説明

グリーン成形体の切断装置及びこれを備えたグリーン成形体製造システム

【課題】押出成形装置から押し出されたグリーン成形体及びこれを所定の長さに切断してなる成形体の変形や欠陥を十分に抑制し、寸法精度が高いグリーン成形体を得る。
【解決手段】本発明に係る切断装置60は、押出成形装置10のダイ8から押し出されて横方向に延びるグリーン成形体70Aの側面の形状に応じた凹部31aを有する保持部材31A,31Bと、保持部材31Bを上方に移動させてグリーン成形体70Aの側面に凹部31aを当接させる駆動手段33と、ダイ8と駆動手段33の間に設けられ、上方に向けてガスを噴射するための複数の開口35bを有するガス噴射面35aと、開口35bに気体を供給する気体供給手段37と、グリーン成形体70Aを切断するカッターWと、グリーン成形体70を載せた保持部材31Aがスライドするスライド面52を有する分離機構50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形装置が有するダイから横方向に押し出されたグリーン成形体を所定の長さに切断するための切断装置及びこれを備えたグリーン成形体製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。特許文献1,2には、グリーンハニカム成形体の製造に使用されるダイス及び押出成形装置が開示されている。特許文献3には、グリーンハニカム成形体の切断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−5915号公報
【特許文献2】特許第4099896号公報
【特許文献3】特開2001−96524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、押出成形装置が有するダイから横方向にグリーン成形体を押し出した場合、押し出されたグリーン成形体が長くなるに従い、重力によって先端が下方にたわんでしまう。また、グリーン成形体を所定の長さに切断するのにワイヤなどのカッターが上方から下方に移動する切断装置を使用した場合、カッターからグリーン成形体に対して下方に力が加わる。重力やワイヤによるグリーン成形体の変形を防止するため、スポンジ等からなる保持部材でグリーン成形体の先端部を支える必要がある。
【0005】
しかし、通常、押出成形装置及び切断装置の構造上の制約から、これらの装置を十分に接近させて配置することができず、押出成形装置のダイの位置からグリーン成形体を保持部材で支える位置まで500〜600mmの距離を要する場合がある。この場合、グリーン成形体の強度にもよるが、グリーン成形体の先端が保持部材の位置に至るまでの間に下方にたわみやすい。また、先端部が保持部材で支えられた状態でも、ダイと保持部材の間でグリーン成形体が下方にたわむおそれがある。
【0006】
グリーン成形体の下方にたわんだ箇所が押出成形に伴って後方に移動して当該箇所に保持部材が当接すると、グリーン成形体が保持部材によって上方に押されてグリーン成形体の基端部(ダイの出口近傍)にシワが生じるおそれがある。グリーン成形体の変形は、グリーン成形体を焼成して焼成体を得る工程におけるクラック発生の原因となる。
【0007】
また、カッターを下降させてグリーン成形体を切断した後にカッターを上昇させる際、カッターがグリーン成形体に接触してしまう場合があり、この接触によってグリーン成形体が変形したり切り込みなどの欠陥が生じやすい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、押出成形装置から押し出されたグリーン成形体及びこれを所定の長さに切断してなる成形体の変形や欠陥を十分に抑制でき、寸法精度が高いグリーン成形体が得られる切断装置及びこれを備えたグリーン成形体製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る切断装置は、押出成形装置が有するダイから押し出されて横方向に延びるグリーン成形体を切断するためのものであり、グリーン成形体の側面の形状に応じた凹部を有する保持部材と、保持部材を上方に移動させてグリーン成形体の側面に保持部材の凹部を当接させる駆動手段と、押出成形装置の後段に当該切断装置を配置したとき、ダイと駆動手段の間に設けられ、上方に向けてガスを噴射するための複数の開口を有するガス噴射面と、複数の開口に気体を供給する気体供給手段と、保持部材の近傍であってダイ側の位置においてグリーン成形体を切断するカッターと、切断されたグリーン成形体を載せた保持部材をスライドさせてダイから延びるグリーン成形体から引き離すスライド面を有する分離機構とを備える。
【0010】
上記切断装置によれば、先端部が保持部材によって支えられていない状態のグリーン成形体に向けてガス噴射面から上向きのガスを噴射できる。これにより、グリーン成形体が保持部材の位置に至るまでの間において、グリーン成形体が重力によって下方にたわむのを十分に防止できる。また、カッターを降下させてグリーン成形体を切断した後、切断されたグリーン成形体を載せた保持部材をスライドさせることで、カッターを上昇させる際にカッターがグリーン成形体に接触するなどの不具合を十分に抑制できる。なお、スライド面の終点に次の工程(例えば、乾燥工程など)の装置を配置すれば、グリーン成形体の移送時における変形も十分に抑制できる。
