グリース組成物の寿命評価方法
【課題】グリース組成物について、等変化率法による速度論的解析手法を適用可能な測定条件によって、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さく、より信頼性の高いグリース組成物の寿命評価方法を提供する。
【解決手段】試料がグリース組成物であり、試料量を5〜15mgおよび昇温速度を5℃/min未満として、室温から所望の温度まで一定の昇温速度で昇温させて熱重量測定を行うことを、3つ以上の異なる昇温速度について繰り返し、得られた3つ以上の異なる熱重量曲線(TG曲線)に基づいて活性化エネルギー値を算出することを特徴とするグリース組成物寿命評価方法。
【解決手段】試料がグリース組成物であり、試料量を5〜15mgおよび昇温速度を5℃/min未満として、室温から所望の温度まで一定の昇温速度で昇温させて熱重量測定を行うことを、3つ以上の異なる昇温速度について繰り返し、得られた3つ以上の異なる熱重量曲線(TG曲線)に基づいて活性化エネルギー値を算出することを特徴とするグリース組成物寿命評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱分析の手法により熱重量測定データ(TGデータ)を収集し、収集されたTGデータを用いて反応速度論的解析を行い、試料の化学反応の活性化エネルギーに基づく定温劣化時間を算出して試料の寿命の相対的な評価を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軸受用グリース組成物の寿命を評価するためには、実際に被評価グリースを封入した多数の軸受を所定の環境温度と回転速度で実際に軸受性能が許容基準以下になるまで回転させる実試験を行っている。このような実試験を行うためには、まとまった量のグリースと多数の軸受けを製造する必要があるばかりではなく、試験機、所定の環境温度を維持するための恒温オーブン、試験治具等も必要であり、多大なコストが掛かっている。また、実試験の準備から完了までには数ヶ月以上掛かるのが通常であり、迅速な開発の支障となっていた。特に、軸受の開発段階においては、候補となるグリース組成物が複数種類挙げられる場合が多く、それらグリース組成物の相対的な寿命評価を低コストおよび短時間で実施可能な評価方法が求められていた。発明者は、このような事情に鑑みて、熱重量分析による活性化エネルギー測定結果に基づいてフッ素系潤滑油の寿命を予測する方法に着目した。
例えば、ハードディスクドライブ装置(HDD)の薄膜磁性媒体用のフッ素系潤滑油の寿命予測方法として、フッ素系潤滑油の熱重量測定(TG)と示差熱分析(DTA)を行い、発熱ピーク発生までの時間を潤滑油の寿命と定義し、反応速度論的解析によって活性化エネルギーの値から寿命を予測することが知られている(非特許文献1参照)。
ここでは1種類のフッ素系潤滑油に対して、昇温速度を2.5℃/min、5.0℃/min、10℃/min、20℃/min、40℃/minに順次変えて熱重量測定と示差熱分析を行い、昇温速度による発熱ピーク観測温度の変化を用いて活性化エネルギーを見積もり、定温での寿命予測を行っている。
前述の活性化エネルギーを測定するに際して、(i)試料を所定の昇温速度で昇温し、(ii)昇温中の試料及びその変化物の少なくとも一部の所定の物理的性質の変化速度と温度とを逐次測定し、(iii)同種の試料について相異なる複数の昇温速度において前述の測定を繰り返し、(iv)各昇温速度 について、該変化速度が極大となる点を見出し、(v)各昇温速度についての、該変化速度極大点における変化速度と温度との関係から試料中に起る変化の活性化エネルギーを算出する各段階を具備することを特徴とする活性化エネルギーの測定方法は知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、潤滑油やグリースについて、熱重量分析と示差熱分析とを行い、熱重量分析によって得られた結果から初期重量が1/2になった時の温度を求め、予め従来の評価法による実験によって求めた寿命時間と求めた温度の相関関係から相対的な熱・酸化安定性を評価する方法が知られている(特許文献2参照)。この熱分析を用いることで、5〜10mg程度の少量の試料で、約2時間の短時間で分析して評価することができ、その結果の熱重量分析の重量が1/2となる温度からその潤滑剤のグレード程度の相対的な熱・酸化安定性を評価でき、また、反応速度論による解析を行い、任意の温度での評価や使用条件の異なる場合の評価も簡単にできるようになることが記載されている。
ここでは、これらの熱重量分析および示差熱分析の試験条件としては、所定の温度として試験温度を室温から500℃とし、昇温速度を10℃/min 、試料重量を5〜10mg、所定のガス雰囲気として酸素とアルゴンが1:4の混合ガスを用い、雰囲気ガスの吹き込み速度を50cm3/minとすることが示されているが、この方法では自己加熱効果(試料の急激な発熱現象)が発生してしまう場合があることが判明した。
さらに、GISや変圧器など高電圧の電力機器における接点・回転部・機械摺動面・シール部に潤滑またはシールを目的に塗布されたグリースを、被評価グリースとして採取し、この被評価グリースを不活性ガス雰囲気下で、所定の温度上昇速度にて加熱昇温しながら、熱重量測定装置によって熱重量測定し、被評価グリースにおける油分の加熱減量Aを測定することを特徴とするグリース油分率測定法も知られている(特許文献3参照)。ここでは、熱重量測定条件は、昇温速度は5〜30℃/min程度が適当であることが開示されているが、この方法でもやはり自己加熱効果(試料の急激な発熱現象)が発生してしまう場合があることが判明した。
【0004】
定速昇温下で得られる熱重量測定データを用いて速度論的解析をおこなう方法を非等温的方法といい、代表的な方法として、特許文献2のような、一つの昇温速度における熱重量測定データを用いて速度論的パラメータ(活性化エネルギー、頻度因子、反応次数等)を求める単一測定法や、特許文献1および非特許文献1のように、異なる複数の昇温速度における熱重量測定から得た複数の熱重量測定データを用いて、同一の反応率におけるデータ点の関係から活性化エネルギー値を決定する等変化率法などが挙げられる。単一測定法による解析は、単一の熱重量測定データから同時にすべての速度パラメータを得ることができるため、最も迅速で簡便な方法であるが、反応の速度論的モデル関数(反応機構)を選定する必要がある。速度論的モデル関数に依存して活性化エネルギーと頻度因子が変化するため、誤った速度論的モデル関数を仮定すると、誤った活性化エネルギー値と頻度因子をもたらす結果となる。これに対し、等変化率法による解析は、速度論的モデル関数の選定を行わずに活性化エネルギーを求めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平04−309852号公報
【特許文献2】特開平09−264860号公報
【特許文献3】特開2005−77394号公報
【非特許文献1】(藤野他著;「薄膜磁性媒体用フッ素系極性潤滑剤の寿命予測」5−44頁1990年電子情報通信学会春季全国大会論文集)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリース組成物については、その寿命を相対的に評価する手段として、上記の等変化率法による速度論的解析を行った事例はこれまで知られていない。上記従来技術の測定条件を適用してグリースの測定をおこなっても、10℃/min以上の速い昇温速度での測定は、昇温中にグリースの自己加熱効果(試料の急激な発熱現象)が起きてしまうため定速昇温での測定ができず、定速昇温を仮定した等変化率法による速度論的解析手法を適用することができない。
