説明

グレージングチャンネルの水密試験装置及び水密試験方法

【課題】障子を構成するグレージングチャンネルを評価する。
【解決手段】障子12のガラス板14を錘44、44…によって加圧すると、ガラス板14が下方に撓むため、ガラス板14とグレージングチャンネル16との間、框18とグレージングチャンネル16との間に隙間が生じる。そうすると、その隙間から水40が漏れていき、容器上部30内の水40の水位が下がり、その水位をスケール26によって計測する。そして、加圧してから所定時間経過後における水位の変化に基づいて、すなわち、漏水量に基づいてグレージングチャンネル16の水密性を評価する。その評価基準を設定するために、JIS A1517(1996年)で規定する水密性能試験方法において、所定の等級で合格と判定されたグレージングチャンネルを評価基準として設定する。この評価基準を、新たに試作したグレージングチャンネル16の水密性を評価する際の指標とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体の周縁部にグレージングチャンネルを介して框が装着されることにより構成された障子において、そのグレージングチャンネルの水密性を評価するためのグレージングチャンネルの水密試験装置及び水密試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サッシの水密性能を評価する際には、サッシを実際に設計して試作し、この試作品のサッシに障子を嵌め込み、これをJIS A1517(1996年)に準拠する建具の水密性能試験方法に基づいて試験を行う。そして、その試験結果の漏水状況で目標とする性能が得られない場合には、設計、試作を繰り返す。このような設計、試作、及び試験の繰り返しを少なくするために、サッシの水密性能を予測する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
一方、JIS A4706(2000年)・JIS A4702(2000年)には、サッシの水密性の等級(W−1〜W−5)と性能(判定基準)とが規定されている。そして、JIS A1517(1996年)の水密性能試験では、前記等級に応じた圧力(脈動圧)を試験体に10分間加えるとともに1分間当たり4l/mの水を試験体に噴射し、その間のサッシからの漏水状況に基づいてサッシの水密性能を評価する。たとえば、市街地ビルを目安としたW−4等級のサッシでは、上限値525Pa、下限値175Paの圧力(中央値350Pa)を2秒の周期で試験体に加えるようにしている。
【特許文献1】特開2002−350274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、JISで規定している前記水密性能試験方法は、障子と窓枠からなるサッシ全体の評価試験方法であって、障子単体の水密試験方法ではなく、またグレージングチャンネル単体を評価できる試験方法ではない。障子は、ガラス板の周縁部に、樹脂製またはゴムなどの弾性体で作られたグレージングチャンネルを介して框が装着されることにより構成される。このため、水密性能試験時の圧力によって、ガラス板とグレージングチャンネルとの間と、グレージングチャンネルと框との間に隙間が生じ、この障子と窓枠との間の以外の隙間から漏れた水がサッシ全体の評価を左右することもある。したがって、障子の水密性能、すなわち、ガラス板と框に密着するグレージングチャンネルの水密性能を障子単体で評価することにより、JISで規定される等級を満足すると推測されるグレージングチャンネルを提供する必要があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、障子を構成するガラス、框、グレージングチャンネルのうち、とくにグレージングチャンネルを評価するための水密試験装置及び水密試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、板状体の周縁部にグレージングチャンネルを介して框が装着されることにより構成された障子の、前記グレージングチャンネルの水密性を評価する水密試験装置であって、前記障子を収容するとともに、収容された前記障子の框に密着されて該框を水密状態で支持する框支持部材を備えた容器と、前記框支持部材によって框が支持された前記障子の板状体に当接され、該板状体の面と直交する方向に板状体を加圧する加圧部材と、前記容器と前記加圧部材との間の空間に水を供給する水供給部と、前記容器に設けられるとともに該容器に供給された前記水の水位を計測するための水位計測部と、を備えたことを特徴とするグレージングチャンネルの水密試験装置を提供する。