【0011】
上記分離機構が有するスライド面は、ダイから遠ざかる方向に向けて低くなるように傾斜した部分を有するものであってもよく、あるいは、上方に向けてガスを噴射するための複数の開口を有するものであってもよい。
【0012】
また、切断装置の分離機構は、切断されたグリーン成形体及び/又はこれを保持する保持部材に向けてダイから遠ざかる方向にガスを噴射するガス噴射口を更に有するものとすることができる。かかるガス噴射口を分離機構に設けることで、所望のタイミングで保持部材のスライドを開始させることができる。
【0013】
本発明は、横方向にグリーン成形体を押し出すダイを有する押出成形装置と、上記切断装置とを備えるグリーン成形体製造システムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押出成形装置から押し出されたグリーン成形体及びこれを所定の長さに切断してなる成形体の変形や欠陥を十分に抑制でき、寸法精度が高いグリーン成形体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)はグリーンハニカム成形体の一例を示す斜視図、(b)はグリーンハニカム成形体の部分拡大図である。
【図2】本発明に係るグリーン成形体製造システムの一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】押出成形装置の内部構造を模式的に示す部分断面図である。
【図4】保持部材の一例を示す斜視図である。
【図5】ガス噴射プレートの構成を模式的に示す斜視図である。
【図6】切断機構の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【図7】分離機構の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係るグリーン成形体製造システムの説明に先立ち、ハニカム構造体用のグリーン成形体について説明する。
【0017】
<グリーン成形体>
図1に示すグリーンハニカム成形体(グリーン成形体)70は、押出成形装置10によって押出成形されたグリーンハニカム成形体70Aを所定の長さに切断して得たものである(図2参照)。図1の(a)に示すように、グリーンハニカム成形体70は多数の貫通孔70aが略平行に配置された円柱体である。貫通孔70aの断面形状は、図1の(b)に示すように正方形である。これらの複数の貫通孔70aは、グリーンハニカム成形体70において、端面から見て、正方形配置、すなわち、貫通孔70aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。貫通孔70aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.8〜2.5mmとすることができる。なお、グリーンハニカム成形体70を所定の温度で焼成することによってハニカム構造体が製造される。
【0018】
グリーンハニカム成形体70の貫通孔70aが延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、グリーンハニカム成形体70の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。貫通孔70a間の間隔である隔壁の厚みは、0.05〜0.5mmとすることができる。
【0019】
グリーンハニカム成形体70の材料は特に限定されないが、後で焼成することによりセラミクスとなるグリーン(セラミクス原料)とすることができる。セラミクスとしては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0020】
具体的には、グリーンハニカム成形体70は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含むことができる。
【0021】
例えば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0022】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。有機バインダの量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは6重量部以下である。また、有機バインダの下限量は、0.1重量部であることが好ましく、より好ましくは3重量部である。
【0023】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0024】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜40重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜25重量部である。
【0025】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。
