説明

グループBストレプトコッカス・タイプIIおよびタイプV多糖−蛋白質接合ワクチン

【課題】グループBストレプトコッカス・タイプII(GBS II)及び/又はグループBストレプトコッカス・タイプV(GBS V)による感染に対して、人間を含む哺乳類を免疫化させるワクチン及び方法を提供すること。
【解決手段】グループBストレプトコッカス(GBS)タイプVバクテリアに由来する莢膜多糖と、蛋白質成分を含み、該多糖成分のシアル酸残基で終わる2以上の側鎖が、第二アミン結合で蛋白質にそれぞれリンクされており、該多糖の分子量が5000ダルトン以上であることを特徴とする抗原接合分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グループBストレプトコッカス・タイプIIおよびタイプV多糖−蛋白質接合ワクチン発明は、1992年9月24日に出願された米国特許出願第07/949,970号の一部継続出願である。
【0002】
発明の権利に関する説明
発明は、国立衛生研究所の支給するNIH交付金A123339、A130628およびA128040により、政府の援助で行われた。政府は、本発明に若干の権利を有する。
【0003】
発明の分野
発明は、蛋白質に共役結合したグループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVの莢膜多糖(capsular polysaccharide)から成る抗原接合分子(antigenic conjugate molecule)に関する。また本発明は、グループBストレプトコッカス・タイプII(GBSII)および/またはタイプV(GBSV)による感染に対してヒトを包含する哺乳動物を免疫するワクチンおよび方法に関する。本発明の接合分子から成る多価ワクチンおよび他の病原菌に対する抗原も請求される。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
グループBストレプトコッカス類(GBS)による感染は、発展途上国での新生児における敗血症および髄膜炎の最も普通の共通の原因である(3、31)。米国の二三のセンターからの最近の報告は、多分早期の診断および集中医療の結果として、1970年代からの一連の報告におけるよりも低い死亡率(9ないし13%)を示している(1、10)。それにもかかわらず、致死感染がやはり起こっており、同じように見過ごせないのは、GBS髄膜炎の生存者の50%までが難聴および軽度の学習能力欠失から強い運動、知覚および認識の損傷に亘る慢性の神経学的損傷を持っている(3)。改良された診断または治療でなく予防が、GBSに関連する罹患率および死亡率を減らすのに一番重要な効果を持つようである。
【0005】
GBSの莢膜多糖特異性の抗体は実験動物(23、24)およびヒト幼児(4、5)の両方を保護するようであるので、若干の多糖を精製し、実験的ワクチンとして健常成人で試験した(6)。安全で有効なGBSワクチンが入手可能であれば、妊娠前または妊娠中の女性に投与して、子宮内の胎児に移行し、新生児の感染を防御する抗体を誘発することができる。ボランティアで試験した三種のGBS多糖(タイプIa、II、III)のうち、タイプIIは最高の免疫原性を有し、事前非免疫の受容体の88%にタイプII特異性の抗体応答を誘発する(6)。種々のGBSの血清型がGBS感染の患者のパーセントに重大な寄与をすることが従来認められてきたが、タイプVはGBS感染の高いパーセントの原因となるとは考えられて来なかった。新生児では、タイプIIGBS感染からの保護に必要な特定の抗体の水準は正確には明示されていないが、2または3μg/mlと評価されてきた(6)。保護に必要な最小量をごく僅かに超える抗体応答を達成するワクチン受容体では、母体のIgGの胎児または後期感染開始の幼児への不完全な移行のため、胎盤を通って移行する母体の抗体の量は、早産児を保護するのには不充分である。新生児内の母体の免疫グロブリンG(IgG)抗体の半減期は約25日であるからである(13)。予防接種への特定の抗体の応答の規模が大きい場合、この二群の患者内の幼児の多くは保護される。母体のIgGの胎児への移行は、第三の3ケ月期の間を通じて増加し、そのため母体の抗体水準が高いほど、保護は早くなり、すなわち、早熟度の高い幼児を保護する(16)。同様に、母体の水準が高いと、幼児内での母体の抗体の持続が長くなり、そのためさらに後期開始の疾患を保護する。
【0006】
種々の細菌性多糖抗体の免疫原性が、多糖または誘導体オリゴ糖への適当な担体蛋白質の接続によって増加されてきた(2、14,17−19、22、27、29、30、34)。多糖−蛋白質接合ワクチンに望まれる性質には、多糖の高い免疫原性、ブースター投与量への高いハプテン特異性抗体応答、およびIgGクラスの抗体の優勢が含まれる。最近我々は、指定の蛋白質カップリングの部位として側鎖シアル酸部分を使用することによって、GBSIII−破傷風トキソイド(TT)ワクチンを開発することに成功した(33)。III−TTワクチンは、GBSタイプIII−特異性のオプソニン活性の抗体を誘発し、非共役のタイプIII多糖はウサギにおいて非免疫原性であった(33)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、タイプIIまたはタイプVの多糖成分のシアル酸残基中で終わる2以上の側鎖が第二アミン結合で蛋白質にそれぞれリンクされていることを特徴とする、グループBストレプトコッカス・タイプIIから誘導された莢膜多糖と蛋白質成分を含む抗原接合分子、またはグループBストレプトコッカス・タイプVから誘導された莢膜多糖と蛋白質成分から成る抗原接合分子である。
【0008】
更に、グループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVの莢膜多糖と蛋白質との接合分子を製造するための方法において、
(a)グループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVの莢膜多糖を、多糖の骨格に結合した二つ以上の末端シアル酸残基中にアルデヒド基を導入するのに充分な過ヨウ素酸酸化に供し;