そこで本発明は、グリース組成物について、等変化率法による速度論的解析手法を適用可能な測定条件によって、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さく(活性化エネルギーの平均値±6%以内)、より信頼性の高いグリース組成物の寿命評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、グリース組成物について、より信頼性の高い寿命評価をするためには、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さい(活性化エネルギーの平均値±6%以内)ことが重要であることを見出し、その前提となる自己加熱効果の起きない一定の昇温速度下での安定した熱重量測定データ(TGデータ)を得るためには、試料量、昇温速度および雰囲気ガス流量の組み合わせが、大きく影響することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、試料の熱重量測定を行い、得られた熱重量測定結果を用いて反応速度論的解析をすることにより、試料の熱分解反応における活性化エネルギー値を算出し、算出された活性化エネルギー値から予測される試料の定温劣化時間に基づいて試料の寿命の相対的な評価を行う方法であって、試料がグリース組成物であり、試料量が5〜15mgであり、昇温速度5℃/min未満で、室温から重量減少率50%以上となる温度まで昇温させて熱重量測定を行うことを、3つ以上の異なる昇温速度について繰り返し、得られた3つ以上の熱重量曲線(TG曲線)に基づいて活性化エネルギーを算出することを特徴とするグリース組成物寿命評価方法である。
【0008】
また、本発明においては、活性化エネルギーの算出を、数式1
【数3】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。)
により算出し、任意の温度(Tc)における定温劣化時間の算出を数式2
【数4】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度、TCは定温劣化時間算出温度(℃)、τは定温劣化時間を表す。)を用いて、数式1により得られる活性化エネルギー値を代入して算出することができる。
また、本発明においては、熱重量測定の繰り返し回数を3回とし、昇温速度を、1℃/min、2℃/minおよび3℃/minとすることが望ましい。
さらに、本発明においては、雰囲気ガスとして空気を用い、流量80〜120ml/minにより行われることが望ましい。
さらに、本発明においては、グリース組成物を、添加剤を含むグリース組成物とすることができる。また、ここにおいて、グリース組成物を、軸受用グリース組成物とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
従来の実試験によるグリース寿命評価方法では多大なコストと大幅な時間が掛かっていた。本発明のグリース組成物寿命評価方法は、高い信頼性で、わずかな試料量を用いて、短時間に各種グリース組成物の寿命評価を行って、その相対的な優劣を見極めることができるので、軸受の開発時間短縮にも大きく寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、熱重量測定とは、試料(グリース組成物)を一定の昇温速度で昇温させ、その試料の重量を温度または時間の関数として測定することを言う。
本発明において、反応速度論的解析とは、試料(グリース組成物)の所定の重量減少率(反応率)における、絶対温度の逆数と昇温速度の対数との関係をプロットすることにより得られるアレニウスプロットから、試料の熱分解反応における活性化エネルギーを求めることを言う。
【0011】
本発明において、上記アレニウスプロットに示される直線は数式1
【数5】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。)
で表される。従って、直線の傾きはΔEに正比例する。
また、数式1により得られた活性化エネルギーの値を次の数式2に代入することによって、任意の温度(Tc)におけるグリース組成物の定温劣化時間(τ)が求められる。
【数6】
式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度、Tcは定温劣化時間算出温度(℃)、τは定温劣化時間を表す。また、T0は初期重量に対応した温度、T1は任意の重量減少率に対応した温度を表す。
【0012】
本発明においては、昇温速度は、非常に重要な因子であり、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さく、信頼性の高いデータを得るためには、5℃/min未満としなければならない。
図1から図4にリチウム石けんグリースを用いて昇温速度を変えて熱重量測定を行った結果を示す。図1の条件は、試料量10mg、昇温速度8℃/min、空気流量100ml/minであり、図2、図3および図4の条件は、それぞれの昇温速度が5℃/min、4℃/min、3℃/minである以外は図1の条件と同じである。また、図1の曲線1、図2の曲線3、図3の曲線5および図4の曲線7はTG曲線に相当し、図1の曲線2、図2の曲線4、図3の曲線6および図4の曲線8は試料の昇温曲線に相当する。
図1および図2のように昇温速度を5℃/min以上とした場合は、試料温度が300℃を超えた付近で急激な発熱が発生している。このような現象を、自己加熱効果とよぶ。
このような自己加熱効果はウレアグリースにおいても発生する。図5から図8にウレアグリースを用いて昇温速度を変えて熱重量測定を行った結果を示す。測定はリチウム石けんグリースと同一条件で行い、図5は昇温速度8℃/minであり、図6、図7および図8の昇温速度はそれぞれ5℃/min、4℃/minおよび3℃/minである。また、図5の曲線9、図6の曲線11、図7の曲線13および図8の曲線15はTG曲線に相当し、図5の曲線10、図6の曲線12、図7の曲線14および図8の曲線16は試料の昇温曲線に相当する。図5および図6のように昇温速度5℃/min以上とした場合には、リチウム石けんグリース同様、試料温度が300℃を超えた付近で急激な発熱(自己加熱効果)が発生している。このように、定速昇温下で測定した熱分析曲線では、自己加熱効果が大きいと反応中の昇温速度が大きく変動し、定速昇温を仮定した速度論的解析を適用できない場合がある。但し、ウレアグリースにおいては図7のように昇温速度が4℃/minにおいてもわずかな自己加熱効果が発生しているが、速度論的解析を適用できないほどの規模ではない。
本発明においては、昇温速度が5℃/min未満の範囲内で、3つ以上の異なる昇温速度における熱重量測定を行い、収集した熱重量測定データから活性化エネルギー値を算出する。リチウム石けんグリースを用いて熱重量測定を行い、得られた昇温速度1℃/min、2℃/minおよび3℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値と、昇温速度4℃/min、5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値とを対比結果を表1に示す。
【表1】
リチウム石けんグリースにおいては、自己加熱効果が生じている5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて活性化エネルギーを算出した場合であっても、重量減少率5%から45%の活性化エネルギー値は活性化エネルギーの平均値±6%の範囲に入っているが、全ての昇温速度が5℃/min以下の方がばらつきが小さい。図9は縦軸に重量減少率[%]、横軸に温度[℃]を取った場合の各昇温速度のTG曲線である。昇温速度3℃/min、4℃/minおよび5℃/minについては、TG曲線は重量減少率に関わらず各昇温速度で同じ傾向を示しており、互いに横方向に平行移動したような曲線となっている。以下、曲線のこのような関係を平行関係ということにする。このような場合には、単一の反応が起きているものと考えられ、単一反応が起きていることを前提とする速度論的解析を適用することができ、後に述べるアレニウスプロットより、重量減少率によらず一定でばらつきの小さい活性化エネルギー値が得られる。ところが、昇温速度8℃/minのTG曲線は重量減少率に関わらず、他のTG曲線との関係は平行関係とは大きく異なり、特に重量減少率60%〜90%の範囲において大きく湾曲している。このような場合には、速度論的解析を適用することはできず、信頼性のある活性化エネルギー値は得られない。