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、本発明のグレージングチャンネルの水密試験装置を用い、前記水密試験装置の容器に障子を収容するとともに、該障子の框を框支持部材によって水密状態で支持し、前記障子の板状体に加圧部材を載置し、前記容器と前記加圧部材との間の空間に水供給部から水を所定量供給し、前記容器に供給された前記水の水位を水位計測部によって計測し、前記障子の板状体をその面と直交する方向に前記加圧部材によってさらに加圧し、前記加圧部材による板状体の加圧後、所定時間経過後に前記水位計測部によって計測される前記水位の変化に基づいて前記グレージングチャンネルの水密性を評価することを特徴とするグレージングチャンネルの水密試験方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、障子の板状体を加圧部材によって加圧した際に、板状体が撓むことで板状体とグレージングチャンネルとの間に隙間が生じると、その隙間から水が漏れていき、容器内の水の水位が下がる。その水位は、容器の側面または加圧部材の側面などに取り付けられたスケール等の水位計測部によって計測される。そして、加圧してから所定時間経過後における水位の変化に基づいて、すなわち、漏水量に基づいてグレージングチャンネルの水密性を評価する。その評価基準を設定するために、たとえばJIS A1517(1996年)で規定する水密性能試験方法において、所定の等級で合格と判定されたグレージングチャンネルを用いて試験を実施し、このグレージングチャンネルを使用した際の水位の変化を評価基準として設定する。この評価基準が、新たに試作したグレージングチャンネルの水密性を評価する際の指標となる。このような評価基準は、等級毎に取得しておくことが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記加圧部材から前記板状体にかける荷重は、所定のサイズの窓にかかる全荷重をグレージングチャンネルに加わる線荷重に換算した荷重であることが好ましい。

本発明によれば、試験体である障子を小型化しても、実物大の窓と同等の荷重条件で試験を行うことができる。障子を小型化すれば、水密試験装置もコンパクトになるので、試験装置の取り扱いが簡便になり、試験を円滑に実施することができる。
【0010】
更に、本発明は、前記容器は、前記障子の框の下面が載置される容器下部と、前記框の上面にシール部を介して水密状態で密着されるフランジ部を備えた筒状の容器上部とからなり、前記シール部と前記フランジ部とによって前記框支持部材が構成されるとともに、前記容器上部と前記加圧部材との間の空間に前記水が供給されることが好ましい。すなわち、前記障子の框の下面が載置される容器下部と、前記框の上面にシール部を介して水密状態で密着されるフランジ部を備えた筒状の容器上部とによって前記容器を構成し、前記シール部と前記フランジ部とによって構成される前記框支持部材によって前記障子の框を水密状態で支持するとともに、前記容器上部と前記加圧部材との間の空間に前記水を供給する。
【0011】
グレージングチャンネルの水密性能を評価する本発明では、容器に供給した水を、板状体とグレージングチャンネルと框との3つの部材で生じる隙間からのみ漏水させることが必要となり、そのためには、障子の框を容器内において水密状態で支持する必要がある。このため、容器には框を水密状態で支持する框支持部材が設けられている。この框支持部材において、本発明の如く、容器を容器下部と容器上部とに二分割し、容器上部に形成されたフランジ部のシール部と容器下部とによって框を挟持する構成をとることにより、簡単な構造の框支持部材を提供できる。また、框に対する挟持力を高めるために、容器下部と容器上部のフランジ部とをクランプ部材によってクランプし、框を挟圧保持することが望ましい。このように容器を二分割した場合には、容器上部と加圧部材との間の空間に水が供給され、これによって、容器全体に水を供給する必要はなく水の使用量を削減できるので、水密試験装置を軽量化できる。
【0012】
また、本発明によれば、前記加圧部材は、前記障子の板状体の上面にシール部を介して水密状態で載置される筒状の押圧体と、該押圧体に搭載される錘とからなり、前記押圧体と前記容器上部との間の空間に前記水が供給されることが好ましい。すなわち、前記障子の板状体の上面にシール部を介して水密状態で載置される筒状の押圧体と、該押圧体に搭載される錘とから前記加圧部材を構成し、前記押圧体を板状体の上面に載置した後、前記押圧体と前記容器上部との間の空間に前記水を供給し、前記押圧体に前記錘を搭載する。
【0013】