(b)酸化されたグループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVの莢膜多糖を、還元的アミノ化によって蛋白質に結合させて、莢膜多糖と蛋白質の間に第二アミン結合を形成させる
ことから成る方法も請求されている。
【0009】
また、上記の方法で製造された接合分子も請求されている。
【0010】
本発明は、さらに上記の接合分子のそれぞれから成るワクチンも請求する。さらに本発明は、本発明の接合分子およびグループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプV以外の病原性物質に対する抗体の製造を誘発しうる他の免疫原性分子の少なくとも一種を含む多価ワクチンを請求する。特に、GBSタイプIIおよび/またはGBSタイプVの接合分子を含むことに加えて、本発明による多価ワクチンはさらにグループBストレプトコッカス・タイプIa、Ib、III、IVおよびヘモフィラス・インフルエンゼ・タイプbおよびエシェリキア・コリ・タイプK1から成る群から選ばれた病原体に抗体の産生を誘発できる他の免疫原性分子を含む。
【0011】
本発明の別の実施態様では、誕生時の新生児における感染症に対する保護を生じさせるのに充分な量、ワクチンの投与の前または後に身籠もった胎児に推移しうる抗体を産生するために、本発明の接合分子から成るワクチンを免疫原性量、女性に投薬することを特徴とする、新生児を免疫性にする方法が請求される。
【0012】
本発明の接合分子から成るワクチンを免疫原性量、成人に投与することを特徴とする、成人を免疫性にする方法も請求する。さらに、グループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVに感染される危険性のある人に、本発明の接合分子から成るワクチンを免疫原性量で投薬することを特徴とする、成人を免疫性にする方法も請求する。
【0013】
本発明の別の実施態様においては、上記のグループに積極的に投与できる血清または血漿を供給できるボランティアのワクチン受容体に、本発明の接合分子から成るワクチンを免疫原性量、投与する。本発明はまた、グループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプV感染される危険性のある新生児、小児または成人を含む人を免疫する方法も提供する。危険性のある人には、癌または糖尿病を含む種々の原因で免疫系が抑制されている人を含んでもよく、癌または糖尿病に限定されない。
【0014】
本発明の別の実施態様は、本発明の接合分子から成るワクチンを免疫原性量、乳牛に投薬することから成る、乳牛類のウシ乳腺炎に対する免疫法である。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
項目1.グループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVバクテリアから誘導される群から選ばれる莢膜多糖と、蛋白質成分を含み、この多糖成分のシアル酸残基で終わる2以上の側鎖が、第二アミン結合で蛋白質にそれぞれリンクされており、上記多糖の分子量が5000ダルトン以上であることを特徴とする抗原接合分子。
項目2.各多糖の末端シアル酸残基の5〜50%が、蛋白質にリンクされるのに有用である項目1の接合分子。
項目3.各多糖の末端シアル酸残基の5〜25%が、蛋白質にリンクされるのに有用である項目2の接合分子。
項目4.各多糖の末端シアル酸残基の5〜10%が、蛋白質にリンクされるのに有用である項目3の接合分子。
項目5.上記多糖がGBSタイプIIであり、各多糖の末端シアル酸残基の7%が、蛋白質にリンクされるのに有用である項目4の接合分子。
項目6.上記抗原接合分子が0.2ミクロンのフィルターを通して濾過減菌されうる項目1の接合分子。
項目7.上記多糖成分が約5,000〜1,000,000ダルトンの分子量を有する項目1の接合分子。
項目8.上記多糖成分が約50,000〜500,000ダルトンの分子量を有する項目7の接合分子。
項目9.上記多糖がGBSタイプVであり、各多糖の末端シアル酸残基の約25%が、蛋白質にリンクされるのに有用である項目1の接合分子。
項目10.上記多糖成分が約100,000〜300,000ダルトンの分子量を有する項目8の接合分子。
項目11.上記多糖成分が約200,000ダルトンの分子量を有する項目9の接合分子。
項目12.上記蛋白質が破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びCRM(交差反応物質)197からなる群から選ばれる項目1の接合分子。
項目13.グループBストレプトコッカス・タイプIIまたはタイプVバクテリアの莢膜多糖と蛋白質の接合分子を製造する方法であって、(a)グループBのストレプトコッカス・タイプIIの莢膜多糖を、該多糖の骨格にリンクした2以上の末端シアル酸残基にアルデヒド基を導入するに充分なだけ、過ヨウ素酸化し、(b)酸化されたグループBのストレプトコッカス・タイプIIの莢膜多糖を、還元的アミノ化によって、蛋白質と連結させ、莢膜多糖と蛋白質の間に第二アミン結合を生じさせることを特徴とする方法。
項目14.各多糖のシアル酸残基の約5〜50%が酸化されて、蛋白質に連結可能なアルデヒド群を形成する項目13の方法。
項目15.各多糖のシアル酸残基の約5〜25%が酸化されて、蛋白質に連結可能なアルデヒド群を形成する項目14の方法。
項目16.各多糖のシアル酸残基の約5〜10%が酸化されて、蛋白質に連結可能なアルデヒド群を形成する項目15の方法。
項目17.上記多糖がGBSタイプIIであり、各多糖のシアル酸残基の7%が酸化されて、蛋白質に連結可能なアルデヒド群を形成する項目16の方法。
項目18.各多糖のシアル酸残基の約5〜50%が蛋白質に共有結合的にリンクされる項目13の方法。
項目19.各多糖のシアル酸残基の約5〜25%が蛋白質に共有結合的にリンクされる項目18の方法。
項目20.各多糖のシアル酸残基の約5〜10%が蛋白質に共役結合的にリンクされる項目19の方法。
項目21.上記多糖がGBSタイプIIであり、各多糖のシアル酸残基の約5%が共有結合的に蛋白質にリンクされる項目19の方法。
項目22.上記多糖がGBSタイプVであり、各多糖の末端シアル酸残基の約25%が蛋白質にリンクされる項目13の方法。