【0026】
可塑剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。市販品としては、例えば、日油株式会社製「ユニルーブ50MB−72」(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、20℃における粘度が1020mPa・s)、日油株式会社製「ユニルーブ50MB−168」(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、20℃における粘度が2880mPa・s)が挙げられる。可塑剤の量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.1〜6重量部である。
【0027】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8重量部である。
【0028】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、10重量部〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは20重量部〜80重量部である。
【0029】
<グリーン成形体製造システム>
図2〜7を参照しながら、本発明に係るグリーン成形体製造システムの実施形態について説明する。図2に示すグリーン成形体製造システム100は、粉末状又はペースト状の原料組成物からグリーンハニカム成形体70を製造するためのものである。グリーン成形体製造システム100は、押出成形装置10と、押出成形装置10から水平方向に押し出されたグリーンハニカム成形体70Aを支持した状態で所定の長さに切断してグリーンハニカム成形体70を得る切断装置60とを備える。
【0030】
(押出成形装置)
押出成形装置10は、図2に示すとおり、ハウジング1内の上段に設けられたスクリュー2A及び下段に設けられたスクリュー2Bを備える。スクリュー2A,2Bは、入口1aから供給された原料組成物を混練すると共に流路1bを通じて下流側へと移送するためのものである。スクリュー2A,2Bの間には、真空室3が設けられており、真空室3内を減圧することによって原料組成物を脱気処理できるようになっている。真空室3内の原料組成物はローラ3aによって下段のスクリュー2Bに導入される。
【0031】
押出成形装置10は、図3に示すとおり、スクリュー2Bの下流側に必要に応じて設けられる流量調整板5と、原料組成物からなるグリーンハニカム成形体70Aが押し出されるダイ8と、流路1bとダイ8を連通する抵抗管9とを更に備える。抵抗管9は、内部の流路がテーパ状になっており、上流側から下流側に向けて流路断面積が徐々に小さくなっている。なお、スクリュー2Bの径よりも径が大きいグリーンハニカム成形体70Aを製造する場合などになっては、抵抗管9は上流から下流に向けて流路断面が大きくなる拡大部を有してもよい。
【0032】
流量調整板5は、ダイ8に原料組成物を導入するに先立ち、その流速分布の均一化を図るためのものである。流量調整板5は、ハウジング1に対して着脱自在に設けられており、スクリュー2Bとダイ8の間に配置されている。ボルト及びナットによってフランジ1c,1dを締め付けることによって流量調整板5はハウジング1に固定されている。流量調整板5は、流量調整の効果を高めるために網状の抵抗体(図示せず)を有していてもよい。
【0033】
流量調整板5は、厚さ方向に貫通する直径1〜10mmの貫通孔5aを複数有する。流量調整板5は、上流側から圧力を受けてもほとんど歪みを起こさない構造体であることが好ましい。かかる観点から、流量調整板5の材質としては、例えば、炭素鋼等が好ましい。炭素鋼以外の好適な材質として、ニッケル、クロム、タングステン等を含有する特殊鋼を例示できる。流量調整板5の厚さは、十分の強度を確保する観点から、10〜100mmであることが好ましい。
【0034】
ダイ8は、原料組成物から図1に示す形状の成形体を製造するためのものであり、これに対応する格子状の流路(図示せず)を有する。原料組成物がダイ8を通過することで、流路断面が正方形である多数の貫通孔70aを有し、側面を覆う外周スキンを有するグリーンハニカム成形体70Aを形成される。
【0035】
(切断装置)
切断装置60は、押出成形装置10の後段に配置されており、グリーンハニカム成形体70Aを切断して所定の長さのグリーンハニカム成形体70を得るためのものである。切断装置60は、ダイ8から水平方向に押し出されたグリーンハニカム成形体70Aを支持する支持機構30と、グリーンハニカム成形体70Aを切断するための切断機構40と、切断されたグリーンハニカム成形体70を載せた保持部材31Aをスライドさせてダイ8から延びるグリーンハニカム成形体70Aから引き離すスライド面52を有する分離機構50を備える。
【0036】
支持機構30は、重力やワイヤWによってグリーンハニカム成形体70Aが変形するのを防止するためのものである。支持機構30は、凹部31aを有する複数の保持部材31A,31Bと、保持部材31A,31Bを一つずつ上方に移動させる作業を繰り返す可動プレート(駆動手段)33と、グリーンハニカム成形体70Aに向けて上方に空気を噴射するためのガス噴射プレート35と、ガス噴射プレート35に圧縮空気を供給するコンプレッサ(気体供給手段)37とを備える(図2,4,5参照)。
