説明

ケトオキシムエステル系光開始剤

本発明は、ケトオキシムエステル系化合物に関し、特に光硬化材料に用いるためのケトオキシムエステル系光開始剤に関する。前記ケトオキシムエステル系光開始剤は、一般式:


(ただし、R1の構造は


であり、
nは1〜4の整数であり、mは1〜6の整数であり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、フェニル、置換フェニル、ベンジル基又は置換ベンジル基を表し、R3はジフェニルチオエーテル基、置換ジフェニルチオエーテル基、カルバゾール基又は置換カルバゾール基を表す。)
で表される。
前記ケトオキシムエステル系化合物を用いることにより、従来のOXE-1ケトオキシムエステル系光開始剤に存在する、応用性能があまり良くなく、熱安定性が悪いという問題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトオキシムエステル系化合物に関し、特に、光硬化性材料に用いるためのケトオキシムエステル系光開始剤に関する。
【背景技術】
【0002】
主に不飽和樹脂及びそのモノマー材料からなる光硬化性材料(光硬化性コーティング材、インク、フォトレジスト、RGB及びBM)には、紫外線、X線又はレーザー光の照射下で重合硬化反応を行うために、光開始剤又は増感剤が添加される必要がある。これらの添加された光開始剤又は増感剤は、一定波長の紫外線、X線又はレーザー光の照射下で、活性化基を生成し、光硬化性材料中の不飽和基を励起させて重合反応を行わせ、光硬化性材料の硬化を引き起こすことができる。
【0003】
光硬化性材料において、広く応用されている伝統の光開始剤として、安息香誘導物、ビベンゾイルケタール系、α、α−ジアルコキシアセトフェノン系、α−ヒドロキシアルキルベンゾフェノン系、α−アミノアルキル基ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン/アミン系、ミヒラーケトン、チオキサントン/アミン系、アミン促進剤、芳香ジアゾ塩、アリールヨードニウム塩とスルホニウム塩、フェロセンとチタノセン系、ヘキサアリールジイミダゾール系、トリアジン系及び伝統オキシムエステル系などが挙げられる。これらの伝統の光開始剤には、感度が低く(重合率と変換率が低い)、溶解性が悪く(透明度が低く、フォトリソグラフィー残渣が多い)、酸素ガスの光硬化に対する影響が大きく、且つ貯蔵安定性が悪い、などの欠点が多少存在しているので、これら光開始剤及び感光材料の使用が極めて大きく制限されており、感光材料の性能にも大きい影響を与えている。特に、次世代の大型スクリーンLCD主部品BMとCFの製造要求を満たすことができない。新規のオキシムエステル系光開始剤の出現は、上述問題を大きく解決した。
【0004】
オキシムエステル系化合物の光化学特性は、最初に文献A. Wemer and A. Piguet, Ber. Dtsch. Chem. Ges. 1904, 37, 4295に記載されており、オキシムエステル系化合物の光開始剤としての応用は、最初に文献G. A. Delzenne, U. Laridon and H. Peeters, European Polymer Journal, 1970, 6, 933-943に記載されており、商品名としてはDE-OS 179508とAgfa-Gevaert AGである。既に広く商業応用されたオキシムエステル系光開始剤製品はQuantacure PDOであり、その構造式は以下のように表される:
【0005】
【化1】

【0006】
これらの伝統のオキシムエステル系光開始剤は、光開始活性が高いけれど、熱安定性が悪いので、徐々に工業応用から淘汰されてしまった。オキシムエステル系光開始剤の“復活”は、最初に文献R. Mallivia et al, J. Photochem. Photobiol. A: Chemistry 2001, 138, 193と文献L. Lavalee et al, J. Photochem. Photobiol. A: Chemistry 2002, 151, 27に記載されており、オキシムエステル化合物中に大きい共役系と強い分子内電子転移特性を有するジフェニルチオエーテル又はカルバゾール基が導入することで、これらのオキシムエステル化合物の安定性と感光活性を極大に向上させた。現在広く応用されている代表性を有するオキシムエステル系光開始剤はOXE-1とOXE-2であり、それらの構造式は以下のように表される:
【0007】
【化2】