項目23.項目13の方法により製造される接合分子。
項目24.項目1の接合分子を含むワクチン。
項目25.項目1の接合分子と、グループBのストレプトコッカス・タイプII以外の病原性物質に対する抗体の産出を引き出しうる他の免疫原性分子の少なくとも一種を含む多価ワクチン。
項目26.上記他の免疫原性分子が、グループBのストレプトコッカス・タイプIa、Ib、II、III、IVおよびV、ヘモフィラス・インフルエンザ・タイプb及びE.コリ・タイプK1からなる群から選ばれる病原体に対する抗体の産出を引き出しうるものである項目25の多価ワクチン。
項目27.上記他の免疫原性分子が、グループBのストレプトコッカス・タイプIa、Ib、II、III、ヘモフィラス・インフルエンザ・タイプb及びE.コリ・タイプK1からなる群から選ばれる病原体に対する抗体の産出を引き出しうるものである項目26の多価ワクチン。
項目28.上記他の免疫原性分子が、グループBのストレプトコッカス・タイプIa、Ib、II、III及びE.コリ・タイプK1からなる群から選ばれる病原体に対する抗体の産出を引き出しうるものである項目27の多価ワクチン。
項目29.上記他の免疫原性分子が、グループBのストレプトコッカス・タイプIa、Ib、II、IIIからなる群から選ばれる病原体に対する抗体の産出を引き出しうるものである項目28の多価ワクチン。
項目30.項目1の接合分子を、免疫原性量、女性に投薬し、十分量のワクチンの投薬の前又は後に身籠った胎児に移行しうる抗体を産出させ、誕生時の新生児における感染症に対する保護を生じさせることを特徴とする新生児を免疫性にする方法。
項目31.上記ワクチンが、妊娠前に投薬される項目30の方法。
項目32.上記ワクチンが約10歳から50歳の間の女性に投薬される項目30の方法。
項目33.上記ワクチンが、妊娠期間中に投薬される項目30の方法。
項目34.項目1の接合分子を含むワクチンを人に免疫原性量で投薬する人を免疫性にする方法。
項目35.項目1の接合分子を含むワクチンを、グループBのストレプトコッカス・タイプII又はタイプVにより感染される危険性のある人に免疫原性量で投薬する成人を免疫性にする方法。
項目36.上記ワクチンを免疫系が抑制される人に投薬する項目35の方法。
項目37.免疫抑制が癌又は糖尿病からなる群から選ばれる病気によるものである項目36の方法。
項目38.上記ワクチンが、薬学的に許容される担体で、投薬される項目37の方法。
項目39.項目1の接合分子を含むワクチンを、免疫原性量、乳牛に投薬することを特徴とする牛類の乳腺炎に対して乳牛類を免疫性にする方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物を、妊娠前または妊娠中の女性に投与することによって、子宮内の胎児に移行し、新生児のグループBストレプトコッカス類(GBS)による感染を防御する抗体を誘発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】タイプIIGBS莢膜多糖のヘプタサッカライド繰り返し単位の構造(920)。
【図2】GBSタイプII多糖競合ELISA。タイプII多糖を塗布したプレートにII−TTワクチン抗体結合の抑制剤としてGBSタイプIa(白丸)、タイプII(黒丸)、およびタイプIII(黒三角)の多糖が使用された。結果は、抑制剤なしの対照ウエルのそれに対する抑制の百分率として表している。
【図3】GBSタイプII多糖競合ELISA。天然(黒丸)および脱シアリル化またはコア(□)タイプII多糖をII−TTワクチンで誘発した抗体の抑制剤として使用した。データ点は、三回の測定の平均(標準偏差つき)である。結果は、抑制剤なしの対照ウエルのそれに対する抑制の百分率として表している。
【図4】タイプVGBS莢膜多糖の繰り返し単位の構造。
【図5】GBSタイプV多糖競合ELISA。GBSタイプIa(−黒三角−)、タイプIB(−黒三角−)、タイプII(− −)、タイプIII(−0−)、タイプV(−黒四角−)、およびタイプVI(−白四角−)多糖を、V−TTワクチンで誘発した抗体の抑制剤として使用した。データ点は、二回の測定の平均である。結果は、抑制剤なしの対照ウエルのそれに対する抑制の百分率として表している。
【図6】GBSタイプV−TT接合ワクチンに起こったウサギ抗血清によってオプソニン化されたGBSタイプV株CJB111のヒト末梢血リンパ球によるインビトロのオプソニン食作用的死滅。C’は補体である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施態様の説明
本発明は、莢膜多糖成分と蛋白質成分とから成る抗原接合分子に関する。
【0018】
細菌株.GBSタイプII菌株18RS21およびタイプIa菌株090は、もともとロックフェラー大学の故レベッカ・ランスフィールドから入手したもので、冷凍培養物として−80℃で保存した。菌株18RS21は、インビトロおよびインビボの検定に使用し、接合ワクチンに使用したタイプII莢膜多糖の原料であった。二種のGBSタイプIIの臨床単離物(菌株S16およびS20)およびタイプIII菌株781は、チャンニング・ラボラトリーの培養物コレクションから入手した。
【0019】
以前はヒトのGBS感染の数に大きく寄与するとは考えられていなかったが、最近の証拠はタイプVの血清型がGBS感染の約15%に寄与することを示している。GBS−タイプV接合ワクチンを調製するために、GBSタイプV菌株1169−NT1はチェコ共和国、プラハ、衛生疫学研究所のJ.ジェリンコバ博士から入手し、冷凍培養物として−80℃で保存した。菌株1169−NT1は、インビトロおよびインビボの検定に使用し、接合ワクチンに使用したタイプV莢膜多糖の原料であった。GBSタイプV菌株CJB111は、もともとベイラー大学のキャロル・ベイカー博士から入手した。
【0020】