ウレアグリースを用いて熱重量測定を行い、得られた昇温速度1℃/min、2℃/minおよび3℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値と、昇温速度4℃/min、5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値とを対比した結果を表2に示す。
【表2】
ウレアグリースにおいては自己加熱効果が生じている4℃/min、5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて活性化エネルギー値を算出した場合には、活性化エネルギー値はばらつき、ばらつきの範囲が活性化エネルギーの平均値±6%を大幅に超える結果となっている。
図10は縦軸に重量減少率[%]、横軸に温度[℃]を取った場合の各昇温速度のTG曲線である。重量減少率0%から20%の範囲はTG曲線の平行関係が成り立っており、後に述べるアレニウスプロットより、重量減少率によらず一定でばらつきの小さい活性化エネルギー値が得られる。ところが、重量減少率30%付近以降はこのようなTG曲線の平行関係が成り立たず、TG曲線は各昇温速度について明らかに異なる形の曲線となっている。このような範囲では、速度論的解析を適用することはできず、信頼性のある活性化エネルギー値は得られない。
以上の結果から、グリースの種類によることなく、活性化エネルギー値のばらつきがより小さく、信頼性の高いデータを得るためには、昇温速度を5℃/min未満とした方が好ましいといえる。
本発明においては、特に、試料量10mg、昇温速度1℃/min、2℃/min、3℃/min、空気流量100ml/minで測定したものがベストモードであり、定速昇温下での安定した熱重量測定データが得られ、活性化エネルギー値のばらつきが小さい結果が得られることが判明した。
【0013】
また、本発明で用いる試料(グリース組成物)の量による影響を調べることは、安定的な測定結果を得るために、考慮されるべき要因の一つである。基油がエステル油とエーテル油からなるリチウム石けんグリースの試料量を、3mg、5mg、10mgとした場合(それぞれ昇温速度1℃/min、2℃/min、3℃/min、空気流量100ml/minでTG曲線を測定)において、数式1を用いて活性化エネルギー値を算出した結果を図11に示す。
これにより、試料(グリース組成物)の量は、5mg未満では、重量減少率初期(5%〜30%)において活性化エネルギー値が平均値±6%以上に異なり、ばらつきが大きいことが判明した。これに対して、例えば試料量10mgでは、重量減少率10%以降は安定した値を示している。
試料量は、多くの実験を繰り返した結果、5〜15mgとくに8〜12mgが良いことが判明した。試料量は少ないほど、試料内での温度の偏りを少なくすることができるが、5mg未満では試料容器の底に試料(グリース)を均一に充填するには試料量が少なすぎる。試料を均一に試料容器に充填することは、測定結果のばらつきを抑えるために必要なことである。
【0014】
また、本発明においては、雰囲気ガス(空気)流量も活性化エネルギー値のばらつきを小さくするために重要な因子である。図12は試料として基油がエステル油であるリチウム石けんグリースを用い、試料量10mgとした場合の、雰囲気ガス(空気)流量の違いによる活性化エネルギー値のばらつきを示したものである。雰囲気ガス(空気)流量を100ml/minとしたときの活性化エネルギー値は重量減少率5〜50%の範囲において平均値(113.3kJ/mol)±6%以内に収まっているが、雰囲気ガス(空気)流量を200ml/minとしたときの活性化エネルギー値は平均値(118.6kJ/mol)±6%を超える点があり、ばらつきが大きくなっている。雰囲気ガス(空気)の流量は、試料から発生するガスを速やかに外部に排出するために不可欠なことであるが、雰囲気ガス(空気)流量を200ml/minとした場合には、雰囲気ガス(空気)流量が多すぎるため、活性化エネルギー値が許容幅以上にばらつく結果となってしまった。
【0015】
本発明において用いるグリース組成物が含んでいる添加剤は、酸化防止剤、防錆剤を挙げることができる。
本発明において用いることが出来る具体的な酸化防止剤は、フェニルα(β)ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン系酸化防止剤、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)に代表されるフェノール系酸化防止剤等が使用される。
また、本発明において用いることが出来る具体的な防錆剤としては、金属スルホネート、非イオン系、アミン系等の防錆剤等が挙げられる。
【0016】
本発明において用いるグリース組成物は、必要に応じて通常グリースに用いられる鉛を含まない各種の添加剤を含有することも可能である。
例えば、ベントン、シリカゲル等のゲル化剤;イオウ系、リン系、有機モリブデン等の極圧剤;脂肪酸、動植物油等の油性剤;石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、カルボン酸塩、ソルビタンエステル等の錆止め剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の粘度指数向上剤等が挙げられる。
【0017】
さらに、本発明においては、試験温度範囲を室温から重量減少率が50%以上に相当する温度までとしている。一般的に、軸受用のグリース組成物の寿命は重量減少率30〜40%程度に相当するので、試験温度範囲を室温から重量減少率が50%以上に相当する温度までとすれば十分である。
次に、本発明の実施例を示す。以下の実施例では本発明の測定条件を、表3の基油と増ちょう剤の組み合わせからなるグリースに適用したが、本発明はこれらのグリースに限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
グリースA、グリースB、グリースC を用意し、熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)の同時測定が可能な装置(TG/DTA)を用いて、各グリースの熱重量測定を行った。但し、本発明は示差熱分析(DTA)結果を用いていないので、その説明は省略する。
表3に各グリースを構成する、基油、増ちょう剤および添加剤を示す。
【表3】
熱重量測定は以下の測定方法でおこなった。
まず、被測定のグリースを10mg±0.1mg の精度でアルミニウム製の試料容器(φ5mm)に採取した。この試料容器を装置にセットした。
測定条件は、測定温度範囲を室温から560℃、空気流量100ml/min、昇温速度を1℃/minに設定して測定をおこない、昇温速度1℃/minにおける熱重量曲線(TG曲線)を得た。
さらに、同種のグリースを同様に10mg±0.1mgの精度で採取し、前記測定条件の昇温速度のみを変え、昇温速度2℃/minおよび3℃/minで測定を繰り返し、昇温速度2℃/minにおける熱重量曲線(TG曲線)、昇温速度3℃/min における熱重量曲線(TG曲線)を得た。これにより、1 種類のグリースについて、昇温速度の異なる3つのTG曲線を得た。
【0019】
上記3種類のグリースについて同様に測定を実施し、それぞれ昇温速度の異なる3つのTG曲線を得た。
