説明

グルタルアルデヒドとジメトキサン(2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタート)とを含む相乗的抗微生物組成物

2種類の成分を有する相乗的抗微生物組成物。第1の成分はグルタルアルデヒドである。第2の成分は2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺生物剤の組み合わせに関し、この組み合わせは個々の抗微生物化合物について観察されるであろうよりも高い活性を有する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の抗微生物化合物の組み合わせの使用は潜在的な市場を広げることができ、使用濃度およびコストを低減させることができ、かつ廃棄物を低減させることができる。ある場合には、市販の抗微生物化合物は、ある種の微生物に対する弱い活性、比較的ゆっくりとした抗微生物作用、または高温および高pHのような特定の条件下での不安定性のせいで、高い使用濃度でさえ微生物の効果的な制御を提供することができない。特定の最終使用環境におけるさらに低い使用割合での同じ水準の微生物制御を提供するために、または微生物の全体的な制御を提供するために、異なる抗微生物化合物の組み合わせが場合によっては使用される。例えば、米国特許第3,469,002号は6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサンとパラホルムアルデヒドとの組み合わせを開示するが、この文献は本願で特許請求される組み合わせのいずれも示唆していない。さらに、微生物の効果的な制御を提供するために、向上した活性を有する抗微生物化合物のさらなる組み合わせについての必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,469,002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、抗微生物化合物のそのようなさらなる組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は(a)グルタルアルデヒドと、(b)2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタート(DXN)とを含み、グルタルアルデヒド:2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートの重量比が9:1〜1:15である、相乗的抗微生物組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは以下の用語は指定された定義を有する。用語「抗微生物化合物」とは、微生物の成長もしくは増殖を阻止することができ、および/または微生物を殺すことができる化合物をいい;抗微生物化合物には、適用される用量レベル、システム条件および望まれる微生物制御の水準に応じて、殺バクテリア剤、静バクテリア剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺藻剤および静藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビ)、バクテリア並びに藻類が挙げられる。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、およびパーセンテージに関する言及は重量基準(重量%)である。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは組成物中の活性成分の全重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定化剤もしくは存在しうる他の物質の量を除いた抗微生物化合物自体に基づく。2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタート(DXN)は6−アセトキシ−2,4−ジメチル−m−ジオキサンの名称を用いて先行文献中で報告されているのと同じ化合物である。
【0007】
本発明のある実施形態においては、グルタルアルデヒド:2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートの重量比は9:1〜1:12、あるいは9:1〜1:10、あるいは9:1〜1:9、あるいは3:1〜1:12、あるいは3:1〜1:10、あるいは3:1〜1:9、あるいは1:1〜1:10、あるいは1:1〜1:9、あるいは1:2〜1:10、あるいは1:2〜1:9である。本発明のある実施形態においては、この組成物は高温および高スルフィド濃度で、すなわち、典型的には油井およびガス井において存在する条件である少なくとも50℃および2ppmスルフィドで、媒体中での微生物の成長を妨げるために使用される。本発明のある実施形態においては、高温および高スルフィド媒体は少なくとも60℃の温度および少なくとも4ppmのスルフィド濃度を有するものである。ある実施形態においては、この温度は少なくとも65℃、あるいは少なくとも70℃、あるいは少なくとも75℃、あるいは少なくとも80℃である。ある実施形態においては、この媒体は少なくとも5ppmのスルフィド、あるいは少なくとも6ppmのスルフィド、あるいは少なくとも7ppmのスルフィド、あるいは少なくとも8ppmのスルフィド、あるいは少なくとも9ppmのスルフィド、あるいは少なくとも10ppmのスルフィドを含む。本発明のある実施形態においては、この高温および高スルフィド環境は嫌気的である。本発明のある実施形態においては、抗微生物組成物が添加される媒体は硫酸還元バクテリアを含む。本発明のある実施形態においては、高温および高スルフィド環境は硫酸還元バクテリアを含む。本発明のある実施形態においては、抗微生物組成物が添加される媒体は水性媒体であり、すなわち、水を少なくとも60%、あるいは水を少なくとも80%含むものである。本発明のある実施形態においては、水性媒体は高温および高スルフィド媒体である。
【0008】
本発明のある実施形態においては、本発明の抗微生物組み合わせは油田およびガス田注入、生産流体、破砕流体および他の機能性流体、油井およびガス井、油およびガス操作、分離、貯蔵並びに輸送システム、油およびガスパイプライン、油およびガス容器、並びに燃料において有用である。この組み合わせは、油およびガス井に添加されるもしくは油およびガス井によって生産される水性流体において特に有用である。この組成物は他の産業用水および水含有/汚染マトリックス、例えば、冷却水、エアウォッシャー、熱交換器、ボイラー水、パルプおよびペーパーミル水、他の産業プロセス水、バラスト水、廃水、金属加工用流体、ラテックス、塗料、コーティング、接着剤、インク、テープジョイントコンパウンド、顔料、水系スラリー、パーソナルケア用品および家庭用品、例えば、洗剤、ろ過システム(逆浸透システムおよび超濾過システムなど)、便器、布、皮革および皮革製造システム、またはこれらと共に使用されるシステムにおいて微生物を制御するのにも有用である。
【0009】
典型的には、微生物の成長を制御するための本発明の殺生物剤の組み合わせの量は10ppm〜5,000ppm活性成分である。本発明のある実施形態においては、組成物の活性成分は少なくとも20ppm、あるいは少なくとも50ppm、あるいは少なくとも100ppm、あるいは少なくとも150ppm、あるいは少なくとも200ppmの量で存在する。ある実施形態においては、組成物の活性成分は2,000ppm以下、あるいは1,000ppm以下、あるいは500ppm以下、あるいは400ppm以下、あるいは300ppm以下、あるいは250ppm以下、あるいは200ppm以下、あるいは100ppm以下、あるいは50ppm以下の量で存在する。上で言及された濃度は殺生物剤の組み合わせを含む液体組成物中のものである。高スルフィドおよび高温環境における殺生物剤濃度は典型的には他の環境におけるよりも高いであろう。本発明のある実施形態においては、油井の穴内の活性成分濃度は30〜500ppm、あるいは50〜250ppmである。本発明のある実施形態においては、油井でのトップサイド(top side)処理のための活性成分濃度は10〜300ppm、あるいは30〜100ppmである
【0010】
本発明は、特許請求される殺生物剤の組み合わせを材料に組み込むことによって、上記使用領域において、特に油もしくは天然ガス生産操作において、微生物の成長を妨げるための方法も包含する。
【実施例】
【0011】
実施例1.硫酸還元バクテリア(SRB)に対するグルタルアルデヒド(glut)と、DXNとの相乗効果
嫌気チャンバー(バクトロン(BACTRON)III)内で、脱気滅菌塩溶液(1Lの水中に3.1183gのNaCl、1.3082mgのNaHCO、47.70mgのKCl、72.00mgのCaCl、54.49mgのMgSO、172.28mgのNaSO、43.92mgのNaCO)が、油田から単離された嫌気性SRB集団で、10〜10CFU/mLの最終バクテリア濃度で汚染された。次いで、この汚染水のアリコートがグルタルアルデヒド、DXN、またはグルタルアルデヒド/DXN組み合わせで、様々な活性物濃度レベルで処理された。この混合物が40℃で24時間インキュベートされた後で、このアリコートにおいてバクテリアを完全に殺すための最小の試験殺生物剤濃度(MBC)によって、殺生物有効性が決定された。表1は各殺生物剤およびそのブレンドの有効性、並びに各組み合わせの相乗指数をまとめる。
【0012】
【表1】