GBSタイプII多糖またはタイプV多糖のTTへの接合.タイプIII多糖の精製に以前記載されている方法によって、タイプII莢膜多糖を菌株18RS21から精製した(33)。タイプII多糖の単量体TTへの接合は、TTのGBSタイプIII多糖への接合のために以前詳細に記載された方法を使って実施した(33)。要するに、天然のタイプII多糖はセファローズCL−6Bカラム(1.6×85cm;ファーマシア・ファインケミカルズ)上でサイズ画分した。主ピークの中央で溶出する物質をプールし、水に対して透析し、凍結乾燥して、相対分子量200,000の物質を得た。この物質の500MHzでの1H−核磁気共鳴分光分析により、天然タイプII多糖構造(20)およびグループB抗原(26)の不存在が確認された。本発明の接合分子に使用するのに適した多糖は、分子量が広範囲に変化してもよい。多糖成分の好ましい分子量は、約5,000および1,000,000ダルトンの間である。もっと好ましい範囲は、100,000と300,000の間である。100,000から300,000の範囲の中で、約200,000ダルトンの分子量を持つ多糖が好ましい。
【0021】
サイズ画分されたタイプII多糖は、メタ過ヨウ素酸ナトリウムによる穏和な酸化に供された(18)。この過程で、多糖上のシアル酸残基の一部がシアル酸の炭素8個の同族体である、5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−ガラクトシルオクツロソン酸に変化した(33)。酸化されたシアル酸残基の百分率は、前述のようなシアル酸残基およびその酸化誘導体のガスクロマトグラフィー−質量分光分析によって評価された(33)。好ましくは、各GBSタイプII多糖のシアル酸残基の約5ないし50%が、変性されて蛋白質に結合可能になる。最も好ましくは、GBSタイプII多糖のシアル酸残基の約5ないし25%が、変性されて蛋白質に結合可能になる。
【0022】
GBSタイプII多糖の約5ないし10%の変性が最も好ましい。末端シアル酸残基の約5ないし80%の変性を達成するために、GBSタイプVを酸化して、反応性のアルデヒドを生成するのが好ましい。末端シアル酸残基の約10ないし50%の変性が最も好ましい。
【0023】
本発明の接合分子の蛋白質成分は、どんな生物学的に許容される蛋白質でもよい。好ましい蛋白質としては、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、およびCRN197のような交差反応的物質がある。
【0024】
酸化されたタイプII多糖は、前述のような還元的アミノ化によって、単量体の破傷風トキソイド(「TT」)(カナダ、モントリオール、アーノルド・フラッピピャー研究所)に還元的アミノ化で結合させた(33)。TTはやはり前述されたゲル濾過クロマトグラフィーによってその単量体に精製された(33)。要するに、過ヨウ素酸塩で処理されたタイプII多糖10mgおよび精製TT10mgを0.6mlの0.1M重炭酸ナトリウム(pH8.1)に溶解した。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(20mg)をその混合物に加えて37℃で5日間培養した。接合の進行は、スーパーローズ6(ファーマシア)ゲル濾過カラム上での少量の反応生成物の高速蛋白質液体クロマトグラフィー(FPLC)によって監視した。反応は、(高分子量の接合体を示す)カラムの空隙容積で溶出するピークの高さが一定になった時に終了した。接合体は、前述のようにバイオゲルA、0.5M(カリフォルニア州、リッチモンド、バイオラド・ラボラトリーズ)のカラム上でのクロマトグラフィーで精製した(33)。ワクチンの蛋白質含有量は、ウシ血清アルブミンを標準として使用して、ロウリらの方法(25)で評価した。炭水化物の含有量は、精製したタイプII多糖を標準として使用して、デュボアらの方法(11)で分析した。
【0025】
タイプV莢膜多糖は、前述のタイプIII多糖の精製法で、GBSタイプV1169−NT1細胞から精製した(33)。タイプV多糖の単量体TTへの接合は、TTのGBSタイプIII多糖への接合について前述した方法を使って実施した(33)。
【0026】
天然のタイプV多糖は、200,000の相対分子量を有した。500MHzにおけるH−核磁気共鳴分光分析によるこの物質の分析で、天然のタイプVの構造(2)およびグループB抗原の不存在が確認された(26)。
【0027】
蛋白質に結合させるために、タイプV多糖の末端シアル酸残基に反応性のアルデヒド基を導入するために、タイプV多糖をメタ過ヨウ素酸ナトリウムによる穏和な酸化に供した(8)。この過程の結果、多糖上のシアル酸残基の一部が、シアル酸の炭素8個の同族体である、5−アセトイミド−3,5−ジデオキ−D−ガラクトシルオクツロソン酸に変換された(33)。酸化されたシアル酸残基の百分率は、シアル酸残基およびその酸化誘導体のガスクロマトグラフィー−質量分析によって評価した。
【0028】
酸化されたタイプV多糖は、前述の還元的アミノ化によって単量体TT(カナダ、モントリオール、アーマンド・フラッピアー研究所)に結合させた(33)。TTは、やはり前述したゲル濾過クロマトグラフィーでそのモノマーに精製した(33)。要するに、8.6mgの過沃素酸処理したタイプV多糖および8.7mgの精製したTTを、0.5mlの0.1M重炭酸ナトリウム(pH8.2)に溶解した。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(31.5mg)をこの混合物に加えて37℃で10日培養した。接合の進行は、スーパーローズ6(ファーマシア)ゲル濾過カラム上で分析した少量の反応混合物の高速蛋白質液体クロマトグラフィー(FPLC)で監視した。反応は、(高分子量の接合体を示す)カラムの空隙容積で溶出するピークの高さが一定になった時に終了した。接合物は、流動緩衝液として0.01Mの燐酸塩、0.15MのNaClプラス0.01%のチメロサールを使用して、セファクリルS−300HR(ファーマシア)の2.6×91cmのカラム上でのクロマトグラフィーで精製した。ワクチンの蛋白質含有量は、ウシ血清アルブミンを標準として、ロウリーらの方法(25)で評価した。炭水化物含有量は、ガラクトースを標準として、デュボアらの方法(11)で評価した。
【0029】
II−TTワクチンおよびV−TTワクチンによるウサギのワクチン接種.体重が約3kgである3羽の雌のニュージーランド白ウサギ(マサチューセッツ州、アムハースト、ミルブルック農場)の群を、それぞれ合計容積2mlに完全フロイントアジュバントで乳化した、未結合の天然タイプII多糖またはII−TTワクチンの50μgで、背部の4箇所に皮下接種した。これらの動物は、20日目および41日目に不完全フロイントアジュバントで調製したワクチンのブースター注射(50μg)を受けた。0、20、34、41、55および70日目に各動物から血清を得て、無菌濾過し、−80℃で貯蔵した。
