説明

ケテン、アルデヒド共重合体を含有する分解性樹脂組成物

【課題】簡単に分解できる分解性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】式(I)
【化1】


(式中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、C(=O)R4基、S(0)p4基、P(=O)(R42基、M(R43基を表し、R3はC1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基を表し、R4はC1〜C20の炭化水素オキシ基、C1〜C20の炭化水素基、C1〜C20の炭化水素チオ基、モノもしくはジC1〜C20の炭化水素アミノ基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子を表し、pは0、1、または2のいずれかを表す。)で表される繰り返し単位を有する分解性重合体とそれ以外の重合体を含む分解性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に分解可能な分解性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子は、熱、光、放射線、化学試薬、微生物などの作用により分解することが知られている。例えば、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを均一にした後、熱硬化性樹脂を硬化させ、更に前記熱可塑性樹脂を除去することにより、連通孔を有する多孔質材料を製造する例があげられる。しかしながら、一般的に熱可塑性樹脂を取り除く温度には高い温度が必要とされており、熱可塑性樹脂を混ぜ込み加工できる重合体には限りがあった。
一方、国際公開第03/069412号パンフレットには、後記化1で表されるケテン、アルデヒド共重合体が酸で分解することが記載されている。
【特許文献1】国際公開第03/069412号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡単に分解できる分解性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケテン、芳香族アルデヒドから容易に合成することが可能な主鎖にエステル結合を有する特定の組み合わせの重合体が、上記課題を解決することができることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)である。
(1)式(I)
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、C(=O)R4基、S(0)p4基、P(=O)(R42基、M(R43基を表し、R3はC1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基を表し、R4はC1〜C20の炭化水素オキシ基、C1〜C20の炭化水素基、C1〜C20の炭化水素チオ基、モノもしくはジC1〜C20の炭化水素アミノ基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子を表し、pは0、1、または2のいずれかを表す。)で表される繰り返し単位を有する分解性重合体とそれ以外の重合体を含む分解性樹脂組成物
(2)式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体以外の重合体が、耐熱性重合体であることを特徴とする(1)記載の分解性樹脂組成物。
(3)式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体以外の重合体が、耐酸性重合体であり、さらに酸または外部刺激により酸が発生する酸発生剤を含有することを特徴とする(1)記載の分解性樹脂組成物。
(4)式(I)で表される化合物中、R3が、式(II)
【化2】