図13はグリースAのTG曲線、図14はグリースBのTG曲線、図15はグリースCのTG曲線である。上記のTG曲線のデータから、各重量減少率(例えば、5%、10%など)に対応する昇温速度と温度の関係を読み取り、横軸に絶対温度の逆数(1/T)、縦軸に昇温速度の対数(logB)を取ってプロットし、例えば、図16に示すようなアレニウスプロットを得た。図16にグリースAのアレニウスプロット、図17にグリースBのアレニウスプロット、図18にグリースCのアレニウスプロットを示す。アレニウスプロットに示される直線は、数式1の関係式で表され、その傾きは活性化エネルギー値ΔEに比例する。従って、各重量減少率における直線同士がほぼ平行であることは、それぞれの重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値ΔEがほぼ一定であり、そのばらつきが小さいことを意味する。また、信頼性の高い直線を得るためには、一つの直線に対して3つ以上の点をプロットすることが望ましい。従って、3つ以上のTG曲線を得る必要があり、そのためには3つ以上の異なる昇温速度について熱重量測定を繰り返すことが望ましい。
【0020】
グリースA、グリースBおよびグリースCについて、各重量減少率における活性化エネルギーの値をまとめ、表4に示す。
【表4】
図19は、グリースA、グリースBおよびグリースCの80℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示したものである。同様に、図20は100℃における定温劣化時間を示し、図21は120℃における定温劣化時間を示す。図19、20および21では、グリースBについて重量減少率45%に相当する定温劣化時間が全体の傾向から大きくずれている。表4からわかるように、グリースBに関する重量減少率45%に相当する活性化エネルギーの値は平均値±6%の範囲外であるので、この値は信頼性が低いといえる。従って、本発明の評価方法では、このような値は考慮されるべきではない。この結果は、活性化エネルギーの値が平均値±6%の範囲に収まっていることが重要であることを示している。これらの図から、実試験を実施せずとも、任意の温度における任意の重量減少率に到達するまでの各グリースの定温劣化時間に基づいて任意の温度におけるグリース寿命の相対的な評価を迅速に行うことができる。
【0021】
例えば、図19からは、80℃における重量減少率20%に到達するまでの定温劣化時間はグリースA<グリースB<グリースCの順に長くなるが、重量減少率40%に到達するまでの定温劣化時間はグリースA<グリースC<グリースBの順に長くなる。この結果より、実試験から求められる80℃における軸受用グリースの寿命が、例えば、重量減少率20%に相当すると定義した場合は、グリースA<グリースB<グリースCの順に寿命が長いという相対的な評価ができる。
一方、実試験から求められる軸受用グリースの寿命が、例えば、重量減少率40%に相当すると定義された場合は、グリースA<グリースC<グリースBの順に寿命が長いという相対的評価になる。実試験から求められる軸受用グリースの寿命に相当する重量減少率の値は、対象となる軸受の用途によって経験的に適宜決められるので、用途に応じた寿命評価が可能である。
以上のように、本発明におけるグリース寿命評価方法によれば、数種類のグリースの任意の温度における任意の重量減少率に到達するまでの相対的な寿命評価を、少ない試料量で、比較的短時間に精度良く行うことができる。従って、実試験を行わずとも各グリースの優劣が判断でき、グリースおよび軸受の開発時間とコストを大幅に削減できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のグリース組成物寿命評価方法は、その精度と信頼性が高く、低コストで研究開発と製品開発のスピードを格段に上げることができるので産業上の利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】昇温速度8℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図2】昇温速度5℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図3】昇温速度4℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図4】昇温速度3℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図5】昇温速度8℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図6】昇温速度5℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図7】昇温速度4℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図8】昇温速度3℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図9】リチウム石けんグリースのTG曲線図
【図10】ウレアグリースのTG曲線図
【図11】試料量による活性化エネルギー値のばらつきを示した図
【図12】空気流量による活性化エネルギー値のばらつきを示した図
【図13】グリースAのTG 曲線図
【図14】グリースBのTG 曲線図
【図15】グリースCのTG 曲線図
【図16】グリースAのアレニウスプロット図
【図17】グリースBのアレニウスプロット図
【図18】グリースCのアレニウスプロット図
【図19】グリースA、グリースBおよびグリースCの80℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示した図
【図20】グリースA、グリースBおよびグリースCの100℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示した図
【図21】グリースA、グリースBおよびグリースCの120℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示した図
【技術分野】
【0001】
本発明は熱分析の手法により熱重量測定データ(TGデータ)を収集し、収集されたTGデータを用いて反応速度論的解析を行い、試料の化学反応の活性化エネルギーに基づく定温劣化時間を算出して試料の寿命の相対的な評価を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軸受用グリース組成物の寿命を評価するためには、実際に被評価グリースを封入した多数の軸受を所定の環境温度と回転速度で実際に軸受性能が許容基準以下になるまで回転させる実試験を行っている。このような実試験を行うためには、まとまった量のグリースと多数の軸受けを製造する必要があるばかりではなく、試験機、所定の環境温度を維持するための恒温オーブン、試験治具等も必要であり、多大なコストが掛かっている。また、実試験の準備から完了までには数ヶ月以上掛かるのが通常であり、迅速な開発の支障となっていた。特に、軸受の開発段階においては、候補となるグリース組成物が複数種類挙げられる場合が多く、それらグリース組成物の相対的な寿命評価を低コストおよび短時間で実施可能な評価方法が求められていた。発明者は、このような事情に鑑みて、熱重量分析による活性化エネルギー測定結果に基づいてフッ素系潤滑油の寿命を予測する方法に着目した。
例えば、ハードディスクドライブ装置(HDD)の薄膜磁性媒体用のフッ素系潤滑油の寿命予測方法として、フッ素系潤滑油の熱重量測定(TG)と示差熱分析(DTA)を行い、発熱ピーク発生までの時間を潤滑油の寿命と定義し、反応速度論的解析によって活性化エネルギーの値から寿命を予測することが知られている(非特許文献1参照)。