【0030】
約3kgの1羽の雌のニュージーランド白ウサギ(マサチューセッツ州、アムハースト、ミルブルック農場)を、合計容積2mlにミョウバンと混合したGBSタイプV−TT接合ワクチン50μgで、背部の4箇所に皮下接種した。この動物は、22日目および42日目にミョウバンで調製したワクチンのブースター注射(50μg)を受けた。0、35、56および91日目にその動物から血清を得て、無菌濾過し、−80℃で貯蔵した。
【0031】
ELISA.GBSタイプII−特異性のウサギ抗体を、アルカリホスファターゼ(カリフォルニア州、バーリンガム、タゴ・インコーポレーテッド)に接合したヤギ抗−ウサギIgGで、1/3,000の希釈で、酵素結合抗体免疫アッセイ(ELISA)によって定量した。マイクロタイタープレート(イムロン2;バージニア州、シャンティイー、ダイナテック・ラボラトリーズ)に、前記のようにウエルあたり100ngのポリ−L−リシンに結合した精製タイプII多糖を塗布した(15、33)。抗体価を逆数希釈として記録し、1/800の希釈時に対照血清(全BGS18RS21細胞に生じたウサギ抗血清)を含むウエルが0.5のA405に達したとき、≧0.3のA405を示した。接合ワクチンの蛋白質部分に特異的な抗体の量は、単量体TT(ウエルあたり100ng)を塗布したプレートを使用してELISAで評価した。TT−特異性のIgG価(タイター)を逆数希釈として記録し、基体であるp−ニトロフェニルホスフェート(シグマ104ホスファターゼ基体錠;シグマ・ケミカル・カンパニー)の添加後、≧0.3のA405を示した。
【0032】
GBSタイプV−特異性のウサギ抗体も、アルカリホスファターゼ(カリフォルニア州、バーリンガム、タゴ・インコーポレーテッド)に接合したヤギ抗−ウサギIgGで、1/3,000の希釈で、ELISAによって定量した。マイクロタイタープレート(イムロン2;バージニア州、シャンティイー、ダイナテック・ラボラトリーズ)に、前記のようにウエルあたり100ngのポリ−L−リシンに結合した精製タイプV多糖を塗布した(15)。抗体価を逆数希釈として記録し、1/3000の希釈時に対照血清(全タイプV菌株1169−NT1)を含むウエルが0.3のA405に達したとき、≧0.3のA405を示した。
【0033】
免疫ウサギ血清からのIgGおよびIgMの分離.70日目に得られた、別記(28)のようにII−TTに育成した免疫ウサギ血清のプール品0.5mlから免疫グロブリン(IgGおよびIgM)を分離するのに、蛋白質A−アガロース・アフィニティーカラムクロマトグラフィー(イリノイ州、ロックフォード、ピアス・ケミカル・カンパニー)を使用した。抗体クラスの分離は、1/500の希釈で使用したヤギ抗−ウサギIgG(γおよびL鎖特異性;タゴ)および11/200の希釈で使用したヤギ抗−ウサギIgM(μ鎖特異性;ニューヨーク州、ウエストバリー、セラーラブ)でタイプII多糖を塗布したELISAプレートで確認した。
【0034】
競合ELISA.II−TTワクチンを生じさせるウサギ血清の特異性は、抑制剤として同質(タイプII)及び異質(タイプIa及びIII)多糖類を用いた競合ELISAによって決定された。ワクチン誘導されプールされたウサギ血清(70日目に得られた)のエピトープ特異性は、抗体結合の抑制剤として、先天及び脱シアル化されたタイプII多糖及びβ−O−メチルガラクトピラノースを用いて試験された。先天タイプII多糖は、80℃で2時間、6%酢酸で処理することにより脱シアル化された。多糖抑制剤は、順次4倍希釈し、II−TTワクチンを用いたワクチン接種後70日目に得られたプールされたウサギ血清(10000倍希釈)の当容積(75μl)と混合した。それから、この混合物(100μl)を、タイプII多糖コートされたELISAウエルに添加した。アルカリ性ホスファターゼ接合した抗ウサギIgGが、1/3000の希釈割合で第二抗体として使用された。結果が、以下に示されている。%抑制=〔抑制剤なしのA405−抑制剤を用いたA405)/抑制剤なしのA405〕×100
GBS V−TTウサギ抗血清の血清タイプ特異性は、GBSタイプ特異多糖類Ia、Ib)II、III、V及びVIを用いて評価された。ELISAウエルは、ポリ−L−リジンにリンクしたGBSタイプV多糖を含む100ng/ウエルでコートされた。V−TTワクチンに対するウサギ抗血清で、1/6000に希釈されたものは、各多糖抑制剤を用いて培養された。培養された抗血清は、ELISAウエルに添加され、このプレートは、ヤギ抗ウサギIgGアルカリ性ホスファターゼ接合体(1/3000希釈)と、これまでに詳述されている基質(28)を用いて処理された。
【0035】
インビトロにおけるGBSの抗体媒介死滅.ヒトの末梢血白血球により引き続いて死滅させるためのGBS細胞をオプソニン化するためのワクチン誘発ウサギ抗体の能力を、インビトロオプソノ食作用アッセイ(7、8)により評価した。
【0036】
GBSタイプV反応性抗体のオプソノ食作用活性を測定するための反応アッセイは、300μlの緩衝液における1.5×107白血球(WBC);50μlにおける3×106CFUのタイプV GBS菌株CJB 111;ヒト補体(GBSタイプV菌株細胞を用いて吸収された)(50μl);抗体−抗V−TT熱不活性化(50μl);変性されたイーグル培地(50μl)を培養することによって行われた。混合物は、37℃にて60分間混合しながら培養した。GBSコロニー形成ユニット(CFU)における違いは、標準プレートカウント法により37℃にて1時間、引き続いて培養して測定された。
【0037】