(式中、Xは、酸素原子、硫黄原子を表し、R5は、水素原子、酸または熱で分解・脱離する基を表し、R6は、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基を表し、mは1〜3のいずれかの整数を表し、nは0または1〜3のいずれかの整数を表し、m+n≦5を表し、mが2以上の場合、R5は同一または相異なっていてもよく、nが2以上の場合、R6は同一または相異なっていてもよい。)で表される置換基であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の分解性樹脂組成物。
(5)式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の数平均分子量が、2,000〜50,000であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の分解性樹脂組成物。
(6)式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.01〜3.00の範囲であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の分解性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の分解性樹脂組成物は簡単に分解できるので容易に切断、分解、その除去が可能で操作性に優れる。本発明の分解性樹脂組成物は、比較的低い温度(例えば、150℃〜300℃)でも分解できるので容易に切断、分解、その除去が可能で操作性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる式(I)で表される繰り返し単位中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、C(=O)R4基、S(0)p4基、P(=O)(R42基、M(R43基を表し、R3はC1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基を表し、R4はC1〜C20の炭化水素オキシ基、C1〜C20の炭化水素基、C1〜C20の炭化水素チオ基、モノもしくはジC1〜C20の炭化水素アミノ基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子を表し、pは0、1、または2のいずれかを表す。R1、R2として具体的には、水素原子、フッ素原子、クロ原子、ブロム原子、ヨウ素原子であるハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−ブロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、s−ヘキシル基、s−ヘキシル基、1,1−ジメチル−n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等C1〜C20のアルキル基、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、4−オクテニル基等のC2〜C20のアルケニル基、エチニル基、プロパルギル基、1−メチル−プロピニル基等のC2〜C20のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−メチルアダマンチル基、2−アダマンチル基、2−メチル−2−アダマンチル基、ノルボルニル基等のC3〜C20の脂環式炭化水素基、フェニル基、1−ナフチル基、9−アントラセニル基等のC6〜C20の芳香族炭化水素基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フラニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−ピロロ基、2−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、1−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イル、1,3,4−トリアゾール−2−イル、1,2,3−チアジアゾール−5−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,3,4−テトラゾール−5−イル、ピリミジン−2−イル、ピリミジン−4−イル、ピラジン−2−イル、ピリダジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−6−イル、1,3,5−トリアジン−2−イル、1−ピロリジニル基、1−ピペリジル基、4−モルホリニル基、2−テトラヒドロフラニル基、4−テトラヒドロピラニル基等のヘテロ環基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のC1〜C20のアルコキシカルボニル基、メチルチオカルボニル基等のC1〜C20のアルキルチオカルボニル基、N,N−ジメチルカルバモイル基等の置換または無置換カルバモイル基、メチルスルフェニル基、フェニルスルフェニル基、メチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、メチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、メチルスルフリル基、N,N−ジメチルスルファモイル基等の置換または無置換スルファモイル基、ジメチルホスホリル基、ビスメチルチオホスホニル基、テトラメチルアミノホスホニル基等のホスホニル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリメチルスタンニル基、トリフェニルプランバンニル基等を例示することができる。
【0008】
また、R3はC1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基を表し、具体的には、R1、R2で例示したのと同様の置換基を例示することができる。
以上のように、示したR1〜R3の置換基各々は、適当な炭素上の位置さらに置換基を有することができる。その置換基としては、フッ素原子、クロ原子、ブロム原子、ヨウ素原子であるハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基等の置換フェニル基、プロパルギル基、2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、2−(エトキシメトキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基等の炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、フェノキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、トリメチルシリルオキシ基、t−ブトキシカルボニルメトキシ基等のアルコキシ基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基等のアミノ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基、メチルスルフィニル基、メチルスルホニル基等のアルキル、アリール、もしくはヘテロ環チオ基またはその酸化体、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のC1〜C20のアルコキシカルボニル基、アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、2−ピリジルカルボニル基等のC2〜C20のアシル基、シアノ基、ニトロ基等を例示することができる。
【0009】
これら置換基を有するR1〜R3の具体例としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基等のハロアルキル基、テトラフルオロエテニル基、2,2−ジフロロエテニル基等のハロアルケニル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、フェノキシメチル基等のアルコキシアルキル基、メチルチオメチル基、フェニルチオメチル基等のアルキルチオアルキル基またはアリールチオアルキル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、フェネチル基等のアラルキル基、ベンゾイルメチル基、アセチルメチル基等のアシルアルキル基、シアノメチル基等を例示することができる。
【0010】
また、R3として特に、式(II)で表される置換基を好ましく例示することできる。式(II)で表される置換基中、R5は、水素原子、酸脱離・分解基もしくは熱脱離・分解基を表し、mは1〜3のいずれかの整数を表し、mが2以上の場合、R5は、同一または相異なっていてもよい。ここで、酸脱離・分解基とは酸により脱離及び/又は分解する基を意味し、熱脱離・分解基とは熱により脱離及び/又は分解する基を意味する。具体的には、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、又は下式に示すような置換基を例示することができる。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、kは0又は1を表す。)。さらに、下式
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R14はC1〜C20の無置換又はアルコキシ置換のアルキル基、C5〜C10のシクロアルキル基、又はC6〜C20の無置換又はアルコキシ置換のアリール基を表し、R15は、水素又はC1〜C3のアルキル基を表し、R16は、水素、C1〜C6のアルキル基、又はC1〜C6のアルコキシ基を表す。)で表される基を例示することができ、このような置換基として具体的には、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基等を例示することができる。水酸基、またはアルコキシ基(OR5基)の置換位置は特に制限されないが、メタ位又はパラ位が好ましい。
また、R6は、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基を表し、具体的には、R1、R2で例示した置換基のうち該当する例示と同様の置換基を例示することができる。
式(II)で表される置換基として具体的には、4−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基、4−テトラヒドロピラニルオキシフェニル基、4−フェノキシエトキシフェニル基、4−トリメチルシリルオキシフェニル基、4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル基、4−t−ブトキシカルボニルメトキシフェニル基、2,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジフルオロ−4−t−ブトキシフェニル基、2,6−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、2,6−ジフルオロ−4−t−ブトキシフェニル基、3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジフルオロ−4−t−ブトキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−t−ブトキシフェニル基、2−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシフェニル基、2−トリフルオロメチル−4−t−ブトキシフェニル基、2−トリフルオロメチルー6−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、2−トリフルオロメチル−6−フルオロ−4−t−ブトキシフェニル基、3−トリフルオロメチル−5−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル基、3−トリフルオロメチル−5−フルオロ−4−t−ブトキシフェニル基、4−(1−エトキシエトキシ)フェニル基、4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)フェニル基、4−(2−エトキシメトキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)フェニル基等を例示することができる。
また、R3の好ましい態様として例示した式(II)で表される置換基は、さらにR1とR2の置換基としても好ましく例示することができる。
【0015】
また、R1〜R3で表される各置換基は、式(I)で表される各繰り返し単位全てにおいて同一である必要はなく、適宜2種以上を混合して用いることができる。例えば、R3の置換基として、p−メトキシフェニル基とp−(1−エトキシエトキシ)フェニル基をモル比で1/99〜99/1の比率で混合して用いることができる。
【0016】
本発明における式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体とは、式(I)で表される繰り返し単位のみからなる重合体、並びに式(I)で表される繰り返し単位及び式(I)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位からなる重合体を意味する。
【0017】
式(I)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、具体的には、式(III)で表される繰り返し単位等を例示することができる。
【0018】
【化5】

【0019】
式中、R31、R32、R33は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、C1〜C20直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基またはフッ素化されたアルキル基を表し、R34は、水酸基、またはアルコキシ基で置換されていてもよいC6〜C20の芳香族炭化水素基、またはCO235基を表し、R35は、C1〜C20炭化水素基を表す。
【0020】
この場合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、n−オクチル基等を例示でき、特に炭素数1〜12、とりわけ炭素数1〜10のものが好ましい。なお、フッ素化されたアルキル基は、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものであり、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0021】
34は、水酸基、または水素か置換された水素基で置換されていてもよいC6〜C20の芳香族炭化水素基であり、具体的には、下記式(IV)で表される置換基を例示することができる。
【0022】
【化6】

【0023】
式中、R40は炭素数1〜14の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化されたアルキル基を示し、その具体例は、上記R31で例示した具体例と同様の置換基を例示することができ、Xはフッ素原子、R41はC1〜C20の炭化水素基を表す。a、b、c、dはそれぞれ0または1〜5の整数を表し、a+b+c+dは0〜5いずれかである。
【0024】
41中、C1〜C20の炭化水素基としては、R1で例示した置換基と同様の置換基を例示することができる。酸不安的基もしくは熱不安定基としては種々選定されるが、具体的には下記式(V)、(VI)、もしくは(VII)で表される基、各アルキル基の炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を例示することができる。
【0025】
【化7】