*1相乗指数=Ca/CA+Cb/CB
Ca=殺生物剤Bとの組み合わせにおいて使用される場合に、バクテリアを完全に殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Aの濃度
CA=単独で使用される場合に、バクテリアを完全に殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Aの濃度
Cb=殺生物剤Aとの組み合わせにおいて使用される場合に、バクテリアを完全に殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Bの濃度
CB=単独で使用される場合に、バクテリアを完全に殺すのを達成するのに必要な殺生物剤Bの濃度
*2P値<0.05は、SI値と1.00との間に有意差が存在することを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)グルタルアルデヒドと、(b)2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートとを含み、グルタルアルデヒド:2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートの重量比が9:1〜1:15である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項2】
前記重量比が9:1〜1:10である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
媒体に、(a)グルタルアルデヒドと、(b)2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートとを、グルタルアルデヒド:2,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イルアセタートの重量比が9:1〜1:15で添加することを含む、少なくとも60℃の温度および少なくとも4ppmのスルフィド濃度で媒体中の微生物の成長を阻止する方法。
【請求項4】
前記温度が少なくとも70℃であり、かつスルフィド濃度が少なくとも7ppmである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重量比が9:1〜1:10である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
媒体が嫌気的であり、かつ硫酸還元バクテリアを含む請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2013−504625(P2013−504625A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529858(P2012−529858)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/048850
【国際公開番号】WO2011/041098
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】