ワクチン誘導されたウサギ抗体によるマウスの受動的防御.10匹のSwiss−Webster非近交雌マウス(タコニックファームス、ジャーマンタウン、N.Y.)のグループで、各マウスの体重が18〜20gであるものに、タイプII多糖又はII−TTワクチンのいずれかでワクチン接種したウサギからプールされた血清(70日)0.2mlを腹腔内的に注入した。タイプII多糖を用いて免疫化したウサギからの70日目に得られたプールされた血清のELISAによって測定された力値(タイター)は100であり、II−TTワクチンの場合は12800であった。5匹のマウスの対照グループには、プールされた事前免疫ウサギ血清又は結合されないTTを生じさせるプールされた抗血清(27)を投与した。24時間後に、1.0mlのトッド−ヘウィットブロスの全量において、マウスは、タイプII菌株18RS21(1.5×105CFU/マウス)を用いて誘発した。各菌株に対する誘発投薬量は、事前に同じ体重で同じ月齢のマウスの90%以上が死に至るように決定された。生き残ったマウスを、3日間引き続いて毎日数えた。
【0038】
統計分析.致死GBS感染に対したマウスを受動的に防御する異なったウサギ血清の能力を比較するために、フィッシャーズの正確試験が使用された。
【0039】
結果
II−TTワクチン及びV−TTワクチンの調製及び組成物.GBS II−TTワクチン及びGBS V−TTワクチンを、GBSタイプIII結合ワクチンの構成について以前に詳述された方法によって調製した(33)。タイプII GBS多糖の制御された過ヨウ素酸塩の酸化により、ガスクロマトグラフィー−質量スペクトル分析によって決定されたものとして、7%の多糖のシアル酸残基の変化が起こった。単−TTは、還元性アミノ化により、タイプII多糖上の変異したシアル酸位置に共有結合で結合した。この精製されたII−TTワクチンは、32%(wt/wt)の蛋白質及び68%(wt/wt)の炭水化物を含んでいた。II−TTワクチンの最終収量は7.8mg、39%であった。
【0040】
タイプV GBS多糖の制御された過ヨウ素酸塩の酸化により、この多糖において約8%、25%及び50%のシアル酸残基の変化が生じた。単一のTTは、還元性アミノ化によって、タイプV多糖上の変化したシアル酸位置に共有結合で結合した。多糖類は酸化された結果、そのシアル酸残基の約8%が変化し、蛋白質のモル比に対して低い多糖を有する接合体が生じた。末端のシアル酸残基の25又は50%が変化した多糖類は、蛋白質のモル比に対してより望ましい多糖を有する接合分子が生じた。シアル酸残基の25%が変化したGBSタイプV多糖類を、表Iに示される生化学的な特徴を有する接合ワクチンを製造するのに使用した。
【0041】
【表1】

ウサギにおけるII−TTワクチン及びV−TTワクチンの免疫原性.II−TTワクチン及び先天タイプIII多糖の免疫原性を、ウサギにおいて比較した。タイプII特異抗体における増加は、II−TTワクチンの初期投薬の後に観察された(表2)。ワクチンのブースター投与により、更に抗体応答が増加した。抗体レベルは、変化せずに維持されるか、あるいは、41日の第2のブースター投与の後にわずかに上昇し、この研究の残りの間を通して維持された(表2)。II−TTワクチンとは対照的に、結合していない先天GBSタイプII多糖は、特異的な抗体応答をもたらさなかった(表2)。II−TTワクチンを用いてワクチン接種された動物はまた、TTに対する抗体を生成し、前免疫レベルを越えて、約3−1og10増加を達成した。
【0042】
【表2】

V−TTワクチン(25%まで多糖が酸化された)の免疫原性もまた、ウサギにおいて評価した。抗体(IgG)レベルは、第1及び第2のタイプV−IIワクチンの投薬の後に増加し、この研究を実施する間、維持された(表3)。
【0043】
【表3】

ワクチン誘発されたウサギの血清の抗原性.蛋白質キャリヤーへの多糖の接合は、その先天的な形態で多糖において見い出されている重要な抗原エピトープを変化させることはない。我々は、抑制剤として同種及び異種GBS多糖類を用いた競合ELISAによって、II−TTワクチン誘発された抗体の特異性を試験した。450ng/mlの濃度にて先天タイプII多糖は、ウサギ抗体の結合の50%を抑制し、II−TTワクチンか生じた(図2)。GBSタイプIa及びタイプIII多糖類は、500μg/mlよりも高い濃度であってもII−TTワクチンを生じさせる血清の結合を抑制しなかった(図2)。これらの結果は、標的抗原に対するII−TTワクチン誘発された抗体の血清タイプ特異性を証明しており、接合ワクチンの多糖部分の抗原エピトープの保存を示している。
【0044】
シアル酸によって影響されたエピトープが、II−TTワクチンの調製の間に維持されるかどうかを調べるために、先天及び脱シアル化されたタイプIII多糖が、II−TTワクチンを生じさせるウサギ抗体の結合の抑制剤として競合ELISAにおいて使用された。この多糖の脱シアル化は、80℃にて2時間、6%酢酸を用いた処理によって行われた。シアル酸残基の定量的な除去は、標準としてのN−アセチルノイラミン酸(シグマ)を用いて、チオバルビツール酸アッセイ(32)によって行われた。Superose 6 FPLCカラム(LKB−ファルマシア、スウェーデン)における、酸処理を行う前の先天タイプII多糖のKavは0.49であり、一方、酸処理された多糖のKavは0.52であり、先天多糖が重量で20%になるような側鎖のシアル酸残基の損失により、多糖の分子の大きさにわずかな縮小が示された。mlあたりの脱シアル化したGBSタイプIIが200μgであっても、先天タイプII多糖に対するII−TTワクチン抗体の33%の結合によって抑制された(図3)。II−TTワクチン抗血清による脱シアル化又はコアタイプII多糖が相対的に認識しにくいことは、免疫電気泳動ゲルによって確かめられ、このゲルは、(示されてはいないが)コアタイプII多糖ではなく、先天のものと一緒に生成した沈降素バンドを示していた。先天タイプII多糖に対するII−TTワクチン抗血清の結合は(示されてはいないが)0.01〜10mg/mlの濃度範囲で使用されたβ−O−メチルガラクトピラノースによって抑制することができなかった。
【0045】
GBSタイプV−TTワクチン誘発された抗体の特異性は、抑制剤として同種及び異種GBS多糖類を用いた競合ELISAによって試験された。先天タイプV多糖は、タイプV−TTワクチンを生じさせるウサギ抗体の結合を効果的に抑制した(図5)。GBSタイプIa、タイプIb、タイプII、タイプIII及びタイプVIは、タイプV−TTワクチンを生じさせる血清の結合を効果的に抑制しなかった(図5)。これらの結果は、標的抗原に対するタイプV−TTワクチン誘発された抗体の特異性を示している。