ここでは1種類のフッ素系潤滑油に対して、昇温速度を2.5℃/min、5.0℃/min、10℃/min、20℃/min、40℃/minに順次変えて熱重量測定と示差熱分析を行い、昇温速度による発熱ピーク観測温度の変化を用いて活性化エネルギーを見積もり、定温での寿命予測を行っている。
前述の活性化エネルギーを測定するに際して、(i)試料を所定の昇温速度で昇温し、(ii)昇温中の試料及びその変化物の少なくとも一部の所定の物理的性質の変化速度と温度とを逐次測定し、(iii)同種の試料について相異なる複数の昇温速度において前述の測定を繰り返し、(iv)各昇温速度 について、該変化速度が極大となる点を見出し、(v)各昇温速度についての、該変化速度極大点における変化速度と温度との関係から試料中に起る変化の活性化エネルギーを算出する各段階を具備することを特徴とする活性化エネルギーの測定方法は知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、潤滑油やグリースについて、熱重量分析と示差熱分析とを行い、熱重量分析によって得られた結果から初期重量が1/2になった時の温度を求め、予め従来の評価法による実験によって求めた寿命時間と求めた温度の相関関係から相対的な熱・酸化安定性を評価する方法が知られている(特許文献2参照)。この熱分析を用いることで、5〜10mg程度の少量の試料で、約2時間の短時間で分析して評価することができ、その結果の熱重量分析の重量が1/2となる温度からその潤滑剤のグレード程度の相対的な熱・酸化安定性を評価でき、また、反応速度論による解析を行い、任意の温度での評価や使用条件の異なる場合の評価も簡単にできるようになることが記載されている。
ここでは、これらの熱重量分析および示差熱分析の試験条件としては、所定の温度として試験温度を室温から500℃とし、昇温速度を10℃/min 、試料重量を5〜10mg、所定のガス雰囲気として酸素とアルゴンが1:4の混合ガスを用い、雰囲気ガスの吹き込み速度を50cm3/minとすることが示されているが、この方法では自己加熱効果(試料の急激な発熱現象)が発生してしまう場合があることが判明した。
さらに、GISや変圧器など高電圧の電力機器における接点・回転部・機械摺動面・シール部に潤滑またはシールを目的に塗布されたグリースを、被評価グリースとして採取し、この被評価グリースを不活性ガス雰囲気下で、所定の温度上昇速度にて加熱昇温しながら、熱重量測定装置によって熱重量測定し、被評価グリースにおける油分の加熱減量Aを測定することを特徴とするグリース油分率測定法も知られている(特許文献3参照)。ここでは、熱重量測定条件は、昇温速度は5〜30℃/min程度が適当であることが開示されているが、この方法でもやはり自己加熱効果(試料の急激な発熱現象)が発生してしまう場合があることが判明した。
【0004】
定速昇温下で得られる熱重量測定データを用いて速度論的解析をおこなう方法を非等温的方法といい、代表的な方法として、特許文献2のような、一つの昇温速度における熱重量測定データを用いて速度論的パラメータ(活性化エネルギー、頻度因子、反応次数等)を求める単一測定法や、特許文献1および非特許文献1のように、異なる複数の昇温速度における熱重量測定から得た複数の熱重量測定データを用いて、同一の反応率におけるデータ点の関係から活性化エネルギー値を決定する等変化率法などが挙げられる。単一測定法による解析は、単一の熱重量測定データから同時にすべての速度パラメータを得ることができるため、最も迅速で簡便な方法であるが、反応の速度論的モデル関数(反応機構)を選定する必要がある。速度論的モデル関数に依存して活性化エネルギーと頻度因子が変化するため、誤った速度論的モデル関数を仮定すると、誤った活性化エネルギー値と頻度因子をもたらす結果となる。これに対し、等変化率法による解析は、速度論的モデル関数の選定を行わずに活性化エネルギーを求めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平04−309852号公報
【特許文献2】特開平09−264860号公報
【特許文献3】特開2005−77394号公報
【非特許文献1】(藤野他著;「薄膜磁性媒体用フッ素系極性潤滑剤の寿命予測」5−44頁1990年電子情報通信学会春季全国大会論文集)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリース組成物については、その寿命を相対的に評価する手段として、上記の等変化率法による速度論的解析を行った事例はこれまで知られていない。上記従来技術の測定条件を適用してグリースの測定をおこなっても、10℃/min以上の速い昇温速度での測定は、昇温中にグリースの自己加熱効果(試料の急激な発熱現象)が起きてしまうため定速昇温での測定ができず、定速昇温を仮定した等変化率法による速度論的解析手法を適用することができない。
そこで本発明は、グリース組成物について、等変化率法による速度論的解析手法を適用可能な測定条件によって、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さく(活性化エネルギーの平均値±6%以内)、より信頼性の高いグリース組成物の寿命評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、グリース組成物について、より信頼性の高い寿命評価をするためには、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さい(活性化エネルギーの平均値±6%以内)ことが重要であることを見出し、その前提となる自己加熱効果の起きない一定の昇温速度下での安定した熱重量測定データ(TGデータ)を得るためには、試料量、昇温速度および雰囲気ガス流量の組み合わせが、大きく影響することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、試料の熱重量測定を行い、得られた熱重量測定結果を用いて反応速度論的解析をすることにより、試料の熱分解反応における活性化エネルギー値を算出し、算出された活性化エネルギー値から予測される試料の定温劣化時間に基づいて試料の寿命の相対的な評価を行う方法であって、試料がグリース組成物であり、試料量が5〜15mgであり、昇温速度5℃/min未満で、室温から重量減少率50%以上となる温度まで昇温させて熱重量測定を行うことを、3つ以上の異なる昇温速度について繰り返し、得られた3つ以上の熱重量曲線(TG曲線)に基づいて活性化エネルギーを算出することを特徴とするグリース組成物寿命評価方法である。
【0008】
また、本発明においては、活性化エネルギーの算出を、数式1
【数3】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。)
により算出し、任意の温度(Tc)における定温劣化時間の算出を数式2
【数4】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度、TCは定温劣化時間算出温度(℃)、τは定温劣化時間を表す。)を用いて、数式1により得られる活性化エネルギー値を代入して算出することができる。
また、本発明においては、熱重量測定の繰り返し回数を3回とし、昇温速度を、1℃/min、2℃/minおよび3℃/minとすることが望ましい。
さらに、本発明においては、雰囲気ガスとして空気を用い、流量80〜120ml/minにより行われることが望ましい。
さらに、本発明においては、グリース組成物を、添加剤を含むグリース組成物とすることができる。また、ここにおいて、グリース組成物を、軸受用グリース組成物とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