【0008】
その中で、OXE-1は最も典型的なケトオキシムエステル系光開始剤である。これらは主に大型スクリーンLCD表示装置のBM、RGBの製造に用いられており、価格が高く、構造式が国外会社の特許出願である特許公開番号CN99108598とCN02811675に開示されている。前記開示された構造式の合成方法は、煩雑で、合成コストが高い。また、これら構造の製品には、応用性能があまり良くなく、熱安定性が悪いという問題が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許公開番号CN99108598
【特許文献2】特許公開番号CN02811675
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A. Wemer and A. Piguet, Ber. Dtsch. Chem. Ges. 1904, 37, 4295
【非特許文献2】G. A. Delzenne, U. Laridon and H. Peeters, European Polymer Journal, 1970, 6, 933-943
【非特許文献3】R. Mallivia et al, J. Photochem. Photobiol. A: Chemistry 2001, 138, 193
【非特許文献4】L. Lavalee et al, J. Photochem. Photobiol. A: Chemistry 2002, 151, 27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
背景技術に記載の従来のOXE-1ケトオキシムエステル系光開始剤に存在している、応用性能があまり良くなく且つ熱安定性が悪いという欠陥を克服するために、本発明は、熱安定性に優れるケトオキシムエステル系光開始剤およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
用いる技術案は以下の通りである。
一般式:
【0013】
【化3】

【0014】
(ただし、R1の構造は
【0015】
【化4】

【0016】
であり、nは1〜4の整数であり、mは1〜6の整数であり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基又は置換ベンジル基を表し、R3はジフェニルチオエーテル基、置換ジフェニルチオエーテル基、カルバゾール基又は置換カルバゾール基を表す。)で表されるケトオキシムエステル系光開始剤。
【0017】
本発明の前記ケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法は、
a.ジフェニルチオエーテル、置換ジフェニルチオエーテル、カルバゾール
又は置換カルバゾールを出発原料とし、該出発原料とR1基を有するアシルハライドとを、三塩化アルミニウム又は塩化亜鉛の作用で、フリーデル−クラフツ反応させて、ケトオキシムエステル系光開始剤の中間体Iを合成する、中間体Iの合成工程と、
b.引き続き、中間体Iと亜硝酸イソアミルとを、塩化水素又はナトリウムアルコラート又はカリウムアルコラートの触媒作用で、酸化反応させて、ヒドロキシルアミン化合物である中間体IIを生成する、中間体IIの合成工程と、
c、中間体IIとR2を有するアシルハライド又は無水物とをエステル化させて、ケトオキシムエステル系光開始剤製品を合成する、ケトオキシムエステル系光開始剤の合成工程と、を有し、その反応は以下の通りである:
【0018】
【化5】

【0019】
本発明に記載のR1基を有するアシルハライドの構造が、
【0020】
【化6】

【0021】
であり、前記中間体Iの構造が、
【0022】
【化7】

【0023】
であり、前記中間体IIの構造が
【0024】
【化8】

【0025】
であり、前記R2基を有するアシルハライドの構造が
【0026】
【化9】

【0027】
であり、ただし、R1の構造は
【0028】
【化10】

【0029】
であり、ここで、nは1〜4の整数であり、mは1〜6の整数であり、 R3はジフェニルチオエーテル基、置換ジフェニルチオエーテル基、カルバゾール基又は置換カルバゾール基を表す。
【0030】
本発明における前記工程aの中間体Iの合成は、出発原料と、AlCl3と有機溶剤Aとを攪拌・混合し、その中にアルゴンガスを流して保護し、氷バスで冷却して、温度が0℃まで低下したときに、R1基を有するアシルハライドと有機溶液Aの混合溶液を滴下し、温度を0〜10℃の範囲に調整して、1.5〜2hをかけて滴下した後、温度を5〜35℃に上昇して、引き続き1.5〜3h攪拌し、反応液を排出し、後処理を行って、白色の固体中間体Iを得ることによって行われ、且つ出発原料と、AlCl3とR 1基を有するアシルハライドとの最適モル比が1:1:1である。
【0031】
本発明における前記有機溶剤Aが、ジクロロエタン、ジクロロメタン又は四塩化炭素である。
【0032】
本発明における前記工程bの中間体IIの合成工程において、工程aで生成した中間体Iと、有機溶剤Bと亜硝酸イソアミルとの混合溶液中に、塩化水素又はナトリウムアルコラート又はカリウムアルコラートを加え、常温で引き続いて攪拌しながら5h反応した後、後処理を経て、白色の粉末状固体中間体IIを合成し、且つ中間体Iと亜硝酸イソアミルとの最適モル比が1:1.6である。
【0033】
本発明における前記有機溶剤Bが、ジクロロエタン又はテトラヒドロフランであり、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0034】
本発明における前記工程cのケトオキシムエステル系光開始剤の合成は、中間体IIと、ジクロロエタンとトリエチルアミンとを攪拌・混合し、氷バスで冷却して、温度が0℃となる時に、R2基を有するアシルハライドとジクロロエタンとからなる溶液を滴下し始め、 1〜1.5hをかけて滴下し、続いて1〜2h攪拌した後、冷水を滴下し始めて、分液し、5%NaHCO3溶液で一回洗い、更に中性までに水洗した後、希塩酸溶液で一回洗い、更に三回水洗し、無水MgSO4で乾燥し、溶剤を回転蒸発させて、粘稠状液体が得られ、該粘稠状液体にメタノールを加え、白色の固体製品を析出させることによって行われる。
【0035】
本発明に記載の構造式において、R1がシクロペンチルメチレン基であり、R3が6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール基であり、R2がフェニル基であり、その構造式が
【0036】
【化11】