【0046】
GBSワクチン誘発された抗体のインビトロ活性.インビトロにおける人間の末梢血白血球による死滅のためのGBSをオプソニン化するための免疫血清の能力は、動物防御実験(27、33)におけるGBSに対する防御効能と関連があった。II−TTワクチンを用いてワクチン接種された3羽のウサギに生じた抗体は、1.81og10以上にまでGBSタイプII菌株18RS21の死滅を促進した(表4)。前もって免疫化したウサギの血清又は、先天GBSタイプII多糖又は結合していないTTを用いてワクチン接種されたウサギからの血清は、インビトロにおけるGBSの死滅を促進しなかった(表4)。ワクチン誘発されたウサギ抗体は、2つのGBSタイプII臨床隔離集団(菌株S16及びS20)の人間の血液白血球による死滅を、前免疫化ウサギ血清に比べて、1.81og10以上にまで促進した(表5)。タイプII−TTワクチンに対するウサギ血清は、異種(タイプIa及びIII)GBS菌株のインビトロにおける死滅を促進することがないので、血清タイプ特異性であることがわかった(表5)。
【0047】
【表4】

【0048】
【表5】


蛋白質A親和性−精製されたIgG及びIgMは、タイプII−TTワクチンを生じさせるプールされた血清から得られた(28)。各Igフラクションの特異性は、クラス特異性二次抗体を用いたELISAによって確認された。IgM及びIgGフラクションのA405S(1/100に希釈)は、μ鎖特異性接合体を伴い、それぞれ0.384及び0.009であり、ヤギ抗ウサギIgG(γ及び軽鎖特異性)を伴い、それぞれ0.086及び2.367であった。分離されたIgM及びIgGは、人間の血液白血球によるタイプII GBSのオプソニン死滅を促進させる能力について試験された。タイプII−TTワクチンを生じさせる分画されていない血清を1:100に希釈し、同様の血清からのIgGフラクションの等量1:100希釈は、タイプII GBSの死滅を、それぞれ1.65±0.22及び0.95±0.09 1og10まで促進した。対照的に、タイプII GBSは死滅されることはなく、オプソノ食作用アッセイにおいて、前免疫血清(−0.39±0.13 1og10)及び、タイプII−TTワクチンを生じさせる血清からの、IgMを多く含むフラクションの存在下で成長した。
【0049】
人間の血液白血球によるGBSタイプV菌株(CJB 111)の死滅を促進するための、GBSタイプV−TTワクチン誘発されたウサギ抗血清の能力もまた、インビトロにおけるオプソノ食作用アッセイによって評価された(8)。図6に示されるように、10%の濃度でのGBSタイプV−TT抗血清は、コントロールに対応するGBSタイプV菌株CJB 111を効果的に最適化した。制御反応条件は、抗血清のない補体(10%)、補体のない抗血清(10%)、抗血清(1%)及び補体であった。
【0050】
マウス防御アッセイ.ワクチン誘発された抗体のインビボでの防御能力を試験するために、タイプII GBS 18RS21を用いて誘発する前に、マウスは、プールされたII−TTワクチン血清(70日)24時間を用いて受動的に免疫化された。前もって、誘発投薬量は、試験されたマウスの90〜100%が致死するように決定した。完全(100%)な防御は、GBS II−TTワクチンを生じさせる血清を与えられたマウスのグループに生じる一方、事前にワクチン血清を与えた5匹のマウスの1匹しか生存しなかった(表6)。結合していないタイプII多糖又は結合していないTTのいずれかを用いてワクチン接種されたウサギからの血清を受けたマウスの中では生き残ったものはなかった(表6)。
【0051】
【表6】

最初に髄膜炎菌性多糖(18)を生ずるGBSタイプIII多糖を用いた結合したストラテギー(strategy)は、全てのGBS莢膜多糖抗原に適用できる。なぜならば、これらは全てシアル酸を含むからである。しかしながら、ジ又はトリサッカライド側鎖の末端サッカライドとしてのシアル酸を有する、他のGBS多糖類に類似せず、GBSタイプII多糖は、2つのモノサッカライド側鎖(9、20)の一つに唯一の糖としてシアル酸を有する繰り返しユニットを持っている。GBSタイプII接合ワクチンを構成する際、我々は、タイプII多糖上のシアル酸残基の7%を酸化し、多糖がTTに結合するための位置として、これらを使用した。精製されたII−TTワクチンは、スーパーローズ6カラム(106以上の分子量に一致する)の空隙容量で溶出し、68%(wt/wt)炭水化物及び32%(wt/wt)蛋白質からなっていた。
【0052】
アジュバントを用いて乳化されたタイプII−TTワクチンは、タイプII多糖特異抗体をもたらすことのない、結合していない先天タイプII多糖とは対照的に、ウサギにおいて免疫性があった。免疫化された3羽のウサギのうちの2羽は、II−TTワクチンの単一投薬後3週間、強く応答した。最適タイプ特異抗体は、II−TTワクチンのブースター投与後3週間、全ての3羽のウサギにおいて達成された。タイプII特異抗体価の更なる増加は、II−TTワクチンの3回目投薬後には観察されなかった。インビトロ及びインビボ実験からの結果は、II−TTワクチンを生じさせる抗体が、タイプIIGBSに対して機能的に活性であることを示していた。II−TTワクチンを用いてワクチン接種された3羽のウサギのそれぞれからの血清は、人間の末梢白血球によるタイプII GBSのインビトロでの死滅を促進し、タイプIIGBSの致死量に対して完全(100%)保護を有した非近交マウスをもたらした。II−TTワクチン抗血清は、同種GBS菌株(18RS21、S16、及びS20)に対してはオプソニン的に活性であったが、異種GBS血清タイプ(タイプ1a及びIII)は試験されていない。
【0053】
先天タイプII多糖が、タイプII多糖コートELISAウエルへのII−TTワクチン抗血清の結合を抑制する一方、たとえ200μg/mlの濃度で使用されたとしても、脱シアル化されたタイプII多糖と共に40%以下の抑制が得られた。