【0026】
式(V)、(VI)においてR51、R54は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
【0027】
52、R53は水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、フッ素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。また、R52とR53、R52とR54、R53とR54はそれぞれ結合して環を形成してもよい。aは0または1〜10のいずれかの整数を表す。
【0028】
より好ましくは、R51〜R54は下記の基であることがよい。R51は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(VII)で示される基を示し、三級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−5−オキソオキソラン−4−イル基等が挙げられる。aは0〜6のいずれかの整数である。
【0029】
52、R53は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。R9は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、4−ヒドロキシブチル基、2−ブトキシエチル基、4−ヒドロキシメチル−1−シクロヘキシルメチル基、2−ヒドロキシエトキシ−2−エチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−メチル基等の置換アルキル基等が例示できる。
【0030】
52とR53、R52とR54、R53とR54はそれぞれ結合して環を形成してもよく、環を形成する場合にはR52、R53、R54はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。
【0031】
上記式(V)としては、具体的にはt−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、t−アミロキシカルボニル基、t−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0032】
上記式(VI)で示される酸もしくは熱不安的のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、1−エトキシ−エチル基、1−メトキシ−プロピル基、1−メトキシ−ブチル基、1−エトキシ−プロピル基、1−n−プロポキシ−エチル基、1−n−プロポキシ−プロピル基、1−n−ブトキシ−ブチル基、1−n−プロポキシ−ブチル基、1−シクロペンチルオキシ−エチル基、1−シクロヘキシルオキシ−エチル基、2−メトキシ−2−プロピル基、2−エトキシ−2−プロピル基等を例示することができる。
【0033】
上記式(VI)で示される酸もしくは熱不安定基のうち環状のもとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。式(4)としては1−エトキシ−エチル基、1−n−ブトキシ−エチル基、1−エトキシ−n−プロピル基が好ましい。
【0034】
式(VII)においてR55、R56、R57は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の
一価炭化水素基であり、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子、フッ素原子等を含んでもよく、R55とR56、R55とR57、R56とR57とは互いに結合して環を結合してもよい。
【0035】
式(VII)に示される三級アルキル基としては、t−ブチル基、1,1−ジエチル−n−プロピル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
【0036】
また、式(VII)で表される三級アルキル基としては、下記に示す官能基を具体的に例示することができる。
【0037】
【化8】

【0038】
ここで、R61、R64は、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基等を例示できる。R62は水素原子、炭素数1〜6のヘテロ原子を介してもよいアルキル基等の一価炭化水素基を示す。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子を挙げることができ、―OH、―OR(Rは炭素数1〜20、特に1〜16のアルキル基、以下同じ)、−O−、−S−。−S(=O)−,−NH2、−NHR、−NR2−、−NH−、−NR−として含有又は介在することができる。
【0039】
63としては、水素原子、又は炭素数1〜20、特に1〜16のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基などを挙げることができ、これらは直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メチル基、ヒドロキシメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、メトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等を例示できる。
【0040】
また、R4の酸不安定基として用いられる各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基としてはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0041】
炭素数4〜20のオキソアルキル基としては、3−オキソシクロヘキシル基、下記式で示される基が挙げられる。
【0042】
【化9】

【0043】
更に、上記R4の酸もしくは熱不安的基は、下記式(VIII)または(IX)で表されるアセタール架橋基であってもよい。
【0044】
【化10】

【0045】
式中、R71、R72は水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基を示す。又は、R71とR72は結合して環を形成していてもよく、環を形成する場合には、R71、R72は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R73は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、eは1〜7の整数、f、gは0または1〜10の整数である。Aは、(e+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0046】
式(VIII)、(IX)に示される架橋形アセタールは、具体的には下記式のものを例示することができる。
【0047】
【化11】

【0048】
式(IV)で表される官能基を有する繰り返し単位(III)として、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、スチルベン、4−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−3−メチル−スチレン、4−tert−ブトキシ−スチレン、4−テトラヒドロピラニルオキシ−スチレン、4−フェノキシエトキシ−スチレン、4−トリメチルシリルオキシ−スチレン、4−トリメチルシリルオキシ−スチレン、4−t−ブトキシカルボニルオキシ−スチレン、4−t−ブトキシカルボニルメトキシ−スチレン、2,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシスチレン、2,3−ジフルオロ−4−t−ブトキシ−スチレン、2,6−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−スチレン、2,6−ジフルオロ−4−t−ブトキシ−スチレン、3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−スチレン、3,5−ジフルオロ−4−t−ブトキシ−スチレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシ−スチレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−t−ブトキシ−スチレン、2−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−スチレン、2−トリフルオロメチル−4−t−ブトキシ−スチレン、2−トリフルオロメチル−6−フルオロ−4−ヒドロキシ−スチレン、2−トリフルオロメチル−6−フルオロ−4−t−ブトキシ−スチレン、3−トリフルオロメチル−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−スチレン、3−トリフルオロメチル−5フルオロ−4−t−ブトキシスチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−スチレン、4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)−スチレン、4−(2−エトキシメトキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)−スチレン、2,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシスチレン、2,3−ジフルオロ−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、2,6−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−α−フルオロ−スチレン、2,6−ジフルオロ−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−α−フルオロ−スチレン、3,5−ジフルオロ−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシ−α−フルオロ−スチレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、2−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−α−フルオロ−スチレン、2−トリフルオロメチル−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、2−トリフルオロメチル−6−フルオロ−4−ヒドロキシ−α−フルオロ−スチレン、2−トリフルオロメチル−6−フルオロ−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、3−トリフルオロメチル−5−フルオロ−4−ヒドロキシ−α−フルオロ−スチレン、3−トリフルオロメチル−5−フルオロ−4−t−ブトキシ−α−フルオロ−スチレン、4−(1−エトキシエトキシ)−α−メチル−スチレン、4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)−α−フルオロ−スチレン、4−(2−エトキシメトキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)−α−フルオロ−スチレン等を例示することができる。
【0049】
さらに、R34が、CO235基の場合において、R35は、R4で例示した置換基と同様の置換基を例示することができる。また、この場合、R31〜R33の組み合わせとして、下記式に示すような組み合わせを好ましく用いることができる。(下記化合物を重合したとき得られる繰り返し単位を表す。)
【0050】
【化12】