【0037】
で表され、紫外線吸収スペクトルにおいて365nm波長に強い吸収ピークが存在し、LED冷光源用の光開始剤として用いられる。
【0038】
本発明の構造式は、さらに、対称性又は非対称性構造のポリケトオキシムエステル構造、即ちR3基に置換基とケトオキシムエステル構造とを有するポリケトオキシムエステル構造に適用される。
【0039】
本発明のケトオキシムエステル系化合物は、質量濃度が同じである場合に、その紫外線吸収スペクトルがOXE-1の紫外線吸収スペクトルと同じ又は類似であるけれど、熱安定性がOXE-1に比べて著しく優れる。本発明のケトオキシムエステル系化合物の部分的物質構造は、紫外線吸収スペクトルにおいてOXE-1に比べて著しい赤シフトがあり、365nmにおいて比較的に大きい吸収があるので、励起光源としてLED冷光源を用いることができ、本発明の応用性能(感光度、熱安定性、溶解性)は従来のOXE-1の応用性能より優れる。
【0040】
以下に、図面と実施例に基づき、さらに本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の1−(6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール-3-イル)−(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステル、1−(4-フェニルチオフェニル)−(3−シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルと、従来の1-(4-フェニルチオフェニル)-N-オクタン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルとの紫外線吸収線比較図であり、その中で、Aは1-(4-フェニルチオフェニル)-N-オクタン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの紫外線吸収線であり、Bは1−(4-フェニルチオフェニル)−(3−シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの紫外線吸収線であり、Cは1−(6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール-3-イル)−(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの紫外線吸収線である。
【図2】1−(4-フェニルチオフェニル)−(3−シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの核磁気共鳴スペクトル図である。
【図3】1−(6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール-3-)−(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの核磁気共鳴スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[実施例1]
1−(4-フェニルチオフェニル)−(3−シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの製造方法
工程1:1-(4-フェニルチオフェニル)-(3-シクロペンチル)-プロパン−1−オンの製造
反応の操作:
500mlの四口フラスコ中に0.2molのジフェニルチオエーテル、0.22mol のAlCl3(細かく砕く)、150mlのジクロロエタンを投入して、攪拌し、アルゴンガスを流して保護し、氷バスで冷却して温度が0℃までに低下した時に、0.22molのシクロペンチル塩化プロピオニルと42g ジクロロエタンのシクロペンチル塩化プロピオニル溶液を滴下し始め、温度を10℃以下に調整して、約1.5hをかけて添加した。温度を15℃に上昇して、引き続き2h攪拌した後、反応液を排出した。
【0043】
後処理:
攪拌下で、400g氷と65ml濃塩酸とを配合した希塩酸中に反応液を徐々に投入し、分液漏斗で下層を分液し、上層を50mlのジクロロエタンで抽出した後、抽出液と下層液とを合わせる。その後、10g NaHCO3と200g水とを配合したNaHCO3溶液で洗浄し、更にpH値が中性を呈するまでに200ml水で3回洗浄し、60g無水MgSO4で乾燥して水分を除去した後、回転蒸発によりジクロロエタンを蒸発させる。蒸発が終わった後、回転蒸発瓶中の粗製品は固体粉末状を呈す。該粗製品を常圧で蒸された石油エーテル200ml中に投入し、吸引ろ過を行い、更に150ml無水エタノールに投入して、還流するまでに加熱する。引き続き、室温までに冷却し、更に氷で2h凍った後、吸引ろ過して、白色のシート状固体である1-(4-フェニルチオフェニル)-(3-シクロペンチル)-プロパン−1−オンを得た。その後、50℃のオーブン中で2h乾燥して、製品53.4gを得た。収率が86%であり、純度が98%より大きい。
【0044】
【化12】

