説明

ケモクロミックセンサならびにケモクロミック試薬および試験材料の検知方法

【課題】複数の双方向LEDを含むケモクロミックセンサを提供する。
【解決手段】複数の双方向LEDは、それぞれ、1つまたは複数の試験領域と光学的に位置合わせされている。各LEDは、順方向バイアスで駆動されると発光器として、逆方向バイアスで駆動されると光検出器として用いられる。LEDにかかるバイアスを変えることによって、試験領域の多方向光測定値を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的にはケモクロミックセンサに関し、特にLEDベースのケモクロミックセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ケモクロミックセンサでは、試験材料が試験領域のケモクロミック試薬と反応する。触媒を用いて可逆反応を促すこともできる。反応は、試薬の光学特性を変化させる。これは、光センサを用いて測定することができる。
【0003】
従来技術のケモクロミックセンサは、通常、試験領域の一方向光測定値を用いる。光は、発光ダイオード(LED)によって放射され、フォトトランジスタによって検知されるものであり、例えば、Benson等著「低コストの光ファイバケモクロミック水素ガス検出器(Low-cost fiber-optic chemochromic hydrogen gas detector)」(Proceedings 1999 U.S. DOE Hydrogen Program review, NREL/CP-570-26938, 1999)を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、一方向光測定値を用いるため、試験物質の既知の量によるセンサの校正が必要であり、ケモクロミック試薬の経時特性も既知でなければならない。したがって、零位測定値および差動測定値を用いるケモクロミックセンサを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の回路を持つLEDベースのケモクロミックセンサを提供する。本センサは、複数の双方向LEDを用い、各LEDは、1つまたは複数の試験領域と光学的に位置合わせされている。各LEDは、順方向バイアスで駆動されると発光器として、逆方向バイアスで駆動されると光検出器として用いられる。LEDにかけるバイアスを変えることによって、試験領域の多方向光測定値を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明による多方向LEDベースのケモクロミックセンサ100を示す。第1の双方向LED110および第2の双方向LED120は、抵抗器115および125を介してマイクロプロセッサ130のI/Oピン対にそれぞれ直列に接続されている。LEDにかかるバイアスは、そのLEDが光を放射するのか検知するのかを決める。放射器とセンサの両方として動作する発光ダイオードの詳細な説明については、米国特許出願第10/126,761号「双方向LEDを用いた通信(Communication Using Bi-Directional LEDs)」(Dietz他、2002年4月19日出願、全体を参照により本明細書中に援用)を参照されたい。
【0007】
LEDがセンサとして動作する場合、逆方向バイアスをかけたLEDの接合容量がまず充電される。その接合部は、次に光に暴露され、それによって、接合電圧は、論理ハイレベルから論理ローレベルに降下する。この降下を生じるのにかかる時間は、入射光量の尺度であり、本明細書では、試験材料の量である。減算すべき背景の光量は、放射LEDをオフにすることによって測定することができる。
【0008】
試験領域101は、ケモクロミック試薬と試験材料(通常は、「ケモクロミック材料」の組み合わせ、または「ケモクロミック材料」単独)との混合物102にさらされる。この混合物は、液体またはガス形態で、任意数の既知の方法で試験領域に塗布することができる。混合物102は、順方向バイアスで駆動された第1のLED110によって照明される(111)。反射光121は、逆方向バイアスで駆動された第2のLED120によって検知される。検知された光量は、オペレーティングプログラムおよびアプリケーションプログラムを実行しているマイクロプロセッサ130によって測定される。このマイクロプロセッサは、さらに、LEDにかけるバイアスも決める。バイアスを逆方向にすることによって、LED120から光を放射し、LED110によって検知して、多方向LEDベースのケモクロミックセンサを提供することができる。双方向の光量を測定し、両測定値を比較することによって、零位測定値および差動測定値を得ることができる。
【0009】
図2は、2つのLEDからなるケモクロミックセンサの構成200を示す。2つのLED110および120は、互いに直角である。LEDは、透明なL字型の光導波路210によって接続される。混合物は、光導波路210の角にある試験領域101に塗布され、そこで光211がどちらかの方向に反射される。
【0010】
図3は、複数のLED310および複数の光導波路315〜317を有するケモクロミックセンサ300を示す。校正のために、光導波路の一部は、試験材料の既知の量を測定するために用いられ、他の光導波路は、試験材料の未知の量を測定するために用いられる。複数の光導波路により、精度が高くなり、再現性が向上し、試験時間が短くなる。例えば、光導波路315がケモクロミック試薬311の経時特性を測定するためだけに用いられ、光導波路316は試験材料321の既知の量を測定するために用いられ、光導波路317は試験材料331の未知の量を測定するために用いられる。さらなるセンサおよび光導波路を用いることもできることに留意すべきである。