【0051】
CO235基を有する繰り返し単位として、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸エチルシクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルアクリレート、5−エトキシペンチルアクリレート、1−メトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、1−メトキシプロピルアクリレート、1−メチル−1−メトキシエチルアクリレート、1−(イソプロポキシ)エチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等のアクリルエステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、4−メトキシブチルメタクリレート、5−メトキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルメタクリレート、1−メトキシエチルメタクリレート、1−メチル−1−メトキシエチルメタクリレート、1−(イソプロポキシ)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、
【0052】
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸アミル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸エチルヘキシル、クロトン酸オクチル、クロトン酸−t−オクチル、クロルエチルクロトネート、2−エトキシエチルクロトネート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルクロトネート、5−エトキシペンチルクロトネート、1−メトキシエチルクロトネート、1−エトキシエチルクロトネート、1−メトキプロピルクロトネート、1−メチル−1−メトキシエチルクロトネート、1−(イソプロポキシ)エチルクロトネート、ベンジルクロトネート、メトキシベンジルクロトネート、フルフリルクロトネート、テトラヒドロフルフリルクロトネート等のクロトン酸エステル類、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジアミル、イタコン酸ジシクロヘキシル、イタコン酸ビス(エチルヘキシル)、イタコン酸ジオクチル、イタコン酸−ジ−t−オクチル、ビス(クロルエチル)イタコネート、ビス(2−エトキシエチル)イタコネート、ビス(2,2−ジメチル−3−エトキシプロピル)イタコネート、ビス(5−エトキシペンチル)イタコネート、ビス(1−メトキシエチル)イタコネート、ビス(1−エトキシエチル)イタコネート、ビス(1−メトキシプロピル)イタコネート、ビス(1−メチル−1−メトキシエチル)イタコネート、ビス(1−(イソプロポキシ)エチル)イタコネート、ジベンジルイタコネート、ビス(メトキシベンジル)イタコネート、ジフルフリルイタコネート、ジテトラヒドロフルフリルイタコネート等のイタコン酸エステル類等から誘導される繰り返し単位を例示することができる。さらに、下記式で表される繰り返し単位を例示することができる。
【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
さらに、式(I)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、式(VII)で表される化合物を例示することができる。
【0057】
【化16】

【0058】
式中、R81、及びR82はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、C(=O)R4基、S(=O)pR4基、P(=O)(R42基、M(R43基を表し、具体的には、R1で例示した置換基と同様の置換基を例示することができる。
【0059】
本発明における式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体は、先に記載したように、式(I)で表される繰り返し単位のみからなる重合体、並びに式(I)で表される繰り返し単位および式(I)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位からなる重合体を意味しており、式(I)で表され繰り返し単位とそれ以外の繰り返し単位の重合形式は特に限定されず、ランダム重合形式、ブロック重合形式、部分ブロック重合形式、交互重合形式のいずれの形式をもとることができる。
また、式(I)で表され繰り返し単位とそれ以外の繰り返し単位の混合比率は、特に限定されず、モル比で99/1〜1/99の範囲で任意に設定することができる。
【0060】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の数平均分子量は、特に制限されないが、分解前、分解後の物性に顕著な差を見出すことを考慮すると、2,000〜50,000の範囲が好ましい。また重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である分子量分布も、特に制限はされないが、1.01〜3.00の範囲、さらには1.01〜1.50の範囲が好ましい。
【0061】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の製造方法として、具体的には、下記式(X)で表されるケテンおよび式(XI)で表されるアルデヒドを、アニオン重合開始剤存在下、アニオン重合を行う方法を例示することができる。
【0062】
【化17】

【0063】
式中、R91はR1、R92はR2、R93はR3にそれぞれ対応しており、アニオン重合を行う上で、障害となる置換基、例えば、活性水素原子を有する置換基、アニオン重合開始剤と反応性を有する置換基等を除外した置換基を表す。
アニオン重合に用いられる溶媒は、重合反応に関与せず、かつ重合体と相溶性のある極性溶媒であれば、特に制限されず、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類の他、アニソール、ヘキサメチルホスホルアミド等のアニオン重合において通常使用される有機溶媒を挙げることができる。また、これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0064】
アニオン重合開始剤として、アルカリ金属又は有機アルカリ金属を例示することができ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ナトリウム−カリウム合金等を例示することができ、有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等を使用することができ、具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルメチルカリウム、1,4−ジリチオ−2−ブテン、1,6−ジリチオヘキサン、ポリスチリルリチウム、クミルカリウム、クミルセシウム等を挙げることができこれらの化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0065】
反応は、通常、アニオン重合開始剤に、(X)および(XI)で表される化合物を添加し、アニオンリビング重合を行う。これらの一連の反応は、アルゴンまたは窒素等の不活性ガス化、もしくは高真空化、−100℃〜0℃、好ましくは、−70℃〜−20℃の範囲で行われる。用いる式(X)で表されるケテンと式(XI)で表されるアルデヒドのモル比は特に制限されないが、99/1〜50/50の範囲で用いるのが好ましい。また、先にも述べたように、式(III)で表されるケテンおよび式(IV)で表されるアルデヒドは、それぞれ一種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
また、R3が式(II)で表される置換である重合体中は、R5が水素原子である化合物は、水素原子以外の官能基を有する化合物中で重合を行い、その官能基を脱離させることにより得ることができ、その際、反応を制御することにより、前記官能基の一部のみを脱離させることもできる。例えば、酸に対して不安定なフェノール性水酸基の保護基を一部または全部脱離させる反応は、前記重合反応で例示した溶媒の他、メタノール、エタノール類のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等の多価アルコール誘導体類、水などの一種単独又は二種以上の混合溶媒の存在下、塩酸、硫酸、塩化水素ガス、臭化水素酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、一般式XHSO4(式中、XはLi、Na、K等のアルカリ金属を表す)で示される重硫酸塩などの酸性試剤を触媒として、通常、室温〜150℃の範囲で行われる。
【0067】
用いる酸性試剤の量は、触媒量で十分であるが、通常各ユニットのモル分率、各ユニットの分子量より重合体全体の平均分子量を求め、重合体の全重量、平均分子量、及びモル分率より各ユニットのモル数を求め、アルコキシ基(OR5基)のモル数に対して0.1〜1当量の範囲である。
【0068】
また、上記のようにして得られた水酸基部分に別の官能基を導入することもできる。前記した操作は、R3の置換基を例としてあげて説明したが、R1、R2上のOR5と同様の置換基においても行うことができる。
【0069】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体は、実施例において述べるように熱により容易に主鎖が開裂する性質を有することから、熱分解性樹脂として用いることができる。なお本発明の分解性樹脂の分解から生じた成分は、次式(XII)で表される構造である。したがって、分解された成分は二重結合等を利用することができる。
【0070】
【化18】