従来の実試験によるグリース寿命評価方法では多大なコストと大幅な時間が掛かっていた。本発明のグリース組成物寿命評価方法は、高い信頼性で、わずかな試料量を用いて、短時間に各種グリース組成物の寿命評価を行って、その相対的な優劣を見極めることができるので、軸受の開発時間短縮にも大きく寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、熱重量測定とは、試料(グリース組成物)を一定の昇温速度で昇温させ、その試料の重量を温度または時間の関数として測定することを言う。
本発明において、反応速度論的解析とは、試料(グリース組成物)の所定の重量減少率(反応率)における、絶対温度の逆数と昇温速度の対数との関係をプロットすることにより得られるアレニウスプロットから、試料の熱分解反応における活性化エネルギーを求めることを言う。
【0011】
本発明において、上記アレニウスプロットに示される直線は数式1
【数5】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。)
で表される。従って、直線の傾きはΔEに正比例する。
また、数式1により得られた活性化エネルギーの値を次の数式2に代入することによって、任意の温度(Tc)におけるグリース組成物の定温劣化時間(τ)が求められる。
【数6】
式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度、Tcは定温劣化時間算出温度(℃)、τは定温劣化時間を表す。また、T0は初期重量に対応した温度、T1は任意の重量減少率に対応した温度を表す。
【0012】
本発明においては、昇温速度は、非常に重要な因子であり、異なる重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値のばらつきが小さく、信頼性の高いデータを得るためには、5℃/min未満としなければならない。
図1から図4にリチウム石けんグリースを用いて昇温速度を変えて熱重量測定を行った結果を示す。図1の条件は、試料量10mg、昇温速度8℃/min、空気流量100ml/minであり、図2、図3および図4の条件は、それぞれの昇温速度が5℃/min、4℃/min、3℃/minである以外は図1の条件と同じである。また、図1の曲線1、図2の曲線3、図3の曲線5および図4の曲線7はTG曲線に相当し、図1の曲線2、図2の曲線4、図3の曲線6および図4の曲線8は試料の昇温曲線に相当する。
図1および図2のように昇温速度を5℃/min以上とした場合は、試料温度が300℃を超えた付近で急激な発熱が発生している。このような現象を、自己加熱効果とよぶ。
このような自己加熱効果はウレアグリースにおいても発生する。図5から図8にウレアグリースを用いて昇温速度を変えて熱重量測定を行った結果を示す。測定はリチウム石けんグリースと同一条件で行い、図5は昇温速度8℃/minであり、図6、図7および図8の昇温速度はそれぞれ5℃/min、4℃/minおよび3℃/minである。また、図5の曲線9、図6の曲線11、図7の曲線13および図8の曲線15はTG曲線に相当し、図5の曲線10、図6の曲線12、図7の曲線14および図8の曲線16は試料の昇温曲線に相当する。図5および図6のように昇温速度5℃/min以上とした場合には、リチウム石けんグリース同様、試料温度が300℃を超えた付近で急激な発熱(自己加熱効果)が発生している。このように、定速昇温下で測定した熱分析曲線では、自己加熱効果が大きいと反応中の昇温速度が大きく変動し、定速昇温を仮定した速度論的解析を適用できない場合がある。但し、ウレアグリースにおいては図7のように昇温速度が4℃/minにおいてもわずかな自己加熱効果が発生しているが、速度論的解析を適用できないほどの規模ではない。
本発明においては、昇温速度が5℃/min未満の範囲内で、3つ以上の異なる昇温速度における熱重量測定を行い、収集した熱重量測定データから活性化エネルギー値を算出する。リチウム石けんグリースを用いて熱重量測定を行い、得られた昇温速度1℃/min、2℃/minおよび3℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値と、昇温速度4℃/min、5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値とを対比結果を表1に示す。
【表1】
リチウム石けんグリースにおいては、自己加熱効果が生じている5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて活性化エネルギーを算出した場合であっても、重量減少率5%から45%の活性化エネルギー値は活性化エネルギーの平均値±6%の範囲に入っているが、全ての昇温速度が5℃/min以下の方がばらつきが小さい。図9は縦軸に重量減少率[%]、横軸に温度[℃]を取った場合の各昇温速度のTG曲線である。昇温速度3℃/min、4℃/minおよび5℃/minについては、TG曲線は重量減少率に関わらず各昇温速度で同じ傾向を示しており、互いに横方向に平行移動したような曲線となっている。以下、曲線のこのような関係を平行関係ということにする。このような場合には、単一の反応が起きているものと考えられ、単一反応が起きていることを前提とする速度論的解析を適用することができ、後に述べるアレニウスプロットより、重量減少率によらず一定でばらつきの小さい活性化エネルギー値が得られる。ところが、昇温速度8℃/minのTG曲線は重量減少率に関わらず、他のTG曲線との関係は平行関係とは大きく異なり、特に重量減少率60%〜90%の範囲において大きく湾曲している。このような場合には、速度論的解析を適用することはできず、信頼性のある活性化エネルギー値は得られない。
ウレアグリースを用いて熱重量測定を行い、得られた昇温速度1℃/min、2℃/minおよび3℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値と、昇温速度4℃/min、5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて算出した活性化エネルギー値とを対比した結果を表2に示す。
【表2】
ウレアグリースにおいては自己加熱効果が生じている4℃/min、5℃/minおよび8℃/minのデータを用いて活性化エネルギー値を算出した場合には、活性化エネルギー値はばらつき、ばらつきの範囲が活性化エネルギーの平均値±6%を大幅に超える結果となっている。
図10は縦軸に重量減少率[%]、横軸に温度[℃]を取った場合の各昇温速度のTG曲線である。重量減少率0%から20%の範囲はTG曲線の平行関係が成り立っており、後に述べるアレニウスプロットより、重量減少率によらず一定でばらつきの小さい活性化エネルギー値が得られる。ところが、重量減少率30%付近以降はこのようなTG曲線の平行関係が成り立たず、TG曲線は各昇温速度について明らかに異なる形の曲線となっている。このような範囲では、速度論的解析を適用することはできず、信頼性のある活性化エネルギー値は得られない。
以上の結果から、グリースの種類によることなく、活性化エネルギー値のばらつきがより小さく、信頼性の高いデータを得るためには、昇温速度を5℃/min未満とした方が好ましいといえる。
本発明においては、特に、試料量10mg、昇温速度1℃/min、2℃/min、3℃/min、空気流量100ml/minで測定したものがベストモードであり、定速昇温下での安定した熱重量測定データが得られ、活性化エネルギー値のばらつきが小さい結果が得られることが判明した。
【0013】
また、本発明で用いる試料(グリース組成物)の量による影響を調べることは、安定的な測定結果を得るために、考慮されるべき要因の一つである。基油がエステル油とエーテル油からなるリチウム石けんグリースの試料量を、3mg、5mg、10mgとした場合(それぞれ昇温速度1℃/min、2℃/min、3℃/min、空気流量100ml/minでTG曲線を測定)において、数式1を用いて活性化エネルギー値を算出した結果を図11に示す。