【0045】
反応工程2: 1-(4-フェニルチオフェニル)-(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-オキシムの製造プロセス
操作:
500mlの四口フラスコ中に工程一で得られた産物40gと、テトラヒドロフラン400gと、濃塩酸200gと、亜硝酸イソアミル24.2gとを投入して、常温で5h引き続いて攪拌した後、反応液を排出した。反応過程において大量の生成物が析出した。
【0046】
後処理:
反応液を大ビーカーに入れ、水1000mlを加えて攪拌した後、一夜静置・分層して、黄色の粘稠状液体を得た。ジクロロエタンで抽出し、50g無水MgSO4を加入して乾燥した後、吸引ろ過を行い、更に、ろ液を回転蒸発させて、溶剤を除去して、回転瓶中に油状粘稠物が得られた。続いて、該粘稠物を石油エーテル150mlに入れ、攪拌・析出し、吸引ろ過を行って、白色粉末状固体を得た。その後、60℃で5h乾燥して、製品29.4gを得た。収率が67.2%であり、純度が98%より大きい。
【0047】
【化13】

【0048】
反応工程3:1−(4-フェニルチオフェニル)−(3−シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの製造方法
1000mlの四口フラスコ中に工程二で得られた産物33gと、ジクロロエタン350mlと、トリエチルアミン12.7gとを投入して、攪拌し、氷バスで冷却して、温度が0℃となる時にベンゾイルクロリド15.7gとジクロロエタン15gからなる溶液を滴下し始め、約1.5hをかけて滴下した。引き続いて1h攪拌した後、冷水500mlを滴下し始め、分液漏斗で分層した。5%NaHCO3溶液200mlで一回洗い、更に、200ml水で中性までに二回洗い、その後希塩酸(20g濃塩酸+400ml水)で一回洗い、続いて200ml水で三回洗った後、100g無水MgSO4で乾燥し、溶剤を回転蒸発させて、除去し、粘稠状液体を得た。該粘稠状液体に適量のメタノールを加入したところ、白色の固体製品が析出した。ろ過、乾燥して、製品33gを得た。収率が76.5%であり、純度が98%より大きい。図2におけるHNMR図中の吸収ピークから、本実施例の最終産物の構造式として
【0049】
【化14】

【0050】
であることが判明された。
【0051】
【化15】

【0052】
[実施例2]
1−(6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール-3-イル)−(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの製造方法
工程一:1-(6-o−メチルベンゾイル-9-エチルカルバゾール-3-イル)-(3-シクロペンチル)-プロパン−1−オンの製造
反応の操作:
500mlの四口フラスコ中に39.0g のN-エチルカルバゾールと、25.3gの AlCl3(細かく砕く)と、150mlのジクロロエタンとを投入して、攪拌し、アルゴンガスを流して保護し、氷バスで冷却して温度が0℃に低下した時に、25.4gのo−メチルベンゾイルクロリドと21g のジクロロエタンのo−メチルベンゾイルクロリド溶液を滴下し始め、温度を10℃以下に調整して、約1.5hをかけて添加した。引き続き2h攪拌した後、フラスコ中に25.4gの AlCl3(細かく砕く)を添加し、温度を10℃以下に調整して、42.2gのシクロペンチル塩化プロピオニルと20g のジクロロエタンのシクロペンチル塩化プロピオニル溶液を約1.5hをかけて滴下した後、温度を15℃に上昇して、引き続き2h攪拌し、反応液を排出した。
【0053】
後処理:
攪拌下で、反応液を400g氷と65ml濃塩酸とを配合した希塩酸中に徐々に投入し、分液漏斗で下層を分液し、上層を50mlのジクロロエタンで抽出した後、抽出液と下層液とを合せる。その後、10g NaHCO3と200g水を配合したNaHCO3溶液で洗浄し、更にpH値が中性を呈するまでに200ml水で3回洗浄し、30g無水MgSO4で乾燥して水分を除去した後、回転蒸発によりジクロロエタンを蒸発させる。蒸発が終わった後、回転蒸発瓶中の粗製品は固体粉末状を呈す。該粗製品を常圧で蒸された石油エーテル200ml中に投入し、吸引ろ過を行い、更に150ml無水エタノールに粗製品に投入し、還流するまでに加熱する。引き続き、室温までに冷却し、更に氷で2h凍った後、吸引ろ過して、白色の粉末状固体を得た。その後、75℃のオーブン中で2h乾燥して、製品50.3gを得た。純度が96.0%より大きい。
【0054】
【化16】