本発明によれば、加圧部材を筒状の押圧体と錘とから構成し、この押圧体と容器上部との間の空間に水を供給する。押圧体を板状体の上面に載置すると、押圧体の下部周部に取り付けられたシール部が板状体の上面に水密状態で密着されるため、供給された前記水は、押圧体の内部に浸入しない。これにより、水の使用量が削減され、前述の如く水密試験装置の軽量化を図ることができる。なお、シール部の板状体に対する水密性を高めるために、押圧体に予備の錘を載せた後に、水を供給することが好ましい。この後に、板状体をさらに加圧するための錘を載せる。これにより、実験結果の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、障子を構成するグレージングチャンネルを評価するための水密試験装置及び水密試験方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係るグレージングチャンネルの水密試験装置及び水密試験方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0016】
まず、図面に基づいて実施の形態の水密試験装置を説明する前に、本装置の概要を説明する。この水密試験装置は、JIS A1517(1996年)で規定する脈動圧の上限値に相当する荷重を障子のガラス板に負荷するとともに、上限値に該当する水圧を水頭圧としてガラス板の周縁部(ガラス板とグレージングチャンネルとの接合部)に負荷する装置である。この水密試験装置による加圧試験時間は最大で10分間とする。また、10分経過時において、規定する変位までの水位変化のグレージングチャンネルを合格と評価する。本装置における加圧試験は、JIS A1517(1996年)で規定する水密試験(脈動試験)条件よりも厳しい条件に設定される。すなわち、JIS A1517(1996年)で規定する水密試験条件は、脈動圧の上限値と下限値とを2秒周期の正弦波で10分間加圧するものであり、上限値の加圧時間は5分間だけだからである。具体的には、JIS A4706(2000年)・JIS A4702(2000年)で規定するW−4等級の場合、脈動圧の上限値が525Paであり、下限値が175Paであるが、本装置では、上限値の525Paに相当する荷重をガラス板に10分間負荷する。また、この荷重は、所定のサイズの窓にかかる全荷重をグレージングチャンネルに加わる線荷重に換算した荷重とし、実物大の窓を使用せず、縮小化した試験体の障子を使用している。これは本装置の小型化、及び取り扱い等に寄与する。
【0017】
図1は、実施の形態の水密試験装置10の外観を示した斜視図であり、図2は、この水密試験装置10の縦断面図、図3は、水密試験装置10で試験される試験体の障子12を示した斜視図である。同図に示す障子12は、図4に示すように板状体である矩形状のガラス板14の4辺縁部に、線状で樹脂製またはゴム製のグレージングチャンネル16、16…を介して、図5に示す金属製の框18、18…を装着することにより構成されている。
【0018】
図6は、ガラス板14にグレージングチャンネル16を介して框18が装着された障子12の要部断面図であり、グレージングチャンネル16の軟質リップ部16A、16Aが弾性をもってガラス板14の面側に密着されていることが示されている。なお、同図ではガラス板14として、スペーサ15を介して2枚のガラス板14A、14Aを装着してなる複層ガラスを例示しているが、複層ガラスに限定されるものではなく、1枚のガラス板であってもよい。また、板状体としてガラス板14を例示したが、これに限定されるものではなく、樹脂製のパネル材のような板状体であってもよい。
【0019】
一方、水密試験装置10は、図1、図2に示すように容器20、加圧部材22、水供給部24、及びスケール(水位計測部)26等から構成されている。
【0020】
容器20は、容器下部28と容器上部30とから構成される。容器下部28と容器上部30はともに透明樹脂材による成形品であり、容器20に供給された水の水位が容器20の外側から透視できるようになっている。なお、後述するように前記水位は、容器上部30の外側から目視できればよいので、容器下部28は透明樹脂材による成形品に限定されるものではない。
【0021】
容器下部28は、矩形状の障子12を載置できるように矩形状に構成され、容器下部28にドレン管32が設けられている。このドレン管32の不図示のバルブを開放することにより、障子12から漏出されて容器下部28の上面に溜まった水が容器下部28の外部に排水される。排出を円滑にするには、ドレン管32を容器下部28の角に設け、容器下部28の水平面に対する勾配を好ましくは0.1〜0.5%、より好ましくは0.14〜0.2%になるように、ドレン管32がある容器下部28の角に対向する角を高く上げることが好ましい。なお、図2では平板状の容器下部28を示しているが、容器下部28の形状はこれに限定されるものではない。例えば、上面が開放された箱状に容器下部28を構成し、この内側に、障子12の框18、18…のみを支持する四角枠状の支持面を形成した構成としてもよい。また、この支持面の内側を水溜まりの凹状部とし、この凹状部に連通するドレン管を容器下部の下面から外部に突出させればよい。
【0022】