これにより、試料(グリース組成物)の量は、5mg未満では、重量減少率初期(5%〜30%)において活性化エネルギー値が平均値±6%以上に異なり、ばらつきが大きいことが判明した。これに対して、例えば試料量10mgでは、重量減少率10%以降は安定した値を示している。
試料量は、多くの実験を繰り返した結果、5〜15mgとくに8〜12mgが良いことが判明した。試料量は少ないほど、試料内での温度の偏りを少なくすることができるが、5mg未満では試料容器の底に試料(グリース)を均一に充填するには試料量が少なすぎる。試料を均一に試料容器に充填することは、測定結果のばらつきを抑えるために必要なことである。
【0014】
また、本発明においては、雰囲気ガス(空気)流量も活性化エネルギー値のばらつきを小さくするために重要な因子である。図12は試料として基油がエステル油であるリチウム石けんグリースを用い、試料量10mgとした場合の、雰囲気ガス(空気)流量の違いによる活性化エネルギー値のばらつきを示したものである。雰囲気ガス(空気)流量を100ml/minとしたときの活性化エネルギー値は重量減少率5〜50%の範囲において平均値(113.3kJ/mol)±6%以内に収まっているが、雰囲気ガス(空気)流量を200ml/minとしたときの活性化エネルギー値は平均値(118.6kJ/mol)±6%を超える点があり、ばらつきが大きくなっている。雰囲気ガス(空気)の流量は、試料から発生するガスを速やかに外部に排出するために不可欠なことであるが、雰囲気ガス(空気)流量を200ml/minとした場合には、雰囲気ガス(空気)流量が多すぎるため、活性化エネルギー値が許容幅以上にばらつく結果となってしまった。
【0015】
本発明において用いるグリース組成物が含んでいる添加剤は、酸化防止剤、防錆剤を挙げることができる。
本発明において用いることが出来る具体的な酸化防止剤は、フェニルα(β)ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン系酸化防止剤、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)に代表されるフェノール系酸化防止剤等が使用される。
また、本発明において用いることが出来る具体的な防錆剤としては、金属スルホネート、非イオン系、アミン系等の防錆剤等が挙げられる。
【0016】
本発明において用いるグリース組成物は、必要に応じて通常グリースに用いられる鉛を含まない各種の添加剤を含有することも可能である。
例えば、ベントン、シリカゲル等のゲル化剤;イオウ系、リン系、有機モリブデン等の極圧剤;脂肪酸、動植物油等の油性剤;石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、カルボン酸塩、ソルビタンエステル等の錆止め剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の粘度指数向上剤等が挙げられる。
【0017】
さらに、本発明においては、試験温度範囲を室温から重量減少率が50%以上に相当する温度までとしている。一般的に、軸受用のグリース組成物の寿命は重量減少率30〜40%程度に相当するので、試験温度範囲を室温から重量減少率が50%以上に相当する温度までとすれば十分である。
次に、本発明の実施例を示す。以下の実施例では本発明の測定条件を、表3の基油と増ちょう剤の組み合わせからなるグリースに適用したが、本発明はこれらのグリースに限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
グリースA、グリースB、グリースC を用意し、熱重量測定(TG)および示差熱分析(DTA)の同時測定が可能な装置(TG/DTA)を用いて、各グリースの熱重量測定を行った。但し、本発明は示差熱分析(DTA)結果を用いていないので、その説明は省略する。
表3に各グリースを構成する、基油、増ちょう剤および添加剤を示す。
【表3】
熱重量測定は以下の測定方法でおこなった。
まず、被測定のグリースを10mg±0.1mg の精度でアルミニウム製の試料容器(φ5mm)に採取した。この試料容器を装置にセットした。
測定条件は、測定温度範囲を室温から560℃、空気流量100ml/min、昇温速度を1℃/minに設定して測定をおこない、昇温速度1℃/minにおける熱重量曲線(TG曲線)を得た。
さらに、同種のグリースを同様に10mg±0.1mgの精度で採取し、前記測定条件の昇温速度のみを変え、昇温速度2℃/minおよび3℃/minで測定を繰り返し、昇温速度2℃/minにおける熱重量曲線(TG曲線)、昇温速度3℃/min における熱重量曲線(TG曲線)を得た。これにより、1 種類のグリースについて、昇温速度の異なる3つのTG曲線を得た。
【0019】
上記3種類のグリースについて同様に測定を実施し、それぞれ昇温速度の異なる3つのTG曲線を得た。
図13はグリースAのTG曲線、図14はグリースBのTG曲線、図15はグリースCのTG曲線である。上記のTG曲線のデータから、各重量減少率(例えば、5%、10%など)に対応する昇温速度と温度の関係を読み取り、横軸に絶対温度の逆数(1/T)、縦軸に昇温速度の対数(logB)を取ってプロットし、例えば、図16に示すようなアレニウスプロットを得た。図16にグリースAのアレニウスプロット、図17にグリースBのアレニウスプロット、図18にグリースCのアレニウスプロットを示す。アレニウスプロットに示される直線は、数式1の関係式で表され、その傾きは活性化エネルギー値ΔEに比例する。従って、各重量減少率における直線同士がほぼ平行であることは、それぞれの重量減少率に対して得られる活性化エネルギー値ΔEがほぼ一定であり、そのばらつきが小さいことを意味する。また、信頼性の高い直線を得るためには、一つの直線に対して3つ以上の点をプロットすることが望ましい。従って、3つ以上のTG曲線を得る必要があり、そのためには3つ以上の異なる昇温速度について熱重量測定を繰り返すことが望ましい。
【0020】
グリースA、グリースBおよびグリースCについて、各重量減少率における活性化エネルギーの値をまとめ、表4に示す。
【表4】
図19は、グリースA、グリースBおよびグリースCの80℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示したものである。同様に、図20は100℃における定温劣化時間を示し、図21は120℃における定温劣化時間を示す。図19、20および21では、グリースBについて重量減少率45%に相当する定温劣化時間が全体の傾向から大きくずれている。表4からわかるように、グリースBに関する重量減少率45%に相当する活性化エネルギーの値は平均値±6%の範囲外であるので、この値は信頼性が低いといえる。従って、本発明の評価方法では、このような値は考慮されるべきではない。この結果は、活性化エネルギーの値が平均値±6%の範囲に収まっていることが重要であることを示している。これらの図から、実試験を実施せずとも、任意の温度における任意の重量減少率に到達するまでの各グリースの定温劣化時間に基づいて任意の温度におけるグリース寿命の相対的な評価を迅速に行うことができる。
【0021】
例えば、図19からは、80℃における重量減少率20%に到達するまでの定温劣化時間はグリースA<グリースB<グリースCの順に長くなるが、重量減少率40%に到達するまでの定温劣化時間はグリースA<グリースC<グリースBの順に長くなる。この結果より、実試験から求められる80℃における軸受用グリースの寿命が、例えば、重量減少率20%に相当すると定義した場合は、グリースA<グリースB<グリースCの順に寿命が長いという相対的な評価ができる。
一方、実試験から求められる軸受用グリースの寿命が、例えば、重量減少率40%に相当すると定義された場合は、グリースA<グリースC<グリースBの順に寿命が長いという相対的評価になる。実試験から求められる軸受用グリースの寿命に相当する重量減少率の値は、対象となる軸受の用途によって経験的に適宜決められるので、用途に応じた寿命評価が可能である。