【0055】
反応工程2: 1-(6-o−メチルベンゾイル-9-エチルカルバゾール-3-イル)-(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-オキシムの製造プロセス
反応操作:
500mlの四口フラスコ中に工程一で得られた産物45gと、テトラヒドロフラン450gと、濃塩酸225gと、亜硝酸イソアミル19.2gとを投入し、常温で引き続いて5h攪拌した後、反応液を排出した。反応過程において大量の生成物が析出した。
【0056】
後処理:
反応液を大ビーカー中に入れ、1000ml水を加えて攪拌した後、一夜静置・分層して、黄色の粘稠状液体を得た。該液体をジクロロエタンで抽出し、50g無水MgSO4を加入して乾燥した後、吸引ろ過を行い、更に、ろ液を回転蒸発させて、溶剤を除去したところ、回転瓶中に油状粘稠物50gが得られた。純度が90%である。
【0057】
【化17】

【0058】
反応工程3: 1−(6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール-3-イル)−(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルの製造プロセス
1000mlの四口フラスコ中に第二工程で得られた産物50gと、ジクロロエタン350mlと、トリエチルアミン16.2gとを投入して、攪拌し、氷バスで冷却して温度が0℃となる時にベンゾイルクロリド16.5gとジクロロエタン15gからなる溶液を滴下し始め、約1.5hをかけて滴下した。引き続いて1h攪拌した後、500ml冷水を滴下し始め、分液漏斗で分層した。5%NaHCO3溶液200mlで一回洗い、更に200ml水で中性までに二回洗い、後に、希塩酸(20g濃塩酸+400ml水)で一回洗い、続いて200ml水で三回洗った後、100g無水MgSO4で乾燥し、溶剤を回転蒸発させて、除去し、粘稠状液体を得た。該液体に適量のメタノールを加入したところ、白色の固体製品が析出した。ろ過、乾燥して、製品35.2gを得た。収率が60%であり、純度が98%より大きい。
【0059】
図3におけるHNMR図中の吸収ピークから、本実施例の最終生産物の構造式として、
【0060】
【化18】

【0061】
であることが判明された。
【0062】
【化19】

【0063】
上述の実施例1で製造された1−(4-フェニルチオフェニル)−(3−シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルBおよび実施例2で製造された1−(6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール-3-イル)−(3-シクロペンチル)-プロパン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステルCと、1-(4-フェニルチオフェニル)-N-オクタン-1,2-ジケトン-2-安息香酸オキシムエステル(即ちOXE-1)Aとを比較し、図1の紫外線吸収スペクトルで示すように、質量濃度が同じである場合、ケトオキシムエステル系化合物の紫外線吸収スペクトルが同じ又は類似であり、その中でA、Bの両種類の物質の吸収曲線が重ねているが、B物質の熱安定性がA物質より著しく高い。更に、C物質の吸収曲線は、A物質の吸収曲線と異なっているが、著しく赤シフトして、365nmに大きい吸収があり、C物質の熱安定性がA物質より著しく高い。以下の表1の溶解度に示されるように、本発明は、従来のOXE-1、OXE-2に対して優れる応用性能(感光度、熱安定性、溶解性)を有する。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】