【0037】
保持部材31Aは、図4に示すとおり、スポンジ製の本体部31bと、樹脂(例えば塩化ビニル)製の底部31cとからなる。スポンジ製の本体部31bにグリーンハニカム成形体70Aの側面の形状に応じた凹部31aが形成されている。本実施形態においては、グリーンハニカム成形体70Aは円柱状であるため、凹部31aは断面形状が半円状である。なお、保持部材31Bも保持部材31Aと同様の構成を有する。
【0038】
可動プレート33は、グリーンハニカム成形体70Aの側面に対して保持部材(31A,31B)の凹部31aを当接させるためのものである。図2は、保持部材31Bを載せた可動プレート33が上昇した状態を示す。可動プレート33は、ダイ8から押し出されたグリーンハニカム成形体70Aの先端及び、保持部材が所定の位置にまで到達したとき、これをセンサ等が検知して自動的に上昇するものであってもよいし、作業者が目視により確認して手動で操作するものであってもよい。可動プレート33は、上方に移動した後、所定の高さで止まるように設定されている。すなわち、可動プレート33は、ダイ8の高さと、可動プレート33上の保持部材の凹部31aの高さが一致する高さで止まるように設定されている。
【0039】
ガス噴射プレート35は、その上面がガス噴射面35aをなしており、押出成形装置10のダイ8の位置から可動プレート33の位置まで延びている。ガス噴射プレート35はグリーンハニカム成形体70Aの下方に配置されており、ガス噴射面35aはグリーンハニカム成形体70Aの側面と0.1〜10mm離隔している。図5に示すとおり、ガス噴射面35aは複数の開口35bを有し、これらの開口35bからグリーンハニカム成形体70Aに向けて空気を噴射できるようになっている。ガス噴射面35aはグリーンハニカム成形体70Aの側面を取り囲むように湾曲していることが好ましく、図5に示すように、押出方向に垂直な断面が半円状であることがより好ましい。
【0040】
開口35bの口径は、グリーンハニカム成形体70Aのサイズや比重にもよるが、好ましくは0.1〜10mmである。複数の開口35bは、全てが同一の口径であってもよいし、ダイ8から押出方向に遠ざかるに従って徐々に口径が大きくなるように設けられていてもよい。ダイ8から離れた位置の開口35bの口径をダイ8に近い位置の開口35bの口径よりも大きくすることで、グリーンハニカム成形体70Aの先端部に対して空気によって上方の力を十分に与えることが可能となり、重力によるグリーンハニカム成形体70Aのたわみをより一層十分に抑制できる。
【0041】
コンプレッサ37は、複数の開口35bに圧縮空気を供給するためのものである。なお、空気の噴射によってグリーンハニカム成形体70Aが乾燥するのを防止するため、湿潤空気を複数の開口35bから噴射してもよい。
【0042】
なお、支持機構30は、ワイヤWからグリーンハニカム成形体70Aに加えられる力の大きさに応じてガス噴射プレート35からのガス噴射量を調整するガス噴射量制御手段を更に備えることが好ましい。グリーンハニカム成形体70Aを切断している最中もガス噴射量を調整しながら、ガスの噴射を継続することにより、切断時にグリーンハニカム成形体70Aがたわむのを十分に防止できる。
【0043】
切断機構40は、保持部材31A,31Bで支持されているグリーンハニカム成形体70Aを切断し、所定の長さのグリーンハニカム成形体70を得るためのものである。切断機構40は、図6に示すとおり、カッターとしてのワイヤWを有し、ワイヤWを水平方向であり且つ押出方向に垂直の方向(X方向)に張り渡した状態に保持できるようになっている。
【0044】
切断機構40は、保持部材31A,31Bの間にワイヤWが降下してグリーンハニカム成形体70Aを切断できるようになっている。また、ワイヤWは、降下と同時にグリーンハニカム成形体70Aの押出速度と同調して押出方向(Y方向)に移動できるようになっている。なお、押出成形装置10側の保持部材31Bは、上述の可動プレート33上に位置し、その後方の保持部材31Aは後述のスライド面52の基端部52b(水平面)上に位置している(図7参照)。
【0045】
切断機構40は、逆U字状とされた枠板42を有する。枠板42は、水平方向に離間されてそれぞれ下方に延びる2つの先端部42a、42bを有する。先端部42aには送り側サーボモータ43aが設けられ、先端部42bには、受け側サーボモータ43bが設けられている。
【0046】
送り側サーボモータ43aの回転軸には送り側ボビン44aが設けられ、受け側サーボモータ43bの回転軸には、張力センサ45を介して受け側ボビン44bが設けられている。そして、送り側ボビン44aから受け側ボビン44bまでに亘って、ワイヤWが張り渡されている。ワイヤWの材料は特に限定されないが、たとえば、スチールワイヤ等が挙げられる。ワイヤWの径は、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは120〜500μmである。
【0047】