式中、R101はR1、R102はR2、R103はR3にそれぞれ対応しており、R1、R2、R3で例示したのと同様の置換基を例示することができる。
【0071】
本発明において、式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体と混合する、それ以外の重合体としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂等である。
【0072】
本発明の分解性樹脂を混ぜ込む樹脂は、好ましくは、耐熱性樹脂であり、それは式(I)で示される樹脂の分解温度以上であれば特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂などの300℃付近の温度に加熱しても一時的にでも形状保持が可能な粘度を有するものが好ましい。
【0073】
フッ素樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロペン共重合体、ポリクロルトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル重合体などが挙げられる。
【0074】
本発明の分解性樹脂に混ぜ込む樹脂はとしては熱硬化性樹脂でもよく、その種類は特に限定されないが、通常100℃以上で硬化するものが好ましく用いられる。また、分子内にベンゼン環やヘテロ環を有するもの、又は、熱処理によりこれらの環を生成するものが好ましく用いられる。
【0075】
具体的には、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ユリア−メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグ人樹脂、ウレタン樹脂、及び、これらを構造の中に含む重合物のうち、少なくとも一種以上を含むものが挙げられる。
【0076】
分解性樹脂は、約125℃〜400℃、好ましくは125℃〜300℃の温度において熱分解する樹脂であり、これら分解性樹脂は、固形分として耐熱性重合体との合計量に対し、約5〜50体積%の割合で用いられる。
【0077】
これらの熱分解性樹脂は、200℃以上の焼成では低分子物質に分解するため、焼成により残存物はほとんど残らない。
【0078】
式(I)で表される繰り返し単位を有する分解性鎖含有重合体は、酸により容易に主鎖が開裂する酸分解性鎖を有することから、酸または外部の刺激により酸を発生する化合物が共存する組成物においては、酸分解性組成物として用いることができる。
【0079】
本発明に用いられる、酸は、酸性化合物であれば特に制限されず、具体的には、塩酸、硫酸、燐酸、オキシ塩化燐、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸・ピリジニウム塩、クロロスルホン酸、トリクロロ酢酸、安息香酸等を例示することができる。
【0080】
外部の刺激により酸を発生する化合物において、外部の刺激として具体的には、熱、圧力、感放射線等を例示することができ、特に上記組成物をレジスト用組成物として用いる場合には、感放射線照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」と略記する。)を好ましく用いることができる。式(I)で表される繰り返し単位を有する分解性鎖含有重合体および酸発生剤は、溶剤に溶解された状態で使用されるのが一般的である。
【0081】
本発明に用いられる酸発生剤としては、感放射線照射により酸を発生し得る化合物であり、特に制限されないが、好ましい酸発生剤としては、具体的には、下記式(XIII)、式(XIV)、式(XV)および式(XVI)で示される化合物等を例示することができる。
【0082】
【化19】

【0083】
(式中、R100及びR101は各々独立して炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、またはアラルキル基を表し、Wはスルホニル基又はカルボニル基を表す。)
【0084】
【化20】

【0085】
(式中、R103及びR104は各々独立して水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R105は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アラルキル基、又は置換されていても良いフェニル基を表し、Vはスルホニル基またはカルボニル基を表す。)
【0086】
【化21】

【0087】
(式中、R106、R107及びR108は各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はt−ブトキシカルボニルオキシ基を表し、R109は炭素数1〜8の含フッ素アルキル基、置換されていても良いフェニル基、又は10−カンファー基を表し、Yは硫黄原子またはヨウ素原子を表し、Yがヨウ素原子の場合、kは0を表し、硫黄の場合kは1を表す。)
【0088】
【化22】

【0089】
(式中、R110は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、又は10−カンファー基を表す。)
【0090】
【化23】