容器上部30は角筒状に構成され、その下部の周囲には水平方向に張り出したフランジ部34が形成されている。このフランジ部34の外周形状が、容器下部28の外周形状と略同一の大きさで略同一形状に形成されている。フランジ部34の下面の周囲にはシール部36が貼着されており、このシール部36が、容器下部28に載置された障子12の框18、18…に当接される。シール部36と容器上部30のフランジ部34とによって框支持部材が構成され、この框支持部材によって容器上部30が框18、18…の上面に水密状態で密着される。また、シール部36と框18との水密性を高めるために、容器下部28と容器上部30のフランジ部34とをクランプ部材38、38…によってクランプし、框18、18…を容器下部28と容器上部30とで挟圧保持することが望ましい。このクランプ部材38は周知の構造なので、ここではその説明を省略する。
【0023】
また、容器上部30の側面には、mm単位の目盛りが付されたスケール26が取り付けられている。このスケール26は、容器20に支持された障子12のガラス板14の表面からの水位Lを計測するものであり、容器上部30の側面に取り付けられている。水位の計測方法としては、所定の水頭圧となる水量の水40を水供給部24から容器20に供給し、このときに計測される水位を基準水位としてスケール26で確認し、その基準水位から試験時間経過後の変位をスケール26で見る方法がある。また、所定の水頭圧となるようにスケール26で実測するようにしてもよい。なお、スケール26は、容器上部30の側面のかわりに、加圧部材22の水を供給する方の側面に取り付けられてもよい。
【0024】
グレージングチャンネル16の水密性能を評価する実施の形態の水密試験装置10では、水供給部24から容器20に供給した水40を、ガラス板14とグレージングチャンネル16との間、框18とグレージングチャンネル16と間の隙間からのみ漏水させることが必要となる。そのためには、障子12の框18を容器20内において水密状態で支持する必要があり、このため、容器20には框18を水密状態で支持する、前述した框支持部材(フランジ部34とシール36)が設けられている。この框支持部材において、実施の形態の水密試験装置10の如く、容器20を容器下部28と容器上部30とに二分割し、容器上部30に形成されたフランジ部34のシール部36と容器下部28とによって框を挟持する構成をとることにより、簡単な構造の框支持部材を提供できる。このように容器20を二分割した場合には、容器上部30と後述する加圧部材22との間の空間に水40が供給される。これによって、容器20全体に水を供給する必要はなく水の使用量を削減できるので、水密試験装置10を軽量化できる。また、漏水量の測定の面からも、水量が多いと水位の変化に対して鈍感になるので、上記空間に水を供給するほうがよい。
【0025】
加圧部材22は、容器20に支持された障子12のガラス板14の面と直交する方向にガラス板14を加圧するものであり、筒状の押圧体42と押圧体42に搭載される所定質量の複数の錘44、44…とからなる。なお、押圧体42と容器上部30との間の空間に水40が供給されている。
【0026】
押圧体42は角筒状に構成されており、その下部縁部には、図7の如くシール部46が貼着され、このシール部46を介して押圧体42がガラス板14に水密状態で載置される。また、押圧体42の内側には錘載置板48が取り付けられ、この錘載置板48に錘44、44…が鉛直方向に積層される。
【0027】
このように、加圧部材42を押圧体42と錘44、44…とから構成し、この押圧体42と容器上部30との間の空間に水40を水供給部24から供給する。押圧体を板状体の上面に載置すると、押圧体のシール部46がガラス板14の上面に水密状態で密着されるため、供給された水40は、押圧体42の内部に浸入しない。これにより、水40の使用量が削減され、水密試験装置10の軽量化が図られている。なお、シール部46のガラス板14に対する水密性を高めるために、押圧体42に予備の錘(質量が約5.7kg程度)を載せた後に、水40を供給することが好ましい。この後、ガラス板14を加圧するための錘44、44…を加圧体42の錘載置板48上に載せることにより、実験結果の信頼性が向上する。
【0028】
次に、前記の如く構成された水密試験装置10を使用した水密試験方法について説明する。
【0029】
まず、容器20を容器下部28と容器上部30とに分割し、分割した容器下部28上に障子12を載置するとともに、この障子12の框18の上面側に容器上部30のフランジ部34を、シール部36を介して密着する。そして、必要に応じて容器下部28と容器上部30のフランジ部34とをクランプ部材38、38…によってクランプし、框18、18…を容器下部28と容器上部30とで挟圧保持する。以上により、水密試験装置10の容器20に障子12が収容される。
【0030】
次に、障子12のガラス板14上に、ガラス板14を加圧することなく加圧部材22の押圧体42を載置する。