送り側サーボモータ43a、受け側サーボモータ43b、及び、張力センサ45は、張力コントローラ46に接続されている。張力コントローラ46は、張力センサ45から取得した張力に基づいて、ワイヤWの張力が所定の範囲内となるように、送り側ボビン44aや受け側ボビン44bの回転を制御しつつ、ワイヤWが所定の速度で送り側ボビン44aから受け側ボビン44bに向かってX方向に移動するように2つのモータを制御する。張力は特に限定されないが、たとえば、20N以上とすることが好ましく、40N以上とすることが好ましい。また、張力の上限はないが、100N以下とすることが好ましく、60N以下とすることがより好ましい。また、ワイヤWのX方向の移動速度も特に限定されないが、20〜200mm/sとすることができる。
【0048】
本実施形態では、枠板42、及び、送り側サーボモータ43a、受け側サーボモータ43b、送り側ボビン44a、受け側ボビン44bによって、ワイヤWが保持されている。また、本実施形態では、送り側ボビン44a、受け側ボビン44b、送り側サーボモータ43a及び受け側サーボモータ43bによって、ワイヤWがX方向(矢印A)に移動できるようになっている。更に、本実施形態では、張力センサ45、及び、張力コントローラ46によって、ワイヤWの張力を一定に維持できるようになっている。
【0049】
枠板42に設けられた支持部42cを鉛直方向(Z軸方向)に移動させることにより、ワイヤWを、ワイヤの伸びるA方向(X方向)に対して垂直なB方向(−Z方向)に移動させる。ワイヤWを鉛直方向に移動させる機構は特に限定されず、例えば、ラックピニオン機構等を使用できる。切断時の支持部42c、すなわち、ワイヤWの−Z軸方向の移動速度は特に限定されないが、たとえば、20〜200mm/sとすることができる。
【0050】
分離機構50は、切断されたグリーンハニカム成形体70を載せた保持部材(図2では保持部材31A)をスライドさせてダイ8から延びるグリーンハニカム成形体70Aからグリーンハニカム成形体70を引き離すためのものである。分離機構50は、図7に示すとおり、保持部材がスライド可能なスライド面52を有し、スライド面52はダイ8から遠ざかる方向に向けて低くなるように傾斜した傾斜部52aを有する。なお、スライド面52の基端部52b及び先端部52cは水平面となっている。また、スライド面52の両側には側壁52dがそれぞれ設けられており、保持部材の回転を防止する
【0051】
保持部材の底面とスライド面52の摩擦を小さくする観点から、スライド面52は複数の開口53を有し、これらの開口53から上方に向けてガスを噴射できる構成であることが好ましい。スライド面52の開口53から上方にガスを噴射することで、グリーンハニカム成形体70を載せた保持部材をわずかに浮上させた状態でスムーズにスライドさせることができる。このガスとしては、空気が挙げられ、コンプレッサ37又は別途設けたコンプレッサからの圧縮空気を利用すればよい。なお、保持部材の底面とスライド面52の摩擦を十分に小さくできる構成であれば、上記のガスを噴射する構成に限定されず、たとえば、複数の円柱状のローラを押出方向に対して垂直な方向に渡して設け、これらのローラが回転することで保持部材がスライドする構成であってもよい。
【0052】
保持部材の押出方向へのスライドを所望のタイミングで開始できるようにするため、圧縮ガスの噴射を利用することが好ましい。図7に示す分離機構50は、グリーンハニカム成形体70及び/又はこれを保持する保持部材31Aに向けてダイ8から遠ざかる方向にガスを噴射するガス噴射口55を有する。このガスとしては、空気又は湿潤空気が挙げられ、コンプレッサ37からの圧縮空気を利用してもよい。
【0053】
なお、保持部材のスライドを開始させる方法は、ガス噴射によるものに限定されず、たとえば、棒などで保持部材を後方に押すなどしてもよい。また、分離機構50が上記のような保持部材のスライドを開始させる手段を有する場合、スライド面52は必ずしも傾斜部52aを有するものでなくてもよく、全体が水平面であってもよい。
【0054】
<グリーン成形体の製造方法>
本実施形態に係るグリーン成形体の製造方法は、押出成形装置10の入口1aに原料を供給する工程と、押出成形装置10が有するダイ8から水平方向にグリーンハニカム成形体70Aを押し出す工程と、ダイ8から押し出されたグリーンハニカム成形体70Aに対してガス噴射プレート35の開口35bから空気(又は湿潤空気)を噴射する工程と、可動プレート33によって第1の保持部材31Aを上方に移動させてその凹部31aをグリーンハニカム成形体70Aの側面に当接させる工程と、ダイ8から継続してグリーンハニカム成形体70Aを押し出した後、可動プレート33によって第2の保持部材31Bを上方に移動させてその凹部31aをグリーンハニカム成形体70Aの側面に当接させる工程と、水平方向に互いに離隔した位置でグリーン成形体を支える保持部材31A,31Bの間の位置においてグリーンハニカム成形体70AをワイヤWで切断する工程と、保持部材31Aをスライドさせてグリーンハニカム成形体70Aからグリーンハニカム成形体70を引き離す工程とを備える。
【0055】
