説明

グローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置

【課題】 グローブボックスの内容物を外界にポートバッグを利用して搬出する場合に、ポートバッグの密着部に危険物質の微粒が封じ込まれ、この密着部を切断することにより危険物質が外界に飛散するおそれがあることに鑑みて、密着部を切断しても、封じ込められた危険物質を再度封じ込むようにしたグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置を提供する。
【解決手段】 ポートバッグ8を載置させるテーブル20の一部に電極定盤19を配し、その上方に昇降自在にヒーターを収容したヒーターホルダ18を配して、ポートバッグ8の密着部8a、8b、8cを順次ヒーターホルダ18と電極定盤19とで挟持して溶着させる。切断される密着部8bにレーザー発生器21からレーザー光線を照射して溶断する。密着部8bに封じ込められた危険物質は溶断時に溶融したポートバッグ8の材料の粘着力で捕捉されて飛散することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、グローブボックスの内外で該グローブボックス内の内容物を出入する際に用いられるビニール製のポートバッグの先端部を密封処理するためのグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質や有毒ガス等の人体に悪影響を及ぼす危険物質は、閉鎖された空間で作業者がこれら危険物質環境に触れないようにして扱う必要がある。この種の危険物質を閉塞し、外部から扱えるようにした装置にグローブボックスがある。ここで、気密性を備えたポートバッグは、上記環境雰囲気と外界との間で、所望の部品や工具、機器装置等のグローブボックスの内容物を出入する際に用いられることがある。図5は、放射性物質を取り扱う原子力施設で用いられるグローブボックス1の概略構造を示している。このグローブボックス1の内部に放射性物質のための各種の取扱装置2が配置されており、正面壁に運転者Pが該取扱装置2を操作するためのグローブポート3が設けられている。なお、正面壁は内部を視認することができる素材によって形成されている。また、グローブボックス1の側壁にはグローブボックス1の内部で必要な工具や装置等の内容物を該グローブボックス1内に供給したり、グローブボックス1内の不要な部品や装置等の内容物を取り出したりするためのラージポート4が設けられている。また、グローブボックス1内の換気は、給気設備5と排気設備6とによって行われ、排気は浄化されて放射性物質を確実に除去して行われるようにしてある。なお、該グローブボックス1内は負圧に維持されて、内部の環境空気が外部に漏洩しないようにしてある。また、警報盤7が設けられており、異常時には警報を発するようにしてある。
【0003】
例えば、特許文献1には、高周波熱シールが可能なポートバッグであるビニルバッグ及びその製造方法が開示されており、放射性物質をグローブボックス外に搬出するには、放射性物質をビニルバッグ内に収納し、ビニルバッグを高周波熱シールすることによって該放射性物質を封じ込め、シール部を切断する方法がとられることから、ビニルバッグは熱シールが可能なことが必要条件となっている。
【0004】
図3は前記ラージポート4にポートバッグ8が装着されている状態を示す概略図で、図3(a)に示すように、ラージポート4はグローブボックス1の外方に突出した筒状をしており、ポートバッグ8は該ラージポート4に嵌合して装着されている。また、図3(b)に示すように、ラージポート4の外周面には適宜本数のリング溝4aが形成されており、ポートバッグ8の外側から該リング溝4aに嵌るように、Oリング9が嵌着される。なお、ポートバッグ8の端部にはカフ8aが形成されており、このカフ8aが最奥部のリング溝4aに嵌るようにしてある。
【0005】
図4は前記ラージポート4から取扱装置2等の被収容物Wを取り出す場合を示している。図3(a)および図4に示すように、グローブボックス1の外側に引き出したポートバッグ8の先端部に被収容物Wを収容させ、該被収容物Wよりも基端部側の3カ所で該ポートバッグ8に加熱シーラによりシールを施して密着部8a、8b、8cを形成し、その中央の密着部8bでポートバッグ8を切断する。これにより、前記被収容物Wがポートバッグ8により形成された袋部8dに密封された状態となるとともに、ポートバッグ8の先端部が密着部8aにより閉鎖されて、グローブボックス1の内外部が遮断された状態に維持される。したがって、グローブボックス1内の環境空気が外部に漏洩することがない。なお、取り出された被収容物Wは、ポートバッグ8の袋部8dに収容された状態で保管される。