【0091】
(式中、R111およびR112は各々独立して水素原子、メチル基、エチル基を表し、又、R111とR112とで芳香環基又は不飽和結合を有する有橋脂環炭化水素基を形成してもよく、R113は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基、置換されていてもよいフェニル基、又は10−カンファー基を表す。)
【0092】
好ましい酸発生剤として具体的には、式(XII)で示される酸発生剤としては、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1−ジアゾ−1−シクロヘキシルスルホニル−3,3−ジメチルブタン−2−オン、1−ジアゾ−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン等を例示することができる。
【0093】
式(XIII)で示される酸発生剤として具体的には、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−クロルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、1−p−トルエンスルホニル−1−シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1−ジアゾ−1−(p−トルエンスルホニル)−3,3−ジメチルブタン−2−オン等を例示することができる。
【0094】
式(XIV)で示される酸発生剤として具体的には、トリフェニルスルホニウム・トリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム・パーフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム・パーフルオロオクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム・p−トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウム・10−カンファースルホネート、ジフェニル−p−トリルスルホニウム・トリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−p−トリルスルホニウム・パーフルオロブタンスルホネート、ジフェニル−p−トリルスルホニウム・10−カンファースルネート、ジフェニル−p−tert−ブチルフェニルスルホニウム・トリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブチルフェニルスルホニウム・パーフルオロブタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブチルフェニルスルホニウム・パーフルオロオクタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブチルフェニルスルホニウム・p−トルエンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブチルフェニルスルホニウム・10−カンファースルホネート、ジフェニル−p−tert−ブチルフェニルスルホニウム・p−フルオロベンゼンスルホネート、ジフェニル−p−シクロヘキシルフェニルスルホニウム・トリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−p−シクロヘキシルフェニルスルホニウム・パーフルオロブタンスルホネート、ジフェニル−p−シクロヘキシルフェニルスルホニウム・パーフルオロオクタンスルホネート、ジフェニル−p−シクロヘキシルフェニルスルホニウム・p−トルエンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブトキシフェニルスルホニウム・トリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブトキシフェニルスルホニウム・パーフルオロブタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブトキシフェニルスルホニウム・パーフルオロブタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニルスルホニウム・パーフルオロオクタンスルホネート、ジフェニル−p−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニルスルホニウム・10−カンファースルホネート、ジフェニル−p−tert−ブトキシカルボニルオキシフェニルスルホニウム・p−トルエンスルホネート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルヨードニウム・10−カンファースルホネート等を例示することができる。
【0095】
式(XV)で示される酸発生剤として具体的には、1,2,3−トリス−メタンスルホニルオキシベンゼン、1,2,3−トリス−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン、1,2,3−トリス−パーフルオロオクタンスルホニルオキシベンゼン、1,2,3−トリス−p−トルエンスルホニルオキシベンゼン、1,2,3−トリス−10−カンファースルホニルオキシベンゼン、1,2,3−トリス−トリフルオロアセチルオキシベンゼン、1,2,4−トリス−メタンスルホニルオキシベンゼン、1,2,4−トリス−トリフルオロメタンスルホニルオキシベンゼン、1,2,4−トリス−3−トリス−パーフルオロオクタンスルホニルオキシベンゼン、1,2,4−トリス−p−トルエンスルホニルオキシベンゼン、1,2,4−トリス−パーフルオロブタンスルホニルオキシベンゼン等を例示することができる。
【0096】
式(XVI)で示される酸発生剤としては、例えば、コハク酸イミド・トリフルオロメタンスルホネート、コハク酸イミド・パーフルオロブタンスルホネート、コハク酸イミド・パーフルオロオクタンスルホネート、コハク酸イミド・p−トルエンスルホネート、コハク酸イミド・10−カンファースルホネート、コハク酸イミド・メタンスルホネート、コハク酸イミド・1−メチルエタンスルホネート、コハク酸イミド・ベンゼンスルホネート、ジメチルコハク酸イミド・トリフルオロメタンスルホネート、ジメチルコハク酸イミド・パーフルオロオクタンスルホネート、ジメチルコハク酸イミド・p−トルエンスルホネート、フタル酸イミド・トリフルオロメタンスルホネート、フタル酸イミド・パーフルオロブタンスルホネート、フタル酸イミド・パーフルオロブタンスルホネート、フタル酸イミド・パーフルオロオクタンスルホネート、フタル酸イミド・p−トルエンスルホネート、フタル酸イミド・10−カンファースルホネート、フタル酸イミド、メタンスルホネート、フタル酸イミド・ベンゼンスルホネート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・トリフルオロメタンスルホネート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・トリフルオロブタンスルホネート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・トリフルオロオクタンスルホネート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・p−トルエンスルホネート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・10−カンファースルホネート、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド・メタンスルホネート等を例示することができる。