上記実施形態に係るグリーン成形体製造システム100によれば、支持装置30のガス噴射プレート35からグリーンハニカム成形体70Aに向けて上方に空気(又は湿潤空気)を噴射することができる。下方からグリーンハニカム成形体70Aに向けて空気を噴射することにより、グリーンハニカム成形体70Aの先端が保持部材の位置に至るまでの間において、グリーンハニカム成形体70Aが重力によって下方にたわむのを十分に防止できる。グリーン成形体製造システム100を用いた上記製造方法によれば、ダイ8から水平方向に押し出されたグリーンハニカム成形体70Aのたわみを十分に抑制でき、グリーンハニカム成形体70Aを鉛直方向であり且つ押出方向に垂直な方向にワイヤWで切断することで、両端面の平行度が十分に高い、グリーンハニカム成形体70を効率的に得ることができる。
【0056】
また、上記実施形態によれば、ワイヤWを降下させてグリーンハニカム成形体70Aを切断した後、グリーンハニカム成形体70を載せた保持部材をスライドさせることで、ワイヤWを上昇させる際にワイヤWがグリーンハニカム成形体70,70Aに接触するなどの不具合を十分に抑制でき、寸法精度が高いグリーンハニカム成形体70を連続的に製造できる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、複数の貫通孔70aを有するグリーンハニカム成形体70を製造する場合を例示したが、押出方向が横方向である場合に重力によって変形するおそれがあるものであれば、貫通孔を有しないグリーン成形体の製造に本発明を適用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態においては、押出方向が水平方向である場合について例示したが、必ずしも水平方向である必要はなく、押出方向は水平方向から多少傾斜(±5°程度)していてもよい。
【0059】
保持部材31A,31Bを上方に移動させるための駆動手段、及び、ガス噴射プレート35の開口35bに噴射ガスを供給するための気体供給手段の構成は、上記実施形態に限定されず、種々の形態をとることができる。なお、噴射ガスも空気又は湿潤空気に限定されるものではない。
【0060】
また、グリーンハニカム成形体の貫通孔70aの配置も特に限定されず、正方形配置に替えて、たとえば、千鳥配置でもよい。貫通孔70aの断面形状も、正方形には限定されず、矩形、六角形、三角形等の多角形(正六角形や、正三角形等の正多角形を含む)や、円形、楕円形等どのような形態でもかまわない。グリーンハニカム成形体70の外形形状も、円柱体に限定されず、正方形や矩形等の角柱等でもかまわない。
【符号の説明】
【0061】
8…ダイ、10…押出成形装置、30…支持機構、31…保持部材、31a…凹部、33…可動プレート(駆動手段)、35a…ガス噴射面、35b…開口、37…コンプレッサ(気体供給手段)、40…切断機構、50…分離機構、52…スライド面、52a…傾斜部、53…開口、55…ガス噴射口、60…切断装置、70…切断されたグリーンハニカム成形体、70A…グリーンハニカム成形体、100…グリーン成形体製造システム、W…ワイヤ(カッター)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形装置が有するダイから押し出されて横方向に延びるグリーン成形体を切断する切断装置であって、
前記グリーン成形体の側面の形状に応じた凹部を有する保持部材と、
前記保持部材を上方に移動させて前記グリーン成形体の側面に前記凹部を当接させる駆動手段と、
前記押出成形装置の後段に当該切断装置を配置したとき、前記ダイと前記駆動手段の間に設けられ、上方に向けてガスを噴射するための複数の開口を有するガス噴射面と、
前記複数の開口に気体を供給する気体供給手段と、
前記保持部材の近傍であって前記ダイ側の位置において前記グリーン成形体を切断するカッターと、
切断されたグリーン成形体を載せた前記保持部材をスライドさせて前記ダイから延びるグリーン成形体から引き離すスライド面を有する分離機構と、
を備える切断装置。
【請求項2】
前記スライド面は、前記ダイから遠ざかる方向に向けて低くなるように傾斜した部分を有する、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記スライド面は、上方に向けてガスを噴射するための複数の開口を有する、請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記分離機構は、切断されたグリーン成形体及び/又はこれを保持する保持部材に向けて前記ダイから遠ざかる方向にガスを噴射するガス噴射口を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の切断装置。
【請求項5】
横方向にグリーン成形体を押し出すダイを有する押出成形装置と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の切断装置と、
を備えるグリーン成形体製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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