他方、グローブボックス1内に取扱装置2等の被収容物Wを送り込む場合には、該ポートバッグ8をグローブボックス1内に伸張させ、その先端部に被収容物Wを収容させ、該ポートバッグ8を3カ所でシールして密着部8a、8b、8cを形成し、被収容物Wを収容した袋部8dを切り離した後、該被収容物Wを袋部8dから取り出すことによる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−104392号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グローブボックス1内の内容物を外界に取り出す場合、ポートバッグ8内にはグローブボックス1内の環境雰囲気中の空気が存しており、この空気中に微粒の放射能汚染物質等の危険物質が混在するおそれがある場合がある。このため、前記ポートバッグ8の端部にシールを施して密着させた場合に、この密着部8a、8b、8cに微粒の危険物質が密封されることがある。危険物質が密封された状態で、前記密着部8bを切断すると、その切断端は外界に存しているため、切断部に密封されていた危険物質が外界に飛散するおそれが生じる。また、密着部8bの切断に用いられるハサミ等の切断用の工具に危険物質が付着してしまい、工具が放射性物質等で汚染されると共に、外界が危険物質に汚染されてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、この発明は、ポートバッグを利用してグローブボックス内の内容物を外界に搬出する場合に、ポートバッグの密着部に放射能等の危険物質が密封されている場合であっても、この密着部の切断によって危険物質が外界に飛散することがなく、切断具を汚染することがないグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、この発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法は、グローブボックスの内外部の間で、該グローブボックスの内容物を出入する際に、該内容物を密封して、グローブボックスの内外部を遮断した状態で行うのに用いられる可撓性を有する筒状のポートバッグの先端部を密封処理するグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法において、ポートバッグの先端部を、適宜間隔を設けた三箇所で加熱溶着させてそれぞれで密着した密着部で密封し、前記三箇所の密着部のうちの中央部の密着部で切断してポートバッグを分離するのに、該密着部を溶断して分離させることを特徴としている。
【0010】
ポートバッグの先端部にグローブボックスから搬出する工具や装置等の被収容物を収容させて、三箇所で溶着して、被収容物をポートバッグの先端部に封入する。次いで、中央部の密着部を溶断すると、被収容物が収容された部分が切り離されると共に、ポートバッグの先端部が密封される。
【0011】
また、請求項2の発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法は、前記溶断処理に、前記密着部にレーザー光線を照射して溶融させることを特徴としている。
【0012】
前記中央部の密着部を切断するのに、レーザー光線を用いて溶断することにより、該密着部に接触するハサミ等の切断用の工具を用いる必要をなくしたものである。
【0013】
また、請求項3の発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置は、グローブボックスの内外部の間で、該グローブボックスの内容物を出入する際に、該内容物を密封して、グローブボックスの内外部を遮断した状態で行うのに用いられる可撓性を有する筒状のポートバッグの先端部を密封処理するグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置において、ポートバッグの先端部を、適宜間隔を設けた三箇所で加熱溶着させてそれぞれで密着した密着部で密封させる加熱溶着手段と、前記三箇所の密着部のうちの中央部の密着部を溶断して分離させる溶断手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
被収容物を収容させたポートバッグの適宜部位を前記加熱溶着手段により挟持させて加熱することにより、挟持された部分が溶融し、再度凝固することにより前記密着部が形成される。この密着部を溶断手段により溶断すると、ポートバッグの先端部が分離されると共に、他の密着部で被収容物が収容された部分と、残存するポートバッグの先端部とが密封される。
【0015】
また、請求項4の発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置は、前記溶断手段は、レーザー光線を前記密着部に照射して該密着部を加熱することを特徴としている。
【0016】