【0097】
また、2種以上の酸発生剤を併用する場合の酸発生剤の構成比率としては、式(XII)で示される酸発生剤100重量部に対して式(XIII)、式(XIV)又は式(XV)で示される酸発生剤は1〜70重量部、好ましくは10〜50重量部が挙げられる。
【0098】
また、従来から用いられている種々のトリフェニルスルホニウム塩及びジフェニルヨードニウム塩(これ等のオニウム塩の陰イオンとして、PF6-、AsF6-、BF4-等が挙げられる。)及びトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン/トリエタノールアミン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン/アセトアミド等を単独もしくは2種以上混合して、または前記した式(XII)〜(XVI)デ表される化合物を混合して用いることができる。
【0099】
本発明の分解性鎖含有重合体組成物において、式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体と酸発生剤の混合比としては、該重合体100重量部に対して酸発生剤は、1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部である。また、本発明に係る分解性鎖含有重合体組成物中の溶剤の量としては、該重合体と、酸発生剤及びその他添加物とを溶解した結果、得られる重合体組成物を基板上に塗布する際に支障をきたさない量であれば特に限定されないが、通常、該重合体1重量部に対して1〜20重量部、好ましくは1.5〜10重量部である。
【0100】
本発明の分解性鎖含有重合体組成物で用いられる溶剤としては、式(I)で表される繰り返し単位を有する熱または酸分解性鎖含有重合体、または、酸発生剤および必要に応じて使用される紫外線吸収剤、酸性化合物や界面活性剤等の添加物とを溶解可能なものであれば特に制限されないが、通常は成膜性が良好なものが好ましい。具体的には、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸2−エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシブタン酸エチル、3−ヒドロキシブタン酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ―ブチロラクトン、γ―プロピオラクトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、トルエン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、上記溶剤は通常単独又は2種以上組み合わせて使用される。
【0101】
重合体および分解性重合体は、それぞれ水または有機溶剤を分散剤とする分散液、または有機溶媒中の溶液として混合してもよい。分散液は、水性エマルジョンまたはラテックスでもよい。
【0102】
本発明の重合体組成物は、式(I)で表される繰り返し単位を有する分解性鎖含有重合体とその他の重合体及び溶剤を主たる構成成分とするが、この他に、酸発生剤、塩基性化合物、紫外線吸収剤や界面活性剤、可塑剤を使用してもよい。
【0103】
本発明の重合体組成物は、溶媒を揮発させ薄膜を形成して用いてもよい。例えば、以下のごとく薄膜を形成することができる。本発明の重合体と溶剤からなる組成物を半導体基板上に厚さが0.1〜2μm程度となるように回転塗布し、これを例えばオーブン中で70〜150℃で1〜30分間、若しくはホットプレート上で70〜100℃で1〜2分間プリベークすることにより良好な薄膜が形成される。
【0104】
本発明の重合体のうち式(I)で表される分解性鎖を分解した後は、分解物を現像することにより、もしくは加熱し分解物を揮発させることにより取り除くことができる。
【0105】
上記現像液としては、非分解性ユニットは溶解せず、式(I)で表される分解性鎖が分解して発生する低分子量化合物を溶解するものであれば特に限定されないが、好ましくはNaOH、KOH等の無機アルカリ類を含む水溶液、TMAH、コリン、トリエタノールアミン等の有機アミン類を含む水溶液、アルコール等を例示することができる。
【0106】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0107】
本発明の実施例に使用した試薬の精製法について以下に述べる。
ケテン類は、酸クロライドにトリエチルアミンをTHF中室温で反応後、減圧下で蒸留した。アルデヒド類は、CaH2を添加後、減圧下で蒸留した。
n−ブチルリチウム(n−BuLi)は、市販のn−BuLiヘキサン溶液(1.6mol/l)をそのまま用いた。テトラヒドロフランは、市販の脱水溶媒を使用した。
【0108】
合成例1(エチルフェニルケテン(EPK)の合成)
窒素雰囲気下において、トリエチルアミン91g(0.9モル)のテトラヒドロフラン(THF)混合液に、2−フェニルブチリルクロライド55g(0.3モル)のTHF溶液を滴下した。一時間後析出したトリエチルアミン・塩酸塩をろ別除去した後、ろ液を減圧蒸留して、EPKを得た(60〜70℃/4mmHg)。収量30g(収率70%)。
【0109】
合成例2重合体(a)の合成(EPKと4−メトキシベンズアルデヒド(MBA)の共重合体:式(I)でR1=エチル基、R2=フェニル基、R3=メトキシ基である重合体)
窒素雰囲気下、塩化リチウム0.64g(15ミリモル)THF(100ml)溶液を−40℃まで冷却した。更にMBA4.4g(32ミリモル)とEPK4.4g(30ミリモル)を添加した後、n−BuLiのヘキサン溶液0.31ml(0.5ミリモル)を加え、−40℃で30分間反応を継続した。メタノールを加えて反応を停止した後、大量のメタノールに加えて再沈殿し、生じた沈殿をろ過、減圧乾燥することにより、白色粉末状の重合体(a)を8.5g得た。重合体(a)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す)により分析したところ、Mn=4700、Mw/Mn=1.16の単分散重合体であった。
【0110】
合成例3(4−(1’−エトキシエトキシ)ベンズアルデヒド(EEBA)の合成
窒素雰囲気下において、4−ヒドロキシベンズアルデヒド100g(0.82モル)をTHF(500ml)に溶解後、ビニルエチルエーテル236g(3.3モル)、4M HClジオキサン溶液4ml(16mmol)を加え、室温で一夜攪拌した。Na2CO3水溶液を加え中和後、分液し、上層をpH=7になるまで水洗した。有機層をMgSO4で脱水濾過後、減圧濃縮した。得られた残渣を減圧蒸留しEEBA(83〜85℃、0.04mmHg)を無色油状物質として得た。収量129g(収率81%)。
【0111】
合成例4重合体(b)の合成(EPKとEEBAの共重合体:式(I)でR1=エチル基、R2=フェニル基、R3=1−エトキシエトキシ基である重合体)
MBAをEEBAに代えた以外は合成例2と同様に処理して、白色粉末状の重合体(b)を得た。重合体(b)をGPC分析したところ、Mn=4800、Mw/Mn=1.25の単分散重合体であった。
【0112】
合成例5(4−(t−ブトキシカルボニルオキシ)ベンズアルデヒド(BOCBA)の合成)