【0011】
本発明を好ましい実施の形態の例として説明してきたが、本発明の精神および範囲内で様々な他の適用形態および変更形態を実施できるということが理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、本発明の真の精神および範囲に入る全ての変形形態および変更形態を網羅することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による多方向LEDベースのケモクロミックセンサのブロック図である。
【図2】本発明による2LEDケモクロミックセンサの側面図である。
【図3】本発明による3LEDケモクロミックセンサの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のI/Oピン対および第2のI/Oピン対、ならびに前記第1のI/Oピン対の両端および前記第2のI/Oピン対の両端の電圧降下を測定する手段を含むマイクロプロセッサと、
前記第1のI/Oピン対に接続された第1の発光ダイオードと、
前記第2のI/Oピン対に接続された第2の発光ダイオードと、
ケモクロミック試薬と試験材料の混合物を収容するように構成された試験領域と、
前記第1の発光ダイオードを順方向バイアスで駆動して前記試験領域に光を放射し、その一方で前記第2の発光ダイオードを逆方向バイアスで駆動して、前記第2のI/Oピン対の両端の電圧降下を測定して前記試験領域からの光を検知することにより前記試験材料の第1の量を測定する手段と
を備えるケモクロミックセンサ。
【請求項2】
前記第2の発光ダイオードを順方向バイアスで駆動して前記試験領域に光を放射し、その一方で前記第1の発光ダイオードを逆方向バイアスで駆動して、前記第1のI/Oピン対の両端の電圧降下を測定して前記試験領域からの光を検知することにより前記試験材料の第2の量を測定する手段と、
前記第1の量および前記第2の量を比較して前記試験材料を差動的に測定する手段と
をさらに備える請求項1に記載のケモクロミックセンサ。
【請求項3】
前記試験領域は、前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードを光学的に結合する光導波路上にある請求項1に記載のケモクロミックセンサ。
【請求項4】
前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードは互いに直角であり、前記光導波路はL字型である請求項3に記載のケモクロミックセンサ。
【請求項5】
前記試験領域は、前記光導波路の角にある請求項3に記載のケモクロミックセンサ。
【請求項6】
電圧降下は、前記マイクロプロセッサのタイマによって測定される請求項1に記載のケモクロミックセンサ。
【請求項7】
前記ケモクロミック試薬と前記試験材料の混合物を含む試験領域に光を放射するために、第1の発光ダイオードを順方向バイアスで駆動することと、
第2のI/Oピン対の両端の電圧降下を測定して前記試験領域からの光を検知することにより試験材料の第1の量を測定するために、第2の発光ダイオードを逆方向バイアスで駆動することと
を含むケモクロミック試薬および試験材料の検知方法。
【請求項8】
前記ケモクロミック試薬と前記試験材料の混合物を含む前記試験領域に光を放射するために、第2の発光ダイオードを順方向バイアスで駆動することと、
前記第2のI/Oピン対の両端の電圧降下を測定して前記試験領域からの光を検知することにより前記試験材料の第2の量を差動的に測定するために、第1の発光ダイオードを逆方向バイアスで駆動することと、
前記試験材料を差動的に測定するために前記第1の量および前記第2の量を比較することと
をさらに含む請求項7に記載のケモクロミック試薬および試験材料の検知方法。
【請求項9】
複数のI/Oピン対および前記I/Oピン対の各々の両端の電圧降下を測定する手段を含むマイクロプロセッサと、
前記I/Oピン対の1つに1つずつ接続された複数の発光ダイオードと、
それぞれがケモクロミック材料を収容するように構成された複数の試験領域と、
特定の発光ダイオードを順方向バイアスで駆動して選択された試験領域に光を放射し、その他の前記発光ダイオードをそれぞれ逆方向バイアスで駆動して、前記逆方向に駆動された発光ダイオードに対応するI/Oピン対の両端で、前記ケモクロミック材料の量に相当する電圧降下を測定することにより前記選択された試験領域から反射された光を検知する手段と
を備えるケモクロミックセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500560(P2006−500560A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537608(P2004−537608)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011931
【国際公開番号】WO2004/027403
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(504094693)ダブリン シティ ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】