【0031】
次いで、容器上部30と押圧体42との間の空間に水供給部24から水40を所定量供給し、その水位をスケール26によって計測する。
【0032】
次に、押圧体42の錘載置板48上に錘44、44…を載置し、障子12のガラス板14をその面と直交する方向に加圧する。
【0033】
そして、錘44、44…によるガラス板14の加圧後、所定時間経過後にスケール26によって計測される水位の変化を読み取り、この変化した水位に基づいてグレージングチャンネル16の水密性を評価する。
【0034】
水密試験装置10による水密試験方法によれば、障子12のガラス板14を錘44、44…によって加圧した際に、ガラス板14(上面側のガラス板14A)が、図2の二点鎖線の如く下方に撓むことでガラス板14とグレージングチャンネル16との間、框18とグレージングチャンネル16との間に隙間が生じる。そうすると、その隙間から水40が漏れていき、容器上部30内の水40の水位が下がり、その水位はスケール26によって計測される。
【0035】
そして、水密試験方法では、加圧してから所定時間経過後(最大10分間)における水位の変化に基づいて、すなわち、漏水量に基づいてグレージングチャンネル16の水密性を評価する。その評価基準を設定するために、たとえばJIS A1517(1996年)で規定する水密性能試験方法において、所定の等級で合格と判定されたグレージングチャンネルを用いて試験を実施し、このグレージングチャンネルを使用した際の水位の変化を評価基準として設定する。この評価基準が、新たに試作したグレージングチャンネル16の水密性を評価する際の指標となる。このような評価基準は、等級毎に取得しておく。
【0036】
また、水密試験方法では、加圧部材22からガラス板14にかける荷重を、所定のサイズの窓にかかる全荷重をグレージングチャンネル16に加わる線荷重に換算した荷重に設定している。これにより、試験体である障子12を小型化しても、実物大の窓と同等の荷重条件で試験を行うことができる。障子12を小型化すれば、水密試験装置10もコンパクトになるので、試験装置の取り扱いが簡便になり、試験を円滑に実施することができる。
【0037】
上述した水密試験装置10による水密試験方法は、以下に述べる実施例により更に明瞭となる。
【実施例】
【0038】
本発明の試験方法を実施するにあたって、以下の実物大のサッシの大きさおよび荷重を想定した。
【0039】
サッシタイプ :引き違い窓
サッシ最大サイズ(mm) :1280×2200
受圧面積B(m) :2.816
グレージングチャンネル長さC(mm) :6960
グレージングチャンネルに加わる線荷重D(Pa・mm):0.212
ただし、Dは、(W−4等級の最大荷重である525Pa)×B/Cで求められる。
【0040】
上記サッシに対する試験として、以下の試験体(障子)を準備し、試験荷重を決定した。
【0041】
ガラス板サイズ(mm) :350×350
グレージングチャンネル長さE(mm) :1400(350×4)
グレージングチャンネル材質 :PVC・ゴム系
試験用障子にかける荷重W :296.8Pa(30.3kgf/m
ただし、Wは、所定のサイズの窓にかかる全荷重をグレージングチャンネルに加わる線荷重に換算した荷重でD×Eで求められる。
【0042】
上記の試験体に対して、本発明の試験装置を利用して、以下のように試験を実施した。
【0043】
次に、本発明の試験装置を実際に利用して、上記荷重Wを試験体に加えた。その際、
初期水位をガラス板より水頭圧水位(52.5mm)まで注水し、水位の変化を1分単位で測定した。試験時間は、水密性能試験と同じ10分間とし、10分経過時の水位で判定した。なお、水位1mmは9.81N(1kgf:水頭高さ=水圧)である。
【0044】
本試験体の気密性能の評価を以下のように実施した。
【0045】
まず、一般的なサッシメーカーの軟質グレージングチャンネル(風洞試験にて気密試験に合格したもの)を、本試験装置で確認したところ水位は、およそ0.5mm〜45.5mmの変位であった。この場合は、ガラスとグレージングチャンネルとの間からの進入水量が大きくてもサッシの性能が確保できるのは、サッシが進入水を速やかに排水できる能力があるためである。
【0046】
他方、水密性能試験(風洞試験)を実施し、特にサッシから漏水が少なく試験に合格したサッシに取り付けた旭硝子(株)製のグレージングチャンネルを本試験機にて確認した。その結果、水位の変化がおよそ0〜2mmであった。これに基づいて、この2mmを判定基準として、この値以下の水位変化の場合を合格とすることにした。
【0047】
以上のように、この水密試験装置を利用することにより、JISで規定する等級性能を満足するためのグレージングチャンネル設計の標準化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態の水密試験装置の外観を示した斜視図