窒素雰囲気下において、4−ヒドロキシベンズアルデヒド40g(0.33モル)をTHF(150ml)に溶解後、ジ−t−ブチルジカーボネート99g(1.4モル)およびN,N−ジメチルアミノピリジン50mg(0.41ミリモル)を加え、室温で一夜攪拌した。Na2CO3水溶液を加え中和後、分液し、上層をpH=7になるまで水洗した。有機層をMgSO4で脱水濾過後、ろ液を減圧濃縮した。メタノールから再結晶し、BOCBAを無色固体として得た。収量63g(収率87%)。
【0113】
合成例6重合体(c)の合成(EPKとBOCBAの共重合体:式(I)でR1=エチル基、R2=フェニル基、R3=t−ブトキシカルボニルオキシ基である重合体)
MBAをBOCBAに代えた以外は合成例2と同様にして、白色粉末状の重合体(c)を得た。重合体(c)をGPC分析したところ、Mn=5000、Mw/Mn=1.20の単分散重合体であった。
【0114】
合成例7重合体(d)の合成(重合体(b)のアセタール基脱離体:式(I)でR1=エチル基、R2=フェニル基、R3=水酸基である重合体)
重合体(b)5gをTHF10mlに溶解後、濃塩酸0.1mlを加えて室温で一時間攪拌した。半応液を大量のメタノールに加えて再沈殿し、生じた沈殿を濾過、減圧乾燥して白色粉末状の重合体(d)を4g得た。重合体(d)をGPC分析したところ、Mn=3200、Mw/Mn=1.25の単分散重合体であり、NMR分析よりアセタール基が完全に脱離しフェノール基に変換したことを確認した。
【0115】
合成例8重合体(e)の合成(EPKと4−メチルチオベンズアルデヒド(SBA)の共重合体:式(I)でR1=エチル基、R2=フェニル基、R3=4−メチルチオ基である重合体)
MBAをSBAに代えた以外は合成例2と同様にして、白色粉末状の重合体(e)を得た。重合体(e)をGPC分析したところ、Mn=3600、Mw/Mn=1.18の単分散重合体であった。
【0116】
合成例9重合体(f)の合成(EPKとp−t−ブトキシベンズアルデヒド(BUBA)の共重合体:式(I)でR1=エチル基、R2=フェニル基、R3=t−ブトキシ基である重合体)
MBAをBUBAに代えた以外は合成例2と同様にして、白色粉末状の重合体(f)を得た。重合体(f)をGPC分析したところ、Mn=5200、Mw/Mn=1.28の単分散重合体であった。
【0117】
参考例1重合体(g)の合成
ポリ(p−ヒドロキシスチレン)[日本曹達製VP−8000、Mn=10000、Mw/Mn=1.13]50gを窒素雰囲気下で酢酸エチル200mlに溶解後、エチルビニルエーテル58gと濃塩酸0.3mlを加えて、室温で1日攪拌した。次いで、反応液に炭酸ナトリウムを加えて分液後、中性になるまで洗浄を繰り返した。有機層を減圧濃縮後、大量のメタノール中に投入して重合体を析出させ、濾過、洗浄後、真空乾燥して重合体(g)を得た。重合体(g)のGPC分析を行ったところ、Mn=13500、Mw/Mn=1.13であった。
実施例1
【0118】
重合体(b)100mgと重合体(g)100mgとをTHF2mlに溶解し、キャストし約10μmの膜を得た。
【0119】
試験例1
重合体(b)100mgをTHF2mlに溶解し、キャストし約10μmの膜を得た。得られた膜を190℃で15分間加熱した。分解前のGPCチャート(図1)および分解後のGPCを(図2)に示す。その結果、重合体(b)は、Mp=265(ポリスチレン換算)を示す低分子量化合物にまでほぼ完全に低分子量化した。さらにこの分解物のLC/MS(化学イオン化法)測定を行ったところ、主生成物は、M+1=224を示した。この主生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)で分離し、1H−NMR測定を行った。その結果、この重合体の分解物は、4−(2−フェニルブテニル)フェノールのE、Z混合物であることを確認した。
【0120】
試験例2
重合体(a)〜(g)のTg−DTA測定を行った。測定は、株式会社リガク社製(TG8120)装置を用い、測定条件を昇温速度;20℃/min、窒素流量;500mlとして行った。その分析結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1の結果から、重合体(a)〜(e)の熱分解性樹脂は、一般的な樹脂(参考例1)と比較し、低い温度で分解させることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の分解性樹脂組成物は、重合体組成物を選択的に除去することができそれにより微細加工などを行うことができるので産業上の利用可能性は広い。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】合成例4における重合体(b)の分解前のGPCチャート
【図2】合成例4における重合体(b)の熱分解後のGPCチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、C(=O)R4基、S(0)p4基、P(=O)(R42基、M(R43基を表し、R3はC1〜C20の炭化水素基、ヘテロ環基を表し、R4はC1〜C20の炭化水素オキシ基、C1〜C20の炭化水素基、C1〜C20の炭化水素チオ基、モノもしくはジC1〜C20の炭化水素アミノ基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、鉛原子を表し、pは0、1、または2のいずれかを表す。)で表される繰り返し単位を有する分解性重合体とそれ以外の重合体を含む分解性樹脂組成物。
【請求項2】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体以外の重合体が、耐熱性重合体であることを特徴とする請求項1記載の分解性樹脂組成物。
【請求項3】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体以外の重合体が、耐酸性重合体であり、さらに酸または外部刺激により酸が発生する酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1記載の分解性樹脂組成物。
【請求項4】
式(I)で表される化合物中、R3が、式(II)
【化2】

(式中、Xは、酸素原子、硫黄原子を表し、R5は、水素原子、酸または熱で分解・脱離する基を表し、R6は、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基を表し、mは1〜3のいずれかの整数を表し、nは0または1〜3のいずれかの整数を表し、m+n≦5を表し、mが2以上の場合、R5は同一または相異なっていてもよく、nが2以上の場合、R6は同一または相異なっていてもよい。)で表される置換基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分解性樹脂組成物。
【請求項5】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の数平均分子量が、2,000〜50,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分解性樹脂組成物。
【請求項6】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.01〜3.00の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分解性樹脂組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−206651(P2006−206651A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17309(P2005−17309)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】