説明

ケ―ブルの透湿度試験装置

【発明の詳細な説明】
(発明の技術分野)
本発明は、ケーブルの防水シースの特性を試験するケーブルの透湿度試験装置に関する。
(発明の技術的背景とその問題点)
通信ケーブルや制御ケーブル等におけるシースには、高い耐水性が要求される。即ち、長期に渡ってケーブル内への水分の侵入を阻止する性能が要求される。完成後のケーブルの検査工程においては、製品がそのような特性を満足するものであるか、その一部を切りとって検査をすることが行なわれる。
第3図に、従来のケーブルの透湿度試験装置を図示した。
この装置は、適当な長さに切断した被試験ケーブル1を浸漬するための水槽2を備えている。この水槽2の中に、所定量の水3を満たし、そこに両端を封止した被試験ケーブル1を浸漬する。この被試験ケーブル1の中に収容された図示しないケーブル芯の2本の導体に、検査用のリード線4が電気接続されて外部に引き出されている。このリード線4には、両者の間の電気抵抗を測定するための抵抗測定器5が接続されている。この抵抗測定器5は、例えば通常メガーと呼ばれる高抵抗測定用の計器を使用する。このような状態で、被試験ケーブル1を長時間水3に浸漬しておくと、若しそのケーブルシースにピンホールや何らかの不良箇所が存在すれば、ケーブル内部に水が侵入する。ケーブル内部に水が侵入すると、その導体間の絶縁抵抗が低下するため、抵抗測定器5によってこれを測定し、ケーブルシースの不良検出をするようにしていた。
ところが以上のような方法では、安定的な測定は可能であるが、定量的な測定を正確に行なうことはできない。即ち、従来方法では、ケーブル内に水分が侵入した場合、これを抵抗測定器、実際には共振回路によって電気的に測定するといった方法をとり、いわゆる間接測定を行なうため、侵入した水分量の正確な測定を行なうことは不可能であった。
(発明の目的)
本発明は以上の点に着目してなされたもので、ケーブルシースの透湿度を定量的に正確に検査することのできるケーブルの透湿度試験装置を提供することを目的とするものである。
(発明の概要)
本発明のケーブルの透湿度試験装置は、被試験ケーブルを浸漬する水槽と、この水槽に収容された水を所定温度に保持する温度制御部と、前記水槽に浸漬されたケーブルの一端からキャリアガスを供給するガス供給部と、前記ケーブルの他端から排出される前記キャリアガスの流量を測定する流量計と、前記キャリアガスに含まれる水分量を測定する温度計とを備えたをことを特徴とするものである。
(発明の実施例)
第1図は、本発明のケーブルの透湿度試験装置の実施例を示すブロック図である。
この装置は、被試験ケーブル1を浸漬する水槽5と、その水槽5の中に収容された水6を所定温度に保持する温度制御部7とを備えている。この水槽5の水6の中には、被試験ケーブル1がその両端を封止して浸漬されるが、その一端1aからキャリアガスを供給するガス供給部8が設けられている。又、被試験ケーブル1の他端1bから排出されるキャリアガスの流量を測定する流量計9及び10と、そのキャリアガスに含まれる水分量を測定する湿度計11とが設けられている。
水槽5は、被試験ケーブル1を収容する程度の例えば縦長の水槽であり、ここに収容される水6は通常の水道水等を使用する。
温度制御部7は、例えば図示しないヒータ及び撹拌装置等からなり、水槽5の中に収容された水6をヒータにより加熱しながら撹拌し、水6の全体の温度を予め設定された所定の温度に一定に保持する装置である。このような温度制御装置7は、従来一般によく知られており、更に詳細な構成の説明は省略する。
一方、ガス供給部8は、例えば図示しないガスボンベと流量調整弁等から構成され、キャリアガス例えば窒素ガスを、バルブ12及び13を介して、被試験ケーブル1の一端1aに供給する一方、バルブ14を介して湿度計11に直接供給するよう配管されている。又、被試験ケーブル1の他端1bから排出されるキャリアガスは、流量計9及びバルブ15を通じて湿度計11に送り込まれるよう配管されている。流量計9にはこれとは別に、キャリアガスを外部に排出するためのバルブ16が設けられている。又、湿度計11には、流量計9を通じて湿度検査済みのガスを排出する配管が設けられており、ここにも流量計10が接続されている。
以上の構成の本発明の透湿度試験装置は、次のようにして操作する。
先ず、被試験ケーブル1についてそのケーブルの内径を測定する。これはキャリアガスの供給量を適正値に選定するためである。更に、そのケーブル1の両端に第2図R>図に示したように、金属キャップ20を取付ける。この場合のケーブル1の長さは1m以上とし、その長さを記録しておく。後に、単位長さ当たりの透湿度を求めるためである。そしてこの一端1aに、キャリアガスを供給するための配管21を接続し、他端1bにキャリアガスを排出させるための配管22を接続する。