【図2】図1に示した水密試験装置の縦断面図
【図3】図1に示した水密試験装置にセットされる障子の斜視図
【図4】図3に示した障子のガラス板とグレージングチャンネルとの組立斜視図
【図5】グレージングチャンネルが装着されたガラス板と框との組立斜視図
【図6】図3に示した障子の要部拡大断面図
【図7】図1に示した水密試験装置の容器上部と押圧体とを示した斜視図
【符号の説明】
【0049】
10…水密試験装置、12…障子、14…ガラス板、15…スペーサ、16…グレージングチャンネル、16A…リップ部、18…框、20…容器、22…加圧部材、24…水供給部、26…スケール(水位計測部)、28…容器下部、30…容器上部、32…ドレン管、34…フランジ部、26…シール部、38…クランプ部材、40…水、42…押圧体、44…錘、46…シール部、48…錘載置板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の周縁部にグレージングチャンネルを介して框が装着されることにより構成された障子の、前記グレージングチャンネルの水密性を評価する水密試験装置であって、
前記障子を収容するとともに、収容された前記障子の框に密着されて該框を水密状態で支持する框支持部材を備えた容器と、
前記框支持部材によって框が支持された前記障子の板状体に当接され、該板状体の面と直交する方向に板状体を加圧する加圧部材と、
前記容器と前記加圧部材との間の空間に水を供給する水供給部と、
前記容器に設けられるとともに該容器に供給された前記水の水位を計測するための水位計測部と、
を備えたことを特徴とするグレージングチャンネルの水密試験装置。
【請求項2】
前記加圧部材から前記板状体にかける荷重は、所定のサイズの窓にかかる全荷重をグレージングチャンネルに加わる線荷重に換算した荷重である請求項1に記載のグレージングチャンネルの水密試験装置。
【請求項3】
前記容器は、前記障子の框の下面が載置される容器下部と、前記框の上面にシール部を介して水密状態で密着されるフランジ部を備えた筒状の容器上部とからなり、前記シール部と前記フランジ部とによって前記框支持部材が構成されるとともに、前記容器上部と前記加圧部材との間の空間に前記水が供給される請求項1又は2に記載のグレージングチャンネルの水密試験装置。
【請求項4】
前記加圧部材は、前記障子の板状体の上面にシール部を介して水密状態で載置される筒状の押圧体と、該押圧体に搭載される錘とからなり、前記押圧体と前記容器上部との間の空間に前記水が供給される請求項3に記載のグレージングチャンネルの水密試験装置。
【請求項5】
請求項1に記載のグレージングチャンネルの水密試験装置を用い、
前記水密試験装置の容器に障子を収容するとともに、該障子の框を框支持部材によって水密状態で支持し、
前記障子の板状体に加圧部材を載置し、
前記容器と前記加圧部材との間の空間に水供給部から水を所定量供給し、
前記容器に供給された前記水の水位を水位計測部によって計測し、
前記障子の板状体をその面と直交する方向に前記加圧部材によってさらに加圧し、
前記加圧部材による板状体の加圧後、所定時間経過後に前記水位計測部によって計測される前記水位の変化に基づいて前記グレージングチャンネルの水密性を評価することを特徴とするグレージングチャンネルの水密試験方法。
【請求項6】
前記加圧部材から前記板状体にかける荷重を、所定のサイズの窓にかかる全荷重をグレージングチャンネルに加わる線荷重に換算した荷重とした請求項5に記載のグレージングチャンネルの水密試験方法。
【請求項7】
前記障子の框の下面が載置される容器下部と、前記框の上面にシール部を介して水密状態で密着されるフランジ部を備えた筒状の容器上部とによって前記容器を構成し、前記シール部と前記フランジ部とによって構成される前記框支持部材によって前記障子の框を水密状態で支持するとともに、前記容器上部と前記加圧部材との間の空間に前記水を供給する請求項5又は6に記載のグレージングチャンネルの水密試験方法。
【請求項8】
前記障子の板状体の上面にシール部を介して水密状態で載置される筒状の押圧体と、該押圧体に搭載される錘とから前記加圧部材を構成し、前記押圧体を板状体の上面に載置した後、前記押圧体と前記容器上部との間の空間に前記水を供給し、前記押圧体に前記錘を搭載する請求項7に記載のグレージングチャンネルの水密試験方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−32423(P2010−32423A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196522(P2008−196522)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】