以上のように、本発明におけるグリース寿命評価方法によれば、数種類のグリースの任意の温度における任意の重量減少率に到達するまでの相対的な寿命評価を、少ない試料量で、比較的短時間に精度良く行うことができる。従って、実試験を行わずとも各グリースの優劣が判断でき、グリースおよび軸受の開発時間とコストを大幅に削減できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のグリース組成物寿命評価方法は、その精度と信頼性が高く、低コストで研究開発と製品開発のスピードを格段に上げることができるので産業上の利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】昇温速度8℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図2】昇温速度5℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図3】昇温速度4℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図4】昇温速度3℃/minにおけるリチウム石けんグリースの熱重量測定結果図
【図5】昇温速度8℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図6】昇温速度5℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図7】昇温速度4℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図8】昇温速度3℃/minにおけるウレアグリースの熱重量測定結果図
【図9】リチウム石けんグリースのTG曲線図
【図10】ウレアグリースのTG曲線図
【図11】試料量による活性化エネルギー値のばらつきを示した図
【図12】空気流量による活性化エネルギー値のばらつきを示した図
【図13】グリースAのTG 曲線図
【図14】グリースBのTG 曲線図
【図15】グリースCのTG 曲線図
【図16】グリースAのアレニウスプロット図
【図17】グリースBのアレニウスプロット図
【図18】グリースCのアレニウスプロット図
【図19】グリースA、グリースBおよびグリースCの80℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示した図
【図20】グリースA、グリースBおよびグリースCの100℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示した図
【図21】グリースA、グリースBおよびグリースCの120℃における定温劣化時間を、重量減少率ごとに示した図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の熱重量測定を行い、得られた熱重量測定結果を用いて反応速度論的解析をすることにより、試料の熱分解反応における活性化エネルギー値を算出し、算出された活性化エネルギー値から予測される試料の定温劣化時間に基づいて試料の寿命の相対的な評価を行う方法であって、
試料がグリース組成物であり、試料量を5〜15mgおよび昇温速度を5℃/min未満として、室温から所望の温度まで一定の昇温速度で昇温させて熱重量測定を行うことを、3つ以上の異なる昇温速度について繰り返し、得られた3つ以上の異なる熱重量曲線(TG曲線)に基づいて活性化エネルギー値を算出することを特徴とするグリース組成物寿命評価方法。
【請求項2】
活性化エネルギー値の算出が、数式1
【数1】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。)
により算出され、任意の温度(Tc)における定温劣化時間の算出が、数式2
【数2】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度、Tcは定温劣化時間算出温度(℃)、τは定温劣化時間を表す。)を用いて、数式1により得られた活性化エネルギー値を代入して算出される請求項1に記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項3】
熱重量測定の繰り返し回数が3回であり、昇温速度が1℃/min、2℃/minおよび3℃/minである請求項1または請求項2に記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項4】
雰囲気ガスが空気であり、空気の流量が80〜120ml/minである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項5】
グリース組成物が、添加剤を含むグリース組成物である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項6】
グリース組成物が、軸受用グリース組成物である請求項5に記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項1】
試料の熱重量測定を行い、得られた熱重量測定結果を用いて反応速度論的解析をすることにより、試料の熱分解反応における活性化エネルギー値を算出し、算出された活性化エネルギー値から予測される試料の定温劣化時間に基づいて試料の寿命の相対的な評価を行う方法であって、
試料がグリース組成物であり、試料量を5〜15mgおよび昇温速度を5℃/min未満として、室温から所望の温度まで一定の昇温速度で昇温させて熱重量測定を行うことを、3つ以上の異なる昇温速度について繰り返し、得られた3つ以上の異なる熱重量曲線(TG曲線)に基づいて活性化エネルギー値を算出することを特徴とするグリース組成物寿命評価方法。
【請求項2】
活性化エネルギー値の算出が、数式1
【数1】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を表す。)
により算出され、任意の温度(Tc)における定温劣化時間の算出が、数式2
【数2】
(式中、Bは昇温速度、ΔEは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度、Tcは定温劣化時間算出温度(℃)、τは定温劣化時間を表す。)を用いて、数式1により得られた活性化エネルギー値を代入して算出される請求項1に記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項3】
熱重量測定の繰り返し回数が3回であり、昇温速度が1℃/min、2℃/minおよび3℃/minである請求項1または請求項2に記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項4】
雰囲気ガスが空気であり、空気の流量が80〜120ml/minである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項5】
グリース組成物が、添加剤を含むグリース組成物である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載したグリース組成物寿命評価方法。
【請求項6】
グリース組成物が、軸受用グリース組成物である請求項5に記載したグリース組成物寿命評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−3079(P2008−3079A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134534(P2007−134534)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】
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