この結果は、タイプII多糖の重要な抗原決定基が、シアル酸残基の存在に依存していることを示している。この結果は、これらが全てのタイプII生物を生じさせるウサギ抗血清を共に得られることを証明している(21)。しかしながら、抑制剤としてβ−O−メチルガラクトピラノースを用いたELISA抑制実験は、II−TTワクチンを生じさせるウサギ抗血清が、ガラクトース特異抗体を含まないことを示していた。タイプII先天多糖へのII−TTワクチン抗血清の結合の抑制は、10mg/mlの濃度でβ−O−メチルガラクトピラノースを用いた場合にも得られなかった。それゆえ、側鎖ガラクトースは、多糖がTTに結合された際に、タイプII多糖の免疫優性エピトープであるとは思われない。これらの結果は、免疫化学研究とは対照的に、全てのタイプIIGBS生物(12、21)を生じさせるウサギ血清を用いて実施され、この生物においては、ガラクトース側鎖が、シアル酸依存エピトープと共に、タイプII多糖の2つの免疫優性位置の一つになっているものと思われる。以前の研究(12、21)において使用され、しかもpH調整条件にて培養されていない全てのタイプIIGBS細胞は、ある程度、シアル酸が欠けた多糖を有しているかも知れない。これらの状況の下では、側鎖ガラクトースは、主な抗原性エピトープであるように思われる。II−TTワクチンを合成するために使用したタイプII多糖の原料は、pH7.0に維持されたタイプIIGBS培地であった。最終分析から、シアル酸が〜20%(wt/wt)の多糖から構成されていることが確認された。我々は、TTへの結合タイプII多糖は、多糖の立体配座を変え、これによって、ホスト免疫系による確認に利用できないガラクトースエピトープを与える可能性を否定することができない。II−TTワクチン誘発されたウサギ抗血清は、ガラクトース特異抗体が欠けていたが、タイプIIGBS生物に対してインビトロ及びインビボにて充分に機能した。シアル酸残基のいくつかの化学的修飾も、引き続いて起こるこれらの位置へのTTの結合もどちらも、官能タイプII特異抗体をもたらすのに必要な臨界抗原エピトープを変化させない。II−TTワクチンを生じさせるウサギ血清からの精製されたIgGが、人間の白血球によるタイプIIGBSのインビトロにおける死滅を促進させることは、タイプII多糖の免疫原性がTTへの接合により増加するということだけでなく、機能IgG抗体がもたらされることを示唆している。
【0054】
GBSタイプV莢膜多糖は、隣接した糖残基上の2つの異なる側鎖を含むトリサッカライド骨格からなる繰り返しユニット構造を有している。(参考文献35:図4)。GBSタイプV−TT接合ワクチン調合物の一つでは、タイプV多糖における長い側鎖(即ち3糖残基)上のシアル酸残基の25%が酸化された。この酸化されたシアル酸残基は、TTにタイプV多糖が結合するための位置として使用された。この精製されたタイプV−TTワクチンは、38%(wt/wt)のTTと62%(wt/wt)の炭水化物からなっていた。ミョウバンと混合されたV−TTワクチンは、ウサギにおいて免疫原性であることが示された。タイプV−TTワクチンの最初の投与及びブースター投与の後に、強い作用が観察された。又、第2のブースター投与では、タイプV多糖IgG価における更なる増加が生じた。タイプV−TT誘発アッセイの血清特異性は、競合ELISAによって示された。V−TTワクチンに対する生じたウサギ抗血清は、ヒト白血球及び補体の存在下でインビトロにてタイプV GBSを死滅させる能力により証明されるものとして機能的に活性である。
【0055】
III−TTワクチンと同様に、II−TTワクチンは、活性多糖と比較してウサギにおいて改良された免疫原性を示し、多糖の構造、TTが結合される多糖上のシアル酸の位置及びワクチン組成物が違っているにもかかわらず、ウサギにおいてオプソニン的に活性なIgGをもたらす。又、タイプV−TTワクチンは、ウサギにおいて免疫原性であること、及び、インビボにて抗体を機能的に誘導可能であることが明らかとなった。我々は、この計画のGBS多糖−蛋白質接合体が究極的に、人間の病気に最もしばしば関連のあるGBS血清タイプに対して保護をもたらし得る多価GBSワクチンの成分を構成していると推察している。
【0056】
更に、我々は、ワクチンが、製薬学的に受容可能なキャリヤーに接合分子を添加することによって、本発明の接合分子から製造できると考えている。恐らく、本発明の抗原分子における架橋の程度は、0.2ミクロンのフィルターを通して濾過滅菌することのできるワクチンを提供するのに充分な範囲に制御される。このようなワクチンは可溶性であることが好ましい。免疫法は、受容株哺乳類にワクチンを注入することによって行うことができ、必要であれば一度、それに引き続いてブースター注入を行う。投与されるべきワクチンの充分な投薬量は、存在する多糖の量に基づくことができる。接合ワクチンの多糖成分の3〜80μgの範囲を投与することができる。
【0057】
(参考文献)
【0058】
【表7−1】

【0059】
【表7−2】

【0060】
【表7−3】

【0061】
【表7−4】

【0062】
【表7−5】

【0063】
【表7−6】

我々は、これまで、本発明の多くの具体例を述べてきたが、基本構想は、本発明の方法を使用するこの他の具体例を提供するために変更できることは明らかである。従って、本発明の範囲は、実施例によってこれまでに示してきた特殊な具体例よりも、これに添付した請求の範囲によって定義されていることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−132727(P2009−132727A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55767(P2009−55767)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【分割の表示】特願2005−196902(P2005−196902)の分割
【原出願日】平成5年9月24日(1993.9.24)
【出願人】(500034365)ブリガーム・アンド・ウーメンズ・ホスピタル・インコーポレーテッド (4)
【出願人】(591106945)ナショナル・リサーチ・カウンシル・オブ・カナダ (4)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL RESEARCH COUNCIL OF CANADA
【Fターム(参考)】