溶断手段にレーザー光線を用いて、密着部を加熱溶断するようにしたものである。密着部にハサミ等の工具を接触させることなく切断することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置によれば、密着部を切断する際に溶断することによるから、この密着部に放射性汚染物質等の危険物質が封じ込められている場合、溶断の際に溶融したポートバッグに粘着すると共に、再度封じ込められることになる。このため、危険物質が外界に飛散することが極力防止される。しかも、溶断によるため、ハサミ等を用いて機械的に切断する場合と異なり、危険物質に接触する切断用の工具等が存しないから、切断用の工具等を汚染させることがない。
【0018】
また、請求項2の発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法、または請求項4の発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置によれば、レーザー光線を照射して密着部を加熱することにより切断するから、レーザー光線を収斂させて照射範囲を小さくすることができ、切断領域を極力小さくできる。このため、密着部に封じ込められた危険物質が飛散することを極力防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置を具体的に説明する。
【0020】
図1はこの発明に係る端末処理装置10を示す正面図、図2は同じく右側面図である。鋼材で形成されたフレーム11の両側面には該フレーム11の上方に伸張させた一対の支持プレート12a、12bが設けられており、この支持プレート12a、12bの上端部にベースプレート13が掛け渡されて設けられている。このベースプレート13の中央部にエアシリンダ14が取り付けられており、そのピストンロッド14aがベースプレート13の下側に突出させてある。また、このエアシリンダ14を挟んだ位置に一対のガイドロッド15a、15bが設けられている。前記ピストンロッド14aの先端には緩衝板16が取り付けられており、前記ガイドロッド15a、15bの先端もこの緩衝板16に連繋させてある。この緩衝板16の下面側に支持板17が取り付けられ、この支持板17の下方に一対の支持ロッド17a、17bを介して図示しないヒーターが組み込まれたヒーターホルダ18が取り付けられている。なお、前記緩衝板16と支持板17とは位置関係を調整可能とされている。
【0021】
前記フレーム11の上面であってヒーターホルダ18が対向した部分には、電極定盤19が配されている。この電極定盤19を囲んだ位置にはテーブル20が配されており、このテーブル20の上面の高さと前記電極定盤19の上面の高さとはほぼ一致するようにしてある。そして、前記エアシリンダ14の作動によって、前記ヒーターホルダ18が電極定盤19の上面に配されたポートバッグ8を該電極定盤19と協働して挟持する位置まで下降するようにしてある。また、このヒーターホルダ18は、エアシリンダ14によって、該ヒーターホルダ18の下方を、ポートバッグを通過させるのに支障のない位置まで上昇するようにしてある。
【0022】
前記フレーム11は、前記支持プレート12a、12bの位置よりも一方の側に張り出させてあり、この張り出した部分の上面を指向してレーザー発生器21が配設されている。このレーザー発生器21は、前記ヒーターホルダ18に長手方向に沿った方向に移動可能とされており、ポートバッグ8の幅員よりも大きい距離を移動するようにしてある。
【0023】
前記フレーム11には高周波電源装置22とエアシリンダ14の駆動用エアを供給するコンプレッサ23が配設されている。また、前記支持プレート12bには操作制御板24が設けられている。さらに、支持プレート12bの一方の側に掛け渡して自動整合装置25が設けられており、前記レーザー発生器21はこの自動整合装置25の筐体に取り付けられている。
【0024】
以上により構成されたこの発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置の作用を、以下に説明する。
【0025】
被収容物Wが先端部に収容されたポートバッグ8を前記テーブル20上に伸張させて載置し、密着すべき密着部8a、8b、8cのそれぞれを順次前記ヒーターホルダ18の下方の溶着位置に位置させる。密着部8a、8b、8cのそれぞれが溶着位置に位置した状態で、前記エアシリンダ14を作動させ、ヒーターホルダ18を下降させて、当該部分をヒーターホルダ18と電極定盤19とで挟持させた状態とすることによりポートバッグ8の当該部分が溶融し、ヒーターホルダ18を上昇させると溶融した部分が溶着する。ポートバッグ8にヒーターホルダ18を押圧する際には、前記緩衝板16によってエアシリンダ14による押圧力が緩和されて、ポートバッグ8には不用意な力が加えられない。密着させる部分について順次この溶着処理を行うことにより密着部8a、8b、8cが形成される。
【0026】
