドする際に、レール部14の上壁15内面に対しては、支持脚10の後端の上角部39が摺接することになる。しかし、低硬度側であるレール部14の上壁15下面は前後スライドの範囲内において支持脚10の上角部39に摺接するので、一部分だけが早く磨耗することはない。一方、支持脚10においては、前後スライドの際に後端の上角部39がレール部14に対して常に線接触するが、高硬度側であるためにこの上角部39だけが早く磨耗することはない。
【0048】
上記のように、スペーサ35をスライド支持体8の適宜箇所に配置しておけば、グリル皿支持体7とスライド支持体8とで硬度に差を設けた場合であっても、低硬度側の一箇所が集中して磨耗することは防止される。即ち、低硬度側の磨耗によりがたつき等が生じることを防止しながら、グリル皿支持体7とスライド支持体8を異種金属で形成して円滑な引出し操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態における一例のグリル皿支持構造を一部分解した斜視図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】同上の組立状態の側面図である。
【図4】同上の断面図である。
【図5】同上のガイド体に装着する弾性部材の側面図である。
【図6】同上のグリル皿支持構造を成すグリル皿支持体とスライド支持体の斜視図である。
【図7】同上の側面図である。
【図8】同上のスライド支持体にスペーサを配置した場合を示す斜視図である。
【図9】同上のスペーサの配置を示す断面図である。
【図10】同上のスペーサの別の配置を示す断面図である。
【図11】同上のグリルにおいてグリル皿を収納した状態を示す全体斜視図である。
【図12】同上のグリルにおいてグリル皿を引出した状態を示す全体斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 グリルケース
2 グリル皿
3 調理空間
7 グリル皿支持体
8 スライド支持体
9 ガイド体
10 支持脚
11 仕切り部
14 レール部
15 上壁
16 下壁
17 ピン部材
21 被係止溝
23 傾斜壁
28 弾性部材
31 係止部
35 スペーサ
S1 内側スペース
S2 外側スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の支持脚を後方に延出したグリル皿支持体と、グリル皿支持体の左右の支持脚をそれぞれ所定範囲内で前後スライド自在に支持する左右一対のスライド支持体と、グリルケース内の調理空間の左右両側に固定されるとともに左右のスライド支持体をそれぞれ所定範囲内で前後スライド自在に支持する左右一対のガイド体とを具備し、グリル皿支持体およびスライド支持体を介して、グリルケース内の調理空間からグリル皿をガイド体に沿って前方に引出し自在に設けたグリルであって、前記スライド支持体は、外側方が開口した断面コ字状のレール部と、レール部内を内側スペースおよび外側スペースに二分する仕切り部とを有し、レール部の内側スペースにグリル皿支持体の支持脚を前後スライド自在に嵌入させ、外側スペースにガイド体を前後スライド自在に嵌入させたものであることを特徴とするグリル。
【請求項2】
前記仕切り部は、スライド支持体のレール部の上壁および下壁にその上下両端部を固定させて備えたピン部材であることを特徴とする請求項1に記載のグリル。
【請求項3】
ガイド体内には、凸状の係止部を有する弾性部材を、該係止部が下方に突出するとともに外力によって弾性的に没入するように装着し、スライド支持体のレール部の外側スペースの下壁には、弾性部材の下方に突出した係止部が貫入することでスライド支持体の前方へのスライド量を所定範囲内に規制する被係止溝を開口させていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリル。
【請求項4】
スライド支持体の外側スペースの下壁後端部に、後斜め下方向に傾斜した傾斜壁を設け、スライド支持体の外側スペース内にガイド体を嵌入させるときに、ガイド体内に装着した弾性部材の係止部がスライド支持体の傾斜壁に摺接しながらガイド体内に一旦没入し、ガイド体を外側スペース内に更に嵌入させると弾性部材の係止部が被係止溝に貫入するように設けることを特徴とする請求項3に記載のグリル。
【請求項5】
グリル皿支持体とスライド支持体とを異種金属で形成し、スライド支持体とガイド体とを異種金属で形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のグリル。
【請求項6】
グリル皿支持体をスライド支持体よりも低硬度の金属で形成するとともに、スライド支持体のレール部の内側スペースの上壁内面には、耐磨耗性金属から成る平板状のスペーサを装着し、グリル皿支持体をスライド支持体に対して所定範囲内で最も前方にスライドさせたときに、グリル皿支持体の支持脚の後端よりも前方にスペーサの後端が位置するように設けることを特徴とする請求項5に記載のグリル。
【請求項7】
グリル皿支持体をスライド支持体よりも高硬度の金属で形成するとともに、スライド支持体の内側スペースの下壁内面には、その前端部分を覆うように、耐磨耗性金属から成る平板状のスペーサを装着することを特徴とする請求項5に記載のグリル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−32165(P2010−32165A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196593(P2008−196593)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】