(ただし、R1の構造は
【化2】

であり、
nは1〜4の整数であり、mは1〜6の整数であり、R2は炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基又は置換ベンジル基を表し、R3はジフェニルチオエーテル基、置換ジフェニルチオエーテル基、カルバゾール基又は置換カルバゾール基を表す。)
で表されるケトオキシムエステル系光開始剤。
【請求項2】
請求項1に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法であって、
a.ジフェニルチオエーテル、置換ジフェニルチオエーテル、カルバゾール又は置換カルバゾールを出発原料とし、該出発原料とR1基を有するアシルハライドとを、三塩化アルミニウム又は塩化亜鉛の作用で、フリーデル−クラフツ反応させて、ケトオキシムエステル系光開始剤の中間体Iを合成する、中間体Iの合成工程と、
b.引き続き、中間体Iと亜硝酸イソアミルとを、塩化水素又はナトリウムアルコラート又はカリウムアルコラートの触媒作用で、酸化反応させて、ヒドロキシルアミン化合物である中間体IIを生成する、中間体IIの合成工程と、
c、中間体IIとR2を有するアシルハライド又は無水物とをエステル化させて、ケトオキシムエステル系光開始剤製品を合成する、ケトオキシムエステル系光開始剤の合成工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
前記R1基を有するアシルハライドの構造が
【化3】

であり、前記中間体Iの構造が
【化4】

であり、前記中間体IIの構造が
【化5】

であり、前記R2基を有するアシルハライドの構造が
【化6】

であり、ただし、R1の構造は
【化7】

であり、
ここで、nは1〜4の整数であり、mは1〜6の整数であり、 R3はジフェニルチオエーテル基、置換ジフェニルチオエーテル基、カルバゾール基又は置換カルバゾール基を表すことを特徴とする、請求項2に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
【請求項4】
前記工程aの中間体Iの合成は、出発原料と、AlCl3と有機溶剤Aとを攪拌・混合し、その中にアルゴンガスを流して保護し、氷バスで冷却して、温度が0℃まで低下したときに、R1基を有するアシルハライドと有機溶液Aの混合溶液を滴下し、温度を0〜10℃の範囲に調整して、1.5〜2hをかけて滴下した後、温度を5〜35℃に上昇して、引き続き1.5〜3h攪拌し、反応液を排出し、後処理を行って、白色の固体中間体Iを得ることによって行われ、且つ出発原料と、AlCl3とR 1基を有するアシルハライドとの最適モル比が1:1:1であることを特徴とする、請求項2に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶剤Aが、ジクロロエタン、ジクロロメタン又は四塩化炭素であることを特徴とする、請求項4に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
【請求項6】
前記工程bの中間体IIの合成工程において、工程aで生成した中間体Iと、有機溶剤Bと亜硝酸イソアミルとの混合溶液中に、塩化水素又はナトリウムアルコラート又はカリウムアルコラートを加えて、常温で引き続き攪拌しながら5〜6h反応した後、後処理を経て白色の粉末状固体中間体IIを製造し、且つ中間体Iと亜硝酸イソアミルとの最適モル比が1:1.6であることを特徴とする、請求項2に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤Bが、ジクロロエタン又はテトラヒドロフランであることを特徴とする、請求項6に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
【請求項8】
前記工程cのケトオキシムエステル系光開始剤の合成工程において、中間体IIと、ジクロロエタンとトリエチルアミンとを攪拌・混合し、氷バスで冷却して、温度が0℃となる時に、R2基を有するアシルハライドとジクロロエタンからなる溶液を滴下し始め、 1〜1.5hをかけて滴下し、1〜2hの攪拌を続いた後、冷水を滴下し始めて、分液し、5%NaHCO3溶液で一回洗い、更に中性までに水洗した後、希塩酸溶液で一回洗い、更に三回水洗し、無水MgSO4で乾燥し、溶剤を回転蒸発させて、粘稠状液体が得られ、該粘稠状液体にメタノールを加えて白色の固体製品を析出させることを特徴とする、請求項2に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
【請求項9】
前記ケトオキシムエステル系光開始剤は、R1がシクロペンチルメチレン基であり、R3が6−o−メチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール基であり、R2がフェニル基である、構造式
【化8】

で表されるケトオキシムエステル系光開始剤であって、LED冷光源用の光開始剤として用いられることを特徴とする、請求項1に記載のケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公表番号】特表2012−526185(P2012−526185A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510093(P2012−510093)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/CN2009/076303
【国際公開番号】WO2010/133077
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511216525)常州強力電子新材料有限公司 (2)
【Fターム(参考)】