次にガス供給部8を作動させ、バルブ12及びバルブ14を開き、バルブ13とバルブ15を閉じた状態で、キャリアガスを配管に供給する。このキャリアガスは、直接湿度計11及び流量計10を通って外部に排出される。この際、十分な流量で十分な時間キャリアガスを湿度計に供給するようにする。ここで、湿度計の指針が安定したとき、そのキャリアガスの湿度を測定しておく。これはキャリアガスの湿度の初期値を求めるための作業である。
次に、水槽5において温度制御部7を起動させる。温度制御部7は、水の撹拌を開始し、ヒータの電源を入れ、水を温度上昇させる。この水温は例えば60℃程度に設定する。水温が60℃に安定したら、バルブ14を閉じる。そしてバルブ13及びバルブ16を開き、被試験ケーブル1の中にキャリアガスを供給し、これをバルブ16から直接外に排出させる。この状態を、例えば1時間程度続ける。これによって、被試験ケーブル1の内部はキャリアガスの初期の湿度に等しい状態となる。
次に、バルブ16を閉じバルブ15を開く。これによってガス供給部8からキャリアガスがバルブ12,バルブ13及び被試験ケーブル1を通り、流量計9及びバルブ15を通って湿度計11に入り、流量計10を通じて外に排出されるようになる。そしてこのような状態を、例えば24時間継続させる。そして24時間後に、湿度計11の指針を読取る。
以上の作業の結果、この被試験ケーブル1の透湿度は次の式によって求めることができる。
P={(r2−r1)×7.45×10-2}/LP:透湿度(g/100m/週)
r1:キャリアガスの初期の湿度r2:24時間後のキャリアガスの湿度L:被試験ケーブルの長さ ここで、若しキャリアガス中の水分の変化がない場合には、被試験ケーブル1のシースが正常であることになり、一定量以上の水分の変化がある場合には、被試験ケーブル1のシースに何らかの欠陥があることになる。
尚、今説明した試験方法はこの装置の使用例の一例を示すもので、例えばガスの流量、又、水槽内の水の水温、湿度計の読取り時期、その他を種々選択して、被試験ケーブル1の線種毎に最適な試験条件を設定することが可能である。又、必要に応じて加速試験を行ない、正常なケーブルの水に対する耐久性等を試験することも可能である。
(発明の効果)
以上説明した本発明のケーブルの透湿度試験装置によれば、被試験ケーブルを一定条件の下におき、そのシースを透過する水分を湿度計により直接測定するので、その透湿度を定量的に正確に検査することができる。これによつて、その検査の質が高まり、ケーブルの品質向上と信頼性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のケーブルの透湿度試験装置の実施例を示すブロック図、第2図はその被試験ケーブルの側面図、第3図は従来の透湿度試験装置の実施例を示すブロック図である。
1……被試験ケーブル、
5……水槽、
6……水、
7……温度制御部、
8……ガス供給部、
9,10……流量計、
11……湿度計、
12,13,14,15,16……バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】被試験ケーブルを浸漬する水槽と、この水槽に収容された水を所定温度に保持する温度制御部と、前記水槽に浸漬されたケーブルの一端からキャリアガスを供給するガス供給部と、前記ケーブルの他端から排出される前記キャリアガスの流量を測定する流量計と、前記キャリアガスに含まれる水分量を測定する湿度計とを備えたをことを特徴とするケーブルの透湿度試験装置。

【第2図】
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【第3図】
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【第1図】
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【特許番号】第2539466号
【登録日】平成8年(1996)7月8日
【発行日】平成8年(1996)10月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−276862
【出願日】昭和62年(1987)10月30日
【公開番号】特開平1−118745
【公開日】平成1年(1989)5月11日
【出願人】(999999999)昭和電線電纜株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭59−218932(JP,A)
【文献】特開昭58−117434(JP,A)
【文献】特開昭51−132882(JP,A)