密着部8a、8b、8cが形成されたならば、中央の密着部8bを前記レーザー発生器21のレーザー光線の照射域に位置させる。そして、レーザー発生器21を密着部8bの長手方向に移動させながら、該密着部8bにレーザー光線を照射すると、該密着部8bが加熱されて溶融する。これにより密着部8bでポートバッグ8が切断されることになる。このとき、前工程で密着部8bが溶着される際に危険物質が密着部8bに封じ込められた場合、密着部8bが切断される際に溶融されるから、溶融したポートバッグ8の材料に生じる粘着性によって危険物質を捕捉し、切断により飛散させることがない。さらに、溶融した材料が凝固することにより危険物質は凝固した材料に封じ込められる。したがって、危険物質が外界に漏洩することが極力防止される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法および端末処理装置によれば、所定の密着部の切断処理を溶断により行うから、溶着処理時に密着部に封じ込められた危険物質の飛散を防止することができ、しかも、ハサミ等による機械的切断によらないから危険物質が切断用の工具等に付着することがなく、グローブボックスから内容物を外部に取り出す作業の安全性の確保に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係るグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置の概略構造を説明する正面図である。
【図2】図1に示すグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置の右側面図である。
【図3】(a)は従来の構造を備えたラージポートにポートバッグを取り付ける構造を説明する断面図であり、(b)はポートバッグの取付部分を拡大して示す断面図である。
【図4】ポートバッグを用いてグローブボックスから取扱装置等を搬出する作業を説明する図である。
【図5】グローブボックスの概略構造を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
P 運転者
1 グローブボックス
2 放射性物質取扱装置
3 グローブポート
4 ラージポート
8 ポートバッグ
W 被収容物
10 端末処理装置
11 フレーム
13 ベースプレート
14 エアシリンダ
18 ヒーターホルダ
19 電極定盤
20 テーブル
21 レーザー発生器
22 高周波電源装置
23 コンプレッサ
24 操作制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グローブボックスの内外部の間で、該グローブボックスの内容物を出入する際に、該内容物を密封して、グローブボックスの内外部を遮断した状態で行うのに用いられる可撓性を有する筒状のポートバッグの先端部を密封処理するグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法において、
ポートバッグの先端部を、適宜間隔を設けた三箇所で加熱溶着させてそれぞれで密着した密着部で密封し、
前記三箇所の密着部のうちの中央部の密着部で切断してポートバッグを分離するのに、該密着部を溶断して分離させることを特徴とするグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法。
【請求項2】
前記溶断処理に、前記密着部にレーザー光線を照射して溶融させることを特徴とする請求項1に記載のグローブボックス用ポートバッグの端末処理方法。
【請求項3】
グローブボックスの内外部の間で、該グローブボックスの内容物を出入する際に、該内容物を密封して、グローブボックスの内外部を遮断した状態で行うのに用いられる可撓性を有する筒状のポートバッグの先端部を密封処理するグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置において、
ポートバッグの先端部を、適宜間隔を設けた三箇所で加熱溶着させてそれぞれで密着した密着部で密封させる加熱溶着手段と、
前記三箇所の密着部のうちの中央部の密着部を溶断して分離させる溶断手段とを備えたことを特徴とするグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置。
【請求項4】
前記溶断手段は、レーザー光線を前記密着部に照射して該密着部を加熱することを特徴とする請求項3に記載のグローブボックス用ポートバッグの端末処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−233838(P2009−233838A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86451(P2008−86451)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(597006470)日本原燃株式会社 (21)
【Fターム(参考)】